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やはり心房細動では血圧が高い(収縮期150mmHg以上)と血栓塞栓症と出血リスクが高かった;伏見AFレジストリーから


P:FUSHIMI AF Registryに登録した心房細動患者3713例。追跡期間中央値1,035日

E:高血圧あり:2304例,62.1%

C:高血圧なし:1409例

O:脳卒中/全身性塞栓症,大出血

結果:
1)高血圧の既往は,脳卒中/全身性塞栓症,虚血性脳卒中,頭蓋内出血,大出血ともに影響なし

2)ベースライン血圧150mmHg以上群(305例,13.3%):150mmHg未満群(1983例)にくらべ
脳卒中/全身性塞栓症多い:HR: 1.74, 95% confidence interval [CI]: 1.08–2.72
大出血多い:HR: 2.01, 95% CI: 1.21–3.23

3)150mmhg未満群は,非高血圧群と比べて脳卒中/全身性塞栓症,大出血に差はなし
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結論:脳卒中/全身性塞栓症,大出血とも,特に収縮期血圧の高い心房細動患者において発症リスクが高かった。

### 臨床に直結するデータですね。最近ではJ-RHYTYHレジストリーで同様研究があり,それでは収縮期血圧136mmHgで切られていました。
伏見では150がカットオフポイントですが,140−149mmHgは差がなかったようです。

Discussionにもあるように,血圧はベースラインのワンポイントの値なのでこれだけで目標値を定めるのは無理がありますが,自験例でも出血,梗塞を起こす症例は,だいたい145~150mmHgを超えるような症例であり,実感に合っているように思います。

抗凝固薬ありでもなしでもこのことは認められているので(抗凝固薬無し群はそれだけ低リスクであることに注意),抗凝固薬を出しっぱなしにして血圧を軽く見てはいけない,というメッセージを受け取りたいと思います。

いまさらながらですが,抗凝固療法の主眼は脳血管イベント予防にあるのだから,であるなら当然血圧管理が最大の課題であることを反芻します。


### ご近所ネコシリーズ
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by dobashinaika | 2017-06-04 19:15 | 抗凝固療法:リアルワールド | Comments(0)

日本人の今後10年間の心房細動発症リスクがわかる予測スコア


目的:日本で心房細動を予測するリスク因子は何か?

方法:
・吹田市の一般住民コホート6898例,30−79歳。心房細動なし。1989年から登録,追跡
・2年に1回の検診,医療機関受診時心電図で診断された心房細動

結果;
1)311AF(95180人年)

2)以下のリスク因子を同定
男性/女性=0/-5(点)(30.40代)3/0(50台),7/5(60代),9/9(70代)
高血圧,肥満,アルコール過飲,冠動脈疾患:各2点
喫煙中:1点
非HDL中等度;-1点
不整脈:4点
心雑音:8点(30−40代),6点(50代),2点(60代)

3)C統計量0.749;95%CI 0.724-0.774)

4)今後10年の心房細動発症リスク:
スコア2点以下1%以下,スコア10−11点9%,スコア16点以上27%
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結論:我々が開発した従来からのリスク因子を用いた心房細動発症10年リスクスコアは,心電図なしで外来患者や健診でルーチンに簡便に利用できる。

### 心房細動の発症リスク因子はいろいろあります。日本の国立循環器病研究センターからのこの研究では,年齢,血圧,体重,アルコール,冠動脈疾患,喫煙などの従来からよく言われている因子にくわえ,心房細動以外の不整脈と心雑音を重視しています。

私自身に当てはめると,心雑音なし,ライフスタイル&脂質−1点(non-HD),心血管リスク6点(心室期外収縮,高血圧治療中)で50代男性ですと7%と出ました。

心房細動発症リスクに関する総説,ブログはこちら

$$$ ご近所町内会の張り紙。カフェは6月10日です。
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by dobashinaika | 2017-05-25 15:14 | 心房細動:リアルワールドデータ | Comments(0)

日本のリアルワールドでは,DOACとワルファリンで脳卒中/全身性塞栓症,大出血とも発症率に有意差なし:Fushimi AF Registryより


疑問:DOAC発売後5年たった時点での,日本の抗凝固療法のアウトカムはどうなっているのか?

