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新しいビタミンK阻害薬テカルファリンはワルファリン,NOACを超えるか:T/H誌

https://doi.org/10.1160/TH16-10-0815
テカルファリンに関する総説です。

・ワルファリンは60年来使用され効果は高いが治療域の狭い薬である。

・ワルファリンはR-L-光学異性体の混合したラセミ体で、7つのチトクロームP-450アイソザイムにより代謝される。
・このため、多くの食品、薬剤に影響を受ける。
・遺伝子多型(特にCYP2C9)、年齢、併存疾患、腎機能が効果を減弱したり、量の調節を促したりする。特に導入初期は要注意。
・INRの細かな管理の煩雑さが、新規抗凝固薬の開発につながった。

・VKAと違い、DOACは一つの標的のみ(IIaまたはXa)なので、モニタリングなしに一定量処方で良いという点がより使いやすい。
・にも関わらず、緊急手術、急性腎不全時などでは薬物濃度や抗凝固効果の測定は必要となる。

・NOACはNVAFの脳卒中予防においてワルファリンと同等である一方、アビキサバン、ダビガトランは大出血をあきらかにワルファリンよりも減らした。
・アピキサバンに比べ、リバーロキサバンは高出血リスクであった。
・幾つかのNOACでは、消化管出血が多くなったが、半減期が短いため服用中止によりコントロールできる。
・ダビガトランは、人工弁患者ではワルファリンよる効果は劣り出血は増える。

・一般的に、腎機能低下例では減量し、CrCl<15(ダビガトランは<30)では、NOACは禁忌である。

・CKDはそれ自体が抗凝固的な環境と言える。一方ではVTEや心房細動を高頻度に合併する。
・eGFR<60では脳卒中、VTEのリスクが増大する。
・抗凝固薬はCKDでも効果的であり、重症CKDにはVKA使用が勧められるが、安全性に関しては熟慮が必要である。
・他にも塞栓出血リスクを増やす合併症はあり、併用薬、尿毒症はワルファリンの代謝に影響するので、腎機能に応じた用量調節が必要となる。
・これらを考えると、上記にセッティングにおいて、ワルファリンの代替薬が強く求められる。

・テカルファリン(ATI-5923 )はワルファリンと同様の機序と効果時間を持った構造的なアナログである。
・VKOR阻害薬と同様、テカルファリンはビタミンK依存性凝固因子(II,VII,IX,X)をワルファリン同様に阻害し、モニタリングはINRである。
・ワルファリンがCYP450系で代謝されるのとは違い、テカルファリンはヒトカルボキシルエステラーゼ2(hCE-2)により加水分解される。
・単一の不活性化カルボキシル酸代謝物(ATI-5900)を産生し、腎で排泄される。
・hCE-2は腎不全では阻害されず、慢性腎不全はテカルファリンのクリアランスに影響しないと思われるので、特殊な環境下でも安定した抗凝固作用が得られると思われる。
CYP450系で代謝される薬剤との交互作用も排除される

・さらに、テカルファリンはCYP2C9の遺伝子多型に左右されない
・初期用量を減らすことで、出血リスクを減らし合併症を予防できるかもしれない
・CYP2C9ジェノタイプ間での用量調節には差がないけれども、VKORC1ジェノタイプによっては変化する。
・テカルファリンの血中濃度は、VKORC1ジェノタイプと相関する。(AAジェノタイプよりGGの方が2倍の血中濃度)
・INRとテカルファリンの血中濃度とは相関関係がないことは重要。
・ゆえに、テカルファリンはVKORC1が多様性を持つ状況ではワルファリンを凌駕することはなく、ジェノタイプガイドによる初期投与量が有効となる。

・ワルファリンを上回るテカルファリンの効果(を検討した試験)としては以下がある。
・EmbraceAC試験では,テカルファリンはワルファリンを上回るTTRRが得られなかった。
・緊急治療が必要な有害事象は,ワルファリンで88%,テカルファリンで90%
・どちらも同様のTTRを示し,アウトカムはTTRに相関した。
・本試験では,CYP2C9-バリアントの対立遺伝子を持つひとや,CYP2C9が関与する薬剤服用者はテカルファリンのベネフィットがあるかもしれない,と結論している。

