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今年2013年の心房細動関連論文ベスト5+α

今年も暮れようとしています。
恒例の今年の論文ベスト5をアップすることに致します。

今年は長期的に見て臨床医への影響が大きい論文と,私自身の診療において行動変容を起こさせた論文に分けてみました。

まず「影響力」の観点から

第5位:ENGAGE AF-TIMI48
http://dobashin.exblog.jp/i36
これは入れざるをえないでしょう。エドキサバンの大規模試験。
用量設定,薬価,ガイドラインに入るのかなど,業界的には注目度大きいようです。

第4位:RE-ALIGN
http://dobashin.exblog.jp/18503148/
ダビガトランは弁膜症性心房細動には害はあれども利益なしという論文。
ワルファリンの偉大さを改めて認識します。

第3位:J-RYTHM Registry INR管理別
http://dobashin.exblog.jp/17866349/
70歳以上はINR1.6〜2.6で有効かつ安全であることの検証です。70歳以下ではINR管理が適切ならイベントが大変少ないことも読み取れます。

第2位;FUSHIMI AF Registry
http://www.journal-of-cardiology.com/article/S0914-5087(13)00005-1/abstract
日本の,しかもプライマリ・ケア医主体の医師集団が,最近どのような抗凝固療法を行っているのかをある程度正確に把握し得た素晴らしい研究です。やはり,かなりアンダーユーズであることが明らかになりました。今後アウトカム論文が続々と出ると思うと楽しみです。
なおじっくり全文読んでアップしようと思いながらブログで取り上げずじまいでした。すみませんです。

第1位:Xa阻害薬の中和薬に関するNature Medicineの論文
http://dobashin.exblog.jp/17716782/
中和薬が出てはじめて一人前の抗凝固薬ということもできます。FDAのブレークスルー治療薬にも指定されました。
http://dobashin.exblog.jp/19057938/

次点
・COAG試験およびEU-PACT試験
http://dobashin.exblog.jp/19032100/
http://dobashin.exblog.jp/19048188/
いずれもゲノム薬理がワルファリンの用量設定に役立つのかとの問題設定でしたが,正反対の結果が出ております。もっともエディトーリアルの言うとおり,有意差があるとしたEU-PACT試験のワルファリンに関する論文も,大きな差があるわけでなく。ゲノム薬理でのアルゴリズム設定の難しさを認識させられました。

・EHRAの抗凝固療法実践ガイド
http://dobashin.exblog.jp/17727424/
非常によくまとまっていて脱帽ですが,これを全部やれとなるとしんどい気もします。

次に”私の”「行動変容」に関するもの

第5位:Lip先生の高齢者抗凝固療法の総説
http://dobashin.exblog.jp/18344715/
高齢者対象のエビデンスが意外に良いことに気が付きました。もちろん選択バイアスがありますが。

第4位:心房期外収縮多発例の心房細動発症リスク
http://dobashin.exblog.jp/17497124/
こういう方は少なからずおられるのですが,これまであまり重視していませんでした。1日102発以上でCHADS2スコア2点以上では,注意深く見ていくべきというメッセージは参考になります。

第3位:Cam先生のNOAC使い分けけ
http://dobashin.exblog.jp/19064861/
今年のブロクでも1.2のアクせス数でした。エビデンスにこだわるとこう考えられるというひとつのモデルかと思われます。
参考論文としてNOACについてのメタ解析が多く出ましたが,エドキサバンまで扱った最新のものとしてこの論文も一応挙げております。
http://dobashin.exblog.jp/19121121/

第2位:外来での脈拍測定の心房細動検出率に関する研究
http://dobashin.exblog.jp/17677394/
65歳以上の人の脈を必ず取ることによって,1.4%の人に心房細動が見つかるという研究。あらためて脈をしっかり取るようになりました。

第1位:心房細動の死亡への寄与度に関する研究
http://dobashin.exblog.jp/17196337/
リアルワールドでは脳卒中より,がん,COPD,CKDなどがより影響するとの研究です。
同率首位でこのEHRAからのコンセンサスがあります。
http://dobashin.exblog.jp/18974659/

他にも
心房細動の抗凝固療法下での死因は脳卒中より心臓死が多い。
http://dobashin.exblog.jp/18603453/
イベントも脳卒中より心不全が多い
http://dobashin.exblog.jp/19085009/
なども関連論文として抑えたいです。

