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2015年,心房細動関連論文ベスト5

こちらはケアネットにも公開したオフィシャルな?ベスト5です。

例年通り,世の中へのインパクトではなく,私およびプライマリ・ケア医の「現場に直接影響がある」という視点で選んでいます。

第5位;薬剤師の介入によるダビガトランのアドヒアランスの改善
Supriya Shore et al: Site-Level Variation in and Practices Associated With Dabigatran Adherence. JAMA. 2015;313(14):1443-1450
http://dobashin.exblog.jp/21124661/
その後の当院での抗凝固薬管理に大きな影響を与えた論文です。診療所の外来においても,医師だけでなく多職種で構造的,包括的に疾病を管理する視点を再確認しました。

第4位:日本の医療施設における新規経口抗凝固薬服用中の頭蓋内出血の特徴
Naoki Saji et al: Intracranial Hemorrhage Caused by Non-Vitamin K Antagonist Oral Anticoagulants (NOACs) – Multicenter Retrospective Cohort Study in Japan –. Curculation Journal 2月20日
http://dobashin.exblog.jp/20931826/
日本の脳血管疾患専門施設のリアル・ワールドデータで大変貴重です。日本のNOAC内服下での頭蓋内出血は従来の報告や諸外国の登録研究と比べても軽症であることが示されています。

第3位:多発する心房期外収縮は脳梗塞と関連あり
Bjørn Strøier Larsen et al: Excessive Atrial Ectopy and Short Atrial Runs Increase the Risk of Stroke Beyond Incident Atrial FibrillationJ Am Coll Cardiol. 2015;66(3):232-241
http://dobashin.exblog.jp/21672961/
時々出会う心房期外収縮多発例。やはり注意が必要。

第2位:NOACのリアル・ワールドにおける消化管出血リスク
Comparative risk of gastrointestinal bleeding with dabigatran, rivaroxaban, and warfarin: population based cohort study
BMJ 2015; 350 doi: http://dx.doi.org/10.1136/bmj.h1857
http://dobashin.exblog.jp/21195302/
とくに高齢者では先行発売されているNOACの消化管出血に要注意ということをしっかりと押さえておくべきということだと思われます。

第1位:心房細動患者の手術時ヘパリンブリッジの血栓塞栓率は非施行群と同じ。出血は多い
James D. Douketis et al:Perioperative Bridging Anticoagulation in Patients with Atrial Fibrillation. NEJM June 22, 2015
http://dobashin.exblog.jp/21378213/
この論文のインパクトは大きかったと思われます。これまで当たり前のように,疑いもせずに行ってきた治療の中,いかにエビデンスに乏しく検証されていないものが混じっているか,改めて考えさせられます。

次点(順不同)
心房細動脳卒中の生存期間は1.8年(中央値):Neurology誌
http://dobashin.exblog.jp/21346427/

日本の85歳以上心房細動患者の脳卒中発症率は85歳未満より高いが大出血率は同じ:chest誌
http://dobashin.exblog.jp/21477250/

ワルファリンを適正に管理すれば85歳以上でも安全かつ有効:J-RHYTHMレジストリーサブ解析:CJ誌
http://dobashin.exblog.jp/21610935/

心房細動関連脳卒中の5年生存率は39%:Stroke誌
http://dobashin.exblog.jp/21764539/

日本の大規模コホートでは心房細動のイベント予測因子はCHADS2スコアとやや違う:PLOS one誌
http://dobashin.exblog.jp/21820445/

NOAC導入時の出血、血栓塞栓イベントはワルファリンと有意差なし:Circ誌
http://dobashin.exblog.jp/21480675/

心房細動患者の脳卒中リスク予測はATRIAスコアが最適:JACC誌
http://dobashin.exblog.jp/21893263/


次点が多くてすみません^^

NOAC(DOAC)のリアルワールドデータが出てきて,どのようなときに注意したら良いかの全貌が明らかになってきた感があります。

そんな中で,今後はますます認知症,フレイル,多職種共同,multimobidityと言ったキーワードが軸になっていくように思います。

日々論文を追っていくと,それまで日常的に行ってきた医療行為への信頼性が大きく揺らぐ瞬間出会ったりします。こうした出会いがエビデンスを読み解く楽しみでもあります。

今年1年ご愛読ありがとうございました。来年もよろしくお願い申し上げます。
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by dobashinaika | 2015-12-28 21:22 | 心房細動診療:根本原理 | Comments(0)

