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ダビガトランに関する岩田健太郎先生のブログ

感染症分野のみならず、医療/医学の諸問題に対し卓越した論考を出し続けている岩田健太郎先生の、ダビガトランに関するブログです。
それにしても、これをまとめた学生さん、かなり優秀ですね。

まさに今後日本でもRE-LY試験の検証が必要と思います。
# by dobashinaika | 2011-06-10 06:41 | 抗凝固療法:ダビガトラン | Comments(0)

CKD(慢性腎臓病)と心房細動罹患率には関連あり(ARIC試験):Circulationより

Circulationオンライン版より

Chronic Kidney Disease Is Associated With the Incidence of Atrial FibrillationThe Atherosclerosis Risk in Communities (ARIC) Study

CKD(慢性腎臓病)と心房細動罹患率との関連に関する観察研究

・ARIC試験に登録された心房細動の既往のない10328例対象
・10.1年間フォロー

・788例で新規心房細動あり
・eGFR(シスタチンCベース)90以上の群の60-89,30-59,15-29の3群に対する心房細動オッズ比は各1.3, 1.6, 3.2
・顕性アルブミン尿(アルブミン―クレアチニン比300以上)および微量アルブミン尿(30-299)は、アルブミン尿29以下の群に比べ心房細動が有意に多い(オッズ比3.2、2.0)
・心房細動リスクは低eGFRかつ顕性アルブミン尿+の場合有意に増加した(オッズ比13.1倍)

結論:低腎機能とアルブミン尿は、他の因子から独立して心房細動罹患に関連している

###多数例長期にわたる観察研究です。炎症、酸化ストレス、自律神経系、おなじみのさまざまなファクターが交絡しているのでしょう。
参考ブログ:2011年4月1日2010年7月2日
# by dobashinaika | 2011-06-09 18:08 | 心房細動:リアルワールドデータ | Comments(0)

心房細動と認知症の関連に関するシステマティックレビュー:Neurologyより

ちょうど震災が重なったためupするのを忘れていました。けっこう興味深いので紹介いたします。
Neurology 3月8日号より

Atrial fibrillation and incidence of dementia
A systematic review and meta-analysis


心房細動と認知症の発症率に関するシステマティックレビューとメタ解析

・Medline, Embase, PsychINFOを2010年9月時点で検索
・ランダム効果モデルとI2 を用いた 異質性の評価を行った

・15試験、46637例(平均年齢71.7歳)を解析
・心房細動は、認知症の増加と明らかに関連あり(オッズ比2.0、95%CI 1.4 to 2.7, p < 0.0001)
・脳卒中患者ではオッズ比は2.4倍
・より広範なpopulation対象の場合はオッズ比1.6倍
・MIC(軽度度認知障害)に対して心房細動のオッズ比は4.6倍

結論:脳卒中患者においては心房細動と認知症の増加との間には明らかな関連がある 。しかしより幅の広い対象ではその関係は明確ではない。心房細動とMICとの関連についての今後の研究が期待される。

###微小塞栓、未知の交絡因子など様々な可能性が考えられます。いくつかの参考文献がありますので、参考にしてください。
大規模なコホート研究
過去のブログ
# by dobashinaika | 2011-06-07 21:59 | 心房細動:リアルワールドデータ | Comments(0)

大腸がん検診のエビデンスに基づくリスク情報伝達がインフォームドチョイスに及ぼす効果:BMJより

BMJ 6月2日号より

Effect of evidence based risk information on “informed choice” in colorectal cancer screening: randomised controlled trial

大腸がん検診においてインフォームドチョイスをする上でエビデンスに基づくリスク情報の伝達と、従来からの標準的な情報伝達とを比較検討

P:50〜75歳の大腸がんの既往のない1577名。ドイツの公的保険内での取り組み

E:大腸がんに関するエビデンスに基づくリスクを記載したパンフレットと、オプションとしてリスクと診断に関する2つの双方向性インターネットモデュールを使った情報伝達

*伝達法はUK Medical Research Councilのフレームワークを用いた。例えばスクリーニングを受けることによる相対危険率の変化よりは、自然頻度の変化を提示した。このフォーマットはパイロットスタディを経て2008年に改訂された

C:ドイツの公的なパンフレット:2003年発行。便潜血検査と大腸スコピーーについての概説のみで数的なリスクベネフィットの情報はなし

O:一次エンドポイント:「知識」「態度」の概念を含んだ「インフォームドチョイス」*。現実的で計画的な受診の組み合わせ
二次エンドポイント:「知識」。現実的で計画的な受診の組み合わせ
知識と態度はスクリーニング6週後に評価された。現実的で計画的な受診の組み合わせ、は6ヶ月後に評価された

