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「女性」と「心不全」は日本人のワルファリン管理不良に関連あり:T/R誌より

Thrombosis Research 11月号より

Patient Factors against Stable Control of Warfarin Therapy for Japanese Non-valvular Atrial Fibrillation PatientsThrombosis ResearchVolume 132, Issue 5 , Pages 537-542, November 2013

【疑問】日本人においてワルファリンコントロールを妨げる因子はなにか?

P:ワルファリン服用中の非弁膜症性心房細動患者163人

E/C:各種因子

O:TTR ( time in therapeutic range)

【結果】
1)TTR(日本のガイドラインに基づく):69.7±25.1%(全体); 49.6±24.8% (<70) and 77.8±20.3%,(≥70)

2)70歳未満も1.6〜2.6を至適範囲として再計算した場合のTTR:79.5±20.1%

3)TTR低値(再計算後)との関連因子:低身長、血清クレアチニン高値、低クレアチニンクリアラ
ンス、女性、うっ血性心不全(各P<0.05)

4)多変量解 解析後の関連因子;女性、心不全 (各p<0.05, p<0.01,).

5)CYP2C)とVKORC1はワーファリンの容量と関連あり。TTRとは関連なし

【結論】日本で実際によく使われている範囲のPT-INR値で評価した場合、TTRは良好に管理されており、女性とうっ血性心不全はTTR管理不良に明らかな影響があった

###  日本(九州)のグループからの報告です。
まずやはり70歳未満でもINR1.6~2.6 を目指している実態が浮かび上がっています。

次に興味深いのは女性とTTR不良に関連があることです。CHA2DS2-VAScスコアに「女性」が入っていることが思い起こされますが、理由ははっきりわかっていないと思います。
以前読んだスウェーデンやカナダのコホート研究では高齢者やCHADS2スコア2点以上の場合に「女性」も脳塞栓のリスク因子となりうることが示唆されています。
http://dobashin.exblog.jp/15489568/
http://dobashin.exblog.jp/15370480/

今回の検討はワーファリン管理の両不良の検討ですので、やや違いますがやはりhormonalな反応の違いなどがあるのかもしれません。
個人的には年齢、腎機能などがTTRと関連しているように感じていましたが、そうでもないようです。
by dobashinaika | 2013-10-30 19:32 | 抗凝固療法:ワーファリン | Comments(0)

アピキサバンとアスピリン併用時の有効性と安全性;ARISTOTLE試験サブ解析より

European Heart Journal 10月20日付オンライン版より

Apixaban vs. warfarin with concomitant aspirin in patients with atrial fibrillation: insights from the ARISTOTLE trialdoi: 10.1093/eurheartj/eht445


【疑問】アスピリン併用時のアピキサバンの効果と安全性はワルファリンと比べてどうか?

P:ARISTOTLE試験参加者18,201名

E:アスピリン服用者

C:非アスピリン服用者

O:脳卒中/全身性塞栓症、虚血性脳卒中、心筋梗塞、死亡、大出血、頭蓋内出血、臨床的に意義のある小出血、あらゆる出血
simple and marginal structured modelsで交絡因子補正

【結果】
1)脳卒中/全身性塞栓症:アピキサバンはアスピリンの有無にかかわらずワルファリンより効果あり(交互作用P=0.10)
アスピリンあり=アピ 1.12% vs. ワル 1.91%, HR 0.58 (0.39–0.85)
アスピリンなし=アピ 1.11% vs. ワル 1.32%, HR 0.84 (0.66–1.07)

2)大出血:アピキサバンはアスピリンの有無にかかわらずワルファリンより出血少ない(交互作用P=0.29)
アスピリンあり=アピ 3.10% vs. ワル 3.92%, HR 0.77 (0.60–0.99)
アスピリンなし=アピ 1.82% vs. ワル 2.78%, HR 0.65 (0.55–1.78)

