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新規発症例の心房細動に,肥満,高血圧,喫煙,糖尿病を合併すると心不全のリスクは増加する:JACCHF誌


疑問:新規発症心房細動を有する女性において,心不全発症のリスク因子は何か?

方法:
・米国のWomen’s Health Studyに登録された39876例
・うちベースラインで心血管疾患のない34,736例対象
・心房細動新規発症例における全体の心血管系リスク,予後,心不全発症リスクを評価

結果:
1)心房細動新規発症:1,534例(4.4%),心不全発症:687例(2.0%):平均追跡期間20.6年

2)新規心房細動発症例中:心不全発症226例
大半(82.7%)は心房細動診断時に発症

3)新規心房細動発症例の大半が(39例除く),心不全の既往なし

4)新規心房細動発症例での器質的心疾患合併例は少ない。
左室肥大39%,僧帽弁逆中15%,左房拡大46%

5)心房細動の新規発症は心不全のリスク増加に関連あり:HR 9.03; 95%CI, 7.52-10.85

6)心房細動患者の女性が心不全を発症した場合,全死亡率(HR, 1.83; 95% CI, 1.37-2.45),心血管疾患による死亡率(HR, 2.87; 95% CI, 1.70-4.85)いずれも増加

7)新規発症心房細動が心不全発症に及ぼす寄与危険度:全死亡率9.9% (95% CI, 2.2%-18.3%),心血管疾患による死亡率18.2% (95% CI, 1%-35%)

8)心不全発症のリスク因子;収縮期血圧120以上,BMI30以上,現在喫煙,糖尿病

9)上4つの因子の組み合わせによる心不全への寄与危険度:62% (95% CI, 23%-83%)

10)3または4つのリスク因子を持つ女性に比べ,コントロール良好の女性は心不全発症リスクが少ない
2つの因子=HR0.60; 95% CI, 0.37-0.95; 1つの因子=HR 0.40; 95% CI, 0.25-0.63; 0因子=HR 0.14; 95% CI, 0.07-0.29
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結論:女性で心房細動の新規発症例においては,肥満,高血圧,喫煙,糖尿病の合併が心不全発症のリスク因子であった。

### 永続性心房細動に長く罹患していても,心不全になる人とならない人がいるのは,臨床上よく懐く疑問です。本研究は多数例のコホートを用いて,肥満,高血圧,喫煙,糖尿病が重複する人ほど心不全になりやすいことを検証した,大変意味のある研究と思われます。

抗凝固療法が普及してきた今日,以前からも述べておりますように,心不全防止が心房細動治療の主眼目になると思われます。その際,上記のリスクを多く抱えている人ほど心不全には常に気をつけて診療することが勧められると思われます。

本文中では睡眠時無呼吸症候群のリスクも大切とされています。実臨床でも常に気をつけたい点です。

$$$ S市杜王町のマンホール
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by dobashinaika | 2017-08-21 22:15 | 心房細動:リアルワールドデータ | Comments(0)

心房細動がある人はない人に比べ死亡率が1.5倍,脳梗塞は2.3倍,心不全は5倍:BMJ誌


Atrial fibrillation and risks of cardiovascular disease, renal disease, and death: systematic review and meta-analysis
BMJ 2016; 354 doi: http://dx.doi.org/10.1136/bmj.i4482 (Published 06 September 2016)

疑問:心房細動と心血管疾患,腎臓病,死亡との関連はどうなのか?

デザイン:システマティックレビュー&メタ解析

データリソース:Medline and Embase.

論文のクライテリア:心房細動と心血管疾患,腎臓病,死亡関連のコホート研究

結果:
1)104研究,9686513

2)心房細動と関連あるアウトカム
死亡:RR1.46, 95% confidence interval 1.39 to 1.54
心血管死:2.03, 1.79 to 2.30
主要心血管イベント:1.96, 1.53 to 2.51
脳卒中:2.42, 2.17 to 2.71
虚血性脳卒中:2.33, 1.84 to 2.94
虚血性心疾患:1.61, 1.38 to 1.87
突然死:1.88, 1.36 to 2.60
心不全:4.99, 3.04 to 8.22
慢性腎臓病:1.64, 1.41 to 1.91
末梢血管疾患:1.31, 1.19 to 1.45
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3)心房細動と関連のないアウトカム
出血性脳梗塞:2.00, 0.67 to 5.96

