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「ER・ICUで必要な循環器薬の知識と使い方」(香坂俊先生特別編集)

ゴールデンウィークなので、ちょっと論文読みは中休みにして、本のご紹介。

今をときめく香坂俊先生特別編集による循環器薬の知識と使い方に関するもの。日米で活躍している主に若手の医師が執筆しています。
http://www.sogo-igaku.co.jp/eshopdo/refer/vid522.html
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この本は素晴らしいです。まず一つ一つの問の立て方がいい。循環器をやっている医者ならずとも、これが知りたいというツボにグリグリと入ってくる感じです。「エビデンスはないけれども, ピルシカイニドはいろいろとよく使われる」「虚血性心疾患急性期でβ遮断薬を導入したくないワケ(そして, なぜCa拮抗薬は好まれるのか?)」「結局, 血圧を下げるときの第一選択薬は, 血管拡張薬なのか? Ca拮抗薬なのか?」などなど。すぐにでも読んでみたくなる問ばかりです。

で、実は、私も新規抗凝固薬のところをちょろっと書いております(若手ではありませんが)。ということで一部宣伝ですみません(笑)。

私の担当箇所は拙いもので、ご批判をいただければと思うのですが、その他の章は、ポイント、チェックといった読みやすくまた、センスの良いクリニカルパールが織り込まれていて、非常に読み応えがあります。

第1稿を書き上げたあとで、普通は筆者校正になるのですが、編集者の香坂先生からの直接のアドバイスが入っており、これが非常に鋭い指摘なのです。その意味では香坂先生のセンスが全編に行き届いた本といえるかもしれません。「長い前書き」を読めばそのコンセプトが良く分かります。

ご興味ある方は、ぜひご一読下さい。今回は私もかなりがんばって書いたつもりですので、、、
by dobashinaika | 2013-04-30 19:03 | 抗凝固療法:全般 | Comments(0)

鷲田清一先生トークイベント「フォロワーシップの時代」を聴く

今日は、元大阪大学学長で、せんだいメディアテーク新館長の鷲田清一先生によるトークイベントを聞いてきました。タイトルは「フォロワーシップの時代」

2011年5月6日、震災から50日後に同じ場所で、鷲田先生の「歩き出すために」と題したトークイベントを聞いておりましたが、今回はそのときの内容をよりリニューアルしたものです(あのときも震災直後だけに、深く静かに感動したものです)。

・ 「代わり」という言葉は、「お前の代わりはいくらでもいる」とも使えるし、「代わりにやってくれよ」とも使われる。
・ 「自立」=independenceの意味に使われるが、本当は”interdependence”、つまり助け合いのネットワークをいざとなったときに動かせるように準備することである。

・ 明治政府以後、「いのちの相互ケア」つまり、医療、介護、出産、子育て、看取り、防災、防犯、もめ事処理と言ったことは、プロフェッショナルに任せるように、プロの養成と認定が行われた。
・ その結果、そうしたことの質は格段に上がったが、一方で市民の「いのちの相互ケアに関する無能力化がすすんだ。
・ われわれは、ちょっとした病気でもお互いに助け合うことができない。
・ その結果、プロのケアが劣化したときに「クレームをつけることしかできない」文化が醸成された。

・ もうひとつは行政サービスの劣化時に、問題を提起し、指摘し、場合によっては対応を肩代わりするような「市民力」が低下した。
・ 今の時代はプロが解決できない問題に取り囲まれている。たとえば低線量被曝問題、環境問題、社会予測など。プロだからこそ、全体を見渡すことができない
・ では誰がするのか→市民がそのプラットホームになるべき。

・ そのための資質が「フォロワーシップである」
・ リーダー論が流行るとお任せごころが出てしまう.
・ リーダー論の本を読んでその通りにやる人が一番リーダーに似合わない

