<   2016年 10月 ( 10 )   > この月の画像一覧

現実か?非現実か?抗凝固療法に関するリアルワールドデータの読み方:CMRO誌


ちょっとマイナー雑誌ですが,Curr Med Res Opin誌にリバーロキサバン,アピキサバンとワルファリンを比べたリアルワールドデータ(RWD)がまたもでていました。
Real-world evidence of stroke prevention in patients with nonvalvular atrial fibrillation in the United States: the REVISIT-US study. Curr Med Res Opin 2016:1- 7. 4.

方法:
・米国の民間データベース使用。2012〜2014年
・新規NVAF患者(CHA2DS2-VAScスコア2点以上),リバーロキサバン,アピキサバン,ワルファリンいずれかの投与患者
・脳卒中の既往例は除く
・主要評価項目は虚血性脳卒中または頭蓋内出血(複合)
・プロペンシティースコアマッチ

結果:
1)リバーロキサバン11411例
主要評価項目:ワルファリンより良い(HR = 0.61, 95% CI = 0.45–0.82)
頭蓋内出血:特に減少 (HR = 0.53, 95% CI = 0.35–0.79)
虚血性脳卒中:ワルファリンと同等 (HR = 0.71, 95% CI = 0.47–1.07)
a0119856_225061.jpg

2)アピキサバン4083例
主要評価項目:ワルファリンと同等 (HR = 0.63, 95% CI = 0.35–1.12)
頭蓋内出血:減少 (HR = 0.38, 95% CI = 0.17–0.88)
虚血性脳卒中:ワルファリンと同等 (HR = 1.13, 95% CI = 0.49–2.63)
a0119856_22503135.jpg

限界:サンプルサイズ,イベント数とも少ない。残存交絡因子を除外できない

結論:リバーロキサバンとアピキサバンは,ワルファリンに比べ頭蓋内出血を減少させ,主要評価項目も減少の方向。アピキサバンがワルファリンより虚血性脳卒中が多いと言うには,より多くの例数が必要。

これに対するLip先生のEditorialも読みました。
How to REVISIT the increasing ‘real world’ evidence for stroke prevention in non-valvular atrial fibrillation?
Gregory Y H Lip


”the devil is in the detail”悪魔は細部に宿るーの文言を持ち出し,やや厳しくこのRWDの問題点を突いています。要点は,
・複合エンドポイントである
・より一般的な「出血性脳卒中」は明らかでない
・脳卒中既往例は除外
・平均追跡期間が示されていない
・他の交絡因子が考慮されていない
・診断基準,ワルファリン管理状況が不明
・感度分析をしておらず,減量の効果も不明
・アピキサバン投与例は既に他の薬剤が使用されていた例が多いかもしれない

Lip先生は,”AF patients are clinically heterogeneous and thinking that ‘one drug fits all’ is simply naïve and unrealistic.” と述べ,RCTとそれを補完するRWDで4つのNOACの使い分けをより精緻にすべきと考えているようです。

### Lip先生の指摘はRWDを読むときのチェックポイントとし押さえておきたいところです。とくに
1)エンドポイントは何か 
2)どういう対象なのか
3)他の補正されない交絡因子には何があるか 
4)対照群のワルファリンのTTRはどの程度か 
5)統計的に補正(マッチング)が適切か

の5点くらいは,NOACのRWDを読み解く上で抑えておきたいところと思います(5)は私の追加)。

RWDにも論文の質には優劣がある。それをよくわきまえて読む必要がある。ということと思います。

T/H誌にもLip先生が連名の“Unreal world” or “real world” data in oral anticoagulant treatment of atrial fibrillation"という総説がでています。これは,最近のNOACのリアルワールドデータのまとめとして重宝します。

まあ一応言っておくと,私たちにとってRWDの”Real”も一種の”unreal””Virtual”であり,現実世界をある仕方で切り取ったものにすぎないわけです。真のリアルワールドは(実在論的には)存在するのかもしれませんが,私達はそれをそれ自体として知ることはできず,リアルワールドと認識した世界だけしか知ることができないわけですので(カント風ですね),「リアルワールド」といったところでその数は(論文の数)x(解釈する人の数)だけあるのかもしれません。

「どの」リアルワールドが,目の前のpatient’s worldに近いのか,を読み解くことが最終的な課題でありアポリアです。

#### 読み落としていましたが,8月のLancetにLip先生のグループによる心房細動の脳卒中に関する総説が掲載されています。NOACの使い分けなど例によって複雑で使う気にはなれませんが,ためになる箇所もあり一応挙げておきます。
Stroke prevention in atrial fibrillation
Prof Ben Freedman, MBPhDr,Tatjana S Potpara, MD, Prof Gregory Y H Lip, MD


$$$ 街の其方此方に柿の実が成っています。秋空に柿は映えますね。
a0119856_2301715.jpg

by dobashinaika | 2016-10-31 22:54 | 抗凝固療法:リアルワールド | Comments(0)