方法:
・Fushimi AF Registry登録患者対象
・80医療施設,3731例,2015年11月まで追跡

結果:
1)脳卒中/全身性塞栓症:年間2.3%

2)大出血:年間1.8%

3)DOAC発売後,DOAC使用は緩徐に増加:2015年はワルファリン37%,DOAC26%,抗凝固なし36%

4)脳卒中/全身性塞栓症,大出血とも,DOACとワルファリンで出現率に差はなし
脳卒中/全身性塞栓症HR, 0.95; 95% CI: 0.59–1.51, P=0.82),大出血HR, 0.82; 95% CI: 0.50–1.36, P=0.45
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結論:リアルワールドの臨床プラクティスでは,DOAC投与下での脳卒中/全身性塞栓症や大出血は,ワルファリンと比べて明らかな違いはなかった。

### 伏見AFの最新データです。日本のイマココがわかる大変貴重な報告です。
追跡率89.6%,各群はCHA2DS2-VAScスコアとHAS-BLEDスコアの全項目でpropensity scoreマッチされています。
患者プロファイルの確認ですが,平均年齢73.6歳,平均CHADS2スコア2.0点です。ワルファリン群のほうが高齢,低体重,低血圧で高リスク例が多かったとのことです。
ワルファリン1728例,DOAC270例(ダダビガトラン115,リバーロキサバン222,アピキサバン202,エドキサバン6:5年の間に重複あり)

アウトカムの確認
1)抗凝固療法施行率:53%(2011年)→64%(2015年)
2)ワルファリン:DOAC:抗凝固なし:51%:2%:47%(2011年)→38%:26%:36%(2015年)
3)CHADS2スコア別処方率変化:3点以上の処方率は60数%で過去5年で不変。0点(35→49%),1点(45→62%)の人が増えている
4)DOACの低用量処方:ダビガトラン90%,リバーロキサバン44%,アピキサバン44%
5)非推奨例:ダビガトラン36%,保険適応外例:リバーロキサバン,アピキサバン59%
6)脳卒中/全身性塞栓症発症率への寄与因子:年齢(10歳ごと),脳卒中の既往のみ,(高血圧,糖尿病などは入らず)
7)ワルファリン vs. DOACのアウトカムはPSマッチ後も同じ
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Limitationは多くありますが,それでもワルファリンとDOACでアウトカムが変わらなかったのは相当インパクトがあります。
理由として著者らはDOACのアンダードースを挙げています。たしかにダビガトランでさえ36%,他に至っては59%もの症例で添付文書からはずれた低用量使用だったのにはやや驚きました。通常腎機能や年齢がギリギリのひとでは低用量にシフトするのもやむを得ませんが,6割近くが低用量というのはギリギリでないひともかなり含まれるのではないでしょうか。ただそれだと出血は少ないように思いますが,出血も同じだったとのことです。

筆者が述べているようにDOACのアドヒアランスの問題,nが少ないことなども関係しているかもしれません。

それにしても,試験の限界も多々あるにしても,日本の実臨床での実態をかなり反映した集団のアウトカムと思いますので,日本の臨床家の今の薬の出し方と,患者さんの飲み方では,DOACはワルファリンに勝てていないということです。あれだけ宣伝攻勢,あれだけの薬価でこうなんですね〜〜。やっぱり抗凝固薬を「誰に」「どう」使うかは,「何を」使うかより100倍重要。「何を」を考えるならコストとアドヒアランスがアウトカムより大事。なんとこんなところに落ち着くのでしょうか。NOAC礼賛の立場を取ってこなくてよかった(?)。


by dobashinaika | 2017-04-19 22:34 | 抗凝固療法:リアルワールド | Comments(0)

