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心房細動がどのくらい続いたら抗凝固薬を服用すべきか;カナダの心房細動ガイドラインより

2014年10月に出たカナダの心房細動ガイドラインですが,各種の疑問に応える形の「手引書」が発表されています。
The 2014 Atrial Fibrillation Guidelines Companion: A Practical Approach to the Use of the Canadian Cardiovascular Society Guidelines
CJC 2015 : 31: 1207–1218


Lip先生が,リスク評価について注文をつけていたので,そのへんどうなっているのか興味深いところです。
http://dobashin.exblog.jp/20306554/

本日は疑問1の「心房細動の持続時間はどのくらいで臨床的に意義あり?とするか?」についてまとめてみます。
実はこの問題,わかっていたようでわかっていない問題で,どこのガイドラインでも明記はされていなかったように思います。日本はじめ多くのガイドラインで除細動施行時には,「48時間以上持続していたら抗凝固療法を行ったうえで除細動」とはあります。これは48時間以上心房細動が続くと左心耳に血栓ができるという臨床データに基づくものです。

しかし実際臨床で,1回の心房細動発作だけ,その朝心房細動になって午前中クリニックを受診し,ワソランなどの静注で半日で止まったというようなケースはよく遭遇しますが,このように48時間など続かなくても心電図で1回でも記録できれば,CHADS2スコア2点以上であれば抗凝固薬が出されていると思うのです。実際発作性で2日以上続くことはあまり無いように思われます。

その辺の心房細動はどのくらい持続したら抗凝固薬を投与したら良いのかという根本的な疑問について,以下が今回のコメントです。

・最低限どの位心房細動が続けば予防的抗凝固療法を開始してよいかについては明らかではない
・カナダのガイドラインでは,心房細動が24時間以上続き,リスクが1つ以上の場合に経口抗凝固薬が推奨されている
・しかし,臨床研究ではより短時間のエピソードで脳卒中リスクが増すことが知られている
ASSERT研究ではペースメーカーの3ヶ月間サーベイランスで6分以上の心房細動は,それより短いエピソードに比べてのハザード比が2.49だったが絶対リスク減少は,実臨床で認められる脳卒中リスクよりも低かった。特に3.64時間以上続く場合は顕著に脳卒中が多かった
TRENDS研究では5.5時間以上持続すれば,CHADS2スコア2,2点平均の群で年間2.4%の脳卒中リスク増加が認められている
・これらの研究は,数時間以上の心房細動持続で脳卒中が増えることが示唆している
・脳卒中リスクは,心房細動持続時間の他にCHADS2スコアにも影響され,スコアが高ければ短い持続時間でも脳卒中リスクはある
・絶対的なRCTがない以上,心房細動持続時間のカットオフ値に関するエビデンスはない
・CHADS2スコアと時速時間をの配分を加味したより詳しいエビデンスが求められる

###これだけでもなかなか曖昧です。一応数時間持続すれば左心耳血栓ができる可能性があり,CHADS2スコアが高いほど短い時間でで出来やすいと考えたいと思います。

実際,1回の心房細動発作でもCHADS2スコア2点以上であれば,最近は積極的に抗凝固薬を出していることが多いと思います。診療所レベルの場合,先月受診時には脈不整はなかったけれど今月受診の時は脈がおかしい,あるいは健診で今回はじめて指摘されたというような数日から数ヶ月続いている場合と,今朝あるいは昨晩から動悸がしていると言って午前中受診するような場合の2通りがあります。

後者だとやはり2〜3時間から半日経過していますので,それ1回でもCHADS2スコア1〜2点なら抗凝固薬を考慮でよいかもしれません。問診上1〜2時間で止まってしまうと患者さんが言われたとしてももっと続いている可能性が高く,また短いエピソードでもそれを繰り返せばやはり左心耳血栓が形成されるように思います。

この問題実は,あまり語られたことがなかったので,読んでよかったです。CHADS2低リスクをどう考えるか,Lip先生の批判にどう答えているか興味深いですが,それは明日以降のお楽しみで。

$$$ 今日のにゃんこ
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by dobashinaika | 2015-09-30 21:09 | 抗凝固療法:ガイドライン | Comments(0)

