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欧州心臓病学会の心房細動ガイドライン速報その3:頭蓋内出血後の抗凝固薬再開時期

新ESCガイドラインピックアップの続き。

頭蓋内出血を起こしてしまった後,抗凝固薬をいつ再開するかという興味深い問題です。
キーシェーマは次の通り
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だいたい4〜8週後に,頭蓋内出血低リスクの薬(というとNOACか)を投与とのことです。
ただ,このガイドラインの随所にでてくる”multidisciplinary team"つまり多職種チームでの関わりが重視されています。

機械的に4〜8週後に再開,と考えるのでなく,年齢,血圧,アルコール,出血の度合い,出血理由など多岐にわたる因子を考慮し,医師だけでなく,薬剤師や看護師(訪問看護師),理学療法士,ケアマネジャー,脳外科医,内科医などなど多職種を交えての意思決定が説かれています。

出血の原因が生理学的要因(高齢など)だけでなく,転倒,薬剤の飲み過ぎ,併用薬(抗血小板薬)などが絡みますので,医師だけで決定するのは危険かもしれません。

なんかこのガイドラインを眺めていると,もはや抗凝固療法(に限らず全ての医療,特に慢性期医療)では医師をトップとする権力勾配は,成り立たなくなりつつあることを痛感します。

最初から4〜8週とかなり幅広くレンジが取られているのも,いろんな因子により開始時期に差異があることによるものと思われます。
個人的には一番大切なのは血圧と思われます。血圧を十分下げられなければ再開は怖いところです。

私なら,抗凝固薬飲んでて大出血してしまったら,今なら左心耳切除術をお願いしたい感じですが。

$$$ お気に入りの場所
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by dobashinaika | 2016-08-31 23:05 | 脳卒中後 | Comments(0)

患者さん向け説明ツール:週刊誌の「飲んではいけない薬」は本当なのか?ー抗血栓薬編−

週刊誌の「飲んではいけない薬」「やってはいけない手術」キャンペーン記事について,当院で特に問い合わせの多い抗血小板薬,抗凝固薬(いわゆる血液サラサラ薬:あまり適切な言い方ではありませんが)について,当院としての考え方をまとめてみました。

国内外のガイドラインや論文を元に,私の意見を交えて書いてみました。これが絶対正しいというわけではありませんが,一つの参考にはなると思います。
誤りや見解の違いがございましたらご指摘お願い申し上げます。その都度バージョンアップしていきます。

知ってほしいことは,

1)すべての薬には副作用がある

2)抗血小板薬,抗凝固薬の主の副作用は出血(特に脳出血と消化管出血)である

3)しかし抗血小板薬,抗凝固薬には,心筋梗塞及び脳梗塞を予防するという大きな効果がある

4)「効果(心筋梗塞,脳梗塞にならない)」>「副作用(出血)」の時に薬を飲んだほうが良い

5)つまり「薬を飲まないで心筋梗塞や脳梗塞になるリスク」が「飲んで脳出血や消化管出血を起こすリスク」より大きければ飲んだほうが良いし逆なら飲まないほうが良い

ということです。

飲まないリスクと飲むリスクを天秤にかけるという考え方です。
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具体的に「どんな場合に」飲んだほうが良いのか,それとも飲まないほうが良いのか(飲んではいけないのか)を考えていきます。週刊誌記事は,この一番大事な「どんな場合に」を説明をすることなく,ただ副作用だけを強調する傾向があり,鵜呑みにすべきではないと考えます。

・飲んだほうが良い:「飲まないで心筋梗塞や脳梗塞になるリスク」が「飲んで出血を起こすリスク」より明らかに大きい場合。個人的には「飲むべきである」場合と考えます。
・どちらかというと飲んだほうが良い :「飲まないで心筋梗塞や脳梗塞になるリスク」が「飲んで脳出血や消化管出血を起こすリスク」よりやや大きい場合
・飲まないほうが良い/わからない ;飲まないリスクと飲むリスクが同等,または現時点ではっきりわかっていない
・飲んではいけない;飲むと害があることが明らかな場合
と考えてください
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文献 :
1)日本脳卒中学会 脳卒中ガイドライン委員会:脳卒中治ガイドライン2015. 協和企画, 東京, 2015
2)循環器病の診断と治療に関するガイドライン. 循環器疾患における抗凝固・抗血小板療法に関するカイドライン(2009年改訂版). http://www.j-circ.or.jp/guideline/pdf/JCS2009_hori_h.pdf
3)Antithrombotic Trialists' (ATT) Collaboration: Aspirin in the primary and secondary prevention of vascular disease: collaborative meta-analysis of individual participant data from randomised trials. Lancet. 2009; 373:1849-60.

