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Xa阻害薬の中和薬Andexanet alfaの臨床効果:NEJM誌


Andexanet Alfa for Acute Major Bleeding Associated with Factor Xa Inhibitors
N Engl J Med 2016; 375:1131-1141

疑問:Xa阻害薬中和薬Andexanet alfa (andexanet)の実臨床データはどうか?

方法:
・多施設,オープンラベル,単一群試験
・Xa阻害薬服用後18時間以内の大出血患者67人
・抗Xa活性,12時間後の止血効果を評価
・効果のある患者47人のベースライン抗Xa活性は75ng/ml以上

結果:
1)平均77歳,多くが心血管疾患合併

2)出血の多くは頭蓋内または消化管

3)ER受診後平均4.8時間でandexanet投与

4)投与後抗Xa活性:89%(リバーロキサバン)および93%(アピキサバン)低下

5)上記レベルは2時間後も不変。4時間後で39%(リバーロキサバン)および30%(アピキサバン)

6)12時間後止血率;完全または良好が47人中37人(79%)

7)血栓塞栓イベント(30日以内):18%

結論:Andexanet alfaの初回ボーラス及び2時間の点滴は,Xa阻害薬による大出血を明らかに減らした(79%の止血効果)。


### すでに第I相試験のデータもNEJMから出ていました。
http://dobashin.exblog.jp/21946788/

またダビガトランの中和薬は製造販売承認されたとのことです。http://prizbind.jp/

血栓塞栓イベントが18%というのが気になりますが。

$$$ 仙台市の薬局でもこうした取り組みが始まっています。医師の方といえば研修会はありますが,具体的なアクションは他の業種のほうが進んでいるように思います。
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by dobashinaika | 2016-09-29 22:19 | 抗凝固療法:中和方法 | Comments(0)

NOACの死亡率がワルファリンより低い場合は頭蓋内出血が少ないため:AMJ誌


Mortality in Patients with Atrial Fibrillation Randomized to Edoxaban or Warfarin: Insights from the ENGAGE AF-TIMI 48 Trial
Am J Med 2016;129:850-857.


疑問:ENGAGE AF-TIMI 48でエドキサバンがワルファリンより心血管死が少なかった理由は?

方法:ENGAGE AF-TIMI 48試験の後付解析,2.8年追跡

結果:
1)全死亡:
ワルファリン群4.35%/年 vs. 高用量エドキサバン群3.99%/年,p=0.08
ワルファリン群4.35%/年 vs. 低用量エドキサバン群3.8%/年,p=0.006

2)心血管死(突然死,心不全死,虚血性脳卒中死),悪性腫瘍,他の非心血管死とも各薬剤群間で有意差なし

3)致死的出血124例:ワルファリン65例vs.高用量エドキサバン35例,p=0.003,低用量エドキサバン24例,p<0.001

4)致死的出血の大多数が頭蓋内出血;ワルファリン0.27%,高用量エドキサバン0.15%,低用量エドキサバン0.07%

結論:エドキサバン群がワルファリン群より低死亡率だったのは,大出血率が低かったことによるところが大きい。

### これまでNOACの予後改善効果は,アピキサバンと低用量エドキサバンでしか示されていませんでした。ダビガトラン150はp=0.051でギリで0.05より上だったように思いました(アピも確かぎりぎり下回っただけ)。低用量エドキサバンはその点かなり数値的にはしっかりワルファリンより予後改善が示されいるようです。

中身はやはり頭蓋内出血が大変少ないことが伺われます。抗凝固療法下の心房細動の予後は頭蓋内出血で決まる(RCT上は)ということですね。それだけ頭蓋内出血の威力は甚大なわけです。

頭蓋内出血は血圧が最大の危険因子と思われますので,これ見てむしろ抗凝固薬出したらしっかり血圧管理しなきゃと思います。

ただし,これはポストホック解析で統計的でどれだけ意味があるかわかりません。エドキサバンはリアルワールドデータが少ないので,リアルなコホートのデータを待ちたいところ。

ENGAGE-AF-TIMI48のブログはこちら
http://dobashin.exblog.jp/19001412/

$$$ 近くの道端にて
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by dobashinaika | 2016-09-27 23:41 | 抗凝固療法:エドキサバン | Comments(0)

アジア人の大規模コホートでもNOACはワルファリンに比べ虚血性脳卒中,頭蓋内出血ともに少ない:JACC誌


Thromboembolic, Bleeding, and Mortality Risks of Rivaroxaban and Dabigatran in Asians With Nonvalvular Atrial Fibrillation
J Am Coll Cardiol. 2016;68(13):1389-1401.


