人気ブログランキング |

2010年心房細動関連論文ベスト5

大晦日になりました。
今年は1月から、自分の目に触れた心房細動関連の論文を紹介してまいりました。あくまで、自分の好みや時間的制約の中で選んでおり、だいぶ抜けもあったかと思いますが、そんな中から今年自分の行動変容が促された論文ベスト5を選びました。あくまで自分の診療に役に立ったことが選択理由であり、医療者全体へのインパクトは考慮しておりません。が、選んだ論文はどれも、他の先生方にも多少なりとも影響のあるものになったと思います。

第5位:Comparison of antiarrhythmic drug therapy and radiofrequency catheter ablation in patients with paroxysmal atrial fibrillation: a randomized controlled trial JAMA 2010;303:333-340.
“抗不整脈薬とカテーテルアブレーションのRCT”
いわゆるThermoCool AF試験と呼ばれる、カテーテルアブレーションと抗不整脈薬との初の大規模や施設RCTです。実は種々の事情でブログでは紹介しておりませんでした。9ヶ月後の心房細動は薬投与群で66%だったのに対し、アブレーションは16%ときわめて良好な成績であり、発作性心房細動の患者さんに対し、もっとアブレーションを勧めてもいいかなと思わせるに十分な内容でした。上手にレートコントロールした場合(これが難しい)とアブレーションとの比較も知りたいところです。

第4位:2011 ACCF/AHA/HRS Focused Update on the Management of Patients With Atrial Fibrillation (Updating the 2006 Guideline)  Am Coll Cardiol, doi:10.1016
“心房細動患者管理ガイドラインの一部改訂(米国)”
 ヨーロッパのガイドライン全面改訂に対抗するかのように、目立った箇所だけでも急いで改訂しておこうといった印象もあり、内容も緩徐なレートコントロールと、アブレーションの重用という、まあそんなところかという感じでしたが、なにはともあれアメリカのガイドライン改訂は大きなインパクトがあります。ブログ紹介はこちら

第3位:Randomized trial of angiotensin II-receptor blocker vs. dihydropiridine calcium channel blocker in the treatment of paroxysmal atrial fibrillation with hypertension (J-RHYTHM II Study)  Europace (2010) doi: 10.1093/europace/euq439
“高血圧合併心房細動患者におけるアンジオテンシンン受容体拮抗薬とカルシウム拮抗薬の無作為割り付け試験(J-RHYTHM II試験)”
 日本心電学会主導の日本人によるトライアルで、高血圧患者を日頃よく診る開業医のニーズにきわめて良くマッチした試験でした。これとヨーロッパ心臓病学会2010で発表されたANTIPAF試験とで、心房細動のある方の降圧薬選択の際、ARBにことさら気を使うことはなくなった訳です。ブログ紹介はこちら

第2位:Lenient versus strict rate control in patients with atrial fibrillation N Engl J Med 2010;362:1363-1373
“心房細動患者での緩徐な心拍数コントロールと厳格なコントロールとの比較(RACE II 試験)”
 心房細動中の心拍数は110/分くらいでもいいよ、と言ってくれたのがこの論文です。それまで80/分くらいがよいとされていましたが、なかなかそこまで行かないというのが実感でした。開業医の精神衛生にも多大な効果をもたらしたとも言えます。Lanientという単語の意味も初めて勉強できました(笑)。ブログ紹介はこちら

第1位:Guidelines for the management of atrial fibrillation
The Task Force for the Management of Atrial Fibrillation of the European Society of Cardiology (ESC) Eur Heart J (2010) 31 (19): 2369-2429.

“心房細動管理ガイドライン(ヨーロッパ心臓病学会)“
 アメリカのガイドラインとは袂を分ち、今年発表されたガイドラインです。ブログにはあまりに膨大すぎて紹介しておりません。教訓満載のガイドラインで、とくにCHADS2スコアに変わりCHA2DS2VAScスコアが採用されている点が取り上げられますが、個人的には本文Figure1〜3で心房細動の自然経過やタイプ、意思決定に関してシェーマ化した部分、Table5,6で心房細動を疑った際聞くべき質問と症状の程度をスコア化した部分が、大変気に入っています。ここまでの臨床家にフレンドリーな姿勢はこれまでなかったものと思います。各方面に与えた影響という点でもダントツ1位ではないでしょうか。

 個人的には、上記の他に今年後半に入り新規抗凝固薬関連の論文が急増したこと、カテーテルアブレーションの長期成績を報告する論文がいくつか現れ始めたことが目立つ1年だったと思います。

 来年はその新規抗凝固薬が日本に上陸し、新凝固療法元年になると思われますが、ツールは変わるものの、心房細動治療の根本原理まで変わることはないでしょう。あくまで患者さんと医療者との共同作業であるとの姿勢を大切にしつつ、細々とブログを更新していきたいと思います。
by dobashinaika | 2010-12-31 09:18 | 心房細動:疫学・リスク因子 | Comments(0)


