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心房細動は脳容積低値と関連あり:アイスランドの横断研究より

Stroke 2月26日付オンライン版より

Atrial Fibrillation is Associated With Reduced Brain Volume and Cognitive Function Independent of Cerebral Infarcts
doi: 10.1161/ STROKEAHA.12.679381


【疑問】心房細動と脳容積や認知機能とは関係があるのか?

【方法】
・アイスランドの住民コホート対象のAge, Gene/Environment Susceptibility-Reykjavik Studyからの横断研究
・非認知症の人4251人。平均76歳。
・心房細動例330人vs. 非心房細動
・MRIにより頭蓋内容積で補正した脳容積を測定
・脳梗塞の有無を評価
・一連の認知機能評価施行

【結果】
1)脳容積;心房細動群<非心房細動群 (P<0.001)

2)この相関は持続性/永続性心房細動のほうが発作性よりも良好

3)初診から時間が経過した例ほどし相関が高い

4)灰白質の容積とは相関があるが、白質との相関はない

5)心房細動群は認知症スコアが低い

【結論】
1)心房細動は脳容積低値と関連あり
2)心房細動持続時間と関連あり
3)心房細動は、脳梗塞とは独立に、認知機能にネガティブな影響を与える


### なんとも衝撃的でコワイようなデータです。これまでも心房細動が認知機能と関連あるという報告はありましたが、「脳容積」をつきつけられると、リアリティを感じてしまいます。

本文を見てませんが、チャンピオンデータのMRIはどんな感じなのでしょうか。

横断研究ですので、様々な交絡因子があることに注意です。

心房細動と認知症の関係についてはこちら
心房細動があると約40%認知症が増加するとのことです
http://dobashin.exblog.jp/16673624/

PS.「コワイ」というのは不適切かもしれません。「心房細動の人を診る」「心房細動も持つ人を診る」と同様に、「認知症の人」「認知症も持つ人」を診るようにしたいものです。 
by dobashinaika | 2013-02-28 18:49 | 心房細動:リアルワールドデータ | Comments(0)

胸腔鏡下左心耳切除術の効果と安全性:JACC誌より

JACC 2月20日付けオンライン版より

Thoracoscopic Stand-Alone Left Atrial Appendectomy for Thromboembolism Prevention in Nonvalvular Atrial Fibrillation
doi:10.1016/j.jacc.2013.01.017


【疑問】非弁膜症性心房細動に対する、胸腔鏡下左心耳摘除術塞栓予防効果と安全性は?

【方法】
・対象:血栓塞栓症の既往のある31例(平均年齢74歳)
・21例(平均75歳、CHA2DS-VASc4.5点)で緊急にワルファリンに変わる治療が必要
  ➢出血合併のため服用不適:13例
  ➢INR管理困難:7例
  ➢ワルファリン減量後のTIA:1例
・内視鏡的カッターで胸腔鏡下に左心耳切除
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【結果】

・手術時間平均32分。小開胸へのスイッチ:1例

・死亡例なし。重大合併症なし

・3ヶ月後、3D-CTで左心耳完全切除を確認

・追跡1〜38ヶ月(平均16ヶ月)

・1例死亡(乳がん)

・抗凝固薬中止にもかかわらず、血栓塞栓の再発なし

【結論】胸腔鏡下のスタンドアローン左心耳切除術は、安全であり、外科医にとって簡潔で完全な左心耳手術が可能となる。さらなる研究必要。

### 東京の都立多摩医療センターからの報告です。Stand-aloneとは、他の手術のついでにするのではなく、左心耳手術それ自体を目的とした手術という意味だと思います。

手術時間30分、合併症なし、抗凝固療法から開放される、となればWatchmanなどのカテーテルデバイスより、こっちのほうがいいなあとも思います。
もちろん全身麻酔ですし制約は多々あると思いますが。

