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米国の主要学会による心房細動患者に行うべき医療行為と評価のまとめ:JACC誌

Atrial Fibrillation or Atrial Flutter Clinical Performance and Quality Measures
Heidenreich PA, Solis P, Estes NA III, et al.

ちょっとブログの方お休みを頂いておりました。また今月から再開いたします。
ACC/AHAから心房細動/心房粗動に関する臨床行為と評価に関するまとめが発表されています。
欧米の学会はこうした現場目線の指針を出してくれるのがありがたいです。日本では学会でなく,各分野のオピニオンリーダーと呼ばれる方が商業ベースで解説本を出して,その代わりとなっている感があり,それはそれでわかりやすいのですが,やはり多くの叡智が結集されての現場に即したハンドブックがほしいように思います。

本文は表形式でやや読みにくいのですが,ACCのメルマガが,外来,入院別に行為と評価に分けて4項目でまとめてくれていますので紹介します。
元論文はこちら

2016 ACC/AHA Clinical Performance and Quality Measures for Adults With Atrial Fibrillation or Atrial FlutterA Report of the American College of Cardiology/American Heart Association Task Force on Performance Measures
J Am Coll Cardiol. 2016;():. doi:10.1016/j.jacc.2016.03.521

1.行うべき行為:入院患者
・退院前にCHA2DS-VAScスコア評価
・退院前に抗凝固薬処方
・ワルファリン投与患者では退院前にPT-INR測定

2.行うべき行為:外来患者
・CHA2DS-VAScスコア評価
・抗凝固薬処方
・ワルファリン患者では月1回の1PT−INR測定

3.行うべき評価:入院患者
・退院前にβ遮断薬処方(LVEF<40)
・退院前にACE阻害薬/ARB処方(LVEF<40)
・永続性心房細動のリズムコントロールとしての抗不整脈薬の不適切処方がないか
・透析または末期腎不全患者へのドフェチライドまたはソタろールという不適切処方がないか
・人工弁患者への直接トロンビン阻害薬またはXa阻害薬という不適切処方がないか
・冠動脈疾患and/or弁膜症のない症例での抗血小板薬+抗凝固薬の投与がなされていないか
・EF低下心不全に対する非ジヒドロピリジン系Ca拮抗薬が出ていないか
・カテーテルアブレーション後に抗凝固療法がなされているか
・抗凝固療法について,患者と医師でShared decision makingがなされているか

4.行うべき評価:外来患者
・β遮断薬処方(LVEF<40)
・永続性心房細動のリズムコントロールとしての抗不整脈薬の不適切処方がないか
・透析または末期腎不全患者へのドフェチライドまたはソタトールという不適切処方がないか
・人工弁患者への直接トロンビン阻害薬またはXa阻害薬という不適切処方がないか
・人透析または末期腎不全患者への直接トロンビン阻害薬またはXa阻害薬(リバーロキサバン,エドキサバン)という不適切処方がないか
・冠動脈疾患and/or弁膜症のない症例での抗血小板薬+抗凝固薬の投与がなされていないか
・EF低下心不全に対する非ジヒドロピリジン系Ca拮抗薬が出ていないか
・抗凝固療法について,患者と医師でShared decision makingがなされているか

###極めてまっとうなことを言っていると思われます。β遮断薬や入院中のACE,ARBはそうなのかとも思いますが,あとはどれもおさえておくべき内容です。
それにしてもACC/AHAもCHADS2でなくてCHA2DS-VASc重視になったのですね。

$$$今週日曜の猫祭りで仕入れた猫スイーツ。壮観です^^
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by dobashinaika | 2016-07-01 17:40 | 心房細動診療:根本原理 | Comments(0)

発作性上室頻拍の止め方:2015年ACC/AHA/HRSガイドラインより:JACC誌

ACC/AHA/HRSから上室頻拍の管理に関する新しいガイドラインがでています。開業してからあまりお目にかかりませんが,それでも時に頻拍に出くわすとやや緊張します。
このへんでおさらいの意味で,急性期治療につきまとめてみます。