薬を飲むことの意思決定は。常に理性と感情のせめぎあい

最近あまり取り上げなかったNOAC関連の話題を2題
ひとつはダビガトランの中和薬;idarucizumabがヨーロッパで迅速審査が進み承認されそうだというニュースです。
http://www.ema.europa.eu/ema/index.jsp?curl=pages/news_and_events/news/2015/09/news_detail_002399.jsp&mid=WC0b01ac058004d5c1

もう一つはイグザレルトが深部静脈血栓症(DVT)・肺血栓塞栓症(PE)の治療と再発抑制に対する適応追加承認を取得したとのことです。
http://byl.bayer.co.jp/scripts/pages/jp/index.php

NOACもだいぶ市場に出回り落ち着きを見せ,今後は中和薬,新しい適応取得などへと話題が移ってくるようですね。
いっぽうで,やはり当初思っていたほどには一般医家に普及していないようにも思われます。

抗凝固薬の本質は「(塞栓症予防という)ベネフィットが見えず,(出血)リスクがよく見える」です。
一方降圧薬,スタチンなどは「ベネフィットが見えて(数値が下がる),リスクは見えにくい(少ない)」薬です。

抗凝固薬はそもそも「一般に普及しにくい」という特性を生来背負っている,ある意味因果な薬剤といえると思われます。

患者さんにとっても医師にとっても,抗凝固薬の出血という有害事象は,目に見え,ある意味感情に左右される短期的なリスクです。これと比べて,抗凝固薬の本来の目的である塞栓症予防というのは,目に見えない長期的なリスクの回避であり,一時の感情というより論理的な思考が要求されます。この両者をどう考えるか。薬剤,特に抗凝固薬は後者のリスクに対する理性的判断が培えない限り,なかなか処方されることも服薬されることも広く普及しないように思われます。

ある意味感情と理性(システム1とシステム2)のせめぎあいですね,抗凝固薬にかぎらずすべての薬剤を服用すること,いや引いては全ての人間がなす意思決定は,つまりは本能的な反応や感情と理性的な論理思考のバランスでなされます。そういう意味では抗凝固薬の普及は人類の永遠のテーマを象徴しているとも言えるように思われます。

それでも少しずつ今回のような情報が共有され,各種の知恵と工夫により少しでも恩恵をこうむる人が増えるてくればいいですね。

$$$今日のにゃんこ。探してください。
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by dobashinaika | 2015-09-29 22:41 | 抗凝固療法:凝固系基礎知識 | Comments(0)

そもそも心房細動の死亡率はレートコントロールで良くなるのか:Circ誌

Rate-Control Treatment and Mortality in Atrial Fibrillation
Tze-Fan Chao et al
Circulation Published online before print September 17, 2015


目的:レートコントロール薬が予後を改善するかどうか

方法:
・台湾の国民健康保険データベースにおける心房細動症例
・β遮断薬43879例,カルシウム拮抗薬18466例,ジゴキシン38898例,対照例168878例
・エンドポイント:死亡

結果:
1)平均追跡期間:4.9年,全死亡率32.7%

2)死亡率ハザード比:ベースラインリスク補正後
ベータ遮断薬0.76(0.74-0.78)
カルシウム拮抗薬0.93(0.90−0.96)
ジゴキシン1.12(1.10−1.14)

3)この結果はサブ解析やプロペンシティースコアマッチ後も同じ

結論:このNation-wide研究では,ベータ遮断薬,カルシウム拮抗薬によるレートコントロールを施行した症例の死亡率は低い。特にベータ遮断薬によるリスク減少は最大。ジゴキシンは死亡率を増加させた。この所見の確定にはRCTが必要

### これまでレートコントロールvs.リズムコントロールについてはAFFIRMで両者変わらずという大筋がでており両者の選択という観点での研究は多く見られました。今回のように大規模コホートでレートコントロールvs,プラセボというセッティングの研究は殆どなかったように思われます。

ただしβ遮断薬については,最近心不全合併心房細動のメタ解析がでて,洞調律例よりも予後を良くしないことが報告されています。
http://dobashin.exblog.jp/20190111/

