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発作性心房細動では無症候性は症候性に比べて死亡率が高い。持続性ではその傾向はない:Fushimi AFレジストリから


疑問:Fushimi AFレジストリにおいて無症候性心房細動の特徴とアウトカムはどうか?

方法;
・Fushimi AFレジストリ登録患者対象
・発作性心房細動(1837例)と持続性(1912例)とで,無症候性と症候性の臨床的特徴やアウトカムを比較する

結果
1)発作性群:無症候性は症候性より高齢( 74.1 vs. 71.1歳; p<0.01)で女性が多い(62.1% vs. 55.6%; p<0.01)。CHA2DS2-VAScスコアが高い( 3.37±1.73 vs. 2.99±1.63; p<0.01)。

2)持続性では,各特性に大きな差はなし

3)発作性群においては無症候性の危険因子は,75歳以上,脳卒中/全身性塞栓症の既往,男性,慢性腎臓病。

4)持続性群においては,年齢は無症候性の危険因子ではない

5)発作性群においては,無症候性は症候性より全死亡率が高い。 (hazard ratio [HR], 1.71; 95% confidence interval [CI], 1.31-2.29; p<0.01)

6)持続性では差はなし

結論:発作性心房細動では,無症候性は高齢,男性,合併症の数が脳卒中リスクや死亡リスクに関連していた。これらは持続性では関連がなかった

### これまでも無症候性の方が,アウトカムが良くないとの報告はいくつかありました。治療が遅れる,co-morbidityが多いなどが理由です。
ただし,発作性と持続性で比較したものはなかったように思います。

持続性の場合は,症状の有無はCHA2DS2-VAScスコアなどに関係しないものと思われます。持続性では,むしろ症候性のほうがレートが早かったり,心機能が低下していたりして心不全例が多いからでしょうか。その点,発作性の場合は症状は動悸が主と思われますので,心機能低下とは関係ないといえます。

$$$ 夏の夕暮れ時の往診。涼しいので助かります。
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by dobashinaika | 2017-08-30 00:00 | 心房細動:リアルワールドデータ | Comments(0)

ダビガトラン+抗血小板薬1剤のほうがワルファリン+DAPTより出血リスクが低い(RE-DUAL PCI試験):NEJM誌


疑問:ダビガトラン+抗血小板薬はPCI後の心房細動患者にとって安全かつ有効か?

方法;
・対象:PCI後の心房細動患者2725例を3群ランダム化
・Tripleテラピー群:ワルファリン+P2Y阻害薬(クロピドグレルまたはチカグレロル)+アスピリン,1〜3ヶ月
・Dualテラピー群:ダビガトラン(110mgor150mg,1日2回)+P2Y阻害薬(クロピドグレルまたはチカグレロル)
・米国以外の高齢者(80歳以上,日本は70歳以上)はダビガトラン110mgまたはトリプル群に割付
・主要エンドポイント:大出血または臨床的に意義のある小出血。平均追跡期間14ヶ月
・複合エンドポイント(非劣性);血栓塞栓(心筋梗塞,脳卒中/全身性塞栓症),死亡,予期せぬ血行再建

結果:
1)主要エンドポイント:110mgdual群 15.4%,トリプル群 26.9%(ハザード比 0.52; 95% CI, 0.42 to 0.63; P<0.001 for noninferiority; P<0.001 for superiority)

2)主要エンドポイント:150mgdual群 20.2%,トリプル群(米国外の高齢者除く) 25.7%(ハザード比 0.72; 95% CI, 0.58 to 0.88; P<0.001 for noninferiority)

3)複合エンドポイント:dualテラピー群合同 13.7%,トリプル群 13.4%(ハザード比 1.04; 95% CI, 0.84 to 1.29; P=0.005 for noninferiority)

4)重篤な合併症発症率に有意差なし
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結論:PCI施行心房細動患者においては,ダビガトラン+P2Y阻害薬(dualテラピー)のほうがワルファリン+DAPT(tripleテラピー)より出血リスクが低い。血栓塞栓症リスクは非劣性有意差なし。

Supported by Boehringer Ingelheim.

