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PM2.5は心房細動新規発症と関係あり:JACCC誌より

JACC 6月19日オンライン版より

Acute Exposure to Air Pollution Triggers Atrial Fibrillation
doi:10.1016/j.jacc.2013.05.043


【疑問】大気汚染への急性曝露は心房細動を誘発されるか?

P:ICD(植え込み型除細動器)患者176人

E/C:心房細動発症24時間前の大気中のPM2.5、黒色炭素、硫酸塩、粒子数、NO、SO2、O3

O:心房細動新規発症率

T:同一症例内でのcase-crossover analysis

【結果】
1)心房細動新規発症:49例328エピソード(30秒以上持続),1.9年追跡
2)PM2.5 との相関はあるが弱い。短時間曝露との相関は強い
3)イベント2時間前のPM2.5は6.0 μg/m3増えるごとに心房細動発症率が26%増加(p=0.004).
4)平均PM2.5の上位1/4の心房細動発症オッズ比が最も高い

【結論】粒子状物質は心房細動新規発症の危険率上昇に関係していた。疫学研究においてみられる大気汚染と心血管イベントとの相関と同様、大気汚染は心房細動の急性の引き金である。

### 大気汚染が虚血性心疾患のリスクに関係することはいくつかの研究がありましたが、心房細動にも関与するとの研究です。あくまで発作前24時間以内の汚染度を測定していますので、トリガーとしての評価できますが、大気汚染の累積量と心房細動の関係などは不明と思われます。

また研究の性格上症例対象研究などではなく、同一症例内の時間差の比較ですので、バイアスは大きいと思います。

さて、メカニズムは何でしょうか?交感神経緊張でしょうか?
by dobashinaika | 2013-06-28 22:58 | 心房細動:リアルワールドデータ | Comments(0)

ダビガトラン150mgと110mgの臨床的有効性は同等:RELY 試験のデータより

JACC 6月19日オンライン版より

Balancing the benefits and risks of two doses of Dabigatran compared with Warfarin in Atrial Fibrillation
J Am Coll Cardiol. 2013;():. doi:10.1016/j.jacc.2013.05.042


【疑問】ダビガトラン110mgx2と150mgx2の、Net clinical benefitはどちらがよいのか?

P:RE-LY試験組み入れ患者18113人

E:ダビガトラン110mgx2

C:ダビガトラン150mgx2

O:非中枢性塞栓、出血性脳卒中、硬膜下出血、頭蓋外出血、頭蓋外出血を除く大出血、心筋梗塞の罹患率に、虚血性脳卒中の死亡率をレファレンスとしてのハザード比を係数としてかけたNet clinical benefit(ischemic stroke equivalents)

【結果】
1)対ワルファリン:両用量ともワルファリンより少ない
110mgx2: -0.92 / 100人年 (95% CI: -1.74 to -0.21, p=0.02)
150mgx2: -1.08/人年 (95% CI: -1.86 to -0.34, p=0.01)

2)ダビ150 vs.110:両用量間で違いなし
150mgx2(to110mgx2); -0.16 (95% CI: -0.80 to 0.43)

3)死亡を結果に入れるとベネフィットは小さくなる
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【結論】効果と安全性を含む重みづけ評価で、ワーファリンに比べてのベネフィットはダビガトラン両用量とも同等。こうしたオーバーオールでの両用量の同等性は、患者の特性、医療者患者の好みに基づく用量設定の個別化をサポートする。

###計算方法がちょっとややこしいですが、大雑把に言えばダビガトラン150x2の時の「虚血性脳卒中、非中枢性塞栓、出血性脳卒中、硬膜下出血、頭蓋外出血、頭蓋外出血を除く大出血、心筋梗塞」の罹患率を110mgx2の時の罹患率でひき算してプラスなら150mg優勢、マイナスなら110mg優勢という図式だと思います。ただし、虚血性脳卒中をレファレンスにした時にRE-LY試験において、対死亡率で比べた場合たとえば出血性脳卒中は3.29倍ですので、このハザード比を係数としてそれぞれの項目にかけ重みを付けがなされています。症例数が少ない場合はActive-Wからのデータも借用されているようです。

