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ACC/AHAから心血管疾患の一次予防に関する包括的なガイドラインです。一度は目を通すことをお勧めします

アメリカACC/AHAの心血管疾患音一次予防ガイドラインが発表されています。


プライマリ・ケア領域で極めて有益な内容ですので,ご紹介します。
ACCのまとめサイトから

【1. ガイドラインの守備範囲】
・動脈硬化性心血管疾患(ASCND)関連の9つのエリアを網羅したもの
・ASCVD(急性冠症候群,心筋梗塞,安定/不安定狭心症,動脈血行再建,脳卒中/TIA,末梢血管疾患)および心不全,心房細動の一次予防(成人)に焦点
・多職種チームベース,社会的因子を実装した患者ー医療者間のshared decisionsを強調
・社会的因子(ケアの障壁):ヘルスリテラシー,経済的貧困,文化的影響,教育レベル,他の社会経済的因子

【2. リスク評価(1)】
・一次予防の基礎である
・20−39歳:4-6年ごとの古典的リスク因子の評価(喫煙,脂質異常,早期心血管死の家族歴,慢性炎症性疾患,高血圧,2型糖尿病(T2DM))
・20−39歳,40−59歳:10年リスクが7.5%未満の場合,30年リスクを評価(ASCVD Risk Estimator Plusにより)
・30年リスク評価はライフスタイル強化やある種の薬剤導入(家族性高コレステロール血症,高血圧,耐糖能異常,早期心血管死家族歴のある脂質異常症,LP(a)増加)に利用

【3. リスク評価(2)】
・今後10年間の絶対リスクを電子あるいは紙のチャート上で活用する
・40−79歳の無症候性成人はASCVD Risk Estimator Plusで10年リスクを評価
・低リスク(<5%),境界型(5-7.5%),中等度(7.5-20%),高リスク(20%以上)
・ASCVD Risk Estimator Plusは白人には適するがそれ以外には過大/過小評価の可能性あり
・他の評価ツールとしてはFramingham CVDリスクスコア, Reynoldse リスクスコア, SCORE, and QRISK/JBS3 tools など
・境界型および中等度リスクでは個別に追加的な「リスク強化」因子の使用を考慮する

・スタチン開始及び強化時は以下の「リスク強化」因子を考慮
>早期心血管死家族歴(男性<55,女性<65),LDLC160以上,non-HDLC190以上,CKD(eGFR<60),メタボリック症候群,子癇および早期閉経(<40歳),炎症性疾患(RA,ループス,乾癬,HIV),南アジア系
>各種バイオマーカー(中性脂肪175以上,LP(a)50以上,高感度CRP2mg/L以上,apolipoprotein B>130,ABI<0.9)

・境界型および中等度リスク例では,上記でも不確実であり,冠動脈CTによる冠動脈石灰化スコア(CACs)の追加が合理的

・CACsのスコアが100パーセンタイルあるいは75以上の場合,リスクは上方修正され,0の場合下方修正される(特に男性<50歳,女性<60歳)
・CACsは低リスク例,若年者(<45歳),高齢者(>75歳)の評価を向上させる
・CACs=0の場合:スタチンは不要,他の薬剤も導入は遅くて良い
・MASA ,ASTROCHARTMといった他のネット上リスク評価ツールはCACと併用使用できる

【4. 栄養 】
・以下の食品のダイエトリーパターンはCVDの生命予後に関連する
>砂糖,低カロリー甘味料,高炭水化物ダイエット,低炭酸化物ダイエット,精製された穀物,トランス脂肪酸,飽和脂肪酸,塩分,赤肉,加工赤肉(ベーコン,サラミ,ハム,ホットドッグ,ソーセージ)

・すべての成人は以下のような健康的な食物ベースあるいは地中海様ダイエットを食べるべき・これらは全死亡を標準的ダイエットに比べ減らすことが示されている。
>野菜,果物,ナッツ,全粒穀物,低脂肪野菜または蛋白(魚が良い),繊維質野菜,

・長期の低炭水化物,高動物性脂肪/蛋白ダイエットは高炭水化物食同様,死亡率を増やす
・安価で甘味のあるハイカロリー食品は,仕事上の低活動性と相まって,肥満の比率や高血圧,2型糖尿病を増やしている

