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アピキサバンのモニタリング法は何が良いか?:T/H誌より

Thrombosis and Haemostasis 8月号より

Impact of apixaban on routine and specific coagulation assays: a practical laboratory guide
Thrombosis and Haemostasis 2013: 110/2 (Aug) pp. 205-392


【疑問】アピキサバンのモニタリング法はあるのか?

【目的】アピキサバンのインパクト評価にどのアッセイが使用可能かを特定

【方法】
・アピキサバンの血中濃度は5〜500ng/mlに上昇する(血小板の少ない血漿)
・ルーチンで行われる検査と特殊凝固アッセイをテストした

【結果】
1)血中濃度に依存してaPTT,PT,希釈性PTが延長した

2)感度はおもに試薬に依存

3)どの検査もアピサバンの薬物動態学的効果を正しく評価するに十分な感度がなかった

4)Xa因子色素生成アッセイは高い感度と試薬や方法に依存した線形相関を認めた。

5)免疫学的アッセイとXa因子下で作用するアッセイはアピキサバンに影響されない。

【結論】PT.希釈性PTはアピキサバンの薬物動態学的と特性を評価するために使用することはできない。より特異度、感度の優れた、特殊な校正を使ったXa因子色素生成アッセイのような方法が期待される。血小板減少症においてや、出血イベントの探求においては、適応があれば免疫学的アッセイが勧められるべきである。アピキサバンの最終服用と採血の間の時間の標準化が使命である。

### 同じXa因子阻害薬のリバーロキサバンはPTが有効であるとの報告が出てきているようです。アピキサバンはPTでは評価しにくいとの報告です。アピキサバンはNOAC3剤のうちで腎機能低下例にもは比較的(あくまで比較的)使いやすいとの印象(あくまで印象)がありますが、 リアルワールドデータが出てこない限りなんとも言えないと思われます。腎機能低下例に使う場合、やはりモニターしたいところです。
PTもaPTTも試薬によりだいぶ値が変わってしまうので、標準化が待たれます。

なおアピキサバンの市販直後調査の第2回報告が出るとの情報を得ましたが、ネット上にアップされたら読みたいと思います。

なおこうした基礎的なアッセイについてはなにぶん門外漢ですので、上記訳に誤りがあったら、ご容赦ご指摘下さい。
by dobashinaika | 2013-07-30 17:56 | 抗凝固療法:アピキサバン | Comments(0)

現場の抗不整脈薬使用はガイドラインから解離している:国際登録研究より

Europace 7月14日付オンライン版より

Inappropriate use of antiarrhythmic drugs in paroxysmal and persistent atrial fibrillation in a large contemporary international survey: insights from RealiseAF
Europace (2013)doi: 10.1093/europace/eut204


【疑問】リアルワールドで抗不整脈薬はガイドライン(2006年のACC/AHA/ESC)通り使われているか?

P:最近12ヶ月以内に心電図またはホルター心電図で1回以上の心房細動発作記録がある患者10,523人:4大陸26カ国参加の国際観察研究
参加医は2009〜2010年までに無作為に選出

【結果】
1)発作性4947人(平均64.7歳)、持続性2341人(平均66.0歳)

2)Ic抗不整脈薬589人11.9%:このうちの20.0%でガイドライン違反

3)ソタロール219人4.4%:このうちの16.0%でガイドラインから逸脱

4)アミオダロン第一選択1268人25.6%:49.9%は心不全、高血圧性の心肥大などなし

【結論】大規模国際登録研究において、発作性、持続性心房細動における抗不整脈薬の使用は国際ガイドラインからいくらか解離が見られた。
アミオダロンの第一選択薬としての使用法が最もかけ離れていた。出版されたガイドラインと現場との大きな解離が顕かとなった。

### I群薬で20%、アミオダロンは50%でガイドラインから逸脱とのことです。Ic薬の逸脱理由は不明ですが、考えられるのは、心不全症例への投与だろうと思われます。日本のガイドラインでも「肥大心、不全心、虚血心」への投与はアプリンジン、ベプリジル、ソタロール、アミオダロンが推奨されてます。おそらく心不全例にも使用されているのかもしれません。ただし、心不全は臨床的に軽症から重症まで様々です。日本ではIa,Ic群薬は保険病名上心不全例には禁忌ですが、必ずしも査定されるとは限りません。実際、軽度の心不全でサンリズムなどを処方されるケースはあると思います。

