抗凝固薬の適応と使い分けのシンプルなアルゴリズム:ESC誌より

Stroke prevention in Atrial Fibrillation
Gregory Y. H. LipEur Heart J (2017) 38 (1): 4-5. DOI:https://doi.org/10.1093/eurheartj/ehw584

ESCでLip先生の抗凝固薬に関するわかりやすいアルゴリズムが提唱されました。
3ステップとしていますが,どう考えてもCHA2DS2-VAScスコアとSAMe-TT2R2スコアの2ステップと思われますので,私なりにもっとシンプル化して図にしてみました。

解説は以下の通り

・心房細動があると脳卒中リスク5倍
・リスクファクターはホモジーニアス(各項目均一)ではない
・年間1%以上の脳卒中発症率が抗凝固薬投与の閾値
・アスピリンのNCB(ネットクリニカルベネフィト)は負の値
・CHADS2,CHA2DS2-VAScスコアの予測能は中有等:Cインデックス0.6くらい)
・CHA2DS2-VAScスコアは低リスク抽出に有効
・各種バイオマーカーを追加すれば予測能は上がるが,臨床での迅速性も考慮
・ステップ1:低リスクの同定
・ステップ2:CHA2DS2-VAScスコアの評価
・ステップ3:SAMe-TT2R2スコアの評価
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※ 男性1点以上,女性2点以上の場合,HAS-BLEDスコア3点以上であれば,出血の原因となる因子に注意し頻回のフォローアップを要す。

CHADS2スコア,CHA2DS2-VAScスコア,HAS-BLEDスコアは以下を参照

SAMe-TT2R2スコアは:女性,60歳未満,2つ以上の合併症,ワルファリンに影響ある薬剤(各1点),喫煙(2点),エスニックマイナリティー(2点)です。

### 私からコメントすると,
1.CHA2DS2-VAScスコアは日本人の低リスク患者同定には間口が広すぎる。(私見では65−69歳くらいの血圧,血糖安定時患者は保留?)
2.NOACオンリーでなく,ワルファリンを重視している点は非常に親近感を持つ
3.SAMe-TT2R2スコアが2てん以下の人は少ない(60歳以上の男性は既に2点以上)ということを踏まえて考えたいと思います。

ただ,かなりこのアルゴリズムでイケルと思います。このあとステップ4としてNOACの使い分けとなるととたんに面倒になりますが。。。

# by dobashinaika | 2017-01-24 19:10 | 抗凝固療法:適応、スコア評価 | Comments(0)

やはり発作性心房細動のほうが持続性,永続性よりも脳卒中が少ない:ENGAGE AFサブ解析

Stroke and Mortality Risk in Patients With Various Patterns of Atrial Fibrillation
Results From the ENGAGE AF-TIMI 48 Trial (Effective Anticoagulation With Factor Xa Next Generation in Atrial Fibrillation–Thrombolysis in Myocardial Infarction 48)
Circulation: Arrhythmia and Electrophysiology. 2017;https://doi.org/10.1161/CIRCEP.116.004267


疑問:発作性と持続性で心房細動の脳卒中や予後は変わるのか

方法:
・ENGAGE AF-TIMI 48試験における発作性心房細動(7日未満),持続性心房細動(7日以上1年未満)。永続性心房細動(1年以上)間でのアウトカム比較
・21105例,平均2.8年追跡

結果:
1)脳卒中/全身性塞栓症:発作性1.49%/年,持続性1.83%/年(P-adj =0.015),永続性1.95%/年(P-adj =0.004)

2)全死亡率:発作性3.0%/年,持続性(4.4%/年; P-adj <0.001) ,永続性(4.4%/年; P-adj <0.001)

3)年間大出血率;発作性2.86%,持続性2.65%,永続性2.73%
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結論:この試験では,発作性心房細動の血栓塞栓症発症率よび死亡率は持続性,永続性にくらべて少ない。ワルファリンに比較したエドキサバンの有効性安全性は心房細動の3パターンで同様であった。

### これまでは,おもにActive-Wの結果を引き合いに出して,「発作性も持続性もイベント発生率に差がないので発作性でも油断してはいけない」といったドグマが定説化してきたと思われます。

しかし最近になリ,RELYを除くNOACの2試験(ROCKET AF, ARISRTOTOLE)やSPORTIF,AVERROEAなどは発作性のほうが少ない
との結果を出しています。