心筋梗塞,狭心症,脳梗塞,一過性脳虚血発作(一時的に脳梗塞の症状が出たが現在は後遺症なし)と医療機関で確かに診断され,現在治療中の人,またはステントが体に入っている人が抗血小板薬を飲むことの信頼性,妥当性は,数ある医療行為の中でもトップクラスです。
少なくとも「飲んではいけない」場合では絶対にありません。

しかしそうは言っても脳出血や消化管出血(特にアスピリン)のリスクはゼロではありません。たとえ効果が大きいとはいえやはり大きな出血を来す場合はあります。具体的には消化性潰瘍にかかったことがある人,鎮痛剤(NSAID)を飲んでいる人,ステロイドを飲んでいる人,血圧の管理が不十分な人は出血しやすいといえます。原則はこの表のとおりですが,上記に当てはまる場合は医師も慎重に処方すべきと考えます。

(注1)最初の数ヶ月はアスピリン+もう1剤併用)
(注2)心筋梗塞にかかっていなくても飲んだほうが良い場合も明らかにされつつありますが,煩雑なので記載はしておりません(後日注釈付けます)。
(注3)飲んではいけない人としてこの他にアスピリン喘息の人,出産予定日12週以内の妊婦などがあります。
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1)循環器病の診断と治療に関するガイドライン. 心房細動治療(薬物)ガイドライン(2013 年改訂版)
2)2016 ESC Guidelines for the management of atrial fibrillation developed in collaboration with EACTS:Eur Heart J http://dx.doi.org/10.1093/eurheartj/ehw210

細かく書きましたが,以下のCHADS2スコアという点数化で2点以上なら飲んだ方が良い,1点ならどちらかと言えば飲んだほうが良い。0点で65歳未満なら飲むべきではないと考えてください。
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また80〜85歳以上の超高齢者でかなり活動性が低下している方は,「飲んだほう良い」とは言えない場合もあります。そういう時こそケースバイケース,患者さん,ご家族,医師間のコミュニケーションが必須です。

血管病とは「心筋梗塞」「大動脈硬化(プラーク)」「末梢(頸動脈や下肢)動脈疾患」を指します。

### 抗血小板薬,抗凝固薬は出血という副作用の持つインパクトが大きいため他の薬よりも慎重さが要求されます。一方で飲まないことで被るリスクも甚大です。

私たちは飲んだら出血する,という目の前のリスクには敏感である一方,飲んでいるから病気になっていない,という効果については目に見えないので鈍感です

遠い未来に待ち構える怖いことに備える,薬は車のシートベルトである,ということをしっかり想像すべきです。また医師は目の前にあるリスクをなるべく小さくし,飲んでいい人いけない人の適応を誤らないように研鑽を積み,それを的確に患者さんに伝える役目があると思います。あー疲れた。

$$$ 初の東北上陸台風にコンロ,懐中電灯など装備万全で望みました。使わずにすみました。あ,それと気分転換にPCのバックを変えてみました。写真のにゃんこは当院とは関係ありません,もともとあったテンプレートです。これ変えるやり方わかりません。。
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by dobashinaika | 2016-08-31 01:30 | 患者さん向けパンフレット | Comments(0)

欧州心臓病学会の心房細動ガイドライン速報その2:脳梗塞後の抗凝固薬開始時期

ESCの新ガイドラインから
脳梗塞/TIA後の抗凝固薬の開始時期についてのまとめ図です。

脳梗塞の重症度に応じて開始時期が異なるのがポイントかと思います。
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・TIA→1日後
・軽症脳梗塞→3日後
・中等症→6日後
・重症→12日後