2015 ACC/AHA/HRS Guideline for the Management of Adult Patients With Supraventricular Tachycardia
A Report of the American College of Cardiology/American Heart Association Task Force on Clinical Practice Guidelines and the Heart Rhythm Society
Richard L. Page et al
J Am Coll Cardiol. 2015;():. doi:10.1016/j.jacc.2015.08.856


まずは「上室頻拍(SVT)の定義」
・「頻拍」とは心房 and/or 心室拍数>100bpm
・SVT:ヒス束より上位が関与する頻拍
・inappropriate sinus tachycardia(不適切な洞性頻拍),心房頻拍(単一起源,多起源),マクロリエントリー心房頻拍(心房粗動),接合部性頻拍,AVNRT(房室結節リエントリー性頻拍),副伝導路の関与するリエントリー性頻拍

<発作性上室頻拍の定義>
・規則正しく速い頻拍。突然発症停止
・AVNRT,AVRT(房室リエントリー性頻拍),心房頻拍

<機序のわからない規則正しいSVTの急性期治療>
迷走神経操作 and/or アデノシン静注

効果ない場合,行えない場合

血行動態安定

はい)β遮断薬,ジルチアゼム,ベラパミル静注→効果なし→カルディオバージョン
いいえ)カルディオバージョン

<迷走神経操作について:推奨度I,エビデンスレベルB-R>
・迷走神経操作(バルザルバ手技,頚動脈洞マッサージ)の迅速な施行はSVT停止の第一選択
・仰臥位で行う
・房室結節の関与しない頻拍には無効
・バルサルバ手技:ゴールドスタンダードな方法なし。一般には喉頭蓋を閉じての10〜30秒の息ごらえは胸痛内圧30〜40mmHG増加に相当
・頸動脈洞マッサージ:聴診による血管雑音のないことを確かめる。右または左の頸動脈を5〜10秒一定の圧力で押す
・他の方法:ダイビング反射(冷たい氷や濡れタオルを顔につける。検査室で回を10度の水に浸す
・148例の検討では,バルサルバ手技が頸動脈洞マッサージよりも効果的。複数主義による停止率27.7%
・眼球圧迫は危険でありすべきでない

<アデノシン静注:推奨度I,エビデンスレベルB-R>
・AVRT,AVNRTに対する停止率は78〜96%
・副作用として胸部不快感,息切れ,顔面紅潮などがあるが,超短時間作動なので,重篤なものはまれ
・心房粗動,心房頻拍との鑑別にも有用:アデノシンがこれらを止めることはまれ
・近位部からの急速静注+生食フラッシュが勧められる
・静注中は心電図を連続して取ることで診断にもつながる

<血行動態不安定時のカルディオバージョン:推奨度I,エビデンスレベルB-NR>
・迷走神経操作が失敗し,血行動態不安定であれば,速やかにカルディオバージョンを施行すべき

<血行動態安定時のカルディオバージョン:推奨度I,エビデンスレベルB-NR>
・SVT停止には極めて効果的
・全身鎮静あるいは麻酔下
・薬物静注で80〜98%は止まるとしても,まれに止まらないことがあるので,カルディオバージョンが必要な場合もある

<ジルチアゼム,ベラパミル静注:推奨度II-a,エビデンスレベルB-R>
・停止率:64〜98%
・あくまで血行動態安定時
・低血圧を招くことがあるので,20分程度の緩徐な静注が良い
・心室頻拍と早期興奮を伴う心房細動には禁忌
・β遮断薬が不適あるいはアデノシンで再発を繰り替えす場合にも有用
・収縮期心不全には不適

<β遮断薬静注:推奨度II-a,エビデンスレベルB-NR>
・エビデンスは限定的
・エスモロールとジルチアゼムではジルチアゼムが優る
・しかしながら,β遮断薬は安全で血行動態安定例での使用はリーズナブル

