虚血性脳卒中後の心房細動例の8割以上で適切な抗凝固療法がされておらず予後も悪い:JAMA誌


<キーポイント>
疑問;虚血性脳卒中既往のある心房細動患者における抗凝固療法の頻度はどのくらいか?これと脳卒中重症度や院内アウトカムの関係はどうか?

所見:94474例の観察研究において,84%はガイドライン通りに抗凝固療法を受けていなかった。ワルファリンあるいはNOACは重症脳卒中や院内死亡率低下と明らかな関連があった。

臨床的意義:脳卒中既往の心房細動患者においては不適切な抗凝固療法が明らかになった。

<アブストラクト>
デザイン,セッティング,対象:
・急性虚血性脳卒中と心房細動歴のある患者94474例対象の後ろ向き観察研究
・2012−2015年,1622施設(米国)

介入:抗凝固薬前後

主要アウトカム:NIHSSによる脳卒中重症度;16点以上は中等度〜重症,院内死亡率

結果:
1)平均79.9歳,女性57%

2)ワルファリン7.6%(INR2以上),NOAC8.8%

3)83.6%は適切な抗凝固療法お受けていない
イベント発生時治療域以下(INR<2):13.5%,抗血小板薬のみ39.9%,いかなる抗血栓薬もなし;30.3%

4)高リスク者(CHA2DS-VAScスコア2点以上):83.5%が抗凝固薬無し

5)重症脳卒中(補正なし):ワルファリン,NOACは低率
ワルファリン15.8%,NOAC17.5% ,抗凝固なし27.1%,抗血小板薬24.8%,INR2未満のワルファリン25.8%

6)院内死亡率(補正なし):同様に抗凝固薬ありでは低率
  ワルファリン6.4%,NOAC6.3% ,抗凝固なし9.3%,抗血小板薬8.1%,INR2未満のワルファリン8.8%

7)重症脳卒中(補正あり):ワルファリン,NOAC,抗血小板薬は抗血栓療法なしにくらべ低率
ワルファリン0.56(ハザード比),NOAC0.65 ,抗血小板薬0.88

8)院内死亡率(補正あり);ワルファリン,NOAC,抗血小板薬は抗血栓療法なしにくらべ低率
  ワルファリン0.75(ハザード比),NOAC0.79 ,抗血小板薬0.83

結論:脳卒中既往の心房細動患者においては不適切な抗凝固療法が明らかになった。抗凝固療法は脳卒中重症度と院内死亡率の低リスク化に関連あり

### 心原性脳塞栓二次予防患者の80%以上が不適切抗凝固療法。。。衝撃的ですね。

ただし平均年齢約80歳です。おそらく高齢でハイリスクが理由かと思われます。米国は最近までアスピリンも推奨していましたので,そのためもあるかもしれません。

ただし,私の経験では,たとえ高齢者でも虚血性脳卒中を1回でも発症した心房細動患者さんは,抗凝固なしだと高率に再発します!特に血圧管理の悪い人です。これは断言できます。これ全然EBM的態度ではないですが,この論文がエビデンスですね。

実は,以下のように脳梗塞後抗凝固なしの予後不良エビデンスはきわめて豊富です。
この論文も平均年齢80歳以上ですが,MACEのハザード比が2年で13%違います。

これらの論文の対象全員が在宅で要介護5などではないと思われますので,「高齢者でも脳梗塞既往例はできる限り抗凝固」は心がけたいところです。
最近いつも強調しますが薬は”なんでも良い”と思われます。使いやすく適切な用量設定であればです。

なお同様研究として古いデータですが,これとは真逆で80%以上にワルファリンがでていたという論文もあります。

# by dobashinaika | 2017-03-16 19:20 | 脳卒中後 | Comments(0)

昨日のNOAC論文に追加情報。

昨日の論文の追加情報です。

患者背景ですが、
使用薬剤はアスピリン51.1%、VKA43.3%、NOAC4.1%、混合1.4%。
NOACの内訳はダビガトラン28.5%、リバーロキサバン71.5%
追跡期間はNOAC1.0年、VKA2.7年
合併症は、脳血管疾患がVKA群で13.4%、NOACで18.9%
でした。

