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定期健康診断での低リスク者への心電図検査は、追加検査や通院を増やすが心イベント率は改善しない:JAMAIM


臨床疑問;プライマリ・ケア外来での、心血管リスクのない人に対する定期的な健康診断において心電図はどの程度の頻度でとれば良いのか?心電図を施行した人としない人とでその後の検査やアウトカムに差があるのか?

方法:
・一般住民対象の後ろ向きコホート研究
・カナダ、オンタリオ州のヘルスケアデータベース
・少なくとも1回は定期健康診断を受けたことのある3,629,859人

結果:
1)定期健診後30日以内に心電図を施行した患者:21.5%

2)心電図施行患者の割合:プライマリーケア施設の1.8-76.1%、プライマリーケア医の1.1-94.9%

3)追加された心臓系の検査、受診、処置数:心電図施行者は非施行者の5.14倍(p<0.001)

4)死亡率 (0.19% vs. 0.16%)、関連入院(0.46% vs. 0.12%),、冠動脈再建術(0.20% vs. 0.04%)は心電図施行者、非施行者とも同様に低率

結論:健診後の心電図はコモンであり、プライマリーケア外来では、施行率に幅があった。ルーチン心電図は追加の心臓系検査や紹介を増やしたが、心イベントは非常に低かった。

### 一般健康診断や低リスク者へのスクリーニングのための定期心電図検査は、USPTFでもグレードD(推奨しない)となっていますね。

ACPのHigh-Value Care Adviceもあります。
その他のエビデンスも以前まとめたことがあります。

今回は、プライマリーケア外来で健康診断を行った際に、主治医が他の情報から心電図を施行した方が良いと判断した患者を対象としているようです。1%しか施行しない医師もいれば95%に施行する医師もいて、心電図スクリーニングに関する姿勢が医師によって相当異なることが示されています。

自治体で行われている特定健康診査では、心電図は自治体によってまちまちのようで、ちなみに心電図は全員施行されています。日本の研究はあるのかな。まあこの件に関しては欧米とそれほど差はないように思われますが。

$$$ 今日のニャンコ
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by dobashinaika | 2017-07-31 16:58 | 循環器疾患その他 | Comments(0)

85歳以上の超高齢者でも,抗凝固薬の脳卒中予防ベネフィットは出血リスクを上回る:JAHA誌


疑問:85歳以上の人の抗凝固療法のアウトカムは?

方法:
PREFER in AFレジストリ(前向き試験,欧州)
・抗凝固薬の有無,ネットクリニカルベネフィット算出

結果:
1)6412人登録:85歳以上505人

2)脳卒中/全身性塞栓症(%/年):
85歳未満:抗凝固薬なし2.8 vs. あり2.3
85歳以上:抗凝固薬なし6.3 vs. あり4.3

3)大出血:85歳以上>85歳未満

4)85歳以上の大出血:抗凝固薬あり4.0 vs. なしまたは抗血小板薬4.2, P-0.77
抗凝固薬はネットクリニカルベネフィットに影響せず

5)抗凝固薬薬のネットクリニカルベネフィット:-2.19%(95%CI;-4.23%~-0.15%; P=0.036)
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結論:年齢による脳卒中のリスク増加のほうが出血リスク増加よりも大きいので,超高齢者においては抗凝固薬の絶対的ベネフィットは高く,出血リスクよりも遥かにネットクリニカルベネフィットが大きく価値がある。

$$$ これまでも超高齢者ほど抗凝固薬のネットクリニカルベネフィットは良いことが指摘されていました。その根拠は,年令によるリスク増加の程度が,塞栓症リスクのほうが出血リスクを上回るというものです。そのことがこちらの研究でも示されています。

同様の報告はいくつかあり,このことは本当に近いようです。

ただし,私自身超高齢者での注意点として以前から心がけているのは,1)血圧 2)腎機能 3)適切な用量 4)アドヒアランス 5)患者文脈(認知症,服薬管理者など)で,この5点がうまくいかない場合は出さないという選択肢もありと思っています。

なお抗凝固薬は72%がワルファリン,NOACは6.1%,抗凝固薬+抗血小板薬9.9%でした。

$$$ 今日のニャンコは多いです。何人いるでしょうか。
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by dobashinaika | 2017-07-24 23:27 | 抗凝固療法:リアルワールド | Comments(0)