### 現在バルセロナで開催されているESC2017のLate-Breaking Sessionで,例によってNEJMの即日掲載です。RE-DUAL PCI試験と呼ぶようです。

まあこの割り付け方ですと,出血イベントはこうなりますね。ワルファリンはトリプル,ダビはデュアルですからこれで逆の結果だったら大変です。
しかもINRは2〜3。もうトリプルは危ないことはほぼ明らかなので日本のようにワルファリン1.6〜2.6の世界でワル+クロピド(アスピリンでもいい)vs.ダビ+クロピドでガチンコしてほしい気がします。そうした空気ができる前のスタディデザインかもしれません。

 知りたいのはワルファリンは抗血小板作用も持っていますので,血栓塞栓症がダビガトラン群で多くなるのではという懸念の払拭です。これは非劣性が証明されたので 有意差なしですので大丈夫そうですが,複合エンドポイントの詳細を見ますと,110mgダビ群でやや心筋梗塞が多いような数字が気になります(もちろん統計的は意味ない形ですが)。

もちろん。これだけNOACが普及しているなかでPCI後NOACが大丈夫そうだという大きな証左ですので,役立ちデータと思います。でもPIONEER−AFのときもそうだけど,ますます不憫なと言うか,もうないもののようになっているワルファリンですねー。

※ プロトコールをよく読みますと,血栓塞栓症だけの非劣性を証明しようとすると8520名の症例数が必要となるとされています。
このため,有効性の主要エンドポイントは,非劣性を言うために幾つかのアウトカムの複合となっています。血栓塞栓症としては,「有意差はなかった」としておくほうが正確かと思われます。訂正いたします。

$$$ 初秋の定禅寺通り
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by dobashinaika | 2017-08-28 23:20 | 抗凝固療法:抗血小板薬併用 | Comments(0)

「もう怖くない! 心房細動の抗凝固療法」Amazonで予約開始いたしました。

すでに宣伝したところで恐縮ですが、拙著

もう怖くない! 心房細動の抗凝固療法プライマリ・ケア医のためのシンプルアプローチ」

本日からAmazonで予約開始となりました。

この数年間でブログに書き溜めたものに加筆修正を加え、プライマリ・ケア外来、専門医、研修医、薬剤師、看護師、その他の医療職、介護職全ての方の参考になるように書いたつもりです。

序文を転載いたしますので、お読みいただければ幸いです。
折しも、NOACのリアルワールドデータも大量に出揃い、抗凝固療法については世界的に見ても安定期に入ってきているという印象があります。全体的にはNOAC中心の潮流なのかと思われますが、そんな中で今更ですが。ワルファリンにも熱い目を向け、少し大きな視点からこの分野を眺めたつもりです。
個人的には心房細動抗凝固療法に関するタスクは一応、これを持ってひと段落と考えております。
(ブログはまだ継続します^^)

一人でも多くの方の、日常診療上のお役に立てれば幸いに存じます。

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### はじめに
─ エビデンス,患者世界と現実世界とのギャップを埋めるには?─