### SVTは,心室内変行伝導を伴う場合を除き,基本的に幅の狭い(120msec未満)QRSで規則正しい頻拍症です。そうした頻拍を見た場合,まず迷走神経操作を試みる。成功率は27%程度ながらこれで止まれば注射はいりません。

しかし一般的には止まらないことが多いので静注となります。専門医時代はアデノシンを躊躇なく使っていましたが,町医者としては患者さんに苦痛を与えることは忍びなくまた結構緊張するため,ほとんどベラパミルの静注を行っています。

当院では1Aを生食20CCにといて,まず半分を5分程度で静注し,その後数分観察,止まらなければもう5分かけて残りを入れます。血行動態が安定した若い人は5分で全部入れても良いと思われます。これで30分程度観察すると90%は止まると思われます。それでも止まらない場合は紹介します。

静注する前に血圧,心不全の有無を十分把握することが必須です。

$$$本日の夕焼け。怖いくらいに燃え盛りました。
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by dobashinaika | 2015-10-10 22:34 | 不整脈全般 | Comments(0)

NOAC使用の実践的ガイド:特に抗血小板薬との併用について:Europace誌

Updated European Heart Rhythm Association Practical Guide on the use of non-vitamin K antagonist anticoagulants in patients with non-valvular atrial fibrillation
Hein Heidbuche et al
EuropaceFirst published online: 31 August 2015


EHRA(欧州不整脈学会)の非弁膜症性心房細動患者のNOAC使用に関する実践的ガイドが改定されています。

全体の構成は変わりません。エドキサバンが各表に加わったことが一番ですが,その他にVKA⇔NOACのスイッチング方法,除細動の使用法,TIA/Stroke後のNOAC使用法などのシェーマが一つ一つ大変わかりすくなっています。

なかでも虚血性心疾患時のNOAC+抗血小板薬の使用について,ESCの非常に複雑な図がありましたが,それが大変シンプルになっている点が目につきました。なにかと引用がうるさいご時世ですが,あまりに有用だと感じたのでごく簡単に図にしてしまいました(期間限定で消えるかも)。

非常に長大なガイドですが,これの日本版が出たら,かなり売れると思いますねー(書こうかな〜笑)。痒いことろに手が届く記載や図が満載だし,そこが知りたいという項目が網羅されています。日本の学会もこういうものを出してほしいと思います。
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代替案(1年目まで):CHA2DS2-VAScスコア1点(男)or2点(女)&高出血リスクの場合DAPTのみ,
低アテローム血栓リスク:待機的の場合REACH or SYNTAXスコアによる? ACSの場合GRACE≧118
高アテローム血栓リスク:上記スコアによる,左主幹部,前下行枝近位部,近位分岐部,再発するMI

以前のガイドラインのブログはこちら
http://dobashin.exblog.jp/17727424/

$$$ 久々の青空に白い雲(網戸越しですみません)
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by dobashinaika | 2015-09-02 22:11 | 抗凝固療法:ガイドライン | Comments(0)

腹部大動脈瘤のスクリーニングに関するガイドライン:JAMA誌

Screening for Abdominal Aortic Aneurysm
Amber-Nicole Bird et al
JAMA. 2015;313(11):1156-1157


USPTFから腹部大動脈瘤のスクリーニングに関するガイドラインがでています。
日々の診療に直結する事柄ですので、まとめました。

<対象>
喫煙歴のある無症候性男性、65〜75歳

<主要な推奨>
・喫煙歴のある65〜75歳男性に対する1回のエコー(グレードB)
・喫煙歴のない65〜75歳男性に対する選択的スクリーニング(グレードC)
・喫煙歴のある65〜75歳女性のスクリーンングに関するエビデンスは希少(グレードI)
・喫煙歴のない女性のスクリーングはすべきでない(グレードD)