Ca拮抗薬については目立った研究はあまり無いように思われます。

ジギタリスに関しては,これまで予後悪化の報告が多かったのですが,最近のメタ解析では,ジギタリスを投与する症例自体に重症例が多いのでその選択バイアスを考えると予後悪化はないとすることが言われています。
http://dobashin.exblog.jp/21600728/

ことほどさように,レートコントロール薬そのものの全体的な効果というのは実はあまりわかっていないということなんだろうと思います。そのことを実証するレビューもでていて,実はレートコントロール−がいいと言うことのエビデンスレベルは全体としても低いらしいとのことです。
http://dobashin.exblog.jp/17967575/

で,今回の研究の患者背景ですが,やはり心不全例はジギタリス群で57%と多く,他は35〜6%程度でした。観察研究ですので例えば初めから徐脈の例は対象から省かれている可能性もあります。こうしたバイアスを考えに入れた上でこの論文を吟味する必要があります。

鉄則として使用しているレートコントロール薬ですが,予後まで考えると実はまだ奥が深いということを思い知らされます。その辺の困った状況を察してくれたのか,Editorialで4つのTake Home memmageがまとめられていますので,引用しておきます。

1)レートコントロール薬は心房細動患者の心拍数コントロール目的に使われる。症状がないまたは軽度な症例はゆるやかな心拍数管理が第一選択。より症状が強いまたは左室機能低下例では厳格な心拍数管理が適用される

2)それらの薬の第2の目的はアウトカムの改善である。この研究は薬剤の種類次第でその効果や有害事象が異なることを追加した

3)RCTが出るまでは,レートコントロール薬は,年齢,ライフスタイル,合併症,心拍数を個別に考えて薬剤を選ぶことを強調したい

4)レートコントロール薬は慎重に処方されるべきであり,用量は合併疾患の進行度合いに応じて調節される,伝導障害が発症したり進行するかもしれない。確かなことは,心房細動のレートコントロールについて多くの学ぶべきことがあるということだ。


$$$ 昨日が十五夜。今日は十六夜。ためらうはずの十六夜ですが,今日はスーパームーン。でも雲がかっていてやっぱりいざよいでした。
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by dobashinaika | 2015-09-28 22:09 | 心房細動:ダウンストリーム治療 | Comments(0)

ケースカンファが待ち遠しい:総合診療スキルアップセミナー

本日は,4月から毎月1回通っている「総合診療スキルアップセミナー」。
ケースカンファレンス形式で,朝9時から夕方5時まで勉強漬けでした。
当初は大変かなあと思っていましたが,最近はこの日が来るのが非常に待ち遠しくなっています。

一流の講師陣,全国からの志の高い実地医家の先生によるケースカンファレンスですが,数々のクリニカルパールを修得するのも目的ですが,その上で臨床推論の手順,Problem Based Learingの実際など,私たち世代が医学教育で学ばなかったそれこそメタ的な「スキル」が味わえるのが魅力ですね。

本日は頭痛に関するケースカンファ,と糖尿病,外科分野のセミナー。
毎回,計8時間みっちりですが,心地よい疲れが残ります。
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by dobashinaika | 2015-09-27 21:38 | 開業医の勉強 | Comments(0)

比較的若年層ほど,心房細動が認知症発症により強く関与:JAMA-N誌

Association Between Atrial Fibrillation and Dementia in the General Population.
de Bruijn RF et al
JAMA Neurol. Published online September 21, 2015.doi:10.1001/jamaneurol.2015.2161


P:オランダ,ロッテルダムの認知症でないひと6514名,1989→2010年まで約20年間追跡

E:ベースラインで心房細動あり:4.9%

C:心房細動なし

O:認知症新規発症

結果:
1)心房細動群の認知症発症率:15.3%

2)非心房細動例に対するハザード比:1.33(1.02〜1.73)