リバーロキサバン投与中の心房細動アブレーション周術期のイベント率はワルファリンと同じ(日本発):CJ誌

Efficacy and Safety of Rivaroxaban and Warfarin in the Perioperative Period of Catheter Ablation for Atrial Fibrillation – Outcome Analysis From a Prospective Multicenter Registry Study in Japan –
Circa J 2016; 80: 2296-2301


疑問:心房細動アブレーション周術期においてNOACはワルファリンより優れているのか

方法:
・日本の医療施設で,リバーロキサバンあるいはワルファリンを投与中に心房細動のカテーテルアブレーションを予定された2つの前向き登録を比較
・主要評価項目:アブレーション後30日以内の血栓塞栓症および大出血

結果:
1)リバーロキサバン1118例(平均65歳),ワルファリン204例(69歳):各42, 22施設

2)リバーロキサバン群:
・主要イベント数:7例0.6%(血栓塞栓症2,大出血5)
・小出血:27例2.4%
・非ヘパリンブリッジ時のイベント数はヘパリンブリッジ時より明らかに低い

3)ワルファリン群:
・主要イベント数3例1.5%(全例大出血)

4)両群間:補正後イベント率に有意差なし

結論:日本における心房細動アブレーション周術期の血栓塞栓症及び大出血率は,リバーロキサバン投与時とワルファリンとで同じである。

### 異なる登録研究を比較しているため,患者背景が異なります。ワルファリン群のほうが高齢,低体重,合併疾患多い,慢性多い,CHADS2スコアCHA2DS-VAScスコア高値となっています。補正後データが有るとはいえ,この点は注意。

イベント数が両群とも極小なので,主要評価項目の差はつかないと思われますが,少なくとも同じとなると,オンオフが簡単なNOACが良いようにも思われます。

ただ,オンオフ事にリスクがあると思われるワルファリンはリバーロキサバンと大差なかったということで,よりハイリスク例に投与されていることも考えると,逆にいえばやりワルファリン偉いということにもなるかもしれません(笑)。

ヘパリンブリッジの結果は興味深いです。非ブリッジ時のほうがイベントが少ないとのことですが,ほとんどが小出血で,ヘパリンブリッジをしなくても血栓塞栓症は1例しかありませんでした。筆者らも「心房細動アブレーション前のヘパリンブリッジは血栓塞栓症ハイリスク例以外は避けるべき」としています。

$$$ 毎朝散歩していますと,冬手袋が片方だけ(時に両方)落ちているのに遭遇します。名付けて「片手落ち」(放送禁止用語だったらごめんなさい)。今シーズン最初の片手落ちです。
a0119856_21231882.jpg

by dobashinaika | 2016-10-28 18:57 | 心房細動:アブレーション | Comments(0)

グローバルデータでは抗凝固薬処方率はここ5年で70%に増加。多くはNOACによる;Heart誌


Evolving antithrombotic treatment patterns for patients with newly diagnosed atrial fibrillation
Heart doi:10.1136/heartjnl-2016-309832

疑問:NOAC発売後,新規心房細動患者への抗凝固療法パターンは変わったのか?

方法:
・GARFIELD登録研究:39,670例
・コホートを処方開始時期別にC1(2010-2011),C2 (2011-2012),C3 (2013-2014),C4 (2014-2015)の4期に分ける

結果:
1)CHA2DS2-VAScスコア平均3点

2)抗凝固薬処方患者:この間15%増加(C1 57.4% →C4 71.1%)
a0119856_18162986.gif

3)VKA+抗血小板薬併用:この間減少 (C1 53.2% →C4 34.0%)

4)抗血小板薬単独:この間減少 (C1 30.2% →C4 16.6%)

5)NOAC処方:増加 (C1 4.2% →C4 37.0%)

6)CHA2DS-VAScスコア2点以上の殆どの患者で抗凝固薬が処方されている。この比率は全期を通じて増加。
とくにNOACの割合が増加
a0119856_18164851.gif