4)絶対リスク増加の最も高いのは心不全

5)いくつかのサブグループ解析,感度分析でも同様の結果

結論:心房細動は死亡,心血管疾患,腎臓病のリスク増加に関係あり。心房細動は患者では脳卒中以外のアウトカム減少にも気を配る必要がある。

### すでに同様の知見は本ブログでも何回も取り上げました。心房細動の死因1位は心不全というおおきな論文も最近Lancetに載っています。本論文は心房細動はある人はない人に比べ,全死亡は1.46倍,虚血性脳卒中は2.33倍,そして心不全は4.99倍という結果でした。

最近の研究では,既存の心房細動よりも,心不全に新たに心房細動が発症すると予後が悪くなることがわかっているようです。
いずれにしろ,心房細動患者における治療史として脳卒中治療の世紀から心不全治療の世紀への変遷と言えるかもしれません。取り立ててそんなに騒がなくても,昔も今もどんな心疾患であれ心不全治療は常に念頭に置かれるべきものではありますが,
by dobashinaika | 2016-09-12 18:49 | 心房細動:リアルワールドデータ | Comments(0)

米国の主要心臓病学会による心不全薬物療法に関するアップデート10項目

米国の主要心臓病学会が心不全に薬物療法に関する最近のアップデートを報告しています。
ACC (American College of Cardiology)のメルマガに、それを10項目にまとめてくれていますので、復習します。

2016 ACC/AHA/HFSA Focused Update on New Pharmacological Therapy for Heart Failure: An Update of the 2013 ACCF/AHA Guideline for the Management of Heart Failure
J Am Coll Cardiol. 2016;():. doi:10.1016/j.jacc.2016.05.011


【心不全薬物療法アップデート】
1.駆出分画の低下した心不全(HErEF):ACE阻害楽(推奨度クラス I、レベルA)、アンジオテンシン受容体阻害薬 (ARB) (クラスI, レベルA)、アンジオテンシン受容体-ネプリライシン阻害薬(クラスI,ARNI)(レベルB-R),それらにベータ遮断薬、アルドステロン拮抗薬の追加;

2.ARNIはPARADIG試験で心血管死、入院の複合エンドポイントを20%減少。サブ解析でも同様

3.HFrEF (NYHA II/III)で、既存のACEi,ARBで血圧良好な例ではARNIへの切り替え(クラスI)

4.ARNIには低血圧、腎機能低下、血管浮腫(低頻度)がある。将来、適切な容量、忍容性、特に血圧、併用薬、血管浮腫に対するより詳細な知見が提供されるだろう

5.現在米国では3用量のARNIは認められているが、PADIGM試験にないドーズも含まれている

6. 以前あるいは現在症状のあるHFrEFに対する合併症、予後改善目的のACE阻害薬(クラスI、レベルA)、特にARNI不適切例で強く勧める

7. 6の患者でACE阻害薬で咳、血管浮腫など忍容性が低下した場合のARB

8.ARNIは、ACE阻害薬との併用またはACE阻害薬後36時間以内に投与してはいけない(クラスIII、レベルB-R)

9. ARNIは、血管浮腫の既往患者に投与してはいけない(クラスIII、レベルC-EO)

10.NYHAII-III(EF35%以下)のHFrEF、ベータ遮断薬で安静時70回/分以上の人へのイバブラジン(クラスII、レベルB-R)

### まずはACE阻害薬+β遮断薬,それにアルドステロン阻害薬追加。ACEiで咳などが出ればARBというのを,まず再確認です。

それにしても勉強のためになると思って読んでいったら、日本の現場ではまだ使われていないものばかりの情報でした。ARNIはこのレポートで見るとかなり有望のようですね。
今後こうした薬が出てくるのでしょう。
これからもACEiとベータではダメなのか。よくよく考えたいです。

$$$ どこかにまたネコが。。
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by dobashinaika | 2016-05-28 10:46 | 循環器疾患その他 | Comments(0)

ケアネット連載「新規発症の心房細動が心不全の予後を悪くすることが明らかに」更新いたしました

ケアネット連載 〜Dr. 小田倉の心房細動な日々~ダイジェスト版~更新いたしました。

今回は「第55回 日本の登録研究においても新規発症の心房細動が心不全の予後を悪くすることが明らかに」です。

心不全では,もともとあった心房細動より,新たに心房細動を発症したほうが,予後を悪くするという論文です。

http://www.carenet.com/series/afjournal/cg001089_0055.html?keiro=backnum
(要無料登録)
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by dobashinaika | 2016-04-30 21:25 | 心房細動:リアルワールドデータ | Comments(0)

