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抗凝固薬内服中の消化管出血後の再開は3~6週後が良い:T/H誌


Optimal timing of vitamin K antagonist resumption after upper gastrointestinal bleeding
A risk modelling analysis
Thromb Haemost 2017; 117:https://doi.org/10.1160/TH16-07-0498


疑問:抗凝固薬内服中の消化管出血後の再開はいつからが良いか?

方法:
・3病院でのビタミンK阻害薬投与中に消化管出血を起こしたケースの後ろ向き解析
・消化管出血再発,血栓塞栓症と再開時期との関係解析

結果:
1)207例中121例,58%で抗凝固薬再開あり

2)平均再開時期;1週間後(0.2〜3.4週)

3)抗凝固薬再開は血栓塞栓症(ハザード比0.19,95%CI0.07-0.55),死亡(ハザード比0.61, 0.39-0.94)を減らす

4)消化管出血再発は増やす(ハザード比2.5, 1.4-4.5)

5)出血と血栓塞栓の複合的な統計モデルを用いると,出血後3週後で再発と血栓塞栓リスクは減り始め,6週後からで最低となる

結論:抗凝固薬関連消化管出血後の最適な再開時期は出血後3〜6週と思われるが,血栓塞栓リスクの程度や患者の価値,好みを考慮する必要がある。

### 脳内出血のあとは,消化管出血後の再開の話です。

これまで再開すべきかどうかとの論文はありましたが,いつ再開すべきかについては少なかったように思います。
http://dobashin.exblog.jp/21886806/

登録研究ですので,再開時期は担当医の恣意性が混入し,高リスク例ほど再開は遅れると思われますが,その辺統計モデルである程度補正されているようです。

脳内出血の時と同様,すぐに再開というわけにはやはり行かず1〜1.5ヶ月後くらいが良いところだと言うことです。脳内出血の論文でもそうですが,日本の現場では急性期病院入院中にその病院で再開することが多く,もうちょっと早い再開かとも思います。もちろん血栓の既往例などは早い再開が望まれますし(こういうときほどNOACは良い),出血の程度が大きい場合は慎重に再開時期を見ることになるでしょうが。

$$$ そろそろ年が暮れますが,一見毎年の反復と思われる一年一年も,確実に差異を生じながら生成変化しているんですね。繰り返す日常の反復にこそ差異があり,新しい発見がある。そんなふうに思いながら今年も年を越したいと思います。
by dobashinaika | 2016-12-26 23:04 | 抗凝固療法:抜歯、内視鏡、手術 | Comments(0)

抗凝固薬内服中の脳内出血後の再開は7〜8週後が良い:Stroke誌


Optimal Timing of Anticoagulant Treatment After Intracerebral Hemorrhage in Patients With Atrial Fibrillation
Stroke. 2016;STROKEAHA.116.014643


疑問:脳内出血後の抗凝固薬再開はいつからが良いのか

方法:
・スウェーデンの患者登録研究。2005〜2012年
・心房細動かつ初回の脳内出血患者
・血栓塞栓と出血を分けて記載
・複合エンドポイント:血管死あるいは非致死的脳卒中

結果:
1)2619人対象

2)抗凝固療法により高リスク患者の血管死,非致死的脳卒中は減るが,脳内出血リスクは増加しない

3)脳出血後7〜8週での抗凝固薬開始が最も利益が大きいとに思われる

4)高リスク女性では,血管死と脳卒中の再発リスクは,8週後再開の場合3年で17.0%。再開しない場合28.6%(95%CI;1.4〜21.8%)

5)高リスク男性では,同リスクは14.3% vs, 23.6%(95%CI;0.4-18.2%)

結論:心房細動患者の脳内出血後の抗凝固薬再開は,出血リスクと治療効果から見て7〜8週からが望ましいことが示唆される。

### 最新のESCガイドラインでは4〜8週とやや広めの範囲でしたhttp://dobashin.exblog.jp/23171333/

7〜8週とより限定的に言ってもらうほうが現場としては迷わないと思われます。
症例のプロファイルはすみません,アブストラクトだけなので検討できていません。

$$$ マツコ・デラックス氏絶賛のずんだシェイク。こんな食べ物誰が考えたのだろう。天才だ。
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by dobashinaika | 2016-12-26 22:13 | 脳卒中後 | Comments(0)

ダビガトラン,リバーロキサバン,アピキサバン3剤のリアルワールド直接比較:Chest誌


Direct Comparison of Dabigatran, Rivaroxaban, and Apixaban for Effectiveness and Safety in Nonvalvular Atrial Fibrillation.
Chest. 2016 Dec;150(6):1302-1312

疑問:ダビガトラン,リバーロキサバン,アピキサバンを直接比較した場合の結果は?