私は支払基金の審査をしていますが、心不全などの器質的心疾患の適正な評価なく、使いやすいからといって漫然と心不全例にサンリズムを処方する場合、持続性心房細動に漫然とリスモダンなどを出している場合、など意外に目につきます。

ガイドライン通りにリアル・ワールドは動かなくて当然ですが、一方あまりに逸脱していたり、ガイドラインの精神を考慮せず漫然とした処方はこの際再考すべきと思います。
by dobashinaika | 2013-07-29 17:01 | 心房細動:ダウンストリーム治療 | Comments(0)

低心拍数と身体活動増加は心房細動のリスク;ノルウェーの大規模研究より

Herat オンライン版より

Resting Heart Rate and Physical Activity as Risk Factors for Lone Atrial Fibrillation: A Prospective Study of 309,540 Men and Women
Heart doi:10.1136/heartjnl-2013-303825


【疑問】低心拍数と身体活動は心房細動のリスク因子か?

P:ノルウェーの40-45歳の一般住民コホート309540人を 1985–1999 から2005 − 2009まで追跡。心房細動に対しフレカイニド(男0.4%、女0.2%)、ソタロール(同様頻度)内服中例あり。

O:心房細動のために、2005年から2009年までフレカイニドまたはソタロールを処方された人

【結果】
1)安静時心拍数が10/分減少するごとにフレカイニド処方男1.26倍、女1.15倍増加

2)同様傾向はソタロール処方の男性にのみ見られた

3)より身体活動の活発な男性には、フレカイニドの処方が多かった(adjusted HR=3.14, 95% CI 2.17 to 4.54

【結論】今回のコホート研究の結果は男女両方で安静時心拍数の低下と、男性での身体活動増加は孤立性心房細動のリスクを高めるという仮説を支持した。

### 迷走神経を介してM2(ムスカリン)受容体が刺激され心房筋の不応期短縮されることが知られていますが、おそらく心拍数が低い人に心房細動が多いメカニズムではないかと思われます。また運動による高心拍出量なども心房細動誘発に関与するのかもしれません。

ちょうど同じような論文が別の雑誌に掲載されています。
Low Heart Rates Predict Incident Atrial Fibrillation in Healthy Middle-Aged Men. Circ EP Published online before print July 21, 2013,
by dobashinaika | 2013-07-26 13:44 | 心房細動:リアルワールドデータ | Comments(0)

心房細動除細動後の脳卒中発症率:Flec-SL研究より

International Journal of Cardiology 7月22日付オンライン板より

Low stroke risk after elective cardioversion of atrial fibrillation: An analysis of the Flec-SL trial

【疑問】発作性心房細動電気的除細動後に生じる血栓塞栓症の頻度とリスク因子は何か?

P:待機的な除細動施行例登録患者635人(平均63.7際、男性66%);Flec−SL試験

O:除細動後の脳卒中/TIA、大出血

【結果】
1)周術期に抗凝固療法を受けていた人:629人99.1%

2)最近の推奨に基づいた適切な抗凝固療法:556人87.6%

3)経食道エコー施行:202人31.8%

4)電気的除細動80.0%、薬理学的除細動20%

5)脳卒中6人0.9%(梗塞5,TIA1)

6)大出血5人0.8%

7)脳卒中3人は除細動後5日以内発症

8)イベントは除細動の種類や経食道エコーでの血栓同定とは無関係

【結論】抗凝固療法下の除細動患者対象のこのような大規模コホートでは、脳卒中は稀。この結果は心房細動除細動時の抗凝固療法推奨を支持する

### 16日のブログで、これとほぼ同様のJACC誌の研究を取り上げています。
http://dobashin.exblog.jp/18110132/

JACCのほうは、2481人対象で血栓塞栓症0.7%。出血の記載はありません。心不全、糖尿病を有する例でリスクが高いという結果でした。対する本研究も脳卒中0.9%とほぼ同様のリスクでした。

やはり抗凝固療法をしていても100人に0.7〜0.9人は塞栓症を起こすということ走っておいたほうが良いと思われます。JACC研究と合わせると、経食道エコーはあまり役立たない、心不全、糖尿病には注意ということでしょうか。

薬剤による除細動であっても塞栓症がありうることも気をつけておくべきと思いました。
by dobashinaika | 2013-07-25 12:40 | 抗凝固療法:全般 | Comments(0)

心房細動と無症候性脳虚血、認知機能低下の関係:JACC誌より

JACC7月10日付オンライン板より

Prevalence of Silent Cerebral Ischemia in Paroxysmal and Persistent Atrial Fibrillation and correlation with cognitive function
doi:10.1016/j.jacc.2013.05.074


【疑問】心房細動による無症候性脳虚血が認知機能低下の関係するか?

