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日本人にCHA2DS2-VAScスコア、HAS-BLEDスコアは当てはまるか?:CJ誌

Circulation Journal 7月号

Validation of CHA2DS2-VASc and HAS-BLED Scores in Japanese Patients With Nonvalvular Atrial Fibrillation – An Analysis of the J-RHYTHM Registry –
Ken Okumura et al
Circ J 2014; 78: 1593 – 1599


疑問:日本人にCHA2DS2-VAScスコア、HAS-BLEDスコアは適応できるか?

方法:
1)J-RHYTHMレジストリーの登録患者6387人のCHA2DS2-VAScスコア、HAS-BLEスコアとアウトカムの関係を、ワルファリン服用者と非服用者(997人)とで比較
2)CHA2DS2-VAScスコアのVは「冠動脈疾患」で置き換えてmCHA2DS2-VAScスコアとする
3)HAS-BLEDスコアのHは血圧140以上(登録時)、L は「INR3.5以上」、Dは「抗血小板薬併用」で置き換えてmHAS-BLEDスコアとする
4)追跡期間2年

結果;以下のグラフ
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結論:
1)mCHA2DS2-VAScスコアは、日本のNVAF患者で血栓塞栓症が真に低リスクな人を見分けるのに有用
2)女性はリスクとしては除外できる可能性
3)mHAS-BLEDスコア3点以上は大出血の高リスク群

### CHADS2スコアやCHA2DS2-VAScスコアが日本人でも当てはまるのかという(シニカルな?)問いがありますが、それに関連した論文です。

CHA2DS2-VAScスコア0点の場合、非服用群でも年間血栓塞栓症発症率が0.7%と低率でした。また「女性」というリスク項目を外してもイベント発症率にあまり違いはなかったとのことです。
また、ワーファリン群ではHAS-BLEDスコア2点では大出血率年間1%ですが、3点からは2.4%と上昇していました。

概ね日本人でも、上記の結論は適応できそうですね。

ただ服用群と非服用群の比較から、何点以上なら服薬したほうが良いとまではいえません。観察研究なので、非服用群の背景のほうが当然軽症の人ですので。

それにしても日本人の血栓塞栓症は、欧米データよりはすくないですね。一応よく引用されるグラフを掲載しておきます。

CHADS2スコア
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CHA2DS2-VAScスコア
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by dobashinaika | 2014-06-30 18:47 | 抗凝固療法:適応、スコア評価 | Comments(0)

日本の現場での心房細動抗凝固薬使用状況とアウトカム:伏見AFレジストリー1年後の結果:CJ誌

Inappropriate Use of Oral Anticoagulants for Patients With Atrial Fibrillation
– 1-Year Outcomes of the Fushimi AF Registry –
Masaharu Akao et al
http://dx.doi.org/10.1253/circj.CJ-14-0344


疑問:日本のコミュニティーにおける抗凝固療法の現状はどうか?

方法:
1)FUSHIMI AF Registry登録患者3282人(伏見区人口283,000人)を1年間追跡
2)アウトカム;抗凝固薬の服用状況、脳卒中、大出血

結果:
1)2,914人追跡:追跡率88.8%

2)抗凝固薬の使用:1546人53.1%:大多数がワルファリン
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3)PT-INRの至適範囲内患者:54.4%(日本のガイドライン基準に基づく)

4)脳卒中;抗凝固薬内服者2.7%vs. 非内服者2.8%:有意差なし

5)虚血性脳卒中:内服者2.1% vs. 非内服者2.0%:有意差なし

6)大出血:内服者1.4% vs. 非内服者1.5% :有意差なし
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結論:FUSHIMI AF Registryは、日本の都市のコミュニティーにおける心房細動管理の現在をユニークに切り取っている。本研究では、心房細動患者に対する抗凝固薬の不適切な使用が明らかになり、ガイドラインとリアルワールドの不一致が示された。

### 国立病院機構京都医療センターの赤尾先生のグループから伏見AFの1年後フォローアップデータが発表されています。既に今年の日本循環器学会で発表され、本ブログでも取り上げさせていただきました。

確認事項ですが、抗凝固療法施行率は登録時は53.1%、1年後は54.6%でした。使用薬剤の50%がワルファリンで、ダビガトランとリバーロキサバンは数%でした。のこり30%程度は抗血小板薬でした。またPT-INRのデータは登録時のワンポイントのものとのことです。