3)非心房細動群の心房細動発症率:11.7%

4)非心房細動群の認知症発症率:15.0%

5)より若い層で認知症発症との関連性がある:67歳未満ハザード比1.81,76歳以上1.12。交互作用P=0.02

6)若年者においては認知症発症リスクは心房細動罹患期間と強く相関,高齢者においては相関弱い

結論:心房細動は脳卒中とは別に,認知症発症に関連していた。この関連性はより若い層で強かった。将来の検討が必要

### 認知症と心房細動発症の関連論文は多いですが,本論文は横断研究ではなく,長期追跡によりアウトカムを示した点で貴重なものと思われます。

しかも高齢者よりは67歳未満の症例で,より心房細動が認知症の原因として寄与していた可能性が示唆されていて,おそらく高齢になるほど,他のファクターが入り込むためと思われます。早期に心房細動を発症することのリスクをやはり考える必要があるように思われます。

そこに抗凝固薬がどう関与するかも興味深いところ。

以前のブログはこちら
http://dobashin.exblog.jp/21526867/

###今日のにゃんこ 最近気候がさわやかなためか,朝にゃんこによく出会います,楽しい限り。
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by dobashinaika | 2015-09-24 22:14 | 心房細動:リアルワールドデータ | Comments(0)

多発する心房期外収縮は脳梗塞と関連あり:JACC誌

Excessive Atrial Ectopy and Short Atrial Runs Increase the Risk of Stroke Beyond Incident Atrial FibrillationBjørn Strøier Larsen et al
J Am Coll Cardiol. 2015;66(3):232-241


P:コペンハーゲンホルター研究の15年追跡患者678名。55〜75歳。心血管疾患,脳卒中,心房細動の既往なし

E:48時間ホルター心電図で多発性心房期外収縮(30発/時以上)または心房期外収縮ショートラン(20発以上)

C:上記心房期外収縮なし

O:脳卒中

結果:
1)多発性心房期外収縮:99人,15%

2)多発性心房期外収縮例は以下の例で虚血性脳卒中が多かった
   心房細動発生時試験中止の場合:ハザード比1.96
時間依存性Cox比例ハザードモデルの場合:ハザード比2.0

3)脳卒中に発展した多発性心房期外収縮の14.3%は心房細動も持っていた

4)多発性心房期外収縮例かつCHA2DS2-VAScスコア2点以上の脳卒中発症率は2.4%/年で心房細動例と同等
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5)多発性心房期外収縮の出現は日によって変わらなかった

結論:多発性心房期外収縮は心房細動そのものの発生以外の虚血性脳卒中発症リスクに関連した。こうした症例では,心房細動をへることなしに初めての症状が脳卒中として現れることがしばしばある。

### 心房期外収縮の多発と心房細動あるいは脳卒中の関係については最近相次いて報告されています。
心房細動に発展しやすいという報告もありますが,この論文は心房細動の記録なしに脳卒中と直接関係するということである意味衝撃的な内容ですね。CHA2DS2-VAScスコア2点以上の場合,ホルター心電図は一応考慮しておくべきでしょうか。

関連ブログはこちら
http://dobashin.exblog.jp/20872607/

$$$ 最近アルコールはめっきり少なくなりましたが,毎年オクトーバーフェスタだけは楽しみで出かけます。たまにはいいですよね。
連休もあっという間に終わってしまいましたが,休みは仕事のために休むんじゃなくて,休むために休む。目的という呪縛から離れる時間ですね。それすらが目的?
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by dobashinaika | 2015-09-23 21:52 | 心房細動:リアルワールドデータ | Comments(0)

日本心臓病学会で実地医家向けにStructured follow-upなどにつき講演しました

本日は横浜で行われた第63回日本心臓病学会で教育講演をさせていただきました。
日曜の早朝にもかかわらず,多くの方々にお集まりいただき感謝申し上げます。

横山内科循環器科医院の横山広行先生からご指名をいただき,実地医家からアカデミアに情報発信できるような内容をとのことでしたが,まだまだそこまでのインパクトはありませんが,最近当院で抗凝固薬の服薬アドヒアランス向上のために多職種かかわりあう,いわゆるstructured follow-upについて,当院で取り組んでいることを,ざっと触れさせていただきました。