方法:
・米国南部〜中西部の医療保険またはメディケアからのデータベース使用
・上記3剤を使用した非弁膜症性心房細動:2010年10月〜2015年2月
・リバーロvs.ダビ31574例,アピvs.ダビ13084例,アピvs,リバーロ13130例
・主要評価項目:脳卒中/全身性塞栓症(有効性),大出血(安全性)

結果:
1)脳卒中/全身性塞栓症:3剤間で有意差なし
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2)アピキサバンは他の2剤よりも大出血リスクは低い:
対ダビガトラン:HR, 0.50; 95% CI, 0.36-0.70; P < .001 ,対リバーロキサバン HR, 0.39; 95% CI, 0.28-0.54; P < .001

3)リバーロキサバンはダビガトランに比べて大出血リスク(HR, 1.30; 95% CI, 1.10-1.53; P < .01),頭蓋内出血リスクが高い(HR, 1.79; 95% CI, 1.12-2.86; P < .05)
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結論;NOAC3剤は,有効性の点では同等だった。アピキサバンは出血リスクが低く,リバーロキサバンは出血リスクが高い可能性がある。

### こうした後ろ向きコホートによるリアルワールドデータを見るときは,1)患者特性(NOACの場合は特に薬剤用量に注意)2)データ補正の有無と補正項目 を主に注意するようにしています。その観点から行くと,患者特性は,3薬剤とも年齢は平均70〜73歳(62〜81歳),CHA2DS-VAScスコア平均4点,HAS-BLEDスコア平均2点,ワーファリン既使用29〜39%でほぼ同等でした。

ただし低用量使用例はリバーロvsダビで各23%,10%,アピvsダビで18%,13%,アピvsリバーロで18%,29%で,概してリバーロキサバンは低用量使用が多く,ダビガトランは認可の関係か(米国は150mgx2のみ)低用量使用は少ないようでした。

propensityスコアマッチはされておりました(項目は不明)。

RCT間でワルファリンを介して間接比較をした研究はありましたが,リアルワールドデータを3剤で一応補正後直接比較した検討は初めてかと思われます。
RCTと違ってリバーロキサバンは低リスクスコアの人にも出されています。他の間接比較では出血も3剤で同等でしたが,この比較ではリバーロキサバンで高リスクでした。また間接比較では,ダビガトラン150x2はリバーロキサバンより虚血性脳卒中が低リスクとのデータもありましたが,この比較では有効性は3剤とも同等でした。

リバーロキサバンが本当に出血が多く,アピキサバンが低リスクなのかは,この1研究だけからはいえませんが,スコアマッチや感度分析などがなされており,また高齢者も対象となっていて比較的良質な研究方法と思われます。

これにエドキサバンが入ったらどうなるか更に興味深いところです。

なお,この研究ではFinancial/nonfinancial disclosuresやスポンサー提供なしとのことです。

$$$ 地元から逸品の贈り物。これはおいしいですよ。FBでもたくさん「いいね!」がつきました。
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by dobashinaika | 2016-12-19 18:56 | 抗凝固療法:比較、使い分け | Comments(0)

NOACでは適応外用量処方が多く,有害事象も多い:ORBIT-AF II試験


Off-Label Dosing of Non-Vitamin K Antagonist Oral Anticoagulants and Adverse Outcomes
The ORBIT-AF II Registry
J Am Coll Cardiol 2016;68:2597-2604.


疑問:NOACのオフラベル(適応外)使用の頻度とアウトカムはどうか?

