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ジゴキシンの安全性と効果に関する400万人年対象のシステマティックレビュー&メタ解析:BMJ誌

Safety and efficacy of digoxin: systematic review and meta-analysis of observational and controlled trial data
BMJ 2015;351:h4451


目的:すべての観察研究とRCTを通じてジゴキシンの死亡と臨床アウトカムに関するインパクトを明らかにする

方法;1960年から2014年までの出版されたジゴキシンvsコントロール比較のすべての論文を包括的にサーチ

データ合成:研究デザイン,解析方法,出版バイアスなどを補正していないまたは補正されたデータ

アウトカム:一次アウトカム=全死亡,二次アウトカム=入院:ランダム効果モデル

結果:
1)システマティックレビュー:52研究,621,845人

2)ジゴキシン群は対照群より2.4歳高齢,左室EFは低め(33%vs42%),糖尿病,利尿薬,抗不整脈薬使用が多い

3)メタ解析:75件研究,40,062,10人年

4)全死亡(ジゴキシンの対照群に対するpooled risk比):非補正1.75(1.57−1.97),補正1.61(1.31−1.97),プロペンシティースコア補正1.18(1.09−1.26),RCT0.99 (0.93-1.05)

5)メタ回帰分析は,ベースラインの差異がジゴキシン群の死亡率に明らかに関係していることを示している

6)特に利尿薬を使うような心不全の重症度が影響していた:p=0.0004

7)よりよい方法とバイアスの少ない研究ではジゴキシン群の死亡率はよりニュートラルに近くなった;P<0.001

8)すべての研究タイプを越えてジゴキシンはわずかだが統計上明らかな入院の減少をもたらした:リスク比0.92(0.89−0.95),p=0.001

結論:ジゴキシンはRCTにおいては,死亡率において対照群と同等の効果であり,すべての研究タイプで入院リスクは減少させた。統計解析にかかわらず,処方バイアスが観察研究の価値を制限する。

### うわ。そういうことだったんですか。Lip先生のグループからですが,最近のジゴキシン劣勢を覆すかのようなメタ解析結果が出てしまっています。例えば最近のEHJのメタ解析はハザード比1.21でジゴキシン群で明らかに死亡率が多いって言っています。
http://dobashin.exblog.jp/21197269/
でもこれ観察研究も含んでのデータなんですね。あと最近出ているジゴキシン不利のデータも実は大きな研究のサブ解析が多いのです。

一方本メタ解析は75研究400万人年対象です(EHJは19研究)。
そして上記のバイアスが少なくなるほど,ジゴシンと対照群との差は縮まることが示されています。これは選択バイアス,つまりジゴキシンを処方されるような人は心不全(利尿薬使用)が特に多く,それだけ重症だから処方していることに起因しているとしています。
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こういう研究を見せられると,メタ解析においても十分な批判的吟味をしないと確かなことは言えないということを実感させられます。

最後のシェーマが非常に教訓的ですね。心房細動単独例だとやはりなんとも言えない,しかし心不全がからんでいる場合や心不全単独の場合はやはり使用を考えて良いということが示唆されています。心不全合併心房細動ではβ遮断薬も使いにくいのですがかと言って最近の趨勢でジゴキシンもどうかなと思っていましたが,少し自信が持てます。
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$$$ 当院の掲示板の月替りポスターメニュー。先週まで貼っていましたが,誰も見向きもしていませんでした,こう寒くては。ストーブをつけたと仰る患者さんも多数です。早々に撤去です。
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by dobashinaika | 2015-08-31 18:45 | 心房細動:ダウンストリーム治療 | Comments(0)

人生は断片的なものの集まりー「断片的なものの社会学(岸政彦)」を読む

「人生は断片的な物が集まって出来ている」
「私の手のひらに乗っていたあの小石は,それぞれかけがえのない,世界にひとつしかないものだった。そしてその世界にひとつしかないものが,世界中の路上に無数に転がっている」
「私達の自己の世界は,物語を語るだけでなく,物語によって作られる」
「私達の人生は,何度も書いているように。何にもなれずにただ時間だけが過ぎていくような,そういう人生である,私達のほとんどは,裏切られた人生を生きている。私達の自己というものは。その大半が「こんなはずじゃなかった」自己である」
。。。