日本の登録研究においても既存のより新規発症の心房細動が心不全の予後を悪くする:CJ誌

Prognostic Impact of New-Onset Atrial Fibrillation in Patients With Chronic Heart Failure – A Report From the CHART-2 Study –
Takeshi Yamauchi et al
Circulation Journal http://doi.org/10.1253/circj.CJ-15-0783


疑問:心不全患者が心房細動を合併した場合,予後は悪くなるのか

方法:
・東北地方のCHART-2研究登録例10219例のうち,stage C/Dの4818例

結果:
1)登録時心房細動:38.6%

2)心房細動症例(対非心房細動例):高齢,eGFR低下,BNP高値,LVEF,Bブロッカー,ARB使用は同等

3)新規発症心房細動:3.6%(3.2年追跡期間中)

4)新規発症例の死亡に関する補正後ハザード比:1.72; P=0.013

5)登録時心房細動(発作性,持続性とも)は予後に関連なし

6)死亡率は,新規発症後最初の1年で特に高い

7)RAS阻害薬とスタチンが新規発症抑制に関連あり。利尿薬は発症促進に関連あり

結論:心房細動の既往ではなく,新規発症が,特に発症1年以内の心不全死亡率増加に関連していた。

### 東北大学循環器内科からの精力的な仕事です。
もともとあった心房細動に心不全を合併した場合は,心不全のない例に比べて予後が悪いことは明らかと思われますが,一方心不全がもともとあって,そこに心房細動が合併した場合に関しては,結果はさまざまだったんですね。

普通に考えれば心房細動があると,左室の充満時間の短縮,塞栓症リスク増大などで予後は悪くなりそうで,事実昔のSOLVD試験を始めとするトライアルは予後悪化を示唆していましたが,最近の試験はそうでもなくて,Euro Heart Surveyなどは今回の知見と全く同じ,新規発症が予後に影響し,既存の心房細動はむしろ予後を良くするとしています。

やっぱり,心不全の治療が良くなったためと思われます。その中でもRAS阻害薬とスタチンが関連ありということで,どちらも前向き試験で心房細動発症に関するアップストリーム効果は否定されてはいますが,いちおう頭に入れておきます。

$$$ 土曜日は盛岡で健康カフェの話をさせていただきました。詳細は後日ご報告します。楽しかったです。
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by dobashinaika | 2015-12-13 23:33 | 心房細動:リアルワールドデータ | Comments(0)

生活のシンプルセブン(7つの生活習慣)は心不全,狭心症,脳卒中,認知症等のリスク低下に関連

American Heart Association's Life's Simple 7: Avoiding Heart Failure and Preserving Cardiac Structure and Function.
Am J Med 2015;128:970-976


疑問:AHAが提唱している”生活習慣シンプル7”は心不全リスクと関連があるのか

方法:
・米国のthe population-based Atherosclerosis Risk in Communities Study cohort13,462人
・45〜64歳,1987〜1989年に登録

結果:
1)85歳までの心不全は25.5%

2)心不全リスク:スコア10〜14点(最適)=14,4%,5〜9点(平均)=26.8%,0〜4点(不適切)=48.6%

3)臨床的にイベントのない人でも,平均点のひとは不適切のひとに比べても左室肥大は40%,拡張不全は60%と普通に見られる

結論:AHAの7つの生活習慣は心不全リスク低下だけでなく,冠動脈疾患,脳卒中,認知機能低下,糖尿病,慢性腎臓病,がんのリスク低下にも関連。この研究はライフスタイルの変化が心不全にも影響することに焦点を当てた。早いうちからの生活習慣介入は大切。

### 神セブンならぬ,シンプルセブン。 7つの生活習慣とは,以下でこれを3段階に分け,2,1,0‥とスコアリングします。
1)喫煙(吸わないorやめて12カ月超,12ヶ月以内,喫煙中)
2)BMI(<25,25〜30,30<)
3)運動(週の運動時間ごとに3段階)
4)健康ダイエットスコア
5)総コレステロール(<200,200〜240,240)
6)血圧(<120/80, 120-139/80-90 or <治療下120/80,>140/90)
7)空腹時血糖(<100,100〜125,>126)