日本の実臨床におけるNOACの効果(J-RHYTHMレジストリー2):仙台で開催中の日本循環器学会より

Beneficial Effect of Non-Vitamin K Antagonist Oral Anticoagulants in Patients With Nonvalvular Atrial Fibrillation– Results of the J-RHYTHM Registry 2 –
Circulation Journal: Advanced Publication 2016/3/18


疑問:日本のリアル・ワールドにおけるNOACの効果はどうか

方法:
・J-RHYTHM Registryをさらに3年間延長しての多施設,前向き,観察研究
・登録施設での外来の心房細動症例を連続登録
・5年追跡

結果:
1)6616例,男71.0%,69.7歳,CHADS2スコア平均1.7点

2)ワルファリン3964人,NOAC923人,抗凝固薬なし753人,データなし976人

3)血栓塞栓症:ワルファリン4.9%,NOAC2.1%,抗凝固薬なし6.0%

4)大出血:ワルファリン5.9%,NOAC2.4%,抗凝固薬なし4.8%

5)全死亡:ワルファリン5.8%,NOAC1.4%,抗凝固薬なし13.9%(P<0.001 for each)

6)ワルファリン群(CHA2DS2-VAScスコア,抗血小板薬補正後):全死亡において抗凝固薬なし群より良好(OR 0.30, 95%CI 0.23–0.39, P<0.001)

7)NOAC群:全てのイベントで良好。血栓塞栓症(OR 0.42, 95% CI 0.24–0.74, P=0.003),大出血(OR 0.53, 95% CI 0.31–0.93, P=0.027),全死亡(OR 0.10, 95% CI 0.06–0.18, P<0.001)
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結論:NOACは日本の全てのタイプの非弁膜症性心房細動におけるイベント率を改善する可能性がある

### 現在仙台で行われている第70回日本循環器学会のLate Breaking Cohort Studyで昨日(3月18日)発表されたJ-RYTHTM Registryの延長スタディです。2012年から2014年の3年間のデータですのでNOAC時代に入ってからのデータとなります。

NOACがいいということですが,まず登録研究ですので患者背景が違います。年齢はワルファリン群70.1歳,NOAC群67.1歳で有意にNOAC群が若く,CHADS2スコアもワルファリン群1.7点,NOAC群1.4点です。他にもNOAC群の方が発作性が多く,心不全が少なく,75歳以上が少ないというように,全体的にNOAC群の方が低リスク例に投与されているということができます(CHADS2スコア0点が21.0%もあります)。

NOACの内訳はダビガトラン4.9%,リバーロキサバン6.1%,アピキサバン2.8%です。2012年から2014年にかけてワルファリン群75.4%→63.6%でしたが,NOAC群6.1%→20.4%と増えており,全体のnは減少していますので,ワルファリンからNOACに切り替えた症例が多いことがうかがえます。

現在大きな病院で行われているようなNOACの適応基準でNOACを投与していれば,NOACは大変良いと考えます。

$$$ 今までにないほど仙台国際センターも,地下鉄駅も人と熱気であふれていました。展示棟の存在が大きいですね。非常に大きなスペースで驚きました。
私のところからは歩いても行けるのですが,遠方の方は宿泊が大変と聞いています。今日あたりも街は循環器の先生であふれているでしょうか。
 
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by dobashinaika | 2016-03-19 18:37 | 抗凝固療法:リアルワールド | Comments(0)

日本の代表的心房細動データベースにおける抗凝固薬使用とアウトカムの変遷:CJ誌

Nine-Year Trend of Anticoagulation Use, Thromboembolic Events, and Major Bleeding in Patients With Non-Valvular Atrial Fibrillation – Shinken Database Analysis
Circulation Journal released online January 21, 2016


疑問:日本の医療施設における抗凝固薬の使用状況及びアウトカムはどうか?