こうクリニカルパールを羅列するとありきたりに見えますが,様々なエピソードをはさみながら,「分析できないもの」「物語にできないもの」がそのままの断片としてさり気なく語られています。

よく「ありのままで」「自分らしく」「本当の自分」などと言いますが,思えば人間というのは,ぜったい「ありのまま」ではいられない,むしろ「いま,ここ」を常に越えようとする存在,あるいは越えようとするプログラムがインストールされた存在といえるのではないか,そう思うのです。いわゆる「超越的存在」ですね。

うちにも猫がいて,かれらはとにかく食に対しての欲望は際限がなく,主人がいない時にも台所を漁るくらいの「意図」は持っているわけですが,でも食べ物が得られない時に,では,もっと食べ物がゲットできるようにと外に出る算段を計画したり,いつもより多く食べ物をもらおうと主人にもっと媚びをふるようなそれこそ猫なで声をかけたり,そんな事はしないわけです(する猫もいる?)。

人間だけが,食べ物がなければ計画的に稲を作付けしてコメを得ることができる,人間だけが今すぐ実現できない「目的」を掲げてそれに向かって自分を高めていくことができる,そう戸田山先生も「哲学入門」で述べられています。

で,目的というのはまだ見ぬ世界なので,われわれは日々目的と現実のギャップに悩むわけです。そして結局ギャップが埋まらないまま終わってしまうんじゃないか,そんな「不安」を常に抱えて生きるわけです。不安がなく暮らしている人もいるかと思えますが,実はそうでもない。ある目的が達成されたと思えたら,また別の目的が芽生えます。人間とは良く言えばそうした可能性を常に秘めた存在であり,裏返せば永遠に目的を達成できない「不安」を抱え持った存在であるとも言えます。人間の意識というのは「不安」そのものであると言っても極論ではないと思います。

だいぶ本の内容からそれてしまいましたが,,本書はそんな大上段から人間を論じているわけではなく,どこかの学生が書いた「昼飯なう」のようなつぶやきに惹かれること,そうした物語にも分析の対象にもならないような断片に惹かれる,そうした心の機微を淡々とさり気なく書いているのです。

「自分の中には何が入っているのだろう,と思ってのぞきこんでみても,自分の中には何も,大したものは入っていない。ただそこには,今までの人生でかき集めてきた断片的なガラクタが,それぞれつながりも必然性も,あるいは意味さえもなく,静かに転がっているだけだ」
人生に「不安」を感じたら,こんな著者の言葉が「ほぐし」になるかもしれません。いやそうした癒やしほぐしなどを求めるというようなやわい感触とは別次元の,何も声高に主張していないのに,ひたひたと身体に染み入ってくるような一種の佇まいを感じさせる,そんな一冊です。
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$$$ 連日寒い日が続きます。でも健気にアスファルトに咲く花もある。
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by dobashinaika | 2015-08-30 23:12 | 医者が患者になった時 | Comments(2)

救急外来での失神管理10か条:ACCまとめサイト

Syncope clinical management in the emergency department: a consensus from the first international workshop on syncope risk stratification in the emergency departmentGiorgio Costantino, et al
Eur Heart J 2015;Aug 4 DOI: http://dx.doi.org/10.1093/eurheartj/ehv378 F


ACCのサイトから上記論文のまとめです(要登録)。
Syncope Clinical Management in the Emergency Department
Aug 17, 2015 | Thomas C. Crawford, MD, F.A.C.C.S