疑問:アジア人でもNOACはワルファリンより効果と安全性に優れているのか?

方法:
・台湾の国民健康保険データベース
・NVAF
・リバーロキサバン3916人,ダビガトラン5291人,ワルファリン5251人
・プロペンシティースコアマッチ

結果:
1)リバーロキサバン(10−15mg)87%,ダビガトラン(110mg)90%は低用量処方

2)虚血性脳卒中/全身性塞栓症:リバーロキサバン,ダビガトランがワルファリンに勝る (p = 0.0004 and p = 0.0006, respectively)

3)頭蓋内出血:リバーロキサバン,ダビガトランがワルファリンに勝る (p = 0.0007 and p = 0.0005, respectively)

リバーロキサバン
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ダビガトラン
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A:虚血性脳卒中/全身性塞栓症 ,B;頭蓋内出血

4)全死亡:リバーロキサバン,ダビガトランがワルファリンに勝る(p < 0.0001 and p < 0.0001, respectively)

5)2つのNAOC間では虚血性脳卒中/全身性塞栓症,頭蓋内出血,心筋梗塞,死亡率に差なし

6)リバーロキサバンのほうがダビガトランより消化管出血による入院多い (p = 0.0416)が,オントリートメント解析では差ない

結論:アジアでのリアルワールドでは,リバーロキサバンとダビガトランはワルファリンにくらべ,虚血性脳卒中/全身性塞栓症,頭蓋内出血,死亡率の点で優位。心筋梗塞,消化管出血による入院は同等。

### 台湾の大規模データベース。平均年齢71(ワルファリン)〜75歳程度(NOAC)。CHA2DS-VAScスコア平均4点程度の集団です。

絶対数を見ますと,虚血性脳卒中/全身性塞栓症はリバーロキサバンが年間3.07%,ダビガトランが3.65%,ワルファリンが5.6〜5.7%ですが,RCTではリバーロが2. 1%(ROCKT-AF),ダビが1.53%(RE-LY110mg),ワルファリンが1.6〜2.45でいずれも台湾のほうが高率です。

頭蓋内出血は,リバーロが0.77%,ダビが1.0%,ワルファリンが2.22〜2.47%ですが,RCTではリバーロ0.5%,ダビ110で0.23%,ワルファリンは0.7〜0.85%で,やはり現実世界のほうが高率にでています。

ざっくり言えば脳卒中/全身性塞栓症,頭蓋内出血とも年間2人/100人程度,NOACがワルファリンより少ないという感じですね。

ちなみに日本のJ-リズムの追跡結果では脳卒中/全身性塞栓症はNOAC2.1%,ワルファリン4.9%。大出血はNOAC2.4% ,ワルファリン5.9%で,塞栓症は台湾より低率でした。
http://dobashin.exblog.jp/22617964/

先日のBMJのデンマークコホートでも脳卒中/全身性塞栓症はNOAC2.8〜3.3%で台湾に近い数字です。現実世界では,RCTよりも複雑でハイリスク症例が含まれてるいるからと考えられます。
http://dobashin.exblog.jp/22920328/

またリバーロもダビも低用量で日本の実使用に近いと考えられ,特にRCTで低用量とされたリバーロ15〜10,ダビ110でもRCTよりは虚血性脳卒中の発症率は高いものの,ワルファリンと比べればかなり優位という結果でした。