結局両用量とも、最終的な全イベントの差はなかったというのが結論。なぜか?ダビ150は虚血性脳卒中のRRR(相対リスク減少)が110mgの31%。一方大出血は110mgが150mgより12%減少。重み付け係数は虚血性脳卒中が大出血の1.4倍。ただし大出血率自体が虚血性脳卒中の2倍なので、結局差し引き同じとなり、両用量に差がなかった。と説明されています。

SingerらのATRIA研究からの有名なグラフでは頭蓋内出血だけを副作用として取り上げ、かつその重み付けは1.5とかなり恣意的なものでした。この論文では、大イベントが網羅されしかも理論的な係数で重み付けされていてより妥当性があるようにも思えます。

この論文から得られる知見をまとめますと
「ダビ150は梗塞予防ベネフィット大、ダビ110は出血リスク予防大。差し引きすれば両者のメリットは同等」
そこから導かれることは
「ダビ150と110はどちらを選択してもOK。梗塞をより予防したい人なら150、出血させたくない人なら110」
ということだと思います。

まあRELYの結果を概観すれば、こうした緻密な計算をしなくてもわかることだろうとは思います。1回の大規模RCTから、本当にいろいろな観点からの論文が出てくるものだと、感心したりもします。

2つの用量の使い分けができる。このダビガトランの最大の強みが、この論文ではより明らかになったと考えても良いかと思います。われわれはいま4つのNOAC、つまりダビガトラン150、ダビガトラン110、リバーロキサバン、アピキサバンの使い分けを考えねばならない。そうも言えるかもしれません。

Limitationとしては重みづけ係数が死亡に基づくもので良いのか、などの問題もありますが、一番は、日本では上記のような使い分けをする以前に年齢(70歳)で既に縛られてしまい、使い分けの妙が味わえない、というか意味を成さないということでしょう。そろそろ腎機能(クレアチニンクリアランス)だけの縛りにしてほしいものです。
by dobashinaika | 2013-06-26 20:33 | 抗凝固療法:ダビガトラン | Comments(0)

ワルファリンからリバーロキサバンへの切替時には注意が必要:ROCKET-AFサブ解析

Annals of Internal Medicine 6月18日号より

Clinical Outcomes With Rivaroxaban in Patients Transitioned From Vitamin K Antagonist Therapy: A Subgroup Analysis of a Randomized Trial
Ann Intern Med. 2013;158(12):861-868. doi:10.7326/0003-4819-158-12-201306180-00003


【疑問】ワーファリン経験者とナイーブとでリバーロキサバンのワーファリンに対する効果と安全性に違いはないのか?

P:Rocket-AF試験に登録された14,264例(18歳以上の非弁膜症性心房細動、CHADS2スコア2点以上)

E:ワーファリンナイーブ(服用していない患者)

C:ワーファリン経験者;7897例55.4%

O:脳卒中/全身性塞栓症;6367例44.6%

【結果】
1)リバーロキサバンのワーファリンに対する効果はワーファリン内服の有無に関係なく同一(交互作用なし、P=0.36)
①ワーファリンナイーブ:リバーロ2.32 vs. ワーファリン2.87 (HR 0.81)
②ワーファリン経験:リバーロ1.98 vs. ワーファリン2.09 (HR 0.94)

2)当初7日間の出血はリバーロキサバン群がワーファリン群より多い
①ワーファリンナイーブ;HR5.83
②ワーファリン経験;HR6.66

3)30日後の出血はリバーロキサバン群がワーファリン群より少ないか同等
①ワーファリンナイーブ:HR0.84
②ワーファリン経験:HR1.06

【結論】リバーロキサバンの効果はワーファリンナイーブとワーファリン経験者とで同一。当初7日間の出血はリバーロキサバンのほうがワーファリンより多いが、30日後の出血はリバーロキサバンのほうが少ない(ワーファリンナイーブ)か同等(ワーファリン経験)。この情報はワーファリンからリバーロキサバンへの切替時に有用

### 一般にワーファリンナイーブ→ワーファリン群に割り付けられた症例は、導入時INRが至適レベルまで達するまでの期間は脳塞栓の起こりやすい時期であるため、このブランク分だけ効果が低いことが推測されます。反面、急激に1INRが上昇する症例もあり、出血の増加も懸念されます。一方ワーファリン経験者→リバーロキサバン群においては、ワーファリンの効力が低下してから(INR2.0未満)リバーロキサバンに切り替えるようになってはおりますが、やはり少なからずオーバーラップの時期があるため、この間に出血が多くなることが予想されます。