以前にも書きましたように,特に高齢者においては

1)高齢者総合評価(CGA),特に認知機能と転倒リスクを把握:おもに看護師

2)患者教育(パンフなどを使用):医師

3)説明を聞いたあとの抗凝固薬に対する患者さんの解釈モデル(特に不安)についてよく聞く;主に看護師

4)毎回の外来でチェックシートを用いて以下の6項目を聴く:看護師
  1.飲み忘れはないか
  2.出血はないか
  3.手足の麻痺,しびれ,ろれつの周りにくさはないか
  4.消化器症状などはないか
  5.他院で抜歯,内視鏡,手術はないか
  6.他院から新しい薬が出ていないか

5)問題症例に関するカンファランス:全職種

という手順で,多職種で手厚く見守ることが患者ー医療者の良好な関係の構築を成立させ,ひいては服薬アドヒアランスの向上に至ると考えています。

まだ手探りの状態ですが,患者,ご家族,医療スタッフ,医師の全てに良い効果をもたらせるよう試行錯誤していきたいと思います。
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by dobashinaika | 2015-09-20 23:40 | 循環器疾患その他 | Comments(0)

ダビガトランは高齢者においてワルファリンより頭蓋内出血を減らすが消化管出血には注意:TH誌

Dabigatran use in elderly patients with atrial fibrillation
Meytal Avgil-Tsadok
Thromb Haemost 2016; 115 http://dx.doi.org/10.1160/TH15-03-0247


P:1999〜2013年に登録したカナダ,ケベック州の一般住民

E:ダビガトラン110/150

C:プロペンシティースコアマッチをさせたワルファリン使用者

O:75歳未満と以上とで層別化した有効性と安全性

結果:
1)ダビガトラン15918例,ワルファリン47192例

2)75歳以上67.3%。80.1%は低用量。75歳未満の80.0%は高用量

3)75歳以上でのダビガトランの有効性:ワルファリンと同等:HHR 1.05, 95 % CI: 0.93, 1.19

4)75歳以上でのダビガトランの頭蓋内出血:ワルファリンより少ない:HR 0.60, 95 % CI: 0.47–0.76

5)75歳以上でのダビガトランの消化管出血:ワルファリンより多い:HR 1.30 95 % CI: 1.14–1.50

結論:実臨床に基づけば,ダビガトランは高齢者において,ワルファリンの代替薬になりうる。特に頭蓋内出血を減らす。ただし消化管出血には注意が必要。

### カナダではガイドラインで75歳以上は110mgが推奨されています。詳しく見ると消化管出血は75歳以上の場合,110mgでも150mgでもワルファリンより多いようです。一方75歳未満ではワルファリンと同等でした。

高齢者のダビガトラン使用には,頭蓋内出血は減らし,消化管出血に特に注意をというこれまでよくいわれたメッセージのリアルワールどでの検証と思われます。

$$$ 忘れていましたが,今日は誕生日でした。無事にこの歳まで来られたこと,皆々様に感謝です。
FBのお知り合いから頂いたフォトでとりあえずお祝い。
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by dobashinaika | 2015-09-18 23:55 | 抗凝固療法:ダビガトラン | Comments(0)

プライマリ・ケア医のための医学研究トップ20<心血管疾患編>:AFP誌

家庭医向け雑誌 American Family Physicianで2014年のプライマリーケア医のためのリサーチ研究トップ20が紹介されています。
いずれも開業医にとって知っておきたい知識ばかりですので,ここでまとめておきます。

Top 20 Research Studies of 2014 for Primary Care Physicians
MARK H. EBELL et al
Am Fam Physician. 2015 Sep 1;92(5):377-383.


最初はやはり心血管疾患から

1.ベースラインリスクは高血圧治療のアウトカムと関連があるのか?

・従来からのコンセプトの再確認

・高リスク患者ほど治療の利益が大きい

・1000人を5年治療すると,最低リスク層に比べてのリスク減少はリスクが多くなるに連れて,14→20→24→38人に減る

Blood pressure-lowering treatment based on cardiovascular risk: a meta-analysis of individual patient data.
Lancet. 2014;384(9943):591-598.