方法:
・米国の地域での242施設の登録研究(ORBIT-AF II)
・5738人,平均0.99年追跡
・FDA認可に基づき,過小用量,適切用量,過大用量に分類
・アウトカム;脳卒中/全身性塞栓症,心筋梗塞,大出血(ISTH分類),入院(関連のある),全死亡

結果:
1)過小用量9.4%,過大用量3.4%,適切用量87%

2)オフラベル群は適切群より:より高齢,女性多い,電気生理学医少ない,CHA2DS-VAScスコア高値,ORBIT出血スコア高値

3)過大用量群は適切群より;全死亡多い(補正後ハザード比1.91;95%CI1.02-3.60;p=0.04)

4)過小用量群は適切群より:心血管疾患による入院多い(補正後ハザード比1.26;95%CI1.07-1.50;p=0.07)
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結論:NOACのオフラベル使用例は非常に多い(全体の1/8)。こうした例は有害事象のハイリスクあり

### 本文からの追加データでは,
・NOAC別過小用量群:ダビ7.5%,リバーロ8.0%,アピ11.8%
・過大用量群:ダビ3.4%,リバーロ0.5%,アピ2.1%
でした。

ダビガトランはCrCl30-50の23%が過小量(米国では150x2推奨にかかわらず),リバーロキサバンはCrCl15-50の34%が過大用量(米国では15mgx1推奨),アピキサバンは透析患者の32%で過小用量でした。

ただ残念なことに,腎機能別の用量変更についてのデータはなかったようです。低用量にするのは,腎機能が適応範囲ギリギリの例が多いと思われますが,そういう例でアウトカムがどうなのかというのが一番知りたいところかと思います。

過大用量で死亡が多いのは大出血のためでしょうが,日本では適応より多い用量を使う場合は殆ど無いように思われますので,むしろ過小用量で心血管疾患入院(おそらく脳梗塞)が多い点を教訓にしたいと思います。
### すずめの学校
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by dobashinaika | 2016-12-16 19:06 | 抗凝固療法:リアルワールド | Comments(0)

2016年心房細動関連論文ベスト5


今年も恒例の心房細動論文ベスト5です。
年々抗凝固薬関連の論文もエポックメイキングなものが減りつつあり,また個人的にブログ更新が少なかったこともあって,例年に比べ,カバーしている論文は少ないかもしれません,その点ご容赦ください。

視点はあくまで,私個人の現場に行動変容を起こさせるかどうかで決めております。

第5位:CHA2DS2-VAScスコア2点以上ではアブレーション後も抗凝固はやめないほうが良い
2点以上かどうかには論議の余地がありますが,かなり参考にすべき論点と思います。
JAMA Cardiol. Published online November 23, 2016. doi:10.1001/jamacardio.2016.4179


第4位:心房細動の死因は突然死や心不全が多く,脳卒中は少数
その他にも同様の報告が数多く出てきており,すでにポスト抗凝固時代と言ってよいかと思います。
JACC Volume 68, Issue 23, December 2016 DOI: 10.1016/j.jacc.2016.09.944

第3位:抗凝固薬を中止すると血栓塞栓症リスクは20倍に増加
とくにNOACをやめてしまう場合,非常にリスキーになるということを明示してくれた教訓的な論文
PLOS ONE | DOI:10.1371/journal.pone.0156943 June 9, 2016

第2位:抗凝固療法家の血圧は136mmHg未満にすべき
これまでのBAT研究では130/85でちょっと厳しいかと思っていました。ちょっと安心できるデータ。
J Am Heart Assoc.2016; 5: e004075originally published September 12, 2016

第1位:欧州心臓病学会のガイドライン改定
より多職種で,包括的にマネージメントするというコンセプトが明確に打ち出されました。
こうした斜め45度からの視点を提示できるESCには大リスペクトです。
また,PCI後の抗凝固,脳梗塞後の抗凝固など臨床上欲しかった指針も明確してくれていて,大助かりです。
2016 ESC Guidelines for the management of atrial fibrillation developed in collaboration with EACTS

番外編(次点)
・ポリファーマシーほど抗凝固薬による出血が増える
これも臨床でよくよく考えないといけないポイント
Polypharmacy and effects of apixaban versus warfarin in patients with atrial fibrillation: post hoc analysis of the ARISTOTLE trial
BMJ 2016; 353 doi: http://dx.doi.org/10.1136/bmj.i2868 (Published 15 June 2016)


・90歳以上の人への抗凝固療法のリスクと効果
意外と出血より塞栓症が多いということを知っておく必要がある
Risk of Bleeding and Thrombosis in Patients 70 Years Or Older Using Vitamin K Antagonists
JAMA Intern Med. Published online July 05, 2016.