同様の現象は、デンマークのリアルワールドのダビガトラン登録研究でも見られています。
http://dobashin.exblog.jp/17767149/
リアルワールドの場合、切り替え例はコンプライアンスが悪い例などが多くそれだけバイアスがかかっている可能性がありますが、やはり切替時は注意ということがわかります。

おそらくINRが2.0以下になってもだらだらとワーファリンが効いている方がおられるのではないかと思います。

Rocket-AF試験ではINR2.0未満になったらワーファリンを切るプロトコールですが、J-Rocket AFでは日本のガイドラインに沿って70歳以上では1.6未満で切っているはずです。J-Rocket AF試験は90%近い患者さんがワーファリン経験例ですので比較は難しいですが、今後、NOACへの切替時はINR1.6を目安にするという戦略も考えるべきではないかと思います。
by dobashinaika | 2013-06-25 20:41 | 抗凝固療法:リバーロキサバン | Comments(0)

ヨーロッパ心臓病学会の心房細動患者さん向けサイト

ヨーロッパ心臓病学会(ESC)が心房細動患者さん向けにホームページを開設致しました。
http://www.afibmatters.org

デザインが凄くおしゃれです。

一番、いいね!と思ったのは” Living with Atrial Fibrillation” の章です。

WILL I BE ABLE TO LIVE A NORMAL LIFESTYLE?「正常な生活を営むことができますか?」の問には、はっきりYes(ある医学的制約はあるけれども)と言ってくれています。

WHAT SHOULD I EAT?「何を食べればいいの?」の問には、なんと「ビタミンKが高い食品」として”Natto (fermented soubean)も記載されています。
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この章だけでも和訳して(日本向けにやや改定して)当院患者さんに配布しようと思います。

抗凝固薬のところはNOACの記載はややあっさり気味かとは思いました。

日本にもこういう洒落た感じの患者さん向けサイトがあるといいですね~~。
by dobashinaika | 2013-06-24 20:35 | 抗凝固療法:全般 | Comments(0)

どばし健康カフェ(仮)準備会を開催しました

6月22日(土)はご近所の保健師さん、ケアマネージャーさん、薬剤師さん、看護師さんが当院待合室に集まって「どばし健康カフェ」の準備会を行いました。

健康の話題、医療の話題を、診察室の外で、診療の現場、介護の現場の外で語り合いたい。しかもいろいろな立場の人と語りありたい。そういった思いからカフェ形式で語り合いの場を作る。。。

当院リニューアルの時からやってみたいことのひとつでしたが、これまで準備に時間がかかっていました。まず医療者だけで語り合う形で、こじんまりではありますが皆で集まり語り合いました。

今日のテーマは「医療コミュニケーションが、うまくいくようにするにはどうしたらよいか?」です。

当日話し合われたことを箇条書きにします

・ 「自分と合わない」と感じた患者さんとどう接するか
   他のスタッフに変わってもらう
    あわないのはどこか,なぜなのか考え直す

・ 無理なお願いをされたときどうするか?
    妥協できないところはきちっとけじめを付ける
    医師、上司と相談して決めますと伝える

・ 疑義照会をしたとき医師をうまくコミュニケーションが取れない
    お互いに感謝の気持ちを持つ
    処方箋の意味を理解してもらう
    院外コミュニケーションの場を作る

・自分の感情がくじけたときどうしているか?
   同僚、上司に相談
   家庭に聞いてもらう
   流れに任せる

・ その他コミュニケーションの上で問題に上がった点
   難しい医療用語をつい使ってしまう
    (例)処置、帰宅願望、周辺症状、褥創。。。

   時間がないと、無理矢理切り上げたり、まとめてしまう。
    特に電話などで相手の理解がないとわかっていても、やや強引に切り上げる

本当はこの何倍もの話しが出たのですが、ファシリテーターとして慣れないため、記録がうまくできず、うまくまとまっていません。

初回としては、かなり盛り上がったのではないかと思います.
他職種の人たちと、具体的な症例のことではなく、日頃のコミュニケーション上の悩みや課題を挙げ、それに対するコーピングについて自由に話し合う。そう言ったことの面白さを、皆が感じられたのではないかと思います。