【5. 肥満】
・肥満(BMI≧30),高体重(BMI≧25-29.9)はASCVD,心不全,心房細動リスク上昇に関連

・肥満/高体重の人には,6ヶ月間の包括的なライフスタイルプログラムが推奨される
>低炭水化物ダイエット;500kcal/日または800−1500kcal/日
>高レベルの運動:200-300分/週

・臨床的に意味のある体重減少(≧5%減少)は血圧,LDLC,中性脂肪,血糖,糖尿病発症を抑制
・ダイエット,運動に加え,FDA認可の薬物療法,肥満手術はある種の患者の体重減少に役立つ

【6. 運動】
・大規模観察研究により定期的な運動はASCVDを減らし,公衆衛生上の有益性が強調されているが,USの50%の人は最低限の推奨も満たしていない
・中等度〜高度の運動量とASCVDの減少は比例する
最低150分/週の中等度運動または75分/週の高度有酸素運動とレジスタンス運動が推奨される

【7. 糖尿病】
・2型糖尿病(HbA1c>6.5%)は高血糖を生じるインスリン抵抗性による代謝性疾患
・食事,運動,体重に強く影響される
・すべての2型糖尿病の人にダイエットカウンセリングをすべき
・食事;地中海食,DASH食,ベジタリアン/ヴィーガンダイエットが勧められる
・運動:中〜高度150分/週(有酸素/レジスタンス)でHbA1c0.7%減少
・他のリスク因子も積極的に検索すべき
・若年者や軽症では,薬物療法の前に3−6ヶ月のライフスタイル治療を考える

第一選択はメトホルミン
・メトホルミンは非薬物療法に比べ,血管性疾患を32%,心筋梗塞を39%,全死亡を36%減らす
・ゴールはHbA1c6.5-7.0%
・SU剤を含むいくつかの薬剤はHbA1cは減らすがASCVDには影響ない

・以下の2つの薬剤はASCVDの減少に関連することは最近報告された
SGLT-2:近位尿細管でのグルコース,NaCl排泄を促進,HbA1c,体重,血圧,ASCVD,心不全を減少させる(RCTによる)。一次予防に有効かどうかは限定的
GLP-1Rアゴニスト:肝でのインスリン,グルカゴン合成促進。筋,脂肪組織でのグルコース取り込身を増やし,肝での糖新生をへらす。高リスク群でのASCVDをへらす

危険因子をもつ2型糖尿病では一次予防として上記2薬剤を開始するのは妥当
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【8. 脂質】
・ASCVDの一次予防には幼少時からのリスク因子評価が推奨される
・19歳未満の家族性高コレステロール血症ではスタチンを開始する
・20−39歳ではライフスタイルの評価と変容が優先
・スタチンは若年でのASVCDの家族歴およびLDLC≧160でスタチンを考える
・全患者でASCVDリスクを評価

【9. スタチンの推奨】
・LDLC≧190mg/dl(20−75歳):他のリスク評価なしで高用量スタチン

・2型糖尿病(40−75歳):中等量スタチン。以下のリスクにより高用量処方(目標LDLC60%以上減少)
>リスク因子:10年以上の2型糖尿病,20年以上の1型糖尿病,≧30μgアルブミン/mgクレアチニン。eGFR<60,網膜症,腎症,ABI<0.9,

・>75歳:臨床的な評価とリスクを考慮する

・LDLC70-190(40−75歳,糖尿病なし):ASCVDのリスクによる
>5-7,5%(境界型):上記リスク因子あり→中等量スタチン(症例によりCACs検討)
>7.5−20%(中リスク);中等量〜高用量スタチン,他のリスク因子介入
>>CACs=0:スタチン不要,5−10年ごと再度評価
>>CACs=1-100:55歳以上なら中等量スタチン
>>CACs>100(75パーセンタイル以上):スタチン