近年心房細動において脳梗塞を守ることの重要性が強調されますが,抗凝固療法を全うすると次はやはり心臓をよく見なければダメ,さらに全身を見なければダメという着地点に落ち着くことが改めて示されています。

次点としては
・消化管出血後7日には抗凝固薬を再開すべきとの検討
http://dobashin.exblog.jp/19226962/
・心筋梗塞が心房細動の重要なリスク因子であることを示した研究
http://dobashin.exblog.jp/18923105/
も印象に残りました。

いかがでしょうか?例年よりインパクトに欠ける気もしますが,やはりガイドラインの改定などがなかったためかもしれません。

ということで,おまけに極私的に今年”お気に入り”の論文を挙げてみます。
医師の抗凝固療法に関するリスク認識を浮き彫りにした点では,医者は患者さんのQOLについて,患者さん自身が思うよりも良いと考えてしまうというもの
http://dobashin.exblog.jp/18671627/

もう一つは有名なGarfield研究で,医者が抗凝固薬を出さない理由の1位は出血へのおそれであるというもの
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC3660389/
いずれも抗凝固療法に対する医者の心象風景を知る興味深い研究です。

また,出血予測の各スコアが,なんと研修3年目の臨床医の予測に勝てないとする研究。これは非常に面白かったです。
http://dobashin.exblog.jp/17588136/
まあスコアリングなんてそんなものという感じです。

個人的に気に入っているの,患者さんが抗凝固薬内服を許容する閾値としてNNT125だったというもの。それがどうしたという気もしますが,リスクをあくまで定量化する姿勢が好きです。
http://dobashin.exblog.jp/19137805/

更に,心房細動は,脊椎動物がエラ呼吸から肺呼吸へと進化した過程で約束されたものだったとする壮大な論文も,進化生物学の面白さを教えてくれました。
http://dobashin.exblog.jp/18723912/

その他,印象的な論文はまだまだたくさんありますし,異論もたくさんあるかと思いますが,このへんで切り上げます。

来年は日本の心房細動ガイドラインがようやく改定となる予定ですし,第4の新規抗凝固薬も発売されるなど,また何かと話題の多い年になる予感がありますが,あくまで「自分の目と耳と口と足と,そして脳と心とで」情報を選択,評価,吟味して,患者さんと共有するというコンセプトで論文をまた読んでいきたいと思います。

皆様良いお年をお迎えください。
by dobashinaika | 2013-12-31 00:39 | 心房細動診療:根本原理 | Comments(2)

全世界で何人の人が心房細動に悩んでいるのか?:Circulation誌

Circulation 12月17日付けオンライン版より

Worldwide Epidemiology of Atrial Fibrillation: A Global Burden of Disease 2010 Study
doi: 10.1161/​CIRCULATIONAHA.113.005119


【疑問】世界中でどのくらいの人が心房細動に悩んでいるのか?

【方法】
・一般住民を対象とした心房細動の死亡率と合併症率を評価した研究のシステマティックレビュー
・1980〜2010年まで
・21の世界の地域

【結果】
1)可能性のある377の研究のうち184が該当

2)2010年時点で世界の心房細動患者は3350万人:男2090万人,女1260万人

3)DALY(=障害調整生命年)は男で18.8%,女で18.9%上昇(1990〜2010年)

4)1990年での有病率:人口10万人あたり男596.5人,女350.9人

5)1990年での罹患率:人口10万人あたり男60.7人,女43.8人

6)2010年での有病率:人口10万人あたり男596.2人,女373.1人

7)2010年での罹患率:人口10万人あたり男77.5人,女59.5人

8)心房細動関連死亡率:女性は男性の2倍(1990年),1,9倍(2010年)

【結論】これらの治験は1990年から2010年の間に,心房細動の負担,罹患率,有病率が増加していることを示している。
より系統的,世界的なサーベイランスが求められる。

###どんな手法で算出したのか,それこそ疫学の専門家でないかとおもいます。全世界で3350万人と言われてもピンときませんが,世界人口は71億人とすると200人強に1人は心房細動ということになるのでしょうか?多い気もしますね。

この20年で心房細動関連死亡が2倍増えたということですが,以前より「心房細動」に対する認知度が医療者も患者側も格段に高まっていますので,そうした認知度と診断や有病率,罹患率に関連はないのか,やや気になります。

こちらの今後50年の予測もご参考に
http://dobashin.exblog.jp/18308495/

DALYについてはこちら
http://ja.wikipedia.org/wiki/障害調整生命年
by dobashinaika | 2013-12-27 00:15 | 心房細動:リアルワールドデータ | Comments(0)

消化管出血後の抗凝固薬はいつから再開すべきか?;AJC誌より

Am J Cardiol 11月25日号オンライン版より

Restarting Anticoagulation and Outcomes After Major Gastrointestinal Bleeding in Atrial Fibrillation.