今回の経験を生かして、一般市民向けの健康カフェ開催に向け、また今回の感触から医療者だけのカフェも継続して、今後企画して行きたいと思います。

その節は当ブログその他で告知いたしますので、皆様の参加をお待ちいたします!
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by dobashinaika | 2013-06-24 00:33 | 土橋内科医院 | Comments(1)

米国一般外来での心房細動抗凝固薬登録研究

Circ Cardiovasc Qual Outcomes 6月11日付けオンライン版

Risks and Benefits of Anticoagulation in Atrial Fibrillation
Insights From the Outcomes Registry for Better Informed Treatment of Atrial Fibrillation (ORBIT-AF) Registry


【疑問】米国の一般住民対象の外来での心房細動患者に対する現状は何か?

【方法】
・ メイヨ−クリニック主導による一般外来を対象とした心房細動患者の登録研究です
・ 1098人、174外来医療施設、2010〜2011年登録

【結果】
1.平均年齢73歳、58%男

2.抗凝固薬76%(ワーファリン71%、5%ダビガトラン)

3.CHADS2スコア高点数ほど抗凝固薬投与率高い
0点53%、2点以上80%

4.ATRIAスコア好天ほど抗凝固薬投与率低い(傾向は軽微)
3点81%、5点73%

5.CHADS2スコアとATRIAスコアには軽微な交互作用あり(P=0.021)

6.低出血リスク患者においては脳卒中リスクが高いほど抗凝固薬投与率も明らかに高くなる

7.高出血リスク患者においてはCHADS2スコアの抗凝固薬投与率への影響は小さい

【結論】一般住民外来の心房細動患者では、抗凝固薬投与は脳卒中リスクだけでなく出血リスクにも影響を受ける。低出血リスク患者においては脳卒中リスクが抗凝固薬投与率に明らかに影響する。高出血リスク患者においては脳卒中リスクにかかわらず抗凝固薬投与率は低い。

### ATRIAスコアは
貧血3点
重症腎不全3点
75歳以上2点
出血既往1点
高血圧1点
です。

例えば日本のプライマリケア医が多く登録したFUSHIMI AFレジストリーでは、抗凝固薬投与率50.5%(平均年齢74.2歳)でした。かなり投与率の良いpopulationだと思われます。ただしFUSHIMIの場合でもCHADS2スコアが高くなるに連れて(特に0点→3点まで)、投与率も上昇しており、この点は同じです。

この研究では、出血リスクによる検討も行なっていますが、出血リスクが高い場合はCHADS2スコアが高くても、抗凝固薬投与率は高くないというのは、直感としても納得出来ます。

ただCHADS2スコアとATRIAスコアは3点ほどオーバーラップしていますし、一般臨床でCHADS2スコアとATRIAスコアを両方共考えながら処方するとは考えにくく、結果としてそうなったという面を見ているのではと思います。
by dobashinaika | 2013-06-23 00:33 | 抗凝固療法:リアルワールド | Comments(0)

抗凝固療法のリスクコミュニケーション:健康日本21推進フォーラムの調査を読んで

かなり旧聞に属しますが、5月にプレス・リリースされた健康日本21推進フォーラムという団体からの「心房細動の患者さんのコンプライアンス」の実態調査を備忘録としてアップいたします。

http://prw.kyodonews.jp/prwfile/release/M000261/201305222001/_prw_OR1fl_27sXS647.pdf

主な知見をコピペいたします。

レセプトデータに見る抗凝固薬の服薬中止者数
■抗凝固薬の服用中止者数は年間約33,000人と推定。

Q:抗凝固薬の服用中止者の中止時期とその理由
■ 服用開始1年以上たってからの中止者が4割強(41.9%)。
■ 中止理由として薬剤要因が5割以上(54.9%)を占め、通院要因(25.1%)を倍以上上回る。

Q:服用中止者における脳梗塞発症の危険性に関する意識
■ 服用中止者の8割強(83.9%)が服用中止に伴う脳梗塞発症の危険性を軽視する反面、9割弱 (87.1%) が脳梗塞の発症を心配。

Q:服用中止者と継続者の心房細動に関する理解
■中止者(32.3%) 、継続者(48.0%)ともに抗凝固療法による脳梗塞予防に関する理解に乏しく、 特に中止者で理解度が低い。

