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心房細動の死亡率もアブレーションの再セッション率も社会経済的要因に規定される:IJC誌

Neighbourhood socio-economic status and all-cause mortality in adults with atrial fibrillation: A cohort study of patients treated in primary care in Sweden
Per Wändel et al
International Journal of Cardiology doi: 10.1016/j.ijcard.2015.09.027


目的:プライマリケアレベルの心房細動症例の全死亡率に及ぼす,近隣の人の社会経済的状態のインパクトを検討

方法:
・75のプライマリケア施設,45歳以上の心房細動性12,283例
・社会経済的状態(年齢,教育レベル,結婚,近隣の状態の変化,心血管系合併症,抗凝固療法,スタチン療法)

結果:
1)全死亡率は,近隣の人(男性)の社会経済的状態が最も低い層において,中間の層より有意に死亡率が高い:HR 1.49, 95% CI 1.13–1.96

2)死亡までの時間の速い層10%の死亡までの時間は,低い層(男性)において中間の層より1.45倍速い

結論:近隣のひとの心血管疾患やその死亡率の上昇に及ぼす影響は重要な臨床的健康的課題。政策決定者への一助となる情報である

### スウェーデンの研究ですが,近隣のひととはストックホルムでは周囲2000人,その他の地域では1000人位の集団を想定しいるようです。

健康に最も影響を与える因子は,食生活,運動,年齢などがすぐ思いつきますが,実は社会経済的要因が非常に大きいとはよく言われます。
例えばこの研究では,ワルファリンの使用は高レベル層で61.3%に対して低レベル層では49.5%と優位に低くなっています。もしNOACだったらかなりの差が出ることも予想されますね。

最近読んだ心房細動アブレーションのセカンドセッション施行に影響する因子は,「年齢(55歳以下)」と「高収入」だったとする研究もありました。
Trends and Predictors of Repeat Catheter Ablation for Atrial Fibrillation
Am Heart J


格差社会が顕在化すればするほど,ますます生涯に渡る累積医療費が高いこうした慢性疾患の予後が社会経済的な要因に左右される状況になるように思います。やっぱりNOACはもっとやすくなってほしい。

$$$ 今日はとある打ち合わせ。近所の老舗のお店。外が見えないほどの干し柿。いただきました。美味。
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by dobashinaika | 2015-10-29 21:48 | 心房細動診療:根本原理 | Comments(0)

DOACの大出血に関するメタ解析:EBMとは臨床家のパフォーマンスを豊かにさせる装置:ACP Journal Club

Review: In AF or VTE, direct oral anticoagulants reduce fatal bleeding compared with vitamin K antagonists
Alejandro Lazo-Langner et al
Ann Intern Med. 2015;163(8):JC2. doi:10.7326/ACPJC-2015-163-8-002


疑問:心房細動および静脈血栓症患者において,DOACはビタミンK阻害薬(VKA)に比べ大出血の死亡率に違いがあるのか

方法:
・組入基準:DOACとワルファリンの比較試験,低分子ヘパリン使用にかかわらず,心房細動と静脈血栓症。出血イベント1回以上
・除外基準:最近の股関節,膝関節置換術。抗血小板薬併用。
・アウトカム:致死的出血
・RCT11:AF5(平均年齢71),VTE6(平均年齢56)
・リバーロキサバンRCT4, ダビガトラン3,エドキサバン2,アピキサバン2

主要結果:
・DOACは致死的出血をVKAに比べて減らした
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結論:心房細動またはVTE患者では,DOACはVKAに比べて致死的出血を減少させる

コメント:
・筆者らは,現段階で中和薬がないにもかかわらず,VKAよりもDOACのほうが安全であることを示した
・DOACはヘパリンの有無にかかわらず,ワルファリンよりも50%致死的出血を減らした
・基本コンセプトは中和薬があることではなく,合併症が少ないこと
・この試験や他のメタ解析は,臨床家にDOAC使用について安心感を与える
・ただしAFとVTEでは対象患者に違いがあり,本メタ解析でその違いまでは明らかでない
・直接トロンビン阻害薬とXa阻害薬の違いも明らかではない
・臨床家は上記の違いを意識すべきであり,モニタリングが必要な場合があることも除外すべきではない
・アドヒアランス安定化と合併症同定のためのモニターが必要である
・臨床家は腎機能,特にクレアチニンクリアランスの低下に注意し,CCR30以下なら変更を考える

### ACP ジャーナルクラブからのDOACに関するメタ解析レビューです。
この論文読んでいませんでした。すみません。元論文はこちらです。
Caldeira D, Rodrigues FB, Barra M, et al.
Non-vitamin K antagonist oral anticoagulants and major bleeding-related fatality in patients with atrial fibrillation and venous thromboembolism: a systematic review and meta-analysis.
Heart. 2015;101:1204-11.