・NOACの大規模リアルワールドデータ
多くのRWD(リアルワールドデータ)が続々でてきました。概ねRCTに準じるような内容です。
Comparative effectiveness and safety of non-vitamin K antagonist oral anticoagulants and warfarin in patients with atrial fibrillation: propensity weighted nationwide cohort study
BMJ 2016; 353 doi: http://dx.doi.org/10.1136/bmj.i3189 (Published 16 June 2016)


もっと番外編(開業医にはそれほどピンとこないが,世の中的にはインパクトがあるだろう等と思われるもの)
・PCI後のNOACとワルファリンの比較(PIONEER−AF試験)
話題の論文ではありますが,読めば読むほど日本の日常臨床への適応に難しさと疑問が湧いてくる気も致します
http://dobashin.exblog.jp/23369564/

・クライオアブレーションの効果と安全性
http://dobashin.exblog.jp/23369564/

・Xa阻害薬の中和薬
http://dobashin.exblog.jp/23251422/

・アブレーションが心房細動の予後も改善する
http://dobashin.exblog.jp/22772859/

### ということでこう振り返ってみると今年はリアルワールドのデータ,それも臨床に役立つお役立ちな論文が意外と多かったように思います。
来年からも現場役立ち度の高い論文をセレクトして読んでいこうと思います。

$$$ 様々な名言を残した真田丸も来週最終回ですね。黙れ小童とずんだ餅にしびれました。
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by dobashinaika | 2016-12-11 22:28 | 心房細動診療:根本原理 | Comments(0)

心房細動患者の死因上位は心臓突然死と心不全,脳卒中は少数:RCTメタ解析


Causes of Death in Anticoagulated Patients With Atrial Fibrillation
JACC Volume 68, Issue 23, December 2016 DOI: 10.1016/j.jacc.2016.09.944


疑問:抗凝固療法下の心房細動患者の死因は何か

E/C:DOAC対ワルファリンのRCT登録患者

O:死亡率,補正後の死因

T:メタ解析

結果:
1)4RCT, 71,683人

2)死亡率9%,補正後死亡率4.72%/年 (4.19-5.28)

3)心臓死:46%,非出血性脳梗塞/全身性塞栓症:5.7%,出血関連死;5.6%

4)生存例に比べ死亡例では:心不全の既往(OR1.75),持続性/永続性心房細動(OR1.38),糖尿病(OR1.37),男性 (0R1.24),高齢者 (3.2歳高),CrCl低値 (-9.9)

5)死亡率減少はDOAC> ワルファリン:-0.42%/年。多くは出血の減少による
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結論:最近の心房細動トライアルでは,多くの死亡は心臓死であり,脳卒中や出血由来は小さな層にとどまる。抗凝固療法を超えた介入が心房細動の死亡率減少には必要。

### 死因をよく見ると,心血管系では,血管死64%,心臓死46%,突然死/不整脈28%,心不全15%,心筋梗塞3%(重複あり)。非心血管系では,悪性腫瘍11%,感染症9%,呼吸器疾患3%とのことです。

抗凝固療法をしっかり行っている場合,心房細動患者の死因は脳卒中や出血以外であるという,以前から言われているfactのまとめですね。死因の半分は心臓死で多くは突然死か心不全です。突然死には虚血が多く含まれていると思われますので,結局抗凝固をしっかりやったあとは動脈硬化の危険因子と心不全に注意せよという。当たり前のしかしながら重大で怠りがちなTake home messageです。

DOAC vs ワルファリンの差は年間0.4%ですが,虚血の危険因子と心不全管理をガッチリやればこの差は余り大きくないようにも思えますが。例えばこのメタ解析は100%抗凝固施行(脱落はある)ですが,以下の登録研究では抗凝固率60%で死亡率は同じかむしろ少ないような数字ですね。

by dobashinaika | 2016-12-08 22:25 | 心房細動:リアルワールドデータ | Comments(0)

抗凝固薬の服薬アドヒアランスに関する総説-なぜ抗凝固薬は飲めないのか:TH誌


Thromb HaemostにNOACのアドヒアランスに関する総説がでています。

Adherence to oral anticoagulant therapy in patients with atrial fibrillation Focus on non-vitamin K antagonist oral anticoagulants
Thromb Haemost 2017 http://dx.doi.org/10.1160/TH16-10-0757