方法:
・心臓血管研究所(東京)におけるShinken Databaseの2004〜2012年のデータ
・非弁膜症性心房細動と診断された2434例
・3つの時期に分類:2004−2006年(681例),2007−2009年(833例),2010−2012年(920例)

結果:

1)抗凝固薬処方数:3期を通じて安定して増加

2)大出血;2004−2007年から2007−2009年にかけてワルファリン使用にもかかわらず減少傾向:低用量,抗血小板薬併用回避のため

3)血栓塞栓症:改善なし

4)2010−2012年:低リスク患者へのDOACが血栓塞栓症の減少及び大出血(特に頭蓋外出血)の増加に寄与した。

5)上記時期の高リスク患者はほとんどの例でワルファリン治療で血栓塞栓症,大出血とも改善されなかった

結論:過去9年間の脳卒中予防の傾向としては抗凝固薬処方の安定した増加と血栓塞栓症,大しゅっけつの部分的な減少を認めた。DOC時代になっても高リスク患者の血栓塞栓症予防は不十分であり,DOACは頭蓋外出血増加に関係していた。


### 非常に膨大なデータで,興味深いポイントがたくさんあり,結果の表をずっと眺めていても飽きません(私だけ?w)

まず抗凝固薬処方率は3期ごとで40.7→47.5→55.9%と増加。2010−2012年のDOAC処方率は25.5%。CHADS2スコア0点の42.5%(2004〜2006年は30.8%),1点の62.8%(2004〜2006年は45.2%)に処方。CHADS2スコア2点以上のINR平均は1.94(12ヶ月)

血栓塞栓症は3期ごとで1.2→1,2→0.65%/年で減少傾向だが有意差なし。
大出血は5.7→1.6→6.5%/年で3期目に増加したのは頭蓋外出血。

3期目で血栓塞栓症が減ったのはCHADS2スコア0点の低リスクに多く出してその層はそもそも血栓塞栓症が少ないからで,CHADS2スコア2点以上の高リスク層では減っていない,大出血が多かったのはDOACにより頭蓋外出血が増えたから,と考察されています。

これを見ると,DOAC時代になり処方は増えているが,高リスクに対する血栓塞栓症と頭蓋外出血のアウトカムはほとんど改善されていないということも言えそうです。ただし高リスク例では主にまだワルファリンが出されていたようです。

3期目が2010〜2012年で完全なDOAC時代とは言いがたいフェーズですので,これ以降のデータがむしろ待たれるところです。

$$$ 毎月第4週週末は東京で総合診療セミナー。寒くても恒例の朝散歩。東京は晴れでした。
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by dobashinaika | 2016-01-25 21:42 | 抗凝固療法:リアルワールド | Comments(0)

日本の登録研究においても既存のより新規発症の心房細動が心不全の予後を悪くする:CJ誌

Prognostic Impact of New-Onset Atrial Fibrillation in Patients With Chronic Heart Failure – A Report From the CHART-2 Study –
Takeshi Yamauchi et al
Circulation Journal http://doi.org/10.1253/circj.CJ-15-0783


疑問:心不全患者が心房細動を合併した場合,予後は悪くなるのか

方法:
・東北地方のCHART-2研究登録例10219例のうち,stage C/Dの4818例

結果:
1)登録時心房細動:38.6%

2)心房細動症例(対非心房細動例):高齢,eGFR低下,BNP高値,LVEF,Bブロッカー,ARB使用は同等

3)新規発症心房細動:3.6%(3.2年追跡期間中)

4)新規発症例の死亡に関する補正後ハザード比:1.72; P=0.013

5)登録時心房細動(発作性,持続性とも)は予後に関連なし

6)死亡率は,新規発症後最初の1年で特に高い

7)RAS阻害薬とスタチンが新規発症抑制に関連あり。利尿薬は発症促進に関連あり

結論:心房細動の既往ではなく,新規発症が,特に発症1年以内の心不全死亡率増加に関連していた。

### 東北大学循環器内科からの精力的な仕事です。
もともとあった心房細動に心不全を合併した場合は,心不全のない例に比べて予後が悪いことは明らかと思われますが,一方心不全がもともとあって,そこに心房細動が合併した場合に関しては,結果はさまざまだったんですね。