・中等量〜高用量スタチンはLDLC,ASCVDリスクを減らす
・6−8週後に効果と忍容性を評価
・LDLC減少が妥当であれば(中等量≧30%減少,高用量50%),他のリスク因子とコンプライアンスを定期的に評価する
・75歳以上の場合は,その都度検討を要す
・CACs の評価は低リスク女性(<7.5%),若年男性(<45)で考慮
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【10. 高血圧】
・USにおいては他のどのリスクよりもASCVDに影響大
・ステージI(130-139/80-89以上)の人は,他の人種より46%多く,加齢とともに激増
・61の前向き試験を含むメタ解析では,収縮期115-180/拡張期75-110では血圧とASCVDは正比例
・収縮期20mmHg,拡張期10mmHg上昇ごとにASCVDによる死亡は2倍上昇
・このことは30-80歳の幅広い層で認められる

第一に減量,ヘルシーダイエット(DASH/DASH地中海食),減塩(1〜1,5g/日減少),カリウムリッチなサプリ。有酸素運動,等尺性レジスタンス(ハンドグリップ),ダイナミックレジスタンス(ウェイトトレーニング)。節酒(男性<3ドリンク,女性<2ドリンク)
・ステージI高血圧では10年で10%のASCVD減少が推奨される
・ASCVD10%/10年以上(CKD,糖尿病):目標血圧<130/80
・ステージII高血圧(≧140/90):目標血圧<130/80
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【11. タバコ】
・疾患,死亡,障害の最重要原因
・喫煙および無煙喫煙(噛みタバコ)を全死亡,ASCVDを増やす
・副流煙はASCVD,脳卒中の原因
・冠動脈疾患死の1/3は喫煙および副流煙が寄与する
・心筋梗塞リスク増加は低レベルではあるが,本数減少はリスク抑制にはつながらない
・電子ニコチン送達システム(ENDS),通称電子タバコおよびVapingは,超微粒子,ニコチン,有毒物質を発散するエアロゾルでCVリスクや肺疾患を増大する可能性あり
・健康若年者では慢性的喫煙が,酸化ストレスと交感神経緊張の持続的増大をもたらす

・全成人に,受診ごとに喫煙状況を評価し,禁煙するようアドバイスすべきである
・行動変容,ニコチン置換,薬物療法のために専門医紹介が有効
・ニコチン置換には数々の方法があるが,ニコチン受容体拮抗薬(バレニクリン,ブプロピオン),抗うつ薬がある

【12. アスピリン】
・長年低用量アスピリンがASCVD予防に使用されてきた
・出血(特にGI出血)がある
アスピリンのASCVD二次予防は確立されている
・近年の知見から,一次予防は使用すべきではない
・以下の出血リスクを持つ人にはアスピリンは勧められない;消化管出血,消化管性潰瘍の既往,他の部位からの出血,70歳以上,血小板減少例,凝固疾患,CKD,NSAID使用,抗凝固薬使用

・以下の使用法が推奨される
>一部のASCVD高リスク者,40−70歳,出血リスクなし:一次予防で推奨可能性あり
>70歳超でのASCVD一次予防のための使用:推奨されない
>全年齢で出血リスクあり:推奨されない
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### 膨大,かつ有用な情報です。アメリカのガイドラインですので,リスク評価スコアなど日本とは違いますが,日本で用いるとしたら吹田スコアなどを参考にするのかもしれません。

特にスタチン開始時期については論議のあるところと思われます。

臨床家としては一度は目を通しておきたいものかもしれません。図表のところだけ,そのうち拡大して紹介します。

$$$ 今日のニャンコ
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# by dobashinaika | 2019-05-12 12:54 | 循環器疾患その他 | Comments(0)

第16回どばし健康カフェ:今回は口腔ケアのお話です。

6月22日(土)に第16回どばし健康カフェを開催いたします。

今回は「口腔ケア」のお話です。

高齢者ももちろん,若いときから歯のケアは,すべての健康問題に繋がります。
しかしながら,本当に正しいお口のお手入れについては,わからないことも多いというのが本当のところかもしれません。

八幡町を中心に歯科訪問診療を精力的におこなっている五十嵐隆先生にレクチャーをしていただき,わからないことを明らかにし,わかるようにしていきたいと思います。

どなたでも参加可能ですので,気軽にご連絡ください。
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# by dobashinaika | 2019-04-21 18:42 | 土橋内科医院 | Comments(0)