本文をさらに読みますと、CHADS2スコア2点以上の患者では使用率がやや増えますが、それでも3点以上で68%、代わりに0点でも40%弱の人に抗凝固薬が処方されていました。

ワルファリンからNOACへの切り替えは約5%の患者にしか見られず、ダビガトラン開始者の23%が何らかの理由で内服を中止しました。また10%の人がNOACを新規で処方されましたが、やはり新規も大部分はワルファリンでした。なお登録期間は2011年3月〜2012年10月までの患者さんですので、そこから1年ということは、ダビガトラン発売開始直後から、リバーロキサバン発売1年半後までの期間が含まれることになりますね。

さらに、PT-INRはガイドラインで定められた至適範囲にあった患者さんは、70歳未満では26.5%に過ぎず、逸脱者の大半は2.0より低めに管理されていたとのことです。

そして、やはり衝撃的だったのは、この集団内では抗凝固療法をしてもしなくても、脳卒中と大出血の発現率に差がなかったということですね。
ただし、表2でもあるように、実際は抗凝固療法を受けていない層というのは、低年齢で、心不全や脳卒中の既往のない例が多く、より低リスクの患者さんが多く、患者背景は異なっているということはできます。

それにしてもRELY試験ではダビガトラン150mgの脳卒中発症率は年間1,11%(ワルファリンでも1.71%) ですので、それらのいずれよりも伏見の抗凝固療法群は発症率が多いです。一方、大出血はRELYのダビ110では2,71%、ARISTOTOLEのアピキサバンでは2,13%ですから、本研究の1.4%はかなり低いことになります。

個人的に興味深かったのは、表2で抗凝固療法のインセンティブは男性、年齢、心不全、脳卒中の既往、持続性かどうかが関与しており、高血圧、糖尿病は影響していなかったといことですね。こうしたデータなど、現場の感覚が肌で伝わってきます。

70歳未満でもINR1.6~2くらいを目指してワルファリンを出している。高血圧や糖尿病だけの人にはなかなか手を出さない。この論文を読んでいると私自身も確実に持っている、そういうリスク回避の心象が、はっきり浮かび上がります。

スコアマッチングさせての比較だとどうなるのか。NOAC登場で今後この数値がどうなるのか。興味がつきません。
by dobashinaika | 2014-06-27 23:25 | 抗凝固療法:リアルワールド | Comments(0)

長時間モニターすると原因不明の脳卒中の何割に心房細動がみつかるのか?:NEJM誌から2論文

NEJM 6月26日号

Atrial Fibrillation in Patients with Cryptogenic Stroke
David J. Gladstone et al
N Engl J Med 2014; 370:2467-2477


疑問:原因不明の脳卒中のうちどのくらいが心原性なのか?

P:55歳以上で心房細動がなく、過去6ヶ月以内の原因不明(ホルター心電図後も)の脳卒中/TIA患者

E:30日間のイベントレコーダー(介入群)

C:従来のホルター心電図(対照群)

O:一次エンドポイント:新たな心房細動の同定(30秒以上、登録90日以内)、二次エンドポイント:2.5分以上の心房細動と90日後における抗凝固療法

結果:
1)30秒以上の心房細動;介入群16.1%(45/280)vs. 対照群3.2%:絶対リスク差12.9%;P<0.001、NNS(number neeeded to screen)=8
2)2.5分以上の心房細動;介入群9.9%(28/280)vs. 対照群2.5%:絶対リスク差7.4%;P<0.001
3)90日までに抗凝固薬を処方された例;介入群18.6%(52/280)vs. 対照群11.1%:絶対リスク差7.5%;P=0.01
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結論;55歳以上の原因不明の脳卒中においては、発作性心房細動は普通。30日間の非侵襲的なホルター心電図は、通常の24時間ホルター心電図に比べ5倍の心房細動を同定死、抗凝固薬処方を2倍増やした。