これを読むとアジア人でもやぱりNOACでいいのか,と思わせます。追跡期間が1年と短いですが,反対に1年でも有意差がこれだけつくのかという気もします。NOAC強しかなあ。ワルファリン派としては,でもまだワルファリンも生きる道はあるとつぶやきたいところですが,,

$$$ 先日の投稿人(ワタシですが)の血圧,脈拍です。7が4つ並んだので思わずご報告します。
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by dobashinaika | 2016-09-20 23:33 | 抗凝固療法:リアルワールド | Comments(0)

主要評価項目がポジティブ。それで十分か?:NEJMから論文の読み方指南


The Primary Outcome Is Positive — Is That Good Enough?
N Engl J Med 2016; 375:971-979

NEJMからクリニカルトライアルの結果がポジティブのときどう考えればよいのか,についての指南がでています。

各論で様々な循環器系のトライアルの解釈法が示されており,こちらが圧巻です。製薬企業からのPRや講演会では触れられないような”不都合な真実”が次々と紹介されており,思わず全文読んでしまいました。

ACCのメーリングリストで10のポイントにまとまっていますので,論文紹介を本文から改変挿入し紹介します。
Primary Outcome in Clinical Trials and Clinical Significance
Sep 08, 2016 | Debabrata Mukherjee, MD, FACC

1.主要評価項目が統計的有意差の持つことは,新しい治療法が受け入れられるための典型的な必要条件である。しかし十分ではない。

2.臨床試験の総合的判断は多くのステークホルダー,たとえば(試験の)統制者,読者,雑誌編集者,査読者,専門家,ガイドライン作成委員会,医師,患者,批評家らによって吟味される。

3.提示された所見が実臨床のプラクティスに影響を与えるに十分なエビデンス足り得るかを決めるには,そのデータのより深い解釈と早期の追試験が必要である。
→例:CAST試験では不整脈治療が死亡率を増加させるという予期せぬ有害事象を明らかにした。

4.以下のキークエスチョンに答えることが,どの”ポジティブ”試験が実臨床のプラクティスを向上させるにたるのかの判断の一助となる。

P<0.05は十分に強いエビデンスを提供しているか:P値は偽陽性率を表すので,効果がより疑わしい場合より小さなP値が必要なことあり。
→PARADIGM-HF(sacubitril–valsartan versus enalapril,心血管死または心不全入院):P<0.00001でありsacubitril–valsartanの保険償還が認められた。
→SPAINT I(NXY-059 versus placebo,急性虚血性脳卒中の機能回復):P=0.038,追試では否定(P=0.33)

・治療のベネフィットの大きさはどのくらいか?:相対リスクだけでなく絶対リスクも明らかに改善しているかを検討。
→IMPROVE-IT(ezetimibe vs placebo,ACS患者の予後,スタチンに上乗せ):ハザード比0.94 (95%CI, 0.89 to 0.98; P=0.016)だが,4年間のイベント差は32.7%vs 34.7%で2%しか違わない→FDAは心血管イベント減少ヘの適応拡大を認可せず
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・その主要評価項目は臨床的に重要か?:
<サロゲートアウトカム>
→ACCORD(糖尿病強化療法vs 標準治療):HbA1cは減少,だが心血管イベントは低下せず,死亡率はむしろ上昇
→LIDO(levosimendan vs dobutamine,心不全治療);血行動態の改善があり多くの国で認可されたが,より大規模なSURVIVEでは死亡率に有意差なし。FDAは認可せず。
<複合アウトカム>
→RITA-3(ACSに対するインターベンションvs保存的治療):複合アウトカムは9.6% vs.14.5%, P=0.001.その年のECSでは”インターベンションが命を救う最初の証拠”と紹介されたが,実際有意な改善は狭心症の比率のみ。心筋梗塞,死亡率に差はなし。ただしその後の追跡調査やメタ解析では予後改善効果あり。
→EXPEDITION(cariporide versus placebo,バイパス術後患者):複合アウトカムはP=0.0002。しかしながら心筋梗塞は減ったが(P=0.000005),死亡率,心血管イベントはむしろ増加(P=0.02,P<0.001)