【救急外来における失神管理10のポイント】

1.昨今の失神のアプローチは,広範囲で,高コストであり,効果は疑わしい。北米と欧州の多領域の専門家が救急分野での最良のコンセンサスを得ることを目指している。

2.失神の定義:急発症で短時間で自発的な完全回復のある一過性脳低灌流に由来する一過性の意識消失。

3.患者のアセスメント:病歴,身体所見,心電図,臥位及び立位血圧,特殊検査(血液,頚動脈洞マッサージ,エコー,胸部写真,血液ガス)

4.原因不明の失神患者を入院:有害事象を減らすかどうかは不明。入院の意思決定は,コスト,入院にともなって考える有害イベントと入院による効果とを考え合わせるべきである。

5.バイオマーカー:トロポニンやBNPがリスク評価として注目されているが,現時点ではルーチン検査としては勧められない

6.高リスク患者とは以下のうち1つを有する
・労作時失神,臥位での失神,新規発症の胸部不快感を伴う,失神前の動悸を伴う
・突然死の家族歴
・心不全,大動脈狭窄,左室流出路疾患,拡張型心筋症,肥大型心筋症,催不整脈性右室異形成,左室駆出分画<35%,心室性不整脈の既往,冠動脈疾患,先天性心疾患,以前の心筋梗塞,肺高血圧,ICD植え込み
・ヘモグロビン<9,収縮期血圧<90,洞徐脈<40
・新規の左脚ブロック,二束ブロック+第1度房室ブロック,ブルガダ型心電図,急性虚血性変化。新規非洞調律,二束ブロック,QT延長>450ms

7.低リスク患者とは以下の1つ以上を有し高リスク因子を有しない
・40歳未満
・立位での失神,臥位/座位から立った時の失神,失神前の嘔気嘔吐,失神前の熱感,痛みや感情的刺激,咳,排便,排尿に伴うもの
・長年に渡る同じようなエピソード

8.高リスクでも低リスクでもない患者
・低リスクながら他の合併症を持つ
・合併症はないが,神経質なキャラクターがある
・低リスク,高リスク因子共になし

9.中〜高リスク患者は外来でモニターすべき。低リスク例は追加検査は必要なく外来でフォロー

10.以下の所見はモニター上陽性
・心停止3秒以上
・持続性/非持続性心室頻拍(症状有る無しを問わず)
・高度房室ブロック
・徐脈<30(症状有る無しを問わず)
・徐脈<50+症状あり
・頻脈>120+症状あり

### 非常にクリアカットです。

一応血液検査,心電図,胸部写真まで施行する。そのうえで,器質的心疾患やモニター上の不整脈,貧血がなく,40歳未満,立位での失神,臥位/座位から立った時の失神,失神前の嘔気嘔吐,失神前の熱感,痛みや感情的刺激,咳,排便,排尿に伴うもの,長年に渡る同じようなエピソードであれば,原則入院させなくて良い。という極めて実際的な教えですね。

改めて”勉強になります”

$$$  患者さん手作りのアクセサリーです。きょうはワンコ。
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by dobashinaika | 2015-08-28 22:19 | 心臓突然死 | Comments(0)

血液型O型はダビガトラン投与下でのaPTT延長と関連あり:CJ誌

ABO Blood Type and Response of Activated Partial Thromboplastin Time to Dabigatran in Nonvalvular Atrial Fibrillation Patients
Shinya Suzuki et al
Circulation Journal Released 2015/08/27


目的:血液型とダビガトラン投与下のaPTTは関連があるのか

方法:2011年から2015年までダビガトラン投与下で血液型と活性化部分トロンボプラスチン時間(aPTT)を測定した396例(ベースライン166例)

結果;
1)O型の人はベースラインで延長傾向を示した:23秒以下0%,23−43秒の30−40%(がO型),44秒以上の100%(がO型);P=0.054

2)O型の人はダビガトラン投与下で明らかに延長した(朝採血):43秒以下30%未満,44−71秒の30−40%(がO型),72秒以上の60%以上(がO型);P=0.001

3)O型の人は上記の差も大きかった:P=0.012

結論:非弁膜症性心房細動患者においては,ダビガトラン投与下での高いaPTTは血液型O型と関連あり.