### 今週号のNEJMは、昨日の当ブログに呼応するかのように心房細動の診断に関するペーパーが2題掲載されています。

まずはEMBRASE試験から
30日間イベント・モニターはBraemar社のER910AF Cardiac Event Monitorという1チャネルモニターを使用していますね。上半身2ヶ所に電極を装着して、RR間隔が不整の時をセンスして、遠隔転送されるシステムのようです。こちらを参照ください。
http://www.davismedical.com/Braemar-ER910-Cardiac-Event-Monitor---1-Channel634745048942864134

これを使うと、従来の24時間ホルターよりも5倍の16%の頻度で心房細動が見つかるとのことです。
この研究の臨床的意義は大変大きいです。なぜなら脳卒中語の抗血栓療法は通常なら抗血小板薬ですが、心原性脳梗塞であれば抗凝固薬でないと再発は防ぎきれないからです。ということで、特に心原性脳塞栓を疑わせるような、急発症で比較的大梗塞の場合は、何が何でも心房細動を同定したいところだと思います。

実際には、臨床的に心原性脳塞栓を疑わせれば心房細動の記録がなくても抗凝固薬が処方されるケースも多いと思いますが、しっかりと証拠があるに越したことはありません。

デバイスが簡便であれば、これから実用化されるものと期待されます。ただし正確な心房細動の持続時間までは検討していませんし、30分秒以上が1回でも記録されれば、試験はそこで終了と思われますので、そこはlimitationかと思われます。

もう一つのCRYSTAL AF試験の方は、メドトロニック社の植込み型モニターを皮膚の下に植えこんで記録するというものです。これは心房細動の記録はほぼ完璧かと思われます。これを12ヶ月植えこんで30秒以上の心房細動を同定するというものです。
http://www.medtronicdiagnostics.com/us/cardiac-monitors/Reveal-XT-ICM-Device/index.htm
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こちらは6ヶ月までで植え込み群は8.9%(対照群1.4%)、12ヶ月までで植込群12,4%(対照群2.0%)に心房細動が見つかっています。対象は40歳以上の90日以内に生じた原因不明の脳卒中/TIA症例です。

両試験とも対照群を置いたところが、これまで研究とは格段の信頼性があるわけですが、両者の発見率の違いが気になりますね。
Editorialでは、年齢の違いに由来するのではと言っています。
http://www.nejm.org/doi/full/10.1056/NEJMe1405046

ただし、侵襲性やコストの面から、実際には植込み型モニターは普及しないだろうと思います。
また、Editorialによれば、CRYSTAL AFの方で3年まで見た場合の同定率でも3割位とのことですから、原因不明の脳卒中は、体の中にモニターを植えこんでさえ多くの人で原因がわからないことになります。
もっと別なマーカーが必要のように思われます。

もうひとつ,この2論文を読んで再考が必要と思うのは、カテーテルアブレーション後のフォローアップです。実は24時間心電図だけでは全然甘いのではないかと思わせられます。

これまでの脳卒中後の心房細動同定に関するシステマチックレビューはこちら
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/24385275?dopt=Abstract

無症候性心房細動のスクリーニングデバイスの総説はこちら
http://dobashin.exblog.jp/14712190/

植え込み型モニターの論文
http://dobashin.exblog.jp/14712190/
by dobashinaika | 2014-06-26 18:59 | 心房細動:診断 | Comments(0)

心房細動の早期発見っていいことなの?偶然見つかった心房細動の予後:T/H誌

Thrombosis and Haemostasis 6月18日オンライン

Adverse prognosis of incidentally detected ambulatory atrial fibrillationA cohort study
C. Martine et al


疑問: ホルターで偶然見つかった心房細動の予後と抗凝固薬への反応はどうか?