・健常人を対象としたテカルファリンの薬物動態に関する試験がある。
・40mgまでの単一用量までは,血中濃度と半減期は用量に相関する。
・INR1.7-2.0を保つ用量が10〜20mg。
INRはテカルファリン中止1〜3日で低下する。
・CKDや人工弁患者での複数用量の試験が必要である。
・不活性化体(ATI-5900)は,腎で排泄され健常者ではもとの薬剤の10%の濃度を示し,CKD患者では2倍の血中濃度を示す。
・より詳しいプロフィールや代謝物の毒性についての解析が必要

・さらに,テカルファリンは少なくともtransfected cellではCYP2C9代謝を阻害することが知られており,CYP450への抑制効果を持つかどうかが問題となる。
潜在的な薬剤相互作用について,テカルファリンも例外ではないことは忘れるべきでない。

・こうした問題への追加試験が検討されれば,テカルファリンは旧き良きワルファリンで満足に治療できなかった患者に,安定した抗凝固作用を達成させる興味深い代替薬となるかもしれない。
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### クドカンドラマを見ながら論文読んでいたら,知らないうちに全訳してしまっていました(笑)。まとめると

テカルファリンの特徴は,構造,機序,作用時間などはワルファリンと同様で,モニタリングはINR。hCE-2加水分解され腎機能に影響されない。薬物相互作用もなさそう。中止1〜3日でINRが低下する。

というところだそうです。腎不全に使えそうなところが最大のポイントでしょうか。が,もう一つの関心事はもちろんコストですね。
まだとにかくフェーズ I?のようで臨床試験はまだ無し。結論を出すのは早計過ぎます。

もし上梓されたら第2のNOAC,N2OACとでもよばれるのでしょうか?

$$$ これはうっすらじゃじゃ麺味でした。
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by dobashinaika | 2017-10-24 23:11 | 抗凝固療法:全般 | Comments(0)

アジアの大規模リアルワールドデータにおけるNOACの有効性と安全性は?:Stroke誌


疑問:アジア人のリアルワールドデータでは,NOAC (対ワルファリン)の有効性安全性はどうなのか?

方法:
・韓国の国民健康保険データベース
・アウトカム:虚血性脳卒中,頭蓋内出血,全死亡
・NOAC(ダビガトラン,リバーロキサバン,アピキサバン)11611例,ワルファリン23222例(プロペンシティースコアマッチ),NVAF,CHA2DS2-VAScスコア2点以上

結果:
1)虚血性脳卒中:NOAC=ワルファリン,頭蓋内出血:NOAC<ワルファリン,全死亡:NOAC<ワルファリン

2)虚血性脳卒中,頭蓋内出血の対ワルファリン相対危険:3つのNOACで同じ

3)全死亡及びネットクリニカルベネフィット(上記3アウトカム合計):ダビガトランとアピキサバンでワルファリンより良い。リバーロキサバンとワルファリンは同等

結論:アジアにおける高リスクの心房細動患者において,3つのNOACはワルファリンに比べ虚血性脳卒中じは同等で,頭蓋内出血は少なかった。全死亡は,ダビガトラン,アピキサバンがワルファリンとより少なかった。

### アジア人のRWDでは,かなり大規模なデータです。概ねこれまでのRWDやNOACと同様の結果かと思われます。高齢者などではどうだったのかも知りたいところです。

$$$ 前回のブログで見えていた黒猫チャン
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by dobashinaika | 2017-10-23 22:01 | 抗凝固療法:比較、使い分け | Comments(0)

高齢者の抗血栓薬による血尿関連合併症は多い。


疑問:抗血栓薬投与による血尿関連合併症の頻度はどのくらいか?