### 心臓血管研究所の鈴木先生の御発表ですが,,ほー,そうでしたか!

論文によれば,血液中のvon Willebrand 因子は出血したとき最初に出てきて(一次止血),破綻した血管壁のコラーゲンと血小板をくっつける接触剤のような役割をしている重要なタンパク質ですが,VIII因子の担体タンパクで,O型では20−30%他の血液型よりも少ないとされています.このため,O型の人はVIII因子活性が低くく内因系の凝固活性が低下していると考えられるため,内因系のマーカーであるaPTTが延長する,というのが仮説です.

ベースラインのaPTTには差はありませんでしたが,ダビガトラン投与下ですと0型の平均が52.1秒で,最短のA型の48.0秒より有意に上昇しています.特に150mgで顕著なようです.

オーバーラップもかなりありますし,単一施設データですが,興味深いですね.

ダビガトラン投与下でaPTTが高い症例があったら,いちおう血液型を聞いてみるようにします.

$$$最近散歩先にねこがいないので,これは昨年秋に撮ったミケです.
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by dobashinaika | 2015-08-27 18:51 | 抗凝固療法:ダビガトラン | Comments(0)

アジア人におけるNOACの有効性安全性メタ解析:Stroke誌

Non-Vitamin K Antagonist Oral Anticoagulants for Stroke Prevention in Asian Patients With Nonvalvular Atrial Fibrillation: Meta-Analysis.
Wang KL, Lip et al
Stroke. 2015 Sep; 46(9):2555-61


目的:NOACのRCTにおけるアジア人と非アジア人の比較メタ解析

方法:ランダム効果モデル

結果:NOACのVKAに比べてのオッズ比:アジア人vs. 非アジア人
1)脳卒中/全身性塞栓症:0.65 vs. 0.85. P交互作用=0.045

2)大出血:0.57 vs. 0.89, P交互作用=0.004

3)出血性脳卒中:0.32 vs. 0.56 . P交互作用=0.046

4)消化管出血:0.79 vs. 1.44. P交互作用=0.041

5)低用量NOAC:全般に低用量NOACとVKAの有効性,安全性はアジア人と非アジア人で同等:ただし虚血性脳卒中,大出血,消化管出血は除く

結論:標準量NOACは非アジア人よりアジア人でVKAよりも有効かつ安全。しかるに低用量NOACではアジア人,非アジア人共に同じ

### 一般にワルファリンはアジア人で出血が多いとされている一方,NOACでは出血が少なかったというのは「RCT界では」規定事実かと思います。特に消化管出血はダビガトランもリバーロキサバンも標準量においてグローバルではワルファリンに負けていたのに対し,アジア人では勝っているようです(ただし本メタ解析の非アジア人にはRELYとENGAGE AFのデータしかエントリーされていない)。

また脳卒中/全身性塞栓症もアジアじんほうが予防効果が大きいことが示されています。

ただ低用量になると,有効性は同等となり,消化管出血も非アジア人も少なくなるせいかNOACとVKAは同等となっています。
このデータを見ただけですと,なるべく標準量を使ったほうがアジア人でのNOACの利点を活かせるようにも解釈されるかもしれません。

まあサブ解析のメタ解析ですし,試験同士は異質性が大きいですのでそういう傾向があるくらいで抑えておけばいいのではと思います。

$$$ 今朝は気温19度。半袖では寒くて手が震えました。なので,今日のにゃんこは顔を写しそびれました。つい3週間前の朝と10度も違うんですね。皆様体調にはくれぐれもご注意を
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by dobashinaika | 2015-08-26 21:35 | 抗凝固療法:比較、使い分け | Comments(0)

ワルファリンからダビガトランに変更した場合,うつや不安は少なくなる?:CATH誌

Comparison of Changes in Anxiety and Depression Level Between Dabigatran and Warfarin Use in Patients With Atrial Fibrillation.
Turker Y, Ekinozu et al
Clin Appl Thromb Hemost. 2015 Aug 14;