副次評価項目は(主要評価項目を)支持するものか?
→ SAINT I(上記):副次評価項目である機能回復スコアは改善せず
→対象的にEMPA-REG OUTCOME(empagliflozin versus place,糖尿病):複合アウトカムは 0.86 (95% CI, 0.74 to 0.99; P=0.04)でギリギリ.しかしこの結果は心血管イベントのみ(0.62; 95% CI, 0.49 to 0.77; P<0.001),全死亡 (P<0.001),心不全入院(P=0.002)でより効果の増大が見られた。

・主要な所見は,重要なサブグループでも同様か?
→PLATO( ticagrelor than with clopidogrel,ACS);複合アウトカムはチカグレロル>クロピドグレルだが,アスピリン高用量ではチカグレロルが劣位。低用量では優位
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・その試験は信頼するに十分な大きさか?

・安全はポジティブ効果を釣り合っているか?

・リスクベネフィットバランスは患者特異的なものか?

・試験デザインや運用に致命的欠陥はないか?

・その所見は自分音患者に適応できるか?

5.もし効果と安全性の評価項目が説得力のあるものであれば,次のステップとしては全体の質と内的妥当性の評価である。

6.その所見はリアルワールドの治療効果(+ネットクリニカルベネフィット)に応用できるか?

7.異なるタイプのヘルスケアシステムにかかわらず費用対効果を算定することは,(実際の治療への)どの程度寄与するか(その後の新治療適用に影響する)の決定につながる。

8.そのエビデンスがケアの大きな進歩となるか,またはより進んだ試験を必要性を警鐘するようなものかを決めるには,様々なステークホルダーによるエビデンスへの包括的アプローチが必要である。

9.ガイドライン作成委員会は知識ベースの統合と,新治療のためのエビデンスの強度層別化のために重要な役割を担う。その推奨は臨床に強い影響を与える。

10. しかし,結局はポイントオブケアを担う医師が,それぞれの患者に最善の意思決定を追うために,クリニカルトライアルを正確に読み解く責任を負う。また保険上あるいはガイドライン上の推奨を統合する責任を負う。

### もっとたくさん論文実例が紹介されて面白いのですが,個人的労力としてこの辺まで。気が向いたらまた訳します。
一つの論文がポジティブデータだったとしてもそれだけで臨床判断を急ぐべきでない。後人の解釈や追試,ガイドラインなどの評価が最終的には必要,という真っ当な視点かと思います。

$$$ 某施設の横を歩いていたらこの張り紙。全部の窓に貼ってあり,即退散しました。
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by dobashinaika | 2016-09-16 23:42 | EBM | Comments(0)

アジア人心房細動大規模データべースでは50歳以上から抗凝固薬の適応:Stroke誌


Validation of a Modified CHA2DS2-VASc Score for Stroke Risk Stratification in Asian Patients With Atrial Fibrillation
A Nationwide Cohort Study
Stroke. 2016;STROKEAHA.116.013880, published online before print September 13, 2016


台湾の国内データベースに基づく興味深い検討がでています。

目的:CHA2DS2-VAScスコアの年齢部分を現行の65〜74歳から50〜74歳に広げた場合,予測能はどうなるか?

方法:
・新規の心房細動と診断された224866人対象
・抗凝固療法をしていない124,271人において,CHA2DS2-VAScスコアとmCHA2DS2-VAScスコア(50〜74歳)の予測能を比較

結果;
1)mCHA2DS2-VAScスコア1点(男性)または2点(女性)にすると,ワルファリンの使用で虚血性脳卒中が30%減少

2)頭蓋内出血は不変

3)ネットクリニカルベネフィットもmCHA2DS2-VAScスコアのほうが良好

結論:アジア人心房細動コホートでは,mCHA2DS2-VAScスコアは,もともとのCHA2DS2-VAScスコアよりパフォーマンス良好。より多くのネットクリニカルベネフィット陽性患者を抽出できる。

