長時間労働者(週55時間以上)は標準時間労働者よりも心房細動を発症しやすい:EHJ誌


疑問:長時間労働と心房細動との関係は?

方法;
・ヨーロッパのいくつかのコホート研究のメタ解析
・85494人対象。平均43.4才
・心房細動の記録なしの人
・心電図、カルテ、薬剤伝票、死亡統計から解析
・10年間追跡
・長時間労働者(週55時間以上)vs.標準労働時間(週35−40時間)

結果:
1)心房細動新規発症:1061例(12.4/1000人年

2)長時間労働者は標準労働時間の1.4倍の発症率(ハザード比= 1.42, 95% CI = 1.13–1.80, P = 0.003)

3)コホート間の明らかな異質性なし (I2 = 0%, P = 0.66)

4)冠動脈疾患、脳卒中を除いても結果は同様

5)肥満、アルコール、高血圧といった行楽因子を調整後もほぼ同様
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結論:長時間労働者は標準時間労働者よりも心房細動を発症しやすい

### 年齢、性別、社会経済状態、から併存疾患、アルコール、肥満などの因子を補正してのデータです。
実際には心電図で1回でも記録できた人も含まれると思われますので、脳卒中や死亡率にまで影響するかは不明かとは思います。しかし心房細動のmodified factorとしての自律神経活動はつねに考慮すべき点ですので、その背景の疲労や精神的ストレスの影響は当然気にしたいところで、それをきちんと検証したデータとして貴重と思われます。

# by dobashinaika | 2017-08-17 18:42 | 心房細動:リアルワールドデータ | Comments(0)

「もう怖くない!心房細動の抗凝固療法」8月末刊行予定です。

宣伝で恐縮です。心房細動関連の2冊目の本を書きました。心房細動や抗凝固療法についてブログなどで書きためたものの現時点での集大成です。非専門医、専門医を問わずご参考になるように書いたつもりですので、ぜひお手にとっていただければ幸いです。
8月末刊行予定です。(Amazonでの予約はもうしばらくになります。)
http://www.bunkodo.co.jp/book/detail_1415.html
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# by dobashinaika | 2017-08-09 09:56 | インフォメーション | Comments(0)

NOAC vs ワルファリン。リアルワールドデータのメタ解析結果:Stroke誌

Stroke. 2017;STROKEAHA.117.017549 https://doi.org/10.1161/STROKEAHA.117.017549

臨床上の疑問:臨床試験の外のリアルワールドにおいて,NOACのビタミンK阻害薬(VKA)にくらべての安全性,有効性はどうか?

方法:
・心房細動患者の脳卒中予防に関するNOACとVKAの比較をした観察研究のシステマティックレビューとメタ解析
・国内あるいは。保険上のデータベースを使用
・結果に虚血性脳卒中,虚血性脳卒中あるいは全身性塞栓症,あらゆる脳卒中あるいは全身性塞栓症,心筋梗塞,頭蓋内出血,大出血,消化管出血,死亡を含む研究
・MOOSEガイドラインとGRADEを用いて解析

結果:
1)28研究:ダビガトラン24,VKA23,リバーロキサバン14,アピキサバン7,エドキサバンなし。各研究間に明らかなバイアスなし

2)ダビガトラン
脳卒中/全身性塞栓症:明らかな差なし:HR 1.17; 95%CI 0.92-1.50
心筋梗塞:明らかな差なし:HR 0.96; 95%CI 0.77-1.21
頭蓋内出血:明らかにVKAより少ない:HR 0.42; 95%CI 0.37-0.47
死亡:明らかにVKAより少ない:HR 0.63; 95%CI 0.52-0.76
消化管出血:明らかにVKAより多い:HR 1.20; 95%CI 1.06-1.36

3)リバーロキサバン
脳卒中/全身性塞栓症:明らかな差なし:HR 0.73; 95%CI 0.52-1.04
頭蓋内出血:明らかにVKAより少ない:HR 0.64; 95%CI 0.47-0.86
死亡:明らかな差なし:HR 0.67; 95%CI 0.35-1.30
消化管出血:明らかにVKAより多い:HR 1.24; 95%CI 1.08-1.41