7)NOACは男性,高齢者,アジア人,認知症合併,NSAIDs併用,喫煙者でVKAより多く処方されている

8)VKAは心血管疾患,腎疾患合併例で多い

結論:NOAC出現以来,新規発症心房細動例へのガイドラインに沿った抗凝固療法の増加が認められる。とくにNOACの増加とVKAあるいは抗血小板薬の減少が目立つ。

### GARFIELD世界35カ国1215施設からのNVAF患者登録研究で実は当院も参加しております。

2015年までのかなり新しいデータですが,世界的に見て抗凝固療法処方率が70%に達したというのはやや驚きでした。新規処方の多くがNOACのようです。

ただ全く処方されない例(濃いブルー)の頻度はCHA2DS-VASc2点以上の例でもここ5年間変わらず,逆に0点の患者ではNOAC中心に処方が増え50%近くに出されているというのもやや意外です。これで「ガイドラインに沿った」といえるのかどうかですね。

もともと日本のもESCのもガイドラインは特に低リスクと高リスクについては現実世界にそぐわないとも言えるので,これがまさにリアルワールドの医師の思考と行動を体現しているのかもしれません。

$$$ 仙台文学館の猫イベント。ネコと人間の楽しくも深い関わり合いを考えさせられます。
a0119856_18182997.jpg

by dobashinaika | 2016-10-21 18:17 | 抗凝固療法:リアルワールド | Comments(0)

初回失神で入院する患者の6人に1人が肺塞栓症:NEJM誌


Prevalence of Pulmonary Embolism among Patients Hospitalized for Syncope
N Engl J Med 2016; 375:1524-1531


疑問:肺塞栓症における失神の頻度やアウトカムは?

方法:
・対象:原因がわからない初回失神患者。イタリアの11病院
・Wellsスコアで検査前確率低値例+Dダイマー陰性例は除く
・他の全例でCTアンジオまたは換気血流シンチ施行

結果:
1)560例,平均76歳

2)330例58.9%は除外

3)肺塞栓症:残り230例中97例42.2%→全体コホート中17.3%(14.2〜20.5)

4)肺動脈主幹部または大葉動脈の塞栓像または両肺の25%以上の灌流欠如所見は61例

5)肺塞栓像:他の原因でも説明可能な355例中45例12.7%。説明不能例では25.4%

結論:肺塞栓症は入院を要する初回失神患者の約6人に1人に認められる。

### 循環器専門にやっていた時代には,失神を主訴とする肺塞栓の方をよく経験しました。一時的に肺動脈の主幹部が詰まって右心拍手が不能となるためと思っていましたが,主幹部塞栓を認めない例もあるようで,診断の限界かもしれません。

ESCの2014年ガイドラインでは肺塞栓症の6%に失神が認められるとされています。

それにしても原因不明と思われる失神患者の6人に1人が肺塞栓とは高率です。対象設定にもよるのでしょうが、やや多い感じです。脳疾患,不整脈,NMSなどが強く疑われない場合は,常に念頭に置く必要はありますね

肺塞栓症についてのブログはこちら
エコノミークラス症候群の診断http://dobashin.exblog.jp/22731483/
肺塞栓診断ベストプラクティスhttp://dobashin.exblog.jp/21698954/
Wells スコアhttp://dobashin.exblog.jp/21629919/
上記ESCガイドラインも復習におすすめ

$$$ 早朝,当院前の通りを一目散で走る若者たち(学ラン下駄履きの学生含む)。S第一高校の強歩大会とのこと。コースを間違ったようです。若さは素晴らしいがそのときはそれに気づかない,それこそが若さ。
a0119856_18414952.jpg

by dobashinaika | 2016-10-20 18:38 | 循環器疾患その他 | Comments(0)

NOACはワルファリンに比べ虚血性脳卒中は同等,頭蓋内出血は少ない:デンマーク大規模コホート試験


Ischaemic and haemorrhagic stroke associated with non-vitamin K antagonist oral anticoagulants and warfarin use in patients with atrial fibrillation: a nationwide cohort study
Eur Heart J:DOI: http://dx.doi.org/10.1093/eurheartj/ehw496 ehw496 First published online: 14 October 2016

疑問:ダビガトラン,リバーロキサバン,アピキサバンの有効性安全性比較

方法:
・デンマーク国内登録研究。2011−2015年
・心房細動,抗凝固薬新規処方患者
・アウトカム;脳卒中/全身性塞栓症および頭蓋外出血

結果:
1)43,299例:ビタミンK 阻害薬42%,ダビガトラン29%,リバーロキサバン13%,アピキサバン16%

2)CHA2DS2-VAScスコア平均2.9(VKA),2.7(ダビ),3.0(リバーロ),3.1(アピ)

3)2年間追跡で脳卒中/全身性塞栓症1054例,頭蓋外出血261例

4)脳卒中/全身性塞栓症の標準化絶対リスク(投与後1年):VKA2.01%(1.80-2.21)