Q:服用中止者と継続者の脳梗塞に関する理解
■ 中止者の4人に3人(77.4%)が抗凝固薬を服用しないと脳梗塞の発症リスクが高まることを 知らない。

Q:服用中止者と継続者の家族の介護負担に対する意識
■脳梗塞発症時の家族の介護負担を意識している人は、中止者の3人に1人(33.4%)にとどまり、継続者(58.0%)の意識と大きな開きが存在。

Q:服用中止者と継続者が抗凝固薬に望むこと
■ 抗凝固薬に望むことは、中止者(50.5%)、継続者(68.0%)ともに、「1日1回の服用で済む」 がトップ。

Q:服用中止者と継続者の新しい抗凝固薬の認知
▪中止者(91.4%) 、継続者(90.0%)ともに新しい抗凝固薬への関心は9割にのぼる反面、 中止者(45.2%) 、継続者(41.0%)とも4割以上が抗凝固薬の選択肢が増えていることを 知らない。
▪中止者の9割以上(95.7%)が“服用や通院の負担、家族の負担が少なくなる抗凝固薬” の選択肢を知れば、医師へ相談する意向。 


### 論文ではありませんので、あくまで参考資料としてみておきたいですが、それでも調査方法について一応抑えておきたい点あるいは不明な点を書いておきます。

・「1年間の抗凝固薬服用中者数」がレセプトデータから推計されていますが、母集団の抽出方法や患者背景が不明。

・レセプトベースで服薬が中止となったレセを組み入れたようですが、服薬中止した患者さんは、もう医療機関に来なくなる方がお多いように思います。そういう方のデータはレセベースでは拾い上げられないのでは?

・インターネット調査で服用中止した人93人、服用継続した人100人のデータを解析しているが、その抽出方法が不明。コントロール群は背景をマッチさせているかも不明。

・服用中止理由に「副作用・出血の危険性」「規則的に服用することが難しい」などがあるが、この理由を医師も納得して中止に至ったのかどうか知りたい。超高齢者などではそういった理由で医師の方から中止を申し出ることもありうるかもしれないが、例えば70歳前後でお元気な方から、出血が怖いから中止したいと申し出られても、医師の承諾は簡単にえられないと思われる。中止者の年齢層、CHADS2スコア、中止に至る経緯をもっと知りたい。

など色々あります。また「抗凝固薬に望むこと」のトップが「1日1回の服用で済む」というのもちょっと意外です。「出血が少ない」あるいは特に東北、関東では「納豆が食べたい」のほうが上位のような印象です。
さらに服薬中止者が年間4.3%とのことですが、それ以前に服薬を拒否して投薬できていない患者さんがどのくらいいるかがより知りたいところです。当院では、後述する心房細動外来を施行する前は拒否率11.2%でした(施行してからは3%未満)。

ただ、「中止者の77.4%が抗凝固薬を服用しないと脳梗塞の発症リスクが高まることを知らない」「脳梗塞発症時の家族の介護負担を意識している人は中止者の3人に1人」「中止者は中止時の脳梗塞は起こるかもしれないが、そんなに高い確率ではないと思っていた」等のデータは興味深いです。

当院では心房細動外来で、1人20分〜40分と長い時間かけて患者さんに服薬の重要性とリスクお話ししますが、それでも抗凝固薬の服薬目的を知らない方が時におられます。
当院でのコミュニケーションキーポイントは4つ
1)服薬のゴールを示す
2)抗凝固薬のリスクベネフィットバランスを示す
3)出血リスクを減らす手段を示す
4)上記3つの基礎に患者さんの抗凝固薬への解釈モデル(解釈、期待、感情、影響)を聞いておく

です。

そしてそれをいつやるかが大事です。処方前の早い段階でよく情報共有出来ればその後の服薬中止はかなり予防できるように思います。

「抗凝固薬のリスクコミュニケーションいつやるか?」「最初でしょ」
by dobashinaika | 2013-06-21 15:53 | 抗凝固療法:リアルワールド | Comments(1)