4)アピキサバン
脳卒中/全身性塞栓症:明らかな差なし:HR 1.07; 95%CI 0.87-1.31
頭蓋内出血:明らかにVKAより少ない:HR 0.45; 95%CI 0.31-0.63
死亡:明らかにVKAより少ない:HR 0.65; 95%CI 0.56-0.75
消化管出血:明らかにVKAより少ない:HR 0.63; 95%CI 0.31-0.63

結論:リアルワールドデータは,NOACとVKAを比較したRCTの知見を確定し,補強するものである

### NOAC vs VKAに関するおびただしい数のRWD(リアルワールドデータ)がでておりますが,そのメタ解析です。とうとう出ました。

大雑把に言えば
1)脳卒中/全身性塞栓症はNOACとVKAは同等
2)頭蓋内出血はNOACが少ない
3)全死亡,消化管出血(心筋梗塞)はNOACにより異なる
です。まとめてみれば,やはり従来から認められている傾向になったという感じです。

当然RWDですので,患者背景,アドヒアランス,処方適応等々に交絡因子は残存しているはずです(たとえスコアマッチさせたとしても)。またNOACの異なる用量に関しては検討されていません。さらにRWDは,保険ベースで,大病院も診療所も一絡げの結果もあれば,登録研究によってはやはりかなり選択バイアスのかかったコホートもあります。

よく言われるようにおそらくどのコホートでもVKAは高リスク者に使われる傾向にあり,NOACは低用量が好まれる傾向にあると思われます。

どんな患者さんにどの薬が処方されていたかが大事ですので,全文把握したらまたお知らせします。

$$$ 昨日今日の仙台の寒さと行ったら。。。こたつを出したという患者さんまでいらっしゃいました。冗談でなく。
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# by dobashinaika | 2017-08-04 22:16 | 抗凝固療法:リアルワールド | Comments(0)

ダビガトランの中和薬、イダルシズマブの実臨床における効果と安全性:NEJM誌


臨床上の疑問:ダビガトランの中和薬、イダルシズマブの大出血時や緊急手技時での効果と安全性はどうか?

方法:
・グループA:ダビガトラン内服中のコントロール不能な出血患者に対しイダルシズマブ5g静注
・グループB:ダビガトラン内服中に緊急手術が必要なった患者
・主要エンドポイント:イダルシズマブ投与4時間以内における抗凝固中和(希釈トロンビン時間またはエカリン凝固時間)の最大パーセンテージ
・副次エンドポイント:止血による修復(臨床医による)を安全性評価(血栓再発も含む)

結果:
1)503例:グループA301例,,グループB202例,オープンラベル

2)ダビガトランの中和は4時間以内ぶ100%の症例で達成

3)グループAにおける止血までの時間(中間値):2.5時間

4)グループBにおける施術開始までの準備時間:1.6時間,止血率:93.4%

5)90日後までの血栓イベント:グループA 6.3%,グループB 7.4%

6)死亡率:グループA 18.8%,グループB 18.9%
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結論:イダルシズマブは,緊急症例において迅速かつ安全にダビガトランの抗凝固作用を中和した。

### イダルシズマブの臨床試験RE-VERSE AD studyです。もう既に実臨床で使われていますね。緊急手術でも93%で止血が可能がだったのことで,かなり効果はあるように思われます。

死亡率は決して低くありませんが,大出血症例が含まれており,またプラセボアームがないので,何も投与しないときと比較してどうなのかについては不明です。

第III相比較試験のデータについてはこちら

$$$ 今日のニャンコ
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# by dobashinaika | 2017-08-02 21:49 | 抗凝固療法:中和方法 | Comments(0)

心房細動は血栓塞栓症の原因ではなくCHA2DS2-VAScスコアで2点相当のリスク因子のひとつにすぎない:JACC誌


疑問:心房細動自体は本当に脳卒中の主要なリスク因子なのか?