<臨床上の問題サマリー>
・腹部大動脈瘤の定義:前後径3cm以上
・50歳以上の一般住民対象のエコーと剖検によるスクリーニングでの有病率:男4〜8%、女1〜1.3%
・リスク因子:年齢、男性、喫煙歴、家族歴
・しばしば破裂するまで無症候性のことあり
・合併症発症率:75〜90%
・破裂のリスクは大動脈瘤の直径による:3〜3.9cm=年間破裂確率0%、4〜4.9cm=1%、5~5.99cm=11%
・緊急手術のアウトカムはpoor:入院及び30日死亡率は40%
・エコーは安全かつ費用対効果の良いツール:感度94~100%、特異度98〜100%

### なるほど、喫煙歴と性別で考えるわけですね。5cm以上だと破裂率は格段に上がりますね。あしたからカルテに65〜74歳喫煙歴ありの男性は一応チェック。

$$$ 散歩道沿いのお香専門店。先日発見。思わず入りたくなるいい感じのお店です。
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by dobashinaika | 2015-03-20 21:41 | 循環器疾患その他 | Comments(0)

ヨーロッパ心血管プライマリケア学会の心房細動脳卒中予防ガイドライン:EJPC誌

European Primary Care Cardiovascular Society (EPCCS) consensus guidance on stroke prevention in atrial fibrillation (SPAF) in primary care
FD Richard Hobbs et al
European Journal of Preventive CardiologyFebruary 20, 2015


ヨーロッパ心血管プライマリケア学会から心房細動における脳梗塞予防のコンセンサスガイドラインが出ています。
全パネルメンバーが同意するまで3サイクルのミーティングを繰り返して作成したものとあります。
プライマリケア医の実際に則した内容になっていますので、Practical recommendationsだけですが、これから逐次ご紹介いたします。

推奨度の表現として、"offer"は強い推奨(大多数の患者で利益が害を上回る)、"consider"はその次の推奨(多くの患者で利益が害を上回る)として用いられています。Offerは「勧める」「推奨される」、considerは「考慮する」と訳しました。

「心房細動において、脳卒中予防をおこなうかどうかをどう決定すべきか?」

<行われるべき脳卒中と出血リスクへの介入>
・心房細動の脳卒中リスク評価はCHA2DS2-VAScスコアのほうがCHADS2スコアより優れる。とくに抗凝固療法を思考しない人の同定いおいて。
・CHADS2スコアは簡便なので代わりに使っても良いが、CHADS2スコア、が1点以下の時はCHA2DS2-VAScスコアを用いて抗凝固療法の必要のない患者を同定すべきである
・CHA2DS2-VAScスコア0点の患者は抗凝固療法または抗血小板療法を勧められるべきでない
・CHA2DS2-VAScスコア2点以上の患者には抗凝固療法が勧められる。1点の患者には考慮される。いずれもリスクーベネフィットバランスを取った上で患者の好みに基づいて決定する
・次のステップとして、それぞれのリスク因子を改善することに注目することを目指す意味において、出血リスク評価にHAS-BLEDスコアが使われるべき
・HAS-BLEDスコアはCHA2DS2-VAScスコア2点以上の患者の抗凝固療法意思決定には使うべきではない。CHA2DS2-VAScスコア1点の患者の抗凝固療法のベネフィットバランスを考えるのに考慮されるべきである
・定期的に、少なくとも年1回、心房細動患者のリスク状況は、(年齢、新しい高血圧など)リスク因子の変化を再評価されるべき

<リスク評価(追加)>
・より実際的で強いリスク評価として簡便に年齢を考慮:65歳以上の女性、75歳以上男性ではCHA2DS2-VAScスコアの他のリスクを評価
・対照的に、65歳未満の人で追加リスクのない人は抗凝固療法の必要なし
・65歳以上で多くのリスク因子をもつ患者のリスク評価もすべき

### プライマリ・ケア医目線のガイドラインだけあって、実際的な印象です。やはりヨーロッパなのでCHA2DS2-VAScスコアに則っていますね。
抗凝固薬の選択のところも興味深いですが、少しずつアップしていきます。
メインの図はこちら
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$$$ 駐車場の看板を新しくしました 
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by dobashinaika | 2015-02-26 23:07 | 抗凝固療法:ガイドライン | Comments(0)