2015年,心房細動関連私的お気に入り論文ベスト7

引き続き2015年心房細動関連論ベストです。
今回は「私的ベスト7」です。
医学全体への寄与度というよりも,個人的な好みで選んでいます。番号は便宜上のもので順位ではありません。

1.薬(心血管系薬剤)を飲みたくない理由:NEJM誌
http://dobashin.exblog.jp/20693106/
薬を拒否する患者心理についての考察です。だいたい薬が嫌な理由として以下のような点が挙げられています。どれもなるほどと思いますね。
・リスク(可能性)は大きく、ベネフット(確率)は小さく見積もられやすい
・「薬=化学物質はとりたくない。自然のものは良い」という感情
・手術やカテーテルでもう治ってしまったという錯覚
・薬を飲んで一時症状(や検査結果)が良くなったのでやめられる
・医者に行きたくないのでやめる
・「病人」というレッテルをはられたくない
・飲むと依存症になってしまう
・薬はコントロール出来ないものである→薬でなくてダイエットや運動のみで治したいという願望

2.不適切なポリファーマシーを減らす:Deprescribing=減処方のプロトコール:JAMAIM誌
http://dobashin.exblog.jp/21082119/
すっかりトピックになったポリファーマシー。わかりやすく5ステップで論じています。
1.全薬剤のリストアップと処方理由の確認
2.各薬剤の有害事象がどのくらい起きやすいかを考える
3.中断が妥当かどうかを考える
4.中断の優先順位付けをする:利益と害、中断しやすさ(リバウンドのなさ)、患者の希望
5.実際のプラン作成とモニタリング

3.コーヒーは少なくとも心房細動リスクを上げることはない:BMC Medicine 誌
http://dobashin.exblog.jp/21721111/
これもすっかりトピックになたカフェインですが,最近は心房細動予防に良いとの報告もあります。「○○が体に良い」かどうかの判断は必ず,用量がどのくらいかを抑えるのがポイントと思われます。

4.日本の患者は、抗凝固薬による出血を米国の患者ほど怖がらず,医師が考えるよりも寛容
http://dobashin.exblog.jp/21322421/
そうかなという気もしますが,医師の指示に従順であるということかもしれません。

5.心房粗動でも心房内血栓は少なくない:Europace誌
http://dobashin.exblog.jp/21302208/
これは実臨床にもかなり役立ちます。粗動はどうするか,は勉強会などで常に出る質問ですね。

6.心房細動に対する代替療法ーヨーガ、鍼、バイオフィードバックなどの総説:JTD誌
http://dobashin.exblog.jp/20897810/
代替療法も様々ですが,自律神経活動への関与度がキーかと思われます。

7.老人ホーム入居中の超高齢者への抗凝固療法:J Am Geriatr Soc誌
http://dobashin.exblog.jp/20790498/
老人ホーム入居中の超高齢者コホートでの心房細動有病率は高く,抗凝固薬処方率は高リスクにもかかわらず50%未満とのこと。ADL/IADLの低い人の脳塞栓予防をどう考えるか,これ医療というより倫理の問題です。

$$$一足早く年越しぞば。ここは有名なお店ですね。
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by dobashinaika | 2015-12-28 21:05 | 心房細動診療:根本原理 | Comments(0)