心房細動のレートコントロールvs.リズムコントロールに関するAHRQのレビュー

米国の保健福祉省保健医療研究品質局(AHRQ)から心房細動のリズムコントロールとレートコントロールに関するレビューが出ています。

Treatment of Atrial Fibrillation
AHRQ Publication No. 13-EHC095-EF


アブストラクトだけ要約します。
http://effectivehealthcare.ahrq.gov/ehc/products/358/1521/Atrial-fibrillation-prepublication-draft.pdf

【目的】心房細動管理の1つの戦略—レートコントロールとリズムコントロールについてはさまざまなアプローチ法がありその安全性、有効性は、未だに不明

【方法】PubMed®, Embase®, and the Cochrane Databaseをリソースとするシステマティックレビュー。ランダム効果モデル採用

【結果】
1)182論文レビュ−:
・レートコントロール:14研究。
・レートコントロールを厳格か緩徐か:3研究。
・初回リズムコントロール不良患者へのレートコントロールvsリズムコントロール:6研究。
・抗不整脈薬+電気的除細動:42研究
・リズムコントロール:83研究
・レートコントロール、リズムコントロール比較:14研究

2)レートコントロールのキークエスチョンを引き出す論文は限定的:カルシウム拮抗薬(ベラパミル、ジルチアゼム)がジゴキシンより有効との強いエビデンスあり

3)電気的除細動:二相性波形のほうが単相波形より効果的(オッズ比4.39)
  200J二相性のほうが360J単相性より効果が低い(オッズ比0.16)

4)抗不整脈薬下の電気的除細動のほうが、無投薬下より効果的(中度エビデンス強度)。ただどの抗不整脈薬型よりよいかは結論なし

5)肺静脈隔離術の抗不整脈薬に対する優位性は選ばれたサブセットの患者(若年で器質的心疾患のない発作性心房細動)において高エビデンス強度(オッズ比6.51)

6)他の心臓手術に追加したMaze手術の僧帽弁膜症のみの手術に対する優位性は中エビデンス強度(オッズ比5.80)

7)レートコントロールvs.リズムコントロール:いずれも中エビデンス強度
全死亡(OR 1.34; 95% CI, 0.89 to 2.02)
心血管死(OR 0.96; 95% CI, 0.77 to 1.20)
脳卒中(OR 0.99; 95% CI, 0.76 to 1.30)
出血イベント(OR 1.10; 95% CI, 0.87 to 1.38)
心血管疾患による入院のみ高強度でレートコントロールがよい(OR 0.25; 95% CI, 0.14 to 0.43)

8)サブ解析が少ないため、患者特性による効果の違いを結論付けることはできなかった

【結論】今回のレビューでは、以前のレビュー同様、両戦略間でわずかのアウトカムの差しか示すことはできなかった。特定の特性の患者におけるアウトカムに対も依然として不確実だった。特に死亡率、脳卒中、心血管入院については特に追加研究が必要

### 6つのキークエスチョンが設定されています
KQ1. レートコントロールの安全性、有効性は何か?
KQ2. 厳格なレートコントロールか緩徐レートコントロールか?
KQ3. 非薬物療法の安全性、有効性は何か?
KQ4. 抗不整脈薬+電気的除細動の安全性、有効性は何か?
KQ5. 非薬物療法と薬物療法、それぞれ単独と併用の安全性、有効性は何か?
KQ6. レートコントロールかリズムコントロールか?

それぞれにレビューされた研究のエビデンス強度が記されていますが、高強度の項目は大変少ないです。限定された患者での肺静脈隔離術はレベルが高いです。それ以外のレートvs.リズムのエビデンスなどは”low”や”insufficient”が多いのが目立ちます。

まだまだこの分野若っていないことが多いようです。かなり分量が多いので、今後少しずつ読んでいくことにします。
by dobashinaika | 2013-06-19 13:36 | 心房細動:ダウンストリーム治療 | Comments(0)

心電図QTc時間が長くても短くても心房細動になりやすい:コペンハーゲンECG研究

JACC  6月25日号より

J-Shaped Association Between QTc Interval Duration and the Risk of Atrial Fibrillation
Results From the Copenhagen ECG Study
J Am Coll Cardiol. 2013;61(25):2557-2564


【疑問】QT時間と心房細動の発症には関係があるのか?