・リーダーがいいことをするかどうか、これを見渡しチェックする力をフォロワーが持っていることが重要。そういうことのできる人が多いコミュニティーほど強い
・ 「しんがりの思想」である。登山で一番強いのはしんがり、これがフォロワーである。2番目に強い人が先頭に立つリーダー、最弱者はリーダーのすぐ後ろ2番手である
・ 締めの言葉として、梅棹忠夫さんのインタービュー集の最後の言葉「乞われれば、一差し舞えるひとになれ」

### 次から次へと繰り出される「クリニカルパール」(とあえて呼ばせていただきます)に、目のくらむ思いでした.と同時に、2年経っても、まだそんなフォロワーシップなんて全然ないですよ、と言う悄然たる思いもいたします。

「フォロワーシップ」の概念は、いわゆる「共助」とも違う、「全体を見渡す力」「チェックする力」として提示されていました.これは職業政治家にはできない,他の本業のある市民だからこそできると説かれました。

これは大変なことです.「自分の頭で考える」「建設的な議論をする」「合理的なシステムを作る」。。。。。こうしたことが必要となりそうです.日本に不足していることのオンパレード。どうすればよいかも自分で考えねばなりません.

医療者としては、今日のトークはやはり、プライマリケアに引き寄せて考えたいところです.「全体を見渡す力」「しんがり力」。これ、プライマリケアのプリンシプルそのものです.プライマリケア医はプライマリであり、「しんがり」なんですね。患者さんを全体から見渡すことは、最初から最後(最期という意味も含めて)まで必要です。なるほとわれわれプライマリケア医こそフォロワーシップが必要とされるのである、というのが、きょうのテイクホームメッセージ。
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by dobashinaika | 2013-04-30 00:17 | 3.11 | Comments(0)

心房細動患者では肥満の人に脳卒中率や死亡率が高い

The American Journal of Medicine 4月18日付オンライン版より

Body Mass Index and Adverse Events in Patients with Incident Atrial FibrillationCirculation Journal
Vol. 77 (2013) No. 4 908-916

【疑問】心房細動患者において肥満の測定値(BMI)と脳卒中や死亡とはどんな関係があるのか?

P:デンマークのThe prospective Danish Diet, Cancer and Health study二登録された57,053人(50−64歳)のうち、追跡期間中に心房作動を発症した3,135人:追跡期間4.9年

E:太り気味(BMI25−30)1414人(45%)、肥満(BMI30以上)
762人(24%)

C:正常体重

O:血栓塞栓症+死亡

T:コホート

【結果】
1)死亡609人、血栓塞栓症216人(98%は虚血性脳卒中)

2)血栓塞栓症+死亡(対正常群ハザード比):太り気味群1.31、肥満群1.5

3)CHADS2スコアまたはCHA2DS2-VAScスコア補正後血栓塞栓症+死亡(対正常群ハザード比):太り気味群1.21(CHADS2)または1.31(CHA2DS2-VASc)、肥満群1.25または1.36

4)肥満男性と正常体重女性は性別に特化した「高リスク」カテゴリーとして層別化された

【結論】太り気味、CHADS2スコア、CHA2DS2-VAScスコア補正後でも肥満は心房細動患者において「虚血性脳卒中、血栓塞栓症、死亡」のリスク因子。この関係は性別による修飾される

### 以前のデンマークの論文では「若い女性」における肥満と心房細動発症が問題となっていました.
http://dobashin.exblog.jp/17102449/

今回のアウトカムは心房細動発症率でなく、より突っ込んで血栓塞栓症あるいは予後そのものが設定しています。

CHA2DS2-VAScスコアなどの、心房細動発症に関係の深い因子で補正していますので、ある程度信頼はおけるデータと思います.

肥満は、非肥満に比べて一般の人でも予後が悪いと思われます.心房細動であればなおさらに注意が必要ということかと思われます.

CHADS2スコアに加わるまでにはインパクトはないのでしょうか?
ObesityのOをとってD-CHAOS2スコア=カオススコアとか…ますます混沌とするのでやめた方がいいかも.