2010年の後半からブログ「心房細動な日々」を本格的に書き始めました.心房細動に関する論文をとにかく片っ端から読んで,アブストラクトを日本語に訳し,コメントを入れ,毎日のように更新しました.
 初めは「若いころから慣れ親しんできた心房細動について,読んだ論文をまとめよう」くらいの軽い気持ちでした.最初は,おとなしく日本語訳のみを書き残していましたが,始めて数ヶ月くらいから心房細動について語りたくて仕方がなくなり,いつのまにか語ることが楽しくなっていることに気がつきました.気鋭の哲学者,千葉雅也氏が「勉強の哲学」(文藝春秋)で指摘した「享楽的こだわり」の状態です.
 ところが,さらに論文を読み進め,批判的吟味を加える作業を毎日行っていると,ひとつひとつのエビデンスに対してどんどん懐疑的になり,ひいてはエビデンスと現実世界とのギャップを痛切に感じ続ける日々がやってきました.「この論文のこういう問題点が目の前の患者さんには適応できない」,たくさん論文を読んで心房細動オタクになるほど,そうした論文の限界だけが目について患者さんに適応できず,現実世界から遠ざかっていく,そのギャップを埋めるべくまた論文を読んでいく,という,たちの悪い堂々巡りでした.この悪循環を断ち切るには,千葉雅也氏も言うように,あるところで自分なりに主観的に,エビデンスと現実世界の比較を「中断」する作業が必要となります.中断して自分なりに「まぁこんなところだろう」と決めるのです.
 さて,この中断作業には患者さんの病態や心房細動治療への思いや,その人の文脈を理解することが不可欠と思われますが,患者さんの世界を理解することにも上記の「中断」が必要であることに気がつきます.患者さんを含め他者の内面を完全に理解することは不可能です.「この人はこう思っているのだろう」とある時点で理解の追求を中断しないことには,処方箋の一枚も書けなくなります.
 ブログを開始して約7年,ここに来てようやく,日々の診療とはこのように論文世界や患者世界をとことん追求することではなくて,自分なりの思いに基づいてその追求を中断し,現実的な決断をつける営みであるということに気がついたのです.「世の中も患者さんも,決して100%わかることはできない」ということがわかったわけです.そしてそうした中断の中で,現実的な着地点を見つけ出すことにこそ,医療の楽しみがあるということも…….
 ただ,やはりこうした着地点の発見にはある程度の指標が必要かもしれません.「抗凝固薬のここが知りたい.でも論文にもガイドラインにも書いていない」,診察室でそういう思いを抱く医師は多いのではないでしょうか.抗凝固薬には,まだまだどう対処してよいかわからない問題がたくさんあります.
本書は,あくまで診察室で日々悩む医師の視点から,多くのプライマリ・ケア医が抱く抗凝固療法に関する日常的な細やかな疑問に対して,できるだけ現実的に対応することに主眼を置きました.また専門医の先生が読んでも,読み応えがあるように,最新のエビデンスやガイドラインも網羅したつもりです.そして,今まで述べたようなエビデンスと現実世界,ひいては患者さんと医師のギャップを埋めるために何が必要かという視点を貫くように心がけました.
 そのため,これまで出版されている抗凝固薬に関する書籍に比べると,生物社会心理的なアプローチや,専門医の先生からはお叱りを受けるような見解が記載されているかもしれません.しかし一方で,ワルファリンの細かな調整法から在宅認知症患者さんの抗凝固療法に至るまで,「かゆいところに手が届く」ように項目を設定しています.
 上記のようなアプローチには,家庭医療学のコンセプトが欠かせませんでした.医療福祉生協連家庭医療学開発センターの藤沼康樹先生には,各種セミナーやFacebook等を通じて多くのインスピレーションをいただきました.また文光堂の小柳健さんには,本書の企画から出版に至るまで,多くのアドバイスを頂きました.この場をお借りして厚く御礼申し上げます.
 ブログ「心房細動の日々」はこのような変遷を続けながら,これからも続けていくつもりです.本書が7年にわたるブログの現時点での集大成として,先生方の「中断」と「着地点の発見」の一助になれば幸いです.

2017年7月
小田倉弘典








by dobashinaika | 2017-08-23 18:52 | 抗凝固療法:全般 | Comments(0)

新規発症例の心房細動に,肥満,高血圧,喫煙,糖尿病を合併すると心不全のリスクは増加する:JACCHF誌


疑問:新規発症心房細動を有する女性において,心不全発症のリスク因子は何か?

方法:
・米国のWomen’s Health Studyに登録された39876例
・うちベースラインで心血管疾患のない34,736例対象
・心房細動新規発症例における全体の心血管系リスク,予後,心不全発症リスクを評価

結果:
1)心房細動新規発症:1,534例(4.4%),心不全発症:687例(2.0%):平均追跡期間20.6年

2)新規心房細動発症例中:心不全発症226例
大半(82.7%)は心房細動診断時に発症

3)新規心房細動発症例の大半が(39例除く),心不全の既往なし

4)新規心房細動発症例での器質的心疾患合併例は少ない。
左室肥大39%,僧帽弁逆中15%,左房拡大46%

5)心房細動の新規発症は心不全のリスク増加に関連あり:HR 9.03; 95%CI, 7.52-10.85

6)心房細動患者の女性が心不全を発症した場合,全死亡率(HR, 1.83; 95% CI, 1.37-2.45),心血管疾患による死亡率(HR, 2.87; 95% CI, 1.70-4.85)いずれも増加

7)新規発症心房細動が心不全発症に及ぼす寄与危険度:全死亡率9.9% (95% CI, 2.2%-18.3%),心血管疾患による死亡率18.2% (95% CI, 1%-35%)

8)心不全発症のリスク因子;収縮期血圧120以上,BMI30以上,現在喫煙,糖尿病

9)上4つの因子の組み合わせによる心不全への寄与危険度:62% (95% CI, 23%-83%)