またここで引用されている同様のメタ解析も読んでいませんが,以下です。後日読みます。
Sardar P, Chatterjee S, Lavie CJ, et al.
Risk of major bleeding in different indications for new oral anticoagulants: Insights from a meta-analysis of approved dosages from 50 randomized trials.
Int J Cardiol. 2015;179:279-87.


もはやRCTからはDOACの安全性がワルファリンよりも優れていることに異論はないと思われます(一部消化管出血などの懸念はありますが)。
本メタ解析でもそのことが明確に示されていますが,そのことと,我々の実臨床における眼の前の患者さんの治療がどう結びつくかはまた別問題です。

エビデンスは「DOAC安全」だけれども,じゃあ全例DOACでいいのか。ACPジャーナルクラブが有益なのは単なるエビデンスの紹介ではなく,エビではこうなっているけれども,その先の実臨床にどう反映させるかまで考えさせてくれるところです。

コメントにあるように,エビデンスは全てを保証しません。実際にはエビ通りにいかないケースにたくさん遭遇します。筆者らは個々の患者さんごとに腎機能などをモニタリングし,DOAC同士の違いに気を使い,アドヒアランスと合併症に注意しながら管理せよとコメントしています。至言ですね。

エビデンスは,治療の大筋を示します。特にメタ解析の結果などは疾患マネジメントの理想形を示すものと言えます。しかし現実はカオスです。理想型からはみ出るケースに我々は思い悩みます。CCr30前後のケースはどうするか,DOACで皮下出血が派手に出る人はどうするか。字義通りのEBMが保証してくれない個別なケースには,我々のそれまで培った経験知や臨床知を駆使せざるを得ません。

こう考えてくるとEBMの役割とはなにかという大上段にまで思いが至ります。EBMとは一義的にはスタンダードの提示であるかもしれませんが,スタンダードが示されることによってそこから逸脱する例や小幅ながら重要なバリエーションみえてくる。そのバリエーションこそがわれわれの臨床の叡智を発揮させる場でもあるのです。エビデンスとは規範である。しかし規範が提示されることで,そこからのバリアンスがまた白日のもとに晒され,臨床的パフォーマンスを発揮できる場がさらに明確になる。

EBMとは,逆説的な意味で臨床家のパフォーマンスを豊かにさせる装置でもある。今更ではありますがこのジャーナルクラブはそんな気にさせてくれます。

追記:ACPはNNTを算出してくれるのもありがたい。DOACのワルファリンに対する大出血でのNNTは419です。419人にDOACを処方するとワルファリンに投与するよりも1人,致死的出血が少なくなるということですね。この数字をどう感じるか。。。

$$$ 今日は暖かでした。ご近所ではまだ朝顔や柿が元気です。
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by dobashinaika | 2015-10-28 22:13 | 抗凝固療法:全般 | Comments(0)

心房細動管理の質向上に関するロードマップ;Europaceより

EHRA(欧州不整脈学会)から心房細動管理の質向上に関するロードマップが出ています。

A roadmap to improve the quality of atrial fibrillation management: proceedings from the fifth Atrial Fibrillation Network/European Heart Rhythm Association consensus conference
Paulus Kirchhof1,2,3
Europace doi:10.1093/europace/euv304


2015年1月にニースで行われた「心房細動ネットワーク/EHRAコンセンサスカンファランス」で提唱されたもので
1)隣人から学ぶ
2)患者中心のアプローチ
3)構造的ケア
4)管理の質の向上
5)個別化された管理

に焦点が当てられています。

同学会が提唱する概念は,これまでも非常にプライマリ・ケア目線で以前から注目しておりましたが,その集大成ともいうべきものかと思います。
全文読んでご紹介したいところですが,まずは抗凝固療法の質向上のためのクライテリアが示されています。
その肝である「推奨」と表4について訳してみます。