【疑問】消化管出血後,いつから抗凝固療法を再開すべきか

【方法】
・抗凝固療法施行下にもかかわらず消化管出血をきたした症例の後ろ向きコホート(2005〜2010年)
・1329例;平均76歳,女性45%

【結果】
1)ワルファリンが再開されたのは663例49.1%

2)ワルファリン再開は血栓塞栓症減少と関連あり:ハザード比0.71,95CI0.54-0.93.p=0.01

3)ワルファリン再開は死亡率減少と関連あり:ハザード比0.67,0.56-0.81,p<0.0001

4)ワルファリン再開は消化管出血再発とは無関係

5)出血7日後のワルファリン再開は,30日後の再開に比べ消化管出血リスク上昇とは無関係かつ,死亡率,血栓塞栓症減少とは関連あり

【結論】消化管出血7日後の再開は,消化管出血を再発することなく死亡率と血栓塞栓症減少に関連した

###このような報告は非常に貴重です。なぜなら,ワーファリン飲んでて消化管出血が起きたら,その後ワーファリンをどうするか本当に困るからです。再開して良いのか,再開するとしたらいつからが良いのか?全く先人のデータがなかったら,雲をつかむような話だからです。

EBMというのは,このように薬は続けたい,で副作用も怖いというようなジレンマ的状況に一つの光明を与えるようなものでなければなりません。出血しました→さて,その後ワーファリンを再開するべきかどうか。迷いに迷いますが,いずれは決めなければればならない難題です。臨床の現場はこのように二律背反的な一見判断不可能な問題にも関わらず,どちらかに決めなければならないという不可避的な問題の連続です。そこにわずかながらでも道筋をつけてくれるのがエビデンスなのだろうと思います。

同様の研究は以下を参照ください。
http://dobashin.exblog.jp/16227361/

こうした問いを発すると,より細かい問い,例えばINRをいくつにすべきか,低めにしたほうが良いか,輸血を必要とするような場合でも早期再開が良いのか,上部と下部では違うのか,といった問いが次々と出てきます。そうした問題設定の増殖がEBMのもう一つの特徴であり醍醐味であるように思います。

ただし後ろ向きコホートの限界には注意が必要。再開しなかった例が半数ですが,より出血が重篤かもしれず,両群間での背景因子に差がある可能性もあるので。
by dobashinaika | 2013-12-25 23:40 | 抗凝固療法:ワーファリン | Comments(0)

ステント植込み後の心房細動患者に抗凝固療法は有益:T/H誌より

Thrombosis and Haemostasis 9月号より

Anticoagulation in patients with atrial fibrillation undergoing coronary stent implantation
Thromb Haemost 2013: 110/3 (Sep);560-568


【疑問】冠動脈ステントを施行した心房細動患者にとって抗凝固療法は有益なのか

P:フランスの医療施設の心房細動患者(2000年〜2009年)8962人のうち冠動脈ステント植え込み患者かつCHA2DS2-VAScスコア2点以上の患者417人:平均650日追跡

E:抗凝固薬服用:97人23%

C:非服用

O:全血栓塞栓症,出血,心臓性有害事象(死亡,急性心筋梗塞,血行再建)

【結果】
1)抗凝固薬は永続性,待機的ステント例に多い傾向

2)イベント発症率には両群間で有意差なし

3)多変量解析では抗凝固薬非服用は死亡/脳卒中/全身性塞栓症の独立危険因子(RR=2.18, 95%CI1.02-4.67)

4)他に高齢(RR=1.12) ,心不全(3.26),脳卒中の既往(18.87)

【結論】ステント植込み後の抗血栓塞栓リスク患者においては,抗凝固薬使用は続発する死亡,脳卒中,全身性塞栓症減少に関連あり。このことはこうした患者集団で系統だって抗凝固薬を使用することを推奨する。