### 台湾のコホートではこうなるのですね。同様の研究は以下でも垣間見えます。
http://dobashin.exblog.jp/20904993/
http://dobashin.exblog.jp/20288437/

一方日本は3大コホートでの脳塞栓発症率自体かなり低く,65歳〜74歳でさえ危険因子とはなりえませんでした。
http://dobashin.exblog.jp/20541922/
伏見でも,75歳以上としています。
http://dobashin.exblog.jp/21820445/

この差は何でしょうか。血圧その他の周辺管理の違いか。選択バイアスか。
流石に50歳からNOACを出す気にはなれません。
日本もビッグデータはよ,って言いたいところです。

$$$ 月は見えなかったけどお月見
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by dobashinaika | 2016-09-15 22:12 | 抗凝固療法:適応、スコア評価 | Comments(0)

ワルファリン服用中では,血圧136以上が血栓塞栓症,出血イベントの危険因子:J-RHTHMレジストリー

Impact of Blood Pressure Control on Thromboembolism and Major Hemorrhage in Patients With Nonvalvular Atrial Fibrillation: A Subanalysis of the J‐RHYTHM Registry
J Am Heart Assoc.2016; 5: e004075originally published September 12, 2016


疑問:血圧管理が心房細動患者の脳塞栓,大出血に与える影響は?

方法:
・J-RHYTHMレジストリー登録患者158施設,7937例中NVAF7406例
・平均69.8歳,2年またはイベント発生時まで追跡
・高血圧の定義:140/90以上,高血圧の既往,降圧薬服用中

結果:
1)高血圧は大出血の独立危険因子:HR1.52, 95% CI 1.05–2.21, P=0.027

2)血栓塞栓症との関連なし;HR1.05, 95% CI 0.73–1.52, P=0.787

3)イベント時に最も近いタイミングの血圧4分位の最高層(136以上)は最低層(114未満)に比べ血栓塞栓症オッズ比2.88, 95% CI 1.75–4.74, P<0.001,大出血1.61, 95% CI 1.02–2.53, P=0.041:CHA2DS-VAScスコア,ワルファリン使用で補正

4)血圧136以上は血栓塞栓症,大出血の独立危険因子

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結論:NVAF患者では,血栓塞栓症,大出血予防において,血圧管理が高血圧の既往やベースライン血圧よりも重要

### これは大切な論文です。有名なBAT試験では血圧130/81を超えると頭蓋内出血が有意に増加するという結果でしたが,あの試験の対象は二次予防でワルファリン服用率は32,7%と多様な患者が含まれていました。今回はJリズムですので,一次予防のワルファリン使用者がほとんどで,よりわかり易い内容です。

患者キャラは,発作性が38%,CHADS2スコア平均1.7点,CHA2DS-VAScスコア2.8点,平均年齢69.8歳で比較的軽症の集団と言えます。

グラフを見るといろんなことがわかります。なんと血圧135以下だとワルファリンを飲もうが飲むまいが血栓塞栓症,大出血とも発症率に差がない!ようです。136以上で初めて有意差がついています。しかもCHA2DS-VAScスコアで補正しても同じとなれば,とにかく血圧だけ管理していれば,イベントは大変少ないことが示唆されています。

それから血圧良好なら,ワルファリン服用例の日本人の血栓塞栓症率は1%弱,大出血も1.5%前後で非常に低値ですね。NOACのRCTにおける脳卒中率はワルファリン例で概ね1.6−2.4%,NOAC例で1.1−2.1%すからNOACの最良データ(ダビガトラン150)より血栓塞栓症は低く,大出血は同等といえます。いかに血圧管理が大事かがわかる論文です。

いささか乱暴ない言い方ですが,血圧136以上とそれ以下の差は,ワルファリンとNOACの差よりも大きいですね,数字上は。

また114以下と低すぎてもややイベントは増加する傾向にも見えますので,心房細動で抗凝固薬を出したときはとにかく「上135以下を目指す戦略が肝のようにに思います。
$$$ 先週末はジャズフェス。初回から知ってるものとしては,当初の手作り感がなつかしくもあり。でも秋風と木漏れ日とサックスの三位一体はベストマッチ。
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by dobashinaika | 2016-09-13 19:13 | 抗凝固療法:リアルワールド | Comments(0)

心房細動がある人はない人に比べ死亡率が1.5倍,脳梗塞は2.3倍,心不全は5倍:BMJ誌


Atrial fibrillation and risks of cardiovascular disease, renal disease, and death: systematic review and meta-analysis
BMJ 2016; 354 doi: http://dx.doi.org/10.1136/bmj.i4482 (Published 06 September 2016)

疑問:心房細動と心血管疾患,腎臓病,死亡との関連はどうなのか?