E:心房細動(発作性50%、持続性50%)180人

C;洞調律対照例

O:神経学的所見、脳MRI、神経心理学的評価(RBANS)

【結果】
1)無症候性脳虚血:発作性89%、持続性92%、対照群46% (p<0.01 to control)

2)一人あたりの無症候性脳虚血数:持続性>発作性 (41.1±28.0 vs 33.2 ±22.8; p=0.04)>対照群(12.0±26.7; both p<0.01)

3)認知機能;持続性=発作性<対照群(RBANS 82.9±11.5, 86.2±13.8 and 92.4±15.4 points respectively; p<0.01)

【結論】
発作性及び持続性心房細動は、コントロールに比べて無症候性脳虚血の頻度、数ともに多い。また認知機能も洞調律例より低下している

### 心房細動に無症候性脳虚血が多いことは、ずっと以前から知られています。また認知機能例が多いことも最近はメタ解析まで出ておりある程度確立した感があります。
http://dobashin.exblog.jp/17490505/

認知機能低下には微小脳塞栓が関与していると推察されていますが、因果関係を論議するにはまだデータ不足でした。今回の研究では心房細動に無症候性脳虚血が多い、認知機能も低下しいる。そこまではいえますが、少数例の横断研究ですので、無症候性脳虚血が多い、だから認知機能が低下している。ということまでは当然できません。これを言うには、著者も言っているように抗凝固療法などにより無症候性脳虚血が減った、そうしたらそういう群では抗凝固療法非施行群より認知機能低下が少なかった。ということを言わなければならないと思われます。

ですから、そういう意味でも、つまり明らかなノックアウト型脳梗塞の予防以外の、認知症予防という意味でも抗凝固薬の役割が期待されると思います。まだそれを検討した論文は目にしていません。期待したいです。

しかし心房細動の89〜92%は無症候性脳梗塞があるというのは、やはり多いと考えたほうがいいのかどうか。
by dobashinaika | 2013-07-24 17:27 | 心房細動:リアルワールドデータ | Comments(0)

抗凝固薬とアスピリン併用の頻度とそのリスク:ORBIT-AF登録研究

Circulcation 7月16日付けオンライン版より

Use and Associated Risks of Concomitant Aspirin Therapy with Oral Anticoagulation in Patients with Atrial Fibrillation: Insights from the ORBIT-AF Registry
doi: 10.1161/ CIRCULATIONAHA.113.002927


【疑問】抗凝固薬にアスピリンを併用した心房細動患者のアウトカムは何か?

P:米国の176医療施設から登録された心房細動患者10129人(2010年6月〜2011年8月)のうち抗凝固薬服用の7347人

E/C:アスピリン併用者/非併用者

O:6ヶ月間の出血、入院、虚血性イベント、死亡

【結果】
1)アスピリン併用者:35%

2)併用者は男性に多い(66%vs53%、p<0.0001)。合併疾患多い

3)併用者の39%は動脈硬化性疾患の既往なし。しかしATRIA出血リスクスコア5点以上:17%

4)大出血:併用者群の非併用者群に対するハザード比1.53(1.20-1.96)、出血による入院のハザード比1.52

5)虚血性イベント率は低い

【結論】抗凝固薬服用心房細動患者は、心血管疾患がなくてもアスピリンを併用されている場合がしばしばある。抗凝固薬とアスピリン併用は出血リスクを明らかに増加させる。既に抗凝固薬を服用している心房細動患者のリスクをアスピリン併用の利益が上回るかどうか十分注意する必要がある。


### 患者背景が詳しくわかりませんが、35%も併用している方がおり、そのうち39%は動脈硬化疾患の既往なしということなので、おそらく冠動脈疾患や脳卒中の一次予防として処方されている方が含まれているのではないかと思います。

もちろん狭心症、脳梗塞に二次予防にはアスピリンは有効ですが、そういう例でもワーファリンやNOACとの併用が出血を増やすことは明白ですので、血圧管理、出血予防に十分注意することも当然大切です。