*Marteauらの方法による。「知識」については大腸がん検診に関する8つの質問を行い4つ以上正答の時「good knowledge」とした。「態度」については健診に対して前向きかどうかの4つの質問を行い2.5未満を「positive attitude」とした。good knowledgeかつpositive attitudeで健診を受けた時、およびgood knowledge、negative attitudeで健診を受けなかったとき「インフォームドチョイス」と定義した。「現実的で計画的な受診の組み合わせ」はドイツの長いスパンにわたるスクリーニングの時間枠(10年ごとの大腸スコピーと1,2年ごとの便検査)」に沿った検診を受診したかどうかで判断した

結果:
1)アンケート回収率:92.4%
2)「インフォームドチョイス」は介入群で44.0%(345/785)、対照群で12.8%(1014/792)だった。(difference 31.2%, 99% CI 25.7% to 36.7%; P<0.001)
3)good knowledgeは介入群59.6%、対照群16.2%(difference 43.5%, 37.8% to 49.1%; P<0.001)
4)positive attitudeは両群とも多かったが、介入群でより少なかった(93.4% (733) v 96.5% (764); difference −3.1%, −5.9% to −0.3%; P<0.01)
5)「現実的で計画的な受診の組み合わせ」については差なし(72.4% (568) v 72.9% (577); P=0.87)

結論:大腸がん検診においてエビデンスに基づくリスク情報の伝達は、「インフォームドチョイス」を増加させ「知識」を改善させたが、「態度」についてはあまり改善しなかった。現実的で計画的な受診については介入効果はなかった。

###Table 3を見ると、大腸がん検診の疫学的な質問が並んでいますので、EBM的情報を提供されている介入群で知識スコアが高いのは当然です。態度については、相対危険でなく絶対危険(自然頻度)で数字を示されていると、以前のブログで紹介した研究の通りnegativeな意思決定になりやすいことは既に指摘されています。エビデンスの伝達が検診のインセンティブに寄与しなかったのは、今回のpolulationが元々受診率が高いことも上げられますが、やはり、一般市民が思った以上にがん検診の効果が少ない(と感じられる)ことが原因ではないかと推察されます。
Table3の質問を見れば、一般市民にとっては検診のEBMは「少ない効果」「重篤な副作用(大腸スコピー)」を想起させるに十分と思われます。検診は「pupulation strategy」なのでNNTが低くても意義があることまで一般市民に理解させることは難しいのではないでしょうか?診療所や病院に通院する動脈硬化ハイリスクな人にスタチンの効果をエビデンスーベーストで伝えるのとはまた違った伝え方が必要かもしれません。
なお同じ大腸がん検診のインフォームドチョイスを扱った論文はこちら
# by dobashinaika | 2011-06-06 21:59 | リスク/意思決定 | Comments(0)

心房細動アブレーション前に施行する非造影CTの精度:American Journal of Cardiologyより

American Journal of Cardiology5月28日オンライン版より

Low-Dose Electrocardiography Synchronized Nonenhanced Computed Tomography for Assessing Left Atrium and Pulmonary Veins Before Radiofrequency Catheter Ablation for Atrial Fibrillation.

・心房細動アブレーション前に施行する低線量非造影CTの肺静脈同定の精度に関する検討(韓国から)

・アブレーション前に施行した連続108症例における通常の肺静脈、共通開口部、副肺静脈の本数が部位を2人の放射線専門医が非造影CTを用いてレトロスペクティブに解析
・計算上のレファレンスとして造影CT所見を使用

・右肺静脈の変形が21例、左肺静脈が2例
・右肺静脈変形の非造影CTによる感度は97.6%、特異度96.6%。左は感度90.9%、特異度97.9%
・右肺中葉からの副肺静脈同定の感度は97.1%。右中葉と右下葉上部からの副肺静脈開口部同定の感度は100%。右下葉上部からの副肺静脈同定の感度は100%。左肺静脈の共通口の感度は88.9%。左舌区からの副肺静脈同定の感度は100%

結論:非造影CTにより肺静脈のバリエーションは高い精度で同定可能
# by dobashinaika | 2011-06-05 16:20 | 心房細動:アブレーション | Comments(0)


土橋内科医院の院長ブログです。心房細動やプライマリ・ケアに関連する医学論文の紹介もしくは知識整理を主な目的とします。時々日頃思うこともつぶやきます。


by dobashinaika

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