発作性心房細動は1年で8.6%,10年で35%が持続性に移行する:Heart Rhythm誌


疑問:発作性心房細動のうちどのくらいのひとが持続性に移行するのか

方法:
・カナダの登録研究
・平均61.2歳
・平均追跡期間6.4年

結果:
1)発作性から持続性への移行率:1年=8.6%,5年24.3%,10年=36.3%

2)持続性への移行に関する危険因子
年齢:ハザード比(HR);10年経過で1.4倍
中〜上昇の僧帽弁逆流:HR1.87
大動脈弁狭窄症:HR2.4
左房径拡大(>45mm):HR3.0
左室壁肥厚(エコーまたは心電図):HR!.4

3)全死亡率:10年で30.3%

結論:発作性心房細動は10年間で約35%が持続性に移行する。もっとも大きな予測因子は左房計>45mmである。

### 日本では心臓血管研究所のデータで,年間移行率は5.5%とのデータがあります。J-RHYTHM IIではカンデサルタンで8,2%,アムロジピンで15.0%でした。本研究ではそれらのデータよりはやや低めのようです。

しかし,移行率がわかり,予測因子が左房径と分かったとしても,それを防ぐ手段までは検討されていません。慢性化阻止とは心房のリモデリング防止であり,結局は動脈硬化の予測因子,血圧,糖尿,心不全などをしっかり管理としか現時点では言えないのが,未だに残念です。

$$$ 今日のニャンコ。ぐったり。
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by dobashinaika | 2017-07-20 21:28 | 心房細動:リアルワールドデータ | Comments(0)

「愛の不等式」から考える「抗凝固薬はなぜ出されないのか?」

Secondary Versus Primary Stroke Prevention in Atrial Fibrillation:Insights From the Darlington Atrial Fibrillation Registry

目的:プライマリ・ケア外来で,ガイドライン通りの治療を行った心房細動患者において,一次予防と二次予防でアウトカムに差はあるか

方法:Darlingtonコホート(英国,11GP施設,105,000人)

結果:
1)心房細動患者:2259人,2.15%,うち18.9%は二次予防

2)二次予防患者;ガイドライン準拠=56.3%,過剰治療=18.9%,未治療=24.8%

3)一次予防患者:ガイドライン準拠=49.5.%,過剰治療=11.7%,未治療=38.8%

4)年間脳卒中発症率:二次予防8.6%,一次予防1.6%(P<0.001)

5)全死亡:二次予防9.8%,一次予防9.4%(P=0.79)

6)抗凝固薬無治療(ガイドライン非準拠)の脳卒中オッズ比(一次予防):2.95,95%CI1.26-6.90

7)ガイドライン非準拠の脳卒中再発オッズ比(二次予防): 2.80; 95%CI1.25–6.27; P=0.012(過剰治療対照)

8)ガイドライン非準拠の死亡オッズ比(二次予防): 2.75; 95%CI1.33–5.69; P=0.006(過小治療対照)

結論:約半数の人にしかガイドライン通りの抗凝固療法が施行されていない。ガイドライン準拠の抗凝固療法は,一次予防での脳卒中リスクおよび二次予防での脳卒中および死亡リスクを減少される

### 英国のプライマリケアセッティングでは,一次予防で50%,二次予防でさえ56%しかガイドライン通りの抗凝固薬処方が行われていないとのことです。日本の現状も同じようなものと思われます。前回のブログで考えた心房細動の階層構造でのべた「壁」について,より現実的に考えてみます。

あらゆる薬剤の処方,医療行為をするしないの意思決定は,
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という認識が患者医療者間で共有されたときに達成されるものと考えます(私はこれを「愛の不等式」と読んでいます。なんとなく(笑))。

抗凝固薬では,おおむね,A=抗凝固薬の必要性の認識,B=出血への不安,C=ワルファリンの煩雑さ/NOACのコストになろうかと思われます。ここでもっと細かく言うと,(リスク)=(インパクト)x(確率)ですので,A=(脳梗塞に対するインパクト)x(脳梗塞の予防確率),B=(出血のインパクト)x(出血の確率)で表されます。

