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欧州心臓病学会の心房細動ガイドライン速報その6:ゴールベイストマネージメントの発想


シン・ESCガイドライン 付け足し

ESCガイドラインの特徴である,長く包括的な総論。締めくくりはGoal-based follow-upです。
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従来からの,心房細動管理の2大カテゴリーである「生命予後」と「症状」が柱ですが,それらを患者自身が有効化実装化すること,慢性期に「ケア」を行うこをともゴールとして付記されています。

### こういうのを包括的にテーブルにしてまとめるのって,ヨーロッパのひとは好きですよね,ワタシも好きですが,

患者さんへの説明のコツみたいなのもサラッと書かれていました。
・生命予後改善のための治療は,利益は直接実感できないので,患者さんに(そのことを)注意深く説明する必要がある

・リズムコントロール治療は,たとえ再発したとしても症状がコントロールされていれば成功

・期待される利益を心房細動管理の開始の時に各々の患者に説明することは,(患者に)根拠の無い期待感をいだかせずに,QOLが最適になるようにするポテンシャルがある。

ソーロンソーロンばかりででそろそろと言うかかかなり飽きてきましたが,この表と昨日の1枚目の5ドメインは抑えておくと良いと思われます。
特にゴールベイストの思想は核心です。2年前に出した拙著のキーコンセプトもこれでして,心房細動に限らずあらゆる医療に通じる技法としてStewartらの「患者中心の方法」があり,そのコアコンポーネントである「共通基盤の形成」が文字通り基盤です。

心房細動だったら,何のための薬か,アブレーションか,その治療目的を患者ー医療者双方で明確化し同じ土俵に乗るということ,これこそが究極のゴールといえます。この作業を怠ると,外来で「やっぱり怖くて飲めません」と患者さんが突然不安を抱くことになります。

昨今の週刊誌記事が話題となるのも,この「治療最初のゴールの確認」を医療者が怠っていることが根本にあると思われます。予後改善という実感の沸かないゴールをいかに身近なものとして,リスクを上回るものとして感じてもらえるか,そのコミュニケーション不足が背景と思われます。

抗凝固薬は血液サラサラ薬でなく「脳梗塞を押さえる薬」,降圧薬もコレステロールの薬も糖尿病の薬も,血圧を下げる,血糖を下げる,コレステロールを下げるだけの薬ではなく「脳卒中,心筋梗塞を押さえる薬(糖尿病の場合はその他の合併症も)ということを知らない患者さんは非常に多いと思われます。

もちろん医師の研鑽不足,人間のリスク認知バイアスなども重要なファクターですが。

$$$ 以前亀有に言った時に取った写真。連載完了とは寂しい限りです。
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by dobashinaika | 2016-09-07 23:05 | 抗凝固療法:ガイドライン | Comments(0)

欧州心臓病学会の心房細動ガイドライン速報その6:心房細動管理の統合的マネージメント


新ESCガイドラインのピックアップ最終回。

今回は,本GLを貫く基本コンセプトです。
これ,概念の羅列ですので臨床医にとってはつまらないまたは絵空事のように思えますが,良き戦略なきところに良き戦術なしと言われるように(今思いついた言葉),日々のルーチン的ワークをひとつの芯で貫くことで一貫性や継続性が生まれると思います。
ですので,最初のミッション確認は非常に大事です。

まず心房細動管理の俯瞰図として,以前EHRAからでていた5つのドメインの提示(やや改変)
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5ドメインとは
1)急性期レート/リズムコントロール
2)背景因子
3)脳卒中リスクと抗凝固療法
4)心拍数管理
5)症状管理とリズムコントロールの決定
です。ワタシ的には「スクリーニング」を最初に加えて6つのドメインとしています。

ちなみに特に臨床医として大切な緊急対応が必要な5つの場合としては以下です。
・血行動態不安定
・管理不能な心拍数
・薬剤で管理不能な症状のある徐脈
・重症狭心症/左室機能増悪
・TIA/脳卒中