でも、年間1%の脳出血リスク(NOACはもっと低いが)を背負い、納豆を食べず(ワルファリンの場合)、腎機能低下を気にして(NOACの場合)、それでも脳塞栓になるリスクは消えない、抗凝固療法より、いっその事スパっと切ってしまったほうがいろんな面から良いのでは、と思わせる論文です。特にスコア高点数のには。これからランダマイズ試験をしてほしいものです(日本では無理か。。)。
by dobashinaika | 2013-02-27 19:08 | 心房細動:左心耳デバイス | Comments(3)

リバーロキサバンの中等度腎機能低下例における有効性と安全性:J-ROCKET AF試験サブ解析

Circulation Journal 3月号より

Safety and Efficacy of Adjusted Dose of Rivaroxaban in Japanese Patients With Non-Valvular Atrial Fibrillation
– Subanalysis of J-ROCKET AF for Patients With Moderate Renal Impairment –
Circulation Journal
Vol. 77 (2013) No. 3 632-638


【疑問】腎機能低下例においても、リバーロキサバンはワルファリンに比べて有効性と安全性は、腎機能正常例と同等か

P:J-ROCKET AF試験参加患者のうち中等度腎機能低下者(CrCl 30-49mi/min)=全症例の22.2%
 ・非弁膜症性心房細動
 ・20歳以上、登録前心房細動記録30日以内
 ・CHADS2スコア2点以上


E:リバーロキサバン10mg/日

C:ワルファリン

O:・主要安全性評価項目:重大な出血、重大ではないが臨床上問題となる出血
 ・主要効果評価項目:脳出血、非中枢神経系塞栓症)

【結果】
1)主要安全性評価項目:リバーロ27.76%/年vs. ワルファリン22.85%/年:ハザード比1.22

2)主要効果評価項目:リバーロ2.77%/年vs. ワルファリン3.34%/年:ハザード比0.82

3)各評価項目において、腎機能ごと(中等度低下vs.正常)の交互作用はなし
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【結論】リバーロキサバンのワルファリンに対する効果と安全性は中等度腎機能低下者において、正常腎機能低下者と同等である。

###当院ではダビガトランはCrCl40未満ではなるべく使用しないようにしています。その点、リバーロキサバンは、可能性があるかも知れません。

しかしながら、安全性評価項目の内訳を見ると大出血は、腎機能正常例ではリバーロ2.47%、ワルファリン3.04%に比べ、低下例では各5.09%、5.63%とリバーろ、ワルファリン両群ともに増加しているのです。
ワルファリン群でも出血が増えたので、比較したら有意差がなかったということです。決して腎機能低下例でも正常例と同様な感覚で使うことはできないことを学ぶべきだと思います。

この点はワルファリンを使う時も同じ事がいえます。今まで、ワルファリンを処方するときCrClなんて気にもしませんでしたが、これからは必ず計算しておきたいと思います。


J-ROCKET AF試験
http://dobashin.exblog.jp/15527484/

ROCKET AF試験での腎機能別サブ解析
http://dobashin.exblog.jp/13427434/

ARISTITLE試験での腎機能別サブ解析
http://dobashin.exblog.jp/16869630/
by dobashinaika | 2013-02-26 20:04 | 抗凝固療法:リバーロキサバン | Comments(0)

ダビガトランの除去には透析が有効

Thrombosis and Haemostasis 2月7日オンライン版より

Effective elimination of dabigatran by haemodialysis :A phase I single-centre study in patients with end-stage renal disease
doi:10.1160/TH12-08-0573


【疑問】ダビガトラン除去に透析は効果的か?