デザイン:システマティックレビュー&メタ解析

データリソース:Medline and Embase.

論文のクライテリア:心房細動と心血管疾患,腎臓病,死亡関連のコホート研究

結果:
1)104研究,9686513

2)心房細動と関連あるアウトカム
死亡:RR1.46, 95% confidence interval 1.39 to 1.54
心血管死:2.03, 1.79 to 2.30
主要心血管イベント:1.96, 1.53 to 2.51
脳卒中:2.42, 2.17 to 2.71
虚血性脳卒中:2.33, 1.84 to 2.94
虚血性心疾患:1.61, 1.38 to 1.87
突然死:1.88, 1.36 to 2.60
心不全:4.99, 3.04 to 8.22
慢性腎臓病:1.64, 1.41 to 1.91
末梢血管疾患:1.31, 1.19 to 1.45
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3)心房細動と関連のないアウトカム
出血性脳梗塞:2.00, 0.67 to 5.96

4)絶対リスク増加の最も高いのは心不全

5)いくつかのサブグループ解析,感度分析でも同様の結果

結論:心房細動は死亡,心血管疾患,腎臓病のリスク増加に関係あり。心房細動は患者では脳卒中以外のアウトカム減少にも気を配る必要がある。

### すでに同様の知見は本ブログでも何回も取り上げました。心房細動の死因1位は心不全というおおきな論文も最近Lancetに載っています。本論文は心房細動はある人はない人に比べ,全死亡は1.46倍,虚血性脳卒中は2.33倍,そして心不全は4.99倍という結果でした。

最近の研究では,既存の心房細動よりも,心不全に新たに心房細動が発症すると予後が悪くなることがわかっているようです。
いずれにしろ,心房細動患者における治療史として脳卒中治療の世紀から心不全治療の世紀への変遷と言えるかもしれません。取り立ててそんなに騒がなくても,昔も今もどんな心疾患であれ心不全治療は常に念頭に置かれるべきものではありますが,
by dobashinaika | 2016-09-12 18:49 | 心房細動:リアルワールドデータ | Comments(0)

ケアネット連載「週刊誌の「飲んではいけない薬」は本当なのか?」更新いたしました


ケアネット連載 〜Dr. 小田倉の心房細動な日々~ダイジェスト版~更新いたしました。

今回は第64回, 週刊誌の「飲んではいけない薬」は本当なのか?です。
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7月19日にアップしたブログをパワポでおとしたのもです。

当院では週刊誌をお持ちになって不安を訴える患者さんには,これと同じか,最後のまとめだけをプリントアウトしてさしあげています。また医院の壁にも貼って読んでもらうようにしています。

そもそもなぜこんなに週刊誌が攻勢をかけ,患者さんも興味を示されるのか。
医療者もしくは患者ー医療者間の問題として2つあると思われます。

1)治療のゴールを共有していない。
スタチンを何故飲むのかと聞くと「コレステロールを下げるから」と答える方が多いのは事実です。「心筋梗塞を防ぐ」ことを患者ー医療者の共通目標として,最初に確認していないから,副作用に不安が募る,とも考えられます。

2)医師の研鑽不足
かぜ症状への抗菌薬,ノーリスク閉経後女性へのスタチン,ACE阻害薬よりもARBの多用など。標準治療からはずれたまたは第1選択でない,しかしより高価な薬剤使用が未だに隆盛を極めているかもしれません。

その他,患者側の原因として,身近な副作用のほうが見えない効果よりも大きく見える認知バイアス。ゼロリスク志向。出版社の問題として,利益重視の姿勢,リスクコミュニケーションスキルの欠如,などを上げることができます。