方法:
・一般住民ベースの後ろむきコホート、カナダ、オンタリオ州
・66歳以上、抗凝固薬、抗血小板薬服薬中の患者
・アウトカム:救急外来受診、入院、泌尿器科的処置を必要とした血尿患者

結果;
1)808897人、平均年齢72.1歳、女性53%

2)平均追跡期間7.3年

3)血尿関連合併症
抗血栓薬あり123.95/1000人年 vs.抗血栓薬無し80.17(p<0.001)
抗凝固薬+抗血小板薬:191.61
抗凝固薬のみ:140.92
抗血小板薬のみ;110.72

論:高齢者においては、抗血栓薬による血尿関連合併症が多い。

### すごい規模の検討ですね。カナダ、オンタリオ州の一般住民250万人のデータベースのうち、抗血栓薬を飲んでいる人80万人を平均7年追跡という恐ろし恐ろしいほどの規模のスタディです。こんなことされたら何も反論できないという気もするし、もう日本のコホート研究どうなってんの?と言いたくもなってきます。

確認情報としては、基礎疾患は狭心症15%、心筋梗塞3.9%、TIA3.9%、末梢血管疾患3,4%、心房細動3.3%。
抗血栓薬は、80万人中アスピリン31500例、他の抗血小板薬27500例、アピキサバン15000例、ダビガトラン43500例、リバーロキサバン88000例、ワルファリン32万例でした。
血尿関連合併症は、1000人年あたり、アスピリン94.3、他の抗血小板薬130.03、アピキサバン164.09、ダビガトラン144.24、リバーロキサバン188.65、ワルファリン138.67でした。
また、抗血栓薬服用者は非服用者に比べ、膀胱癌と診断される確率が1.85倍、前立腺肥大のある人はない人よりも血尿合併症が多いという結果も出ています。

抗血栓薬服用者は正直、血尿かなり多いです。いわゆる顕微的血尿だけなら相当数に上ります。その割に血尿に関するしっかりしたエビデンスはなかったように思いますので、非常に貴重な研究です。
今回平均72歳という高齢者で、処置が必要な血尿だけでも年間10人に1人強、抗凝固薬抗血小板薬併用に至っては5人に1人が何らかの処置まで必要な血尿があったというのは、一見やや多い気がしましたが、よく考えるとそのくらいはあるようにも思います。
肉眼的血尿が出ても大抵、経過観察で大丈夫ですが、中には悪性腫瘍が見つかることがあり、何より真っ赤な液体が尿から出るとそれ以後のアドヒアランスや患者さんの薬に対する信頼度が大きく揺らぎます。

さらに血尿関連合併症が、ワルファリンよりNOACに多いのも気になります。例えば66−69歳だけで見ても、補正後のイベント率はワルファリン1.19に対し、ダビガトラン1.04、リバーロキサバン1.46、アピキサバン1.15で、NOAC間でも差があるように見えます。やはりNOACは脳には優しいが、その他はそうでもない、かもしれません。

$$$今日のニャンコ
2匹います。
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by dobashinaika | 2017-10-16 18:47 | 抗凝固療法:全般 | Comments(0)

NOACとの併用で特に注意すべき薬剤は?JAMA誌


疑問;併用薬によるNOACの出血リスクは?

方法
・コホート研究
・91330例,心房細動でダビガトラン,リバーロキサバン,アピキサバン使用中の患者
・台湾の保険データベース
・NOACの代謝に栄養ある薬の併用につき調査
・大出血の定義:出血の初期診断による入院
・2012−2016年

結果:
1)大出血;4770例

2)以下の薬剤は併用による出血増加が明らか(薬剤ありvsなし)
アミオダロン(52vs38),フルコナゾール(242vs103),リファンピシン(103vs66),フェニトイン(108vs56)