5)VKAに比べたNOACの脳卒中/全身性塞栓症の絶対リスク減少:ダビガトラン0.11% (−0.16% to
0.42%),リバーロキサバン0.05% (−0.33% to 0.48%),アピキサバン0.45% (−0.001% to 0.93%)

6)頭蓋内出血の標準化絶対リスク:VKA0.60% (0.49% to 0.72%)

7)VKAに比べたNOACの頭蓋内出血の絶対リスク減少:ダビガトラン−0.34% (−0.47% to − 0.21%),リバーロキサバン−0.13% (−0.33% to 0.08%),アピキサバン−0.20% (−0.38% to − 0.01%)
a0119856_19242118.gif

結論:;抗凝固薬新規処方心房細動患者においては,NOACはVKAにくらべて脳卒中/全身性塞栓症を明らかに減少させることはない。しかし頭蓋内出血は,ダビガトランとアピキサバンで明らかに減少させる。

### またも大規模RWDの発表です。各薬剤の用量が明らかになっていないのが残念といえば残念。

これまで目についた主要RWD(ブログでアップしたもの)をまとめてみます。
米国メディケア:ダビガトランvsリバーロキサバン:(塞)ダビ=リバ,(出)ダビ<リバ
台湾医療保険ベース:VKA vs ダビ vs リバ:(塞)VKA>ダビ=リバ,(出)VKA>ダビ=リバ
米国メディケア:ダビvsリバvsアピ:(出)リバ>ダビ>アピ
デンマーク国内コホート:(塞)リバ<VKA=ダビ=アピ,(出)ダビ=アピ<VKA=リバ
日本J-RHYTHMレジストリー:(塞)VKA>NOAC,(出)VKA>NOAC

全体に,NOACはVKAに比べ,塞栓症(塞)は同等または減少,大出血(出)は減少(とくにダビとアピ)という感じです。

各試験,TTRはわからないのでワルファリンも諦めてはいけません。とまだ抵抗してみます。。

$$$ 今日は暖かでした。朝散歩も楽でした。空には盛大なウロコ雲が
a0119856_22142696.jpg

by dobashinaika | 2016-10-18 19:29 | 抗凝固療法:リアルワールド | Comments(0)

妊娠中の抗凝固療法9つのポイント:JACC誌


JACCより妊娠中の抗凝固療法に関する総説です。
ACCのメルマガによる9ポイントのまとめでおさらいします。

Anticoagulation During Pregnancy: Evolving Strategies With a Focus on Mechanical Valves. J Am Coll Cardiol 2016;68:1804-1813

1.妊娠は凝固過剰状態である。妊娠時から出産12週後までの静脈血栓塞栓症(VTE)の頻度は通常の5倍。VII,VIII,X,vW因子,フィブリノーゲンレベルの増加とプロテインSの低下による

2.妊娠中の抗凝固療法選択は母子双方のリスクベネフィットバランスによる

3.分娩時(局所麻酔,帝王切開含む)が最も出血リスクの高まるときである。ワルファリンは腰椎麻酔の12〜24時間前に止められ,低分子ヘパリンに変える。INR1.5以下が目標

4.ビタミンKは胎盤を通過し用量依存性の有害事象(流産,死産,胎児期障害)を生む。通常1日5mg以上で起こる。

5.人工弁患者は,ワルファリン継続(特に5mg/日以下あるいはINR5以下)または低分子ヘパリン1日2回を使用。NOACは使ってはいけない

6.抗凝固療法下での血栓傾向やVTEの既往がある例では,妊娠中や後も継続

7.血栓傾向がありVTE歴がない場合は,低分子へパリンのサーベイランスまたは予防投与を受けるべきだが,分娩後はフルドーズを強く考えるべき

8.体重あたりの低分子ヘパリン量は,投与後4〜6時間の血中濃度1.0〜1.2U/mlを目指して投与する

9.ワルファリンは妊娠中はカテゴリーDに位置づけされる。胎盤を通過するが母乳には含まれない。低分子へパリンはカテゴリーB。胎盤を通過せず,母乳にも認められない
a0119856_23162579.jpg

### 年齢的にみても,あまり遭遇することは少ないですが,妊娠が過凝固状態であることは常に考えておくべきと痛感しました。

$$$ 
昨日の早朝,近所の神社,澄み切った空気に小鳥のさえずり,時折さす木漏れ日。やや寒いくらいでしたが,こういう場に遭遇できるのっていいですよ,とっても。
a0119856_23153156.jpg

by dobashinaika | 2016-10-17 23:17 | 抗凝固療法:全般 | Comments(0)

ワルファリン服用中の消化管出血はプロトンポンプ阻害薬で予防できるか?:GI誌


Association of Proton Pump Inhibitors with Reduced Risk of Warfarin-related Serious Upper Gastrointestinal Bleeding
Gastroenterology 2016 Sep 14.