多面的な角度からこの問題を診ることが可能と思いますが,医療者としては,今回の週刊誌問題,「またか」ではなく,まさに当事者として重く捉えたいと思います。
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by dobashinaika | 2016-09-09 22:17 | 患者さん向けパンフレット | Comments(0)

カナダの新心房細動ガイドラインはシンプル。CHADS65を提唱


ESCに続き,カナダの心房細動管理ガイドラインがフォーカスアップデートされました。
2016 Focused Update of the Canadian Cardiovascular Society Guidelines for the Management of Atrial Fibrillation http://dx.doi.org/10.1016/j.cjca.2016.07.591

2014年からの2年ぶり部分改定です。
改定ポイントは
1)様々な冠動脈疾患の状況下での抗凝固管理
2)NOACの現実世界のデータ
3)NOACの中和薬
4)レートコントロール薬としてのジゴキシン
5)周術期の抗凝固管理
7)心臓術後の予防治療を含む外科的手術

の7点です。

今日は冠動脈疾患下での抗凝固療法について紹介します。
まず基本アルゴリズムは,2014年の時と基本的に同じです。
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65歳以上は他にどんな危険因子があろうが即抗凝固。65歳未満でCHADS2スコアの他の因子がひとつでもあれば抗凝固。65歳未満血管疾患(冠動脈疾患含む)有りは抗血小板薬となっています。
65歳がキーポイントでCHADS65と名付けられています。

薬剤選択は,NOACがワルファリンより第一選択であり,出血因子として高血圧,抗血小板薬併用,NSAIDs,ステロイド,アルコール過飲,INR管理不良に注意。とくにNOACでは低クレアチニンクリアランス,75歳以上,低体重に注意,と注釈がついています。

相変わらず非常にシンプルですが,以前Lip先生が噛み付いた,65歳未満で血管疾患がある人に抗血小板薬だけでいいの?という疑問に応える意味もあるのか,冠動脈疾患合併患者について,今回詳細な追加がなされています。以下の通り

<一般的的推奨>

1)冠動脈疾患合併心房細動の場合,脳卒中,冠動脈疾患,出血の3者のバランスを考える(推奨度強,エビレベル高)

2)できるだけNOACを用いる(条件付き推奨,低レベル)
価値と選好:使い勝手の良さ,およびRCTにおいて脳卒中予防ではNOACはワルファリンと同等または優位,大出血は同等か少ない,頭蓋内出血は少ない,冠動脈疾患は増やさないというアウトカムに基づく。冠動脈疾患におけるNOACの効果についての長期的データが欠如しワルファリンが効果的であるとのデータにはあまり重きを置いていない。

<冠動脈疾患(CAD)の一次予防または安定CAD/血管疾患(末梢血管,大動脈プラーク)合併例>
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3)CAD/血管疾患なし,65歳未満,CHADS2スコアゼロ:抗血栓療法不要(条件付き,中等度レベル)
4)CAD/血管疾患なあり,65歳未満,CHADS2スコアゼロ:アスピリン(条件付き,中等度)
5)CAD/血管疾患なあり,65歳以上,CHADS2スコア1点以上」OAC(強,高)

<待機的PCI例>
a0119856_21521679.png

6)65歳未満,CHADS2スコアゼロ:アスピリン+クロピドグレル,12ヶ月(2012ガイドラインに準拠)
7)65歳以上,CHADS2スコア1点以上:OAC+クロピドグレル75mg,12ヶ月

<非ST上昇およびST上昇心筋梗塞>

a0119856_21495065.png

8)65歳未満,CHADS2スコアゼロ:アスピリン+チカグレロルor クロピドグレル,12ヶ月
9)65歳以上,CHADS2スコア1点以上:OAC+チカグレロル(プラスグレル,クロピドグレルよりも)12ヶ月→OAC単独
10)65歳以上,CHADS2スコア1点以上,PCIの既往:アスピリン81+クロピドグレル75+OAC,3-6ヶ月(期間は冠血栓と出血リスクによる)→クロピドグレル+OAC,12ヶ月まで→oOAC単独
価値と選好:3〜6ヶ月のトリプルテラピーはOAC+クロピドグレルよりも冠動脈イベントが少なく,DAPTyよりもステント血栓が少ないことを重視。出血リスク増大には重きをおかず。塞栓症と出血のバランスは,CHADS2スコア2点以上の高リスクの時に判断すべき