【方法】
・ 対象:心房細動のない末期腎不全透析施行患者7人
・ 第1日:ダビガトラン150mgx2、第2日110mgx2、第3日75mgx2投与
・ 第1、3、5日目に透析
・ 目標血流200(ピリオド1)または400ml/分(ピリオド2)で4時間透析。前後で血中濃度測

【結果】
1)第3日の血中濃度は両ピリオド間で同等

2)4時間透析による除去率はフロー200で48.8%、400で59.3%
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3)抗凝固活性は血中濃度に一致

4)再吸収率は16%未満と低い

【結論】
4時間の透析によりダビガトランはかなりの量が速やかに除去され、抗凝固活性は失われる。再吸収率は無視できる。透析は緊急時のダビガトラン除去に合理的な方法である。

### 透析可能かどうかは、生体内の蛋白結合率に依存し、これが低い方がフリーの薬剤が多いので透析されやすいと考えられます。
 ダビガトランの蛋白結合率は35%とされており、他のNOACより低いのが特徴とされています。リバーロキサバンは92~95%、アピキサバンは87%、アドキサバンは40~59%です。

 これらのことから、以前からダビガトランは透析されやすいとされていましたが、そのことを実証したペーパーです。腎機能の超低下例で、出血をきたした場合は、選択肢として考えられると思われます。大事な論文ですね。
by dobashinaika | 2013-02-23 22:27 | 抗凝固療法:ダビガトラン | Comments(0)

ワルファリン非適用患者へのアピキサバンはリスクスコアに関わらずアスピリンよりも優れる

Circ Arrhythm Electrophysiol 2月6日オンライン版より

Modification of Outcomes with Aspirin or Apixaban in Relation to CHADS2 and CHA2DS2-VASc Scores in Patients with Atrial Fibrillation: A Secondary Analysis of the AVERROES Study
doi: 10.1161/ CIRCEP.112.975847


【疑問】脳梗塞に対するアスピリンあるいはアピキサバンの効果はCHADS2スコア、CHA2DS2-VAScスコアに依存するのか?

【方法】AVERROES試験のサブ解析。スコアごとに有効性アウトカム(虚血性脳卒中)、安全性アウトカム(大出血)をアスピリンとアピキサバンで比較

【結果】
1)アピキサバンの有効性はCHADS2スコア/CHA2DS2-VAScスコアごとで明らかな異質性なし(スコアの大小による有効性の変化はない)

2)有効性はベースラインリスクによらず一定。絶対利益は高リスク群ほど高い

3)出血イベントにおけるアピキサバンとアスピリンの関係性もスコアの点数によらず一定

4)アスピリン群における脳卒中の有効な予測因子は75歳以上、脳卒中/TIAの既往、eGFR60未満、非発作性心房細動

5)各スコアの低リスク、中等リスク、高リスクの割合:CHADS2スコア:0.3%/71.7%/28.1% 。CHA2DS2-VAScスコア; <0.1%/10.5%/89.5%

【結論】心房細動において、アピキサバンは、アスピリンに比べ脳卒中予防、出血回避において、1つ以上のリスクを持つ場合は(いかなる場合でも)、優れている。

### AVERROES試験は、対象がビタミンK阻害薬非適用または拒否患者であることをまず押さえてください。従来そうした方にはアスピリンだった訳でですが、AVERROEDはそれよりアピキサバンがいいよという論文であり、しかもチャズやバスクによらないというのがこの論文の主旨です。
 日本では、もう早々とガイドラインからもアスピリンは姿を消していますが、欧米では(ヨーロッパは昨年改訂され排除されましたが)まだアスピリンの記載がガイドラインにあるため、こうした試験も(アスピリンはだめということを示す)価値があるわけです。
by dobashinaika | 2013-02-22 23:24 | 抗凝固療法:アピキサバン | Comments(0)

抗凝固療法は「温故知新」であり「温新知故」

今日は、めぼしい論文はたくさんあるにはあるのですが、最近抗凝固療法で思うことをちょっとだけ書きます。

それは、「新規抗凝固薬を使えば使うほど、ワルファリンのありがたみを実感するようになる」ということです。

このことをもっとも痛切に感じるのは,たとえばダビガトランが何らかの理由(消化管出血,APTT上昇、消化器症状など)で使用できなくなったときです。時々ブログで触れているように、このNOACからワルファリンの切り替えというのは本当に面倒です。どのくらいオーバーラップしていいかよくわからない、どのくらいの割合でPTINRを測るべきかもわからない。NOACの前にワルファリンを使用していた人なら、前の常用量をいきなり出してもよいのですが、そうでなくワルファリンナイーヴの人だと大変困ります。