P:UK Clinical Practice Research Datalink登録患者(GP通院):3年追跡

E:ホルター心電図で偶然心房細動が見つかった5555例;平均70.9歳、女性38.4%

C:年齢、性別マッチの心房細動無し群24705例

O:脳卒中、全死亡、心筋梗塞、大出血、抗凝固薬の効果

結果:
1)AF群はCHA2DS-VAScスコア平均2.5点、73%以上が2点以上

2)脳卒中:AF群19.4(17.1−21.9)/1000人年 vs. 対照群8.4(7.7−9.1);p<0.001

3)死亡率:AF群40.1(36.8−43.6)/1000人年 vs. 対照群20.9(19.8−22.0);p<0.001

4)心筋梗塞:AF群9.0(7.5−10.8)/1000人年 vs. 対照群6.5(5.9−7.2);p<0.001

5)全アウトカムは年齢とともに増加

6)抗凝固薬±抗血小板薬服薬:51.0%

7)抗凝固薬±抗血小板薬内服のアウトカムに及ぼす影響(ハザード比)
脳卒中0,35、死亡0.56

8)抗血小板薬のみはアウトカムに影響せず。大出血が若干増加

結論:偶然見つかった無症候性心房細動は、明らかに脳卒中や死亡が多かった。抗凝固薬はそれらの抑制に効果があったが抗血小板薬はなし。
この研究は診断されていない心房細動のスクリーニングの費用対効果を正当化する

###除外基準として、心疾患の既往、抗不整脈薬、抗凝固薬の服用、入院中の記録、動悸などの症状のあるときの心電図などがあります。
本当に偶然発見された無症候性の心房細動が対象ということです。

というこで、大変インパクトのある研究ですね。無症候性心房細動のあるなしで、脳卒中、死亡率とも2倍くらい発現率が違っています。さらに抗凝固薬がそのリスクをかなり減らすというものです。

これまで早期発見が大切というデータは同雑誌からいくつか出ておりましが、対照群との比較でアウトカムまでしっかり追った研究は初めてです。

さて、「早期発見」はほんとうに良いことでしょうか?
がん検診については全てのがん検診が一般住民というpopulationにおいて死亡率を減らすわけではないことが示されていますね。がんを早期に発見して早期に手術などを行った場合、その後長期に渡る手術後生活までトータルに考えた場合、必ずしも予後を良くしないという理屈ですね。

心房細動はどうでしょうか?CHADS2スコアが例えば2点以上であれば、出血リスクは梗塞リスクを下回るから、それはできるだけ早く介入して抗凝固薬を飲んだほうがいい。がん検診とはちょっと違う。そういう気もします。本論文はそうした推測を裏付けるデータかもしれません。

ですが、、早期発見には別な問題が横たわります。無症候性の人にハイリスクな抗凝固薬を長期にわたって飲むことに合意形成が得られるかということです。特に若い方。65歳高血圧、ホルターでたまたま心房細動が見つかった。この人に抗凝固薬を出しますかということです。症状がなにもないのに、です。

出血リスクの重大性を聴いて尻込みをする人もいるかもしれません、そのストレスも過小評価できません。
そう考えると、がん検診と同じように、本来は前向きの無作為試験(無理なら前向きコホート)を行ってできるだけバイアスを振り払う必要があると思われます。

早期発見ということに関しては、あくまで慎重なんですねー。私の場合。
by dobashinaika | 2014-06-25 23:01 | 心房細動:診断 | Comments(0)

左房の構造と機能は心房細動や脳卒中と関係するか?:EHJ誌

Eur Heart J (2014) 35(22): 1457-1465.

Left atrial structure and function in atrial fibrillation: ENGAGE AF-TIMI 48
Deepak K. Gupta et al

疑問:左房の構造や機能は脳卒中と関係有るのか?

P:ENGAGE AF-TIMI48試験登録患者の心エコーで前向きに左房につき精査した例

E/C:左房サイズ、emptying fraction(LAEF)、収縮能

O:CHADS2スコア、心房細動の負担(発作性、持続性。永続性)

結果:
1)多数例(55%)で左房拡大とLAEFの低下を認めた:両者は負の相関

2)心房細動の負担(継続時間)、CHADS2スコアと左房サイズは正比例、LAEFは反比例

3)19%で、LAEF低下かつ左房サイズ正常

4)左房収縮能低下は洞調律時に見られた
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結果:今回の対象では、左房の構造と機能の異常は、心房細動の持続時間やCHADS2スコアに関連あり。その上、左房機能低下は洞調律で左房サイズ正常例でも見られ、このことは左房機能がより重要な情報であることを示唆する。