興味深い論文です。
NEJM Journal Watchでまとめてくれているので,そちらからの引用です。

疑問:ワルファリン服用中の消化管出血はPPIで予防できるか?

背景:PPIはNSAIDsや抗血小板薬服用者の上部消化管出血リスクを抑える。ワルファリン服用者ではどうか?

方法:
・テネシーメディケイドデータベース及び米国メディケアの5%のデータからの後ろ向きコホート
・ワルファリン新規服用者97,430人

結果:
1)75,720人フォロー:ワルファリン副賞者の上部消化管出血は119/10000人年

2)上部消化管出血による入院率(主要評価項目):PPI服用者は非服用者に比べ24%リスク減;ハザード比0.76(0.63〜0.91)

3)NSAIDsあるいは抗血小板薬服用者ではPPIの相対危険減少は45%;ハザード比0,55 (0.39〜0.77)

4)PPIの効果はNSAIDsや抗血小板薬の種類に依存しない

5)PPI非服用者では,NSAID及び抗血小板薬内服が出血増加因子であったが,服用者では出血に影響せず

6)PPIは他の出血原因には影響を与えず

結論:PPIはワルファリン服用者の上部消化管出血による入院を24%減少させた。しかしNSAIDsあるいは抗血小板薬服用併用例においてのみ顕著に減少させた。

NEJMグループのコメント:2つのデータベースの統合デーラによるこの大規模研究では,ワルファリン内服中でなおかつNSAIDsああるいは抗血小板薬内服患者において,PPIのインパクトが大きいことを強調している。PPIはこうした状況で上部消化管出血による入院を減らした。NSAIDsや抗血小板薬を内服していない患者では越した影響は明らかでないので,この研究の効果は小さなものであり,さらなる研究を要する。

### 最後のNEJMグループの一言がきついですが。。。

以前ワルファリンとPPIを一律に処方している施設を見たことがありますが,最近はNOAC投与例に必ずPPIを出すところもあるようです。少なくともワルファリンでは,NSAIDs,抗血小板薬併用例においては積極的に考えるということでよいかと思われます。

ワルファリンとNSAIDsの長期併用例は薬物相互作用の点からあまりないのですが,冠動脈ステント後のワルファリン-抗血小板薬併用例はよくあります。そうした例ではPPIを入れておいたほうが良いかもれません。

一番知りたいのはNOACですね。ワルファリンより消化管出血は多いことが確立されつつありますが,下部消化管出血(特にダビガトラン)が多いようですしどうでしょうか。たとえばNOACにクロピドグレル,それに一律にPPIを併用するとなると医療費も相当です。やっぱりそいう点でもワルファリンはいいんだけど。。

### 十四番目の月ならぬ十三夜。栗名月
a0119856_2158024.jpg

by dobashinaika | 2016-10-13 21:56 | 抗凝固療法:ワーファリン | Comments(0)

スタチンのエビデンスをどう解釈するか:Lancetの総説より


Interpretation of the evidence for the efficacy and safety of statin therapy
Lancet DOI: http://dx.doi.org/10.1016/S0140-6736(16)31357-5


Lancetにスタチン療法の有効性安全性に関するエビデンスの解釈に関する総説が掲載されています。
週刊誌などでも,その適応が話題となっており,この際整理したいと思います。
例によってACCのメルマガで9ポイントにまとめてくれていますので,それを訳します。

1.RCTはアウトカムの違いを明確化し,治療と効果の因果関係を明らかにする。

2.多数の異なるタイプの患者対象に異なるクライテリアで行われるRCTは,治療法に対する信頼できる情報を提供し,異なる集団への適応を可能にする。

3.データベースに基づく大規模観察研究は,稀な例においても効果を確認することができる

4.RCTから得られる特異的なアウトカムの平均的効果を観察研究での絶対リスクに当てはめるには,絶対リスクの総合的評価が必要

5.
・RCTではLDLコレステロールを40mg/dl下げるごとに大血管イベント(冠動脈死,心筋梗塞,脳卒中,冠動脈再建術)を25%減らす
スタチン療法の絶対的効果は各例における心血管イベントの絶対リスクとLDLCの減少度とに依存する
・たとえば,LDLCを低コストスタチン(アトルバスタチン40mg/日;月4ドル,80mg/dl)を5年間10,000人に使うと,二次予防患者では1,000人(10%絶対効果),一次予防では500人(5%絶対効果)
・より長期間使用したほうが大きな効果が得られる