またそうでなくても、NOAC登場を機にこれほど抗凝固療法の重要性が人口に膾炙されるようになってしまうと、NOACが元々使いづらい腎機能低下例や高齢者において、それまではアスピリンでお茶を濁していたような方にもワルファリンを出さざるを得ないケースが「発見」されるようになってきたと思います。実際の現場では、たとえばワルファリンの使用経験の少ない医師が、そのようなケースに不用意にNOACを投与し大出血をきたすような事例を見聞きします。

このようなケースに遭遇するにつけて、あらためて「ワルファリンを知らずして、NOACを使うなかれ」という感じを抱かざるを得ません。そう言う意味ではまさに「温故知新」ということができます。

実際には上記のようなたとえばダビガトランが使いにくい場合には、イグザレルトやエリキュースへの変更という選択肢も今後はあり得ると思います。新規抗凝固薬の選択肢の増加は、いきおいNOACそれぞれの特性やお互いの違いを知ることの必要性の増加をも促します。そう言う意味では「新故知新」かも知れません。

それでも最後には、やっぱりワリファリンでないとだめだと言うケースもかなりあることに我々は気づくでしょう。DESステントが入ってダブルあるいはトリプルテラピーが必要な場合など特にです。われわれは、まさに新しい薬をたずねることで、改めてワルファリンの良さを知ることになるのです。これ、まさに「温故知新」ならぬ「温新知故」と称して差し支えない状況なのだと思います。

温新知故、医学の世界でも多々あります。NSAIDを使ってみてわかるアセトアミノフェンのよさ、DPP4使ってわかるメトホルミン、ニューキノロン使ってわかるST合剤などなど。。

まあ一番言えることは、古い新しいではなく、良い悪い(または適か不適か)ということなんだと思いますねー。
お後がよろしいようで。
by dobashinaika | 2013-02-22 00:05 | 抗凝固療法:全般 | Comments(0)

ワルファリンによる大出血は年間2%程度:システマティックレビューより

Europace 2月13日付けオンライン版より

Major bleeding in patients with atrial fibrillation receiving vitamin K antagonists: a systematic review of randomized and observational studies
Europace (2013)doi: 10.1093/europace/eut001



【疑問】ビタミンK 阻害薬(VKA)服薬中の心房細動患者の大出血はどのくらいの頻度か?

【方法】
・ 1960~2012年までのVKA服用心房細動患者の大出血リスクを評価したRCTおよび観察研究を検索
・ 16RCT,31観察研究
・ 61,563人年(RCT)、484,241人年(観察研究)フォロー

【結果】
1)平均大出血頻度(RCT):2.1/100人年(0.9-3.4)

2)平均大出血頻度(観察研究):2.0/100人年(0.2-7.6)

3)このような出血に関するエビデンスや報告は管理パターンの変化とともに増えつつある

4)死亡率の比較は観察研究とRCTでは適切でない

【結論】平均大出血頻度はRCTと観察研究で同様。出血率に幅があることは、VKAによる標準ケアに大きなばらつきがあり、研究ごと、データ粗^ルゴトに方法論的な際があることを反映している。

### ワヅファリンの大出血に関するシステマティックレビューです。
最近の大試験でのワルファリンによる大出血率は以下の通りです。
RE-LY:3.57%(ダビガトラン150mg3.32%、110mg2.87%)
ROCKET-AF:3.4%(リバーロキサバン3.6%)
ARISTOTLE:3.09%(アピキサバン2.13%)