普通に考えれば心房細動があると,左室の充満時間の短縮,塞栓症リスク増大などで予後は悪くなりそうで,事実昔のSOLVD試験を始めとするトライアルは予後悪化を示唆していましたが,最近の試験はそうでもなくて,Euro Heart Surveyなどは今回の知見と全く同じ,新規発症が予後に影響し,既存の心房細動はむしろ予後を良くするとしています。

やっぱり,心不全の治療が良くなったためと思われます。その中でもRAS阻害薬とスタチンが関連ありということで,どちらも前向き試験で心房細動発症に関するアップストリーム効果は否定されてはいますが,いちおう頭に入れておきます。

$$$ 土曜日は盛岡で健康カフェの話をさせていただきました。詳細は後日ご報告します。楽しかったです。
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by dobashinaika | 2015-12-13 23:33 | 心房細動:リアルワールドデータ | Comments(0)

日本の大規模コホートでは心房細動のイベント予測因子はCHADS2スコアとやや違う:PLOS one誌

Predictors for Stroke and Death in Non-Anticoagulated Asian Patients with Atrial Fibrillation: The Fushimi AF Registry
Yasuhiro Hamatani et al
PLOS ONE | DOI:10.1371/journal.pone.0142394 November 5, 2015


背景:リアルワールドの心房細動患者における脳卒中や死亡の予測因子に関するデータは,大規模で前向きのアジアコホートにおいては限定的である。

方法:伏見AFレジストリ−,3304人中抗凝固薬なしの1541人,平均追跡期間741日

結果:
1)平均73歳,女性44%

2)平均CHADS2スコア1.76点,CHA2DS2-VAScスコア3.08点

3)累積イベント数:脳卒中/全身性塞栓症61例4%,死亡230例15%

4)死亡/脳卒中/全身性塞栓症の予測因子ハザード比
高齢1.68,低体重(BMI<18.5)1.71 ,脳卒中/全身性塞栓症/TIAの既往1.59,CKD1.53,心不全1.59,貧血2.41

5)上記6リスクの累積数は抗凝固薬の有無にかかわらず,死亡/脳卒中/全身性塞栓症リスクの層別化を可能にする

結論:高齢(75歳以上),低体重,脳卒中/全身性塞栓症/TIAの既往,CKD,心不全,貧血(Hb男13未満,女12未満)は,日本の抗凝固療法を施行していない心房細動患者における死亡/脳卒中/全身性塞栓症リスクに関連している

### この中でCHADS2スコア,CHA2DS2-VAScスコアと重なるのは,高齢,脳卒中/全身性塞栓症の既往,心不全で,高血圧,糖尿病,女性,血管疾患は入ってきていません。かわりに低体重,CKD,貧血が入っています。

もともとCHADS2スコアの項目は1990年台の米国の臨床研究で俎上に上がった要因を退役軍人病院の大規模コホートにvalidateさせたものにすぎないので,血圧や糖尿病管理のいい現代日本のコホートには,とくにこの2つの因子は合致しないのかもしれません。また,低体重の女性などで脳塞栓をよく経験しますので,われわれの実践感覚をよく反映しているように思われます。

CHADS2スコアで1点以下の低スコアの場合,あるいは高齢者で抗凝固を躊躇したくなる場合で,低体重,CKD,貧血があったら抗凝固薬処方を「考慮」する参考になります。

さてこの6つの頭文字,なんて略したらいいでしょうか。うまく”FUSHIMI”に収まらないかな。

$$$ 勾当台公園です。仙台も今が極彩色
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by dobashinaika | 2015-11-09 21:44 | 抗凝固療法:リアルワールド | Comments(0)

日本の大規模コホート研究では発作性心房細動のほうが持続性よりも脳卒中リスクは低い:Stroke誌

Incidence of Stroke or Systemic Embolism in Paroxysmal Versus Sustained Atrial Fibrillation
The Fushimi Atrial Fibrillation Registry
Kensuke Takabayashi et al
Stroke.2015;STROKEAHA.115.010947published online before print October 29 2015


臨床上の疑問:アジア人(日本人)の心原性脳塞栓症の頻度は,発作性心房細動と持続性とで違いはないのか?