### ”CHADS65”。大変シンプルですが,個人的には何も考えず「65歳以上で一律に抗凝固療法」とするのはいかがなものかと思います。

冠動脈疾患合併例では,待機的PCIのときトリプルはなし,OAC単独の時期が一律に12ヶ月後など,ESCとは微妙に違うようです。

全体に,総論的コンセプトの強調がなく,ESCガイドラインよりシンプルさが目立つ北米らしい GLという印象です。

$$$ ご近所の神社の鳥居が新調されました。ここくぐる時の木の香り,迷走神経刺激作用は絶大です。ちなみにここジムレベル3です。

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by dobashinaika | 2016-09-08 21:56 | 抗凝固療法:ガイドライン | Comments(0)

欧州心臓病学会の心房細動ガイドライン速報その6:ゴールベイストマネージメントの発想


シン・ESCガイドライン 付け足し

ESCガイドラインの特徴である,長く包括的な総論。締めくくりはGoal-based follow-upです。
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従来からの,心房細動管理の2大カテゴリーである「生命予後」と「症状」が柱ですが,それらを患者自身が有効化実装化すること,慢性期に「ケア」を行うこをともゴールとして付記されています。

### こういうのを包括的にテーブルにしてまとめるのって,ヨーロッパのひとは好きですよね,ワタシも好きですが,

患者さんへの説明のコツみたいなのもサラッと書かれていました。
・生命予後改善のための治療は,利益は直接実感できないので,患者さんに(そのことを)注意深く説明する必要がある

・リズムコントロール治療は,たとえ再発したとしても症状がコントロールされていれば成功

・期待される利益を心房細動管理の開始の時に各々の患者に説明することは,(患者に)根拠の無い期待感をいだかせずに,QOLが最適になるようにするポテンシャルがある。

ソーロンソーロンばかりででそろそろと言うかかかなり飽きてきましたが,この表と昨日の1枚目の5ドメインは抑えておくと良いと思われます。
特にゴールベイストの思想は核心です。2年前に出した拙著のキーコンセプトもこれでして,心房細動に限らずあらゆる医療に通じる技法としてStewartらの「患者中心の方法」があり,そのコアコンポーネントである「共通基盤の形成」が文字通り基盤です。

心房細動だったら,何のための薬か,アブレーションか,その治療目的を患者ー医療者双方で明確化し同じ土俵に乗るということ,これこそが究極のゴールといえます。この作業を怠ると,外来で「やっぱり怖くて飲めません」と患者さんが突然不安を抱くことになります。

昨今の週刊誌記事が話題となるのも,この「治療最初のゴールの確認」を医療者が怠っていることが根本にあると思われます。予後改善という実感の沸かないゴールをいかに身近なものとして,リスクを上回るものとして感じてもらえるか,そのコミュニケーション不足が背景と思われます。

抗凝固薬は血液サラサラ薬でなく「脳梗塞を押さえる薬」,降圧薬もコレステロールの薬も糖尿病の薬も,血圧を下げる,血糖を下げる,コレステロールを下げるだけの薬ではなく「脳卒中,心筋梗塞を押さえる薬(糖尿病の場合はその他の合併症も)ということを知らない患者さんは非常に多いと思われます。

もちろん医師の研鑽不足,人間のリスク認知バイアスなども重要なファクターですが。

$$$ 以前亀有に言った時に取った写真。連載完了とは寂しい限りです。
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by dobashinaika | 2016-09-07 23:05 | 抗凝固療法:ガイドライン | Comments(0)


土橋内科医院の院長ブログです。心房細動やプライマリ・ケアに関連する医学論文の紹介もしくは知識整理を主な目的とします。時々日頃思うこともつぶやきます。


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