それにしても全コホートのうち約70%がBMI25以上ですね、これもなかなかです、、、

肥満が心房細動を起こしやすいメカニズムについてはこちら
http://dobashin.exblog.jp/15785257/
by dobashinaika | 2013-04-27 19:57 | 心房細動:リアルワールドデータ | Comments(0)

ジゴキシンが心房細動患者の予後を悪化させるというエビデンスは乏しい;AFFIRM試験サブ解析

European Heart Journal 4月16日付けオンライン版より

Lack of evidence of increased mortality among patients with atrial fibrillation taking digoxin: findings from post hoc propensity-matched analysis of the AFFIRM trial
doi: 10.1093/eurheartj/eht120


【疑問】AFFIRM試験においてジゴキシンは心房細動患者の死亡率を増加させるか?

P:AFFIRM試験参加者

E:登録時のジゴキシン服用者のうち、対照群と59のベースライン属性によるpropensityスコアをマッチできた878人

C:同様にスコアマッチした非ジゴキシン服用者878人

O:死亡率

【結果】
1)両群あわせて年齢平均70歳。女性40%、3.4年フォロー

2)死亡率:ジゴキシン群14%vs. 非ジゴキシン群13%:ハザード比1.06 (0.83−1.37), P=0.640

3)入院率;両群で有意差なし:ハザード比0.96

4)非致死性不整脈:有意差なし:ハザード比0.90

【結論】ベースラインの初期治療時ジゴキシン服用者において、死亡率あるいは入院率が増加するエビデンスは見いだせなかった。

### 昨年11月の同じEuropean Heart Journalに発表されたAFFIRM試験サブ解析とは、真逆の内容です。
http://dobashin.exblog.jp/16894537/


アブストラクトだけ読んでしまうと論文というものが信じられなくなります。この違いを解く鍵は、統計解析の方法によります。

くわしくはEditorialをご覧いただきたいのですが、大まかに言うと、以前紹介したWhitbeckらの論文では、試験当初ジゴキシンを処方された患者さんが途中でジゴキシンを中断してしまった場合、非ジゴキシン群として扱うように決められていました。たとえば最初の9ヶ月ジゴキシンを服用していて、その後服用を中止し、死ぬまでの残り9ヶ月ジゴキシンを飲まなかった場合は、はじめの9ヶ月はジゴキシン群として生存として扱い、次の9ヶ月は非ジゴキシン群として生存として扱い、18ヶ月の時点では死亡として扱うというものです。
一方、今回の論文ではジゴキシン服用者の予後はあくまでベースライン登録時で決め、はじめの6ヶ月ジゴキシン服用し、その後中断した患者や、割り付け時にジゴキシンの情報がなかったものは除外されています。
http://eurheartj.oxfordjournals.org/content/early/2013/04/10/eurheartj.eht087.extract
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このように両論文では、ジゴキシン服用者の定義が異なることになります。一見以前紹介したWhitbeckらの方が、より詳細なモデルを使用しているように見えますが、欠点もあります。この分析法だと当初からのジゴキシン非服用者が、途中から心不全を起こし、その治療としてジゴキシンを開始した場合、もしその患者が亡くなった場合はジゴキシンが死亡に寄与したとみなされてしまいます。

どちらも一長一短ですね。Editorialではそもそもpropensityスコアマッチによる、非ランダム化の後付け解析であり、所詮無作為化試験を越えることはできないとしています。

 この2論文はEBMerが後付け解析はあくまで後付け解析、鵜呑みにするな、ということを説くのに、非常に適したサンプルとなるかもしれません。

で、ジゴキシン、どうしましょう?(私は心機能正常例ではほとんど使っていませんが)
by dobashinaika | 2013-04-25 23:54 | 心房細動:ダウンストリーム治療 | Comments(0)

65歳以上の人に一度脈をとるか心電図をとるだけで新たに1.4%で心房細動が見つかる

Thromb Haemost 4月18日付けオンライン版より

Screening to identify unknown atrial fibrillation A systematic review
doi:10.1160/TH13-02-0165


【疑問】一般外来でのスクリーニングにより心房細動はどの程度診断されるのか?