対象:ワルファリンからダビガトランに変更した心房細動50例

方法:
・変更前後でうつのスケール(Beck Depression Inventory Scale:BDS)と不安スケール(Hamilton Anxiety Scale:HAS)を評価

結果:
1)平均74.6歳
2)BAS(うつスケール);ワルファリン時のほうがダビガトラン時より高い:15.6 ± 7.8 vs 11.5 ± 4.8, P < .001
3)HAS(不安スケール):ワルファリン時のほうがダビガトラン時より高い:16.8 ± 10.4 vs 12.6 ± 8.1, P < 0.001
4)うつの頻度:ワルファリン時>ダビガトラン時:n = 24, 48% vs n = 14, 28%, P = .039

結論:ダビガトラン投与時のほうが,ワルファリン投与時にくらべBDS,HASが低い.ダビガトランはQOLを上げ,うつや不安を減らすことで合併症や死亡率を減らすことにつながることが示唆される.

### ワルファリンからダビガトランへの変更を承諾した症例が対象ですので,ワルファリンへの不安が強く,ダビガトランへの期待が高いケースを集めた研究とも言えます。途中で消化器症状がでた症例などは含まれていないと思われます。その意味で限定的な情報化と思います。

ただ,NOACに変えたあと,やっぱり変えてよかったという方も多数おられるのは事実ですね。一番は飲みやすさです。ワーファリンはいちいち3錠とか3.5錠とかたくさんヒートから取り出さないとなりません。また納豆好きな方にとっては,何物にも変えがたい福音をもたらします。それと患者さんの中には高いので,ワルファリンより安心という方もおられました。

うつが解消されるというのはどういうことでしょうか?頭蓋内出血への不安が減るからでしょうか。このあたり,医師の説明がかなりのウェィトを占めるかと思われます。エビデンスをどの程度伝えるか,理解度も問題ですし..

$$$ 最近いい写真がないので,ちょうど1年前の朝ごはんをupします。1年前は入院中でリハをしていました。食事だけが非常に楽しみで,1食1食信じられないくらい美味しく感じたんですね。病院の名誉のために言いますと,ここの病院食は普段から十分美味しいのですが(^^;),人間,食というものの生命維持における比重が高いと,食べ物が美味しく感じられるようにできているのかもしれませんね。
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by dobashinaika | 2015-08-25 22:15 | 抗凝固療法:ダビガトラン | Comments(0)

大きな血栓が卵円孔開存をくぐりぬける初の画像:EHJ誌

First direct evidence of a Patent Foramen Ovale (PFO): a large thrombus straddling the foramen ovale
Xiaoke Shang et al
European Heart Journal First published online: 19 August 2015


40歳男性、2年前からの動機と胸痛があり20時間前に意識消失を起こし入院した患者さんの症例報告です。
入院1ヶ月前に左踵の骨を事故で骨折しています。
心エコーで、39x18mmの大きな血栓が心房中隔をまたいで右房から左房に行こうとしているのが見えます(A)。
胸部CTでは左房と右房、肺動脈分岐部に欠損像があります(B)。
脳CTではみ右頭頂葉に低吸収域が認められます(C)。
下肢静脈エコーでは左膝窩静脈遠位部に血栓塞栓陰影が認められます(D)。
肺動脈血栓除去術を施行され肺の血栓を除去されております(E)。
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### 筆者によれば卵円孔開存をまたぐ形で血栓が記録されたのは初めてとのことです。
サイトにはビデオもアップされていますのでご参照ください(アクセスフリー)。

原因不明の脳卒中の何%かはいわゆるこうした奇異性脳塞栓と言われていますが、こんなに大きな血栓ができるんですね。
卵円孔開存をくぐり抜けるて症状を引き起こすのにマッチした大きさなのかもしれません、大きすぎても越せないし、小さいと症状には現れないので。