です。

抗凝固薬としてはNOACがVKAよりも好ましい(推奨度I, エビレベルB)となっています。

重症度はNIHSSに基づいています。
NIHSSについてはこちらのサイトを参照ください。

もう一つのポイントは出血性梗塞がないかどうかをよく確認です。

関連ブログはこちら
心原性脳塞栓後早期のNOAC投与は安全か
心房細動脳梗塞後の抗凝固薬再開は4〜14日後がベスト

$$$ きょうのニャンコ 
散歩してたらこんなに擦り寄ってきました。離れがたくなりました。
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by dobashinaika | 2016-08-29 22:33 | 脳卒中後 | Comments(0)

4年ぶり改訂、欧州心臓病学会の心房細動ガイドライン速報;その1

欧州心臓病学会(ESC)から、欧州心胸部外科学会とコラボで心房細動管理ガイドライン2016年版が発表されました。ちょうどローマで開催されている学会に合わせての発表です。
前回の改訂が2012年のフォーカスアップデートですので4年ぶりの改定です。

2016 ESC Guidelines for the management of atrial fibrillation developed in collaboration with EACTS
DOI: http://dx.doi.org/10.1093/eurheartj/ehw210 ehw210 First published online: 27 August 2016


ざっと見の印象ですが、まず抗凝固療法の各論に行き着くまで多数の紙面が総論に割かれている点です。
基本コンセプトは Integrated management(統合的管理)です。

すでにEHRAからシェーマが出ていますが、戦術として心房細動の管理を、急性期、背景因子の管理、脳卒中リスクの評価、レート管理、症状管理の5ステップにまとめ、その根底となる戦略(コンセプト)には、患者の参画、多職種チーム、非専門家の役割、テクノロジーツール、の4アイテムの活用です。また5ステップごとに系統だったゴールが示され、ゴールに向かっての管理というコンセプトも明確化されており、さながらガイドラインが心房細動という大きな山登りの道標の趣を呈しています。

各論では、抗凝固療法の適応や薬剤選択は大筋で変わりないものの、シェーマがシンプルになり、また脳出血後の再開、3剤併用療法、左心耳閉鎖術などが詳述されるようになっています。

まずは知りたさ緊急度優先で抗凝固療法関係の目立ったものをまとめました。総論は膨大かつ重要なので明日以降じっくり紹介します。

抗凝固療法の適応は基本変わっていません。機械弁、僧帽弁狭窄症はVKA(ワルファリン)、バスク0点は抗凝固なし(禁忌)、1点は考慮。2点以上はNOAC、2番手がVKA、抗凝固薬禁忌の場合の左心耳閉鎖術がIIb。
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出血リスクはHAS-BLEDだけでなく、HEMORR2HAGES、 ATRIA、 ORBIT 、ABCの各スコアを網羅しています。
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急性脳梗塞、脳出血後の抗凝固療法についても詳細な投与方法示されています(これは後日熟読したらアップします)。

急性冠症候群時PCI後の抗血栓療法は、
1)低出血リスク例:トリプル(OAC+DAPT)6ヶ月⇨デュアル(OAC+抗血小板薬1剤)6ヶ月⇨1年後以降はOAC単独
2)高出血リスク例:トリプル(OAC+DAPT)1ヶ月⇨デュアル(OAC+抗血小板薬1剤)1年後まで⇨1年後以降はOAC単独
*1年後以降、冠動脈病変が高リスクの場合はアスピリンかクロピドグレルどちらか併用
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待機的PCI後の抗血栓療法は、
1)低出血リスク例:トリプル(OAC+DAPT)1ヶ月⇨デュアル(OAC+抗血小板薬1剤)6ヶ月まで⇨6ヶ月後以降はOAC単独
2)高出血リスク例:トリプル(OAC+DAPT)1ヶ月⇨デュアル(OAC+抗血小板薬1剤)1年後まで⇨1年後以降はOAC単独
*1年後以降、冠動脈病変が高リスクの場合はアスピリンかクロピドグレルどちらか併用
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待機的OCIの場合トリプルは1ヶ月でいいのですね。またほとんどの場合で1年後はOAC単独(冠病変によっては抗血小板薬1剤追加)です。