次にこれらの管理を最適にするために4つの基本理念のようなものが提示されています。
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そしてこうしたコンセプチュアルな提言を文字通り統合するキーワードが”integrated"=統合的マネージメントです。
この概念を具体的かつ包括的にまとめたのが次の表です。
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###おそらくジェネラリストが作成委員にかなり食い込んでいるのでしょう。非常にジェネラルに重点の置かれた内容になっています。
こんなの知っててどうすんの?と言われそうですが,実は非常に重要な概念が含まれています。

それは,ワタシの言葉に還元すれば,もはや慢性期の心房細動は「治療」ではなく「管理」であるということ。そしてその管理は多職種チームが患者を取り囲むかたちで行うこと。
もっと言うと昔ながらの医師を頂点とする医療スタイルはもうやめよう,多様な人材,ツール,治療オプションを駆使して,あくまで患者参加型の医療をしようということです。

何の事はない,在宅医療の世界ではもはや共通認識となっているコンセプトですね。

たとえばここに認知症を持ち,服薬アドヒアランスの不良な方がいる。こうしたケースでは,それこそどのNOAを選ぶなんてことよりご家族,ヘルパーさん。訪問看護師さんの情報収集スキルやコミュ能のほうが何倍も大事です。

しかしなにもこのようなcomplexなケースだけでなく,50代でAFの発作が時々あって,たまに来院する低リスクのひとに対しても,同じように適用できます。こういう方でも低いながら当然strokeリスクはあるし,そのことを非常に気にしているかもしれない。あるいは脳卒中については全く知らないかもしれない。患者さんのリテラシーや置かれた状況をよく考えるのはシンプルケースでも同じと思います。特にリスクインパクトの高い抗凝固の要な場合は。

そのとき看護師さんや場合によってはクラークさんからの情報は思いの外重要であったりします。医師一人の対応では到底無理です。

最後に一番大事なゴールベイストフォローアップの概念があるのですが,いろいろ書き散らかしていたら疲れてきました。
また後でまとめます。

$$$ 昨日はこのコンサート。すごいドレス(どうすごいかはググってください),楽譜をipadで高速スクロール,超超絶技巧など,またやってくれました。ユジャ・ワン。
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by dobashinaika | 2016-09-06 23:17 | 抗凝固療法:ガイドライン | Comments(0)

欧州心臓病学会の心房細動ガイドライン速報その4:心房細動管理17のポイント


新ESCガイドラインピックアップの4回め
末尾についている,全体のショートサマリーです。
現場にとっては大変ありがたいです。

1.心房細動高リスク者ー特に脳卒中サバイバーと高齢者ーで心電図スクリーニングを行う

2.治療前に心電図を記録する

3.心電図,心エコー(ベースの心血管疾患サーベイ:高血圧,心不全,弁膜症など)を評価する

4.心房細動を自ら管理できるように,個別の情報を伝え,教育する

5.管理をより効果的にするためのライフスタイル変更を提案する

6.基礎心疾患の適切な治療をおこなう:弁形成,弁置換,心不全治療,高血圧治療

7.CHA2DS-VAScスコア低値または禁忌症例以外は抗凝固薬を使う

8.心房粗動も心房細動と同様に扱う。症状があれば峡部アブレーション

9.出血リスクを軽減する:血圧管理。抗血小板薬,NSAIDの使用期間,量の低減化。貧血の治療。出血源の治療。INR安定化,適正なアルコール

10.心拍数のチェックをし,緩徐なレートコントロールをおこなう

11.EHRA症状スコアを使っての症状を評価する。症状ある場合はレートコントロール,抗不整脈薬,除細動,アブレーションなどで症状緩和を図る

12. 安全性に基づいて抗不整脈薬を選択する。効果ない場合のアブレーション

13. 遺伝性疾患を疑わい場合の心房細動に関する遺伝情報検査をしてはならない

14. 心原性脳塞栓予防に抗血小板薬を用いてはならない

15 多職種チームでの意思決定なしに高リスク患者が抗凝固薬をやめてしまってはいけない

16 無症状の患者または永続性心房細動にリズム管理をしてはならない

17. 経食道エコーで心内血栓をルールアウトすることなく,抗凝固薬なしで除細動またはアブレーションをしてはならない

by dobashinaika | 2016-09-01 19:16 | 心房細動診療:根本原理 | Comments(0)