複数の合併疾患を考慮に入れたガイドラインの必要性:Circulation誌

AHA/ACC/HHS Strategies to Enhance Application of Clinical Practice Guidelines in Patients With Cardiovascular Disease and Comorbid ConditionsFrom the American Heart Association, American College of Cardiology, and US Department of Health and Human ServicesDonna
K. Arnett et al
Circulation. 2014;130:1662-1667


Circulation今週号の「心血管疾患と合併疾患を持つ患者の臨床的ガイドラインの適応戦略」に関する論説です。

<背景>
・2つ以上の合併疾患をもつ患者が1/4以上
・メディケアでは2つ以上が68%、6つ以上が14%

<合併疾患と臨床ガイドライン>
・虚血性心疾患、心不全、心房細動において合併疾患の問題が取り上げられている
・例:心房細動ガイドライン2014(ACC/AHA)における、心筋梗塞、妊娠、甲状腺機能亢進症他の合併疾患の扱い
・心不全と心房細動ガイドラインを除くと、その推奨は系統的ではない

・高齢者の増加で、合併疾患込みの複雑な状況への対処が求められる
・US Department of Health and Human Servicesがイニシアチブを取ったアクションが展開されている
・the Centers for Medicare & Medicaid Services (CMS)が情報提供あり

<主要心血管疾患における合併疾患の頻度(65歳以上)>
・4つの主要疾患において10の最も頻度の高い合併疾患
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・高血圧、脂質異常症が2大合併症
・高血圧、脂質異常症、虚血性心疾患が心不全、心房細動、脳卒中の3大合併疾患
・高血圧、脂質異常症、糖尿病が虚血性疾患の3大合併疾患
・関節炎、貧血、COPD、アルツハイマーも挙げれれる

・2つの及び3つの合併しやすい疾患
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・高血圧、脂質異常症と虚血性疾患の3つが最も合併しやすい
・糖尿病と関節炎も重要

<今後の方向>
・上記データは1)合併症のない心血管疾患患者はまれ 2)高血圧、脂質異常症のような一般的な危険因子が重大な心血管疾患に関連している、ことを占める
・しかるにガイドラインは、合併疾患に配慮したものが少ない
・合併疾患は、患者管理をより複雑にし、身体的、認知的、社会的、精神的、そして経済的問題への考慮も必要だが、ガイドラインの言及は限定的

・近年これへの打開策がある
・合併症の多い患者は、臨床試験から除外されやすいが、FDAのサポートを受けて、そうした多数の合併症を持った症例の取り込みを図っている
電子カルテと臨床登録の使用を増加させることで、多数の患者の縦断的研究が許されるであろう
・もう1点は、肥満、うつ、認知症、虚弱者を考慮にいれることである
・こうしたこれまで不足していたエビデンスが蓄積されれば、ガイドラインが個別的で患者中心の意思決定に役割を果たすだろう

・心不全と心房細動ガイドラインはその重要なステップである

### これまでのガイドラインは、心房細動なら、それひとつの疾患の推奨しか述べていなかったが、様々な合併背景が主要疾患を形作っているので、それらを考慮したガイドラインが必要。そのために電子カルテや登録研究によるデータベース構築が必要との論説。

FDAは最近、心房細動の分野でも大きな登録研究を主導していますね。電子カルテベースの大規模コホート研究が、毎週毎週どんどん出てきますが、ESCなどではガイドラインの根底を揺り動かすテータとなっています。

後ろ向きコホートの限界はありますが、日本ではこうした取り組みはものすごく遅れていますので、ほんとに学会に頑張ってもらわないと、5周も10周も周回遅れになりそうで怖いです。

Comorbid Conditionsは「合併疾患」ととりあえず訳しました。臨床背景といったニュアンスですね。

今日は、早朝の大崎八幡神社。パワースポット?というただ住まいは感じられず、自然と調和したさりげない景色でした。”パワースポット”って恣意的ですね。
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by dobashinaika | 2014-10-29 00:18 | 循環器疾患その他 | Comments(0)

カナダのガイドラインで抗凝固適応なしは実は「低リスク」ではない?:CJC誌

Canadian Journal of Cardiology DOI: http://dx.doi.org/10.1016/j.cjca.2014.10.018
Atrial fibrillation patients categorised as ‘not for anticoagulation’ with the 2014 Canadian Cardiovascular Society algorithm are not ‘low risk’
Gregory Y.H. Lip et al


疑問:カナダの心房細動ガイドラインで抗凝固療法の必要なしとされた患者は本当に低リスクなのか?