3)以下の薬剤は併用による出血が減少:
アトルバスタチン,ジゴキシン,エリスロマイシン,クラリスロマイシン

4)以下の薬剤は大出血リスクとは無関係
ベラパミル,ジルチアゼム,ドロネダロン,サイクロスポリン,ケトコナゾール,イトラコナゾール,バリコナゾール

結論:NOAC使用中の患者では,アミオダロン,フルコナゾール,リファンピシン,フェニトイン併用は大出血リスクを明らかに増加させる。

### 有益な情報です。NOACはP糖蛋白とCYP3A4の代謝を受けるため,それらを阻害する薬品の併用は,NOACの作用を増強させ出血が増えることが知られており,事実添付文書等では,減量または禁忌となっているものが多いです。

ただしそれらが本当に臨床上問題となる出血に関与するのか,そのRWDはこれまで大きなものはなかったと思われます。各薬剤の添付文書を比較すると,減量や禁忌薬剤も薬によりまちまちで,困るわけですが,少なくとも上記4薬剤華かなり慎重に考えたいと思います。
特にアミオダロンは,特に専門医では併用する患者さんも多いと思われます。

$$$ 仙台でルオー展(9日まで)。宗教を超えた温かみ,深みに包まれました。
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by dobashinaika | 2017-10-13 21:20 | 抗凝固療法:全般 | Comments(0)

COMPASS試験に対するBraunwald先生のEditorials

COMPASS試験に関するBraunwald先生のEditorialが出ていて,思わず全文を熟読してしまいましたので,かいつまんだ訳で恐縮ですが,紹介いたします。
”Thrombocardiology” という言葉が印象的です。


ACSおよび安定虚血性心疾患においては,抗血栓薬の組み合わせに関する幾多のトライアルが施行されてきた。

安定虚血性心疾患の治療に関してはこれまで,以下のような一般的合意事項がある。
1.低用量アスピリンがプラセボや無投薬に比べ過ぎれており,重大な出血が少ないのは明らか
2.アスピリンに02Y12阻害薬やトロンビン受容体拮抗薬を追加すると(DAPT),出血の増加はあるにせよ,効果が増強する
3,アスピリンにワルファリンを追加すると再梗塞は減るが,重大な出血が持続的に増え,頻回なモニタリングとアドヒアランスの調整が必要となる
4.DAPTに通常量の抗凝固薬を加えると(トリプルテラピー),重大な出血のリスクが高まるため,長期使用は受け入れられない


ATRAS ACS 2-TIMI 51(ACS症例対象)において,これら既知の事実が標準治療へのXa阻害薬の追加のかたちで敷衍された。
・SAPTあるいはDAPTにリバーロキサバン5mgに1日2回,または2.5mg1日2回を追加するスタディーである。
_複合プライマリエンドポイントは(心血管死,心筋梗塞,脳卒中),両用量ともプラセボに優ったが,大出血(非致死的)はリバーロキサバンで多かった。
・低用量リバーロキサバンは,心血管死と全死亡を,プラセポよりも明らかに減少させた。

今回のCOMPASS試験は,この事実や他の観察に基づいて行われた,安定冠動脈疾患と末梢血管疾患対象に3つの投与法を比較した試験である
・アスピリン(100mg1日1回)単独(対照群)
・低用量リバーロキサバン(5mg1日2回)単独
・低用量アスピリン+低用量リバーロキサバン(2.5mg1日2回)併用

結果は
・複合一次エンドポイント(心血管死,心筋梗塞,脳卒中)は併用群でアスピリン単独群より明らかに低い
・全死亡,冠動脈疾患死,心血管死,ネットクリニカルベネフィットでも優位性あり
・(興味深いことに)脳卒中は併用群で低下したが,心筋梗塞は低下せず
・大出血は明らかに併用群で(アスピリン単独群より)多いが,致死的あるいは頭蓋内出血は有意差なし
・この試験は,効果が大きいと判断され中止された

この試験はthrombocardiology(血栓心臓病学)を前進させる重要なステップであり,ガイドラインが変わるかもしれない。しかしこれで終わりではない。いくつかの可能性がある。
1.心筋梗塞の二次予防例を対象にした,DAPT vs.アスピリン単独のメタ解析では,COMPASS試験と同様のエンドポイント設定で,DAPTが優勢であった。
 DAPT vs,低用量Xa阻害薬の直接対決こそ大きな興味がある
2.P2Y12阻害薬やトロンビン受容体拮抗薬とXa阻害薬との併用が,より効果を上げるかもしれない
3.サブ解析の対象(心筋梗塞の既往,心不全の既往など)によっては,違う結果が生じる可能性があり,よりパーソナライズされた治療につながるかもしれない

