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心房細動の再発を予測するもの

最近の心房細動関連の論文でもう一つ無視できないのものイタリアで行われたGISSI-AF試験があります。これは比較的長く続いたり、発作回数の多い持続性または発作性の心房細動患者さんを、高血圧の薬のバルサルタンを飲む群と偽薬を飲む群とに分け、心房細動再発までの時間や1年以内に再発した人の割合を比べた試験です。結果は予想に反し、バルサルタンを飲んだ人と偽薬を飲んだ人とで差がつきませんでした。バルサルタンに代表されるアンジオテンシン受容体拮抗薬(ARBと略されます)は、心房細動予防によいとされていたこれまでの説を覆すものでした。
この試験を後から解析し、どんな人に心房細動の再発が多いのかを明らかにした論文がアメリカの心臓病専門誌に発表されました(American Heart Journal 2010; 159: 857-863)

背景)心房細動は、正常なリズム(洞調律)に戻った後も再発しやすい不整脈である。再発の危険因子(どういう人が再発しやすいか)を明らかにすることが、再発予防の最良に戦略となる。

方法)GISSI-AF試験に登録された1442人の患者さんを対象にした。この人たちには過去6ヶ月で2回以上の心房細動発作があるか、または少なくとも2回以上心房細動を(電気ショックや薬剤などで)正常リズムに戻したことのある人たちである。これらの人をバルサルタンを飲む人と偽薬を飲む人に無作為に割り付けた。初めての発作再発までの時間、および1年以内に再発した人の割合を比較したのがGISSI-AFの本試験であった。今回はどのような特徴のあった人が再発しやすいのかについて、統計手法(Cox multivariableモデル)を用いた解析した。

結果)過去6ヶ月以内に2回以上の発作のある人は、その後も再発しやすかった。発作の後、自然に正常リズムに戻った人では、発作が2回以上あった人はそうでない人の1.42倍再発が多かったが(95%信頼区間1.14-1.77, P=0.002)、電気ショックで正常に戻った人の場合も1.19倍と多く(95%信頼区間1.10-1.40, P=0.038)、正常リズムへの回復の仕方には関係なかった。また正常リズムのときの心拍数が低い(遅い)方が再発しやすかった(95%信頼区間0.99-1.00, P=0.052)。1回以上の再発率においても同じ結果であった。アミオダロン(不整脈の薬)を飲んでいると再発しにくく、利尿薬を飲んでいると再発しやすかった。

結論)心房細動が以前あったかどうかが、正常リズムへの戻り方に関わらず、再発の危険因子であった。アミオダロンと利尿薬は再発に影響を与えた。

###心房細動は、基本的に進行する病気です。最初は年1回だったのが、年3〜4回となり、月1回となり、だんだん止まらなくなり、ついには慢性化します。そのため、どこで正常リズムとお分かれしてこう不整脈薬を出さず、心拍数を遅くする薬だけを出すことにするかの決断を迫られる時期がやってきます。これまでその判断はなかなか難しく、ケースバイケース、医師の裁量として処理されてきました。今回の論文のような情報は、こうした判断の助けとなります。すなわち過去2回以上の発作のある人、利尿薬を使っている人は再発しやすいので、むやみにこう不整脈薬を続けない、などの判断材料になります。実際、この正常リズムに固執するかどうかの判断に迷うことも多く、このような情報がもっと出てくると、本当に我々としてもありがたいです。

by dobashinaika | 2010-05-11 22:23 | 心房細動:疫学・リスク因子


土橋内科医院の院長ブログです。心房細動やプライマリ・ケアに関連する医学論文の紹介もしくは知識整理を主な目的とします。時々日頃思うこともつぶやきます。


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