3)同様の結果は動脈疾患の有無によるサブ解析でも認められた

【結論】アピキサバンはアスピリンのあるなしにかかわらず、ワルファリンに比べて有効性と安全性に優れる

### アスピリン併用時で気になるのは大出血ですが、これまでRELYのサブ解析では150,110とも交互作用なし(アスピリンに関係なし)でダビガトラン150はワルファリンに非劣性、110はワルファリンより少ないという結果でした。
http://circ.ahajournals.org/content/127/5/634.long

ROCKET AFでも非劣性は変わりなかったとの結果が出ていたと思います。

本論文は、アピキサバンはアスピリンあるなしにかかわらず有意にワルファリンより出血が少ないという良い結果ですが、アスピリン併用者の出血率は3.10%で併用なしの人の1.82%より明らかに増加しており、またそのハザード比もアスピリンありの時のほうが対ワルファリンの優越性がやや低くなっております。
やはり抗血小板薬併用時はアピキサバンといえども注意が必要ということだと思われます。

臨床的には抗血小板薬2剤との併用の結果を知りたいところです。上記のRELYサブ解析ではダビ+DAPTの方がワル+DAPTより大出血がやや少ないという結果が出ていましたが、アリストテレスではDAPTは除外基準となっているためわかりません。今後の検討課題だと思われます。(アリストテレスでも除外されているとはいえ、やむなくDAPT併用となった人のデータはあるようですが)

また2.5㎎の人がどのくらい含まれているのかも知りたいですね(後で全文読みます)。
by dobashinaika | 2013-10-29 17:46 | 抗凝固療法:アピキサバン | Comments(0)

健康日本21推進フォーラムによる「心房細動の実態調査と意識調査」

健康日本21推進フォーラムから、9月11日付で「心房細動の実態調査と意識調査」が発表されています。
http://www.kenko-nippon21forum.gr.jp/free/index.html
https://prw.kyodonews.jp/prwfile/release/M000261/201309094465/_prw_PR1fl_lSfQwpWa.pdf

5月に発表された 「心房細動患者のコンプライアンス実態調査」に続くものです。

調査は2つあり、
1)全国の60歳以上の男女26130人対象の現状調査
2)心房細動治療中の通院患者250人VS.心房細動の診断を受けたことがない一般生活者250人の比較調査
から成っています。

いずれもインターネット調査とのことですが、どのような調査法なのか、特に調査1)についてはcharacteristicsの詳細が示されておらず、どこまでエビデンスレベルが担保されているかは不明です。
要点をコピペします。

1.心房細動患者数(推定)の現状
・健康診断結果に基づく従来予想よりも非常に多くの人が心房細動と診断を受けており、 特に65歳以上の男性では10人に1人が心房細動と診断。

2.通院患者の心房細動発見のきっかけと、発見に向けた一般生活者の行動実態
・通院患者の4割が脈の乱れを契機に自発的に受診し発見。
・脈の異常を感じても一般生活者の約6割(56.7%)が診察を受けず、心房細動の可能性を放置

3.心房細動患者の治療実態
・心房細動と診断を受けた患者の内、現在通院している患者は6割に過ぎず、2割は通院経験すらない
・ 脳梗塞の予防へ抗凝固薬の服用が必要なCHADS2スコア≧2以上の通院患者の3割強が非服用。

4.一般生活者の心房細動や抗凝固薬についての認識
・一般生活者の7割が心房細動になると脳梗塞になる危険性が高まることを知らない。
・一般生活者の3人に2人(66.4%)は心房細動による脳梗塞を抗凝固薬で予防できることを知らない。
a0119856_19395139.png

5.通院患者の心房細動診断時の医師からの説明と脳梗塞についての認識
・通院患者の2割が心房細動と診断された際に「心房細動が原因で脳梗塞が起こる」 ことについて医師から説明を受けていない。
・通院患者であっても「心房細動による脳梗塞は、死亡率がかなり高い」ことを知らない(72.0%)など、 心房細動による脳梗塞は重症化リスクが高いことへの認識が低い。

6.情報提示後の一般生活者・通院患者の通院・治療継続へ向けた意識の変化
・一般生活者は心房細動が脳梗塞を引き起こす可能性があることなどを知ると、 8割弱(78.4%)が脈の乱れを感じた場合の受診意向を示す。
・通院患者は心房細動が脳梗塞を引き起こす可能性があることを知ると、 9割以上(95.1%)が服薬継続意向を示す。