10)3または4つのリスク因子を持つ女性に比べ,コントロール良好の女性は心不全発症リスクが少ない
2つの因子=HR0.60; 95% CI, 0.37-0.95; 1つの因子=HR 0.40; 95% CI, 0.25-0.63; 0因子=HR 0.14; 95% CI, 0.07-0.29
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結論:女性で心房細動の新規発症例においては,肥満,高血圧,喫煙,糖尿病の合併が心不全発症のリスク因子であった。

### 永続性心房細動に長く罹患していても,心不全になる人とならない人がいるのは,臨床上よく懐く疑問です。本研究は多数例のコホートを用いて,肥満,高血圧,喫煙,糖尿病が重複する人ほど心不全になりやすいことを検証した,大変意味のある研究と思われます。

抗凝固療法が普及してきた今日,以前からも述べておりますように,心不全防止が心房細動治療の主眼目になると思われます。その際,上記のリスクを多く抱えている人ほど心不全には常に気をつけて診療することが勧められると思われます。

本文中では睡眠時無呼吸症候群のリスクも大切とされています。実臨床でも常に気をつけたい点です。

$$$ S市杜王町のマンホール
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by dobashinaika | 2017-08-21 22:15 | 心房細動:リアルワールドデータ | Comments(0)

長時間労働者(週55時間以上)は標準時間労働者よりも心房細動を発症しやすい:EHJ誌


疑問:長時間労働と心房細動との関係は?

方法;
・ヨーロッパのいくつかのコホート研究のメタ解析
・85494人対象。平均43.4才
・心房細動の記録なしの人
・心電図、カルテ、薬剤伝票、死亡統計から解析
・10年間追跡
・長時間労働者(週55時間以上)vs.標準労働時間(週35−40時間)

結果:
1)心房細動新規発症:1061例(12.4/1000人年

2)長時間労働者は標準労働時間の1.4倍の発症率(ハザード比= 1.42, 95% CI = 1.13–1.80, P = 0.003)

3)コホート間の明らかな異質性なし (I2 = 0%, P = 0.66)

4)冠動脈疾患、脳卒中を除いても結果は同様

5)肥満、アルコール、高血圧といった行楽因子を調整後もほぼ同様
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結論:長時間労働者は標準時間労働者よりも心房細動を発症しやすい

### 年齢、性別、社会経済状態、から併存疾患、アルコール、肥満などの因子を補正してのデータです。
実際には心電図で1回でも記録できた人も含まれると思われますので、脳卒中や死亡率にまで影響するかは不明かとは思います。しかし心房細動のmodified factorとしての自律神経活動はつねに考慮すべき点ですので、その背景の疲労や精神的ストレスの影響は当然気にしたいところで、それをきちんと検証したデータとして貴重と思われます。

by dobashinaika | 2017-08-17 18:42 | 心房細動:リアルワールドデータ | Comments(0)

「もう怖くない!心房細動の抗凝固療法」8月末刊行予定です。

宣伝で恐縮です。心房細動関連の2冊目の本を書きました。心房細動や抗凝固療法についてブログなどで書きためたものの現時点での集大成です。非専門医、専門医を問わずご参考になるように書いたつもりですので、ぜひお手にとっていただければ幸いです。
8月末刊行予定です。(Amazonでの予約はもうしばらくになります。)
http://www.bunkodo.co.jp/book/detail_1415.html
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by dobashinaika | 2017-08-09 09:56 | インフォメーション | Comments(0)

NOAC vs ワルファリン。リアルワールドデータのメタ解析結果:Stroke誌

Stroke. 2017;STROKEAHA.117.017549 https://doi.org/10.1161/STROKEAHA.117.017549

臨床上の疑問:臨床試験の外のリアルワールドにおいて,NOACのビタミンK阻害薬(VKA)にくらべての安全性,有効性はどうか?