P:コペンハーゲン一般医に通院する患者281277人(コペンハーゲンの人口の1/3).2001年〜2010年まで心電図をフォローできた人

E/C:心電図のQTc、パーセンタイル別

O:心房細動罹患率

【結果】
1)心房細動発症:10,766例(5.7年)。1467例14%は孤立性

2)第1パーセンタイル以下のQTc(372msec以下)群は対照群(411~419msec)に比べて発症率が高い:ハザード比1.45(1.14〜1.84;p=0.002)

3)対照群以上のQTcを示す例では発症率はQTc間隔に依存して増大

4)第99パーセンタイル(464msec以上)群は対照群に比べて発症率が高い;ハザード比1.44(1.24〜1.66;p<0.001)

5)QTc延長と発症率の相関は、孤立性心房細動のほうが強い:ハザード比2.32
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【結論】
QTc間隔と心房細動発症率はJ型の関係あり。その関係は孤立性ほど強い

### なぜでしょうか?筆者らは心室筋と心房筋の活動電位持続時間は同じような振る舞いを見せる可能性がある、つまりQTcが伸びているということは心室筋細胞の活動電位持続時間が延長しており、同様に心房筋細胞のそれも延長している。よって、心房筋でも“atrial torsades de pointes”と呼べるような不規則なりエントリーが起きやすくなっている、としています。

また活動電位持続時間の極端な短縮は、心房筋の不応期が短くなり非常に早いタイミングで出る期外収縮が伝導しやすくなり、これまた心房細動が起きやすくなるということになります。

後ろ向きコホートですので、心房細動の診断、QTcの測定法などのばらつきはありえます。また様々な交絡因子、体格、血圧、喫煙その他未知の因子はたとえ多変量解析しても、定義し得ない交絡因子は否定出来ないと思われます。QTc延長例は、様々な危険因子、例えば電解質異常、器質的心疾患なども持っていると思われます。

臨床的にQTc短縮例は大変少ないですので、QTcが延長している症例では心房細動発症にも、まあ留意するというメッセージとして捉えます。
by dobashinaika | 2013-06-18 22:21 | 心房細動:リアルワールドデータ | Comments(0)

ワーファリンの中和法;新鮮凍結血漿とプロトロンビン複合体製剤の比較

Circulation 6月14日付オンライン版より

Outcomes of Urgent Warfarin Reversal Using Fresh Frozen Plasma versus Prothrombin Complex Concentrate in the Emergency Department
doi: 10.1161/CIRCULATIONAHA.113.001875


【疑問】ワーファリンによる出血中和後の有害事象は新鮮凍結血漿とプロトロンビン複合体製剤(Octaplex)とで差があるか?

P:ワーファリン内服下でINR1.5以上、出血で惨事救急の現場で中和薬が必要な患者

E: 新鮮凍結血漿(FFP)149例、2006年〜2008年

C: Octaplex165例、2008年〜2010年

O:一次アウトカム:死亡、虚血性脳卒中、心筋梗塞、心不全、静脈血栓症、末梢動脈血栓(7日以内)
二次アウトカム:1INR回復までの時間、入院期間、48時間以内の輸血

【結果】
1)一次アウトカム
FFP 19.5% vs. Octaplex 9.7% (RR2.0,p=0.014)

2)ベースラインの既往歴や治療理由で補正しても同じ
RR 1.85, p=0.038)

3)平均INR回復時間
FFP 11.8時間 vs. Octaplex 5.7時間 (p<0.0001)

4)平均輸血回数
FFP 3.2 vs. Octaplex 1.4 (RR2.0, p<0.0001)

【結論】ワーファリンの緊急中和時Ocraplexは、FFPよりはリバースがかかり、輸血回数も少ない

### ワーファリンの中和法の有害事象に関する比較検討(後ろ向きコホート)です。
ワーファリンの中和にPPCが良いことは、これまでもいくつかのブログで取り上げています。最近はFDAでも承認されています。FFPだと大量投与も必要ですし、副作用も少ないとなれば、日本でも保険償還が期待されますね。

FDA承認 http://dobashin.exblog.jp/17743835/
症例検討 http://dobashin.exblog.jp/15551502/
頭蓋内出血への効果 http://dobashin.exblog.jp/15252148/
観察研究 http://dobashin.exblog.jp/14685072/
by dobashinaika | 2013-06-17 18:27 | 抗凝固療法:中和方法 | Comments(0)


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