.魅力を感じる抗凝固薬の特徴
・通院患者、一般生活者ともに、魅力を感じる抗凝固薬は「1日1回の服用で済む」(70.8%)がトップ。
・ 通院患者の8割弱(77.9%)が最近開発された抗凝固薬についての相談意向を示す。

### 調査1)の事前調査についてですが、まず有病率が非常に多いです。65歳以上で10.7%という、欧米よりも高い数字が出されています。診断精度が気になります。心電図診断がなされたのかどうか。ネット調査だと、患者申告で診断された可能性が考えられます。心房細動と診断された人にうち「通院経験なし」が19.1%に見られますが、どのような診断基準が知りたいところです。

調査2)の実態把握については、意識調査なので信頼性は比較的高いと思われます。
「一般のかたの7割が心房細動の脳梗塞の関係や抗凝固薬について知らない」
「通院患者の2割が心房細動の脳梗塞の関係について説明を受けていない」
「通院患者の70%以上が、心房細動の脳梗塞の高死亡率を知らない」
という数字は教訓的かもしれません。

その他、リスクコミュニケーションについて、様々な思いがめぐりますが、詳しい感想は以下の過去ブログにも書きましたので参照ください
http://dobashin.exblog.jp/17977149/
by dobashinaika | 2013-10-28 19:40 | 心房細動:リアルワールドデータ | Comments(0)

カルシウム拮抗薬はβブロッカーに比べ、心房細動患者の運動耐容能を改善させる:EHJ誌より

European Heart Journal 10月17日付オンライン版より

Calcium channel blockers improve exercise capacity and reduce N-terminal Pro-B-type natriuretic peptide levels compared with beta-blockers in patients with permanent atrial fibrillation
doi: 10.1093/eurheartj/eht429


【疑問】心房細動のレートコントロールにおいて、カルシウム拮抗薬とβブロッカーはどちらが運動耐容能や心機能に良いのか

P:永続性心房細動60例:平均71±9歳、女18人、心機能正常

E/C:ジルチアゼム360mg、ベラパミル240mg、メトプロロール100mg、カルベジロール25mg3週間投与

O:運動負荷試験での運動耐容能(peak VO2)、NT-poBNP

T:無作為化クロスオーバー

【結果】
1)運動耐容能:メトプロロール、カルベジロールはベースラインあるいはカルシウム拮抗薬よりも明らかに低い

2)NT-proBNP:カルシウム拮抗薬2薬でベースラインより明らかに減少 (P<0.001)。βブロッカーで上昇 (P<0.05)

【結論】ベラパミルとジルチアゼムは運動耐容能を維持し、NT^proBNPを減少させた。しかるにメトプロロールとカルベジロールは運動耐容能を減少させ、NT-proBNPを上昇させた。

### 結構衝撃的な結果かもしれません。心房細動のレートコントロールは第一選択βブロッカーと考えられているだけに。面白そうなので全文入手してみました。

用量が日本人にしては結構高用量であること、対象は高齢者が多いことにまず注意です。
それと、追跡期間が3週間のみです。

機序として、陰性変力作用ではなく、βブロッカーの"negative lusitropic action"=弛緩速度減少、つまり心臓が拡張するときそれだけ早く、完全に弛緩できるかがを抑制する力のためと考えられています。

その他には、心房収縮はなく、拡張期心室充満が弱いところでは、βブロッカーの負の作用がより強くでてしまうのではと考察されています。

一方ベラパミルの拡張能改善効果やカルディオバージョン時のスタンニングからの改善効果も指摘されています。

とはいえ、心不全患者においては、βブロッカーが長期的に心機能や運動耐容能を改善するデータはたくさんあり、確立された治療法と言えます。

今回の研究は心機能正常の心房細動患者なので、対象に違いはあるとはいえ、それほどβブロッカーがカルシウム拮抗薬にくらべ心機能の点で引けを取るようには思えないのですが。

より長期の追跡期間、より若年者を組み入れ、より低用量での試験も見てみたいと思います。
by dobashinaika | 2013-10-26 00:18 | 心房細動:ダウンストリーム治療 | Comments(0)

甲状腺機能低下と心房細動発症率は関連なし:フラミンガム心臓研究より

American Heart Journal 10月18日付オンライン版より

Relation of Hypothyroidism and Incident Atrial Fibrillation (from the Framingham Heart Study) http://dx.doi.org/10.1016/j.ahj.2013.10.012

【疑問】甲状腺機能低下症と心房細動発症率との関係は?