6.   
・長期間のスタチン使用には重大な副作用がある。
・アトルバスタチン40mg/日は10,000例5年間でミオパチー5例(CPK上昇,やめないと横紋筋融解症)
・50〜100例で新規糖尿病発症
・5〜10例で脳出血

7.スタチン療法は,5年間10,000人に50−100人に症候性の有害事象(筋肉痛,脱力)を起こす。しかしながらRCTでは,それらの有害事象がスタチンに起因するとは結論付けられない(小田倉注:統計的有意差がつかないなど)

8.・RCTに基づけば,有害事象が効果と副作用のバランスを超えて多いという事はできない。
・有害事象が過大評価されるために,高リスク患者がアンダーユーズになるかもしれない。
・筋肉関連症状は服用中止で速やかに改善する一方,薬を飲まないことによる心筋梗塞や脳卒中は重大な結果をもたらす

9.今後の見通し:著者らは動脈効果疾患の予防と治療に関する国際的専門集団であり,多くの高リスク患者がまれな副作用た恐れのためにスタチンをやめたり,効果のはっきりしない高価な代替治療を求めることに警鐘を鳴らしている

### すでに週刊誌記事に対する幾つかのブログでかねがね述べてきたことが,ここにも凝縮されています。

私が一番,危惧することがが上記「8」のなかで「有害事象が過大評価されるために,高リスク患者がアンダーユーズになるかもしれない」としっかり書かれていました。
ただし,特に一次予防での絶対リスク減少は,日本人の場合欧米人よりかなり低いので,上記のことは当てはまらないと思われますでの注意が必要です。
(日本人の適応については一応まとめたのでこちらを参照ください)

#### こうした論文を目にするたびに,医療に限らず人生における意思決定について考えさせられます。以下意思決定に関する談笑,もとい断章

〜未来の自分の行動を決定するには,世界(リスク)を認知する必要がある。

〜世界の認知には正しいリテラシーが必要である。だから私たち医療者は。日々学習するのである。

〜世界とは,そしてリスクとは連続変数であり,行動決定は「する」「しない」の離散変数である。

〜連続変数から離散変数を導くには,必ず飛躍が必要になる。

〜飛躍の幅を決定するのはリテラシーの他に,リスクを語る者に対する信頼度,個人に依存した経験や価値観などの因子が入り込む。

〜飛躍の幅をなるべく狭めるためにリテラシーを磨く必要がある。

$$$ 連休は近場を散策。ひさしぶりに行きました。ポケモンたくさんいました。
a0119856_21563032.jpg

by dobashinaika | 2016-10-11 21:54 | 虚血性心疾患 | Comments(0)

ダビガトランとリバーロキサバンの比較研究(米国12万例コホート):リアルワールドデータとは何か?


Stroke, Bleeding, and Mortality Risks in Elderly Medicare Beneficiaries Treated With Dabigatran or Rivaroxaban for Nonvalvular Atrial Fibrillation
JAMA Intern Med. Published online October 03, 2016. doi:10.1001/jamainternmed.2016.5954

疑問:ダビガトランとリバーロキサバンは有効性安全性に違いはあるのか?

デザイン,設定,対象:
・後ろ向き,新規投薬,118,891例,
・NVAF,65歳以上,メディケア患者
・2011年11月〜2014年6月までにダビガトランまたはリバーロキサバンを投与開始した患者
・プロペンシティースコアマッチ

介入:ダビガトラン150mgx2 vs. リバーロキサバン20mgx1

主要評価項目:血栓塞栓性脳卒中,頭蓋内出血,消化管出血を含む大出血,死亡率

結果:
1)ダビガトラン52240例,リバーロキサバン66651例,女性47%

2)血栓塞栓性脳卒中:リバーロキサバン群はダビガトランに比べ明らかな増加なし:HR0.81 (0.65-1.01;P=0.07)

3)頭蓋内出血:リバーロキサバン群はダビガトランに比べ増加:HR1.65 (1.20-2.26;P=0.002)

4)頭蓋外出血:リバーロキサバン群はダビガトランに比べ増加:HR1.48 (1.32-1.67;P<0.001)

5)消化管出血;リバーロキサバン群はダビガトランに比べ増加:HR1.40 (1.23-1.59;P<0.001)

6)死亡:リバーロキサバン群はダビガトラン群に比べ明らかな増加なし:HR1.15(1.00-1.32;P=0.051)