大出血の定義は試験ごとに異なるので、一概には言えませんが、最近はISTH大出血基準に従う者が多いようです。以下を参照ください。
http://medical.nikkeibp.co.jp/all/special/focus-af_anticoag/tool/keyword/i_n.html

ワーファリンの脳卒中/全身性出血の予防率が4.5%100人年と言われていますので、まあ、的確に使っていればベネフィットがリスクを上回るという訳です。

一応ワーファリンは年間2〜3%の大出血(頭蓋内出血は0.6%くらい)と覚えるとよいと思います.
by dobashinaika | 2013-02-20 23:43 | 抗凝固療法:ワーファリン | Comments(0)

ダビガトランは肺静脈の興奮を減らす?:ウサギによる基礎実験から

Circ Arrhythmia Electrophys 2月号より

Dabigatran and Thrombin Modulate Electrophysiological Characteristics of Pulmonary Vein and Left Atrium
Circulation: Arrhythmia and Electrophysiology.2012; 5: 1176-1183


【疑問】トロンビンあるいはダビガトランは心房細動の解剖学的基盤である肺静脈や左房に影響を与えるか?

【方法】
・ 電極をウサギの肺静脈と左房に留置し、トロンビンや血栓溶解薬を投与し各部位の電位を記録する。
・ コントロールとダビガトラン投与時で施行

【結果】
1)トロンビン濃度上昇につれて、肺静脈の自発興奮が減少

2)血栓溶解薬濃度増加につれて、肺静脈の自発興奮が減少

3)トロンビンおよび血栓溶解薬は左房の拡張圧および静止膜電位を上昇させる。活動電位持続時間や収縮性は低下

4)トロンビンおよび血栓溶解薬は遅延後脱分極および肺静脈の爆発的興奮を促進いたが左房興奮は促進せず。

5)NG-nitro-L-arginine methyl esterとprotease-activated receptor type 1 blockerは、肺静脈や左房でのトロンビン、血栓溶解薬の効果を減弱させる

6)ダビガトラン投与後、肺静脈の自発興奮は遅くなった。この変化はトロンビンや血栓溶解薬により変わらなかった。

【結論】トロンビンは肺静脈や左房の電気的、機械的特性を変化させ、この変化がダビガトランでブロックされた。

### かなり面白いと言うか、思ってもみなかった結論です。血栓も血栓溶解薬もともに肺静脈の電気的興奮を減らすが、バースト興奮は逆に促進される。これには遅延後脱分極の亢進が関与しているとのことです。そしてこれにダビガトランは抑制的に作用する。

Xa阻害薬にはこの作用はないのか?そもそもどういったメカニズムなのか?ダビガトランを投与しておくと心房細動も起きにくいと言う臨床的リサーチクエスチョンに結びつくのか?

疑問、興味は尽きません。全文入手してみます。
by dobashinaika | 2013-02-18 23:42 | 抗凝固療法:ダビガトラン | Comments(0)

抗凝固療法中にPCIした場合、クロピドグレル単剤追加のほうが3剤併用より出血が少なく塞栓症は増やさず

Lancet 2月13日付オンライン版より

Use of clopidogrel with or without aspirin in patients taking oral anticoagulant therapy and undergoing percutaneous coronary intervention: an open-label, randomised, controlled trial
doi:10.1016/S0140-6736(12)62177-1


【疑問】抗凝固療法中の患者においてPCIが必要になったとき、抗血小板薬として、クロピドグレル単独で良いか、アスピリン+クロピドグレルでのほうが良いか?