P:フラミンガム心臓研究登録患者6653人のうち、甲状腺刺激ホルモン(TSH)未測定者、甲状腺機能亢進(TSH<0.45),TSH>19.9。心房細動既往例を除く5069例(52%女性、平均57歳)

E/C:TSHにより以下の3分に分類:≥0.45 to <4.5, 4.5 to <10.0, 10.0 to ≤19.9 μU/L

O:10年間の心房細動発症率

【結果】
1)心房細動新規発症:277例

2)TSHの標準偏差1増加と心房細動新規発症は無関係(ハザード比1.01、p=0.43)

3)甲状腺機能低下と10年発症リスクに有意な相関なし(TSH≥0.45 to <4.5 μU/L をレファランス)

4)TSH最低4分位と最高4分位とで心房細動新規発症率に有意差なし

【結論】一般住民対対象試験では甲状腺機能低下と心房細動新規発症とは関連なし

### 以前取り上げたスウェーデンの大規模後ろ向きコホート研究とは異なる結果となっています。
スウェーデンの方は、対象58万人で、TSHレベルと心房細動新規発症率はきれいに相関していました。
http://dobashin.exblog.jp/16924707/

対象群の取り方は本研究がTSH0.4〜4.5、スウェーデンが0.4〜5.0とほぼ同じです。
どこが違うのでしょうか?
おそらくスウェーデンの方は、GPに通う人のうち甲状腺スクリーニングを行ったひと対象ですので、GPが甲状腺機能異常を疑ってのちに血液検査を施行した人が対象となっているのに対し、フラミンガム研究は、登録患者の多くが採血されていて比較的バイアスのないコホートであることが違うと思われます。

TSH低値は、心房細動新規発症増加と関連はあると思われますが、TSH高値との関連はよくわからないのかもしれません。臨床的には起きにくいか正常と同等かの違いですので、大きな間違いはなさそうに思います。

以下のメタ解析もあります。
http://dobashin.exblog.jp/15155960/
by dobashinaika | 2013-10-23 23:22 | 心房細動:リアルワールドデータ | Comments(0)

持続性心房細動患者の洞調律維持においてカテーテルアブレーションは薬物療法に優るか?:SARA研究

European heart journal 10月17日オンライン板より

Catheter ablation vs. antiarrhythmic drug treatment of persistent atrial fibrillation: a multicentre, randomized, controlled trial (SARA study)
doi: 10.1093/eurheartj/eht457


P:持続性心房細動(長期持続性(1年以上持続)除く)

E:カテーテルアブレーション

C:抗不整脈薬

O:一次エンドポイント=術後12ヶ月(3ヶ月ブランキング)での24時間以上持続する心房細動/粗動
二次エンドポイント=30秒以上持続する心房性不整脈、入院、電気的除細動

T:無作為割付

【結果】
1)146人エントリー:55±9歳、男77%

2)抗不整脈薬群:クラスIc 43.8% 、クラスIII 56.3%

3)一次エンドポイントフリー率:アブ群70.4% vs. 薬群43.7%(P = 0.002):絶対危険減少26.6%

4)30秒以上の再発のない症例はアブ群で薬群よりも高率(60.2 vs. 29.2%; P < 0.001)

5)電気的除細動はアブ群で有意に少ない (34.7 vs. 50%; P = 0.018)

【結果】カテーテルアブレーションは12ヶ月追跡期間において持続性心房細動患者の洞調律維持治療として、薬物療法に優る


### 持続性心房細動の定義が問題ですが、ESCガイドラインで「7日を超えて持続する場合、あるいは薬物療法または直流除細動による停止を要するもの」とありますので、「1日程度の持続でDCをかけた」症例も含まれる可能性はあります。罹患期間や左房系が気になりますが、非再発率70%というのは、大変良い数字のように思います。nが少ないのは仕方ないですね。