しかし実際、臨床の現場では必ずしもステント治療後とか脳梗塞既往例以外にもアスピリンが処方されている例が結構あるように思われます。例えば、ずっと以前に胸痛があって、冠動脈造影検査は異常ないが、予防的に(?)アスピリンが出されていたり、TIAの診断で、その後一度もエピソードがないが、漫然とアスピリンが処方されていたり。アスピリンは出血リスクが低く、出しやすいというイメージが有るため厳密な診断なしで処方されていることはままあるのです。そういう人が心房細動を発症した時、アスピリンが漫然と出されると危ない、ということです。

漫然としたアスピリン処方がないかどうか、改めて確認したいと思います。
by dobashinaika | 2013-07-23 13:36 | 抗凝固療法:抗血小板薬併用 | Comments(0)

ダビガトランのアドヒアランスはどの程度か?

Journal of Thrombosis and Haemostasis 7月号より

Adherence to anticoagulant treatment with dabigatran in a real-world setting
Journal of Thrombosis and Haemostasis
Volume 11, Issue 7, pages 1295–1299, July 2013


【疑問】ダビガトランのアドヒアランスはどの程度か?

【対象・方法】
・抗凝固療法専門クリニックで3ヶ月以上ダビガトランを服用している103人
・横断研究、インタビューとカルテによる
・追跡期間中に薬局から処方されたダビガトランのカプセル数、飲み忘れ、出血、血栓塞栓イベント、その他副作用(特にディスペプシア)を聴取

【結果】
1)平均75,5±8.5歳、女性46%、CHADS2スコア平均2.5点

2)投与データは99人から回答
・アドヒアランスは99.7%(94.6〜100%)
・11人は80%未満

3)インタービューでは31人(30%)で時に飲み忘れあり;”6年で2回”から”毎日”まで
・アドヒアランス80%未満1人追加

4)出血:21人20%:2人だい出血、脳梗塞1人、ディスペプシア34人33%

5)RE-LY試験登録者と非登録者とで違いなし

【結論】
アドヒアランスは全般的に良好。12%の人は不適切。薬局からの医師への定期的なフィードバックが抗凝固管理には重要

### 当院で50人処方時点同様のインタビューを取りましたが、飲み忘れありとおっしゃった方は10人20%でした。またアドヒアランスが80%を切る人はほとんどいらっしゃらなかったように思います。

当院では、ダビガトラン服用者全員に手帳を渡して、飲んだ時に手帳のカレンダーに丸をつけるようにお願いし、また処方前に内服の意義、飲み忘れ対策、薬の半減期について細かく説明するようにしています。
当院でダビガトランの飲み忘れの多い方は、
1)これまで朝しか処方がなかった方 2)晩酌をする方 3)ディスペプシアのある方
でした。

一番大切なことは最初に内服することのゴールをしっかり患者さんと共有することかと思います。
リスクコミュニケーションは最重要です。クリニカルエビデンスより大切ともいえます。とにかく飲まないことにはエビデンスも何もありません。

この論文で、リスコミがどの程度行われていたのか、非常に興味深いところです。

あ、大事な点。このクリニックの患者さん年齢平均75歳!80歳以上もいるみたいですね。ここが当院と大きく違うかもしれません。NOACは最近でこそご高齢の方でも腎機能良好な人には出しますが、まだ少数ですので。
by dobashinaika | 2013-07-22 19:34 | 抗凝固療法:ダビガトラン | Comments(0)

医療コミュニケーションについてお話しする機会をいただきました。

本日、縁あって盛岡の鎌田潤也先生が主催されている「おおどおり 健康教室」に講師として参加させていただきました。お題は「医療コミュニケーション」。行ってみたら、150人は入ると思われる会場はほぼ満席で、しかも第139回!。当院の健康増進外来や健康カフェの話しをしましたが、会場の雰囲気がまた良質で、反応が肌で感じられ、大変心地よくお話しさせていただきました。
診察室がまわりのコミュニティーにとけ込んで渾然一体となるようなイメージですね。スタッフのチームワークもすばらしく、鎌田先生の人間力に圧倒されました。各地でこうした取り組みが行われるようになりましたが、コラボや拡散がもっと行われるとよいですね。

また岩手リハビリテーションセンターの機能回復療法部部長で理学療法士の諸橋勇先生とお話しする機会がありました。先生はコーチングの技法を学ばれ、医療コミュニケーションに造詣が深く、刺激的なお話をお聞きすることができました。
「リハは言葉だけでなく、身体を通してコミュニケーションをする」「理学療法士は患者さんと何時間も接しており、コミュニケーションはやり方ではなく、あり方なのである」
なるほど、医療コミュニケーションというのははまさにスキルとして捉えるにはあまりに日常的で、普遍的な営為=人間のあり方そのものということができる訳ですね.その点、医者は一般にコミュニケーションをまだまだスキルと捉えて、マニュアル的な接遇で満足しているレベルかも知れません.