【総まとめ】今,心房細動の何がわかっていないのかー不整脈におけるknowledge gapsを明らかにする:EP誌

前々回のブログで取り上げました欧州不整脈学会(EHRA)からの,不整脈分野で未だに不明な事項,いわゆるknowledge gaps に関するステートメントに心房細動に関する部分を追加まとめいたしました。

EHRA White Paper: knowledge gaps in arrhythmia management—status 2019EP Europace, euz055, https://doi.org/10.1093/europace/euz055

【心房細動の病態生理におけるギャップ】
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【心房細動のスクリーニングにおけるギャップ】
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心房細動の薬物療法におけるギャップ】
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【抗凝固療法と脳卒中予防におけるギャップ】
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【心房細動アブレーションにおけるギャップ】
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【心房細動デバイス治療におけるギャップ】




$$$ それにしてもわからないことが多すぎます!
まあ,この表に載っていない知見も相当蓄積されてあり,それについては本文に言及されているので(それもまとめてほしい)実際はわからないことが目立つということなのでしょうが,でもまだこんなことが証明されていなかったのか,ということばかりで半ば唖然とします。

実際,不整脈分野はCASTに始まり,1980年台のワルファリン大規模研究,AFFIRM,RACE,NOACの各RCT,RACE,から最近のCABANAにいたるまで,ある意味RCTによるエビデンスによって治療法が画期的に変化していった分野ではあります。

二昔?前までは心筋梗塞後にもリスモダン,心房細動にはまずリスモダン,そしてアスピリン(今でも見かける),という状況でした,

ではありますが,急性AF発作に何が最適か,アブレーションの適切なタイミング,潜在性心房細動の脳卒中リスク(限定的データはあり)など,日頃何気なく行っている医学的判断や処置が,じつはまだ系統だっては検証されていないということを改めて認識させられます。

裏を返せば,これだけまだ知りたいことがあるという,人間の飽くなき心理への探究心または科学の駆動力の表出とも言えます。表の項目全部が「ギャップなし」になったとしても,同じように新たなギャップが絶え間なく生じるのでしょう。

ギャップがなくなったら人類の科学的活動の終わりであり,知識のギャップは永遠に不滅とも言えます。

しかしこのknowledge gapsという切り口は実に興味深いです。こうした視点からものを見るようにしたいものです。

$$$ 春は眠い。諸手を挙げて爆睡中
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# by dobashinaika | 2019-04-18 07:11 | 心房細動診療:根本原理 | Comments(0)

症状がない不整脈をどうすべきか:欧州不整脈学会による無症候性不整脈の管理に関するコンセンサス文書 #CardioJapan

欧州不整脈学会(EHRA)から無症候性不整脈の管理に関するコンセンサスが出ています。


これまた膨大ですが,
‘Should do this’  「すべき」
‘May do this’     「してもよい」
‘Do not do this’    「してはいけない」
の3カテゴリーで分けているのも非常にフレンドリー

<無症候性心房期外収縮,非持続性心房頻拍>
・高頻度(>500回/日)心房期外収縮にたいしての長時間モニタリング:「すべき」(Expert consensus )

・高頻度心房期外収縮に対するリスク因子(高血圧,体重管理,睡眠時無呼吸)の管理と器質的心疾患の評価:
「すべき」(Expert consensus )

・短時間心房細動それ自体は抗凝固薬の適応ではない。高頻度(>500/日または20回未満のショートラン)では抗凝固開始を考えても良い:「してもよい」(Expert consensus )

・心房細動が記録さていない,低〜中等度心房期外収縮への抗凝固療法:「すべきでない」(Expert consensus )

<無症候性早期症候群(WPW含む)>
・間欠性デルタ波または電気生理学的検査で高リスクを示さないケースへのアブレーションなしのフォローアップ:「すべき」

・リスク層別化のための電気生理学的検査。高リスク例(副伝導路の不応期<240ms,早期興奮性心房細動あり,複数副伝導路)へのカテーテルアブレーション:「すべき」

・高強度またはプロのスポーツ選手,職業リスクの高い人へのアブレーション:「してもよい」

・アブレーションおよび無症候性を治療しないことのリスクを受容することに関する患者,家族との詳細な話し合い:「すべき」

<心房高頻度エピソード:AHRE(非持続性心房細動)>
(デバイス記録で最短5分,>心房レート180bpm,または少なくとも30秒の心房細動)
・AHREありは,なしに比べて脳卒中の高リスクと考える:「すべき」