多施設共同研究で無作為化されていますので、登録基準や判定基準はある程度質が担保されていると思われます。
特にアブレーションのような介入治療の研究では、組み入れる人、施行する人、評価する人が同一であっては、あまり信用がおけません。

患者さんの自覚症状、左房径、再発率などもっと知りたい点はたくさんありますね。

関連ブログ
http://dobashin.exblog.jp/15878846
http://dobashin.exblog.jp/16564735/

by dobashinaika | 2013-10-22 16:56 | 心房細動:アブレーション | Comments(0)

ダビガトランの血中濃度がイベント発生と関連あり:JACC誌より

JACC 10月9日付オンライン版より

The Effect of Dabigatran Plasma Concentrations and Patient Characteristics on the Frequency of Ischemic Stroke and Major Bleeding in Atrial Fibrillation Patients in the RE-LY Trial ONLINE FIRST
J Am Coll Cardiol. 2013;():. doi:10.1016/j.jacc.2013.07.104


【疑問】ダビガトランの有効性、安全性と血中濃度の関係は?

P:RE-LY試験のダビガトラン群(110mg, 150mg)

E/C:ダビガトラン血中濃度

O:RELY試験の有効性、安全性評価項目

【結果】
1)血中濃度測定者:9,183例

2)脳卒中/全身性塞栓症:112例1.3%、大出血323例3.8%

3)ダビガトラン血中濃度は腎機能、年齢、体重、女性に依存。人種や居住地、アジア人、抗血小板薬使用に依存せず

4)虚血性イベント発生率はトラフ血中濃度は低いほど高い(p=0.045(C統計量0.657)。年齢、脳卒中の既往が共変数

5)大出血はダビガトラン暴露、年齢、アスピリン使用、糖尿病と有意に関連あり

【結論】虚血性脳卒中および出血はダビガトラン濃度に関連あり。年齢が最重要因子。テイラーメイドの血中濃度測定がリスクベネフィット評価を改善させる

### 血中濃度がイベント有意に相関していれば、PTINRのようにアウトカム予測に使用できます。ただし、PTINRがあれだけ普及したのは、1.6〜2.6または2.0〜3,0で脳梗塞と出血のカットオフ値がうまい具合に切ることができたからです(実際には梗塞の予測としては甘く、出血の指標のみではありますが)。

全文を読んでいないので、適切なカットオフ値が見つけられるのか不明ですが、ダビガトランは高濃度になるほどaPTTとの関係がlinearでなくなるので、血中濃度がきれいなアウトカムと線形関係であれば、とくに高値ほど血中濃度でモニターすべきなのかもしれません。利便性、実現性は困難かもしれませんが。
by dobashinaika | 2013-10-22 08:47 | 抗凝固療法:ダビガトラン | Comments(0)

心房細動のfinal common pathwayとしての左心耳を消滅させるという発想:左心耳切除術の講演を聴く

17日(木)は、私が世話人をしております「心房細動を考える会」の第11回"Meet the expert"を仙台市内で開催させていただきました。

講師はかねてからこのブログでも取り上げさせていただいております、都立多摩総合医療センター心房血管外科の大塚俊哉先生です。
大塚先生は非弁膜症性心房細動に対する低侵襲完全内視鏡下手術(WOLF−OHTSUKA法)を開発され、既に200例以上の症例を経験され非常に良好な成績を収められています。
その概要は、ことしのJACCに掲載されていますので、以下を参照下さい。
http://dobashin.exblog.jp/17381555/