踵の骨折など、だれでも起こすわけで、そのうちどのようなひとがこんな血栓を作ってしまうのかが知りたいところです。
骨折のたびに抗凝固薬を飲むわけにも行きませんし。
卵円孔開存は一説には一般住民の20%にも存在するとも言われていますので、少々怖くなりました。

$$$ ブログは、こういう興味深い論文を忘れないための自分にとっては備忘録の面が強いですね。選ぶ論文もだいたいが毎日の臨床で疑問に思っていたことに関連するものです。ただ、公開してコメントをつけることで、よりしっかり読もうという気になるし、批判的に読む訓練になると思い長年やっています。批判的吟味というにはほど遠いですが。まあこれは誰がなんと言ったってやめられません。

毎日日の出が遅くなっていきますね。これは数日前
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by dobashinaika | 2015-08-23 21:22 | 循環器疾患その他 | Comments(0)

週55時間以上労働は脳卒中や冠動脈疾患リスクを高める:Lancet誌

Long working hours and risk of coronary heart disease and stroke: a systematic review and meta-analysis of published and unpublished data for 603 838 individuals
Mika Kivimäki et al
Lancet Published Online: 19 August 2015


目的;長時間労働は心血管イベントリスクを高めるのか?

方法:メタ解析

結果:
1)25研究。虚血性心疾患アウトカム603,838例、脳卒中アウトカム528,908例

2)虚血性心疾患4768件(8.5年)、脳卒中1722件(7.2年)

3)長時間労働(55時間/週)は標準労働(35〜40時間/週)に比べ、虚血性心疾患1,13倍(1.02〜1.26, p=0.02)、脳卒中1.33倍(1.11〜1.61, p=0.002)

4)他の因子で補正ても脳卒中リスクは変化なし

5)労働時間とリスクには量ー反応関係あり:ハザード比=労働時間41〜48時間1.10、49〜54時間1.27、55時間以上1.33

結論;長時間労働は、標準労働に比べ脳卒中のリスクを高める。その相関は冠動脈疾患では弱まる。長時間労働ではより血管リスクの管理に注意が必要

### 週55時間だと、週休2日として1日11時間労働です。多くの医療者はこれに引っかかりそうですね。特に脳卒中に関係有りということは、血圧がやはり絡んでるのかと思われます。またストレスもより直接的には脳血管に悪影響があるのかもしれません。

気をつけないと

$$$ 今日のにゃんこ。
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by dobashinaika | 2015-08-20 23:18 | 虚血性心疾患 | Comments(0)

80歳以上のどの程度の「フレイル」に抗凝固薬を使用するか(カナダ)」CJC誌

The Effect of Bleeding Risk and Frailty Status on Anticoagulation Patterns in Octogenarians With Atrial Fibrillation: The FRAIL-AF Study.
Lefebvre et al
Can J Cardiol. 2015 May 27; . PMID:26277091



目的:80歳以上の人の抗凝固療法の安全性,有効性とフレイルについて比較検討

方法:
・モントリオーにおける80歳以上の心房細動または粗動による入院患者682名のクロスセクション分析
・Clinical Frailty Scale (CFS:臨床フレイルスコア)をカルテから算定

結果:
1)抗凝固薬使用率:70%

2)抗凝固薬使用の促進因子:
・高CHADS2スコア:3点のオッズ比(1点に比べて)=3.58
・フレイルなし:CFS7点未満のオッズ比:3.41

3)抗凝固薬使用の抑制因子:
・HASBLEDスコア:3点以上のオッズ比:0.33

結論:私たちの研究では従来の報告に比べて80歳以上の人に適切な抗凝固薬が使用されていることが示唆された.さらなる研究必要

### こちらのサイトを見ますとCFS6点は「中等度フレイル」すなわち「外出時や家事全般の見守り必要および入浴介助,着替えの見守り」程度となっています,要介護2程度かと思われます.
http://geriatricresearch.medicine.dal.ca/clinical_frailty_scale.htm

これくらいの方であればカナダの病院では積極的に抗凝固薬を出しているようです.反対に7点ですと「6ヶ月以上,寝たきりまでは行かないが生活全般のケアが必要の場合」となります.
要介護3くらいでしょうか.実臨床の感覚として要介護2と3の間付近が抗凝固薬を出す出さないの分かれ目と言うのは理解できます.