方法:
・65歳未満でCHADS2スコア0点の患者222582例を、CHA2DS2-VAScスコア(女性を除く)に当てはめる
・カナダのガイドラインで抗凝固療法必要なしの人で、CHA2DS2-VAScスコアで適応となる人のイベントレートを算出
・Cox比例ハザードモデル

結果:
1)ESCガイドラインで抗凝固適応かつカナダのガイドラインで抗凝固適応とならない人の年間虚血性脳卒中/全身性塞栓症発症率:4.32/人年 (3.26-5,74)

2)ESCガイドライン抗凝固適用なしとされたザブグループに比べハザード比3.08 (2.21-4,29)

3)血管疾患ありかつCHADS2スコア0点(カナダではアスピリンのみ推奨)のイベント発症率;4.84 (3.53-6.62)

結論:2014のカナダのアルゴリズムに従うと、抗凝固療法必要なしのサブグループの1年間脳卒中発症率は高い。これは「低リスク」ではないといえる。
CHA2DS2-VAScスコアに基づいたESCのガイドラインがよりリファインされている。

### またもLip先生からの挑戦状?です。
カナダのガイドラインで抗凝固適応なしかつESCで適応ありというと、女性を除くとなっているので「65歳未満でCHADS2スコア0点で血管疾患だけ持つ人」ということになります。

この特性のひとはどういう人なのか、以前から疑問なのです。若くて危険因子がないのに血管疾患あり。ちょっと考えにくいのですが(脂質異常症、喫煙、家族歴などがある人でしょうか)、そうした集団のイベント発生率は結構高いようです。元データをあたってみたいと思います。
おそらくデンマークあたりのNational datebaseだと思われますが、ESCはとにかくこの北欧中心の後ろ向き大規模コホートが後ろ盾みたいで、後ろ向きコホートだって色々バイアスがあると、ちょっといいたくなる気もします。

それにしてもLip先生のCHA2DS2-VAScスコア推しの姿勢は積極的ですね。こうしたconの意見をすぐに掲載するCJCのレビューアーにも敬意を評したいところです。

カナダのガイドライン作成委員会からのreplyが楽しみです。
Lip先生、日本のガイドラインにはどのような意見を持っているのか、聞いてみたいです。
カナダの新ガイドラインはこちら
http://dobashin.exblog.jp/20248153/
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柿の実がたわわに実っています。京都嵯峨野に落柿舎という、たしか芭蕉の弟子の去来の別荘があったと思いました。落柿舎なんてまさにシブい命名ですね、改めて。この実が落ちる頃、木枯らしが吹くのでしょう。
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by dobashinaika | 2014-10-20 21:11 | 抗凝固療法:ガイドライン | Comments(0)

ケアネット連載 「カナダの新しい心房細動ガイドラインはわかりやすい」更新いたしました。

ケアネット連載 〜Dr. 小田倉の心房細動な日々~ダイジェスト版~更新いたしました。

今回は「カナダの新しい心房細動ガイドラインはわかりやすい」です。
以前のブログの内容を明快なスライドで紹介しております。

ご笑覧ください。
http://www.carenet.com/series/afjournal/cg001089_0013.html (無料登録必要)
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ブログの方はこちら
http://dobashin.exblog.jp/20248153/
by dobashinaika | 2014-10-16 21:49 | 抗凝固療法:ガイドライン | Comments(0)

カナダの新しい心房細動ガイドラインはわかりやすい:CJC誌

カナダの心房細動ガイドラインがアップデートされました、

2014 Focused Update of the Canadian Cardiovascular Society Guidelines for the Management of Atrial Fibrillation
Can J Cardiol. 2014 Oct; 30(10):1114-30.