### LAEFというのは、(左房の最大容積ー最小容積)/左房最大容積だそうです。

心エコーでの左房機能や左房径をCHADS2スコアに追加すると診断精度が向上するという報告はあります。
http://dobashin.exblog.jp/13511523/

CHADS2スコアは簡便さのため、グローバル化していますが、たとえば、高血圧、糖尿病などは、その重症度によってもだいぶ違うし軽症高血圧が脳塞栓のリスクになるとは、なかなか信じられない面が今でもあります。

本音を言うと、CHADS2スコアいいけれど、もうちょっと精度を上げることを考えてもいいのではとかねがね思っていました。

プライマリ・ケア医には、縁遠いわけですが、この論文などを参考に専門医主体で、このLAEFなどを加えたより正確なmodified CHADS2スコアを創出できるかもしれませんね。ただし、たとえばLAEFのカットオフ値をどこに置くかなど難しい問題が出ては来ます。

それと、発作性心房細動で、なぜ持続性と脳塞栓率が同じなのかの答えの一端がこの論文でもかいま見えるというか、洞調律であっても左房機能が低下している例があるわけで、こうした例が脳塞栓を起こしやすいのか、検討して欲しいです。
by dobashinaika | 2014-06-24 23:14 | 心房細動:リアルワールドデータ | Comments(0)

リバーロキサバンの大規模観察研究:CMRO誌

Real-world comparative effectiveness and safety of rivaroxaban and warfarin in nonvalvular atrial fibrillation patients
François Lalibertéet al


疑問:リバーロキサバンのリアル・ワールドでの成績はどうか?

方法:
・Symphony Health Solutions’ Patient Transactional Datasets (2011年5月〜2012年7月)を使用・180日間の観察期間の間に、2回心房細動と診断され(ICD9-CMによる)あらたにリバーロキサバンまたわワルファリンが投与されたひと
・CHADS2スコア1点以上
・1:4の比率でプロペンシティースコアマッチング
・アウトカム:大出血、頭蓋内出血、消化管出血、脳卒中/全身性塞栓症、静脈血栓塞栓症
・Coxハザードモデル

結果:
1)リバーロ群3654例、ワルファリン群14616例;患者背景の標準偏差は10%未満

2)大出血、脳卒中/全身性塞栓症で有意差なし

3)静脈血栓塞栓症:リバーロが少ない:ハザード比0.36(0.24-0.54,p<0.0001)

4)リバーロキサバンは、ワルファリンより非継続性が低かった:ハザード比0.66

限界:
クレームデータなので診断精度に欠ける。死亡率や検査データは利用できない。交絡因子の存在は残る。早期に使用しその後変わった可能性もある。

結論:リアル・ワールドでは、リバーロキサバンとワルファリンは、脳卒中/全身性塞栓症、大出血、頭蓋内出血、消化管出血の発現率に有意差なし。しかし、リバーロキサバンは静脈血栓塞栓症は有意に減らした。

### ちょっとマイナーな雑誌だったので、長らく気づかないでいた論文です。リバーロキサバンとしては、これほど大規模な観察研究の報告は初めてかと思います。

まず患者背景は、平均年齢は両群とも73歳台、平均CHADS2スコアは1.1〜1.2点。平均HAS-BLEDスコアは1.9点。
継続性なしの定義は、他の補充なしに処方薬を飲みきったあと60日以上の開きがある場合と定義されています

ROCET-AF試験との違いは、頭蓋内出血と消化管出血に差が見られなかったことですが、追跡期間が短い、診断がICDコードのみで行っている、交絡因子が完全に払拭できないなど、様々な因子が絡んでいるものと思われます。
また95%CIが幅広いのでNが少ない可能性がありますが、イベントの実数が記されていないので、ぜひ知りたいところです。

リバーロキサバンの強みである忍容性はやはり良かったようで、この定義でいうところの継続性が保たれていたのはリバーロ群で81.5%、ワルファリン群で68.3%(6ヶ月)でした。同様の調査をダビガトランでしたところでは、ダビガトラン71.8%(この時ワルファリンは53.3%)とのことです。

CHADS2スコア1点を多く含む集団でも、リバーロキサバンはワーファリンと同等の有効性、安全性が示されたことは意義深いとも思いますが、細かいところをより知りたいですね。
by dobashinaika | 2014-06-24 00:16 | 抗凝固療法:リバーロキサバン | Comments(0)