土橋内科医院の院長ブログです。心房細動やプライマリ・ケアに関連する医学論文の紹介もしくは知識整理を主な目的とします。時々日頃思うこともつぶやきます。


by dobashinaika

プロフィールを見る
画像一覧
更新通知を受け取る

S M T W T F S
1 2 3 4 5 6 7
8 9 10 11 12 13 14
15 16 17 18 19 20 21
22 23 24 25 26 27 28
29 30 31

カテゴリ

全体
インフォメーション
医者が患者になった時
患者さん向けパンフレット
心房細動診療:根本原理
心房細動:重要論文リンク集
心房細動:疫学・リスク因子
心房細動:診断
抗凝固療法:全般
抗凝固療法:リアルワールドデータ
抗凝固療法:凝固系基礎知識
抗凝固療法:ガイドライン
抗凝固療法:各スコア一覧
抗凝固療法:抜歯、内視鏡、手術
抗凝固療法:適応、スコア評価
抗凝固療法:比較、使い分け
抗凝固療法:中和方法
抗凝固療法:抗血小板薬併用
脳卒中後
抗凝固療法:患者さん用パンフ
抗凝固療法:ワーファリン
抗凝固療法:ダビガトラン
抗凝固療法:リバーロキサバン
抗凝固療法:アピキサバン
抗凝固療法:エドキサバン
心房細動:アブレーション
心房細動:左心耳デバイス
心房細動:ダウンストリーム治療
心房細動:アップストリーム治療
心室性不整脈
Brugada症候群
心臓突然死
不整脈全般
リスク/意思決定
医療の問題
EBM
開業医生活
心理社会学的アプローチ
土橋内科医院
土橋通り界隈
開業医の勉強
感染症
音楽、美術など
虚血性心疾患
内分泌・甲状腺
循環器疾患その他
土橋EBM教室
寺子屋勉強会
ペースメーカー友の会
新型インフルエンザ
3.11
未分類

タグ

(40)
(35)
(35)
(27)
(27)
(26)
(25)
(24)
(21)
(20)
(20)
(19)
(18)
(16)
(14)
(13)
(13)
(13)
(13)
(13)

ブログパーツ

ライフログ

著作

もう怖くない 心房細動の抗凝固療法


プライマリ・ケア医のための心房細動入門

編集

治療 2015年 04 月号 [雑誌]

最近読んだ本

ケアの本質―生きることの意味


ケアリング―倫理と道徳の教育 女性の観点から


中動態の世界 意志と責任の考古学 (シリーズ ケアをひらく)


健康格差社会への処方箋


神話・狂気・哄笑――ドイツ観念論における主体性 (Ν´υξ叢書)

最新の記事

【Apple Heart S..
at 2019-11-26 07:35
心房細動合併透析患者において..
at 2019-11-21 06:49
日本の心房細動患者の死因の半..
at 2019-11-11 07:22
CHA2DS2-VAScスコ..
at 2019-10-30 17:36
中高年開業医におけるヤブ化防..
at 2019-10-18 07:27
日経メディカルオンライン:第..
at 2019-10-15 06:26
新規発症心房細動では服薬アド..
at 2019-10-06 10:47
心房細動診断においてスマホに..
at 2019-09-19 06:30
第17回どばし健康カフェ「心..
at 2019-09-05 08:51
強い症状のない血行動態の安定..
at 2019-09-04 06:36

検索

記事ランキング

最新のコメント

いつもブログ拝見しており..
by さすらい at 16:25
いつもブログ拝見しており..
by さすらい at 16:25
取り上げていただきありが..
by 大塚俊哉 at 09:53
> 11さん ありがと..
by dobashinaika at 03:12
「とつぜんし」が・・・・..
by 11 at 07:29
> 山川玲子さん 山川..
by dobashinaika at 23:14
運慶展を観た方にWEB小..
by omachi at 19:45
> terryさん ご..
by dobashinaika at 08:38
簡潔なまとめ、有り難うご..
by 櫻井啓一郎 at 23:16
いつも大変勉強になります..
by n kagiyama at 14:39

以前の記事

2019年 11月
2019年 10月
2019年 09月
2019年 08月
2019年 07月
2019年 06月
2019年 05月
2019年 04月
2019年 03月
2019年 02月
2019年 01月
2018年 12月
2018年 11月
2018年 10月
2018年 09月
2018年 08月
2018年 07月
2018年 06月
2018年 05月
2018年 03月
2018年 02月
2018年 01月
2017年 12月
2017年 11月
2017年 10月
2017年 09月
2017年 08月
2017年 07月
2017年 06月
2017年 05月
2017年 04月
2017年 03月
2017年 02月
2017年 01月
2016年 12月
2016年 11月
2016年 10月
2016年 09月
2016年 08月
2016年 07月
2016年 06月
2016年 05月
2016年 04月
2016年 03月
2016年 02月
2016年 01月
2015年 12月
2015年 11月
2015年 10月
2015年 09月
2015年 08月
2015年 07月
2015年 06月
2015年 05月
2015年 04月
2015年 03月
2015年 02月
2015年 01月
2014年 12月
2014年 11月
2014年 10月
2014年 09月
2014年 08月
2014年 07月
2014年 06月
2014年 05月
2014年 04月
2014年 03月
2014年 02月
2014年 01月
2013年 12月
2013年 11月
2013年 10月
2013年 09月
2013年 08月
2013年 07月
2013年 06月
2013年 05月
2013年 04月
2013年 03月
2013年 02月
2013年 01月
2012年 12月
2012年 11月
2012年 10月
2012年 09月
2012年 08月
2012年 07月
2012年 06月
2012年 05月
2012年 04月
2012年 03月
2012年 02月
2012年 01月
2011年 12月
2011年 11月
2011年 10月
2011年 09月
2011年 08月
2011年 07月
2011年 06月
2011年 05月
2011年 04月
2011年 03月
2011年 02月
2011年 01月
2010年 12月
2010年 11月
2010年 10月
2010年 09月
2010年 08月
2010年 07月
2010年 06月
2010年 05月
2010年 04月
2010年 03月
2010年 02月
2010年 01月
2009年 12月
2009年 11月
2009年 10月
2009年 09月
2009年 08月
2009年 07月
2009年 06月
2009年 05月
2009年 04月
2009年 03月
2009年 02月
2009年 01月
2008年 03月
2007年 03月
2006年 03月
2005年 08月
2005年 02月
2005年 01月

ブログジャンル

健康・医療
病気・闘病

画像一覧

ファン