さて,現段階で抗凝固薬を医療者側が「出さない」状況には,以下の3パターンくらいがあるように思われます。
1)発作性心房細動なので出さない
2)高齢者で出血リスクが懸念されるので出さない
3)ワルファリンは煩雑だが,NOACも高価で意外と面倒くさいので出さない 

1)は最近の英国プライマリケア医の研究でも示されています。

2)は以前のGARFIELD研究や最近のJAMAの研究からも伺えます。

また伏見AFでもここ5年で処方が増えたのはCHADS2スコアの0,1点例が多かったとのことですので,高リスク高齢者には依然として出されていない実態が見て取れます,

3)も多くの臨床医が持つ実感と思われます。ワルファリンはいろいろと面倒くさい。その欠点が克服されていると思ったNOACだったのに,すごく高いし,モニタリングできないし,中和も難しいし,腎機能や併用薬剤も結構考える必要があるし。。。。というところかと思います。

これまでワルファリンに馴染んでこなかった医師ほど,1),2)の思いが強いと思われます。3)はどの層にも共通でしょうか。
(ときにNOACをすごく出す開業医に遭遇してびっくりしたりします。ただ私も含めてまだ主戦力はワルファリンにしている医師も根強くいると思われます)

1)は上記不等式Aの低下,2)はBの増大,3)はCの増大に当りますが,現実にはこのバランスの乱れはそれこそ患者ー医師ごとに様々なバリエーションをとりうるでしょう。

「抗凝固薬が「必要」なのはわかった。でも依然として出血への不安(特に高齢者)は払拭されないし,NOACは何よりコストが高くて思ったより面倒」,そこで,「超高齢者まではいかない中高年層で,ややリスクの低めな人にまずNOACを提案してみて,コストが問題の場合は,慣れていればワルファリン,そうでなければ出さないか紹介」,このあたりが今の,特に非循環器専門医の感触かもしれません。全くの独断ですが。

$$$ ことしの初茄子。早速焼いて朝食に。
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by dobashinaika | 2017-07-12 23:56 | 抗凝固療法:全般 | Comments(0)

ここへ来ていろいろと手詰まり感のある抗凝固療法ー患者階層構造モデルからその解消法を考える。

<心房細動抗凝固療法の現状>
最近あまり心房細動関連のブログが更新できていません。
いくつか理由がありますが,「心房細動の抗凝固療法についての現在のパラダイムがそろそろ行き詰まりつつある」というのが最大の理由だということに最近気が付きました。

NOACが市場に出てから6年。この6年で抗凝固療法の世界は変わったでしょうか?最近のいくつかのコホート研究によると,米国のPINNACLEレジストリやプライマリ・ケアネットワークのデータベース,そして日本の伏見AFレジストリ,いずれも申し合わせたように,抗凝固薬の処方率はNOAC前50%程度が5-6年で60%程度に上昇したに過ぎません。

では肝腎の脳卒中/全身性塞栓症や大出血と言ったアウトカムはどうでしょう。おびただしい数のいわゆるリアルワールドデータが報告されていますが,以前まとめましたようにhttp://dobashin.exblog.jp/23662074/
「NOACはワルファリンに比べて。脳卒中/全身性塞栓症,死亡に関しては同等かやや少なめ,大出血は同等か少ない,頭蓋内出血は明らかに少ないが消化管出血は同等が多い」
というところが,ざっくりとした現状かと思います。ただし,伏見AFレジストリでは脳卒中/全身性塞栓症,大出血ともNOACとワルファリンとで明らかな違いはなかったという衝撃的なデータも発表されていますhttp://dobashin.exblog.jp/23826455/

リアルワールドデータ自体の選択バイアスなどを考慮する必要はありますが,誤解を恐れずにいれば,現時点では,
「NOAC発売後6年たった今でも,ガイドライン通りに処方されていない症例が40%もおり,一方でアウトカムも劇的に改善されたわけではない
と言えます。
NOAC発売前のあの高揚感(誰が?はおいておいて)を考えると,森課長ではありませんがここへ来ていろいろと手詰まりになってきた感があります(森課長についてはググってください。私の大好きなキャラです)。