### 今週は年の瀬ですので,今年1年,ブログにアップしそこねた論文を拾い読みします。
また週末には恒例の今年の論文ベスト5+αをアップの予定しております。

心房細動患者さんにステントが入った場合,CHA2DS2-VAScスコア2点以上なら,まず抗凝固薬はやめないようにする,ということで,当たり前のようにも思えますが,筆者によれば,退院時には23%の患者しか抗凝固療法を受けて退院していないとのことです。ちょっと少な過ぎのような気もします。また出血についてあまり言及されていないのが気になります。

しかし実際,例えば専門医の先生が,トリプルテラピー,ダブルテラピーを行ってプライマリーケア医に逆紹介すると,ワルファリンや,抗血小板薬の1つがやめられてしまったりすることがまま,あることを耳にします。少なくとも抗凝固薬だけはやめられないことをよく知るべきということの警告と思われます。

そういえば,抜歯の時など「やめてよいかと歯科の先生に聞いてくるように言われた」とよく患者さんに問われるのですが,患者さんも医師も,抗凝固薬を血圧の薬などと同じように,短期なら中止て良いと思われている方が未だに少なく無いと思われます。いつも述べていますが,抗凝固薬は降圧薬,スタチン,経口糖尿病薬はじめ,プライマリ・ケアの現場で使われる薬としては格段にハイリスクハイリターンであることを改めて肝に銘じることが必要かと思います。と脱線。

Lip先生グループのこちらのエディトーリアルも参考
http://www.schattauer.de/en/magazine/subject-areas/journals-a-z/thrombosis-and-haemostasis/contents/archive/issue/1791/manuscript/20176/show.html
by dobashinaika | 2013-12-24 23:55 | 抗凝固療法:抗血小板薬併用 | Comments(0)

心房細動累積時間1時間以上になると脳梗塞リスクが増加:10000例のメタ解析:EHJ誌

European Heart Journal 12月11日付オンライン版より
Device-detected atrial fibrillation and risk for stroke: an analysis of >10 000 patients from the SOS AF project (Stroke preventiOn Strategies based on Atrial Fibrillation information from implanted devices)
Eur Heart J (2013)doi: 10.1093/eurheartj/eht49
1

【疑問】心房細動がどのくらい続くと脳梗塞のリスクが増加するのか?

【方法】
・植込み型デバイスにより3ヶ月以上の期間,心房性不整脈の持続時間を評価した前向き3つの試験のメタ解析
・22433例中基準を満たした10016例対象
・心房性不整脈の同定基準は各試験による:例)TRENDS試験では心房博数175bpm以上,20秒以上持続
・心房細動累積時間を5分,1時間,6時間,12時間,23時間で分類
・平均追跡期間24ヶ月

【結論】
・平均年齢70歳
・43%1016例で,少なくとも5分の発作が少なくとも1日以上あり
・最大の心房細動累積時間の平均:6ヶ月(inter-quartile range:1.3-1.4)
・CHADS2スコアと抗凝固薬の仕様が脳梗塞の独立危険因子
・累積時間の閾値は1時間が最大ハザード比;2.11(1.22〜3.64;p=0.008)
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【結論】デバイスで同定された心房細動累積時間は,比較的選択性のない一般のデバイス植え込み患者の脳梗塞リスクそうかと関連があった。この試験は抗凝固療法の適切な意思決定の基礎となり得る

### まず「デバイス」としてはペースメーカーが43%,ICDが20%,CRTが37%です。何らかの徐脈性不整脈,頻脈性不整脈,心不全を伴った例であることを押さえます。確かにグラフを見ると,累積時間1時間以上では年間脳卒中発症率は0.6−0.8%なのに対しそれ以下は0,2〜0.5%となっています。1日1時間以上の心房細動が見つかれば,要注意というのは,今後デバイスチェックをする上での参考になります。

デバイス患者においてはCHADS2スコアの他に,たとえ無症候であってもAF累積時間も,考慮する方向性が示唆されます。
by dobashinaika | 2013-12-24 00:07 | 抗凝固療法:適応、スコア評価 | Comments(0)

ワルファリン投与早期は非投与例より脳卒中リスクが高い可能性:EHJの症例対照研究より

European Heart Journal 12月18日付オンライン版より

Initiation of warfarin in patients with atrial fibrillation: early effects on ischaemic strokesEur Heart J (2013)
doi: 10.1093/eurheartj/eht499

【疑問】リアルワールドでワーファリン導入早期の脳梗塞リスク増加はどのくらい?