7)75歳以上またはCHADS2スコア3点以上では,リバーロキサバン群はダビガトラン群より死亡率大

8)リバーロキサバンの頭蓋内出血超過は血栓塞栓性脳卒中減少を上回る
a0119856_1858515.jpg


結論:リバーロキサバン20mg/日はダビガトラン150mgx2/日に比べ,頭蓋内出血,大出血,消化管出血を統計学的に明らかに増加させた

### リバーロキサバン分が悪いようですね。米国ですので,ダビガトランは150mgだけです。それでも出血はリバーロキサバンの多いのでしょうか。

後ろ向きコホートなので,各種交絡因子(PSマッチ済みとは言え)とくに,医師の裁量などがバイアスになります。スポンサーもわかりません。

ただ,同様にリバーロキサバンに分が悪いRWDもでています。
http://dobashin.exblog.jp/23151722/

こちら台湾の大規模コホートでもリバーロキサバンはやや出血が多いそうです。
http://dobashin.exblog.jp/23230162/

日本のデータはないでの結論出すのは早いですが,一応チェック。

#### コホート研究,PMSなどRCT以外のエビデンスはRWD (Real world data) と言われている,と山下先生から教わりました。「リアルワールド」とは何か,を考えたくなります。このデータも「米国のメディケアを受けている65歳以上の患者群」というリアルワールドであり,一方台湾には台湾,日本には日本のリアルワールドがある。

そしてなにより医師にとっては自分の担当する患者群というリアルワールドがある。もとい「患者を塊として考えるな,ひとりひとりが思いを持っている(by 草刈正雄板真田昌幸)」というわけで,目の前の患者というシンのリアルワールドに見かけのリアルワールド(RWD),さらにはバーチャルワールド(RCT?)をどう適用させられるか,が悩ましいところです。

なるべく眼の前の患者さん世界に近いRWDを読んでいきたいものです。でもそれがなかなかないのですね,今の日本には。

$$$ というわけで真田丸から,超名言を
a0119856_1859729.jpg

by dobashinaika | 2016-10-05 19:07 | 抗凝固療法:比較、使い分け | Comments(0)

第8回どばし健康カフェ「不健康大自慢大会! あなたの不健康な習慣を語り合いましょう」11月12日(土)です


「わかっちゃいるけどやめられない・・」

健康には良くないと知っている,でもやっぱりやめられないこと・・・
いつも,「やってしまった」と思いながら,それでもまたやってしまう・・・

そんなことはいくら品行方正と思われている人でさえあると思います。そしてそうしたことは,医者の前では言えないけれどどこかで,どこか人に言いたくなる衝動にかられることもまた事実です。

今回のカフェは,思い切って「不健康大自慢大会」と題して,それぞれ「自分の不健康自慢」を存分に語っていただきます。

語りあい,自慢しあった上で,そこから何が見えてくるのか。それが今から楽しみです。

皆様お気軽にご参加ください。

お問い合わせ,参加の申込みは以下のこくちーずからか,当院まで直接お願い致します。

場所:土橋内科医院待合室
日時:2016年11月12日(土)15:00〜 (約2時間)
参加費:300円(コーヒー、茶菓あります)

こくちーずPro
http://www.kokuchpro.com/event/768b850933ae275f995a7a949ef8e2a8/
a0119856_1156537.jpg

by dobashinaika | 2016-10-02 12:03 | 土橋内科医院 | Comments(0)


土橋内科医院の院長ブログです。心房細動やプライマリ・ケアに関連する医学論文の紹介もしくは知識整理を主な目的とします。時々日頃思うこともつぶやきます。


by dobashinaika

プロフィールを見る
画像一覧

S M T W T F S
1
2 3 4 5 6 7 8
9 10 11 12 13 14 15
16 17 18 19 20 21 22
23 24 25 26 27 28 29
30 31

カテゴリ

全体
インフォメーション
医者が患者になった時
患者さん向けパンフレット
心房細動診療:根本原理
心房細動:重要論文リンク集
心房細動:リアルワールドデータ
心房細動:診断
抗凝固療法:全般
抗凝固療法:リアルワールド
抗凝固療法:凝固系基礎知識
抗凝固療法:ガイドライン
抗凝固療法:各スコア一覧
抗凝固療法:抜歯、内視鏡、手術
抗凝固療法:適応、スコア評価
抗凝固療法:比較、使い分け
抗凝固療法:中和方法
抗凝固療法:抗血小板薬併用
脳卒中後
抗凝固療法:患者さん用パンフ
抗凝固療法:ワーファリン
抗凝固療法:ダビガトラン
抗凝固療法:リバーロキサバン
抗凝固療法:アピキサバン
抗凝固療法:エドキサバン
心房細動:アブレーション
心房細動:左心耳デバイス
心房細動:ダウンストリーム治療
心房細動:アップストリーム治療
心室性不整脈
Brugada症候群
心臓突然死
不整脈全般
リスク/意思決定
医療の問題
EBM
開業医生活
心理社会学的アプローチ
土橋内科医院
土橋通り界隈
開業医の勉強
感染症
音楽、美術など
虚血性心疾患
内分泌・甲状腺
循環器疾患その他
土橋EBM教室
寺子屋勉強会
ペースメーカー友の会
新型インフルエンザ
3.11
未分類