【方法】
・ MEDLINEなどのデータベースから一般外来の患者において、一機会だけの脈拍触知または心電図により心房細動のスクリーニングを行い、有病率や罹患率を報告してある研究を検索
・ 主要アウトカム:心房細動有病率、罹患率(以前診断されていなかった例)
・ 二次性アウトカム:脳卒中リスクスコアとその妥当性

【結果】
1)30研究を同定。対象122,571人(平均64歳、男54%)

2)総合医外来:12研究。住民健診:18研究

3)有病率:2.3%(2.2−2.4)、65歳位以上では4.4%(4.3−4.5)

4)罹患率:1.0%(0.89−1.04%)、65歳以上では1.4% (1.2-1.6)

5)以前診断されていなかった例のうち67%は高リスク脳卒中例

6)以前診断されていなかった例で65歳以上の対象の1.4%がスクリーニング可能であった

7)これらの例の多くは抗凝固薬に適応のある症例

【結論】高齢者における心房細動スクリーニングは心房細動に起因する全般的な健康負担を軽減する可能性あり

### この研究の一番のインパクトは、健診や一般の外来で65歳以上の人において、一回だけ脈を取るか心電図を取るかだけで1.4%に心房細動が新たに見つかるというデータです。しかもこうして見つかった心房細動の67%が高リスクであると。

ESCのガイドライン限定アップグレード版の最初に出てくる推奨を裏付けるデータです。

結構できないですよ.毎回脈をとるというのは。やっていない開業医の先生多いと思いますよ.特に若い世代。臨床医皆に読んでもらいたい論文です.
by dobashinaika | 2013-04-24 23:02 | 心房細動:診断 | Comments(0)

睡眠中発症の脳梗塞例で新たな心房細動が見つかる確率が高い

Neurology 4月17日付けオンライン版より

Newly diagnosed atrial fibrillation linked to wake-up stroke and TIA
doi: 10.1212/WNL.0b013e318292a330


【疑問】睡眠中に発症する”wake-up stroke and TIA”は心房細動の新規診断に関与しているか?

【方法】
・ 対象:チリの1医療施設に2008年〜2011年に入院した急性脳卒中およびTIA患者連続356人
・ 新たに診断された心房細動と、wake-up stroke and TIAの関係を解析

【結果】
1)脳卒中77%、TIA23%

2)夜間睡眠中発症:41例11.5%

3)発症前、心房細動が診断されていなかった272人中27人(9.9%) で新たに心房細動が発見された

4)新たに診断された心房細動とwake-up stroke and TIAは相関あり(オッズ比 3.6, 95% CI 1.2–7.7, p = 0.019).

【結論】新たな心房細動が診断されるオッズは、waku-up 脳梗塞が非wake-up脳梗塞の3倍。更なる検討必要

### 寝ているときに起こる心房細動→寝ているときだから自覚されない→寝ているときに起こる脳梗塞には寝ているときに起こる“隠れ”心房細動が多い。というロジックかと思います.

ただ、脳塞栓は発作性心房細動が停止して心房のスタンニングが解除され心房が元気になってきてから起こるようなイメージなので、寝ているときに起きた心房細動が、そのまま寝ているときの脳塞栓につながるかどうか、時間的なタイムラグがどのくらいなのか、不明であり知りたいところです。

寝ているときに心房細動→寝ている間に脳梗塞。。。。何とも怖い図式です.CHADS2スコア1点以上になったら、しょっちゅうホルター心電図をするしかありませんかね。。。
by dobashinaika | 2013-04-23 23:05 | 心房細動:診断 | Comments(0)

アピキサバンは、心房細動のタイプによらずワルファリンより優れる:ARISTOTLEサブ解析より

European Heart Journal 4月17日オンライン版より

Outcomes of apixaban vs. warfarin by type and duration of atrial fibrillation: results from the ARISTOTLE trial
Eur Heart J (2013) doi: 10.1093/eurheartj/eht135


【疑問】アピキサバンの効果は心房細動のタイプによって違うのか?