2015年,読んでおきたい心房細動関連総説ベスト10

今年も残り少なになりました。
恒例の心房細動論文年間ベストをお送りいたします。
今年は「総説」「個人的興味」「論文」の3分野に分けました。

まずは「総説」です。総説は順不同,順位はつけませんでした。

低リスク患者への抗凝固療法:TH誌
http://dobashin.exblog.jp/21069926/

ヨーロッパ心血管プライマリケア学会の心房細動脳卒中予防ガイドライン:EJPC誌
http://dobashin.exblog.jp/20937030/

抗不整脈療法に関するコクランレビュー
http://dobashin.exblog.jp/21072872/

Lip先生による心房細動における脳卒中予防に関する総説:JAMA誌
http://dobashin.exblog.jp/21251595/

抗凝固薬でこれだけはチェックしておきたい6項目:AIM誌
http://dobashin.exblog.jp/21431298/

認知症と心房細動に関する総説:JAHA誌
http://dobashin.exblog.jp/21526867/

高齢者の抗血栓療法総説;EHJ誌
http://dobashin.exblog.jp/21447635/

NOAC使用の実践的ガイド:特に抗血小板薬との併用について:Europace誌
http://dobashin.exblog.jp/21607875/

心房細動管理の質向上に関するロードマップ;Europace誌
http://dobashin.exblog.jp/21780051/

NOAC中和薬に関する批判的吟味と推奨:ESCポジションペーパー:EHJ誌
http://dobashin.exblog.jp/21993712/

蛇足(ながら実は最重要)
ジギタリスが生命予後に及ぼす影響に関するシステマティックレビュー&メタ解析2題
http://dobashin.exblog.jp/21600728/
http://dobashin.exblog.jp/21197269/

このブログを読めば,一応心房細動の今がわかる?そうでもないかw

$$$こうしたいものですね
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by dobashinaika | 2015-12-27 21:59 | 心房細動診療:根本原理 | Comments(0)

NOAC中和薬に関する批判的吟味と推奨:ESCポジションペーパー

ESCの心血管薬物治療部門と血栓部門の合同ポジションペーパーがEHJに掲載されています。

Reversal strategies for non-vitamin K antagonist oral anticoagulants: a critical appraisal of available evidence and recommendations for clinical management—a joint position paper of the European Society of Cardiology Working Group on Cardiovascular Pharmacotherapy and European Society of Cardiology Working Group on Thrombosis
Alexander Niessne et al
Euro Heart J DOI: http://dx.doi.org/10.1093/eurheartj/ehv676 ehv676 First published online: 24 December 2015


コンセンサス ステートメントとキーの図で勉強します。

<コンセンサス ステートメント>
・中和薬の効果モニターには,一般的な指標ではなく,各NOACNに特異的なマーカーを用いるべき:aPTT, PT,抗Xa因子活性

・凝固因子集合体製剤は致死的出血,緊急手術時,全身性凝固疾患に使用

・特異的な凝固因子集合体は優位性は証明されていない

・プロトロンビン複合体製剤は生来の血栓リスクに基づけばrFVIIaよりも好ましい

・Idarucizumabはダビガトランの中和作用を認めた最初の薬剤で,EMAとFDAで認可された

・Andexanet alfaは直接的,間接的FXa抑制に対する効果があり,これまで健常者への試験では成功している

・Ciraparantag (PER977)はダビガトランの場合と同様,直接的,間接的FXa抑制を中和する

・第I相試験においてCiraparantag (PER977)は安全で忍容性があった

・行政機関に認可された場合,中和薬は致死的出血や緊急手術に使用が限られる

・NOACの中断は止血機構の改善が期待される上記以外の場合には十分な措置である

・中和薬の効果は比較試験でのみ評価される以外ない

・NOACの中和薬にはもともとプロトロンビン生成能はないため,プロトロンビンリスクを伴う突然の抗凝固薬中止は血栓塞栓症を誘発することが知られている(第III相試験)

・抗凝固薬の再投与時期はネットクリニカルベネフィットの上で重要である
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### 現在ダビガトランにはIdarucizuma,他のXa阻害薬にはAndexanet alfaとCiraparantag (PER977)が開発中です。あくまで致死的出血や緊急手術時に用いるべきで,その際のモニターは特異的な指標(抗Xa活性など)を用いるべきとのことです。

以上おさらい。

$$$ おのくん発見
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by dobashinaika | 2015-12-26 23:40 | 抗凝固療法:中和方法 | Comments(0)

ワルファリンからNOACへの切り替時,出血リスク上昇は認められず:Lancet-H誌

Risk of bleeding and arterial thromboembolism in patients with non-valvular atrial fibrillation either maintained on a vitamin K antagonist or switched to a non-vitamin K-antagonist oral anticoagulant: a retrospective, matched-cohort study
Kim Bouillon et al
Lancet Haematol. 2015 Apr; 2(4):e150-9.