タグ

(40)
(25)
(24)
(24)
(22)
(21)
(20)
(19)
(19)
(18)
(17)
(16)
(15)
(12)
(12)
(12)
(12)
(11)
(11)
(10)

ブログパーツ

ライフログ

著作

プライマリ・ケア医のための心房細動入門

編集

治療 2015年 04 月号 [雑誌]

最近読んだ本

感情で釣られる人々 なぜ理性は負け続けるのか (集英社新書)


幸福はなぜ哲学の問題になるのか (homo viator)


神話・狂気・哄笑――ドイツ観念論における主体性 (Ν´υξ叢書)

最新の記事

米国でも日本でもDOAC発売..
at 2017-05-19 00:01
心房細動スクリーニングに関す..
at 2017-05-11 22:57
日本のリアルワールドでは,D..
at 2017-04-19 22:34
脳梗塞既往のある心房細動例で..
at 2017-04-11 18:56
DOACはワルファリンやアス..
at 2017-04-03 23:11
カテーテルアブレーション時,..
at 2017-03-28 23:43
2017年版失神患者の評価と..
at 2017-03-21 19:07
虚血性脳卒中後の心房細動例の..
at 2017-03-16 19:20
昨日のNOAC論文に追加情報。
at 2017-03-15 18:52
英国のプライマリケアセッティ..
at 2017-03-14 23:18

検索

記事ランキング

最新のコメント

簡潔なまとめ、有り難うご..
by 櫻井啓一郎 at 23:16
いつも大変勉強になります..
by n kagiyama at 14:39
土橋先生論文を分かりやす..
by ekaigo at 17:41
コメントありがとうござい..
by dobashinaika at 21:03
先生のブログ(共病記)を..
by 大西康雄 at 13:07
コメントありがとうござい..
by 小田倉弘典 at 18:40
コメントありがとうござい..
by dobashinaika at 18:35
コメントありがとうござい..
by dobashinaika at 18:34
はじめまして 心房細動..
by 患者目線 at 08:36
脳梗塞を起こしているから..
by 心配性 at 06:36

以前の記事

2017年 05月
2017年 04月
2017年 03月
2017年 02月
2017年 01月
2016年 12月
2016年 11月
2016年 10月
2016年 09月
2016年 08月
2016年 07月
2016年 06月
2016年 05月
2016年 04月
2016年 03月
2016年 02月
2016年 01月
2015年 12月
2015年 11月
2015年 10月
2015年 09月
2015年 08月
2015年 07月
2015年 06月
2015年 05月
2015年 04月
2015年 03月
2015年 02月
2015年 01月
2014年 12月
2014年 11月
2014年 10月
2014年 09月
2014年 08月
2014年 07月
2014年 06月
2014年 05月
2014年 04月
2014年 03月
2014年 02月
2014年 01月
2013年 12月
2013年 11月
2013年 10月
2013年 09月
2013年 08月
2013年 07月
2013年 06月
2013年 05月
2013年 04月
2013年 03月
2013年 02月
2013年 01月
2012年 12月
2012年 11月
2012年 10月
2012年 09月
2012年 08月
2012年 07月
2012年 06月
2012年 05月
2012年 04月
2012年 03月
2012年 02月
2012年 01月
2011年 12月
2011年 11月
2011年 10月
2011年 09月
2011年 08月
2011年 07月
2011年 06月
2011年 05月
2011年 04月
2011年 03月
2011年 02月
2011年 01月
2010年 12月
2010年 11月
2010年 10月
2010年 09月
2010年 08月
2010年 07月
2010年 06月
2010年 05月
2010年 04月
2010年 03月
2010年 02月
2010年 01月
2009年 12月
2009年 11月
2009年 10月
2009年 09月
2009年 08月
2009年 07月
2009年 06月
2009年 05月
2009年 04月
2009年 03月
2009年 02月
2009年 01月
2008年 03月
2007年 03月
2006年 03月
2005年 08月
2005年 02月
2005年 01月

ブログジャンル

健康・医療
病気・闘病

画像一覧

ファン