<脳卒中予防の質の定義と向上>
推奨:
1)抗凝固薬が必要なすべての患者はNOACにアクセスすべき。NOACが適していなければVKA

2)患者に治療の必要性を理解させ,アドヒアランスの向上を図るために,構造的フォローアップが勧められる

3)心房細動関連脳卒中患者は特別なにう卒中ユニットで管理されるべき

抗凝固療法の質のクライテリア:
1)個別化されたリスク管理
・CHA2DS2-VAScスコア評価
・出血リスク評価と最小化
・血圧管理
・不必要な抗血小板薬,NSAIDの中止
・過度なアルコール摂取の減量カウンセリング
・抗凝固薬選択前のクレアチニンクリアランス評価

2)リスク因子(CHA2DS2-VAScスコアなど)に基づくガイドラインに準拠した抗凝固薬処方
・TTR>65%ならVKA継続

3)意思決定
・意思決定の個別化アプローチ
・抗凝固薬内服決定に関する患者の希望を把握しフォローする(患者,医師,近親者からのインプット)

4)抗凝固療法サポート
・抗凝固薬に特異的な情報(口頭,図,文書)
・患者の理解度のチェック:量,回数,食前後,副作用,服薬中止するとどうなるか(脳卒中)
・TIA/脳卒中の警告症状のチェックと知識確認:FAST(Face, Arm, Speech, Time),およびこうした症状が出たとき救急車要請につき説明
・文書(パンフ)を渡す
・患者の希望と理解力に応じた情報

5)ケアの提供者
・医師,看護師,薬剤師,他のヘルスケア職,「専門家である」患者,それらの組み合わせ
・コンサルテーションの専門性を持ったナース
・臨床上の決定(アルゴリズム)を補助するソフトウエア
・VKA開始への介入

###まとめて言うと,
リスクを個別に評価(CHA2DS2-VAScスコアなどで)→
ガイドラインに基づく薬剤選択→
患者の希望を聞いた上での意思決定→
様々のツールを用いて抗凝固薬継続のためのサポート
多職種によるケア

ということになります。

また論文全体の思想のシェーマはこちらです。
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2013年にもコンセンサスがでていますが,今回はより包括的で,トレンドである患者中心性と多職種共同を意識した内容となっています。

それにしてもこれは,私などにとっては,非常にためになる。これから他の部分についても順次勉強していきます。

$$$ この週末は家庭医療,総合診療系の学習の場にずっと入り浸っていました。日曜朝は恒例の東京駅散歩。
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by dobashinaika | 2015-10-27 22:59 | 抗凝固療法:全般 | Comments(0)

10月31日どばし健康カフェ「認知症について,何でも語り合いましょう」です。

いよいよ1週間後に迫りました第6回どばし健康カフェ,まだお席に余裕がありますので,再度ご案内いたします。

今回のテーマは「認知症について,何でも語り合いましょう」

日時:10月31日(土)15:00〜(約2時間)
場所:土橋内科医院待合室(仙台市青葉区八幡2−11−8)


市民と医療従事者が垣根を超えて,健康・医療・福祉について気軽に語り合うカフェです。
以下のサイトから申し込み可能です。
どなたでも気軽に参加できます。お待ちしております!

http://www.kokuchpro.com/event/0a90026194db0958d496cf6857ccfcef/

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by dobashinaika | 2015-10-24 08:17 | 土橋内科医院 | Comments(0)

心房細動関連脳卒中の5年生存率は39%:Stroke誌

Rates and Determinants of 5-Year Outcomes After Atrial Fibrillation–Related Stroke
A Population Study
Derek T. Hayden et al
STROKEAHA.115.011139 Published online before print October 15, 2015


方法:
・アイルランドのコホート研究
・North Dublin Population Stroke Study
・心房細動患者の脳卒中5年生存率,再発率,後遺症,薬剤効果

結果:
1)568の新規脳卒中患者中心房細動関連脳卒中177例(31.2%)

2)虚血性脳卒中5年生存率:39.2%(31.5〜46.8)

3)5年生存率悪化の独立関連因子(ハザード比):
CHA2DS2-VAScスコア1.34,CHADS2スコア1.42,National Institute of Health Stroke Scale1.09,INR治療域(2.0)以下3.29