・抗凝固薬投与までのさらなる詳細な検討(抗凝固薬の有効性は不明なので):「すべき」

・一部のCHA2DS2-VAScスコア>2の患者への抗凝固療法:「してもよい」

・AHREのみへの抗凝固療法:「すべきでない」

<無症候性心房細動>
・脳卒中リスクスコアに基づく無症候性心房細動の抗凝固療法(症候性同様):「すべき」

・高リスク(CHA2DS2-VAScスコア≧2)のスクリーニング:「してもよい」(Expert opinion )

・生活スタイルの変容:「すべき」

・真に無症候性か,あるいは心房細動に関連する何らかの症状があるのかを区別するための除細動:「してもよ
い」

・頻脈性心筋症予防のためのレートコントロール:「すべき」

・詳細なIC後の患者の好みに基づく限定的なアブレーション:「してもよい」(Expert opinion )

図はEHRAから以前も出ている心房細動患者へのABCパスウェイです。
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<心室期外収縮>
・高頻度の心室期外収縮(>500/日)を持つ患者の専門医への紹介(器質的心疾患,電気的異常同定のため):「すべき」

・非常に高頻度な心室期外収縮(>1日20%)への高密度なフォローアップ(突然死や心血管死の指標なので):「してもよい」

・頻脈性心筋症を合併した心室期外収縮への治療:「すべき」(Expert consensus )

・予後改善のための基礎心疾患の治療:「すべき」(Expert consensus )

<心室頻拍>
・無症候性非持続性心室頻拍に対する十分な評価(基礎心疾患,虚血,電気的異常)
「すべき」

・急性冠症候群ではない,LVEF<35%の持続性心室頻拍へのICD:「すべき」

・LVEF>40%の非持続性心室頻拍における基礎心疾患治療の最適化(特別な抗不整脈治療は必要なし):「すべき」

<頻脈誘発性心筋症>
・他の要因(心筋梗塞,弁膜症,高血圧,アルコール,薬剤性,ストレス性など)の除外:「すべき」

・心不全,心房細動(レートコントロール)の薬物療法:「すべき」

・持続性or反復性心房/心室性不整脈へのアブレーション:「してもよい」

<無症候性徐脈>
・無症候性の重症徐脈 or 6秒以上の心停止を認める失神患者への診断と治療:「すべき」

・完全に無症候性の徐脈への治療:「すべきでない」

<患者の視点>
・状況理解,可能な治療法,疾患の見通し,考えうるアウトカムに関する患者,家族への教育:「すべき」
・疾患と治療についての情報をハートケアチームから何度も,あるいは新しい戦略が導入されるときに伝えること:「すべき」
・治療に対する患者の意向と意思決定への参画:「すべき」

### これまたEHRAからの詳細で親切なコンセンサスの提示です。
無症候性の不整脈をどうするか,現場では悩むことも多いですが,3段階に分けて明確に教えてくれます。

高頻度の短時間心房細動もCHA2DS2-VAScスコア2点以上なら抗凝固療法考えても良いとなっていて,ASSERT試験の治験に基づくものと思われますが,ちょっと攻めすぎの感もあります。Expert consensus も多いですね。

しかしながら現場の参考には大いになります。

$$$ 本日は仙台,桜に雪です。
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# by dobashinaika | 2019-04-12 00:37 | 不整脈全般 | Comments(0)

今,抗凝固療法で何がわかっていないのかー不整脈におけるknowledge gapsを明らかにする:EP誌


欧州不整脈学会(EHRA)から,不整脈分野で未だに不明な事項,いわゆるknowledge gaps に関する詳細な検討が発表されています。

膨大ですが,私たちの診療基盤に多くの示唆を与える内容と思われます。

本日は「脳塞栓予防,抗凝固療法:戦略とリスク層別化」

【リスク層別化】
・広く認められ,シンプルなものとしてCHADS2スコア,CHA2DS2-VAScスコアあり
・低,中,高リスクに分類
・どのスコアも予測能は中等度(ハイリスク群のc-統計量は0.63)
・スコアの組み合わせをしても0.65
・バイオマーカー(血液,尿,画像)を加えても0.7未満
・多くのバイオマーカーに関する試験が行われているが高リスク群および低リスク群への適応が妥当かは不明
・既存のスコアは新リスク因子(肥満,睡眠時無呼吸,境界型高血圧,腎障害)は考慮されていない
・心エコーの各種因子の評価については限定的で一致を見ていない
・リウマチ製弁膜症,機械弁をのぞいた弁膜症の評価は一定しない
・知識の空白には,CHA2DS2-VAScスコア0点のリスク,1点の人の多様性,追加リスクの評価や数値化の困難さなども含まれる