英国NICEの心房細動ガイドラインが改定になりました。

英国NICE(英国王立臨床評価研究所)の心房細動ガイドラインが8年ぶりに改定になりました。
http://guidance.nice.org.uk/CG180/NICEGuidance/pdf/English

ダビガトラン、リバーロキサバン、アピキサバンの各薬剤ごとに、どんな場合に推奨されるのかが詳しく記載されています。

このガイドライン、とてもかっこいいです。
何ががと言うと、NICE のガイドラインは大体そうですが、各項目が短いセンテンスで箇条書きのように連なっておりとても読みやすいのです。
各ステートメントの冒頭は「1.5.12」のようにチャプターの階層を示す連番が付けられていて、さながらガイドライン界の「論理哲学論考」のような様相を呈しております。

"Patient-centred care"の項目が冒頭に来ているのもうれしいです。

内容はまだ深く読んでいませんが、今後おいおいご紹介していきます。

同時にNICEからのコンセンサスステートメントが発表されていますが、さすがというか、地方行政に対し、NOACの導入を促進させる政策を勧奨したり、地域でNOACの普及に関して旗振り役となる医師=local anticoagulant championsの必要性も謳われています。

また昨日取り上げたshared decision makingの重要性も強調されています。
http://guidance.nice.org.uk/CG180/NICConsensusStatement/pdf/English

あわせてやはり昨日も取り上げた意思決定支援ツールも提示されています。
http://guidance.nice.org.uk/CG180/PatientDecisionAid/pdf/English

個人的には、そこまでNOAC礼賛でいいんかいという感じや、この意思決定のツールが日本人のリスク感覚に合うんかいなとも思っています。

えー全文読んで消化したら、また紹介いたします。
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by dobashinaika | 2014-06-20 23:40 | 抗凝固療法:ガイドライン | Comments(0)

拙著「プライマリ・ケア医のための心房細動入門」がkindle化されました

拙著「プライマリ・ケア医のための心房細動入院」が発売2ヶ月半で早くもkindle化されました。

こちらから購入が可能です。
こちらの方も何卒よろしくお願い申し上げます。

http://www.amazon.co.jp/o/asin/B00L32K7WU/amarare-22
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by dobashinaika | 2014-06-20 23:13 | 心房細動診療:根本原理 | Comments(0)

心房細動におけるShared Decision Making(3):Circulation誌

たくさん読みたい論文はあるのですが(特に、EHJの先月号のLeft atrial structure and function in atrial fibrillation: ENGAGE AF-TIMI 48は、心房細動の本質を考えさせられる良い論文ですね)ちょっと原稿が重なっていて、ゆっくり読めませんので、以前から途中で終わっていたShared Decision Making (SDM)論文の続きを大雑把にまとめます。

【症状管理のSDM】
・第1にレートを落とす、第2に洞調律を維持する、を目標とする
・抗不整脈薬はレートコントロールよりもベネフィットに欠けるとのいくつかの大きな試験あり
・アブレーションはQOL改善には良いが予後改善は不明
・であるので、これこそSDMが理想のアプローチの分野
・しかるに、良いエビデンスがない

【血栓塞栓予防のSDM】
・ガイドライン通りに抗凝固療法が施行されている患者は全体の51%
・その理由は様々
・ワルファリンは単独で出血リスクを年間4%増やす
・抗血小板薬を併用していればリスクはその3倍

・SPAF試験のアスピリン群287例対象の研究では、意思決定支援ツールを使った患者は、従来のカウンセリンクのみに比べて心房細動への理解が改善した
・ただし、意思決定後の後悔や自責の念は同じ
・アスピリンからワーファリンへの切り替え症例率も同じ
・ただし、対象は低リスクで、支援ツールは個別ではないオーディオブックレットと受診前に書き終えるワークシートのみ

・もう一つの最近の研究ではSDMの方法は、意思決定時の迷いを減らし、満足感と知識を高めた。
・NOACの登場で選択肢が増え、より意思決定が複雑になった

【未来のスタディ】
・これまで小規模スタディのみ
・これからは、意思決定時の会話などに絞っての大規模試験が必要
・3分以上の面接が有効である
・心房細動におけるケアの質が進歩し正当化される必要あり