欧州心臓病学会の心房細動ガイドライン速報その3:頭蓋内出血後の抗凝固薬再開時期

新ESCガイドラインピックアップの続き。

頭蓋内出血を起こしてしまった後,抗凝固薬をいつ再開するかという興味深い問題です。
キーシェーマは次の通り
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だいたい4〜8週後に,頭蓋内出血低リスクの薬(というとNOACか)を投与とのことです。
ただ,このガイドラインの随所にでてくる”multidisciplinary team"つまり多職種チームでの関わりが重視されています。

機械的に4〜8週後に再開,と考えるのでなく,年齢,血圧,アルコール,出血の度合い,出血理由など多岐にわたる因子を考慮し,医師だけでなく,薬剤師や看護師(訪問看護師),理学療法士,ケアマネジャー,脳外科医,内科医などなど多職種を交えての意思決定が説かれています。

出血の原因が生理学的要因(高齢など)だけでなく,転倒,薬剤の飲み過ぎ,併用薬(抗血小板薬)などが絡みますので,医師だけで決定するのは危険かもしれません。

なんかこのガイドラインを眺めていると,もはや抗凝固療法(に限らず全ての医療,特に慢性期医療)では医師をトップとする権力勾配は,成り立たなくなりつつあることを痛感します。

最初から4〜8週とかなり幅広くレンジが取られているのも,いろんな因子により開始時期に差異があることによるものと思われます。
個人的には一番大切なのは血圧と思われます。血圧を十分下げられなければ再開は怖いところです。

私なら,抗凝固薬飲んでて大出血してしまったら,今なら左心耳切除術をお願いしたい感じですが。

$$$ お気に入りの場所
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by dobashinaika | 2016-08-31 23:05 | 脳卒中後 | Comments(0)

欧州心臓病学会の心房細動ガイドライン速報その2:脳梗塞後の抗凝固薬開始時期

ESCの新ガイドラインから
脳梗塞/TIA後の抗凝固薬の開始時期についてのまとめ図です。

脳梗塞の重症度に応じて開始時期が異なるのがポイントかと思います。
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・TIA→1日後
・軽症脳梗塞→3日後
・中等症→6日後
・重症→12日後

です。

抗凝固薬としてはNOACがVKAよりも好ましい(推奨度I, エビレベルB)となっています。

重症度はNIHSSに基づいています。
NIHSSについてはこちらのサイトを参照ください。

もう一つのポイントは出血性梗塞がないかどうかをよく確認です。

関連ブログはこちら
心原性脳塞栓後早期のNOAC投与は安全か
心房細動脳梗塞後の抗凝固薬再開は4〜14日後がベスト

$$$ きょうのニャンコ 
散歩してたらこんなに擦り寄ってきました。離れがたくなりました。
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by dobashinaika | 2016-08-29 22:33 | 脳卒中後 | Comments(0)

4年ぶり改訂、欧州心臓病学会の心房細動ガイドライン速報;その1

欧州心臓病学会(ESC)から、欧州心胸部外科学会とコラボで心房細動管理ガイドライン2016年版が発表されました。ちょうどローマで開催されている学会に合わせての発表です。
前回の改訂が2012年のフォーカスアップデートですので4年ぶりの改定です。

2016 ESC Guidelines for the management of atrial fibrillation developed in collaboration with EACTS
DOI: http://dx.doi.org/10.1093/eurheartj/ehw210 ehw210 First published online: 27 August 2016


ざっと見の印象ですが、まず抗凝固療法の各論に行き着くまで多数の紙面が総論に割かれている点です。
基本コンセプトは Integrated management(統合的管理)です。