講演で特に印象に残ったポイントを挙げさせていただきます。
・完全内視鏡下左心耳切除術(のみ)と、完全内視鏡下アブレーション兼用左心耳切除術の2方法がある
・術前のチームワークスクリーニングが重要:糖尿病の有無、左心耳血栓、器質化血栓の評価
・特に糖尿病の管理不良例は心内膜の障害も強くCHADS2スコア1点と一律に扱えないのでは?
・左心耳血栓を認めたときは抗凝固療法を強化し消失するまで待つ
・左心耳の形状はCTで4タイプに分ける論文もあるが実際には4つに分類できない
・経食道エコー下で切り残しなく切除する
・切り取った左心耳はしばらく細動が続いてて、ピクピク動いている!
・左心耳切除のみの平均手術時間38分
・術後MRIでの小塞栓は今のところ認めていない
・術後ANPは25%程度減少する。ANPが左心耳からだけ産生されているのかは不明
・左心耳切除で貧血が改善する
・抗凝固療法への不安の解消、普段の活動性の改善などQOLの明らかな改善が見られる
・Ganglion plexusアブレーションはrenervationしてしまうので無効との意見もあるが、renervationの仕方が違うのかもしれない

安全性、有効性とも非常に魅力的な成績であり、今後ランダム化試験などでより確立されたものになることが期待されます。

その後参加者を交えての情報交換会になりましたが、心房細動談義は尽きず非常に楽しいディスカッションをさせていただきました。

私が特に、面白いと感じたのは、とにかく「左心耳を体内からなくしてしまう」という発想です。
左心耳は神様の残したいたづら(いやげ物)と以前書きましたが、ANP産生機能などの可能性はありますが、基本的に左心耳は心原性脳塞栓の発生部位として人間にとって非常に厄介なものです。
http://dobashin.exblog.jp/14704894/

これまた最近、心房細動は複雑系と最近のブログに書きましたが、原因は複雑カオス的ではあっても、血栓が生成される場所は「左心耳」しかありません。上流はいろいろごちゃごちゃあるけれど”final common pathwayは一箇所です。そこを消滅させてしまう治療法というのは、究極でないか、そう思えてきます。
http://dobashin.exblog.jp/18723912/

これも最近のブログからですが、古川哲史先生は、動物が海から陸に上がって肺呼吸をはじめた時から心房細動の発生は約束されていた、と述べています。
そもそも生物として心臓がまず必要で、脊椎動物が陸に上がった時点で肺ができ、同時に肺と心臓とを結ぶ血管系が必要になった。血管は細く、心臓(心房)は大きいため形態学的なミスマッチやストレッチが生じ肺静脈の接合部付近に電気的解剖学的なストレスが生じた、これが心房細動のそもそもの誕生秘話?かもしれません。
http://dobashin.exblog.jp/pg/blog_view.asp?srl=18723912&nid=dobashin

ここから考えると、要するに「心房がなくなれば心房細動」は起きないという考えが生じてきます。肺静脈とミスマッチを起こす心房がなければ心房細動も起きない。至極乱暴な発想ですが、原理的にはそういうこともできます。しかし、心臓のポンプ機能上全部なくすことはできない。そこで左心耳のみを取ってしまうことが改めて有効性を帯びてくる。そんなふうにも考えられます。

Final common pathwayとしての左心耳の切除、、、よりエビデンスが整い、普及することが期待されます。
by dobashinaika | 2013-10-20 15:41 | 心房細動:左心耳デバイス | Comments(0)

米国FDAへの副作用直接報告2012年の1位はダビガトラン、2位はワルファリン

いつもツイッター上で貴重な医療情報を提供してくださる宇津貴史@Office_jさんからの情報です。

2012年1年間にアメリカFDAに直接報告された薬剤の副作用報告の概要です。
米国のNPOのISMP(Institute for safe medication practices)の集計です。
http://www.ismp.org/quarterwatch/pdfs/2012Q4.pdf

・2012年には201,310件の直接報告あり(全体の10%)

-1位:ダビガトラン 683例  出血
-2位:ワルファリン 492例  出血
-3位:リシノプリル 378例  血管浮腫、蕁麻疹
-4位:レボフロキサシン 330例  腱、関節障害
-5位:ヂュロキセチン 302例  離脱症候群
-10位:リバーロキサバン