4)5年生存率改善の関連因子:
ワルファリン0.40,スタチン0.52

5)5年再発率:21.5%

6)再発率悪化の関連因子:
持続性3.09,CHA2DS2-VAScスコア1.34

7)ナーシングホームケアは25.9%で必要

結論:心房細動関連脳卒中は,非常に高い長期の死亡率,機能不全率,再発率,介護必要率に関連。国家的な診断と予防戦略が必要

### 日本の久山町研究でも,心原性脳塞栓例の1年生存率は50%程度,5年生存率は30%程度ですから同じような結果です。

各種がんに比較しても相当悪い予後ですね。ワルファリンがいいのはわかりますが,スタチンは意外かもしれません。
INR治療域以下もかなり良くない数字ですね。

改めて心原性脳塞栓の恐ろしさを感じます。

$$$ これは2週間前。この10月下旬というのは冬への助走期間。今どうなってるか明日見に行ってみます。
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by dobashinaika | 2015-10-22 21:50 | 抗凝固療法:リアルワールド | Comments(0)

ダビガトランのリアル・ワールドデータ2題;TH誌

ダビガトランのリアル・ワールドデータ2題
T/H誌からダビガトランのリアル・ワールドデータが2つでています。
ダビガトランに関しては,先行薬剤なのでこうしたデータが最近多く目につきます。

1つは米国バージニアの大学グループから
A comparison of the safety and effectiveness of dabigatran andwarfarin in non-valvular atrial fibrillation patients in a large healthcare system
Todd C. Villines et al
Thromb Haemost 2016 : -http://dx.doi.org/10.1160/TH15-06-0453


方法:
・US Department of Defense claims database
・2009〜2013年
・新規投薬例,ダビガトラン群vs. ワルファリン群(プロペンシティースコアマッチ)

結果:
1)両群とも12,793例。平均74歳,平均CHA2DS2-VAScスコア3.9点,平均HAS-BLEDスコア3.4点

2)以下のハザード比はダビガトラン群に有利:
脳卒中0.73[0.55–0.97],頭蓋内出血0.49[0.30–0.79],泌尿生殖器0.36[0.18–0.74],その他0.38[0.22–0.66],心筋梗塞0.65[0.45–0.95],死亡0.64[0.55–0.74]

3)以下のハザード比はワルファリン群と同等:
大出血0.87 [0.74–1.03],消化管出血1.13[0.94–1.37]

4)下部消化管出血はダビガトランで多い:1.30 [1.04–1.62]

結論:ダビガトランは脳卒中はじめ多くのアウトカムでワルファリンより良好。ただし下部消化管出血はダビガトランで多い。

もう一つはハーバード大学のグループから
Safety and effectiveness of dabigatran and warfarin in routine care of patients with atrial fibrillation
John D. Seeger et al
Thromb Haemost 2016 : -http://dx.doi.org/10.1160/TH15-06-0497


方法:
・2つの商業データベース
・新規投薬例,ダビガトラン群vs. ワルファリン群(プロペンシティースコアマッチ)

結果;
1)19189例,平均68歳,平均CHA2DS2-VAScスコア3.0点,平均HAS-BLEDスコア2.2点

2)各ハザード比:脳卒中0.77(0.54〜1.09),大出血0,75(0.65〜0.87)

3)75歳以上の脳卒中:0.57(0.33−0.97),6ヶ月以内の投与例:0.51(0.19-1.42)

4)55歳未満の大出血:0.51(0.30-0.87),CHADS2スコア2点未満:0.58(0.44−0.77)

結論:日常のケアにおいてはダビガトランはワルファリンよりも良好なアウトカムが得られた。

### 両論文ともベーリンガーインゲルハイム社がFinancial supportをしています。

やや結論が違いますがはじめの論文のほうが高齢で高リスクを扱っています。両論文ともかなりいい数字です。保険のデータベースを使ってるようなのでワルファリンのTTRまでわかりませんでしたが,ワルファリン群の治療はどうだったのか。

またダビガトランで知りたいCCr30-50のひとのデータ,80歳以上の人のデータもこの際明らかにして欲しいように思います。ただし米国では150mgx2です。最も知りたいのは日本人の腎機能低下または高齢者でのダビガトラン(や他のNAOC)の成績ですね。

$$$ 先日は仙台市急患センターの当番。のどにくるかぜ症状の方が非常に多く見られました。皆様お気をつけて
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by dobashinaika | 2015-10-21 21:45 | 抗凝固療法:ダビガトラン | Comments(0)