すでにEHRAからシェーマが出ていますが、戦術として心房細動の管理を、急性期、背景因子の管理、脳卒中リスクの評価、レート管理、症状管理の5ステップにまとめ、その根底となる戦略(コンセプト)には、患者の参画、多職種チーム、非専門家の役割、テクノロジーツール、の4アイテムの活用です。また5ステップごとに系統だったゴールが示され、ゴールに向かっての管理というコンセプトも明確化されており、さながらガイドラインが心房細動という大きな山登りの道標の趣を呈しています。

各論では、抗凝固療法の適応や薬剤選択は大筋で変わりないものの、シェーマがシンプルになり、また脳出血後の再開、3剤併用療法、左心耳閉鎖術などが詳述されるようになっています。

まずは知りたさ緊急度優先で抗凝固療法関係の目立ったものをまとめました。総論は膨大かつ重要なので明日以降じっくり紹介します。

抗凝固療法の適応は基本変わっていません。機械弁、僧帽弁狭窄症はVKA(ワルファリン)、バスク0点は抗凝固なし(禁忌)、1点は考慮。2点以上はNOAC、2番手がVKA、抗凝固薬禁忌の場合の左心耳閉鎖術がIIb。
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出血リスクはHAS-BLEDだけでなく、HEMORR2HAGES、 ATRIA、 ORBIT 、ABCの各スコアを網羅しています。
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急性脳梗塞、脳出血後の抗凝固療法についても詳細な投与方法示されています(これは後日熟読したらアップします)。

急性冠症候群時PCI後の抗血栓療法は、
1)低出血リスク例:トリプル(OAC+DAPT)6ヶ月⇨デュアル(OAC+抗血小板薬1剤)6ヶ月⇨1年後以降はOAC単独
2)高出血リスク例:トリプル(OAC+DAPT)1ヶ月⇨デュアル(OAC+抗血小板薬1剤)1年後まで⇨1年後以降はOAC単独
*1年後以降、冠動脈病変が高リスクの場合はアスピリンかクロピドグレルどちらか併用
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待機的PCI後の抗血栓療法は、
1)低出血リスク例:トリプル(OAC+DAPT)1ヶ月⇨デュアル(OAC+抗血小板薬1剤)6ヶ月まで⇨6ヶ月後以降はOAC単独
2)高出血リスク例:トリプル(OAC+DAPT)1ヶ月⇨デュアル(OAC+抗血小板薬1剤)1年後まで⇨1年後以降はOAC単独
*1年後以降、冠動脈病変が高リスクの場合はアスピリンかクロピドグレルどちらか併用
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待機的OCIの場合トリプルは1ヶ月でいいのですね。またほとんどの場合で1年後はOAC単独(冠病変によっては抗血小板薬1剤追加)です。

堅固な石垣を土台とした壮麗な城のような趣(褒めすぎか)ですね。ただ作成方法は完全なGRADE準拠ではなさそうですし、COIが明示されていないように思いました(見落とし?)。
末尾にサマリー17ポイントを記載されているのもありがたいです(これも後日検討)。

追伸:それにしても良い世の中になったものです。学会というのは参加できるセッションは自分が興味あるものばかりになるので,その分野の見聞だけは深まりますが,全体の俯瞰はできにくいですね。一方ネットが普及したので(とくにESCはそうですが),部屋に居ながらにして学会全体のトピックスを俯瞰することができます。特定の分野の深い見識を得たいなら学会参加,広い見識を得たいならむしろネットのほうが良いかもです。
by dobashinaika | 2016-08-28 17:48 | 抗凝固療法:ガイドライン | Comments(0)

高齢者における抗血栓症法に関するエキスパートの意見:EHJ誌

Antithrombotic therapy in the elderly: expert position paper of the European Society of Cardiology Working Group on Thrombosis
Felicita Andreotti et al on behalf of the ESC Thrombosis Working Group
European Heart Journal doi:10.1093/eurheartj/ehv304