疑問:ワルファリンからNOACへの切り替え時,脳卒中リスクはどうなるのか?

P:French health-care databases登録例のうち,非弁膜症性心房細動を有しVKAを処方されている患者

I:VKAからNOAC(ダビガトラン,リバーロキサバン)への切り替え例

C:VKAのままの例

O:出血(頭蓋内,消化管,その他)

T:matched-cohort study(年齢,性別,PT-INRで補正)

結果:
1)17410例;切り替え群6705例,VKA群10705例

2)平均75歳,女性48%,NOAC切り替え前期間平均8.1ヶ月,平均追跡期間10.0月

3)出血率:切り替え例99例(1%)vs. VKA例193例(2%),p=0.54

4)多変量解析後の切り替え例のハザード比:0.87(0.67-1.13), p=0.30

5)ダビガトランとリバーロキサバンで有意差なし

解釈:VKAからNOACへの切り替えによる出血リスク上昇は見られず。さらなる研究を。

### 4月の論文ですが,何故か今頃流れてきたので目を通しました。

VKAからNOACへの切り替え時は両者がだぶる時間が存在するので,INRに気をつけていても思わぬ出血が懸念されるわけです。実際ROCKT-AF試験などでもワルファリン経験者の出血がやや多くなっているとの報告もあります。
http://dobashin.exblog.jp/17994981/

おそらく上手に切り替えればトラブルは少ないのでしょう。

ただ,この研究で主治医がNOACに切り替える理由は不明ですが,実際NOACに切り替えたくなる症例は,ワルファリンコントロールの悪い症例などが多く,そうした例は出血リスクも多いことが予想されます。

当院ではTTR70%未満の症例で,禁忌でない場合や抗血小板薬2剤併用でない例にNOAC切り替えの方針でずっとやって来ましたが,前にも述べましたようにこのやり方は非常にアウトカム良好です。

注意点としてはやはり切り替えのタイミングですが,うちでは切り替えると決めた時のINRが1.6に近い(1.7〜1.9くらい)の時は0.25mg/日を減らし3日後に来てもらっています。2.0以上の時は0.5mg〜1.0mg減量して3日後受診としています。これでだいたい1.4〜1.5に下がっています。出血や梗塞は今のところゼロです。

$$$ 老舗,熊谷屋さんのクリスマス特性和菓子。ツリーとトナカイは売り切れていました。
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当院玄関のツリー。もう少し飾っておきます。
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by dobashinaika | 2015-12-24 21:49 | 抗凝固療法:リアルワールド | Comments(0)

ケアネット「2015心房細動関連論文ベスト5」更新いたしました。

ケアネット連載 〜Dr. 小田倉の心房細動な日々~ダイジェスト版~更新いたしました。

今回は年末恒例の「2015心房細動関連論文ベスト5」です。
今回のものはいつもどおり,「実臨床に生かせた」ことを基準に選んでいます。
総説,次点,おもしろ論文などを加えたベスト版は当ブログで,年末ギリギリに発表する予定です。
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http://www.carenet.com/series/afjournal/cg001089_0047.html?keiro=index
(要無料登録)
by dobashinaika | 2015-12-22 21:56 | 心房細動診療:根本原理 | Comments(0)

プライマリ・ケア医と専門医とのコラボで抗凝固療法の質が向上:BMJ Ope

Primary Care Atrial Fibrillation Service: outcomes from consultant-led anticoagulation assessment clinics in the primary care setting in the UK
Moloy Das et al
BMJ Open 2015;5:e009267