86歳腎機能低下のNOACアスピリン併用例が止まらない鼻血を来した場合どうするか:JAMAIM誌

Optimizing the Safe Use of Direct Oral Anticoagulants in Older PatientsA Teachable Moment
Anne-Laure Sennesael,et al
JAMA Intern Med. 2015;175(10):1608-1609


JAMAIMのTeachable Momentで,現場からの実例を上げてのDOAC使用についての検討がありました。
非常に勉強になるのでご紹介します。

<症例>
・86歳女性,体重55kg
・止まらない鼻血のため救急外来受診

・心房細動あり,リバーロキサバン20mg1年間内服
・末梢血管疾患あり,アスピリン80mg9ヶ月内服
・4年前に生体弁手術
・入院時クレアチニンクリアランス21mL/min, Hb9.4, プロトロンビン時間30%(正常75〜100%)
・抗Xa活性が治療域以上のためリバーロキサバン中止
・2日後,リバーロキサバンの抗Xa活性は治療域内
・薬剤師による問診で,繰り返す鼻血のため,ここ2ヶ月間リバーロキサバンを半分(10mg)にしていたことが判明
・腎不全と高齢であることから,医療チームはリバーロキサバンからビタミンK阻害薬への変更を決定
・アスピリンも中止

<教訓>
・フレイル高齢者へのDOACの適正で安全な使用がこのケースの焦点
・本例のようなケースには,ビタミンK阻害薬が今だに有効
・くわえて,安定した末梢血管疾患にはアスピリンは不適切

・腎機能と年齢は出血における重要な因子
・ダビガトランでは出血症例の2/3は80歳以上で,その60%以上は中度〜高度の腎機能低下例
・腎機能低下例では用量の減量が勧められている
・本例ではCCr15-50にあるため,リバーロキサバンは15mg/日に減らすべきだった

・抗凝固薬使用例でのアスピリン使用は慎重さが要求される
・登録研究における大出血は,抗凝固薬抗血小板薬併用療法では抗凝固薬単独使用時の50%増加(1.8→3.0%,6ヶ月)
・併用療法の推奨は冠動脈ステント治療後12ヶ月まで
・安定した末梢血管疾患においては,抗凝固薬単独使用が勧められており,併用療法は利益に乏しく出血を増やす
・例外は機械弁症例だが,このときDAOCではなく,VKAが使用されるべき
・Steinbergらによれば心房細動患者の35%にアスピリンが併用されており,その40%は適応外
・本例でもアスピリンを減らすことが出血防止策となる

・DOACにモニターはいらないが,高齢者では緻密なフォローアップが必要
・受診時には腎機能,アドヒアランス,併用薬剤,副作用を確認
・本例では患者さんが自発的に用量を半分にしていたが,気付かれず→定期的な問診などによるレビューが出血を減らす

・DOACはVKAよりも数々のアドバンテージがあるけれども,現場ではいまだに試行錯誤の場合がある
・こうした文脈においては,従来通りの治療に価値がある
・この種のDOACを避けVKAを処方するような"less is more"(少ないことは多いこと)的なアプローチは,確立されたものではないが,説得力があり,エビデンス(腎機能評価,副作用のモニター,アスピリンの再検討)に基づくものである

### 非常に教訓的な症例です。

この症例,CCrが30未満なのに最大用量を出している時点でアウトです。添付文書上日本では10mg/日ですが,85歳以上でCCr30未満の方のエビデンスはROCKET-AFでもJ-ROCKETでも極めて少数かと思われます。

アピキサバン2.5mgx2を考える先生もおられるかもしれませんが,ここが問題で,いかに腎排泄が比較的少ないDOACであっても85歳以上の低用量使用のエビデンスはリバーロキサバン同様非常に少数だと思われます。

当院であればこの症例は最初からワルファリンでINR1.6〜2.0を目指すと思います。

DOAC全盛時代に入ろうとしていますが,この症例のように出血が意外に目立ち,他の薬剤への変更を余儀なくされる症例は当院のDOAC症例のうち過去4年間で約30%に認めております。多くは他のDOACに変更するか減量で出血は消えますが,すべてのDOACに転々と変更しても皮下出血を含む出血が消えず,最終的にワルファリンに戻した症例も数例診ています。