ESCから高齢者の抗血栓療法のエキスパ−トポジションペーパーがでています。
抗凝固療法のところを簡約します。

<イントロ>
・75歳以上を'elderly'とよぶ
・各種データベースやリスクスコアは65歳で切っている

<虚血と出血のリスクに関する年齢のまとめ>
・CHA2DS-VAScスコア1−2の人も3点以上の人も、HAS-BLEDスコアの高い人も低い人も年々イベントリスクは増加
・抗凝固療法はそれらイベントリスクを全て下げる

<抗凝固薬>
【ビタミンK阻害薬】

・年齢とともに出血は増加
・米国の高齢者の薬物相互作用による救急入院99,628例のうちワルファリン関連は3分の1
・RCTでのワルファリン大出血率は75歳未満で1.7−3.0%、75歳以上で4.2−5.2%
・同じINRのに到達するのに若年者より低用量で良い
・上昇したINRを正常化させるには時間が必要
・75歳上のNVAF対象のBAFTA試験では、アスピリンより脳卒中/全身性塞栓症予防効果ぬ優れ、出血は同じ
・静脈血栓塞栓症でも適応あり。禁忌なし
・若年者よリ、低用量でタイトな管理が必要

【直接トロンビン阻害薬:ダビガトラン】
・RE-LY での脳卒中/全身性塞栓症予防:150x2では年齢に関係なし
・頭蓋外出血;110x2で顕著に減らすが75歳以上でなその傾向はない。150x2では75歳以上で明らかに増える
・頭蓋内出血:年齢にかかわらず減る
・消化管出血:150x2で増える
・腎機能低下:CrCL30未満→米国では75x2。欧州では80歳以上では110x2
・年齢だけではダビガトランの使用禁忌にはならないが、血中濃度、引いては虚血や出血に影響する
・150x2に変わって110x2を考慮するときは年齢75〜79であり、欧州では80歳以上で推奨される

【直接Xa阻害薬:リバーロキサバン、アピキサバン、エドキサバン】
・ROCKET-AF試験
・44%は75歳以上
・脳卒中/全身性塞栓症;ワルファリンに非劣性
・大出血:ワルファリンと同等
・頭蓋内出血、致死的大出血は減少
・消化管出血は増やす
・上記の関係に関し年令による交互作用なし

・ARISTOTOLE
・31%が75歳以上
・脳卒中/全身性塞栓症、大出血、頭蓋内出血、死亡率共ワルファリンに勝る
・80歳以上の13%にも同様の結果
・消化管出血はワルファリンとくらべてコモンではない

・ENGEGE AF-TIMI48
・40%が75歳以上
・脳卒中/全身性塞栓症は減らす
・大出血、頭蓋内出血減らす
・消化管出血は60mgでより多い
・30mgは虚血性脳卒中を増やすが、死亡率、消化管出血は減らす
・これらの結果は異なる年齢のサブグループでも同じ

・CrCL15超の例では、我々はワルファリンよりも直接Xa阻害薬を勧める
・頭蓋内出血は少ない、全体の有効性、安全性が良い。モニターの必要がない
・薬剤相互作用、消化管出血の可能性、腎機能低下例における減量には注意


### 75歳以上についての言説ととらえましょう。ダビガトランについては明確なことは言っていないようです。
その他のXa阻害薬は、本試験と75歳以上の結果がほぼ変わりないことから、概ね75歳以上でもNOACを推奨のようです。
ただ85歳以上となると各RCTでも数%しかエントリーされておらず、しかしながら実臨床では大変多くなってきており、この論文を読んだとしても悩むところです。

また高齢の方では、認知機能と転倒リスクが常に問題となるので、そのことについても言及して欲しかった気がします。

個人的には、要するにエビデンス的にはXa阻害薬でも良いが、85歳以上、認知症、高転倒リスクについては一律な解答はない。そうしたComplicatedなケースでない場合はNOACで良い、というスタンスを取って行きたいと思います。

$$$ ブラタモリで紹介された、当院すぐ裏手の四ツ谷用水の洗い場あと。見事に階段上になっています。
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そして今日のにゃんこ
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by dobashinaika | 2015-07-14 22:11 | 抗凝固療法:ガイドライン | Comments(0)

