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無症候性心房細動の24時間以上持続は脳卒中リスク増加と関連有り


疑問:無症候性心房細動がどのくらい続いたら脳塞栓リスクが増えるのか

方法:
・ASSERT試験登録患者2580人
・ペースメーカー,ICD,65歳以上の高血圧,心房細動なし
・虚血性脳卒中リスクにおける無症候性心房細動の影響をCoxモデルで評価
・6分以内の心房細動は除外
・追跡期間:2.5年

結果:
1)6分以上6時間以下:18.8%,6−24時間:6.9%,24時間以上10.7%

2)24時間以上持続群が引き続く虚血性脳卒中と有意に関聯あり:ハザード比3.24。95%CI1.51-6.95.p=0.003

3)6−24時間の持続と脳卒中リスクは関聯なし
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結論:無症候性心房細動の24時間以上の持続は脳卒中リスク増加と関聯あり

### ASSERT研究はペースメーカー,ICD患者の無症候性心房細動を追跡評価する研究で,主論文は既に発表されています。
無症候性心房細動はこうした方の約10%に起こり,心房細動がある人はない人の2.5倍の脳梗塞発症率とのことです。

ただし心房細動の持続時間と脳梗塞の頻度を比較したのはこれが初めてでした。
やはり短時間の心房細動であればほとんど脳梗塞は来さないとのことです。
以前発症48時間以内に除細動を施行した場合の脳塞栓率(抗凝固なし)も1%程度あるとの報告を読みましたが,こうした場合おそらく24時間以上続く例なのではないかと思われます。

反対に,数分とか数時間の心房細動であれば,抗凝固薬は必要ないともいえますので,ホルター心電図などで数分,数時間のものなら抗凝固はちょっと保留してもいいかもしれません。ただし無症候性はわからないから無症候性なので,無症候性ながら1回でも心房細動が見つかっている症例で抗凝固をどうしようか迷っている場合は,ホルター心電図を頻回に考える必要があるかもしれません。ループレコーダーなども今はありますが。

$$$ 今週の片手袋。ポスト上もよくあるタイプです。
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by dobashinaika | 2017-03-07 18:17 | 心房細動:診断 | Comments(0)

60歳,CHADS2スコア1点の無症候性心房細動に抗凝固薬は必要か:Circ誌のケーススタディ

How to Manage Occult Atrial Fibrillation Detected on Long-Term Monitoring
Gregory Y.H. Lip
Circulation. 2016;133:1290-1295


Circulation誌から,Lip先生による症例検討です。

症例:60歳,男性。無症状。拡張型心筋症。CRT-D装着
デバイス点検の際,30%の時間帯で高レートエピソードあり。
血圧124/80。糖尿病始め他の心血管リスク無し。左室駆出分画40%。左房径42mm
CHA2DS2-VAScスコア1点。HAS−BLEDスコア0点
アスピリン,ACE阻害薬,スタチン,β遮断薬服用
この患者をどう管理するか?抗凝固すべきか?心房細動は負担となるか?

原因不明の脳塞栓症をcryptgenic strokeと呼びますが,その多くが無症候性心房細動由来と考えられており,様々なモニターデバイスを用いることで,明らかになる可能性が示唆されています。

それを裏付けるエビデンスが数多く紹介されています。

Take−home Messagesは以下のとおり
・無症候性心房細動はよくあるもので,かつ症候性心房細動よりも予後が悪い
・デバイス(植込み型ループレコーダーあるいは最新のペースメーカー)で診断される心房細動もよく認められ,無症候性で短いエピソードの心房性不整脈が明らかとなる
・最近エビデンスはそうした潜在性の心房頻脈が脳卒中/全身性塞栓症のリスクを増加させることを強く示唆する
・脳卒中のリスク因子がある場合,ビタミンK阻害薬(TTR70%以上)またはNOACが良い。

この症例の対処としては,
・CHA2DS2-VAScスコア1点なので,2014年ACC/AHAガイドラインからは抗凝固薬,アスピリン,抗凝固なしのいずれかが勧められる。これに対しESCガイドラインでは患者の好みを考慮の上で抗凝固薬が勧められている(推奨度IIa)。

