QT短縮症候群のシステマテックレビュー~QTc330msec未満、家族歴、遺伝子型に要注意
Journal of American College of Cardiology2月15日号からです。
The Short QT Syndrome: Proposed Diagnostic Criteria
J Am Coll Cadriol, 2011; 57: 802-812
背景:QT短縮症候群は、心房細動や突然死に関係しており、初の報告時から10年経つが、診断基準は明確になっていない。
方法:MEDLINEでQT短縮症候群に関するすべての報告を抽出。報告されたデータから心電図上の特徴やQT間隔の範囲を検討し、一般住民のデータと比較した。
結果:
1)計61例が報告されていた。
2)突然死、心停止、失神、心房細動は57.4%に見られた。
3)男性が75.4%を占め、症候性患者の平均QTcは306.7msec(248~381)であった。
4)一般住民に比べ、臨床所見、家族歴、遺伝的所見を考慮した感度の高いスコアリングシステム(注)が開発された。
結論:QT短縮症候群61例の包括的レビューに基づき、疑わしい心電図の診断を助ける、公式の診断基準が提出された。このクライテリアはリスクの高い家系のスクリーニングと状態把握に有用である。
(注)QTc、家族歴、突然死、心房細動の既往、特徴的遺伝子型などをポイント化し4点以上をhighly-probably、3点以上をintermediate-probability、2点以下をlow-probabilityとした。各点数は以下の通り
QTc, ms
<370 1点
<350 2点
<330 3点
Jpoint-Tpeak interval <120 ms 1点
Clinical history *
History of sudden cardiac arrest 2点
Documented polymorphic VT or VF 2点
Unexplained syncope 1点
Atrial fibrillation 1点
Family history *
First- or second-degree relative with high-probability SQTS 2点
First- or second-degree relative with autopsy-negative sudden cardiac death 1点
Sudden infant death syndrome 1点
Genotype *
Genotype positive 2点
Mutation of undetermined significance in a culprit gene 1点
###QT短縮症候群は、K電流の増強等により、心室筋の活動電位持続時間が短縮し、QT間隔の短縮を来す疾患で、これまで5つの遺伝子型が報告されています。不応期が短縮することにより致死性不整脈がおきやすいため、突然死が問題となっており、心房筋においては心房細動の原因となると言われています。
QTを延長させるI,III群抗不整脈薬が有効です。
今回はシステマテックレヴューにより、包括的に診断基準を規定しようという取り組みです。まず心電図でQTc0.37未満なら要注意、0.35未満では厳重注意、それと他の因子を考えに入れての診断ということを、頭に入れるようにしたいと思います。
The Short QT Syndrome: Proposed Diagnostic Criteria
J Am Coll Cadriol, 2011; 57: 802-812
背景:QT短縮症候群は、心房細動や突然死に関係しており、初の報告時から10年経つが、診断基準は明確になっていない。
方法:MEDLINEでQT短縮症候群に関するすべての報告を抽出。報告されたデータから心電図上の特徴やQT間隔の範囲を検討し、一般住民のデータと比較した。
結果:
1)計61例が報告されていた。
2)突然死、心停止、失神、心房細動は57.4%に見られた。
3)男性が75.4%を占め、症候性患者の平均QTcは306.7msec(248~381)であった。
4)一般住民に比べ、臨床所見、家族歴、遺伝的所見を考慮した感度の高いスコアリングシステム(注)が開発された。
結論:QT短縮症候群61例の包括的レビューに基づき、疑わしい心電図の診断を助ける、公式の診断基準が提出された。このクライテリアはリスクの高い家系のスクリーニングと状態把握に有用である。
(注)QTc、家族歴、突然死、心房細動の既往、特徴的遺伝子型などをポイント化し4点以上をhighly-probably、3点以上をintermediate-probability、2点以下をlow-probabilityとした。各点数は以下の通り
QTc, ms
<370 1点
<350 2点
<330 3点
Jpoint-Tpeak interval <120 ms 1点
Clinical history *
History of sudden cardiac arrest 2点
Documented polymorphic VT or VF 2点
Unexplained syncope 1点
Atrial fibrillation 1点
Family history *
First- or second-degree relative with high-probability SQTS 2点
First- or second-degree relative with autopsy-negative sudden cardiac death 1点
Sudden infant death syndrome 1点
Genotype *
Genotype positive 2点
Mutation of undetermined significance in a culprit gene 1点
###QT短縮症候群は、K電流の増強等により、心室筋の活動電位持続時間が短縮し、QT間隔の短縮を来す疾患で、これまで5つの遺伝子型が報告されています。不応期が短縮することにより致死性不整脈がおきやすいため、突然死が問題となっており、心房筋においては心房細動の原因となると言われています。
QTを延長させるI,III群抗不整脈薬が有効です。
今回はシステマテックレヴューにより、包括的に診断基準を規定しようという取り組みです。まず心電図でQTc0.37未満なら要注意、0.35未満では厳重注意、それと他の因子を考えに入れての診断ということを、頭に入れるようにしたいと思います。
by dobashinaika
| 2011-02-10 18:11
| 心室性不整脈
|
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土橋内科医院の院長ブログです。心房細動やプライマリ・ケアに関連する医学論文の紹介もしくは知識整理を主な目的とします。時々日頃思うこともつぶやきます。
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筆者は、2013年4月以降、ブログ内容に関連して開示すべき利益相反関係にある製薬企業はありません
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