NOACはワルファリンに比べて、腎有害事象リスクを有意に低下させる:JACC誌

Renal Outcomes in Anticoagulated Patients With Atrial FibrillationYao X, Tangri N, Gersh BJ, et al. J Am Coll Cardiol 2017;70:2621-2632.


疑問:抗凝固薬の種類により腎機能への影響は違うのか?

方法:
・米国の後ろ向きコホート研究
・9769例、平均72.6歳、ワルファリン、ダビガトラン、リバーロキサバン、アピキサバンいずれか服用者。平均追跡10.7ヶ月
・アウトカム:eGFR30%以上減少、Cr2倍上昇、急性腎障害、腎不全

結果:
1)複合エンドポイント(2年):eGFR低下24.4%、クレアチニン上昇4%、急性腎障害14.8%、腎不全1.7%
2)プール解析:eGFR30%以上減少、Cr2倍上昇、急性腎障害についてはNOACがワルファリンより明らかに少ない
3)上記ハザード比:eGFR30%以上減少0.77、Cr2倍上昇0.62、急性腎障害0.68
4)ダビガトラン、リバーロキサバン(アピキサバンは除く)は有意に腎機能の有害事象が少なかった
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結論:ダビガトラン、リバーロキサバン使用患者はワルファリンに比べて、腎機能の有害事象の有意な低下と関連あり

### 機序としては、ビタミンK依存性のあるGammacarboxyglutamic acidが腎血管石灰化を抑制しますが、ワルファリンはこのタンパクマトリックスの合成を阻害するために、腎症を促進し、NOACはXa因子やトロンビンが血管炎症に関与しており、これらを抑制することで腎症を抑えるということのようです。

なお、この研究は、薬剤が腎に与える影響であり、腎機能が低下している人への投与のアウトカムではないので、そこは注意です(言うまでもないですが)。

# by dobashinaika | 2017-12-13 18:28 | 抗凝固療法:全般 | Comments(0)

抗凝固薬の出血管理に関するACCのコンセンサス文書

ACCの専門部会から,抗凝固薬使用患者における出血管理に関するコンセンサス文書がでました。
非常によくまとまっています。

オーバービューのシェーマのみ日本語にして紹介します。
細かい止血方法などシェーマで表されていて,大変参考になります。
1)出血の評価と重症度判定
2)出血の管理・コントロール
3)抗凝固薬の再開とその時期の決定
の3ステップでまとめられています。
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$$$ 京都にもネコがいた(当然)^^
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# by dobashinaika | 2017-12-07 00:47 | 抗凝固療法:全般 | Comments(0)

”ワルファリン、使えてこそのNOAC/DOAC”という演題で講演しました。

昨日は,ワルファリンを販売している製薬企業が協賛する通称「血液サラサラ研究会」で講演いたしました。今時ワルファリン推しの講演会など皆無でしょうし,開催してもその講演会のCP比は当然赤字でしょうから,協賛していただいた製薬企業(もちろんE社)の懐の深さに深謝致します(ただし,同社の協賛は今回が最後とのことで残念ですが。。)
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講演の主要スライドを掲載しました。
骨子はこんな感じです。

NOACの「不都合な真実」は患者階層ごとにある
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レベル0(RCT参加者)
・ワルファリン群のターゲットINRが日本のそれより高い
・NOACの用量設定,服薬回数について根拠希薄な部分がある

レベル0-レベル1(実臨床患者;アドヒアランス良好)間
・RCT基準に合致する実臨床患者は50〜70%くらい
・RCTと実臨床を埋めるRWDもいまいち混沌としている(FushimiのアウトカムはNOAC=ワルファリン)

レベル1−2(実臨床患者:アドヒアランス不良)間
・NOACはよく管理されたワルファリンに比べアドヒアランスが良いとは必ずしも言えない
・NOACを飲み忘れた場合のリスクは高い

レベル2−3(高コストのため飲めない方)間
・低所得者,年金生活者,療養病床/施設入所者は服用できない

レベル3−4(診断されていない心房細動)間=これは抗凝固薬全体の不都合です。
・潜因性脳塞栓は33%も存在

その他:NOACの不都合
・4つのNOACいずれも出血その他でだめで,ワルファリンしか使えない場合がある。
・小出血,脱水時などモニタリングによるこまめな管理をしたいができない。
・人工弁,僧帽弁狭窄症は禁忌,左室内血栓は適応外

