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1年以上持続する心房細動に対するアブレーション:われわれは誰を断るべきかを知っているのか??

EuropaceのEditorialです。持続性心房細動のアブレーションに関するまとまった見解を知ることができます.要点を箇条書きします.
Ablation for persistent atrial fibrillation: do we know who to turn away?
David D. Spragg and Hugh Calkins


元論文はこれ

心房細動治療におけるカテーテルベーステクニックは過去十年間急速に発達した.
肺静脈隔離術が一般的であり広く普及している。
薬剤抵抗性の症候性発作性心房細動のアブレーションに関しては広く受け入れられている.
しかしながら持続性、特に長期持続性心房細動のアブレーションの長期成績は定かでない.
大規模試験では、この患者層の再発率は高いことが示されている、
この患者層での再発予測、特にアブレーションが全く無効である患者の同定は、大変重要である。

McCreadyらは1年以上続く持続性心房細動にたいするアブレーションの再発予測データを提供している.
191例292回のアブレーションで肺静脈隔離は100%、左房ルーフ71%、僧帽弁狭部44%、微小電位42%のアブレーションを要した。
重要なことは洞調律回復まで、手技上のエンドポイントがないことである.
アブレーション中に洞調律に回復する例は12%にすぎない。
13ヶ月間フォローされ、30秒以上の心房細動が3ヶ月の間に認められれば再発と定義した.77例は2回以上アブレーションを施行された.

McCreadyらのデータはこの層のアブレーションに関する厳しい勧告である.
100%肺静脈を隔離したにもかかわらず、88%の患者でアブレーション中に洞調律に戻らなかった.
32%は1回の手技で成功したが、30%は抗不整脈薬を飲み続けた。
1回の手技で抗不整脈薬から解放されるのは32%未満である。
4回以上の手技を含むオーバーオールの成績は、64%であった。
重要なことは6.2%で重大な合併症が起きたことである。
心タンポナーデ2.4%、脳卒中1%、横隔膜麻痺0.7%、拘束性心膜炎1人
1回で成功するかどうかの予測因子として、左房径が挙げられた。
罹病期間、施術法他のパラメ—ターは予測因子となり得なかった。
左房径43mm未満がAUC最大であった。

この試験には重要な点がいくつかある。
第一に、1回の成功率が32%未満と超低率であること
第二に、合併症が高率(6.2%)であること
第三に、左房径を重要な予測因子と位置づけたこと
である。

最近Takahashiらは持続性心房細動のアブレーションが成功する要因を検討した.対象はMcCreadyらとほぼ同じである.
彼らは左房径でなく罹病期間が再発予測因子であるとした.
ボルドーグループは、左房径、罹病期間いずれも予測因子であるとした.
これらのデータはわれわれ医師の信念形成の助けとなる.大きな左房径かつ/あるいは長い罹病期間の例では高い再発率が見込まれる、のである。

このスタディの真に意味するところは何か?
左房径4.3cm以上を除外基準として用いるのは誤りではないのか?エコー上の左房径は心の左房容積を反映していない.左房の大きさが最近のアブレーション実践の潮流を変えるものであるか否かはよく考える必要がある.
手技の成功の可否を予測する因子の同定は重要であるが、アブレーションが圧倒的に無意味である例を同定することも必要である.
本研究で、左房径43mm以上の患者の24ヶ月間心房細動再発なしは50%だった。この結果は多くの抗不整脈薬に抵抗する心房細動アブレーションにも当てはまるだろう。
本研究では特にどんな例で再発がないのかの検討はない.反対に、左房径46以上では再発抑制効果は頭打ちであった.
必要なのは診断基準(リスクスコアシステム)である。
MRIによる心房繊維かの範囲の同定が予測因子となりうることも報告されている.
より多くの更なる研究が望まれる。
by dobashinaika | 2011-01-31 22:22 | 心房細動:アブレーション | Comments(0)


土橋内科医院の院長ブログです。心房細動やプライマリ・ケアに関連する医学論文の紹介もしくは知識整理を主な目的とします。時々日頃思うこともつぶやきます。


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