ちなみに運動は理想(週150分以上中等度または75分以上高度または150分以上中/高),平均(週1〜149分中等度または1〜74分高度または1〜149分中+高)。
ダイエットは以下の5項目(1)フルーツと野菜>4.5カップ/週 2)魚23.5oz/週以上 3)線維質立リッチ 4)塩分<1500mg/日 5)砂糖<450cal/週)で,理想は4〜5点,平均2〜3点,不適切102点です。

私,自分で計算したところ結構高得点でした。昨年体調を崩してから塩分厳格制限と毎日散歩で得点を上げました。もっともこのBMIスコアは日本人には当てはまりませんが。

$$$と言いつつ,忘年会でこんなところへ,,,全部歌えたりします。。
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by dobashinaika | 2015-12-07 23:59 | 循環器疾患その他 | Comments(0)

CHA2DS-VAScスコアは心房細動の有無に関わらず心不全のリスク予測に有用:JAMA

Score in Predicting Ischemic Stroke, Thromboembolism, and Death in Patients With Heart Failure With and Without Atrial Fibrillation
Line Melgaard et al
JAMA. Published online August 30, 2015.

目的:CHA2DS-VAScスコアは心不全でも有効か

方法:
・デンマークの前向きコホート登録研究
・2000−2012年に新たに診断された心不全42987例,抗凝固療法なし,心房細動合併21.9%
・CHA2DS-VAScスコア別,心房細動の有無別に層別化
・アウトカム:虚血性脳卒中,血栓塞栓症,心不全診断1年以内の死亡

結果:
1)非心房細動例:虚血性脳卒中3.1%,血栓塞栓症9.9%,死亡21.8%

2)いずれのアウトカムもCHA2DS-VAScスコア増加に連れて,心房細動の有無にかかわらずリスク増加

3)血栓塞栓症リスク;CHA2DS-VAScスコア4点以上では心房細動にかかわらず高リスク
非心房細動例:9.7%,心房細動例8.2%;P<.001 for interaction

4)C統計量:心房細動にかかわらず同様の有用性
非心房細動例:0.64,心房細動例0.67

5)陰性的中率
非心房細動例:91%,心房細動例92%%

結論:心房細動の有無にかかわらず,心不全患者において,CHA2DS-VAScスコアは虚血性脳卒中,血栓塞栓症,死亡リスクと関連あり。CHA2DS-VAScスコア高点例では,血栓塞栓症の絶対リスクは非心房細動例で心房細動例より高い。しかし予測精度は中程度であり,臨床上の使用には考慮が必要。

### まあまあ納得のいくアウトカムですが,やはり登録研究なので,心不全及び心房細動診断の根拠が気になります,おそらくカルテベースですので,どの程度の心不全重症度か,発作性心房細動が見逃されていないかは,常に考えねばなりません。

ただ,高CHA2DS-VAScスコア点数では心房細動など関係なく血栓塞栓症が危ないというのは納得です。4点以上だと結構合併症が多いので心房細動なしでも血栓塞栓症が来るというのはそうかもと思われます。ただ筆者は,心房細動がなくてもCHA2DS-VAScスコア2点以上だとNOACの効果が見込めるといったニュアンスのことを書いていますが,それはどうかと思われます。Lip先生のグループらしい推論かもしれません。

高リスク(CHA2DS-VAScスコア)の心不全では,心房細動にかかわらず血栓塞栓症には注意をということですね。

$$$ 先日名古屋に行ってきました。駅前ですぐ目についたので早速カメラ。むかしは「ビルヂング」が一般的だったんですね。ググってみたら,ここは有名な「 ビルヂング」だとのことです。
http://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%D3%A5%EB%A5%C2%A5%F3%A5%B0
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by dobashinaika | 2015-09-08 18:35 | 循環器疾患その他 | Comments(0)

ケアネットにLancet論文「βブロッカーは心房細動合併心不全の予後を改善しない」についての解説

ケアネットの「ジャーナル四天王」(提供元:J-CLEAR(臨床研究適正評価教育機構))にLancet論文「βブロッカーは心房細動合併心不全の予後を改善しない」の解説を書かせてただきました。
http://www.carenet.com/news/clear/journal/39737
(要無料登録)

昨年9月12日に本ブログでも取り上げておりますが、内容は少し推敲しております。
http://dobashin.exblog.jp/20190111/

元論文はこちら
http://www.thelancet.com/journals/lancet/article/PIIS0140-6736(14)61373-8/abstract

こちらもご参照ください。
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by dobashinaika | 2015-04-16 21:31 | 心房細動:アップストリーム治療 | Comments(0)

慢性心不全を再入院させないための多職種包括的疾病管理は有効か?