方法:
・心房細動患者の脳卒中予防に関するNOACとVKAの比較をした観察研究のシステマティックレビューとメタ解析
・国内あるいは。保険上のデータベースを使用
・結果に虚血性脳卒中,虚血性脳卒中あるいは全身性塞栓症,あらゆる脳卒中あるいは全身性塞栓症,心筋梗塞,頭蓋内出血,大出血,消化管出血,死亡を含む研究
・MOOSEガイドラインとGRADEを用いて解析

結果:
1)28研究:ダビガトラン24,VKA23,リバーロキサバン14,アピキサバン7,エドキサバンなし。各研究間に明らかなバイアスなし

2)ダビガトラン
脳卒中/全身性塞栓症:明らかな差なし:HR 1.17; 95%CI 0.92-1.50
心筋梗塞:明らかな差なし:HR 0.96; 95%CI 0.77-1.21
頭蓋内出血:明らかにVKAより少ない:HR 0.42; 95%CI 0.37-0.47
死亡:明らかにVKAより少ない:HR 0.63; 95%CI 0.52-0.76
消化管出血:明らかにVKAより多い:HR 1.20; 95%CI 1.06-1.36

3)リバーロキサバン
脳卒中/全身性塞栓症:明らかな差なし:HR 0.73; 95%CI 0.52-1.04
頭蓋内出血:明らかにVKAより少ない:HR 0.64; 95%CI 0.47-0.86
死亡:明らかな差なし:HR 0.67; 95%CI 0.35-1.30
消化管出血:明らかにVKAより多い:HR 1.24; 95%CI 1.08-1.41

4)アピキサバン
脳卒中/全身性塞栓症:明らかな差なし:HR 1.07; 95%CI 0.87-1.31
頭蓋内出血:明らかにVKAより少ない:HR 0.45; 95%CI 0.31-0.63
死亡:明らかにVKAより少ない:HR 0.65; 95%CI 0.56-0.75
消化管出血:明らかにVKAより少ない:HR 1.20; 95%CI 0.31-0.63

結論:リアルワールドデータは,NOACとVKAを比較したRCTの知見を確定し,補強するものである

### NOAC vs VKAに関するおびただしい数のRWD(リアルワールドデータ)がでておりますが,そのメタ解析です。とうとう出ました。

大雑把に言えば
1)脳卒中/全身性塞栓症はNOACとVKAは同等
2)頭蓋内出血はNOACが少ない
3)全死亡,消化管出血(心筋梗塞)はNOACにより異なる
です。まとめてみれば,やはり従来から認められている傾向になったという感じです。

当然RWDですので,患者背景,アドヒアランス,処方適応等々に交絡因子は残存しているはずです(たとえスコアマッチさせたとしても)。またNOACの異なる用量に関しては検討されていません。さらにRWDは,保険ベースで,大病院も診療所も一絡げの結果もあれば,登録研究によってはやはりかなり選択バイアスのかかったコホートもあります。

よく言われるようにおそらくどのコホートでもVKAは高リスク者に使われる傾向にあり,NOACは低用量が好まれる傾向にあると思われます。

どんな患者さんにどの薬が処方されていたかが大事ですので,全文把握したらまたお知らせします。

$$$ 昨日今日の仙台の寒さと行ったら。。。こたつを出したという患者さんまでいらっしゃいました。冗談でなく。
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by dobashinaika | 2017-08-04 22:16 | 抗凝固療法:リアルワールド | Comments(0)

ダビガトランの中和薬、イダルシズマブの実臨床における効果と安全性:NEJM誌


臨床上の疑問:ダビガトランの中和薬、イダルシズマブの大出血時や緊急手技時での効果と安全性はどうか?

方法:
・グループA:ダビガトラン内服中のコントロール不能な出血患者に対しイダルシズマブ5g静注
・グループB:ダビガトラン内服中に緊急手術が必要なった患者
・主要エンドポイント:イダルシズマブ投与4時間以内における抗凝固中和(希釈トロンビン時間またはエカリン凝固時間)の最大パーセンテージ
・副次エンドポイント:止血による修復(臨床医による)を安全性評価(血栓再発も含む)

結果:
1)503例:グループA301例,,グループB202例,オープンラベル

2)ダビガトランの中和は4時間以内ぶ100%の症例で達成

3)グループAにおける止血までの時間(中間値):2.5時間

4)グループBにおける施術開始までの準備時間:1.6時間,止血率:93.4%

5)90日後までの血栓イベント:グループA 6.3%,グループB 7.4%

6)死亡率:グループA 18.8%,グループB 18.9%
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結論:イダルシズマブは,緊急症例において迅速かつ安全にダビガトランの抗凝固作用を中和した。

### イダルシズマブの臨床試験RE-VERSE AD studyです。もう既に実臨床で使われていますね。緊急手術でも93%で止血が可能がだったのことで,かなり効果はあるように思われます。

死亡率は決して低くありませんが,大出血症例が含まれており,またプラセボアームがないので,何も投与しないときと比較してどうなのかについては不明です。

第III相比較試験のデータについてはこちら

$$$ 今日のニャンコ
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by dobashinaika | 2017-08-02 21:49 | 抗凝固療法:中和方法 | Comments(0)

心房細動は血栓塞栓症の原因ではなくCHA2DS2-VAScスコアで2点相当のリスク因子のひとつにすぎない:JACC誌


疑問:心房細動自体は本当に脳卒中の主要なリスク因子なのか?