カナダではこのような観点からすれば80歳以上の人の70%は抗凝固薬が使用されています.もちろん病院入院の方なので,比較はできませんが,日本の登録研究などでは50%弱の投与率だと思いますので,積極的に出すコホートだと言うことができるかと思います.

日本では実際は要介護2でも出さない医師も多いのではと思われます.

$$$ 蔵王の緑陰にひっそり佇む美術館。ここは日本画の宝庫です。そう遠くないところにこんな静逸な空間がある幸せ。
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by dobashinaika | 2015-08-19 20:46 | 抗凝固療法:リアルワールド | Comments(0)

リバーロキサバンのモニターにコアグチェックが有効か;Stroke誌

Point-of-Care Testing of Coagulation in Patients Treated With Non–Vitamin K Antagonist Oral Anticoagulants
Matthias Ebner et al
Stroke Published online before print August 13, 2015


目的:コアグチェックでNOACのモニターは可能か

方法:
・虚血性脳卒中で新たにNOACを開始した60例
.6ポイントの採血.コアグチェック測定及び検査室での下記のアッセイ施行;PT,aPTT抗Xa活性,ヘモクロット,直接の血中濃度

結果:
1)356検体

2)コアグチェックの結果はリバーロキサバン血中濃度と強く相関(相関係数0.82.P<0.001)

3)ダビガトラン,アピキサバン血中濃度とは相関なし

4)低濃度のリバーロキサバンを評価する場合,コアグチェックはたとえ鋭敏な試薬を使用した場合で
も正常なPT,aPTTの予測能を上回る

5)コアグチェックの結果が1.0以下のリバーロキサバン血中濃度に対する特異度は.血中濃度32未満は90%,および100ng/mL未満は96%

結論:脳卒中急性期のリバーロキサバン使用時に,もしXa活性が測定できない場合,コアグチェックはおすすめできる

### 興味深いデータです.対象は二次予防の患者さんですが,リバーロキサバンであればとくにコアグチェックが低値なら,血中濃度も低いことが予測できるとのことです.

コアグチェックはPT-INRを測定しますが,PTとあまり相関のないダビガトラン血中濃度や,あっても上下の少ないアピキサバン血中濃度では相関が薄い一方,1日1回でピ−クとトラフのはっきりしているリバーロキサバンであれば,ある程度相関するということかと思われます.

当院では最近,NOACの患者さんでも,アドヒアランスが不安な患者さんなどに「飲んでいない」ことを探るために3〜4ヶ月に1回,ピークのタイミングで採血することにしています.ダビガトランはaPTT,リバーロキサバン,アピキサバンはPT(試薬:リコンビプラスチン)を測定し全然上昇していない時に,飲んでいないことを疑うということにしていました.

もしコアグチェックが使えるなら簡便でいいですが.追試を期待します.

$$$ 雨上がりの早朝,秋の雰囲気漂う春日神社の境内です.今までこの空気感を味わなかったのはもったいなかった,そう思わせられるほどの清澄さ
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by dobashinaika | 2015-08-18 18:50 | 抗凝固療法:リバーロキサバン | Comments(0)


土橋内科医院の院長ブログです。心房細動やプライマリ・ケアに関連する医学論文の紹介もしくは知識整理を主な目的とします。時々日頃思うこともつぶやきます。


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もう怖くない 心房細動の抗凝固療法


プライマリ・ケア医のための心房細動入門

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治療 2015年 04 月号 [雑誌]

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ケアの本質―生きることの意味


ケアリング―倫理と道徳の教育 女性の観点から


中動態の世界 意志と責任の考古学 (シリーズ ケアをひらく)


健康格差社会への処方箋


神話・狂気・哄笑――ドイツ観念論における主体性 (Ν´υξ叢書)

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