今回辺りから、ブログのスタイルを症例に基づいたエビデンス検索とその適応について書くという感じにしようと思います。

心房細動に関する論文のブラウジング(ネットサーフィン)は、やはり楽しいので、今までどおり趣味としてやりますが、NOACフィーバーが落ち着きを見せ、最近心房細動関連の論文自体やや少なくなっています。

私が毎朝やっています、前の日の診療中に疑問に感じてメモしたことを、ネット媒体で調べてEvernoteに放り込むという作業をブログ上で行うことにします。

今日は、70台男性、陳旧性心筋梗塞に慢性心不全を合併し、すでに3回、急性増悪のため総合病院に入退院を繰り返している患者さんです(プラバシー保護のため、実際とは改変しています)

β遮断薬、ACE阻害薬など型通りの薬物療法を行っても入退院を繰り返す心不全にたいし、最近クローズアップされている多職種による包括的な心不全疾病管理なら良いのか、具体的にプライマリ・ケア医としてどんな管理をすればよいのかという疑問がわき、調べました。

疑問:入退院を繰り返す慢性心不全患者に対し、多職種による包括的疾病管理は有効か、有効だとしたら何が特に有効か

リソース:
1)DynaMed:"Heart failure structured management and education(心不全の構造的管理と教育)"

オーバービュー
・心不全退院後の疾病特異的な教育とフォローアップは再入院率を減らすが死亡率は減らさない(レベル1)
・包括的退院プランは再入院率を減らし、QOLを改善する(レベル2)
・自己管理:再入院率を減らす(2)。軽症〜中等症心不全は教育単独より自己管理+再入院のほうが再入院を減らす(2)
・ナースべーストの患者管理はエビデンスが一定しない
・多角的(多職種)疾病管理プログラムは死亡率、入院率を減らすかもしれない(2)
・NT-pro BNPガイドの管理+多職種ケアは死亡率、入院率を減らすかもしれない(2)
・薬剤師を交えての多職種ケア(薬剤師の直接ケアなし)は全死亡と入院を減らすかもしれない(2)
・電話による管理は死亡率、入院率を減らすかもしれない(2)
・ナースの訪問看護は再入院を減らすかもしれない(2)

患者教育
・以下の教育は有効(クラスI,エビレベルA:ACCF/AHAガイドライン)
・症状と体重のモニター
・塩分制限
・服薬アドヒアランス
・身体活動の維持
Circulation 2013 Oct 15;128(16):e240 PDF

自己管理
・システマティックレビューでは3〜12ヶ月のフォローで死亡オッズ比0.59(0.44〜0.8)、再入院オッズ比0.44(0.27〜0.710:NNT5-15
BMC Cardiovasc Disord 2006 Nov 2;6:43 full-text


多職種疾病管理プログラム
・再入院高リスク患者に対して勸められる(クラスI,エビレベルB:ACCF/AHAガイドライン)
・ガイドラインに基づく治療の推進
・行動変容を妨げる因子への気遣い
・再入院リスクの除去
Circulation 2013 Oct 15;128(16):e240 PDF

2)循環器病の診断と治療に関するガイドライン:慢性心不全治療ガイドライン(2010 年改訂版)(2015年4月閲覧)

<多職種による包括的疾病管理プログ ラム>

クラスI:多職種による自己管理能力を高めるための教育,相談支援:患者および家族,介護者に対して
・体重測定と増悪症状のモニタリング
・薬物治療の継続および副作用のモニタリング
・禁煙
・症状安定時の適度な運動

クラスII
・ 1 日 7 g 程度のナトリウム制限食
・節酒
・ 感染症予防のためのワクチン接種
・精神症状のモニタリングと専門的治療:抑うつ,不安等に対して
・ 心不全増悪のハイリスク患者への支援と社会資源の活用:独居者,高齢者,認知症合併者等に対して

クラスIII
・大量の飲酒
・ED治療としてのPDE5阻害薬と亜硝酸薬の併用: 重症心不全患者に対して

3)Primary Results of the Patient-Centered Disease Management (PCDM) for Heart Failure Study:A Randomized Clinical Trial
David B. Bekelman et al
JAMA Intern Med. Published online March 30, 2015.