背景:
・CHA2DS2-VAScスコアは心房細動患者におけるリスク評価ツールとして確立されている。
・心房細動それ自体が脳卒中の原因となる因子なのかはわかっていない
・大多数(80〜90%)の脳卒中患者では心房細動は記録されていない。

方法:
the U.K. Biobank cohort登録患者502353例
・40〜69歳の患者,英国のGPによる登録。2006〜2010年

結果:
1)平均57+/-8歳:81%が65歳未満,19%が65〜74歳,46%が女性,平均追跡期間2.2年

2)高血圧29%,脳卒中/TIAの既往2%,血栓塞栓症の既往3%,心不全1%,血管疾患3%,糖尿病5%

3)心房細動例における血栓塞栓症発症率:0.86(95%CI;0.74-1.01)/100人年

4)非心房細動例における血栓塞栓症発症率:0.14(95%CI;0.13-0.15)/100人年

5)CHA2DS2-VAScスコアは心房細動例の脳卒中を予測した:N = 9,947; p < 0.001; C-statistic: 0.64

6)同様に非心房細動例の脳卒中も予測可能だった:N = 492,406; p < 0.001; C-statistic: 0.64

7)CHA2DS2-VAScスコア2点未満の心房細動例の血栓塞栓症発症率:0.48 (0.35-0.67)

8)CHA2DS2-VAScスコア4点未満の非心房細動例の血栓塞栓症発症率:0.12(0.11−0.13)

9)CHA2DS2-VAScスコア2点の心房細動例における血栓塞栓症発症率:0.80 (0.59-1.08)

10)CHA2DS2-VAScスコア4点の非心房細動例における血栓塞栓症発症率:0.76 (0.64-0.91)

11)CHA2DS2-VASc-A2スコア(CHA2DS2-VAScスコア+心房細動あり2点/心房細動なし0点)は一般住民における血栓塞栓症を十分便予測しえた:N = 502,353; C-statistic: 0.67
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結論:CHA2DS2-VAScスコアは心房細動のない例でも血栓塞栓症の予測に役立つ。このスコアに心房細動2点として別に追加したスコアを一般住民に当てはめる新しくてより深いスコアを考案した。CHA2DS2-VASc-A2スコア4点以上に抗凝固薬を詳報すべきかどうかは,このデータだけからは結論できない。さらなる研究を提案したい。

### なるほどねー。心房細動クラスタ(そんなのあるのか?)にとってはまさに発想の転換ですね。
心房細動を特別視せず,他の因子と並列に捉えた場合,心房細動はCHA2DS2-VAScスコアで2点程度の寄与危険なんですね。まあCHA2DS2-VAScスコア0点では心房細動があっても投与しなくてよかったので,ある意味2点相当というのはうなづけますが,改めてこういたデータを突きつけられると,心房細動がまずあってそっからリスク評価を考えるという従来の発想法をリセットし,心房細動も一つの危険因子としてとらえたくなるわけです。

ただ,では心房細動なしでもCHA2DS2-VAScスコアが4点以上なら抗凝固薬かというとことは単純ではないですね。たとえば,75歳以上,糖尿病,高血圧の人は4点ですが,全員抗凝固薬かという話になります。こういう患者さんはものすごくいますので,高血圧や糖尿病の重症度その他をよく考える必要があります。出血リスクも考える必要があるし,また85歳以上でもそうかというと,当然まだ何も言えないと思われます。

ただ従来からも脳卒中のリスクスコアはいくつかありますが,その中では簡便なものと考えられます。追加試験を待ちましょう。

$$$ 今日の収穫
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by dobashinaika | 2017-08-01 23:29 | 抗凝固療法:適応、スコア評価 | Comments(0)


土橋内科医院の院長ブログです。心房細動やプライマリ・ケアに関連する医学論文の紹介もしくは知識整理を主な目的とします。時々日頃思うこともつぶやきます。


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プライマリ・ケア医のための心房細動入門

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