【抗凝固戦略】
・脳卒中予防はNOACの登場で変化した。
・NOACはVKAよりも有効,安全で簡便
・観察研究からは,よく管理されたワルファリン治療(TTR>75%)はNOACとほぼ同等の有効性だが,重篤な出血はNOAC のほうが低い
・著明な弁膜症,腎障害(腎移植含む)におけるNOAC使用については不明
・薬理学的指標による小規模試験は進行中だがRCTなし
・RCTは皆CrCL<30(アピキサバンは<25)
・脳卒中後早期,あるいは頭蓋内出血進行中の患者に対するNOAC使用は証明されていない
・NOACのRCTからは頭蓋内出血既往例は除外されている
・特殊なタイプの心房粗動,心房頻拍については不明
・新しい治療オプションとしてXI因子阻害薬,テカファリンに関するRCTが進行中

【左心耳閉鎖術(LAAO)】
・LAAO vs, NOACのデータはなし
・LAAO後アスピリン投与が行われているが十分確立されていない
・現在表にあるトライアルの他に以下のトライアルが進行中
1) LAAO vs. NOAC
2) WATCHMAN)vs. リバーロキサバン
3) LAAO vs. エドキサバン(パイロット試験)
4) LAAO後の最適な抗血小板薬治療(SAFE-LAAC)
5) 複雑冠動脈病変へのDES挿入後患者におけるLAAO vs. 抗血栓薬
6) 頭蓋内出血後抗凝固薬回避(A3ICH)
7) AMPLATZER™ Amulet™による左心耳閉鎖(Amulet IDE)
・以上にもかかわらず,左心耳と脳卒中の関係性は依然として評価されていない
・左心耳の解剖,血栓形成,LAAO後の内皮リモデリング,血栓マーカーのインパクトについては不明

### よりシンプルにまとめます。
<リスク評価>
・CHADS2スコア,CHA2DS2-VAScスコアの予測能はそれほど高くない
・各種バイオマーカー,新リスク因子,心エコーの指標の評価一定しない
・各スコアの低リスク例への適応は不確か

<抗凝固戦略>
・著明な弁膜症,腎障害,脳卒中後早期,頭蓋内出血後,心房頻拍などへのNOAC使用については不明

<LAAO>
・LAAOがNOACより有効か,安全かのデータなし
・LAAO後のアスピリンは十分確立されていない
・左心耳と脳卒中の(厳密な)関係性は解明されていない
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### はっきり言ってこの記事はかなり素晴らしいです。

今何が「わかっている」のか,ビジネスにも絡むことでありさんざん喧伝されていますが,一方「何がわかっていないのか」をあきらかにすることは疎かになりがちです。というか,しかしながらというか,わからないことをか明らかにしてそこを解明していくことこそ科学の基本姿勢でもあります(そしてそれも資本主義の精神に実はマッチしているわけですが)。

しかしこうしてみると,現在はっきりと分かっていることは実は驚くほど少ないということがわかります。今知りたいことの多くは「限定的知識」でしかない感じですねえ。

でも極論すればどんな知識も「限定的」であり相対的であり,しかしその中で少しでもその限定の範囲を広げ深めていくことが医学であると思われますので,だからこそこうしたまとめが重要と言えます。

他の不整脈については後日紹介します。

$$$ 往診後立ち寄った近所の公園。満開です。
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# by dobashinaika | 2019-04-10 06:44 | 抗凝固療法:全般 | Comments(0)


土橋内科医院の院長ブログです。心房細動やプライマリ・ケアに関連する医学論文の紹介もしくは知識整理を主な目的とします。時々日頃思うこともつぶやきます。


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