方法:
・Fushimi AF Registry
・発作性1588例,持続性 (persistent & permanent)1716例

結果:
1)発作性のほうが若く,合併症が少なく,抗凝固薬使用が少ない

2)脳卒中/全身性塞栓症:発作性の対持続性ハザード比:
抗凝固薬非使用者0.45,0.27−0.75,p<0.01
抗凝固薬使用者0.59.0.35−0.93,p=0.03

3)脳卒中/全身性塞栓症+全死亡:発作性のほうが低い
抗凝固薬非使用者0.77,0.59−0.99,p=0.046
抗凝固薬使用者0.59.0.46−0.75,p<0.01

4)「発作性」のみが脳卒中/全身性塞栓症の予測因子(多変量解析)

結論:日本の大規模コホート研究では,持続性に比べて発作性であることが脳卒中/全身性塞栓症リスク低下に関係していた。このことは上記のような患者でリスク因子の少ない場合の抗凝固薬投与の意思決定に助けとなる

### 発作性と持続性で心原性脳塞栓に差があるかについては,ことし1月にまとめましたので,参考にしてください。
http://dobashin.exblog.jp/20674608/

これまで発作性も持続性も同じリスクとされていますが,実はエントリーされている症例の”AF burden"つまり心房細動の累積持続時間により,かなり違った結果が出るというのが真実ではないかと思われます。

筆者が指摘しているように,Fushimiレジストリーの場合は12誘導心電図かホルターでAFが記録された症例を対象にしていますが,たとえばJ-RYTHMレジストリーは,リスク補正後の塞栓症頻度は両者で同等でしたが,こちらは1年い所湯洞調律が維持されていた症例は省かれています。Fushimiのほうがよリ”burden”の少ない発作性心房細動を見ているというわけです。

というわけでCHADS2スコア0−1点,CHA2DS-VAScスコアで1−2点などの症例でも,慢性でやや罹患期間が長い心房細動ではやや積極的に抗凝固を考えるという姿勢は勧められると思われます。

$$$ 昨日は,近所の大学で行っている総合診療セミナーに散歩がてらと言ってはなんですが顔を出しました。総診に興味を持つ学生が東北でも増え,非常に熱いものを感じました。それにしても昔では到底考えられないような新しく教育施設が出来ていてびっくり。最近の学生さんは恵まれてるな−。
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by dobashinaika | 2015-11-02 18:31 | 抗凝固療法:リアルワールド | Comments(0)

日本の85歳以上心房細動患者の脳卒中発症率は85歳未満より高いが大出血率は同じ:Chest誌

Clinical characteristics and outcomes in extreme elderly (age ≥85) Japanesepatients with atrial fibrillation: The Fushimi AF Registry
Yugo Yamashita et al
Chest. 2015 Jul 16. doi: 10.1378/chest.15-1095.


背景:85歳以上の超高齢者への抗凝固療法はチャレンジングである

方法:
・FUSHIMI AFレジストリー:2011年3月〜2014年7月。3304例
・同レジストリーでの85歳以上の超高齢者(479例、14.5%)の特徴とアウトカムを比較

結果:
1)超高齢者は合併症、高リスクスコア例が多いが、抗凝固療法例は少ない

2)平均追跡期間2.0年

3)全死亡17.6、脳卒中/全身性塞栓症5.1、大出血2.0/100人年

4)超高齢者のハザード比:脳卒中/全身性塞栓症+全死亡3.20、脳卒中/全身性塞栓症2.57、死亡率3.48

5)大出血は85歳以上と未満で同じ

結論:今回のコホートでは、日本の超高齢者心房細動患者の脳卒中発症は高頻度、大出血は若年者と変わらない。

### 非常に貴重なデータです。日本人の超高齢者心房細動患者のデータはおそらく初ではないでしょうか。

本文を見ますと、85歳上のコホートは平均CHADS2スコア2.8点。抗凝固率41.3%(ワルファリン38.3%、ダビが途端2.5%、イグザレルト0.2%、アピキサバン0.0%)です。