O:脳卒中発症率(ワルファリン開始からの期間別:30日未満,31−90日,90日超)

Case:脳卒中発症者
Control:脳卒中非発症者:年齢,性別,診断日,診断日からの時間をケース1例につき10の対照例でマッチング
(P:the UK Clinical Practice Research Datalink における心房細動コホート70,766人(1993〜2008年))

E/C:ワルファリン服薬/非服薬

【結果】
1)投与30日以内の脳卒中発症率:ワルファリン投与群のRR1.71 (95%CI 1.39~2.12)

2)投与31〜90日:RR0.50(0.34~0.75)

3)投与90日超:RR0.55(0.50〜0.61)

【結論】ワルファリン服薬群患者では30日以内の脳梗塞発症リスクは、非服薬群に比べ有意に多かった。このことは治療初期の一過性過凝固状態を示唆する。さらなる研究必要

### ほんの2〜3年前までワルファリンの添付文書には「成人初回20〜40mgを経口投与し、、、、」と堂々と書いてあったのです。今にして思うと信じられない気がします。でも私が医者になりたての頃は、発症時期不明の持続性心房細動は、入院の上、初日に10mg、2日目に5mg、3日に3mg、、、というように急速飽和を必ず行っていました。あの当時、入院して数日目に脳塞栓を発症した患者さんがおられたことを今でも思い出します。

機序としてよく知られているように、内因性の凝固阻止因子であるプロテインC、プロテインSはビタミンK依存性であり、ビタミンK依存性凝固因子より半減期が短いので、ワルファリン投与初期にはこちらのほうが先に抑制され、脳塞栓が増える可能性があると説明されています。

ROCET AFもARISTOTLEも試験終了後NOACからワルファリンに切り替える際にオーバーラップ期間が短かったため切替時にstrokeが増加したことは有名ですね。

コホート内症例対照研究ですので、交絡因子を全て補正することはできず、またワルファリンの管理状況も様々だと思われますので因果関係を軽々に論じることは慎むべきですが、従来の仮説を大規模コホートで検証する試みとし捉えたいと思います。
by dobashinaika | 2013-12-20 22:47 | 抗凝固療法:ワーファリン | Comments(0)

ダビガトランのヨーロッパ保険適用基準で大規模試験のデータをシミュレートした結果:T/H誌より

Thrombosis and Haemostasis 12月日付オンライン版より

Patient outcomes using the European label for dabigatran
http://dx.doi.org/10.1160/TH13-09-0734


【疑問】保険適用通りに使用した場合のダビガトランの有効性と安全性はどの程度か?

【方法】
・EU圏では、ダビガトランの保険適用は150mgが80歳未満で出血リスクが少なく(HAS-BLEDスコア3点未満)ベラパミル非併用。110mgはそれ以下となっている

・RELY試験のデータベースを上記保険適応に当てはめた場合のアウトカムをシミュレーションする(post hoc解析):ダビガトラン群6004例、ワルファリン群6022例

【結果】カッコ内はRELY試験の結果(150mg,110mg)
1)脳卒中/全身性塞栓症:ハザード比0.74;95% CI0.60-0.91(0.66,0.91)

2)出血性脳卒中:0.22;0.11-0.44 (0.26, 0.31)

3)死亡:0.86:0.75-0.98 (0.88, 0.91)

4)血管死: 0.80:0.68-0.95 (0.85, 0.90)

5)大出血: 0.85;0.73-0.98 (0.93, 0.80)

6)致死性出血:0.72; 0. 58-0.91

7)頭蓋内出血:0.28; 0.17-0.45 (0.40, 0.31)

8)あらゆる出血;0.86;0.81-0.92

9)消化管出血;1.23; 0.96-1.59 (1.48, 1.08)

【結論】RELY試験のデータベースを用いたpost-hoc解析では、「EU圏の保険適用シミュレーション下のダビガトラン使用」は、ワルファリンに比べて有効性および安全性に優れていた。このことは、EU保険適用やガイドラインをサポートする。ヨーロッパの保険適用の遵守がダビガトランの適切な安全性と有効性につながる。