P:Aristotle試験登録患者18,201人(発作性心房細動15.3%、持続性または永続性心房細動84.7%)

E: アピキサバン群

C: ワルファリン群

O:主要エンドポイント=脳卒中/全身性塞栓、二次エンドポイント=死亡
アピキサバン群とリバーロキサバン群で心房細動タイプ別に交互作用があるか否かを比較

【結果】
1)アピキサバン群とワルファリン群の交互作用:一時エンドポイント、二次エンドポイント、大出血イベントいずれも交互作用なし(心房細動全タイプで)

2)アピキサバン群はいずれのエンドポイントにおいてもワルファリン群より優位。試験エントリー期間は除く(P for all interactions >0.13)。

3)脳卒中/全身性塞栓:持続性または永続性>発作性1.52 vs. 0.98%; P = 0.003, 補正後 P = 0.015)

4)全死亡:持続性または永続性の方が高率の傾向(3.90 vs. 2.81%; P = 0.0002, adjusted P = 0.066). 

【結論】脳卒中、死亡、大出血の各リスクは心房細動のタイプによらず、アピキサバン群がワルファリン群に比べ低下させる。脳卒中/全身性塞栓は発作性の方が、持続性または永続性に比べて低率だったが、アピキサバンは、心房細動のタイプに関わらずワルファリンの魅力的な代替薬である.

### 心房細動のタイプ別サブ解析というのは、RE-LYやROCKET-AFにはなかったかもしれません.ACTIVE-W試験などでは発作性と永続性の予後は変わりないとの結果が出ていますが、この試験ではやはり持続性.永続性の方が死亡率や脳卒中が多かったとのことです.扱う対象の違いかと思われます.発作性の中には、それこそ年数回しか発作がないものも含まれている可能性がありますし、そういう症例が多いほど心房リモデリングは、全体として永続性よりは進んでいないことも考えられます。

いずれにしてもアピキサバンはワルファリンよりもよかったということが言いたいためのサブ解析ですね.
by dobashinaika | 2013-04-22 23:38 | 抗凝固療法:アピキサバン | Comments(0)

心房細動に対するクライオ(冷却)バルーンアブレーションの成績

JACC 4月16 号より

Cryoballoon Ablation of Pulmonary Veins for Paroxysmal Atrial Fibrillation
First Results of the North American Arctic Front (STOP AF) Pivotal Trial
J Am Coll Cardiol. 2013;61(16):1713-1723.


【疑問】クライオバルーンアブレーションの臨床成績はどうか?

P:発作性症候性心房細動。1剤以上の抗不整脈薬で抑制不能

E:クライオバルーンアブレーション(163例)

C:抗不整脈薬(82人)

O:心房細動の抑制(12ヶ月追跡)

T:2:1無作為割付

【結果】
1)対象者は、症状が強く(発作性78%、短期持続性22%)、1剤以上抗不整脈失敗の既往あり

2)肺静脈隔離成功:3つの肺静脈98.2%、4つ全て97.6%

3)バルーンカテーテルだけでの隔離成功:83%

4)12ヶ月間心房細動なし:クライオ群69.9%vs. 薬群7.3% (P<0.001)

5)薬群の79%の患者が12ヶ月の間にクライオバルーン群にシフト

6)全体として228例中7例(3.1%)で12ヶ月後肺静脈領域の75%超のリダクションに成功

7)横隔神経麻痺:29人11.2%(X線で確認)。25人はその後改善

8)クライオ群で明らかな症状の改善あり

【結論】クライオバルーンアブレーションは、抗不整脈薬抵抗性(1剤以上)症候性発作性心房細動治療において、抗不整脈薬に取って代わる安全で効果的な治療法。そのリスクは受容可能な範囲。