討論と相談の末,この患者は脳卒中防止を切望しNOAC,とくにアピキサバン5mg1日2回による治療が開始された。アスピリンは中止となった。
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### 60歳,CHA2DS2-VAScスコア1点,CHADS2スコア1点,無症状,拡張型心筋症(CRT-D植え込み)で心房細動が見つかったケースです。日本のガイドラインではダビガトラン,アピキサバンなら推奨,リバーロキサバン,エドキサバン,ワルファリンなら考慮可となります。こうした場合は,スコアに現れないリスクをもう少し細かく診るというのが私の方針です。心不全でも拡張型心筋症で,EFや左房径こそまずまずですが,将来的にも心機能低下が予想されます。また心房細動が1日の30%と多くの負担となっています。

私が主治医であればやはり一応ワルファリンまたはNOACについて患者さんに提案すると思います。いかがでしょうか?

$$$ 近くの小学校校庭を悠々と散歩するネコ
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by dobashinaika | 2016-03-30 23:08 | 抗凝固療法:適応、スコア評価 | Comments(0)

ケアネット更新しました:75~76歳の一般住民が2週間1日2回心電図を取れば3%で心房細動が見つかる

ケアネット連載 〜Dr. 小田倉の心房細動な日々~ダイジェスト版~更新いたしました。

今回は
「75~76歳の一般住民が2週間1日2回心電図を取れば3%で心房細動が見つかる」
スウェーデンのコホート研究で、高齢者だとかなり高い確率で無症候性心房細動が見つかるというものです。

普段のブログをほぼそのまま掲載させていただくため、心房細動の早期発見とは一見無関係な、抗凝固薬の適応について書いたりしています。よろしければご参照ください

http://www.carenet.com/series/afjournal/cg001089_0029.html?keiro=index
(要無料登録)
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by dobashinaika | 2015-05-27 23:07 | 心房細動:診断 | Comments(0)

無症候性心房細動の死亡率は症状のある心房細動の2倍:AJM誌

Asymptomatic atrial fibrillation: clinical correlates, management and outcomes in the EORP-AF Pilot General Registry
Giuseppe Boriani et al
Am J Med. 2014 Dec 19


背景:心房細動はしばしば無症候性であるが、そのアウトカムにはさらなる特徴付けが必要である

目的:EurObservational Research Programme – Atrial Fibrillation (EORP-AF) パイロットージェネラルレジストリにおいて、無症候性および症候性心房細動患者の臨床所見、管理、アウトカムを調べる

結果:
1)全3119例:無症状(EHRA I)1237例39.7%

2)症候性のうち963例51.2%はマイルドな症状 (EHRA II)、重症あるいは身体障害者レベルの症状 (EHRA III~IV)は919例48.8%

3)無症候性心房細動と関係のある特徴:男性 (オッズ比1.630)、高齢 (OR1.019)、心筋梗塞の既往 (OR1.681)、運動制限 (OR1.757)

4)完全な無症候性(現在も過去も無症状)は520例16.7%。男性、高齢、心筋梗塞の既往と関連。これらの患者は抗凝固薬の適切処方が少なく、アスピリンが多い

5)無症候性例の死亡率(1年間):症候性の2倍:9.4 vs. 4.2%, p<0.0001。高齢、合併症(CKD, 慢性心不全)と関連あり

結論:無症候性心房細動は、日常循環器診療ではコモン。高齢者、有合併症患者に多く、抗血栓リスクも持つ。1年間の死亡率は症候性に比べ高い

### GISSI AF試験でも、無症候性のほうが重症者が多いことが報告されています。抗凝固療法がおろそかになりやすいからと言われているようです。無症候者率は49.5%
http://dobashin.exblog.jp/13144841/

ペースメーカー患者対象のASSERT研究でも同様。この試験でも無症候者率は10.1%
http://dobashin.exblog.jp/14403465/

ちなみにEHRA分類とは、Iが「無症候性」、IIが「マイルド」=日常正確に影響しない、IIIが「シビア」=日常生活に影響する、IVが「障害あり」=正常な日常生活を継続できない、です。

無症候性でも、CHADS2スコアなどにしっかり従うようにとのメッセージですね。

$$$今日のにゃんこ。どこかにいるはず。
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by dobashinaika | 2014-12-26 22:03 | 心房細動:診断 | Comments(0)

長時間モニターすると原因不明の脳卒中の何割に心房細動がみつかるのか?:NEJM誌から2論文

NEJM 6月26日号

Atrial Fibrillation in Patients with Cryptogenic Stroke
David J. Gladstone et al
N Engl J Med 2014; 370:2467-2477


疑問:原因不明の脳卒中のうちどのくらいが心原性なのか?