やっぱりいろいろなところに言って、いろいろな人と話しをするのはいいですねえ。
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by dobashinaika | 2013-07-20 23:06 | 心理社会学的アプローチ | Comments(0)

ダビガトランのブルーレターが出た後、医者は処方態度を変えたか?;心臓血管研究所からの報告

Journal of Cardiology 7月6日付けオンライン版より

“Blue letter effects”: Changes in physicians’ attitudes toward dabigatran after a safety advisory in a specialized hospital for cardiovascular care in Japan
http://dx.doi.org/10.1016/j.jjcc.2013.05.016


【疑問】ダビガトランのブルーレターが出た後、医者は処方態度を変えたか?

【背景】2011年8月、厚労省からダビガトランの安全性情報がリリースされた。その前後でのダビガトランに対する医師の態度の変化についての報告はない。

【方法%結果】
・2011年3月~2012年7月の間に、心臓血管研究所(東京)で404人の非弁膜症性心房細動患者にダビガトランが処方された。

・初回処方日を元に3期に分類
第1期:ブルーレター前、135例
第2期:ブルーレター後、長期処方認可前、112例
第3期:長期処方認可後、157例

・第2期においてはより高齢者、腎機能低下例、抗血小板薬服用者、P糖蛋白阻害薬用者への処方は差し控える傾向が見られた

・APTT測定は1、2、3期となるに連れて増えた

・第3期には、第2期で見られた傾向は逆転し、より高齢者、腎機能低下者に処方される傾向が見られた

・しかし、抗血小板薬およびP糖蛋白阻害薬服用者への処方は減少または横ばいであった

【結論】日本の心血管疾患専門施設におけるブルーレター後のダビガトラン処方に対する医師の行動変容について述べた。リアルワールドでのダビガトランの安全使用に役立つものと信じる。しかし真のインパクトや効果は全国的な多施設研究で確認されるべき。

### なかなかに興味深いですねえ。私は、多少科学的手法から離れているとはいえ、こういう患者、医療者の心理に迫る研究が非常に好きです。特に医療者の行動変容に関しての論文は、自分の心象と比較しながら読むと、医療者の様々な心理的葛藤などが推察することができ、楽しんで読めます。

2011年8月12日に件のブルーレターが出ましたが、ちょうどお盆の時期で私はそのとき震災後初めて少し被災した実家を訪れておりました。行きの新幹線の中のツイッターTL上でブルーレーターのリリースを知り、実家にあったパソコン(なんと実母が使いこなしております)からブログを投稿したことを思い出します。
http://dobashin.exblog.jp/13276881/
翌日「プラザキサを正しく怖がり、正しく使おう」とブログで述べましたところ、驚くほどのアクセス数がつきました。
http://dobashin.exblog.jp/13278908/

しかしこの時点で、私自身、実はプラザキサの処方はほとんど経験がありませんでした。なぜならプラザキサ発売直前に3.11が起き、物流が途絶え、また物流が回復した3月下旬頃〜4月初め頃でも、薬剤供給が思うに任せず長期処方は控える控えないの情報が錯綜しており、ワーファリンに変わるべく上梓されたなどという大物のくすりは、とても自信を持って使う雰囲気ではありませんでした。ようやく余裕を持って処方できるようになったのが、当地では5月連休明けくらいだったかと思われます。

ですので、この論文のようにブルーレター前後の医者に行動変容があった、ということを言われてもなかなかピンと来ませんでした。しかし、全文を読みますと、なるほどブルーレター後、ものすごく処方に慎重になったのを思い出し、また2012年3月の日本循環器学会で各施設からダビガトランの使用経験なども出そろい(とくに心研からのaPTTの報告は大きかったと思われます)、その辺りからまた急速に処方が増えたのは、当院も同じだと思います。

ええ、あの当時の記憶が鮮烈なので、つい自分の経験を書いてしまいましたが、ブルーレターで慎重になった医師達が、aPTT測定などの実績とエビデンスを通じて、自信を持って使用できるようになっていく心象変化が興味深く、
まさに「正しく怖がり、正しく使う」ようになって行くプロセスが反映されたデータのように思います.