European Heart Journalの「2014年の心房細動カテーテルアブレーションのまとめ」

European Heart Journalの「2014年の心房細動まとめ」2
心房細動アブレーションについての記載を追加します。

The year in cardiology 2014: arrhythmias and device therapy
Hein Heidbuchel et al
European Heart Journal 1月3日


<Ablation therapy>
・いくつかの重要なトライアルあり

・RAAFT2試験:
第一選択としてのアブレーションと抗不整脈薬との比較
127人のランダム割付
再発率;アブレーション(54%)のほう抗不整脈薬(72%)より低い

・SARA試験:
持続性心房細動においても抗不整脈薬に比べ高い非再発率

・STAR AF2試験:2014年ESCホットラインセッション
追加線状焼灼やフラグメントな電位焼灼じゃ肺静脈隔離を超えるアウトカムを得られない

・AMICAT試験(n=212):2014年ESCホットラインセッション
アブーレション8週間のアミオダロン追加投与は心房性頻拍の再発を減らさない
入院と除細動は減らす
短期的アミオダロン投与が長期的再発を減らすことは疑問だが、晩期再発の主メカニ済みが早期の肺静脈再伝導であることを示唆する所見である(したがって永続的な肺静脈隔離が必須)
同時により広範囲の心房疾患を持つ患者の持続性心房細動に対するアブレーションにおいて上記ハイブリッド治療が継続されるべきかは論議がある

・SMART-AF試験:
アブレーションカテーテルの良好な接触力が再発を減らすことを報告した最初の試験

・ADVICE:
明らかな肺静脈隔離後にアデノシン投与下で伝導した場合の追加アブレーションは初回アブレーション後の症候性心房細動からの非再発率を増やす

・The ESC co-ordinated AFアブレーションパイロット試験
 欧州10カ国72センターの心房細動アブレーション1300例の1年追跡試験
抗不整脈薬なしの成功:40.7%(43.7%発作性、30.2%持続性、36.7%長期持続性)
発作性の初回成功率は70%以上でありこの結果の偏り(ほかは再発が多いこと)についての説明は今後の研究を要する
全体の57.4%しか長時間ホルター(24時間以上)を繰り返し受けていない
26%に無症候性が見られるので術後モニターの違いが考えられる
再アブ率18%
大きな合併症1.7%
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・非透視下マッピング技術やMRガイダンス手技が開発されているが、透視問題は未だに重要

### 昨年はアブレーション関連の論文はだいぶ端折りました。なのでこのサマリーはたいへんためになります。
もはや抗不整脈薬に代わって第一選択として良いのか、持続性にも積極的に適応して良いのか、肺静脈隔離に追加の焼灼がほんとうに有効なのか、術後アミオダロン投与が有効なのか。まだまだ疑問はつきませんが
方向性は示されてきいるようなんですね。

$$$校舎に映える朝焼けとモーニングムーン
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by dobashinaika | 2015-01-09 21:34 | 心房細動:アブレーション | Comments(0)

ケアネット連載 「抗血小板薬、抗凝固薬併用の最新ステートメント(欧州心臓病学会)」更新いたしました。

ケアネット連載 〜Dr. 小田倉の心房細動な日々~ダイジェスト版~更新いたしました。

今回は「抗血小板薬、抗凝固薬併用の最新ステートメント(欧州心臓病学会)」です。
以前のブログの内容を明快なスライドで紹介しております。

ご笑覧ください。
http://www.carenet.com/series/afjournal/cg001089_0012.html(無料登録必要)


ブログの方はこちら
http://dobashin.exblog.jp/20140860/
by dobashinaika | 2014-10-04 21:33 | 抗凝固療法:抗血小板薬併用 | Comments(0)

ヨーロッパの心房細動診療大規模登録研究 (EORP-AF Pilot registry);EHJ誌

Prognosis and treatment of atrial fibrillation patients by European cardiologists: One Year Follow-up of the EURObservational Research Programme-Atrial Fibrillation General Registry Pilot Phase (EORP-AF Pilot registry)
Gregory Y.H. Lip et al
Eur Heart J (2014)doi: 10.1093/eurheartj/ehu374


疑問;ヨーロッパでの心房細動診療の現況はどうなっているのか?

