2017年版失神患者の評価と管理に関するガイドライン(米国):JACC誌


2017年版の失神に関するAHA/ACC/HRSガイドラインです。
ACCのメルマガで13項目にまとめてくれています。

1.失神患者は詳細な問診と身体診察を行うべきである(推奨度 I)

2.失神患者の初期評価には,12誘導心電図が有用である(I)
原因と短期及び長期リスクの評価も勧められる(I)

3.重篤な臨床症状を呈し,失神が特定の要因と関連ある場合は入院での検査治療が勧められる (I)

4,ルーチンで包括的な検査の有効性はない(III,効果なし)
心疾患が疑われなければルーチンの心臓画像診断は勧められない(III,利益なし)
巣症状を呈しない場合の頚動脈画像検査は勧められない(III 利益なし)

5,血管迷走神経失神が最もコモンである。薬物療法の効果は中等度。診断と予後についての患者教育が勧められる(I)

6.40歳以上で繰り返す迷走神経失神ででは,デュアルチャンバーペーシングが勧められることがある(IIb)
β遮断薬は小児の迷走神経失神には勧められない(III,利益なし)

7.起立性低血圧が疑われる失神では,神経学的コンディッション,脱水,薬物の影響を考える
急速な補液が,推奨される(I)
低血圧の原因となる薬物の中止や減量が,ある患者には有効である(IIa)

8.徐脈,頻脈,器質的心疾患に伴う失神は,ガイドラインどおりの管理治療が勧められる(I)

9.ブルガダ型心電図や反射関連の失神で他のリスク因子のない場合,植込み型除細動器(ICD)は勧められない(III,利益なし)

10.QT延長症候群,不整脈による失神が疑われ,禁忌がない場合はβ遮断薬が第一選択である (I)
β遮断薬服用中あるいは服用できない例での失神にはICDが勧められる (IIa)

11,カテコールアミン感受性多形性心室頻拍 (CPVT)では,運動制限が勧められる (I)。
CPVTやストレス誘発性失神は,内因性刺激のないβ遮断薬が勧められる (I)

12.電気生理学的検査は不整脈が原因の限られた失神患者には有用である (IIa)

13.運動選手の失神の場合,運動再開に先立って心血管系の精査が勧められる (I)
肥大型心筋症,CPVT,QT延長症候群(タイプ I),不整脈原性右室異形成のある失神患者の競技への参加は,専門家の評価なしでは勧められない (III,害)

### 検査前確率が検査の意思決定を左右することを再確認

$$$ 仙台はようやく梅が見頃です。
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# by dobashinaika | 2017-03-21 19:07 | 不整脈全般 | Comments(0)

虚血性脳卒中後の心房細動例の8割以上で適切な抗凝固療法がされておらず予後も悪い:JAMA誌


<キーポイント>
疑問;虚血性脳卒中既往のある心房細動患者における抗凝固療法の頻度はどのくらいか?これと脳卒中重症度や院内アウトカムの関係はどうか?

所見:94474例の観察研究において,84%はガイドライン通りに抗凝固療法を受けていなかった。ワルファリンあるいはNOACは重症脳卒中や院内死亡率低下と明らかな関連があった。

臨床的意義:脳卒中既往の心房細動患者においては不適切な抗凝固療法が明らかになった。

<アブストラクト>
デザイン,セッティング,対象:
・急性虚血性脳卒中と心房細動歴のある患者94474例対象の後ろ向き観察研究
・2012−2015年,1622施設(米国)

介入:抗凝固薬前後

主要アウトカム:NIHSSによる脳卒中重症度;16点以上は中等度〜重症,院内死亡率

結果:
1)平均79.9歳,女性57%

2)ワルファリン7.6%(INR2以上),NOAC8.8%

3)83.6%は適切な抗凝固療法お受けていない
イベント発生時治療域以下(INR<2):13.5%,抗血小板薬のみ39.9%,いかなる抗血栓薬もなし;30.3%

4)高リスク者(CHA2DS-VAScスコア2点以上):83.5%が抗凝固薬無し

5)重症脳卒中(補正なし):ワルファリン,NOACは低率
ワルファリン15.8%,NOAC17.5% ,抗凝固なし27.1%,抗血小板薬24.8%,INR2未満のワルファリン25.8%