消化管出血が多かった理由として
・腎機能低下例、悪性腫瘍例、消化器症状を有する例、NSAID併用例など選択基準がRCTより広い
・出血の定義に多少違いがある
などが考察されています。

頭蓋内出血も大きな差はないようです。

### 確かに観察研究なのでより重症な例にNOACが処方されたのかもしれないという交絡因子は考えねばなりません。アスピリンがかなり出されているコホートです。この研究とて鵜呑みにはできません。

とはいえ、リアルワールドは混沌としています。特にプライマリケアの現場ではなかりの高リスク例にも出しています。
その上、日本においてプライマリケアレベルでこのような大規模データベースの構築及び解析は出ていないわけです。

手放しでNOACがいいとは決して言えない。高リスク例はNOACであっても特に気をつける。こう考えたいと思います


# by dobashinaika | 2017-03-15 18:52 | 抗凝固療法:リアルワールド | Comments(0)

英国のプライマリケアセッティングではNOACはワルファリンより消化管出血多い。虚血性脳卒中は同等:BJCP誌


疑問;プライマリ・ケアにおいて抗凝固薬の大出血リスクはどの程度か?

方法:
・英国のプライマリ・ケアセッティンングでの心房細動コホート:UK Clinical Practice Research Datalink (March 2008-October 2014)
・NOAC、VKA、アスピリンの新規処方患者
・処方から脳卒中または大出血までを追跡

結果:
1)31497例

2)大出血:NOACの対VKAハザード比2.07 (95% CI 1.27-3.38)

3)主に消化管出血はリスク増の主因;ハザード比2.63(95% CI 1.50-4.62)

4)出血は女性に多い:ハザード比3.14 (95% CI 1.76-5.60)

5)アスピリンの出血リスクはVKAと同程度

6)虚血性脳卒中:NOACとVKAは同程度:ハザード比1.22 (95% CI 0.67-2.19)

7)VKAはアスピリンより効果大:ハザード比2.18 (95% CI 1.83-2.59

結論:NOACは高い消化管出血リスク(特に女性)に関連。このタイプの出血をきたしやすい患者にはNOAC使用は注意。NOACとVKAは脳卒中予防においては同程度。アスピリンは心房細動の脳卒中予防には効果なし

### やや驚きの結果(ハザード比が)です。
ただ,これまでのリアルワールドエビデンスを眺めますと,有効性(脳卒中/全身性塞栓症あるいは虚血性脳卒中)はNOAC=VKAとするデータが多いのですね。出血も頭蓋内出血こそNOACは少ないですが,消化管出血は薬剤によってはNOACが多いというデータは数多くあるのです。これなども

ややマイナー雑誌なので全文入手ができていません。患者プロフィールが最も問題なので至急確認してみます。

やはりNOACを選ぶときは消化管出血はひとつのポイントになりそうです。既往のある例,NSAIDを使う例,で女性などが揃ったら消化管出血のエビデンスの少ないNOACまたはワルファリンを考えます。

$$$ うちの庭に迷い込んだハクビシン(見えますか)。
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# by dobashinaika | 2017-03-14 23:18 | 抗凝固療法:リアルワールド | Comments(0)

全世界でNOAC発売後心房細動への抗凝固薬なしは67%→20%。NOAC優勢だがワルファリンも依然として多い。


方法:
1)GLORIA AFスタディ:44カ国,984センターからのグローバル登録試験。
2)18歳以上,CHA2DS2-VAScスコア1点以上。初回受診から3ヶ月以内に診断されたNVAF
3)NOAC発売後登録15092例(2011年11月〜2014年12月:Phase II)と発売前1063例(Phase I)の疾患特徴,アウトカム,合併症,治療法を比較