### クライオバルーンアブレーションの総説は以前のブログを参照下さい。
http://dobashin.exblog.jp/13588409/

−50度くらいの冷却で、平均12.5回くらいクライオをかけるとのことです。平均手技時間は214.4分。

日本ではまだ知見も行われていないと思いますが、アメリカの成績は、良さそうですね。横隔神経麻痺が気になりますが、

1年成功率が70%なので、普通のアブレーションと変わりないようです。

試験デザインの限界として、途中でクライオに鞍替えした例が多数あって、ITT解析が難しくなってしまっています。
by dobashinaika | 2013-04-19 17:55 | 心房細動:アブレーション | Comments(0)

心機能低下例心房細動発作にはランジオロールがジゴキシンより優れる:J-Land Study

Circulation Journal 4月号より

Urgent Management of Rapid Heart Rate in Patients With Atrial Fibrillation/Flutter and Left Ventricular Dysfunction 
– Comparison of the Ultra-Short-Acting β1-Selective Blocker Landiolol With Digoxin (J-Land Study) –
Circulation Journal
Vol. 77 (2013) No. 4 908-916


【疑問】左室機能低下例の心房細動/粗動に対する急速な心拍数コントロールに関して、ランジオロールはジゴキシンに比べて優れているか?

P:心房細動/粗動発作時心拍数120/分以上で、LVEF25-50%の患者200人

E:ランジオロール:93人:投与量1−10μg · kg–1 · min–1

C:ジゴキシン:107人

O:心拍数管理成功=投与2時間後、心拍数20%以上減少かつ心拍数110未満

【結果】
1)投与前心拍数:ランジオロール群138.2±15.7、ジゴキシン群138.0±15.0

2)心拍管理成功例:ランジオロール群48%、ジゴキシン群13.9% (P<0.0001)

3)重症副作用は両群とも2〜3例

【結論】ランジオロールは左室機能低下、心房細動/粗動例の心拍数管理においてジゴキシンより優れている。臨床現場でのオプションとして考えるべき。

### 3月の日本循環器学会でのLate breaking clinical trialで発表されたJ-Land Studyです。

ランジオロールはオノアクトとしてすでによく使われていますが、開心術後心房細動患者に対するジルチアゼムとのオープンラベル試験では優位性が示されています。
http://dobashin.exblog.jp/15232450/

これまで「手術時の頻脈性不整脈に対する緊急処置:心房細動、心房粗動、洞性頻脈」「手術後の循環動態監視下における頻脈性不整脈に対する緊急処置:心房細動、心房粗動、洞性頻脈」に対して保険適応がありました。

ことしの2月に、おそらくこの試験の結果を受けてのことかと思われますが、心機能低下例における頻脈性不整脈(心房細動・粗動)」に対する承認申請が、製薬会社(小野薬品)からなされたようです。

私は殆ど使ったことがない薬ですが、保険適応となれば、かなり使われることになるのでしょう。実際使用経験がある人の声を聞いてみたいところです。

知らない薬、使ったことのない薬、新薬、、、そういったものを自分も使うかどうかの判断基準というのは、結局エビデンスより何より、やはり実際使用経験のある人の声、しかも自分が信頼している人の声というのが、第一優先基準です。リスクコミュニケーションと同じですね。まず情報の発信者を信頼出来るか否か。そこにかかります。ちょっと脱線。
by dobashinaika | 2013-04-17 20:14 | 心房細動:ダウンストリーム治療 | Comments(0)

CHADS2スコアなどに腎機能を追加しても脳卒中の予測能は上がらない:Thromb Haemost誌より

Thrombosis and Haemostasis 3月21日付けオンライン版より

Does chronic kidney disease improve the predictive value of the CHADS2 and CHA2DS2-VASc stroke stratification risk scores for atrial fibrillation?
http://dx.doi.org/10.1160/TH13-01-0054


【疑問】CKD(慢性腎臓病)はCHADS2スコア、CHA2DS-VAScスコアの予後予測を改善するか?