6)院内死亡率(補正なし):同様に抗凝固薬ありでは低率
  ワルファリン6.4%,NOAC6.3% ,抗凝固なし9.3%,抗血小板薬8.1%,INR2未満のワルファリン8.8%

7)重症脳卒中(補正あり):ワルファリン,NOAC,抗血小板薬は抗血栓療法なしにくらべ低率
ワルファリン0.56(ハザード比),NOAC0.65 ,抗血小板薬0.88

8)院内死亡率(補正あり);ワルファリン,NOAC,抗血小板薬は抗血栓療法なしにくらべ低率
  ワルファリン0.75(ハザード比),NOAC0.79 ,抗血小板薬0.83

結論:脳卒中既往の心房細動患者においては不適切な抗凝固療法が明らかになった。抗凝固療法は脳卒中重症度と院内死亡率の低リスク化に関連あり

### 心原性脳塞栓二次予防患者の80%以上が不適切抗凝固療法。。。衝撃的ですね。

ただし平均年齢約80歳です。おそらく高齢でハイリスクが理由かと思われます。米国は最近までアスピリンも推奨していましたので,そのためもあるかもしれません。

ただし,私の経験では,たとえ高齢者でも虚血性脳卒中を1回でも発症した心房細動患者さんは,抗凝固なしだと高率に再発します!特に血圧管理の悪い人です。これは断言できます。これ全然EBM的態度ではないですが,この論文がエビデンスですね。

実は,以下のように脳梗塞後抗凝固なしの予後不良エビデンスはきわめて豊富です。
この論文も平均年齢80歳以上ですが,MACEのハザード比が2年で13%違います。

これらの論文の対象全員が在宅で要介護5などではないと思われますので,「高齢者でも脳梗塞既往例はできる限り抗凝固」は心がけたいところです。
最近いつも強調しますが薬は”なんでも良い”と思われます。使いやすく適切な用量設定であればです。

なお同様研究として古いデータですが,これとは真逆で80%以上にワルファリンがでていたという論文もあります。

# by dobashinaika | 2017-03-16 19:20 | 脳卒中後 | Comments(0)

昨日のNOAC論文に追加情報。

昨日の論文の追加情報です。

患者背景ですが、
使用薬剤はアスピリン51.1%、VKA43.3%、NOAC4.1%、混合1.4%。
NOACの内訳はダビガトラン28.5%、リバーロキサバン71.5%
追跡期間はNOAC1.0年、VKA2.7年
合併症は、脳血管疾患がVKA群で13.4%、NOACで18.9%
でした。

消化管出血が多かった理由として
・腎機能低下例、悪性腫瘍例、消化器症状を有する例、NSAID併用例など選択基準がRCTより広い
・出血の定義に多少違いがある
などが考察されています。

頭蓋内出血も大きな差はないようです。

### 確かに観察研究なのでより重症な例にNOACが処方されたのかもしれないという交絡因子は考えねばなりません。アスピリンがかなり出されているコホートです。この研究とて鵜呑みにはできません。

とはいえ、リアルワールドは混沌としています。特にプライマリケアの現場ではなかりの高リスク例にも出しています。
その上、日本においてプライマリケアレベルでこのような大規模データベースの構築及び解析は出ていないわけです。

手放しでNOACがいいとは決して言えない。高リスク例はNOACであっても特に気をつける。こう考えたいと思います


# by dobashinaika | 2017-03-15 18:52 | 抗凝固療法:リアルワールド | Comments(0)

英国のプライマリケアセッティングではNOACはワルファリンより消化管出血多い。虚血性脳卒中は同等:BJCP誌


疑問;プライマリ・ケアにおいて抗凝固薬の大出血リスクはどの程度か?