背景:抗凝固療法適応者で実際服用しているのは半数以下。英国における高リスク心房細動患者の抗凝固薬服用向上のためのプライマリ・ケアAFサービス (PCAF)に関するアウトカムを確立するのが本研究の目的

方法:
・PCAFサービスはジェネラリストの診療の中に専門医のリソースを供給する新しい協同的パスウェイ
・CHA2DS2-VAScスコア1点以上の高リスク例を同定するための4フェイズのプロトコールあり
・地域のGPと共同してのコンサルタント誘導型の抗凝固アセスメントを提供する
・PCAFサービス前後の抗凝固薬処方率と服薬コンプライアンスを評価

結果:
1)PCAFサービスは,56のGP,386624人(AFの2.1%)に施行。2012年6月〜2014年6月

2)1579人のハイリスクAF患者では適切でない治療:抗凝固薬なしまたはTTR低値

3)抗凝固薬適応でありながら抗凝固薬なし(1063例)例の開始時抗凝固薬:ワルファリン43%,NOAC57%

4)抗凝固薬を適切に使用している患者:56%から95%に上昇,p<0.0001

5)ワルファリンで不適切治療の患者の92%はNOAC変更に同意

6)抗凝固薬開始後の継続(平均195日):90%(8つの診療所)

7)以前の研究から外挿した結果,上記の治療不適切例において年間30〜35人の脳卒中を予防した計算

結論:高リスク例の系統的な同定とPCAFコンサルタント誘導型の診療所での紹介は地域の高リスク心房細動例に対する経口抗凝固薬を導入する。

### PACAFサービスの概要は以下のとおり

Phase 1:
・英国のプライマリ・ケアで広く使用されているThe PRIMIS+ AF Query Case Finder Set(自動入力ツール)を使用
・患者がそのセットに既に登録されているかどうかを確認し、されていなければGPが登録
・PCAFプロフェッショナル(専門ナースなど)が,AFなのかどうか,さらに検査が必要かを同定

Phase 2:
・The GRASP-AFツール使用
・PCAFプロフェッショナルがCHA2DS2-VAScスコア,抗凝固薬の禁忌,心房細動なのかどうかをチェック
・ワルファリンの場合TTRをチェック

Phase 3:
・PCAFクリニック受診2週間前に患者に通知し予約をとる
・通知にはクリニックでの診療のレビューや抗凝固薬のリスクベネフィットを同封
・1週間前に電話説明
・前日にさらに確認

Phase 4:
・コンサルタント循環器専門医または脳卒中専門医がGPとともに抗凝固療法を評価
・治療法をレビューし,NICEガイドラインに従い処方
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まあこれだけやればガイドライン通りの投薬ができ,処方継続率も上がらないわけ無いですねえ。パイロット的な取り組みと思われます。電子ツール,コンサルタント医師の配置,GPとのコラボ。どれもすぐには日本で普及するとは思えません。

ただ,将来の地域医療の形として,このコンサルタント医師と地域開業医とのコラボの形はある意味,理想かもしれません。今の日本でデフォルメして導入するとすれば,コンサルタント医師は地域の基幹病院の専門医または開業医で専門医の先生。GPは,心房細動らしき患者が来たらその基幹病院のサーバーに患者を登録し,治療法のアドバイスを受ける。2〜3ヶ月毎に治療状況につきコンサルタント医師から指導を受ける。

患者プライバシーの問題,保険点数の問題など,大改革が必要と思われますが,すべての分野(たとえば高血圧,糖尿病,脂質,認知症,骨粗鬆症など)においてこのようなシステムが構築できれば,地域の医療レベルは大ジャンプするかもしれません。夢のまた夢かもしれないけど

$$$ 仙台市医師会の広報誌「てとてとて」にどばし健康カフェのことが紹介されています。とってもよく書かれています^^
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by dobashinaika | 2015-12-21 22:36 | 抗凝固療法:全般 | Comments(0)

Xa因子阻害薬の中和薬Andexanet Alfaの臨床試験:NEJM誌

Andexanet Alfa for the Reversal of Factor Xa Inhibitor ActivityDeborah
M. Siegal et al
N Engl J Med 2015; 373:2413-2424


疑問:Xa因子阻害薬Andexanetの臨床試験成績はどうか?