P:55歳以上で心房細動がなく、過去6ヶ月以内の原因不明(ホルター心電図後も)の脳卒中/TIA患者

E:30日間のイベントレコーダー(介入群)

C:従来のホルター心電図(対照群)

O:一次エンドポイント:新たな心房細動の同定(30秒以上、登録90日以内)、二次エンドポイント:2.5分以上の心房細動と90日後における抗凝固療法

結果:
1)30秒以上の心房細動;介入群16.1%(45/280)vs. 対照群3.2%:絶対リスク差12.9%;P<0.001、NNS(number neeeded to screen)=8
2)2.5分以上の心房細動;介入群9.9%(28/280)vs. 対照群2.5%:絶対リスク差7.4%;P<0.001
3)90日までに抗凝固薬を処方された例;介入群18.6%(52/280)vs. 対照群11.1%:絶対リスク差7.5%;P=0.01
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結論;55歳以上の原因不明の脳卒中においては、発作性心房細動は普通。30日間の非侵襲的なホルター心電図は、通常の24時間ホルター心電図に比べ5倍の心房細動を同定死、抗凝固薬処方を2倍増やした。

### 今週号のNEJMは、昨日の当ブログに呼応するかのように心房細動の診断に関するペーパーが2題掲載されています。

まずはEMBRASE試験から
30日間イベント・モニターはBraemar社のER910AF Cardiac Event Monitorという1チャネルモニターを使用していますね。上半身2ヶ所に電極を装着して、RR間隔が不整の時をセンスして、遠隔転送されるシステムのようです。こちらを参照ください。
http://www.davismedical.com/Braemar-ER910-Cardiac-Event-Monitor---1-Channel634745048942864134

これを使うと、従来の24時間ホルターよりも5倍の16%の頻度で心房細動が見つかるとのことです。
この研究の臨床的意義は大変大きいです。なぜなら脳卒中語の抗血栓療法は通常なら抗血小板薬ですが、心原性脳梗塞であれば抗凝固薬でないと再発は防ぎきれないからです。ということで、特に心原性脳塞栓を疑わせるような、急発症で比較的大梗塞の場合は、何が何でも心房細動を同定したいところだと思います。

実際には、臨床的に心原性脳塞栓を疑わせれば心房細動の記録がなくても抗凝固薬が処方されるケースも多いと思いますが、しっかりと証拠があるに越したことはありません。

デバイスが簡便であれば、これから実用化されるものと期待されます。ただし正確な心房細動の持続時間までは検討していませんし、30分秒以上が1回でも記録されれば、試験はそこで終了と思われますので、そこはlimitationかと思われます。

もう一つのCRYSTAL AF試験の方は、メドトロニック社の植込み型モニターを皮膚の下に植えこんで記録するというものです。これは心房細動の記録はほぼ完璧かと思われます。これを12ヶ月植えこんで30秒以上の心房細動を同定するというものです。
http://www.medtronicdiagnostics.com/us/cardiac-monitors/Reveal-XT-ICM-Device/index.htm
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こちらは6ヶ月までで植え込み群は8.9%(対照群1.4%)、12ヶ月までで植込群12,4%(対照群2.0%)に心房細動が見つかっています。対象は40歳以上の90日以内に生じた原因不明の脳卒中/TIA症例です。

両試験とも対照群を置いたところが、これまで研究とは格段の信頼性があるわけですが、両者の発見率の違いが気になりますね。
Editorialでは、年齢の違いに由来するのではと言っています。
http://www.nejm.org/doi/full/10.1056/NEJMe1405046

ただし、侵襲性やコストの面から、実際には植込み型モニターは普及しないだろうと思います。
また、Editorialによれば、CRYSTAL AFの方で3年まで見た場合の同定率でも3割位とのことですから、原因不明の脳卒中は、体の中にモニターを植えこんでさえ多くの人で原因がわからないことになります。
もっと別なマーカーが必要のように思われます。

もうひとつ,この2論文を読んで再考が必要と思うのは、カテーテルアブレーション後のフォローアップです。実は24時間心電図だけでは全然甘いのではないかと思わせられます。

これまでの脳卒中後の心房細動同定に関するシステマチックレビューはこちら
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/24385275?dopt=Abstract

無症候性心房細動のスクリーニングデバイスの総説はこちら
http://dobashin.exblog.jp/14712190/

植え込み型モニターの論文
http://dobashin.exblog.jp/14712190/
by dobashinaika | 2014-06-26 18:59 | 心房細動:診断 | Comments(0)

若年者の心房細動は早いうちから治すべきか?賛成派の意見:EHJ誌

European Heart Journal 7月2日号
昨日の続きで、若いうちからリズムコントロールに介入すべきかの、pro=賛成意見です。

Early management of atrial fibrillation to prevent cardiovascular complicationsStanley Nattel et al
Eur Heart J (2014) 35 (22): 1448-1456.