方法:
・英国のプライマリ・ケアセッティンングでの心房細動コホート:UK Clinical Practice Research Datalink (March 2008-October 2014)
・NOAC、VKA、アスピリンの新規処方患者
・処方から脳卒中または大出血までを追跡

結果:
1)31497例

2)大出血:NOACの対VKAハザード比2.07 (95% CI 1.27-3.38)

3)主に消化管出血はリスク増の主因;ハザード比2.63(95% CI 1.50-4.62)

4)出血は女性に多い:ハザード比3.14 (95% CI 1.76-5.60)

5)アスピリンの出血リスクはVKAと同程度

6)虚血性脳卒中:NOACとVKAは同程度:ハザード比1.22 (95% CI 0.67-2.19)

7)VKAはアスピリンより効果大:ハザード比2.18 (95% CI 1.83-2.59

結論:NOACは高い消化管出血リスク(特に女性)に関連。このタイプの出血をきたしやすい患者にはNOAC使用は注意。NOACとVKAは脳卒中予防においては同程度。アスピリンは心房細動の脳卒中予防には効果なし

### やや驚きの結果(ハザード比が)です。
ただ,これまでのリアルワールドエビデンスを眺めますと,有効性(脳卒中/全身性塞栓症あるいは虚血性脳卒中)はNOAC=VKAとするデータが多いのですね。出血も頭蓋内出血こそNOACは少ないですが,消化管出血は薬剤によってはNOACが多いというデータは数多くあるのです。これなども

ややマイナー雑誌なので全文入手ができていません。患者プロフィールが最も問題なので至急確認してみます。

やはりNOACを選ぶときは消化管出血はひとつのポイントになりそうです。既往のある例,NSAIDを使う例,で女性などが揃ったら消化管出血のエビデンスの少ないNOACまたはワルファリンを考えます。

$$$ うちの庭に迷い込んだハクビシン(見えますか)。
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# by dobashinaika | 2017-03-14 23:18 | 抗凝固療法:リアルワールド | Comments(0)

全世界でNOAC発売後心房細動への抗凝固薬なしは67%→20%。NOAC優勢だがワルファリンも依然として多い。


方法:
1)GLORIA AFスタディ:44カ国,984センターからのグローバル登録試験。
2)18歳以上,CHA2DS2-VAScスコア1点以上。初回受診から3ヶ月以内に診断されたNVAF
3)NOAC発売後登録15092例(2011年11月〜2014年12月:Phase II)と発売前1063例(Phase I)の疾患特徴,アウトカム,合併症,治療法を比較

結果:
1)女性45.5%,平均71歳。欧州47.1%, 北米22.5%,アジア20.3%,ラテンアメリカ6.0%,中近東/アフリカ4.0%

2)CHA2DS2-VAScスコア2点以上:86.1%,1点13.9%

3)抗凝固薬:
Phase II:79.9%:NOAC47.8%,VKA32.3%,抗血小板薬12.1%,抗血栓薬なし7.8%
Pahase I:VKA32.8%, アスピリン47.1%,なし20.2%

4)ヨーロッパのPhase IIでは,NOAC(52.3%)がVKA(37.8%) よりcommon

5)北米では,NOAC52.1% ,VKA26.2%,抗血小板薬14.0%,なし7.5%

6)NOACはアジアでは少ない27.7%,VKA27.5%,抗血小板薬25.0%,なし19.8%
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結論:GLORIA-AF試験Phase IIは欧州と北米でNOACが臨床に高率に取り入れられていることを示した。しかしアジアと北米では抗凝固療法なしの患者が多数。

### 抗凝固なしの割合がプレNOAC時代は約67%!だったのに対しポストNOAC時代には20%に減っています。ヨーロッパは50%以上がNOACで,抗凝固なしは非常に少数になったが,アジアと北米ではまだ20〜45%くらい抗凝固なしまたがアスピリンでした。
アジアの国の内訳が不明ですが,日本はもっとNOACが多いように思います。2015年以降はなおさらでしょう。

ただこれ新規症例に対してですので,欧州でさえ38%くらいはまだワルファリンを出していることに注意したいです。まだワルファリン良しとしている医師がかなりいるのですね,

同様研究 (GARFIELD)こちら

$$$ 診察室の壁にネコ写真貼って時々息抜きしています。偶にネコ好き患者さんと話し込んで診察忘れます(笑)。
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# by dobashinaika | 2017-03-09 22:18 | 抗凝固療法:リアルワールド | Comments(0)


土橋内科医院の院長ブログです。心房細動やプライマリ・ケアに関連する医学論文の紹介もしくは知識整理を主な目的とします。時々日頃思うこともつぶやきます。


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