堅固な石垣を土台とした壮麗な城のような趣(褒めすぎか)ですね。ただ作成方法は完全なGRADE準拠ではなさそうですし、COIが明示されていないように思いました(見落とし?)。
末尾にサマリー17ポイントを記載されているのもありがたいです(これも後日検討)。

追伸:それにしても良い世の中になったものです。学会というのは参加できるセッションは自分が興味あるものばかりになるので,その分野の見聞だけは深まりますが,全体の俯瞰はできにくいですね。一方ネットが普及したので(とくにESCはそうですが),部屋に居ながらにして学会全体のトピックスを俯瞰することができます。特定の分野の深い見識を得たいなら学会参加,広い見識を得たいならむしろネットのほうが良いかもです。
by dobashinaika | 2016-08-28 17:48 | 抗凝固療法:ガイドライン | Comments(0)

アジアでは他の地域に比べワルファリンの管理レベル(INR)が低値:IJC誌

Vitamin K antagonist control in patients with atrial fibrillation in Asia compared with other regions of the world:Real-world data from the GARFIELD-AF registry.
Int J Cardiol. 2016 Aug 13;223:543-547


グローバルな心房細動の登録研究=GARFIELD-AFレジストリーから,アジアとその他の地域とのワーファリン管理の違いについてレポートされています。
13,541人の新規に診断された心房細動患者(アジア人37.8%,その他53.3%)で年間3回以上のPT-INR測定をしています。

結果は概ね次のとおりです。
1)アジア人のほうが若い:67.1歳vs71.3歳

2)CHA2DS-VAScスコアはアジアのほうが低い:3.0 vs 3.5

3)HAS-BLEDスコアは同じ:1.3 vs 1.4

4)平均INRはアジアのほうが低い:2.0 vs 2.4

5)TTR(INR2.0-3.0)はアジアで低レベル:31.1% vs 54.1%

6)INR2未満はアジアで多い:59.3% and 28.2%

7)INR3以上はアジアで少ない: 9.6% and 17.7%

8)年齢別(<65, 65-74, ≥75)に違いなし

結論としてINRの管理状況はアジアとその他と地域では違いがあるとしています。

### 日本のガイドラインが寄与していると思われます。これで出血や塞栓症のリスクが同じであれば,日本の管理方法の妥当性がグローバル試験においても示されることになります。今後のアウトカムの比較が大変興味深いですね。

$$$きょうのニャンコ
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by dobashinaika | 2016-08-24 19:01 | 抗凝固療法:リアルワールド | Comments(0)

抗凝固薬リアルワールド:NOACで最も大出血の少ないのは?多いのは?:TH誌

Real-world comparison of major bleeding risk among non-valvular atrial fibrillation patients initiated on apixaban, dabigatran, rivaroxaban, or warfarin A propensity score matched analysis
Thromb Haemost 2016; 116: Epub ahead of print: August 19, 2016


疑問:非弁膜症性心房細動患者で新たに抗凝固薬を開始した場合,出血リスクは薬剤によって差があるのか

方法:
・米国メディケアのデータベース使用
・18歳上,非弁膜症性心房細動,新規の抗凝固薬(エドキサバン含まず)投与患者,2012年1月〜2014年12月,投与1年以内
・年齢,性別,地域,合併症,併存治療で補正
・アウトカム:大出血

結果:
1)全45,361人:ワルファリン34.1%,アピキサバン16.4%,リバーロキサバン39.2%,ダビガトラン10.3%

2)大出血発症ハザード比(対ワルファリン):アピキサバン0.53(0.39〜0.71),ダビガトラン0.69(0.50〜0.96),リバーロキサバン0.98(083〜1.17)

3)NOAC間ではリバーロキサバンがアピキサバンに比べて明らかに大出血率が高い:ハザード比1.82(1.36〜2.43)

4)対ダビガトランではアピキサバン,リバーロキサバンとも有意差なし
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結論:リアルワールドセッティングでは,アピキサバン,ダビガトランはワルファリンに比べて大出血は明らかに少ない。アピキサバンに比べ,リバーロキサバンは明らかに大出血リスクが高い。