大雑把にまとめます。

<服薬アドヒアランスに影響する因子>
●患者側要因
・特性:年齢,民族,教育レベル,社会経済的ステータス,要介護度
・医療的状況:合併症,障害度,脆弱性,認知症,薬剤忍容性+副作用,ポリファーマシー
・行動要因:社会的孤立,精神疾患
・医学的知識への理解:薬剤服薬及び中止に関連したリスクとべネフィットへの理解

●医師/ヘルスシステム側要因
・知識:ガイドライン遵守度,推奨やリスク対処への気づき
・職場環境:専門施設,ヘルスシステムの構築,医師患者間の良好な関係,多職種アプローチ
・コスト:アクセシィビリテイ(公的,私的サービス),経済的要因

<NOACのアドヒアランス,パーシステンス>
・半減期が短いだけNOACはワルファリンよりアドヒアランス不良は許されない
・英国のGPデータベースでは,ワルファリンのアドヒアランスは1年目で70%,2年目で50%
・NOACの第3相試験では,18〜35%の非継続率。このうち副作用による中止はわずか。リアルワールドより厳格の管理での数値
・NOACのリアルワールドデータでは,38.0〜99.7%と極めて幅広い。80%を良好とする研究が多い
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<NOACのアドヒアランス/パーシステンスに関する考え方>
・一般的には1日2回のほうが,1日1回より血中濃度が良好に継続しやすい
・どのNAOCが最もネットクリニカルベネフットが良いかについては不明
・モデルデータからは,1日2回薬で1〜2錠/日飲まないよりも,1日1回で全然飲まなかったほうが血中濃度減少が大きいい
・臨床上有効な抗凝固モニターがない以上,しっかり飲んだかどうかの確認が重要
・現在,ピーク濃度が出血を規定するとされている。特に1日1回に比べ1日2回ではピークが低い
・このことは安全性を示唆するが,エドキサバンの第2相試験では同用量で1日2回よりも1回のほうが出血が少ないことが示されている

<NOACでのアドヒアランス向上策>
・ワルファリンではINRに基づく管理ができる。70%を概ね良好とする
・SAMe-TT2R2スコア(女性,60歳未満,既往歴,影響薬剤,喫煙,非白人)はアドヒアランス良好の可否を予測する因子
・同スコア2点以上では積極的に患者教育
・定期的なコンタクト,多職種からのアプローチ
・ヘルスプロバイダー間のエビデンス共有のアップデート:各種ソフト,e-サポート
・中心的な抗凝固クリニックにより運営される長期の管理
・患者教育により,抗凝固薬による脳卒中予防の重要性と実際の薬剤服用法の認識の定着 etc.

### 超厳格アドヒアランス管理のRCTでさえ最高で34.4%ものひとが服薬中途で脱落します。なぜこれほど抗凝固薬が飲めないのか。私は背景に抗凝固薬のもつ2つの宿命があると考えます。

1つは「退屈な薬である」ということ。ワルファリンはINRがありました。それとて血圧などに比べてなんとなく実感がわかない,むしろ出血の不安を掻き立てることさえある指標でした。ましてやNOAC。効いているのかどうか,危ないのかどうか全く実感することができません。飲んでいて喜びもヤバさ加減も湧かない薬,それがNOACです。

もう1つは「不条理な薬」であるということです。上記のように効いている実感がわかない上に,更に出血という重い有害事象がつきまとうし,実際皮下出血などはよく経験する。なんと割に合わない,不条理な薬なのでしょうか。

退屈で不条理と来ては70%程度の服薬率も頷けるかもしれません。ワタシ的には定期的に腎機能や貧血,aPTT,PTなどを採血し,飲まないことの脳梗塞リスクの重大性を薬剤師,看護師なども交えて確認,教育。認知症早期評価に傾注と言った当たり前の作戦しか思い浮かびません。