<心房細動患者の階層構造>
ではこの手詰まり感をどう克服していけばよいのか。ここでは,以前雑誌「心臓」に拙文を書いた際紹介しました心房細動患者の階層構造モデルで考えてみます。http://dobashin.exblog.jp/20932952/
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理想的な患者像をRCTでの登録症例(レベル0)と規定しますと,リアルワールドではRCTの組み入れ基準から逸脱した高齢者,高リスク者,服薬アドヒアランス不良者など多彩な症例に抗凝固療法が施行されています。これら実際に臨床の現場で服用している患者のうち,特にアウトカムに大きな影響を及ぼすと考えられる服薬アドヒアランス良好患者をでレベル1,不良患者をレベル2とします。レベル0と1の間には「選択バイアス」という壁があります。同様にレベル1と2の間の壁は「服薬アドヒアランス」です。

さらに,先に述べましたように,適応があるにも関わらずガイドライン通りに処方されていない,かつ医療機関には受診している患者層をレベル3とします。レベル2と3の間の壁は,非常に議論の余地がありますが,私は患者,医療者双方の「出血に対する不安」と「必要性に対する認識不足」が主な因子であると考えています(これについては以前の服薬アドヒアランスに関するブログにも書きましたので詳細はそちらをご覧くださいhttp://dobashin.exblog.jp/21908119/)。

そして最後のレベル4は,未だに診断されていない心房細動=Subclinical AFです。レベル3と4の間の壁は無症候性であることや動悸を感じたり健診でチェックされても受診しないなどの受診の遅れがその背景にあると思われます。

<階層間の壁解消対策>
上記5つの患者階層は,心房細動に限らず多くの疾患で当てはまる構造と思われます。私たちは常々,主にレベル1(あるいは2)の中だけで抗凝固薬は何が良いのか,手術やPCIのときはどうするのか,出血したらどうするのかといった抗凝固薬にまつわる諸問題を議論しています。しかしながらこのレベル1内だけの論議では,手詰まり感から逃れられません。

レベル1〜2間の服薬アドヒアランス,さらにレベル2−3間の抗凝固薬の「出血に対する不安」と「必要性に対する認識不足」という各レベル間の壁に介入した研究や再検討こそが手詰まり感解消,およびさらなるアウトカム改善への高みへと登る鍵のように思われます。

さらにレベル1,2を規定しているガイドラインについても再評価,再検討が迫られます。高齢者および低リスク者の,特に日本人での適応が今のCHADS2スコアベースで良いのか。大きな問題です。

まとめますと,抗凝固薬の「何」を選ぶべきかから「誰に」,「どのように」処方するかへのパラダイムシフトが求められる時期に来ていると言えます。

<「である」「すべき」から「する」への跳躍を考える>
このことを別の言い方で考えると,レベル0のRCTやエビデンスは,抗凝固療法の世界を説明するもの,いわゆる「である」を理解する装置といえます。一方ガイドライン(遵守しているとすれば上記レベル1)は「〜すべき」という枠組みで語られる規範です。「である」から「すべき」は自動的に導かれるわけではなく,ガイドライン作成者の「価値判断」が必ず入り込みます。

さらに「である」「すべき」を前提に,患者ー医師間の価値観のすり合わせによる「する」という意思決定に至ることになります。こうした「である」「すべき」「する」の視点から上記の患者階層間の壁解消策を考えてみると以下のようになります。

である→すべきの間の壁:ガイドライン作成者の「価値観」,すなわち現状のガイドラインが妥当かを再検証する。

すべき→するの間の壁:抗凝固薬の服薬アドヒアランス,必要性,出血への不安につき対策を再検討する。

丸山真男ではありませんが「である」ことから「すべき」を経て「する」に至る壁を埋める作業が,抗凝固療法の今後に求められる課題だと思います。

なお,アドヒアランス改善や患者ー医師の認知バイアス解消に関する具体的な対策についてはこれまでいろいろとブログにも書いてきましたので,あちこち参照していただければ幸いです。

$$$ いよいよ取り立ての野菜をその場で食すという人生最大の幸せを味わえる時期になりました^^。


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by dobashinaika | 2017-07-03 00:40 | 抗凝固療法:全般 | Comments(0)


土橋内科医院の院長ブログです。心房細動やプライマリ・ケアに関連する医学論文の紹介もしくは知識整理を主な目的とします。時々日頃思うこともつぶやきます。


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