たくさんあるので、<脳卒中予防原則>の要点だけ紹介

推奨
1.心房細動(粗動)は、発作性、持続性を問わず脳卒中の予測インデックス(CHADS2スコアに基づいたCCAアルゴリズム)をを使って層別化すべき(推奨度強、高エビデンスレベル)

2.65歳以上またはCHADS2スコア1点以上の殆どの患者で抗凝固療法(強、中レベル)

3.CCSアルゴリズムでリスクがない(65歳未満またはCHADS2スコア0)、かつ血管疾患あり(冠動脈、大動脈、末梢)の時はアスピリン81mg(普通、中)

4.CCSアルゴリズムでリスクがない(65歳未満またはCHADS2スコア0)、かつ血管疾患なしは、抗血栓薬なし(普通、低)

5.非弁膜症性心房細動の抗凝固療法はワルファリンに優先して(可能なときは)ダビガトラン、リバーロキサバン、アピキサバン、エドキサバンを用いるべき(強、高)
※「非弁膜症性」とはリウマチ性僧帽弁狭窄症、機械弁、生体弁、僧帽弁形成がないこと

6,人工弁、僧帽弁狭窄症、eGFR (CCr)15~30の時はワルファリン(強、中)
※高齢、腎不全、低体重がない場合は2用量の家、一般に高用量を用いるべき
※ダビガトラン内服者では、脳卒中と出血リスクの観点から75歳以上は110mg1日2回にすべき。

7.抗凝固療法の適応ながら抗凝固薬を拒否する場合はアスピリン81mg+クロピドグレル75mgを使うべき(強、高)
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### 以前からカナダのガイドラインは大変クリアカットで使い安いと思っていましたが、この改訂版でもこれまでの各国のガイドライの中では最も使いやすい気がします。

アルゴリズムというのは、一番使いやすいです。しかもシンプル。CHADS2スコアの年齢を65歳以上にしてしまったところ、CHADS2スコア0点は血管疾患があればアスピリンにしたところ、が他のガイドラインと大きく違うと思われます。「女性だけ」「血管疾患だけ」はエビデンスがないからと退けています。

CHADS2スコアの年齢を65歳にして使うやり方は、私も拙著などで以前から提唱しておりますね^^。

NOACの使い分けに関しては、直接比較がないので、この薬をあの薬よりも選ぶという点で臨床家に与える影響を討論し、統計処理を行った間接比較は2つあるものの、その限界を知るべきだとしています。これも全く同感。

サブ解析については、
・ダビガトラン150は75未満でよいが75歳以上は110が良い
・アピキサバンとリバーロキサバンは75歳前後で結果に変わりはない。eGFR(CCr)30〜50ではリバーロキサバンか青いきサバンが良いかもしれない
・初期論文ではダビガトランは心筋梗塞をワルファリンとり増やしたが、追加データが出るとそれは明らかでなくなった
・メタ解析ではダビガトランはより心筋梗塞が多いとされ、全死亡率はへらすものの、最近のFDA研究はダビガトランとワルファリンの心筋梗塞が波動程度であるとしている
・消化管出血ははダビガトラン150とリバーロキサバンで最も多い
・ダビガトランの所見はFDAの大規模コホート研究で明らかになった。ディスペプシアと早期服薬中止例が多い
という解説付きです。

抗血小板薬の使用は意見がわかれるかもしれませんが、個人的にはCHA2DS2-VAScスコアを考えるより、このアルゴリズムで考えたほうがわかりやすいです。

他の項目も興味深いので、順次読んでいきます。

2012年の旧ガイドラインはこちら
http://dobashin.exblog.jp/14915909/
by dobashinaika | 2014-10-01 21:31 | 抗凝固療法:ガイドライン | Comments(0)