背景:
・CHA2DS2-VAScスコアは心房細動患者におけるリスク評価ツールとして確立されている。
・心房細動それ自体が脳卒中の原因となる因子なのかはわかっていない
・大多数(80〜90%)の脳卒中患者では心房細動は記録されていない。

方法:
the U.K. Biobank cohort登録患者502353例
・40〜69歳の患者,英国のGPによる登録。2006〜2010年

結果:
1)平均57+/-8歳:81%が65歳未満,19%が65〜74歳,46%が女性,平均追跡期間2.2年

2)高血圧29%,脳卒中/TIAの既往2%,血栓塞栓症の既往3%,心不全1%,血管疾患3%,糖尿病5%

3)心房細動例における血栓塞栓症発症率:0.86(95%CI;0.74-1.01)/100人年

4)非心房細動例における血栓塞栓症発症率:0.14(95%CI;0.13-0.15)/100人年

5)CHA2DS2-VAScスコアは心房細動例の脳卒中を予測した:N = 9,947; p < 0.001; C-statistic: 0.64

6)同様に非心房細動例の脳卒中も予測可能だった:N = 492,406; p < 0.001; C-statistic: 0.64

7)CHA2DS2-VAScスコア2点未満の心房細動例の血栓塞栓症発症率:0.48 (0.35-0.67)

8)CHA2DS2-VAScスコア4点未満の非心房細動例の血栓塞栓症発症率:0.12(0.11−0.13)

9)CHA2DS2-VAScスコア2点の心房細動例における血栓塞栓症発症率:0.80 (0.59-1.08)

10)CHA2DS2-VAScスコア4点の非心房細動例における血栓塞栓症発症率:0.76 (0.64-0.91)

11)CHA2DS2-VASc-A2スコア(CHA2DS2-VAScスコア+心房細動あり2点/心房細動なし0点)は一般住民における血栓塞栓症を十分便予測しえた:N = 502,353; C-statistic: 0.67
a0119856_23265084.gif
結論:CHA2DS2-VAScスコアは心房細動のない例でも血栓塞栓症の予測に役立つ。このスコアに心房細動2点として別に追加したスコアを一般住民に当てはめる新しくてより深いスコアを考案した。CHA2DS2-VASc-A2スコア4点以上に抗凝固薬を詳報すべきかどうかは,このデータだけからは結論できない。さらなる研究を提案したい。

### なるほどねー。心房細動クラスタ(そんなのあるのか?)にとってはまさに発想の転換ですね。
心房細動を特別視せず,他の因子と並列に捉えた場合,心房細動はCHA2DS2-VAScスコアで2点程度の寄与危険なんですね。まあCHA2DS2-VAScスコア0点では心房細動があっても投与しなくてよかったので,ある意味2点相当というのはうなづけますが,改めてこういたデータを突きつけられると,心房細動がまずあってそっからリスク評価を考えるという従来の発想法をリセットし,心房細動も一つの危険因子としてとらえたくなるわけです。

ただ,では心房細動なしでもCHA2DS2-VAScスコアが4点以上なら抗凝固薬かというとことは単純ではないですね。たとえば,75歳以上,糖尿病,高血圧の人は4点ですが,全員抗凝固薬かという話になります。こういう患者さんはものすごくいますので,高血圧や糖尿病の重症度その他をよく考える必要があります。出血リスクも考える必要があるし,また85歳以上でもそうかというと,当然まだ何も言えないと思われます。

ただ従来からも脳卒中のリスクスコアはいくつかありますが,その中では簡便なものと考えられます。追加試験を待ちましょう。

$$$ 今日の収穫
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# by dobashinaika | 2017-08-01 23:29 | 抗凝固療法:適応、スコア評価 | Comments(0)


土橋内科医院の院長ブログです。心房細動やプライマリ・ケアに関連する医学論文の紹介もしくは知識整理を主な目的とします。時々日頃思うこともつぶやきます。


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