【イントロ】
・心房細動は進行性の病気
・発見されたとき、40%は持続性:無症候性であることと器質的変化が心房細動発症に先立つため
・早期発見早期治療が、心房細動の進行を防ぐはず

【短期リスクと心房細動進行の予測】
・発作性→持続性化率:年間5%、14年で77%
・若い、器質的心疾患のない発作性はこれよりおそい
・高齢で、器質的心疾患のある人は早い
・リスク多い人ほど進行早い
・適度な運動は進行を遅くさせる
・競技選手のような過度な運動は早める

【リモデリングの基礎】
・心房細動の促進には、構造的、電気的、自律神経的リモデリングが関与
・拡張期に筋小胞体から出るCaイオンの異常流出がDADをきたすことが機序

【心房細動関連リモデリングの基礎メカニズム】
省略

【基礎的メカニズムと臨床との関係】
・心房細動の頻度、持続時間、時間帯が、リモデリングに影響する
・心不全、高血圧などがリモデリングに影響する
・永続性に移行しない患者では、初期の状態から限定的にしか進行しない、または遺伝的にリモデリングから守られる因子を有しているのかもしれない

【抗リモデリング治療】
・抗不整脈薬には確固たるエビデンスなし
・アミオダロンにデータあり
・血行動態的な負荷軽減(僧帽弁交連切開など)は有効
・左房圧負荷軽減(CRTなど)は有効
・RAS阻害薬はネガティブデータ
・近年MRIでRAS径阻害薬の効果をみる研究あり
・microRNA修飾はリモデリング四郷の新しい治療になるかもしれない
・閾値下低レベルの迷走神経刺激が有効との動物実験あり

【エビデンス】
・レートコントロールと比較して、抗不整脈薬によるリズムコントロールは、一つを除きすべて優位性なし
・日本のJ-RHYTHM試験は唯一、リズムコントロール群で一次エンドポイントが有意であったが、発作性で合併心疾患がない例対象
(筆者注:この試験の一次エンドポイントは「治療への忍容性」を含む。これをのぞいたハードエンドポイントでは有意差なし)
・一旦構造的変化が起きたらリバースは難しい。なので早期介入が有効
・ATTENA試験ではドロネダロン群が、対照群より結果良好
・PALLAS試験ではドロネダロン群が死亡率高い
・ATTENAは発作性、PALLASは永続性対象

【進行中の試験】
・従来の分類ではダメなので、疫学に基づく分類が提唱されている
・左房径、左房機能、バイオマーカー、MRIイメージなどの評価が助けとなる
・CABANA試験とEAST試験の2つが、アブレーションと抗不整脈薬の予後比較の前向き試験として進行中

【早期発見早期治療は合併症を防げるのか?】
・心房細動を有する例は予後が悪い
・各種リスク因子が一過性心房細動に絡む
・一過性の心房細動は、何らかの合併症のサインである
・脈を撮ったり、新たなデバイスによる早期発見ができる
・ASSERT試験は、植込み型レコーダーで心房細動の新規発症の早期診断を見たもの
・同様のCRYSTAL-AF試験やREVEAL-AF試験が進行中

【結論】
・基礎疾患と心房細動の両者がリモデリングを促進し、発作性→持続性へと進行させる
・早期介入がこの進行を防ぐ可能性あり
・いまだ進行予防薬に関し有効性を示した報告なし:介入が遅いか対象が悪いのか
・進行中の試験では可能性を示す薬剤あり
・これまで数多くの試験が失敗だったのは、介入が遅すぎたから
・進行中の試験ではより早期でよりアクティブな介入をしている
・数多くの心房細動が世界中で眠っており、その中には脳卒中ハイリスクもたくさん含まれる
・進行中の試験や未来の試験が早期発見早期介入の有効性を示してくれれば、ラディカルな改善につながるだろう