などお話し,LIp先生の使わけアルゴリズムを示しまとめました。
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もちろん異論はあると思われます。そうはいっても,NOACの簡便さと頭蓋内出血の少なさの魅力は大きいのではないかと。確かにNOACが抗凝固薬の普及に果たした役割は非常に大きいと思われます。わたしも実際半数の人には処方しています。

ですが,私としてはもちろん「ワルファリンだけでいい」と言いたいわけではなく,まだまだ「ワルファリンの活躍できるテリトリーは多く」,「ワルファリンでしか対応できない症例も少なくない」,ので「非常に低価格で,使い勝手次第ではNOAC/DOACと同等なアウトカムを持つ従来薬の使いこなしスキルを,臨床家としては持ち合わせておきたい」と言いたいのです。
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なお,本講演会も,いつもどおり製薬企業との間で金銭的COIはありません。
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$$$ 週末所用で30数年ぶりにシーズン最盛期の京都へ。永観堂の凄まじいばかりの紅葉です。
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# by dobashinaika | 2017-12-01 00:06 | 抗凝固療法:ワーファリン | Comments(0)

2017米国高血圧ガイドラインのまとめ(2):JACC誌より

AHA/ACC高血圧ガイドラインの続きです。


パート1;ジェネラルアプローチ,スクリーニング,フォローアップ

5.:
・新規発症、3剤以上併用しても治療抵抗性高血圧、急性発症、30歳未満、過度な臓器障害(脳血管疾患、網膜症、左室肥大、HFpEF, HFrEF、冠動脈疾患、慢性腎臓病、末梢血管疾患、アルブミン尿)、高齢者の拡張期高血圧発症、原因不明または過度な高カリウム血症では二次性高血圧のスクリーニングが必須。
・スクリーニングには、CKD、腎血管性高血圧、原発性アルドステロン症、閉塞性睡眠時無呼吸症候群。薬剤性高血圧(NSAI、ステロイド/男性ホルモン、点鼻薬、カフェイン、モノアミン酸化酵素阻害薬、アルコールなどが含まれる
・より特異的な臨床的特徴が見られれば、稀な二次性高血圧(褐色細胞腫、クッシング症候群、先天性副腎過形成、甲状腺機能低下症、甲状腺機能亢進症、大動脈縮窄症)のスクリーニングが必要。
・上記の特徴が認められた場合は、専門医紹介が勧められる。

6:
・非薬物療法は以下の通り:体重減少,健康的ダイエット,塩分制限,カリウムサプリ,構造的プログラムによる運動量増加。
・標準飲酒量は男性で1日2ドリンク以下,女性で1ドリンク以下(1ドリンク=ビール350cc程度:訳者注)。こうしたそぞれのライフスタイルの変化で収縮期4-5mmHg,拡張期2-4mmHg減少が得られる。しかし,低ナトリウムダイエット,飽和脂肪酸や全脂肪ダイエット,果物,野菜は収縮期で薬11mmHg減らす。

7.
・薬物療法による降圧は動脈硬化性心血管疾患(ASCVD)リスクを減少させる。
・高齢者,冠動脈疾患,糖尿病,脂質異常症,喫煙者,慢性腎臓病では,ASCVDの高リスク患者なので,NNYは低い。
冠動脈疾患二次予防患の降圧薬による目標値は130-80mmHg以下
10年間の推定ACVDリスクが10%以下の一次予防患者では目標値は130-80以下
・冠動脈疾患なしで10年リスク10%未満なら目標値は140−90以下
・女性の高血圧有病率は50代まで男性よりも低いが,その後は高い,
・女性は(SPRINT試験などでも),妊娠中の管理を除くと,RCT(ランダム化比較試験)は乏しい。
・女性は男性に比べ,初回血圧目標値,ゴール,降圧薬の選択,併用薬についてもエビデンスに乏しい。
・明らかな高血圧,既知の冠動脈疾患リスク,10年ASCVDリスク10%以上の患者の目標値は130/80未満