同様の総説は以下です。
http://dobashin.exblog.jp/20382624/

### ワルファリンは永遠に不滅です,なんて書いてワルファリン礼賛者のように感じられたかもしれないので,ワタシの基本的スタンスを確認。

以下のブログで示しているように「時と場合により使い分ける」です。大切なことはワルファリンかNOACかの2項対立ではなく,各薬剤の長所欠点を熟知して使うということです。殺鼠剤だったワルファリンだって時と場合によってはこれしかない場合もある。自分がAFのときだって時にはワルファリンのほうがいいこともあればNOACのほうがいい状況になることもある。こっちのほう絶対推し,だけはしないようにしたいということです。それこそがscientificな態度だと思うわけです。
http://dobashin.exblog.jp/21745479/

$$$ 昨日観ました。「真田丸」「シン・ゴジラ」とお気に入り豊作だったことしの白眉とも言うべき。非日常とは日常にこそ潜む,そして日常は非日常の下で連綿と息づく,そう感じます。
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by dobashinaika | 2016-12-05 23:52 | 抗凝固療法:全般 | Comments(0)

心房細動アブレーション後は抗凝固薬はいらなくなるのか?:JAMAC誌


Assessment of Use vs Discontinuation of Oral Anticoagulation After Pulmonary Vein Isolation in Patients With Atrial Fibrillation
JAMA Cardiol. Published online November 23, 2016. doi:10.1001/jamacardio.2016.4179


疑問:肺静脈アブレーション後も抗凝固療法は必要か?

P:肺静脈隔離術を施行した患者。スウェーデン国内登録。1585例
10のアブレーション専門施設で全体の94%

I:アブレーション後ワルファリン継続

C:ワルファリン中止

O:虚血性脳卒中,頭蓋内出血,死亡

結果:
1)平均年齢59.0歳。CHA2DS-VAScスコア1.5点。

2)1年以内ワルファリン中止患者360例30.6.%

3)虚血性脳卒中:CHA2DS-VAScスコア2点以上において,ワルファリン群で高率(年間1.6%vs. 0.3%,
P=0.046)
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4)CHA2DS-VAScスコア2点以上または脳卒中の既往は特に高率(前者ハザード比4.6;95%CI1.2-17.2;
P=0.02,後者ハザード比13.7,2.0−91.9;P=0.007)

(論文の結論):高リスク例,特に虚血性脳卒中既往例で肺静脈隔離術後にワルファリンを止めることは安全ではない。

Critical Appraisal
・研究デザイン:後ろ向きコホート研究
・研究目的:予後
・追跡期間:平均2.6年:概ね十分

### PVアブレーション後,抗凝固薬をやめられればアブレーションのベネフィットは絶大です。理論的にはアブレーションで心房細動が完全になくなれば抗凝固薬はいらなくなるように思います。実際には無症候性に再発していることがあるため,高リスク例では抗凝固薬を継続するというのがこれまでのガイドライン等でのrecommendationだったかと思います。

今回は多数例で後ろ向きに検討したものですが,高リスク例,特の脳卒中の既往のある例ではワルファリンをやめると虚血性脳卒中が増えるというものでした。CHA2DS2-VAScスコアの元論文では,アブレーションに関係なくCHA2DS2-VAScスコア別の年間脳梗塞発症率は2点で2.2%,3点で3.2%,4点で4.0%であり,今回の1.6%はこれまでよりも低いものです。やはりアブだけでもすこし脳梗塞は減るようです。ただ,ワルファリンを追加すれば年間0.3%と,もうほとんどゼロに近い数値となっています。

一番のLimitationはワルファリンをやめた理由があまり明らかに記載されていないことです。おそらく主治医判断でその理由は恣意的であろうかと思われます。アブが非常にうまく言って再発の可能性が低いと主治医が思ったとか,低リスクなので中止したとか。

とは言え,先行研究ともアウトカムは合致しており,高リスク特に脳卒中既往例では抗凝固継続というのは臨床で使うべきメッセージと思われます。
こうしたデータはまだNOACではまとまって出せないでしょう。NOACでも同等の成績が考えられますが,これだけ発症数が少なければNOACでなくてもいい気もします。

$$$ 師走ですね
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by dobashinaika | 2016-12-02 23:56 | 心房細動:アブレーション | Comments(0)


土橋内科医院の院長ブログです。心房細動やプライマリ・ケアに関連する医学論文の紹介もしくは知識整理を主な目的とします。時々日頃思うこともつぶやきます。


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プライマリ・ケア医のための心房細動入門

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