### RELYの本試験は年齢、出血リスクなど関係なく150mgと110mgを無作為割付でしたので、年齢や出血リスク、併用薬の縛りを設けた保険適応のシミュレーションでは、結果はRELYの両群間の中間ぐらいになることが予想されるわけです。実際だいたいそうなっているようですが、一部は両群より良くなっている項目もあります。参考までに括弧内に本試験の150mgと110mgのハザード比を示します。

それにしてもヨーロッパでは80歳以上でダビガトラン110mgなんですね。日本は「腎機能CCr30-50、P糖蛋白阻害薬併用、消化管出血の既往、70歳以上」 の4項目のうち1つでもあれば110mgを「考慮」となっています。
これはそれ以外は「禁忌」ではなくあくまで「考慮」です。しかし実際は、この「考慮」は全例に適応する開業医がほとんどではないかと推察します。私も含め個人開業医は査定を、勤務医よりも極度に嫌い、添付文書にはひれ伏すことが多いですので、70歳以上はほとんど110mgだと思われます。

しかし日本の基準ですと、圧倒的に110mgが多くなりますので、RELYの150mgに比べて脳塞栓は多くなり、出血は少なくなることが予想されます。それがどの程度であるのか知りたいところです。

RELYは日本人対象者が少ないですが、一応日本の用法用量基準(「考慮」の基準)でRELYをシミュレーションした結果が知りたいところです。脳塞栓がどの程度実際より多くなってしまうのかですね。数字あそびかもしれませんが。
by dobashinaika | 2013-12-18 23:24 | 抗凝固療法:ダビガトラン | Comments(0)

米国FDAの諮問委員会が左心耳閉鎖デバイスWATCHMANを承認するように答申

米国FDAの諮問委員会が左心耳閉鎖デバイスWATCHMANを承認するように答申したとのことです。
http://news.bostonscientific.com/2013-12-11-FDA-Advisory-Panel-Votes-Favorably-on-the-Boston-Scientific-WATCHMAN-Left-Atrial-Appendage-Closure-Device

これで製品化が目前となるのかと思われますが、日本ではどうでしょうか?
ステントなどよりはかなり大きなデバイスであり、かつ副作用の懸念もあるので、直感的にも日本でも普及は相当遠いような気がするのですが。

PROTECT AF試験についてはこちら
http://dobashin.exblog.jp/17206624/
by dobashinaika | 2013-12-17 23:26 | 心房細動:左心耳デバイス | Comments(0)

心房細動の新規抗凝固薬:1日1回か2回か?:CardioSourceより

American College of Cardiologyの"CardioSource”というサイトにNOACの服用回数に関する総説が掲載されています。
知識の整理になりますので,大事なところだけ要約してみます。
http://anticoagulation.cardiosource.org/Hot-Topics.aspx

【心房細動の新規抗凝固薬:1日1回か2回か?】

ダビガトラン:1日1回か2回かを比較した第2相試験はひとつ
<BISTRO II研究>:股関節または膝関節置換術後の静脈血栓塞栓症(VTE)予防
有効性,出血率は同等。安定期の薬剤暴露も同等
・1日1回のほうがピーク−トラフの濃度差大。Cmax(最大血中濃度)と有効性安全性とはより強い相関あり
・このことは,VTE予防に比べて血栓塞栓症の高リスク状態である心房細動やVTE治療における用法選択の参考になる

リバーロキサバン:2つの試験あり
<ODIXa-DVT試験>
・40mg1日1回は20mg1日2回に比べ出血や血栓のリスクを増やさず(第2相)
・第3相では20mg1日1回が採用
・はじめ3週間は15mg1日2回:その方がCmin(最小血中濃度)がより高くなる→急性期には良い(”intensified effect")
・この投与法は、VTE予防に最適とされる10mg1日1回とは異なる
・ROCKET-AF試験は20mg1日1回が採用された。これはVTEの予防と治療における第2相試験の結果に基づく

<ATLAS ACS-TIMI46試験>
・急性冠症候群対象
・1日1回投与はより高いピークとより低いトラフを示す
1日1回はより出血が多い傾向だった
・副次評価項目では両者と同じ結果
・よってこうしたケースでは1日2回が臨床的に有利と考えられ、第3相試験では1日2回が採用