結果:
1)女性45.5%,平均71歳。欧州47.1%, 北米22.5%,アジア20.3%,ラテンアメリカ6.0%,中近東/アフリカ4.0%

2)CHA2DS2-VAScスコア2点以上:86.1%,1点13.9%

3)抗凝固薬:
Phase II:79.9%:NOAC47.8%,VKA32.3%,抗血小板薬12.1%,抗血栓薬なし7.8%
Pahase I:VKA32.8%, アスピリン47.1%,なし20.2%

4)ヨーロッパのPhase IIでは,NOAC(52.3%)がVKA(37.8%) よりcommon

5)北米では,NOAC52.1% ,VKA26.2%,抗血小板薬14.0%,なし7.5%

6)NOACはアジアでは少ない27.7%,VKA27.5%,抗血小板薬25.0%,なし19.8%
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結論:GLORIA-AF試験Phase IIは欧州と北米でNOACが臨床に高率に取り入れられていることを示した。しかしアジアと北米では抗凝固療法なしの患者が多数。

### 抗凝固なしの割合がプレNOAC時代は約67%!だったのに対しポストNOAC時代には20%に減っています。ヨーロッパは50%以上がNOACで,抗凝固なしは非常に少数になったが,アジアと北米ではまだ20〜45%くらい抗凝固なしまたがアスピリンでした。
アジアの国の内訳が不明ですが,日本はもっとNOACが多いように思います。2015年以降はなおさらでしょう。

ただこれ新規症例に対してですので,欧州でさえ38%くらいはまだワルファリンを出していることに注意したいです。まだワルファリン良しとしている医師がかなりいるのですね,

同様研究 (GARFIELD)こちら

$$$ 診察室の壁にネコ写真貼って時々息抜きしています。偶にネコ好き患者さんと話し込んで診察忘れます(笑)。
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# by dobashinaika | 2017-03-09 22:18 | 抗凝固療法:リアルワールド | Comments(0)

無症候性心房細動の24時間以上持続は脳卒中リスク増加と関連有り


疑問:無症候性心房細動がどのくらい続いたら脳塞栓リスクが増えるのか

方法:
・ASSERT試験登録患者2580人
・ペースメーカー,ICD,65歳以上の高血圧,心房細動なし
・虚血性脳卒中リスクにおける無症候性心房細動の影響をCoxモデルで評価
・6分以内の心房細動は除外
・追跡期間:2.5年

結果:
1)6分以上6時間以下:18.8%,6−24時間:6.9%,24時間以上10.7%

2)24時間以上持続群が引き続く虚血性脳卒中と有意に関聯あり:ハザード比3.24。95%CI1.51-6.95.p=0.003

3)6−24時間の持続と脳卒中リスクは関聯なし
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結論:無症候性心房細動の24時間以上の持続は脳卒中リスク増加と関聯あり

### ASSERT研究はペースメーカー,ICD患者の無症候性心房細動を追跡評価する研究で,主論文は既に発表されています。
無症候性心房細動はこうした方の約10%に起こり,心房細動がある人はない人の2.5倍の脳梗塞発症率とのことです。

ただし心房細動の持続時間と脳梗塞の頻度を比較したのはこれが初めてでした。
やはり短時間の心房細動であればほとんど脳梗塞は来さないとのことです。
以前発症48時間以内に除細動を施行した場合の脳塞栓率(抗凝固なし)も1%程度あるとの報告を読みましたが,こうした場合おそらく24時間以上続く例なのではないかと思われます。

反対に,数分とか数時間の心房細動であれば,抗凝固薬は必要ないともいえますので,ホルター心電図などで数分,数時間のものなら抗凝固はちょっと保留してもいいかもしれません。ただし無症候性はわからないから無症候性なので,無症候性ながら1回でも心房細動が見つかっている症例で抗凝固をどうしようか迷っている場合は,ホルター心電図を頻回に考える必要があるかもしれません。ループレコーダーなども今はありますが。

$$$ 今週の片手袋。ポスト上もよくあるタイプです。
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# by dobashinaika | 2017-03-07 18:17 | 抗凝固療法:全般 | Comments(0)


土橋内科医院の院長ブログです。心房細動やプライマリ・ケアに関連する医学論文の紹介もしくは知識整理を主な目的とします。時々日頃思うこともつぶやきます。


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