### Lip先生からの発信。ベースラインキャラですが,平均年齢はどの群も67〜70歳。CHADS2スコアは1.6〜1.9点,CHA2DS2-VAScスコアは2.6〜3.0点です。補正をかけていますので,年齢やスコア(HAS-BLEDスコアも含め)で大きな違いはないようです。

低用量処方の割合はアピキサバン2.5mgx2が13.%,ダビガトラン75mgx1(米国では110mgx2は認可されていない)が10.6%,リバーロキサバン15mgx1(米国では20,gは標準量)が19.%で,大半は標準量のようです。

大出血の内訳(頭蓋内か消化管からか)までは見えませんでした。

ええ,非常に貴重なデータであることは間違いありません。対ワルファリンに関してはリバーロキサバンだけワルファリンと大差ないということも含めRCTとほぼ同じでした。斬新なのは,プロペンシティースコアマッチングとはいえ,NOAC同士を比べている点です。今までガチンコ勝負はなかったわけですが,言ってみればリアルワールドデータを使っての擬似ガチンコです。

同様の比較はデンマークからもでていますね。大出血の結果は同じような感じです。ここでは虚血性脳卒中はリバーロキサバンだけがワルファリンに勝っていました(NOAC同士の擬似ガチンコの記載はなし)。

統計学的には色いろあるかもしれませんが,出血を気にするのであればリバーロキサバンよりは他の2つのNOAC(しかもダビガトランは150mgx2でも)のほうが安全かもしれません。なんで脳卒中の方のデータが出ていないかわかりませんが(たぶんRCTと同じなのか,NOACどうしも差がつかなかったからか),リバーロキサバンのアドヒアランスの利点が大出血リスクを乗り越えられるのか,有効性の方のデータを待ちながらもうちょっと考えてみたいと思います。

$$$ 所用で大学病院に行った時の掲示。病院だと癒し系ポケモンが多いのでしょうか。
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by dobashinaika | 2016-08-23 23:20 | 抗凝固療法:リアルワールド | Comments(0)

心房細動に対するクライオ(冷凍凝固)アブレーション:日本初のマルチセンター登録研究

Safety and Efficacy of Cryoballoon Ablation for Paroxysmal Atrial Fibrillation in Japan – Results From the Japanese Prospective Post-Market Surveillance Study –
Circ J 2016; 80: 1744–1749

目的:日本における発作性心房細動がに対するクライオアブレーションの市販後成績を明らかにする

方法;
・市販後6ヶ月時点
・616人,平均年齢63歳,日本の33医療施設
・発作性心房細動の607例につき解析,特に328例では6ヶ月間の一次有効率を解析

結果;
1)肺静脈隔離成功:99.8%,ブランキング時期の再アブレーション:0.3%

2)6ヶ月間イベントフリー率:91.6%

3)有害事象
     横隔膜神経麻痺:9例1.5%。6例は6ヶ月以内に回復
     心嚢液:5例0.8%
     心タンポナーデ:4例0.6%
     死亡:1例,肺炎,手術後6日

結論:クライオアブレーションは,日本の発作性心房細動患者に対して安全かつ有効である。手技後6ヶ月間の心房細動フリー率は88.4%だった。

###
メドトロニック社製の第2世代のクライオバルーンに関する,日本で初めてのマルチセンター登録研究です。6ヶ月間のフォローですが,いいようですね。

グローバルな無作為化試験についてはこちら
http://dobashin.exblog.jp/22897794/

$$$ 七夕の竹を使った送り火です。お盆が終われば秋が足を早めて忍び寄ります。
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by dobashinaika | 2016-08-18 22:28 | 心房細動:アブレーション | Comments(0)

心房細動例の死亡原因1位は心不全の30%,脳卒中は8%:Lancetより

Occurrence of death and stroke in patients in 47 countries 1 year after presenting with atrial fibrillation: a cohort study
Lancet Published Online: 08 August 2016