・米国の退役軍人関連4医療施設の392人を対象としたRCT
・患者中心の疾病管理(=ナースコーディネーター、循環器医、薬剤師、プライマリ・ケア医の多職種介入、家庭での遠隔モニタリング、患者自己管理、うつ病のスクリーニングと治療)と通常治療との比較
・アウトカム:患者アンケートスコア、死亡率、入院率、うつ症状スコア
・結果:
・アンケートスコア=有意差なし。
・死亡率、入院率は介入群で少ない4.3%vs.9.6%。
・うつ病患者の改善は介入群で有意に大きい
・1年間の再入院率に差はない
・結論:多面的な心不全疾病管理は、通常管理に比べて患者の健康状態を改善しなかった

### 多職種が介入する患者管理は、心不全では概ね効果があるが、ないとする報告もあります。この違いは介入内容によるものおよびアウトカムの設定にあると思われます。

当院としては、まず今までやっている、毎日の体重、血圧測定とその記録、減塩、禁煙、運動の推奨(パンフ作成)に加え、もう少し多職種で関われないか、例えば、ナースによる待ち時間での教育、薬剤師のアドヒアランスへの介入などを、今後スタッフと検討してみようと思います。

さらに、やはり今後は基幹病院の主治医や看護チームとの連携、退院時カンファ、在宅診療が必要な場合の引き継ぎなどを進めていければと思います。まさに病診巻き込んでの包括的ケアが必要だと、改めて思います。

今回のEBM、行動変容への寄与度としては5段階のうち3くらいです。具体的にどんな介入をしたら良いかが、今ひとつわからなかったから。そういうのは、先進的な施設などの経験知のほうが良いのかも。

$$$ 医院向かいの桜。ほぼ満開となりました。
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by dobashinaika | 2015-04-07 22:41 | 循環器疾患その他 | Comments(0)

βブロッカーは心房細動合併心不全の予後を改善しない:Lancet誌メタ解析

Lancetオンライン版
Efficacy of β blockers in patients with heart failure plus atrial fibrillation: an individual-patient data meta-analysis


疑問:βブロッカーは心房細動合併心不全の予後を改善させるか?

方法:
・メタ解析、ITT解析試験対象
・心不全患者で登録時洞調律または登録時心房細動別に、βブロッカーvs.プラセボ
・主要アウトカム:全死亡

結果:
1)全18254例;洞調律76%、心房細動17%

2)粗死亡率(平均1.5年追跡):洞調律群16%、心房細動群21%

3)死亡率(βブロッカー群の対プラセボ群ハザード比)
   洞調律例 0·73, 0·67—0·80; p<0·001
   心房細動例 0·97, 0·83—1·14; p=0·73

4)心房細動例では主要アウトカムのサブ解析でも一様に死亡率悪い

解釈:この所見からは、心房細動合併心不全の予後改善のための標準治療として、βブロッカーはレートコントロール以外では進んで使うべきでない

### 結構衝撃的な結果ですね。たしかにRACE II試験でβブロッカーなどで心拍数が目標110でも80でもアウトカムは変わらなかったことから、単純に心拍数だけが心房細動の予後に関係するのではないことは予想がつくかもしれませんが。

確認として、両群間のベースラインのプロファイルは、心房細動群の方が年齢が69歳で、洞調律例の64歳より高齢である以外、基礎疾患、左室機能、心拍数などには差がないようでした。また心房細動例の抗凝固療法施行率は58%です。

心房細動例では脳卒中が多いためかと思いがちですが、死因を見ると脳卒中は心房細動例で4%、洞調律例で2%でした。かりに心房細動例も2%だったとしても死亡率は20%大勢に変わりないようです。

心房細動では、脈の不整性そのものが心機能を悪くする要因であり、心拍数はあまり関係ないのかもしれません。

ただし、気になる点として、心房細動の診断が登録時心電図のみであること、心不全の定義が明記されていないこと、とくに左室駆出分画が表示されいて27%とかなり低めですが、心房細動中のEFのみの評価で良いのかどうか疑問です。かなり心機能の悪い症例も含まれているかもしれません。心機能の割に登録時の心拍数が、平均81とかなり低いのも、初めからイベントが少なく、βブロッカーの活躍範囲が狭かった可能性もあります。

いろいろ検討したいところがたくさんありそうです。
by dobashinaika | 2014-09-12 21:40 | 心房細動:アップストリーム治療 | Comments(0)


土橋内科医院の院長ブログです。心房細動やプライマリ・ケアに関連する医学論文の紹介もしくは知識整理を主な目的とします。時々日頃思うこともつぶやきます。


by dobashinaika

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