最近のEHJのレビューでも同様のことが言われています。
http://dobashin.exblog.jp/22493317/

発作性,持続性同様というのは,実は前述のActive-WとSPAF試験くらいなんですね。

もちろん「発作性」と言ってもバリエーションが有り,「持続性」といっても持続化したburdenによって違いはありますが,こうした趨勢を見るとやはり適応の重み付けとして,たとえばCHADS2スコア1点でも持続性であればより積極的に抗凝固を考える気持ちにもなります。CHADS2やCHA2DS-VAScスコアに「持続性0.5点」くらいは追加できそうな最近の流れですね。

$$$ 認知症カフェで講話をしてきました。会場がお寺の講堂なので,自然と背筋が伸びました。
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# by dobashinaika | 2017-01-23 22:48 | 抗凝固療法:リアルワールド | Comments(0)

ACCによる周術期の抗凝固療法に関する意思決定パスウェイ:ヘパリンブリッジの適応は超限定的

2017 ACC Expert Consensus Decision Pathway for Periprocedural Management of Anticoagulation in Patients With Nonvalvular Atrial Fibrillation
A Report of the American College of Cardiology Clinical Expert Consensus Document Task Force
Journal of the American College of Cardiology DOI: 10.1016/j.jacc.2016.11.024

ACCから周術期の抗凝固療法に関するエキスパ−トコンセンサスがでています。かなり詳しくシェーマも充実しており,現時点での集大成的なレビューと思われます
とてもまとめきれませんので,ACCのメルマガでお勉強

1.ここでの意思決定パスウェイは経口抗凝固薬長期内服の非弁膜症性心房細動における周術期の抗凝固薬管理に関する意思決定の迅速で有用なツールとなる

2.抗凝固薬中止を考えるときは,ビタミンK阻害薬(長期半減期)かDOAC((短期半減期)か,患者の出血リスク,手技の出血リスク,追加の医療情報に気を配る

3.以下の手技(ペースメーカー, ICD植え込みなど)は低出血リスクであり,抗凝固薬は継続

4.患者出血リスクはHAS-BLEDスコアを評価する。それに加え最近3ヶ月以内の出血,血小板以上,INRの上昇(VKA),手術手技による出血の既往に留意する

5.患者に出血リスクがないか低リスク手技場合かつ患者出血リスクが高くないときは,VKAは中止してはならない

6.VKAを中止するときは,INR1.5-1.9の場合手技の3〜4日前,INR2.0-3.0の場合5日,3.0を超える場合少なくとも5日中止する。手技前24時間以内にINRを再チェック

7.ヘパリンブリッジを考えるのは次の2つのシナリオのときのみ
 1)VKA使用患者で年間10%以上の脳卒中/全身性塞栓症リスク(CHA2DS2-VAScスコア27^9点)を持つ,または3ヶ月以内の虚血性脳卒中
  2)VKA使用患者で特に出血リスクのない脳卒中/全身性塞栓症の既往(3ヶ月以上前)のある人

8.DOACを中止するときは,中止日数はクレアチニンクリアランスとその手技の出血リスクで決まる。標準的な表はこの意思決定プロセスに沿っている。ヘパリンブリッジはDOAC治療には適応なし(すみません。表は掲載していません)
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9.抗凝固薬再開時は,完全止血の確認をすべき。その後24時間以内にVKA治療再開と24〜72時間のヘパリンブリッジ(適応ありの場合。継続時間は出血リスクによる:筆者注:低出血リスクは24時間以内,高リスク例は48〜72時間ヘパリンブリッジ後)。DOACはもし患者が経口投与に耐えられないのでなければ,ヘパリンブリッジなしに24〜72時間前(出血リスクによる)に再開すべきではない(筆者注:高リスクでは24〜72時間経ってから,低リスクではその日のうちに)

10. DOACは機械弁患者に使用してなならない

### このレビューはアルゴリズムのシェーマが充実していますので,興味のある方は見てみてください。ただしアメリカさんらしく?いろんな場合を想定して盛り過ぎの感があり,ここまで書かなくてもわかるよ的な感じかもしれません。
ヘパリンブリッジは,VKAではかなり虚血性脳卒中の高リスクまたは既往歴のある人に限っており,NOACでは必要ないと言い切っているのが小気味よいです。
なお高出血リスクとはHAS-BLEDスコア3点以上のことかと思われます。

$$$ 仙台では恒例のどんと祭です。
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# by dobashinaika | 2017-01-16 23:55 | 抗凝固療法:抜歯、内視鏡、手術 | Comments(0)

TAVIと心房細動:ESC誌

The Year in Cardiology 2016: arrhythmias and cardiac implantable electronic devices:Atrial fibrillation: pathophysiology, risks, treatment opportunities, and the new ESC AF guidelines