目的:世界全体での心房細動の長期予後について解析

方法:
・世界47カ国において心房細動/粗動で病院救急外来を受信した15400例対象
・一次アウトカム:受診1年後の死亡及び脳卒中
・北米,西ヨーロッパ,オーストラリアをレファレンスとした
・2007〜2011年登録

結果:
1)1年死亡率:11%

2)心房細動が主診断例のほうが,二次的な心房細動例に比べ死亡率が少ない(3%vs16%,p<0.0001)

3)南米とアフリカは北米,ヨーロッパ,オーストラリアに比べ死亡率大(17%,20%vs10%,p<0.0001)

4)死亡原因:1位心不全30%,2位脳卒中8%

5)死亡の4%は1年以内

6)1年以内死亡率も二次的心房細動のほうが多い

7)脳卒中順位:1位アフリカ8%,2位中国,東南アジア7%,最低インド1%未満

8)北米,西ヨーロッパ,オーストラリアの脳卒中率は3%

結論:心房細動例の脳卒中と死亡率は地域間で大きな,臨床的な変数では説明の付かない差異がある。心不全による死亡抑制が心房細動治療の大きな優先事項になるべき。

### 全世界的に見ても心房細動の死亡原因は心不全であって,脳卒中ではないということですね。抗凝固療法の普及の他に,地域格差の原因としては,医療水準や教育経済的格差など様々な要因があるのでしょう。

やはり心房細動治療も,抗凝固時代から心不全最優先時代に入ってきたと言っても良いと思われます。

$$$ ときどきうちの庭をゆうゆうと散歩するネコ。鼻をブーブー鳴らしていましたが,最近治っているようです。
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by dobashinaika | 2016-08-15 22:59 | 心房細動:リアルワールドデータ | Comments(0)

DOAC(直接経口抗凝固薬)の使い方,シンプルな使い分け10のポイント:Heart誌より

例によってACCのメルマガからです。
Heart誌の「DOACに関する実戦的マネジメントアプローチ」を10のポイントにまとめてくれています。
非常に簡潔ですので,プライマリ・ケアの場ですぐ使えると思います。

(原文)
Direct oral anticoagulants: unique properties and practical approaches to managementHeart doi:10.1136/heartjnl-2015-309075

(まとめ)
Direct Oral Anticoagulants: Practical Management Approaches
Debabrata Mukherjee, MD, FACC


1)2009年以来DOACは静脈血栓塞栓症と非弁膜症性心房細動の治療薬として紹介されてきた

2)Xa阻害薬(アピキサバン,エドキサバン,リバーロキサバン),直接トロンビン阻害薬(ダビガトラン)はワルファリン
の代替薬として登場し,いまや静脈血栓塞栓症と心房細動の第一選択薬

3)ある状況下での抗凝固薬の選択は,薬物動態とRCT及びリアルワールドデータを元になされる

4)ワルファリンが良い場合:機械弁(DOACは禁忌),高度腎機能低下(CrCL15未満)
5)あるDOACが良い場合;
中等度腎機能低下:Xa阻害薬(アピキサバン,エドキサバン,リバーロキサバン)
脳塞栓症リスクが高い場合(CHA2DS2-VAScスコア5,6点):ダビガトラン150(RCTで唯一虚血性脳卒中を減らした)

6)高出血リスク:アピキサバン,エドキサバン,ダビガトラン110(いずれもRCTでワルファリンより出血が少ない)

7)1日1回を好む患者;エドキサバン,リバーロキサバン

8)静脈血栓塞栓症(外来,単一薬剤):アピキサバン。リバーロキサバン(ダビガトラン,リバーロキサバンのように低分子ヘパリンによる5〜10日の前投薬いらない)

9)多くの患者では,定期的,継続的な腎機能モニターが必要。各DOACは多かれ少なかれ腎排泄あり。用量設定にも腎機能測定は必須

10)最適な抗凝固薬選択及び安全な長期的管理を目指すためには,患者と医師とで教諭された意思決定が不可欠であり,それこそが高品質で患者中心の抗凝固ケアに繋がる

### EHJなどヨーロッパ系の雑誌のまとめよりはだいぶシンプルでわかりやすいです。

・ワルファリンは機械弁か高度腎機能低下例
・ある程度の腎機能低下例はXa阻害薬
・脳塞栓症高リスク例はダビガトラン150
・高出血リスク例はアピキサバン,エドキサバン,ダビガトラン110
・1日1回がいい場合はエドキサバン,リバーロキサバン
・外来での静脈血栓塞栓症にはアピキサバン,リバーロキサバン


