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FDAはなぜ心房細動の新規凝固薬ダビガトランにおいて低用量でなく高用量のみを認可したのか?

NEJM4月13日オンライン版の”PERSPECTIVE”です。

Anticoagulant Options — Why the FDA Approved a Higher but Not a Lower Dose of Dabigatran

・ 2010年10月、Re-LY試験の結果に基づきFDAはダビガトランを承認した。
・ Re-Ly試験はダビガトラン150mg、110mg、ワーファリンのランダム割り付けで、ワーファリンに対するダビガトランの非劣性を見た試験
ダビガトランの両用量ともワーファリンに対して非劣性。特に150mgでワーファリンおよびダビガトラン110mgより優れていた
・ 大出血は110mgではワーファリンより少なく、150mgでワーファリンと同等
・ このように150mgは110mgに比べ塞栓症を減らすが、出血は多かった
・ 両用量とも、ワーファリンとの単独比較試験ならば、安全かつ効果的であったろうと推察される
・ しかしながら、両用量には明らかな差があるため、両者をとるか、高い効果の方のみをとるかでFDAにより重大かつ調整的な決定がくだされた。最終的に高用量だけが認可された

・ われわれが両用量とも認可されるだろうと考えていたのには2つの理由がある。第一に高用量の方が効果は優れていたが、低用量でも非劣性が示されていたこと、第二に(用量の決定は)患者と医師の選択にゆだねられること。(たとえば)出血の可能性の高い患者へのオプションとなり得るため。

・ 一方、(もともと)非致死性、頭蓋外出血のエピソードは脳卒中に比べ明らかに少なく、低用量服用患者は脳塞栓が多い傾向にある。FDAレビューアーはこの点を考慮し、ベネフィット—リスクの評価の結果150mが優れていると判断したと思われる。われわれの見解では、低腎機能、出血の既往ありの高齢者では低用量の利点の方が大きいと推察している。

・ RE-LY試験では40%が75歳以上であり、脳塞栓の発症率は150 mgの方が110mgより少なかったが、大出血は多かった。脳塞栓と出血が同じように望ましくないと考えられるならば、両用量とも同じ価値と見なされる。しかし多くの患者は脳塞栓や全身性塞栓症を非致死性出血より重要と見なしている。このことは高齢者でも高用量が良いことへの理由づけとなる。

・ ダビガトランは腎代謝なので、高度腎機能低下者には低用量が有効である。クレアチニンクリアランス30~50の患者では、血中濃度が2〜3倍となる。(しかし)これらの患者では、150mg内服での塞栓血栓発症率は110mgのときの半分となるが、出血エピソードは同等であった。血中濃度高値の患者でも、高用量に分があった

・ RE—LY試験では、57%が薬の継続の有無にかかわらず大出血の既往を持っていた。しかし更なる出血の発症は3群間で変わらなかった。このことは出血の既往があっても低用量に変えるべきでないことを物語る

・ これらのことから、われわれは多くの患者で高用量の方がベネフィット—リスクバランスの点で良いと考えるに至った。さらに高度腎機能低下者では75mgが勧められる

・ ワーファリンは広く普及しているが、出血への恐れが処方控えを招いており、管理の難しさもそれを助長している。INRコントロールの難しい患者では、ダビガトランがより受け入れられる。ワーファリンによる出血を恐れている患者には110mgが勧められる。
・ にもかかわらず、われわれはより安全を心がける(すぎる)ことが、処方控えを招き不必要な塞栓症を引き起こしていると結論したのである。
・ The Cardiovascular and Renal Drugs Advisory Committeeはこのことを考慮して高用量のみを認めた

・ TTRが平均的な患者に比べてより低い患者では150mgのアドバンテージが高い
・ ワーファリンコントロールが良好な患者では低用量ダビガトランのワーファリンに対する優位は見いだせない

・最終的にはFDAの決断は、低用量が大きな不利益とはならない患者層を特定できないことに基づいている。

###日本での添付文書ではCcr30~50,P-糖蛋白阻害剤服用者、70歳以上、消化管出血の既往のある者に限り110mgを考慮すること、となっています。日本では厳密なエビデンスよりは、オプションを増やす方向に発想のベクトルが向いのだろうと思われます。
by dobashinaika | 2011-04-15 23:02 | 抗凝固療法:ダビガトラン | Comments(0)


土橋内科医院の院長ブログです。心房細動やプライマリ・ケアに関連する医学論文の紹介もしくは知識整理を主な目的とします。時々日頃思うこともつぶやきます。


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