アピキサバン
<APROPOS試験>
・効果と安全性は用量依存性であり、投与回数に依存しなかった(第2相)
・第3層では2.5mg1日2回が採用された。

<AVERROES, ARISTOTOKE>
・5mg1日2回:出血を増やすことなく、効果を増強される用量として設定

<APPRAISE試験>
・急性冠症候群後の高リスク患者
・抗血小板薬にアピキサバン1日1回投与
・20mg1日1回は10mg1日2回よりやや大出血が多い(統計的に有意でない)
・このためAPPRAISE-2では5mg1日2回が採用
・結果はプラシボ+抗血小板薬より出血大、効果同じ

エドキサバン
<Weltzらの研究>
・大出血は1日のトータル投与量に比例
・ただしエドキサバン30mgも60mgも1日1回ではワルファリン群と有効性安全性に差はなし
30mg1日2回は60mg1日1回より出血が多い傾向
・AUC(総曝露量)は同じ
・1日2回の方が出血が多いのは、1日1回のより高いCmaxとより低いCminが、直感とは反対に出血を減らすことに関係していることを示す。
・このことは低いCminが出血を減らすのに最良だったことを示唆する
・このためENGAGE AF-TIMI 48試験では30mg、60mg1日1階が採用された
・また30mg1日1回はVTE予防、60mg1日1回はVTE治療に採用された

Darexaban
<RUBY〜1試験>
・第2相
・10.30,60mg1日1回または2回
・抗血小板薬2剤と併用
・用量依存性に2〜4倍出血増加
・直感に反し、1日2回で出血多い(統計的に有意ではない)


患者アドヒアランス
・上記のような薬物動態学的考察以外に患者アドヒアランスの面で投与回数は、リアル・ワールドにおいて重要
・少ない投与回数が良好なアドヒアランスをもたらすエビデンスが示されている
・アドヒアランスは抗凝固療法の良好な管理には決定的な役割あり
・他のすべてが等しければ、1日1回がより忍容性あり

結論
・薬物動態と病態生理学的考察は異なる状況下でのNOACの用法用量選択を支配する考え方である。それは他のすべてが等しければ、1日1回のほうがより便利で良いコンプライアンスをもたらすという前提に基づく。脳卒中/VTE予防においては1日1回投与は24時間未満での強い抗凝固作用をもたらし、十分な血栓塞栓予防効果を示す。しかるによりコンスタントなレベルというのは1日2回で達成でき、既に血栓を有する患者の治療においてはより適切といえる。しかし最新のデータは、薬剤選択に新たな原則をもたらし、異なるNOAC間での予期しないような差異を浮き彫りにしている。こうした新しいデータなさらなる探求と評価を必要としている。

### 長くなってすみません。乗りかかった船です(笑)。多くの場合、1日2回のほうがCmaxとCminとの差が小さく、より安全かつ効果が高いと考えられており、私自身もそう思っていたのでですが、そのような結果も多く認められますが、必ずしも全部の試験でそうしたデータが出ているわけではないようです。この辺り、NOACが一筋縄ではくくれないものを感じます。

「他の全てが等しければ」1日1回の方がいい。そうですが、「他のすべて」つまり薬物動態やエビデンスをどこまで「等しい」と考えるかが臨床家によって異なるのかもしれません。

大急ぎで訳したので、内容に誤りやわかりにくい箇所があるかもしれません。ご指摘いただければ幸いです。
by dobashinaika | 2013-12-17 01:02 | 抗凝固療法:比較、使い分け | Comments(0)

アップストリーム治療について記事を書きました(m3.com)

医療者向けサイトm3.comのMR君で、心房細動のアップストリーム治療について私が監修させていただいた記事が掲載されています。これから5回連続(隔週)で掲載され、高齢者の抗凝固療法や、発作性心房細動の対処法についても掲載される予定ですので、ご参照いただければ幸に存じます。

http://mrkun.m3.com/mrq/message/JAJabukawa/201312091728078943/view.htm?msgSortBy=date&pageNo=&pageContext=mrq3.0&mkep=messageList&wid=20131213173714691
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なおこのコンテンツはジョンソン・エンド・ジョンソン株式会社の提供によるものです。
by dobashinaika | 2013-12-13 17:44 | 心房細動:アップストリーム治療 | Comments(0)


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