さらに製薬会社からの情報に基づく副作用は以下のようになっています。
a0119856_23395275.png

老人における薬剤の副作用のための緊急入院でワルファリンによる出血で34%(致死性3.6%)に登ったとのことです。

予想されていたこととはいえ、やはり抗凝固薬の席巻ぶりとハイリスクぶりを改めて目の当たりにする思いですね。

当初はダビガトランの副作用の重大性を過小評価していた感のあるFDAが、安全性重視のアクションを起こしている経緯も示されています。

日本では各製薬会社の市販後調査で、副作用情報をみることができますが、このような「まとめサイト」があるとよりわかりやすいわけですが。
by dobashinaika | 2013-10-19 23:41 | 抗凝固療法:全般 | Comments(0)

エリキュースとリバーロキサバンの市販直後調査から見えてくるもの

エリキュースに関する「市販直後調査」とイグザレルトに関する「安全性情報集積状況」が出ています。(後者はやや以前に出ていたようですが、気付かずにおりました)

エリキュースに関しては発売後から6ヶ月間の報告です。
http://www.eliquis.jp/resource/1381813286000/eliquis/direction/report3.html#1

・推定投与例8,000例
・副作用による死亡報告なし
・出血関連副作用62例、うち36例(58%)が75歳以上
・重篤な出血事象は11例
-CCr15以下が1例、30以下が1例、未測定が2例。
- 6例が抗血小板薬併用例
- 6例は投与から2週間以内
・大出血8例中6例はHAS-BLEDスコア3点以上
・4例の症例概要によれば
-脳梗塞発症翌日からの投与例
-転倒に伴う外傷性くも膜下出血(80代女性)
-シロスタゾール+クロピドグレルの3剤併用例
-アスピリンとの併用による消化管出血

イグザレルトに関しては平成24年4月〜25年3月までの副作用収集です。
http://xarelto.jp/ja/home/product-information-area/product-overview/

・推定投与例35,000例
・副作用を有し、転帰死亡が17例
・出血関連副作用326例
・重篤な出血事象は69例、従来までのも合わせると178例
-CCrが15〜29が12例、未測定が51例
-CCr15未満にもかかわらず5mg/日投与が8例
- 178例中112例が75歳以上
-39例が抗血小板薬併用
・虚血関連事象(脳梗塞12例など)24例
- CCr50以上にもかかわらず10mg投与が5例
・重篤出血の症例概要は
-CCr25、10mg、80台男性、気道出血で死亡
-被殻出血の既往、15mg、70台男性、脳幹出血で死亡
- シロスタゾール内服、15mg、80代女性、脳出血
-プラザキサ220内服下で心原性脳塞栓→イグザレルト15に変更、1ヶ月後に消化管出血

### こうした現場からの報告は自主報告ですので、頻度を論議するのはナンセンスです。
「どのような症例にどう投与すると重篤な事象をきたしてしまうことがあるのか」を学ぶためのものだと思います。

やはり両薬とも、未だに「間違った使い方」をしていれば大変なことになるということを実感します。
・腎機能禁忌または未測定例
・腎機能が良好にもかかわらず低用量使用例
両薬ともプラザキサよりは、腎機能低下例への垣根がやや低いと思われますが、とはいえそれでもルール通りに使わなければダメなわけで、安易な使用は許されないと思われます。

とくに、「何も理由がないのに低用量からの投与」は慎むべきです。
バイエル薬品からの情報提供では、「特定使用成績調査」の1,000例の中間報告において、
CCr50以上なのに10mgが252例にも投与されています。そのうち187例は「高齢」という理由だけです。

エリキュースの2.5mgもそうですが、理由なく低用量から始めるのはプラザキサ110mgから開始する癖が付いているからだと思われます。よく言われるように、イグザレルト、エリキュースの両薬の低用量は、プラザキサと違い、大規模試験での単独群が設定されていない、エビデンスの非常に乏しい用量ですので、現時点でできるだけ使いたくないと思われます。

また抗血小板薬の併用も多く報告されていますし、出血既往その他出血リスクの高い例はやはり注意です。

このような現場(あえてリアル・ワールドと言わない)からの情報は得るものが多いですね。
by dobashinaika | 2013-10-19 00:12 | 抗凝固療法:アピキサバン | Comments(0)


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