できればPatient characteristicsのみならずDocter characteristicsも知りたいところでした。医師経験年数での差とか。。
by dobashinaika | 2013-07-18 23:53 | 抗凝固療法:ダビガトラン | Comments(0)

心電図健診や術前心電図は本当に必要か?

本日は仙台市医師会学術部勉強会兼産業保健研修会が開催され、「健診で見つかる心電図にどう対処するか」というお題でお話させていただきました.

健診でみつかる異常心電図のほとんどは予後良好です。

健診心電図の考え方は
1。”心電図を見る→その(心電図を呈するようになった)背景を見る。→その心電図の予後を知る”というアルゴリズム
 2。”12誘導心電図だけで基礎心疾患の有無を見抜く方法”

などを実例に沿ってお話しいたしました。

で、その前に、そもそも「健診に心電図は本当に必要か」というどんでん返しを講演の最初に持ってきてつかみにしました。
昨年米国内科専門医認定機構(ABIM)の呼びかけに基づいて、米国の9学会が公開した「Choosing Wisely」では米国家庭医療学会が「症状のない低リスク患者に対する毎年の心電図検査あるいは他の心臓スクリーニングを行なってはならない」との声明を出しています。
http://dobashin.exblog.jp/16204336/

その根拠となるUSPSTF(米政府予防医学作業部会)のエビデンスレポートでは、運動負荷心電図後に冠動脈造影を受けたリスクは0.6〜2.9%に上るとされ、低リスク患者に心電図を施行することの害が利益を上回ると結論付けています。

すべての検査には偽陰性(FN)と偽陽性(FP)があります。日本の健診はなるべくFNつまり見逃しを恐れて、低リスク例にも一律に検査を施行し、また検査閾値を低く設定する傾向になっていると思われます.一方FPつまり過剰診断については、もしそこでたとえばカテーテル検査までして陰性の診断がついても、病気じゃなくてよかった、やっぱりやって良かった、ということになりがちで、検査に伴う被曝量、造影剤の副作用、コストを顧みることは何となくヤボであるという空気が支配しているのではないかと思われます。

しかし、念のためという名の下で行われている侵襲的検査(冠動脈造影や冠動脈CTなど)、果ては治療(ステントやカテーテルアブレーション)は、正確な統計さえないものの、かなりの件数に上るように思われます。このような侵襲的検査、治療の適応決定に関し、完全に術者主導になっている点も拍車をかけているように思います。ましてやコストパフォーマンスを考えた分析などなかなかに困難かと思います。

もちろん、肥大型心筋症等や徐脈性不整脈の早期発見などに寄与する健診心電図の役割は一定のものがあるとか思いますが、狭心症、良性の不整脈などに対する診断精度や価値はかなり低いものと思われます。

またたとえば、日本中で広く行われていると思われる、小手術に対する術前の心電図検査などについても「必要ない」と考えられることが多いと思われます.
2007年のACC/AHAガイドラインでは「リスク因子がない、または少なくとも1つの中等度リスクを持つ患者の血管手術術前の、スケジュールに組み込まれた心電図は余り強く推奨しない」とされています。
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed?term=19884473

術前の心電図異常が患者の術後心臓合併症の予測にならないことも示されています。
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed?term=12133011

往々にして医師は、検査をしないことでの見逃しを恐れ、また治療を施さないことの”無為の不安”を解消するため、「念のため」の検査を行い、「念のため」の抗菌薬投与を行い、「念のため」のステント治療をおこないがちです(たとえば狭窄があるというだけの理由で)。

これからは、見逃しの恐怖、何もしないことの不安から理知的に脱却し、しすぎることの副作用、弊害をも考えるべきでしょう.
過剰検査は、患者さんの不安感を募られ、過剰治療はコストを募られます。
今一度冷静に考えてみたいと思います。
by dobashinaika | 2013-07-17 23:39 | 循環器疾患その他 | Comments(0)


土橋内科医院の院長ブログです。心房細動やプライマリ・ケアに関連する医学論文の紹介もしくは知識整理を主な目的とします。時々日頃思うこともつぶやきます。


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