### 今のところ、進行中の試験の結果待ちの段階、というのがこの論の全体の印象ですね。
早いうちに診断して、早いうちに介入したほうが良いことは理屈ではわかります。
しかし、まずこの診断法が難しい。無症候性のひとをくまなく診断するのは不可能ですし、診断したところでリモデリングがどの程度進んでいるのか、正確にわかる画像診断法やバイオマーカーは現時点ではありません。

くわえて、たとえ早期発見をしても、症状の乏しい人にどれだけ治療のコンセンサスが得られるか。それには強いエビデンスと医療者のコミュニケーション能力が求められます。

昨日のproと合わせ読む限り、早期介入ー理屈はわかるが現実が追いついていない。そんな感じです。
by dobashinaika | 2014-06-17 23:17 | 心房細動:ダウンストリーム治療 | Comments(0)

若年者の心房細動は早いうちから治すべきか?反対派の意見:EHJ誌

European Heart Journal 6月7日号は心房細動満載です。

とくに若いうちからリズムコントロールに介入すべきか、否かについてのコントラバーシーが興味深いです。

今日はそのうちcon=反対意見(というか慎重意見)をまとめます。
大変長いので、結論とキモの表だけ掲載。

The young patient with asymptomatic atrial fibrillation: what is the evidence to leave the arrhythmia untreated?Kristina Wasmer et al
Eur Heart J (2014) 35 (22):1439-1447.


【結論】
・若年者のリズムコントロールは、無症候性であっても明らかに合併症と死亡率を増加させる(表)

・現時点でリズムコントロールが心房細動の進行や若年者のアウトカムを改善するデータはない

・同様に、高齢者においてリズムコントロールトレーとコントロールが同等であるというエビデンスを若年者へ適応できるかどうかは不明

・したがって抗不整脈薬は、無症候性患者に対しては、その中程度の効果と、考えられる副作用や催不整脈作用を合わせて考えると、正当な根拠はない

・一方、カテーテルアブーレションは症状のある発作性心房細動の若年者を力づける結果があるにも関わらず、長期の抑制は多くの症例で保証されていないし、合併症や死亡率の増加をみとめる。

・故に、証明されるまで、若年者無症候性心房細動にあっては、これまでどおり無治療のままで診ることが薦められる

・エビデンスの欠如が補填されれば、他の選択も合理的であり、個々の患者さんごとに討論されるべきである

【表】若年者無症候性心房細動におけるリズムコントロールの論議

<賛成>
・脳卒中、心不全、死亡率増加といった長期的転帰を回避する可能性あり
・患者は後に症候性となるかもしれない
・リズムコントロールは若年で発作性の早い持期であれば達成は容易
・カテーテルアブーレションは抗不整脈薬に勝っており、多くの若年者における再発や持続性への移行を防ぐかもしれない

<反対>
・心房細動それ自体は、合併心疾患がなければ若年者での死亡率を増やすことは示されていない
・脳卒中はリズムコントロールとは独立したリスクであり、この点においてリズムコントロール(の達成)とともに抗凝固療法をやめることを支持するデータはない
・抗不整脈薬は長期に服用するのは副作用のリスクがあるので、若年者にとって良い選択ではない
・カテーテルアブーレションは未だに明らかな合併症を有する。その主要な長所は症状の改善である。心房細動は何回かの手技にもかかわらず未だに再発する可能性あり

### 現時点では、反対派の意見すなわち、「若い無症候性なら放置」が主流です。反対派が主流なので、こちらが先に掲載されています。
一方賛成派は、早ければ早いほど進行をストップすることができ、引いては予後改善につながる、というそれなりに理解できるロジックでやってきます。

賛成派が分が悪いのは、この問いが本来的に解答不能な問だからです。原理的に無症候性の人への介入はできません。どこにいるかわからないのですから。ですから使うエビデンスには限りがあります。

そこをどう理論展開するか、賛成派の要約は明日のお楽みに。
by dobashinaika | 2014-06-16 23:58 | 心房細動:ダウンストリーム治療 | Comments(0)

無症候性心房細動は有症候性よりも持続性に移行しやすい:Circulation J誌

Circ J 2014; 78: 1121–1126
Progression to the Persistent Form in Asymptomatic Paroxysmal Atrial Fibrillation
Keitaro Senoo et al


【疑問】発作性心房細動は有症候性より無症候性の方が慢性化しやすいのか?