P:スペインのMurcia大学病院外来通院中の発作性または持続性心房細動患者でacenocoumarol(ビタミンK拮抗薬)服用者連続976人:中央値76歳、男49%;875日間追跡

E/C:既存のスコアに腎機能(クレアチニンクリアランス)低下を加味したスコア

O:脳卒中/TIA、末梢塞栓、血管疾患(急性冠症候群、急性心不全、心臓死)、全死亡

【結果】
1)心血管イベント:113人、4.82%/年
     脳卒中39,急性冠症候群43,急性心不全32
2)全死亡102人、4.35%/年
    血栓イベント31
3)CKDの概念はCHADS2スコア、CHA2DS2-VAScスコアを使った脳卒中/全身性塞栓、血栓イベント,全死亡の予測(C統計量、統合識別改善度(IDI))を改善できなかった

【結論】CKDは血栓塞栓症や全死亡率の点で予後悪化に関係しているので、心房細動患者の腎機能評価は大切。CKDをCHADS2スコアやCHA2DS2-VAScスコアに追加しても予後予測の向上は認められない。

### 昨年Circulationのオンライン版で、ROCKET AF試験のサブ解析とは正反対の結果です。
http://dobashin.exblog.jp/16953875/

Circulationでは”R2CHADS2スコア”なる新たなスコアリングが提唱され、目を引きました。

本論文は1施設だけの検討でnの少なく、ROCKET AFのサブ解析よりエビデンスレベルは落ちるかもしれません。またROCKET AFは比較的リスクの高い集団ですが、本研究は外来患者だけであり、背景は軽症かもしれません.腎機能のカットオフ値もわかりません。

ただし、元々のCKDの病期分類はアウトカムが心血管死亡と末期腎不全であり,血栓塞栓症ではありません。またCHADS2スコアやCHA2DS2-VAScスコアの各因子、高血圧、糖尿病、年齢その他は、腎機能と大分交絡しており、とくにCHA2DS2-VAScスコアに新たに追加したところで、予測能は余り上がらないのは,理解できるかもしれません。

私自身は、特にCHADS2スコアは、プライマリケア医にとても親切なスコアだと思っています。なぜならすべて問診と身体診察でスコアが算定できるからです。その点ではCHA2DS2-VAScスコアもそうです。新患の心房細動の方がいらしても、瞬時にスコア何点ということができます(糖尿病は既往ない場合は苦しいですが)。

ところがeGFRを追加するとなると採血しなければなりませんし面倒な計算も必要です。開業医だとすぐに結果が出ないので、抗凝固薬は2回目受診までお預けとなります。またなにより新規抗凝固薬ではクレアチニンクリアランス測定が推奨されているのに、eGFRも考えるとなると混乱します。

本当に抗凝固療法をプライマリケアの隅々まで行き渡らせようとするなら、CHADS2スコアで十分じゃないかと思うのですが..だってそれすらまだまだ普及しているとは言いがたい現状だと思うのです。非循環器専門医の間では。
by dobashinaika | 2013-04-16 23:13 | 抗凝固療法:適応、スコア評価 | Comments(0)


土橋内科医院の院長ブログです。心房細動やプライマリ・ケアに関連する医学論文の紹介もしくは知識整理を主な目的とします。時々日頃思うこともつぶやきます。


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プライマリ・ケア医のための心房細動入門

編集

治療 2015年 04 月号 [雑誌]

最近読んだ本

感情で釣られる人々 なぜ理性は負け続けるのか (集英社新書)


幸福はなぜ哲学の問題になるのか (homo viator)


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