で,異論はあるかもしれませんが,シンプルで現実的な選択基準に感じられます。

私は最近はもっと単純で1日1回がいいか2回でもいいかを聞いて,1回を強く希望するときはエド,かリバーロ。そうでなければ腎機能良好ならダビ110,低下または消化器症状,消化器疾患ありならアピにしています。そんなに薬品を置けないという場合は,1日1回のもの,2回のもので好きなものをそれぞれ1個ずつ。1つくらいしか在庫できない場合はもうお好みで良い,という感じで良いと思っています。

腎機能だけには必ず注意していればです。

$$$
遅ればせながら,ことしの仙台七夕。ジョジョ七夕が個人的なお気にでした。七夕すぎればこちらはもう朝晩涼しげです。
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by dobashinaika | 2016-08-11 22:52 | 抗凝固療法:比較、使い分け | Comments(0)

左房径>45mmは心房細動脳塞栓の予測因子:Fushimi AFレジストリーより

Left atrial enlargement is an independent predictor of stroke and systemic embolism in patients with non-valvular atrial fibrillation
Sci Rep. 2016 Aug 3;6:31042. doi: 10.1038/srep31042


疑問:左房径は心房細動塞栓症の予測因子となるのか

方法:
・Fushimi AF レジストリー登録患者のうち2015年までにベースラインで心エコーを施行した2713例対象
・左房径45mm超の群(左房拡大群)とそれ以下の群とで,背景やイベント発生率を比較
・平均追跡期間976.5日

結果:
1)左房拡大群は全体の39%

2)拡大群ほど:高齢,心房細動持続期間が長い,非発作性が多い,CHADS2/CHA2DS2-VAScスコア高値,抗凝固薬使用多い

3)脳卒中/全身性塞栓症発症リスク(拡大群,対比拡大群):
      全コホート1.92(95%CI:1.40〜2.64;p<0.01)
      抗凝固薬使用例 1.97(95%CI:1.18〜3.25;p<0.01)
      抗凝固薬非使用例 1.83(95% CI: 1.21-2.82; p < 0.01)
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4)CHA2DS2-VAScスコア,抗凝固薬使用で補正後 1.74 (95% CI: 1.21-2.82; p < 0.01)

結論:左房拡大は心房細動の大規模コホートにおける脳卒中/全身性塞栓症発症率の独立予測因子

### 左房径は直感的に考えれば,大きいほど左房内血流の遅延をきたし,左心耳血栓が増え,心原性脳塞栓の予測因子として確実のように思われますが,これまでのスタディーでは予測因子にはならないとするものも多数ありました。

測定方法が均一でない,左房容積や左房内血流を必ずしも反映しない,抗凝固薬使用例を対象とした研究が多い,などの因子が影響するようですが,最近は,以下のブログなどもそうですが,やはり予測因子として考えられそうという研究が増えていました。
http://dobashin.exblog.jp/13511523/

今回はあのFushimi レジストリーの日本人多数例での綺麗なデータであり,抗凝固薬使用の意思決定の上で大変参考になります。

CHADS2スコア1点でやや若くて,血圧もしっかり管理されているような例などで抗凝固開始に迷いますが,そんなとき参考にしたいと思います。

CHADS2,CHA2DS2-VAScの予測精度が上がるのか,ROC曲線だと45mmがやはり最適なのか,追加の検討が楽しみになります。

$$$ 本日大収穫祭り! このところ毎日見にトマトとナス三昧です。
by dobashinaika | 2016-08-09 22:37 | 抗凝固療法:適応、スコア評価 | Comments(0)


土橋内科医院の院長ブログです。心房細動やプライマリ・ケアに関連する医学論文の紹介もしくは知識整理を主な目的とします。時々日頃思うこともつぶやきます。


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