8.フォローアップ:
・elevated BPあるいはステージ1高血圧の低リスク例では,3〜6カ月の非薬物療法ごとに血圧評価
・ステージ1高血圧およびASCVD高リスク(10年リスク10%以上)は非薬物療法および1ヶ月間の降圧薬(血圧測定反復下)で管理すべき。
・ステージ2高稀有圧はシャキ診断から1ヶ月以内にプライマリ・ケア医により評価されるべき。
・ステージ2では,非薬物療法と異なるタイプの2つの降圧薬を組み合わせ,1ヶ月後に再評価
・著明高血圧(160/100以上)では,注意深いモニタリングと適宜用量調節をおこない,迅速な評価と薬物療法が必要。

### 一次予防でややリスクの高い例では130/80以下を目指すと。従来より厳しめの設定となっているようですね。

$$$ そろそろ秋も終わりですね。でもまた春が来ます。
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# by dobashinaika | 2017-11-24 01:04 | 循環器疾患その他 | Comments(0)

2017米国高血圧ガイドラインのまとめ(1):JACC誌より

ごぶさたしてすみません。
ACC/AHA/AAPA/ABC/ACPM/AGS/APhA/ASH/ASPC/NMA/PCNA(要するに米国)の高血圧ガイドラインが発表されています。

ACCのメールマガジンによるサマリーを訳しましたのでご参照ください。まずパート1の1−4(1−8のうちの)です。
2017 Guideline for High Blood Pressure in Adults

パート1;ジェネラルアプローチ,スクリーニング,フォローアップ

1.今回のガイドラインは2003年発表のJNC7のアップデート。高血圧関連心血管疾患リスク,ABPM(自由行動下血圧),HBPM(家庭血圧),降圧薬投与の基準,血圧のゴール,治療,管理改善のストラテジー,その他の重要事項に関する包括的なもの。

2.
・医療提供者は以下の分類をフォローすべき;
正常120/80mmHg未満
elevated 120-129/80未満
ステージ1高血圧 130-139または80-89mmHg
ステージ2高血圧 140以上または90mmHg以上
・分類の前に血圧は2機会以上で2回以上測定すること。
・職場の外での自己血圧測定により診断及び降圧薬の用量を確定すること。
・場所/方法に基づく血圧の基準は:職場/診療所 140/90mmHg。HBPM 135/85,日中ABPM 135/85,夜間ABPM 120/70,24時間ABPM 130/80
・治療前に収縮期>130かつ<160または拡張期>80かつ<100の成人では,白衣高血圧スクリーニングのため日中ABPMまたはHBPMのいずれかの測定が適切である,
・職場血圧がelevated(120-129/<80)で高血圧基準を満たさないときは,仮面高血圧診断のため,日中ABPMまたはHBPMが適切である。

3.
・高血圧のない45歳の成人において,今後40年の高血圧発症確率は93%(アフリカンアメリカン),92%(ヒスパニック),86%(白人),84%(中国人)である。
・2010年においては,高血圧は死亡や障害の残る人生の年月の主たる原因であった。
・高血圧は,女性とアフリカンアメリカンでは,白人よりも予後に大きく寄与する。
・概観すると,収縮期<115から180mmHg,拡張期<75から>105mmHgまでは血圧増加により心血管リスクは指数関数的に増加する。
・収縮期20,拡張期10の血圧上昇はそれぞれ死亡,脳卒中,心疾患,他の血管疾患を2倍に増加させる。
・30歳以上のひとでは,高い血圧は心血管疾患m狭心症,心筋梗塞,心不全,脳卒中,末梢血管疾患,腹部大動脈瘤のリスク増加に関連する。
・収縮期血圧は,一貫して心血管疾患増加に関連するが,拡張期血圧はそうではない。

4.
・高血圧合併心血管疾患患者のスクリーニングと管理で重要なことは以下:喫煙,糖尿病,脂質異常症,過体重,運動不足,不健康なダイエット,精神社会的ストレス,睡眠時無呼吸。
・一次性の高血圧における基本的は検査は;空腹時血糖,血算。血清脂質,基礎的な生化学検査,TSH,尿検査,心電図,可能であれば心エコー,尿酸,尿中アルブミン-クレアチニン比

### 今日のニャンコ。どこにいるかわかりますか?
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# by dobashinaika | 2017-11-20 00:24 | 循環器疾患その他 | Comments(2)


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