方法:
・対象:アピキサバン5mgまたはリバーロキサバン20mg内服中の健常な高齢者
・2通りのAndexanet投与法:ボーラス,及びボーラス+2時間点滴
・アウトカム:平均の抗Xa因子活性変化率

結果:
1)アピキサバンへのボーラスによる抗Xa因子活性変化率:Andexanet(94%) vs.プラセボ(21%),P<0.001

2)非結合アピキサバン:Andexanet(9.3ng/mL) vs.プラセボ(1.9),P<0.001

3)トロンビン生成(2〜5分間):Andexanet(100%) vs.プラセボ(11%),P<0.00

4)リバーロキサバンへのボーラスによる抗Xa因子活性変化率:Andexanet(92%) vs.プラセボ
(18%),P<0.001

5)非結合リバーロキサバン:Andexanet(23.4ng/mL) vs.プラセボ(4.2),P<0.001

6)トロンビン生成(2〜5分間):Andexanet(96%) vs.プラセボ(7%),P<0.001

7)この作用はボーラス後の点滴で持続

8)一部の患者でDーダイマー,F1+2の上昇あり

9)重篤な副作用や塞栓イベント無し

結論:Andexanetはボーラス後数分でアピキサバンとリバーロキサバンの抗凝固活性を中和され,点滴でその作用は持続した。中毒所見はなかった。

### 一昨年,すでにFDAから「画期的薬剤」の指定(ブログはこちら)を受けていたXa中和薬の臨床試験結果です。薬理学的なアウトカムだけですが,テータ上は良好なようです。

$$$ 風邪治りかけでコンサートへ。ツィメルマンは1956年生まれ,円熟した芸術家にしか到達し得ない「域」というものがあることを痛切に感じました。
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by dobashinaika | 2015-12-19 22:58 | 抗凝固療法:中和方法 | Comments(0)

高齢者でワルファリンとSU薬の併用は低血糖リスク増加に関連:BMJ誌

Association between use of warfarin with common sulfonylureas and serious hypoglycemic events: retrospective cohort analysis
John A Romley et al
BMJ 2015; 351 doi: http://dx.doi.org/10.1136/bmj.h6223 (Published 07 December 2015)


疑問:ワルファリンはSU薬服用中の高齢者の低血糖リスクを増やすのか?

P : SU薬(グリメピリド又はグリピジド)が処方されている65歳以上の2型糖尿病患者(米国465918人)
I : ワルファリン併用あり;15,4%
C : ワルファリン併用なし
O : 3ヶ月間間の低血糖による入院または救急治療

結果:
1)ワルファリン群(0.071%) vs 対照群(0.048%);調整オッズ比1.22(1.05~1.42),P<0.01
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2)低血糖例は初めてワルファリンが処方されて例に多い

3)骨折による入院または救急治療 : ワルファリン群(0.94%) vs 対照群(0.53%);調整オッズ比1.47(1.41~1.54),P<0.001

4)意識/精神状態の異常 : ワルファリン群(0.60%) vs 対照群(0.37%);調整オッズ比1.22(1.16~1.29),P<0.001

臨床的意義:ワルファリン+SU薬併用と低血糖による入院/救急治療との間には明らかな正の相関あり。特にワルファリン初期投与でい多い。この所見は上記薬剤の相互作用の可能性を示唆する。

### ワルファリンはCYP2Cで代謝されますが,SU薬のほとんどがCYP2関連酵素で代謝されますので,競合によりSU薬の作用が増強することは教科書的に知られています。ただ,実際には報告も少なく,私自身はほとんど経験がありません。最近はほとんどSU薬を使わなくなったこともあるとは思います。上記のオッズ比もやや低値ですね。ただ,追跡期間が短いですし,多数例なので意義はあると思われます。