またアスピリン併用も高齢者では非常に厳しく考えるということもこの症例から学ぶべき点です。単にTIAらしきエピソードがあっただけで安易に出し続けていないか。安定狭心症に併用していないか。私が若い頃は,冠動脈疾患の一次予防でも何でもアスピリン礼賛の時代がありました。そうした方が未だに10年ー15年の長きに渡り漫然とアスピリンが出されていないか,再検討する必要があります。

Take Home messageとしてまとめてみます
1)高齢者,腎機能低下例では出血,腎機能,アドヒアランスについて緻密な問診や身体診察が大切(ワルファリンであっても)
2)高齢者,腎機能低下例では,DOACの安易な低用量処方ではなく,VKAによる慎重なINA管理が重要
3)ステント挿入12ヶ月(6ヶ月)以内の症例以外,高齢者での併用療法はすべきでなく,特にアスピリンの適応は適切に考える必要がある


$$$ 釣り好きな知り合いから閖上沖の釣りたてのイナダ(ブリの若魚)をおすそ分けしてもらいました。でもどうやってさばこう。。
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by dobashinaika | 2015-10-19 22:34 | 抗凝固療法:比較、使い分け | Comments(0)

患者さんと医師は抗凝固薬を選ぶとき何を好み何に価値を置くのか:CJC誌

Values and preferences of physicians and patients with non-valvular atrial fibrillation receiving oral anticoagulation therapy for stroke prevention
Jason G. Andrade et al
Canadian J cardiol Published Online: October 13, 2015


背景:患者と医師における抗凝固薬に対する価値観に関するデータは不足している。

方法:
・ランダム選択の患者266人,医師178人へアンケート(2014年5〜9月,カナダ)
・薬剤特性と服薬回数について質問
・服薬アドヒアランスと処方状況も評価

結果:
1)患者と医師とで,抗凝固薬の好みは違っていたが,効果よりも安全性を重視する点は同じ

2)薬剤特性のみに重きをおいた場合,医師の選択はアピキサバンが多い(61%)が,患者においては,アピキサバン,リバーロキサバン,ワルファリン感で選択に差はない

3)にもかかわらず,医師の49%は好ましい薬剤としてリバーロキサバンに決めている(アピキサバンは25%)

4)1日1回の薬剤(リバーロキサバン,ワルファリン)のほうがより良い服薬コンプライアンスを示した

5)1日2回の薬剤の30%において1日1回しか飲んでいなかった

結論:リアルワールドの処方は報告されているような価値観を反映しおらず,医師ー患者における抗凝固薬の意思決定には別の要素が影響していた。服薬アドヒアランスとのデータと処方用量とは違う用量の服薬については今後の検討課題。

### 1日2回の薬剤を処方された患者さん全部のうち30%が,毎日1日1回にしているという意味なのか,1日1回にしてしまったことが1回でもある患者さんが30%7日,この記載からは判断しかねますが,前者のようにも取れます。

当院でも以前ご紹介したように抗凝固薬アドヒアランスを調査し,3ヶ月間で1回でも飲み忘れた人(自己中止)の割合をみておりますが,ダビガトラン24%,リバーロキサバン13%,アピキサバン21%,ワルファリン13%で,やはり1日1回の薬剤のほうが比較的良いけこうでした。しかしこれは「1回でも飲み忘れたひと」の割合です。

当院では服薬開始時に時間をかけ,特製のパンフを使って重点的に服薬説明を行いますので,よもや1日1回にしてしまうひとが3割もいることはないようです。

薬剤の特性やエビデンスをとるか,服薬回数を取るか,難しい問題ですが,
私の現時点でのValues and preferences?は以下です。
1)従来ワルファリンを飲んでいるひとで,過去10回の処方中ワルファリン用量の変更が3回以下の場合はそのまま

2)上記が4回以上のひと,あるいは新規処方の方で腎機能良好(CCr30以上),コストが大丈夫ならDOAC。それがダメならワルファリン

3)DOACは1日2回の薬剤のほうが有効性,安全性においてやや優れている可能性があることを患者さんにお話

4)それでもどうしても1日1回がいいという方にはリバーロキサバンかエドキサバン

5)1日2回を選択される方は腎機能,消化管出血の既往などに応じてダビガトランかあぴきさばん

6)何を処方するにしても高リスク例(CHADS2スコア4点以上)ではとにかく出血に対し超慎重に


$$$ 地元特産のしいたけ。大きい。。
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by dobashinaika | 2015-10-16 19:20 | 抗凝固療法:比較、使い分け | Comments(0)