ESC循環器病学この1年から,TAVI(transfemoral aortic valve replacement)と心房細動のまとめです。
一度おさらいしようと思っていたので,良い機会でした。

・大動脈狭窄のある人はもともと心房細動を有している事が多い

・手術やTAVI後早期に潜在性のものが新規発症することがよくある

・洞調律例に比べ心房細動例のほうが,TAVI後の脳卒中,出血,死亡率とも高い

Atrial fibrillation in patients undergoing transcatheter aortic valve implantation: epidemiology, timing, predictors, and outcome. Eur Heart J 2016; doi: 10.1093/eurheartj/ehw456

・弁置換後より,TAVI後のほうが心房細動発症が少ない

・しかしこうした術後心房細動がレートコントロールとリズムコントロールとどちらがよいかについては不明な点が多い

・特にアミオダロンの役割についてはさらなる検討が必要

・TAVI後心房細動にNOACかVKA(ワルファリンなど)が良いかは論議のあるところ

・この議論に関しては未だに答えが出ていない

Valvular heart disease among non-valvular atrial fibrillation: a misnomer, in search of a new term. Eur Heart J 2015;36:1794–1797.

### TAVI後に心房細動がよくみられるとは聞いていましたが,TAVIが原因でと言うより,潜在的リスクをTAVI施行で掘り起こした(注目を向けた)からということでしょうか。NOACの適応が「非弁膜症性」とはいえ,ASはガイドライン上も原理的にも含まれない,つまり使える可能性ありなわけですが(保険では査定される場合もありえるかもしれませんが,注釈が必要?),どちらが良いかは今後研究がでてくるのだと思われます。

$$$ かなり正しく評価がされるようになってきて嬉しい限りです。主演女優賞までは行きませんでしたが,
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# by dobashinaika | 2017-01-12 23:36 | 心房細動:リアルワールドデータ | Comments(0)

心房細動の新しいメカニズム:心房細動の進行には,心外膜脂肪の線維化が関与:ESC誌

European Heart Journalの恒例の「循環器学この1年」より,「不整脈&植込み型デバイス」ー「心房細動:病態生理,リスク,カテーテルアブレーション,新ガイドライン」の紹介です。

本日は心房細動メカニズム

The Year in Cardiology 2016: arrhythmias and cardiac implantable electronic devices
DOI: http://dx.doi.org/10.1093/eurheartj/ehw629


<心房細動の進展は心外膜下の脂肪組織が線維組織に置き換わることが関与している>
Atrial fibrillation is associated with the fibrotic remodelling of adipose tissue in the subepicardium of human and sheep atria. Eur Heart J 2015; doi: 10.1093/eurheartj/ehv625

・心房細動の病態生理を語る上で,心房細動のリモデリングに関する非常に興味深い実験的及び診療的研究
・心房細動進展の強力なリスク因子とされていた心房外脂肪組織が線維組織に徐々に置き換わり心房細動の器質を提供する
・この研究は心房細動と肥満の研究を説明できる可能性がある。
・更にこれらの研究から,体重減少が心房細動持続時間の減少に関与することが示され,さらに構造的リモデリングの改善が心房細動を減らせるかどうかに焦点を当てられるだろう。

<MRIを用いた心房筋線維化の可視化>
Magnetic resonance imaging of atrial fibrosis: redefining atrial fibrillation to a syndrome. DOI: http://dx.doi.org/10.1093/eurheartj/ehv514


・MRIによる心房線維化の同定と定量化は有望。
・ただし心房壁が薄く方法論的には障壁多い。
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### どちらも2015年の論文ですが,追試論文がその後も出ていますので,取り上げられているようです。
しかし,心房細動に心筋の外の脂肪組織の線維化までが関与しているとは,以前は思っても見ないことでした。肥満の人ほどこの心外膜の脂肪も多いので心房細動リスクが大きいのもこれで頷けます。それがMRIでより明瞭に同定できるようにでもなれば,MRIが心房細動の早期発見に寄与する時代も遠くないかもしれません。

$$$ 近所で拾ってきた子です。知り合いの方に譲って4ヶ月,立派に育ってくれて嬉しい限り^^
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# by dobashinaika | 2017-01-10 23:29 | 心房細動:リアルワールドデータ | Comments(0)


土橋内科医院の院長ブログです。心房細動やプライマリ・ケアに関連する医学論文の紹介もしくは知識整理を主な目的とします。時々日頃思うこともつぶやきます。


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