P:心臓血管研究所(日本)のShinken Databaseに登録された19,994例中、発作性心房細動と診断された1,176例

E/C:初回受診時無症候性/有症候性

O:持続性心房細動への移行

【結果】
1)115例、年率6%で持続性心房細動へ移行:平均追跡期間1213日

2)無症候性(n=468)jは有症候性よりも低リスクプロファイル

3)無症候性の方が有症候性より持続性への移行多い:ハザード比(非補正)1.611(1.087−2.389.p=0.018)

4)無症候性、男性、心筋症が、持続性移行への独立危険因子

5)無症候性では肺静脈隔離施行が少ない

6)無症候性心房細動x肺静脈隔離術なしは持続化のもう一つの危険因子

7)有症候性、無症候性で、予後は同じ

【結論】
低リスクプロファイルにも関わらず、無症候発作性心房細動患者は、症候性心房細動に比べて持続性に進行しやすかった。この逆説的な結果はリズムコントロールを含積極的管理がなされないことの帰結かもしれない

### 昨年報告されておりますBelgrade AF studyを山下先生のグループの妹尾先生がShinken Databaseで検証された論文です。

無症候性心房細動が、低リスクにもかかわらず持続化リスクが大きい原因として、筆者らはアブレーションなどの治療介入が遅れることなどを原因として推察しています。
たしかに、無症候性心房細動の方は、無症候であるがゆえにたとえたまたま健診などで発作時心電図が見つかったとしても医療機関を受診されず、その後持続化してから改めて治療が開始されるということはしばしば経験します。例えば50代くらいの方などでも、動悸などが全くないのに健診で心房細動がはじめてみつかり、じつはもう持続性だったという方もよく見かけます。

「無症候性」の定義はShinken Databaseに登録された方、つまり何らかの理由で循環器専門の医療施設を受診し、ある外来での心電図で心房細動が記録されたにもかかわらず無症候であった方です。ですので、医療機関に全くかかっていない人とは多少populationが違いますね。まあしかしながら、全くの無症状の人は病院に行かないわけですので、世界の全無症候性心房細動例の何%が持続化するかというのは、知ることの不可能な命題ですので(ある一般住民コホートに一定期間ループレコーダーなどを装着してもらい、無症候性心房細動があった人を長期間前向き追跡するなどすれば別ですが、、、ムリですね)、方法論としては、これしかないように思います。

Belgrade AF studyでは10年追跡で虚血性脳卒中も無症候性心房細動で多かったとのことですが、本論文は予後は同じようです。この違いも興味あるところです。

非常にきれいな結果で、無症候性心房細動患者さんをもっと積極的に見つけなければならないことを痛感させられます。
by dobashinaika | 2014-05-24 00:18 | 心房細動:リアルワールドデータ | Comments(0)

植え込み型デバイスによる”隠れ心房細動”の同定2題:Circ誌、EHJ誌

植込み型デバイスによるsubclinical AFいわゆる隠れ心房細動に関する報告が2つ上がっています。
簡単にまとめます。

一つは3月14日付けCirculationオンライン版

Temporal Relationship between Subclinical Atrial Fibrillation and Embolic EventsMichela Brambatti et al
doi: 10.1161/CIRCULATIONAHA.113.007825


・以前もNEJMで報告があったASSERT研究から
・65歳以上の2580人(ペースメーカー、ICD);高血圧あり。心房細動既往なし
・6分超の心房細動記録例と脳卒中/全身性塞栓症は関連あり
・脳卒中/全身性塞栓症症例51例のうち26例51%が潜在性(無症候性)心房細動
・18例35%は脳卒中/全身性塞栓症前に潜在性心房細動を記録
・4例8%はイベント前30日以内に記録されていた
・4例は脳卒中発症時に記録された
・イベント30日以上前に記録された無症候性心房細動14例において、最近の心房細動エピソードは平均339日前
・8例16%では脳卒中後にのみ記録:イベント前平均228日間モニターにもかかわらず

【結論】
潜在性心房細動と脳卒中/全身性塞栓症は相関するが、イベント前1ヶ月以内の心房細動は非常に少ない

もう一つはEuropean Heart Journal 2月21日号より

Device-detected atrial fibrillation and risk for stroke: an analysis of >10 000 patients from the SOS AF project (Stroke preventiOn Strategies based on Atrial Fibrillation information from implanted devices)
Giuseppe Boriani et al
Eur Heart J (2014) 35 (8): 508-516.doi: 10.1093/eurheartj/eht491