10月31日,第6回どばし健康カフェ「認知症について,何でも語り合いましょう」を開催いたします。

10月31日開催予定の第6回どばし健康カフェ,まだお席に余裕がありますので,再度ご案内いたします。

今回のテーマは「認知症について,何でも語り合いましょう」

日時:10月31日(土)15:00〜(約2時間)
場所:土橋内科医院待合室(仙台市青葉区八幡2−11−8)


市民と医療従事者が垣根を超えて,健康・医療・福祉について気軽に語り合うカフェです。
以下のサイトから申し込み可能です。
どなたでも気軽に参加できます。お待ちしております!

http://www.kokuchpro.com/event/0a90026194db0958d496cf6857ccfcef/

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by dobashinaika | 2015-10-15 22:07 | 土橋内科医院 | Comments(0)

心膜炎の診断と治療についての総説:JAMA誌

Evaluation and Treatment of PericarditisA Systematic Review
Massimo Imazio,et al
JAMA. 2015;314(14):1498-1506. doi:10.1001/jama.2015.1276


JAMAから心膜炎の診断と治療についての総説がでています。
表,Box criteriaについてまとめてみます。

<病因(表1)>
・特発性:15(アフリカ)〜80〜90%(欧米)
・炎症性:
ウィルス(コクサッキー,EB,サイトメガロ,HIV,パルボB19):多くは知られていないもの(30〜50%)
細菌:結核(1〜4%欧州〜70%アフリカ),膿性
その他
・非炎症性:
腫瘍:5〜9=35%
自己免疫性:2〜24%
その他

<診断基準(Box2)>
・急性心膜炎の診断基準:以下の2つ以上を有する
  1)胸痛:鋭い,胸膜性。座ったり前かがみで改善
   2)心膜摩擦音
  3)心電図変化:広範囲のST上昇またはPR下降
  4)新規,または増悪する心嚢液

・再発性心膜炎:以下の3つを全て有する
  1)上記診断基準による急性心膜炎の最初の発作が記録されている
  2)4〜6週以上の無症状期がある
  3)次のサインのうち1つ以上を合併した再発する痛みを伴う心膜炎所見あり:心膜摩擦音,心電図変化,心エコーで新規,または増悪する心嚢液,WBC増加,血沈,CRP上昇

<追加基準(急性再発性問わず)>
・炎症マーカー(例:CRP)上昇
・画像による心膜炎所見:造影MRIによる心膜浮腫,心膜強調

<治療(表2)>
・アスピリン/NSAIDs(エビデンスレベルB):アスピリン750〜1000mgx3,イブプロフェン600mgx3,インドメタシン25〜50mgx3,急性の場合1−2週,再発性の場合2〜4週,その後漸減
・コルヒチン:0.5mgx1(体重70kg以下)〜2,3ヶ月(急性),6ヶ月(再発性)
・ステロイド:プレドニゾロン0.2〜0.5mg,2〜4週
・アザチオプリン:1.5〜2.5mg/kg/d,数ヶ月
・免疫グロブリン静注:400〜500mg/kg/d ,5日間
・Anakinra皮下注:1−2mg/kg/d,上限100mg,数ヶ月

### 特に診断基準はおさらいになります。胸痛と心電図変化で診断をつけることが多いですが,心膜炎の胸痛はacuteもしくはsudden(突然)のこともままあります。心電図変化はaVR誘導以外のST上昇ですが,軽微のこともあり,時系列変化を見なければならないこともあります。

心筋炎を合併することもあり,強い痛みや心嚢液が多い場合は注意が必要と思われます。

$$$ 連休は毎年楽しみにしている調理製菓専門学校の学園祭に行きました。添加物を一切使わない,しかも学生さん制作なので非常にリーゾナブルな値段のすきやき丼。美味でした。学生さんの接遇教育も大変行き届いていて,感服しました。
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by dobashinaika | 2015-10-15 22:05 | 循環器疾患その他 | Comments(0)


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