リスク層別化はBPLTTCのデータセットを用いた計算式で算定しているようです。年齢,性別,BMI,血圧,降圧薬,喫煙,糖尿病,心血管イベントの有無なども変数で5年間の心血管リスクを<11%, 11–15%, 15–21%, >21%の4分に層別化しています。血圧は平均で5.4/3.1mmHg程度減っています。

2.心房細動の患者において新しい抗凝固薬はワルファリンに比べて安全でより効果があるのか?

・このメタ解析では,短期的(2年間)効果はワルファリンよりわずかに良い

・しかし虚血性脳卒中予防効果はワルファリンに比べ明らかではなく,消化管出血は増やした。

・短期の追跡や出版バイアスまで考えると,新規薬がワルファリンに優るスラムダンクでは決してない

ワルファリン服用者はTTRの2/3しか費やしていないので,パフォーマンスを高める努力により,資源のより賢い活用につながるかもしれない

Comparison of the efficacyand safety of new oral anticoagulants with warfarin in patients with atrial fibrillation: a meta-analysis of randomised trials.
Lancet. 2014;383(9921):955-962.


この論文に関してのブログはこちら
http://dobashin.exblog.jp/19121121/

3.心房細動患者において,抗凝固薬にアスピリンを追加することはアウトカムを高めるのか,それともか悪くするか?

・多く患者が抗凝固薬もアスピリンが追加されているが,その40%はアスピリンの適応がないとされている(例えばアテローム硬化性疾患がない)

・併用療法は抗凝固薬単独使用より出血リスクを増やす(補正ハザード比1.5)

・この研究はRCTの支持がないにもかかわらず存続している(例外は機械弁患者)

・このケースは「少ない事こそいいこと」という事例であるが,どちらが良いかはRCTが必要

Use and associated risks of concomitant aspirin therapy with oral anticoagulation in patients with atrial fibrillation: insights from the Outcomes Registry for Better Informed Treatment of Atrial Fibrillation (ORBIT-AF) Registry.
Circulation. 2013;128(7):721-728.


漫然とアスピリンを出している患者さんはまだ結構おられますね。

4.急性静脈血栓塞栓症患者にとって,抗凝固薬にNSAIDまたはアスピリンを追加することは出血リスクを高めるのか?

・急性のDVT患者で抗凝固薬服用者にNSAIDまたはアスピリンを追加すると出血リスクが高まる

・リバーロキサバンで見られたが,エノキサパリン+VKAにも見られた

Bleeding risk of patients with acute venous thromboembolism taking nonsteroidal antiinflammatory drugs or aspirin.
JAMA Intern Med. 2014;174(6):947-95


DVTをきたすようなひとはアスピリンやNSAIDを服用していることが多いので,注意すべき点だと思われます。
NSAIDでは臨床上問題となる出血のハザード比が抗凝固薬単独と比べて1,77倍,大出血は2.37倍

5.スタチンにHDLコレステロールを増加する治療を追加すると心血管イベントや前脂肪は減るのか?

・「良いコレステロール」は「役に立つコレステロール」と同義ではない

・スタチンにHDLC低下療法を追加しても心血管イベントや全死亡は減らない

Effect on cardiovascular risk of high density lipoprotein targeted drug treatments niacin, fibrates, and CETP inhibitors: meta-analysis of randomised controlled trials including 117 411 patients
BMJ 2014; 349 doi: http://dx.doi.org/10.1136/bmj.g4379


HDLC低下療法とは,ナイアシン,フィブラート,CETP阻害薬のことです。

### やはり家庭医から視線からのレビューが最もしっくりきますね。素晴らしい。

たとえば,NOACのメタ解析。循環器専門医の学会や研究会などに行くとこのメタ解析,NOACは安全でワルファリンに勝るとも劣らないとの主張に使われますが,家庭医目線では"the newer agents are by no means a slam dunk over warfarin”つまりNOACはワルファリンを打ち負かすスラムダンクとは決して言えない,とバッサリやられています。