方法:
・欧州心臓病学会所属9カ国の循環器医から、心電図上心房細動を呈した連続患者を登録
・3119例
・1年間追跡(2012年はじめ〜)
・評価項目:症状の進行、抗凝固薬、リズムコントロールとレートコントロール、死亡率および脳卒中/TIA/全身性塞栓症の規定因子

結果:
1)多くは無症候性:76.8%

2)発作性または持続性では症候性が普通

3)主症状は動悸、易疲労感、息切れ、

4)抗凝固薬使用率:〜78%:ビタミンK阻害薬(VKA)68.1%、NOAC 10.5%、抗血小板薬29.0%

5)登録時VKA例の84%はVKAのまま

6)登録時NOACの86%はNOACのまま。11.8%はVKAに変更。1.1%は抗血小板薬に変更

7)ジギタリスはレートコントロールに多数使用されている
ジギタリス49.0%、β遮断薬67.4%

8)リズムコントロール症例中;電気的除細動9.7%、薬理学的除細動5.1%、カテーテルアブレーション4.4%

9)死亡率:5.7% (心血管死70%)

10) 再入院411人 :理由=心房性不整脈、心不全

11)予後規定因子:
死亡+脳卒中/TIA/全身性塞栓症=年齢、CKD、心不全、悪性腫瘍、小出血
死亡のみ=年齢、CKD、TIA、COPD、悪性腫瘍、小出血、利尿薬
スタチン使用は低死亡率に寄与
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結論:このデータは、ヨーロッパの循環器医におけるESCの新しいガイドライン発表後初の心房細動診療に関するデータである。
全体としては抗凝固薬使用率は高いが、継続性においては問題があり、多くの例でそれまでの抗凝固薬を踏襲している。抗凝固薬の使用率が高いにもかかわらず、1年間の死亡率、合併症率は依然として高く、特に心不全と再入院が問題。

### 以前同試験の性差に関するアウトカムだけ紹介しましたが、今回は1年後のごろーアップの全データで、今開催中のESCで発表されたものです。

日本のJ-RHYTHM-Registryと比較したくなります。J-RHYTHM-Registryの方は2009年時点の結果でワルファリンのみですが、抗凝固薬投与率は87.3%でした。
https://www.jstage.jst.go.jp/article/circj/75/6/75_CJ-10-1119/_pdf

またJ-RHYTHM-Registryの死亡率はPT-INR別に見て、2年間で非warfarin群3.4%,PT-INR≦1.59群3.0%,1.6~1.99群2.7%,2.0~2.59群1.8%,2.6~2.99群1.7%,≧3.0群5.3%ですので、ESCより相当低いことがわかります。
https://www.jstage.jst.go.jp/article/circj/77/9/77_CJ-13-0

対象年齢も68〜69歳でほぼ同じですが、やや違うのはリスクで、J-RHYTHM-RegistryのCHADS2スコアは0〜2点だけで77%くらいになりますが、EORP-AFではCHA2DS2-VAScスコア2点以上が80%でした。(スコアの基準が違いますが)

また、興味深いのは、2012年時点のデータではありますが、NOACは10%くらいで抗血小板薬がなんとまた30%弱に使われていることでしょうか。
いろいろ検討すべき内容が豊富な研究と思われます。
by dobashinaika | 2014-09-02 21:28 | 心房細動:リアルワールドデータ | Comments(0)


土橋内科医院の院長ブログです。心房細動やプライマリ・ケアに関連する医学論文の紹介もしくは知識整理を主な目的とします。時々日頃思うこともつぶやきます。


by dobashinaika

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