糖尿病関連ではジソピラミド,シベンゾリンなどのIa群抗不整脈薬がSU薬とよく似た分子構造を持っていて膵β細胞のK-ATPチャネルを抑制し血糖降下作用があることは有名です。こっちのほうが頻度は高く私も痛い目にあっています。

こういう大規模観察研究は,「どういう人に気をつけたらいいか」にヒントを与えてくれるものと理解した方がいいです。以前高齢者では出やすいという報告を見たことがあります。ワーファリンナイーブ患者で高齢者の場合,SU薬内服中の人には要注意と心得ます。

$$$ すっかりかぜを引いてしまい,声が出なくなりました。皆様に御迷惑をお掛けしておりますが,幸い今日は声が出てきて復活傾向です。
というわけで散歩休みで写真がないので,先日の盛岡での講演というか,おしゃべりの模様です。沢山の人に聴きにいらしていただきました。
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by dobashinaika | 2015-12-17 21:41 | 抗凝固療法:ワーファリン | Comments(0)

NOAC関連頭蓋内出血でも高い死亡率と転帰不良(ドイツの登録研究):JAMA-N誌

Early Clinical and Radiological Course, Management, and Outcome of Intracerebral Hemorrhage Related to New Oral Anticoagulants FREE ONLINE FIRST
Jan C. Purrucke et al
JAMA Neurol. Published online December 14, 2015. doi:10.1001


疑問:NOAC使用患者の場合,頭蓋内出血の発症初期の転帰やアウトカムはどうか

セッティング:
・前向き,研究者主導,多施設,観察研究
・診断,治療,中和薬投与は主治医の裁量
・ドイツの38施設
・NOAC使用下の頭蓋内出血連続61例,うち74%で血腫の拡大の有無を評価

アウトカム評価
・血腫拡大,脳室内出血,中和薬使用。発症3ヶ月のアウトカム,Rankinスコア,再出血,Graegスコア,大幅な血腫拡大(33%拡大または6mL以上増大)

結果:
1)NAOC使用下頭蓋内出血:女性41%,年生76.1歳,NIH脳卒中スコア平均10点

2)血腫容積23.7ml,大幅な血腫拡大:38%

3)新たなまたは増大する脳室穿破:18%

4)全死亡(3ヶ月):28%(17〜60%)

5)死亡例の57%はRankinスコア3〜6点の転帰不良例

6)プロトロンビン複合体製剤使用:57%:血腫拡大やRankinスコアには影響せず

結論:NOAC関連頭蓋内出血は高い死亡率とて不良を認めた。特異的中和薬の効果に関する大規模前向き試験が望まれる

### NOACの内訳はリバーロキサバン80%,ダビガトラン12%,アピキサバンと8%です。CHA2DS2-VAScスコア平均5点,HAS-BLEDスコア平均2点でした。

ディスカッションにありますが,NOACでの血腫容積や部位は従来のワルファリンの報告とあまり大差なかったとのことです。また血腫増大も11/3に認め脳室穿破もワルファリンと同程度だったとのことです。

日本からの多施設登録研究とは異なる結果でした(こちら参照)
日本の方は,出血患者の平均年齢77.3歳でドイツとほぼ同じ,死亡率は11.5%,血腫拡大は17%といずれも今回のドイツより少ない値です。

単に対象の違いか,出血後の治療の問題か不明ですが,NOACでも油断はするな,という教訓として受け止めたほうが良いと思います。

$$$ 仙台もこんな季節
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by dobashinaika | 2015-12-15 21:57 | 抗凝固療法:リアルワールド | Comments(0)


土橋内科医院の院長ブログです。心房細動やプライマリ・ケアに関連する医学論文の紹介もしくは知識整理を主な目的とします。時々日頃思うこともつぶやきます。


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治療 2015年 04 月号 [雑誌]

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感情で釣られる人々 なぜ理性は負け続けるのか (集英社新書)


幸福はなぜ哲学の問題になるのか (homo viator)


神話・狂気・哄笑――ドイツ観念論における主体性 (Ν´υξ叢書)

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