心臓以外の手術時における心電図や心機能評価に関するガイドライン(米国):Circulation誌

米国の心臓関係の学会(ACC/AHA)から、心臓手術以外の手術時に心臓をどの程度評価すべきかについてのガイドラインが発表されました。

2014 ACC/AHA Guideline on Perioperative Cardiovascular Evaluation and Management of Patients Undergoing Noncardiac Surgery: A Report of the American College of Cardiology/American Heart Association Task Force on Practice Guidelines

とかく小さな手術であれ、心電図や場合によっては心エコーなどを施行されることがよくありますが、どこまでが必要なのか迷うこともよくあります。そうした場合の指針として読みたいと思います。
とりあえずエッセンスの表を紹介します。

<前提>
・推奨度:クラスI=「すべき」、クラスIIa=「推奨」、クラスIIb=「考慮してよい」、クラスIII=「利益なし、または害」
・エビレンスレベル:A=多数の対象での評価(多数のRCTまたはメタ解析)、B=限定的な対象での評価(一つのRCTまたは非無作為化試験)、C=非常な対象での評価(専門会の意見、ケーススタディ、標準的ケア)
・「低リスク手術」:心イベントあるいは死亡リスクが1%未満、例として白内障手術、形成術
「上昇リスク=中〜高リスク」:上記リスク1%以上、上記以外の手術

<12誘導心電図>
・既知の冠動脈疾患あるいは器質的心疾患のある人。ただし低リスク手術をのぞく:推奨度 IIa、エビデンスレベルB
・無症候性患者。ただし低リスク手術をのぞく:推奨度 IIb、レベルB
・低リスク手術における常習的な12誘導心電図:推奨度 III(利益なし)、レベルB

<左室機能評価(心エコーなど)>
・原因不明の息切れ。推奨度IIa、レベルC
・悪化する呼吸困難あるいは臨床状態の変化する心不全を有する患者:推奨度IIa、レベルC
・臨床的に安定している患者の再評価:推奨度IIb、レベルC
・常習的な左室機能評価:推奨度III(利益なし)、レベルB

<運動負荷心電図>
・高リスクで心機能のよい患者:推奨度IIa、レベルB
・高リスクで心機能不明患者(管理法が変わる場合):推奨度IIb、レベルB
・高リスクで心機能中〜良:推奨度IIb、レベルB
・高リスクで心機能低下または不明(心筋虚血評価のための画像診断);推奨度IIb、レベルC
・低リスク手術への常習的な運動負荷心電図:推奨度III(利益なし)、レベルB

<心肺負荷試験>
・高リスク患者:推奨度IIb、レベルB

<非侵襲的薬物負荷試験>
・高リスクで低心機能(ドブタミン負荷、心筋シンチ):推奨度Iia、レベルB
・低リスク手術での常習的は薬物負荷:推奨度III(利益なし)、レベルB

<冠動脈造影>
・常習的冠動脈造影:推奨度III(利益なし)、レベルC

### 昨今話題の”Choosing Wisely"に通じるガイドラインですね。特に白内障や皮膚形成術のような低リスク手術では心電図を取らない。画一的に心エコーや運動負荷をしない、ということが一番注目したい点だと思います。

しかしながら日本の現場では、こうした「念のため」あるいは「何かあったときのため」あるいは「昔からやっているから」などなどの理由から、まさに常習的画一的に、手術前に心電図や心エコーなどを施行してるケースは莫大かと思われます。こうした検査を省くことによるコスト減も結構莫大ではないでしょうか。

低リスク手術時に相談をする医師、あるいはそれを受ける開業医も含めたすべての医師に、再考を促すものかと思います。

(サマリーの図がいいのですがPDFのため、後日アップします)
by dobashinaika | 2014-08-25 15:46 | 虚血性心疾患 | Comments(0)


土橋内科医院の院長ブログです。心房細動やプライマリ・ケアに関連する医学論文の紹介もしくは知識整理を主な目的とします。時々日頃思うこともつぶやきます。


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