しかし今は,血栓心臓病学への重要な寄与という意味で,COMPASS研究者に賛辞を贈りたい。

### コメント無しでご紹介しました。

$$$ 100円ショップで購入しました。
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by dobashinaika | 2017-10-08 01:31 | 虚血性心疾患 | Comments(0)

ABCパスウェイ(心房細動管理の統合的アプローチ法)が提唱されています。

Nature ReviewsにLip先生の,心房細動の統合的マネジメントとして”ABCパスウェイ”が提唱されています。


ABCパスウェイとは,A:脳卒中予防,B:症状の治療,C:リスク因子の管理の3つです。
Aはバーミンガム3ステップと名付けられ,ステップ1:低リスクの同定,ステップ2:CHA2DS2-VAScスコアの評価,ステップ3:SAMe-TTsRsスコアの評価となっています。
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ABCパスウェイの概念は,既に日本では山下先生がだいぶ以前に提唱されたものとほぼ同一ですね。
バーミンガム3ステップは以下のブログを参照してください。

ジェネラリストとスペシャリストの不一致を解消するためのシンプルかつ系統的なストラテジーを目指したものとのことです。
シンプルかつ系統的というのがまさにLip先生らしいと思います。

by dobashinaika | 2017-10-04 23:48 | 心房細動診療:根本原理 | Comments(0)

冠動脈疾患安定期にはアスピリン単独よりNOAC+アスピリン併用が良い?COMPASS試験を読み解く


疑問:NOAC(+/−抗血小板薬)は,アスピリン単独に比べて冠動脈疾患の二次予防により有効なのか

方法:
・ランダム化比較試験
・冠動脈疾患患者(90%)または末梢動脈疾患(27%),または両者合併(DAPT,抗凝固薬内服例などは除く)
・3群(リバーロキサバン2.5mg1日2回+低用量アスピリン,リバーロキサバン5mg1日2回,低用量アスピリンのみ)
・導入期にリバーロキサバンのプラセボおよびアスピリン100mgを30日投与し忍容性を見た
・上記3群に,pantoprazole(PPI)投与の有無での比較試験も進行中
・33カ国,602施設。27395例(日本の登録患者数は1556例で第2位)

結果:
1)主要エンドポイント:併用群が有意にアスピリン単独群より優れる
併用群4.1% vs. アスピリン単独群5.4% (ハザード比:0.76,95%CI:0.66-0.86)
リバーロキサバン単独群4.9%vs アスピリン単独群5.4%(ハザード比:0.90,95%CI:0.79-1.03)

2)大出血:併用群で多い
併用群3.1% vs. アスピリン単独群1.9%(ハザード比:1.70,95%CI:1.40-2.05)

3)死亡率:併用群で少ない
併用群3.4% vs. アスピリン単独群4.1%(ハザード比:0.82,95%CI:0.71-0.96)

4)中間解析で併用群の有効性が明らかとなったため,本試験は早期中止となった。
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結論:安定心血管疾患患者においては,リバーロキサバン2.5mg1日2回+低用量アスピリンはアスピリン単独群に比べ,心血管イベントを減らしたが,大出血は増加させた。リバーロキサバン単独群(5mg1日2回)はアスピリン単独群に比べ,心血管イベントは減らさず,大出血を増やした

ファンド: Bayer

### 既に超話題のCOMPASS試験です。
これまで,冠動脈疾患慢性期は抗血小板薬が必須とされ,抗凝固薬はAF+PCI後の患者さんのみで推奨されていました。
この試験はそうした常識を見直し,抗凝固薬が冠動脈疾患慢性期にも有効であることを示そうとした非常にchallengingな試験に思えます。

従来よりワルファリンの抗血小板作用は指摘されており,二次予防における有効性はアスピリンと同等であることは示されていました(出血が多いので抗血小板薬が推奨されているわけですが)。