・5つの研究のメタ解析
・3ヶ月以上追跡できたペースメーカーまたはICD例。慢性心房細動は除く
・10,016例。平均70歳、平均24ヶ月追跡
・少なくとも1日以上5分以上〜最大6ヶ月(中間4分位1.3−1.4)における心房細動検出率:10,016例43%
・心房細動累積時間は虚血性脳卒中の予測因子
・心房細動累積時間の閾値を検討すると、虚血性脳卒中のハザード比は1時間で最大:HR2.11(1.22-3.64) ,p=0.008

【結論】
デバイスで同定される心房細動累積時間と虚血性脳卒中リスクは相関。抗凝固療法意思決定の参考になる。

###いずれも興味深いですね。ASSERTのほうでは、イベント発症前に心房細動が出現するのは8%の症例にしかすぎないとのことですね。あとは、1年位前に記録されている例が多いとのことで、心原性脳塞栓を予測することの困難さを改めて知る思いです。
以前の同研究についてのブログはこちら
http://dobashin.exblog.jp/pg/blog_view.asp?srl=14403465&nid=dobashin

メタ解析では、心房細動累積1時間を超えてくると塞栓症を起こしやすくなるということで、従来考えられているより抗凝固療法は早めに行うべきかもしれません。NOACはその点有利かも。
またデバイス植え込み例というバイアスはあるにしても、43%の症例で心房細動が記録されるというのも”隠れ心房細動”の多さを感じさせます。

今週末は日本循環器学会があり、発表の予定もあるので、ブログはあっさりいきます。
by dobashinaika | 2014-03-18 20:11 | 心房細動:診断 | Comments(0)

心房細動累積時間1時間以上になると脳梗塞リスクが増加:10000例のメタ解析:EHJ誌

European Heart Journal 12月11日付オンライン版より
Device-detected atrial fibrillation and risk for stroke: an analysis of >10 000 patients from the SOS AF project (Stroke preventiOn Strategies based on Atrial Fibrillation information from implanted devices)
Eur Heart J (2013)doi: 10.1093/eurheartj/eht49
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【疑問】心房細動がどのくらい続くと脳梗塞のリスクが増加するのか?

【方法】
・植込み型デバイスにより3ヶ月以上の期間,心房性不整脈の持続時間を評価した前向き3つの試験のメタ解析
・22433例中基準を満たした10016例対象
・心房性不整脈の同定基準は各試験による:例)TRENDS試験では心房博数175bpm以上,20秒以上持続
・心房細動累積時間を5分,1時間,6時間,12時間,23時間で分類
・平均追跡期間24ヶ月

【結論】
・平均年齢70歳
・43%1016例で,少なくとも5分の発作が少なくとも1日以上あり
・最大の心房細動累積時間の平均:6ヶ月(inter-quartile range:1.3-1.4)
・CHADS2スコアと抗凝固薬の仕様が脳梗塞の独立危険因子
・累積時間の閾値は1時間が最大ハザード比;2.11(1.22〜3.64;p=0.008)
a0119856_052472.gif


【結論】デバイスで同定された心房細動累積時間は,比較的選択性のない一般のデバイス植え込み患者の脳梗塞リスクそうかと関連があった。この試験は抗凝固療法の適切な意思決定の基礎となり得る

### まず「デバイス」としてはペースメーカーが43%,ICDが20%,CRTが37%です。何らかの徐脈性不整脈,頻脈性不整脈,心不全を伴った例であることを押さえます。確かにグラフを見ると,累積時間1時間以上では年間脳卒中発症率は0.6−0.8%なのに対しそれ以下は0,2〜0.5%となっています。1日1時間以上の心房細動が見つかれば,要注意というのは,今後デバイスチェックをする上での参考になります。

デバイス患者においてはCHADS2スコアの他に,たとえ無症候であってもAF累積時間も,考慮する方向性が示唆されます。
by dobashinaika | 2013-12-24 00:07 | 抗凝固療法:適応、スコア評価 | Comments(0)


土橋内科医院の院長ブログです。心房細動やプライマリ・ケアに関連する医学論文の紹介もしくは知識整理を主な目的とします。時々日頃思うこともつぶやきます。


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