85歳以上の人はそれ未満に比べて、脳卒中/全身性塞栓症は2.6倍、大出血は同じということです。

有名なSingerらのネットクリニカルベネフィットは高齢者ほどベネフィットが大きく、その根拠はやはり高齢者ほど脳卒中が多く出血は年齢に散れてそれほど増えないためとされています。最近のアジアの大規模コホート研究でも、高齢になるに連れ脳卒中/全身性塞栓症リスクは増加しますが大出血リスクは年齢との相関はないことが明らかになっています。
http://dobashin.exblog.jp/19554092/

こうしてみると各種エビデンスからは、高齢者でもしっかりと抗凝固を行って脳梗塞を予防するという方向性が示されていると言っても良いと思われます。

町医者としては、こうした超高齢の認知症の程度、転倒リスク、服薬管理者、アドヒアランス、抗凝固療法を行っていない場合の理由など、よりナラティブな実情も知りたいところです。

$$$ 好物のロマネスコと自家製ミニトマト、それにもずく。健康的な夕食^^
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by dobashinaika | 2015-07-23 21:27 | 抗凝固療法:リアルワールド | Comments(0)

日本の医療施設における新規経口抗凝固薬服用中の頭蓋内出血の特徴:CJ誌

Intracranial Hemorrhage Caused by Non-Vitamin K Antagonist Oral Anticoagulants (NOACs)
– Multicenter Retrospective Cohort Study in Japan –
Naoki Saji et al
Curculation Journal 2月20日

背景:NOAC内服中の心房細動患者の頭蓋内出血における特徴を評価する

方法:
・日本の241の脳卒中センターへの質問票
・NOAC関連の脳出血の特徴を検討:血腫サイズ、血腫拡大、院内死亡率
・文献上のワルファリンによる脳出血例と比較

結果:
1)174施設から解答

2)67施設38.5%から130人の匿名データを入手:男67.7%、平均77.3歳

3)院内死亡率:11.5%

4)脳出血:87例

5)1/5は抗血小板薬服用

6)血腫拡大(NOAC vs. ワルファリン関連脳出血):17% vs.26%

7)死亡率:16% vs. 35%

結論:今回の質問に回答した脳卒中センターのディレクターの半数以上が、NOAC関連頭蓋内出血を経験していなかった。NOAC関連頭蓋内出血はワルファリンに比べて、血腫拡大と死亡率が低かった。

### 今回の87例におけるNOACの内訳はリバーロキサバン71.3%、ダビガトラン25.3%、アピキサバン3.4%でしたが、対象及びそこでも使用薬剤が異なるのでこの数字にはあまり意味は無いと思われます。

130人にプロファイルですが、高齢で血圧は平均158-85、eGFR39.6、CHADS2スコア平均3点とやはり高リスク例です。治療としては降圧療法が78.5%、PCC使用は10%にとどまっています。

RE-LYやARISTOTOLEでは頭蓋内出血を起こしてしまった例の死亡率はワルファリンと変わらないとの報告もありました。
それらを見ますと、アピキサバンでも頭蓋内出血例の死亡率は43.2%、ダビガトランでは20%であり、今回の報告よりかなり高い死亡率となっています。
日本の施設の治療法が良いのか、試験デザインや統計上の問題なのか、検討したいです。
http://dobashin.exblog.jp/20524093/
http://dobashin.exblog.jp/19965528/

### 寝る前はよくチェロを聞きます。スーッと体の重心が下がって落ち着く感じになるんですね。最近ではこの人のチェロがピカ一です。
ベートーヴェン : チェロとピアノのための作品全集:ジャン=ギアン・ケラス (チェロ), アレクサンドル・メルニコフ(ピアノ)
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by dobashinaika | 2015-02-25 18:58 | 抗凝固療法:リアルワールド | Comments(0)


土橋内科医院の院長ブログです。心房細動やプライマリ・ケアに関連する医学論文の紹介もしくは知識整理を主な目的とします。時々日頃思うこともつぶやきます。


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