一方NOACですが,ACS対象にリバーロキサバンを投与したATLAS ACS TIMI 51で,同薬(このとき使用されたのが2,5mgまたは5mg1日2回)がプラセボよりMACEを抑制したことから,二次予防でも有効である可能性はあったわけです。今回はプラセボではなくアスピリン対象で,なおかつリバーロキサバン+アスピリン併用群を設定したことが最大の特徴と思われます。

結果は上記のようなわけで,なんと筆者らによれば併用群のほうがアスピリン単独よりもMACEを減らすという,ある意味衝撃的なものでしたが,しかし幾つか確認事項があります。
1.主要エンドポイントは,心血管死,脳卒中,心筋梗塞であり,併用群がアスピリン単独群より勝ったのは,その中の脳卒中と心血管死である(心筋梗塞は同等)
2.出血で併用群が多かったのは,部位別では消化管出血である。頭蓋内出血は同等。小出血も多かった。
3,65歳未満での有効性は認められたが,75歳以上では有意差がなかった

これまで虚血性心疾患予防(動脈系)は抗血小板薬,心房細動(左心耳=血行動態上の静脈系)は抗凝固薬に色分けされ,二分表で覚えるよう教えられてきました。その常識が危ういものとなりそうな(?)結果かもしれません。もともと抗凝固薬自体に抗血小板作用があることは知られており,これは抗血小板作用をもつトロンビンを阻害する間接的効果と,抗凝固薬の直接の抗血小板作用の2つがあると言われています。その意味ではワルファリンもトロンビン阻害薬も,またXa阻害薬においてもその可能性は予想されるところでした。今回の試験は,その予想を裏付けるためのものかもしれません。また併用することでの相乗効果などもあるのかもしれないと思わせます。あるいは,NOACで言われている抗炎症作用が効いたのか,はたまた動脈血栓であっても凝固因子の関与が強い場面があって,そこに効いたのか?

メカニズムの推測については,考えだすと興味がつきませんが,所詮専門家ではないので,ぜひ専門家の先生のご教示を受けたいところです。

ただし,一方で問題点も多く指摘できます。
1.上記とダブりますが,MACEと言っても冠動脈イベントでなく,strokeで差がついている
2.出血はやはり併用群で多い
3.リバーロキサバン2.5mgは,日本人でも有効なのか
4.アスピリンなら1日1回だったところ,1日2回となることでアドヒアランスはどうなのか?
5.そもそもなぜクロピドグレルではないのか
6.コストをどう考えるか(2.5mgがいくら位になるのか)

この試験は,とくにプライマリ・ケアの立場で重要な意味を持ちます。冠動脈疾患の慢性期管理はプライマリ・ケア医の仕事であり,特に急性期DAPTから単独に切り替えるとき,この辺の知識がないと専門医とともに(あるいは専門医の指示で)切り替えや継続が十分できないことになるからです。

解釈についてははまだ慎重に考えたいと思います。追加のエビデンスの集積が望まれます。



by dobashinaika | 2017-10-04 01:11 | 虚血性心疾患 | Comments(0)

第11回どばし健康カフェ「 薬局、上手に使えてますか?」10月14日(土)開催します!今回は薬局と薬の話です。

第11回どばし健康カフェのご案内です。

第11回のテーマは「薬局」。


薬局は,処方箋がないとお薬もらえない?
薬局の薬剤師さんには薬をもらうときどんな話をすることになっているのか?
市販薬に係った税金が戻ってくる!?
薬局の薬剤師さんを指名できる?
薬剤師さんがおうちまで来てお薬整理整頓や説明をしてくれる??などなど

薬局や薬についての疑問を持つ方は多いでしょう。
今回は,実際に薬局で働く薬剤師さんからいろいろは情報を聞き出して、賢い使い方をみんなでおしゃべりしながら探します。

まだまだお席がありますので,皆様に気軽にご参加ください。

お申し込みはこちらから。
あるいは直接お電話かメールをいただいても構いません。

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by dobashinaika | 2017-10-02 21:57 | 土橋内科医院 | Comments(0)