P:ベルギー、オランダの15施設で2008年から2011年までに登録された抗凝固療法を受け、かつPCIが施行された患者573名

E:クロピドグレル単独(ダブルテラピー)

C;クロピドグレル+アスピリン(トリプルテラピー)

O:PCI後1年間の出血

T:オープンラベル、無作為割付、ITT解析

【結果】
1)ダブル群279人(平均70.3歳)、トリプル群284人(平均69.5歳)

2)出血エピソード:ダブル群54人19.4%、トリプル群126人44.4%:ハザード比0.36,p<0.0001

3)複数回出血イベント:ダブル群2.2% vs. トリプル群12.0%

4)輸血:ダブル群3.9% vs. トリプル群9.5%:オッズ比0.39,p=0.011

【解釈】アスピリンなしクロピドグレル単独使用では、出血合併症は明らかに減少し、塞栓イベントの増加はなし

### 昨年のミュンヘンで開催されたESC(ヨーロッパ心臓病学会)で話題になったWOEST試験の論文化です。

クロピドのみで出血が少ないことは自明ですが、(再狭窄等の)心血管イベントも増加せず、むしろ少ない傾向にあったことが話題になりました。
http://therres.jp/1conferences/2012/ESC2012/20120907144647.php

DESとBMSの比率は6.5:3とのことです。

再狭窄などは、二次エンドポイントであり、優位性を示すまでの検出力がなかったのかと思われますし、またオープンラベルなので、たとえばダブルテラピーのほうが小出血などは少なく評価してしまう可能性もあります。

とはいえ、トリプル群の出血率の44.4%の高さは無視出来ません。現場の実感として、出血例はやはり明らかにトリプルテラピーで多いと思います。高齢者はダブルでも皮下出血、脳出血をきたして痛い思いをすることもあります。

そうした観点からすると、クロピド単独でもいけそうであることの根拠として極めて重要な論文と思われます。今後ガイドライン等にどのように反映されるか注意したいところです。
by dobashinaika | 2013-02-15 19:32 | 抗凝固療法:抗血小板薬併用 | Comments(0)

メンタルストレスによる心筋虚血は運動誘発性よりも多く、女性、未婚男性、独居者で特に多い

JACC 2月19日号より

Prevalence and Clinical Characteristics of Mental Stress–Induced Myocardial Ischemia in Patients With Coronary Heart Disease
J Am Coll Cardiol. 2013;61(7):714-722. doi:10.1016/j.jacc.2012.11.037

心房細動の話題ではないのですが、興味深い論文だったのでさらっと紹介します。

【疑問】メンタルストレスによって誘発される心筋虚血の有病率と臨床的特徴は何か?

【方法】
・ 安定狭心症患者310人
・ 3つのメンタルストレステスト:1)暗算 2)鏡に映った画像を書き写す 3)怒りを誘発するような演説を連続施行後にトレッドミルテスト施行
・ メンタルストレステスト前β遮断薬は中止
・ 各テスト後にエコーおよび心電図で真菌虚血を評価

【結果】
1)メンタルストレスによる心筋虚血:43.45%vs. 運動による虚血33.79%(p=0.002)

2)女性(オッズ比1.88)、独身(オッズ比1.99)、一人暮らし(オッズ比2.24)においてメンタルストレス誘発性虚血多し

3)多変量解析では、未婚男性(オッズ比2.57)、既婚女性(3.18)、一人暮らしにおいてメンタルストレス誘発性虚血多し

【結論】メンタルストレス誘発性心筋虚血は、運動誘発性虚血よりも一般的。女性、未婚男性、一人暮らしで特に多い。

### 非常に説得力ある内容ですね。特に一人暮らし、独身男性で心筋梗塞が多いことは、循環器専門医の共通認識かと思います。原因がメンタルストレスであることが科学的にも示され納得することしきりです。

暗算とか鏡に映った像の書写など等で、イライラしやすい、怒りっぽいというのはやはり要注意ですね。このような方にはβ遮断薬が有効なのでしょう.
by dobashinaika | 2013-02-14 23:02 | 虚血性心疾患 | Comments(0)


土橋内科医院の院長ブログです。心房細動やプライマリ・ケアに関連する医学論文の紹介もしくは知識整理を主な目的とします。時々日頃思うこともつぶやきます。


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