・重要なアウトカムとしては患者の選択肢に関する知識、患者の議論への参加、意思決定の質
(選択と患者の価値観との一致)、患者満足度、通院期間がある・それに加えて治療へのアドヒアランスは大変重要

【結論】
・臨床上の意思決定における患者参加によるSDMは、心房細動管理の患者中心的本質をより高める可能性を秘めたパワフルツールである
・心房細動のSDMの構成員は患者及び、各選択肢のリスク、ベネフィット、患者の環境や目標、好みにあっているかの評価を行う医師である。
・心房細動患者はSDMの利益を被る

意味ある選択肢を教えられること、リスク計算機やツールを与えられること、治療のゴールや価値、患者の好みその選択肢を決める文脈、そして患者自身は決定権を握ることの重要性(患者の行動を要する決定の場合:例)ワーファリンのモニタリングを食事規制)などの面から
・さらなる検討を

###キモは意思決定ツールやコミュニケーションの仕方ですが、これについてはもう少し詳しい説明がほしいところです、個々の論文に当たれということかと思います。これ読んでいると、当院で行っている看護師とのコラボによる解釈モデルの共有に加えて、ゴール、リスクベネフィット、リスクヘッジ方の共有という「4つの共有」がかなりいい線いくんじゃないかと思えてきました。なんとか論文化したい気がします。
by dobashinaika | 2014-06-20 00:34 | 心房細動診療:根本原理 | Comments(0)

SSRIはワルファリンによる出血を増加させるか:AJC誌

AmJ Cardiol オンライン版

Effect of Selective Serotonin Reuptake Inhibitors on Bleeding Risk in Patients with Atrial Fibrillation Taking WarfarinGene R. Quinn et al
doi:10.1016/j.amjcard.2014.05.037


疑問:SSRIはワルファリンの出血を増加させるか

P:ATRIA研究13559人のうちワルファリンのフォローアップのできた9186人

E:SSRI

C:三環系抗うつ薬

O:大出血による入院:既存の出血リスクとINR3以上の時間で補正

結果:
1)大出血:461出血/32888人年
SSRI使用:45出血
三環系抗うつ薬:12出血
どちらも服用なし:404出血

2)大出血率:SSRI2.32%/人年 vs. 三環系1.30%/人年:p<0.001

3)三環系と服薬なし(1.30%)では有意差なし

4)補正後大出血リスク(対無投薬)
SSRI:RR 1.41, 1.04-1.92, p-0.03
三環系: RR 0.82, 0.46-1.46. P=0.50

結論:
SSRIはワルファリン服用患者の大出血リスクを高めた。抗うつ薬選択には注意が必要。

### SSRIがそれ自体出血リスクを高めるという観察研究はけっこうあります。さらにNSIADや抗血小板薬の併用でさらにリスクが増すとの報告もあります。
ビタミンK阻害薬の報告あり、以下の報告では消化管出血以外の出血が増えたとのことです。
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed?term=18227365

その機序としてはSSRIですので、血小板内のセロトニン濃度をも低下される→セロトニンによる血小板凝集促進作用が抑制されるためですが、ワルファリンとの相互作用としては、当然CYP2C9を阻害するため、作用が増強されることがあります。

ちょっと調べたところでは、CYP2C9代謝に影響あるのは、フルオキセチン(プリザック、日本未承認)、フルボキサミン(デプロメール)、セルトラリン(ジェイゾロフト)がありますが、添付文書では、パロキセチン(パキシル)、デプロメールだけ記載があるようです。

この報告はSSRIとワルファリンの関係を評価した中では最大のものと思われ、各種補正もしてあり一定の参考になるものと思われます。1,4倍出血を増やすとなると、今までよりさらに注意が必要かもしれません。
by dobashinaika | 2014-06-18 18:20 | 抗凝固療法:ワーファリン | Comments(0)


土橋内科医院の院長ブログです。心房細動やプライマリ・ケアに関連する医学論文の紹介もしくは知識整理を主な目的とします。時々日頃思うこともつぶやきます。


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