冠動脈疾患における抗血小板薬2剤併用療法(DAPT)に関する2017ESCガイドラインUpdateのまとめ

しばらくブログ更新を休んでおりました。
この季節,いろいろとイベントが多くやや余裕がありませんでした。
元気にしておりますので,ご安心ください。

さて,ESC(欧州心臓病学会)のDAPT(抗血小板薬2剤併用治療)に関するガイドラインが更新されました。
折しも冠動脈疾患慢性期へのNOAC投与が超話題となっており,これは押さえておきたいところです。
JACCメーリングリストがよくまとまっていましので,訳します。
COMPASSについては近々まとめます。

【DAPTに関する2017ESCガイドラインのキーポイント】


1.DAPTを1年以上延長することのベネフィット(とくに生命予後の点で)は,先行する心血管疾患の既往(ACSか安定狭心症か)に大きく左右されることと,DAPTの出血リスク評価のモデルが確立されてきたことにより,虚血と出血イベント(のバランス)にもとづく個別のアプローチが勧められるようになった。

2.DAPT中は出血リスクを軽減するあらゆる方策が取られるべきである。例えば,低用量アスピリン,低用量P2Y12阻害薬を適切でルーチンなPPI使用とともに使うこと。

3.PCI後の安定狭心症患者の第一選択薬はクロピドグレルである。抗凝固薬併用例やACSでのチカグレロル,プラスグレル禁忌例にも勧められる。

4.安定狭心症患者では,ステントの種類にかかわらず,DAPTの期間は1〜6ヶ月(出血リスクに依存)。虚血リスクが出血リスクを上回ればより長くなる。

5.ASC患者では,最終治療が何であれ(薬物,PCI,CABGにかかわらず),DAPTの期間は12ヶ月。出血高リスク患者は6ヶ月だが,一方出血合併症がなく,長期服用に耐えられる場合は12ヶ月以上。

6.DAPT期間を短くするために,DESに代わってBMSを考慮することはない。DAPTの期間はあくまで虚血ー出血バランスで決まるので,ステントの種類にはよらない

7.トリプルテラピー(抗凝固薬+DAPT)は,退院後を除いて最大6ヶ月まで。虚血リスク(病変の複雑さ,残存狭窄部位の数,ステント技術,仕上がり)と出血リスクを考慮する。チカグレロル,プラスグレルはこの場合禁忌。

8.待機的な非心臓手術の場合。多職種専門チームで術前のDAPTの期間を決めるべきである。術前1ヶ月はステントの種類にかかわらずP2Y12阻害薬中止(アスピリン継続)を考慮するべきである。それが困難な場合は,特にステント治療1ヶ月以内であればcangrelor, tirofiban, eptifibatideによるブリッジを考慮すべきである。

9.性別,糖尿病の有無にかかわらず,DAPTは同じ薬剤と期間を使用すべき。

10. DAPT中の出血の場合,とくにPCI後短期間例では致死的,出血源不明,治療困難な場合に限り,2剤とも中止される。そうしたレアケースではPCIを施行した施設に搬送すべき。

### 以下がアルゴリズムです(小さくてすみません,元論文はフリーですので,詳しくはそちらを見てください)。キーメッセジはステントの種類にかかわらず,症例ごとに虚血と出血のリスクバランスを考えて行え,ということかと思います。
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出血のスコアリングは以下のDAPTスコアが推奨されていました。
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トリプルテラピーについてのまとめはこちら

$$$ 日本プライマリ・ケア連合学会の認定医を取得いたしました。指導医まではとりたいと思います。これからもプライマリ・ケアを包括的に学び,実践していきたいと考えています。それにしても,試験はきつかった(笑)。もうこの歳で短時間多数の問題を解くのは無理かも。。生涯最後の試験かもしれないと思って受けましたw.
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by dobashinaika | 2017-10-01 23:52 | 虚血性心疾患 | Comments(0)


土橋内科医院の院長ブログです。心房細動やプライマリ・ケアに関連する医学論文の紹介もしくは知識整理を主な目的とします。時々日頃思うこともつぶやきます。


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