私,来歴上循環器の学会にも家庭医系の学会にも出席したりSNSを利用したりしますが,両クラスターの温度差を常に感じております。循環器クラスターはもはやNOAC全盛となっていますね。ワルファリンいいよって声は,私と少数の同志の医師とからしか聞こえません。一方家庭医クラスターになると,NOACなんか全然使っていないという声をよく聞きます。そういう先生ほど,ワルファリンの使い方をよく知っておられる感じです。

「至適範囲の2/3しか使っていないんだから,もっとうまく使いこなせば医療資源をもっと賢く使うことになる」。ほんとそのとおり。NOACの普及も良いと思いますが,それと平行してワルファリンの良い使い方についてより広めていくこともまだまだ重要と思います。

$$$ 先日の定禅寺ストリートジャズフェスティバル。木漏れ日さす定禅寺通りです。昨年のジャズフェスでふと耳に止まった音楽が非常に良いリハになったことを思い出しました。
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by dobashinaika | 2015-09-14 22:33 | 循環器疾患その他 | Comments(0)

長いTV鑑賞時間と心血管疾患は関連あり:日本人対象の大規模コホート研究:CJ誌

Television Viewing Time and Mortality From Stroke and Coronary Artery Disease Among Japanese Men and Women – The Japan Collaborative Cohort Study –
Satoyo Ikehara et al
Circulation Journal, 2015/9/07


背景:日本人におけるテレビ鑑賞時間と脳卒中,冠動脈疾患との関係に関する研究はない

方法:
・1988−1999年から2009年まで追跡した心血管イベントとがんのない40−79歳の男性35959人,女性49949人

結果:
1)平均19.2年の追跡期間

2)脳卒中2553例,冠動脈疾患1206例,全心血管イベント5835例

3)テレビ鑑賞6時間以上の人は,2時間未満の人にくらべ冠動脈疾患,心血管イベントが多い
・脳卒中ハザード比:1.158 (0.96–1.37)
・冠動脈疾患:1.33 (1.03–1.72)
・全心血管イベント・1.19 (1.06–1.34)

4)テレビ鑑賞時間が1時間増すごとに脳卒中,冠動脈疾患,心血管イベントはそれぞれ1.01 (0.99–1.04), 1.04 (1.01–1.08) ,1.02 (1.01–1.04)倍増加

5)さらなる因子(高血圧の既往,糖尿病)で補正すると冠動脈疾患,心血管イベントのハザード比は減少した
・冠動脈疾患ハザード比: 1.24 (0.96–1.61)
・心血管イベント:1.14 (1.02–1.28)

6)さらなる補正後の視聴時間に時間増すことのイベント増加:冠動脈疾患1.03 (1.00–1.07) ,心血管イベント1.01 (1.00–1.03)

結論:長いテレビ鑑賞時間は,わずかだが明らかな冠動脈疾患と心血管イベントの増加に関連がある

### 文部省が企画したhe Japan Collaborative Cohort Study for Evaluation of Cancer Risk sponsored by Monbusho (JACC Study) コホート研究です。参加者10万人と大規模ですので,少しの差であっても統計的に有意差がつけば明らかなな差と考えて良いと思われます。

ただ表を見ると5時間テレビを見る人当たりからイベント率がはっきり多くなり始める感じですね。6時間以上テレビを見るというのはかなり見ている人のように思われます。

コホート研究ですので,交絡因子を考える必要がありますが,BMI,喫煙,アルコール,運動時間,メンタルテスト,魚類摂取,教育レベル,睡眠時間,うつなどかなりの項目で補正されていました。

視聴時間や補正因子の多くは自己申告ですし,登録研究なりの限界は当然ありとした上で,生活習慣と心血管イベントとの密接な関係がある
と受け止めておきます。

$$$ 昨夜来,仙台では大雨となリ,各地で被害が発生しました。幸い当院は被害もなく,診療を行うことが出来ました。1日も早い復興をお祈り申し上げます。
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この絵はヘレン・シャルフベックの「快復期」
by dobashinaika | 2015-09-11 18:41 | 虚血性心疾患 | Comments(0)


土橋内科医院の院長ブログです。心房細動やプライマリ・ケアに関連する医学論文の紹介もしくは知識整理を主な目的とします。時々日頃思うこともつぶやきます。


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