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高齢者無症候性心房細動の2段階スクリーニンク法:スクリーングはいいがその後が大変?

Circulation 1月23日付オンライン版より

Stepwise Screening of Atrial Fibrillation in a 75-Year Old Population: Implications for Stroke Prevention
CIRCULATIONAHA.112.126656


【疑問】高齢者の無症候性心房細動をスクリーニンクする方法は何か?

【方法】
・対象:スウェーデンのHalmstad市に住む75−76歳の全住民
・ステップワイズスクリーングプログラムを施行
➢第一ステップ:12誘導心電図とそれに見合う症状
➢第二ステップ:心房細動の既往がなく、CHADS2スコア2点以上の場合=2週間の携帯心電計を1日2回あるいは動悸時に20−30秒記録

【結果】
1)1330人招待、848人64%登録

2)12誘導心電図で10人1%に心房細動発見

3)心房細動既往ある81人中;抗凝固薬なし35人43%

4)CHADS2スコア2点以上403人中:携帯心電計で30人7.4%に発作性心房細動が記録された

5)848人中75人9%は、抗凝固薬の新しい適応であり、57人は実際に服薬開始となった

【結論】75歳の人における心房細動のステップワイズリスク層別化は、抗凝固療法の候補者の大きなシェアを生み出す

### まず全員心電図をとる。それからCHADS2スコア2点以上で携帯心電計を2週間使うという2段構えの方法です。75歳でCHADS2スコア2点以上だと、高血圧、糖尿病、心不全のどれか1つだけあれば良いわけですが、ほとんどの方は高血圧がありますので、実際当院などでやるとするととにかく75歳以上の方のほとんどに携帯心電計を貸し出すことになるかと思われます。

それも大変ですが、そこで9%(12誘導も含めて)に無症候性心房細動が見つかってしまいますが、そのとき、はいではワーファリンを出しまよ、プラザキサ、イグザレルトを出しますよ、というふうに気軽には持ちかけられないと思われます。

無症候の方ですので、スクリーングの段階から、もし見つかった場合の抗凝固薬の重要性について話しておく必要もあります。

私は、今後の心房細動診療の新展開として、携帯心電計をはじめとする簡易デバイスによる無症候性心房細動のスクリーングがトピックになると、以前から言い続けておりますが、実際するとなると、このように無症状の人へのリスクコミュニケーションという大変な難問に突き当たることになります。

この論文を読んで、スクリーング法の研究は進むだろうが、そこから先が大変だ、という思いが強くなりました。

関連ブログこちら
http://dobashin.exblog.jp/17049937/

by dobashinaika | 2013-01-30 19:01 | 心房細動:診断 | Comments(0)

「ワルファリン単剤なら休薬なく生検してもよい」の意味:日経メディカルオンライン連載より

日経メディカルオンラインで連載させていただいております、”プライマリケア医のための心房細動入門」。本日、第9回を更新いたしました。

今回のテーマは”抗血栓薬休薬の最新ガイドラインを読み解く 「ワルファリン単剤なら休薬なく生検してもよい」の意味”です。
http://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/mem/pub/series/odakura/201301/528619.html

昨年7月に発表された「抗血栓薬服用者に対する消化器内視鏡診療ガイドライン」の読み方について愚考しております。

ワルファリンを処方しながらも内視鏡をお願いする側(プライマリケア医あるいは循環器内科医)とお願いされ,実際にカメラを施行する側(消化器内科医)との間には、「リスク認知」の大きなずれがあります。

その源泉は、われわれは目の前に生じるリスク、あるいは自分が手を施したことにより起こるリスクを過大評価するという人間特有の癖です。

目の前に生じるリスクあるいは自分が手を施したことによるリスクとは、PC医、循内医にとっては、薬をやめることによる大塞栓であり、消化器内科医にとってはワルファリンを飲んだままで生検した後の出血です。
こうしたことは、言い換えれば当事者性の違いといってもよいかもしれません。ワルファリン錠数をちまちま変更しながら、血管が詰まることからの回避をひたすら腐心する循環器内科医。かれらにとっては内視鏡ごとき(消化器の先生済みません!)でだい塞栓を起こされてはたまったもんではありません。
一方内視鏡を実際やる身にとって、ワルファリンにアスピリン(時にクロピドグレルまで)まで足されて、がっぽり大きな潰瘍から露出血管が見え、血液が噴出している。そんな状況で止血に悪戦苦闘する労苦が循環器内科医にわかるのかと言いたくなる。
このようなお互いの持つ当事者性は、おそらく永久に心底わかり合えないのではないかとも思えてきます。

こうしたリスク認知のずれ,ひいては当事者性の絶望的とも思える解離が、これまで両者の間のツンデレ関係(by香坂俊先生)を生ぜしめていました。(本音はツンだが、表面上デレ)

このずれをすりあわせるには、やめるリスク、やめないリスクをクリニカルエビデンズのレベルで十分吟味することが不可欠です。
ですが、現時点でこの件に関するエビデンスは必ずしも十分なものではありません。またたとえ十分であったとしても、エビデンスだけ理性でわかっていても心底わかり合えません。

そうした場合重要となるのは、お互いのexpertize(専門性)を十分知ることではないかと思われます。特にPC医、循内医は、消化器内科医の生検をする上での注意点、スキルやマンパワーがどのくらい影響するのか、紹介する上でどういった点を注意すれば良いのか、等の点に留意する必要があります。
一方消化器内科医は、抗血栓薬がどれほど重要で、塞栓症がどの程度重篤であるのか、抗凝固薬の管理や選択の大変さなどもわかっていることが求められます。
そうしたことで、お互いのリスク認知が何に重きが置かれているのか、つまりお互いのリスク認知の癖をおもんぱかることができるかも知れません。

そして、なにより、そうしたリスク認知の擦り合わせが、不必要な塞栓症、出血、複数回の検査を減らすこと=患者の利益を基準に考えられねばなりません。

クリニカルエビデンス、専門性さらにはお互いのリスク認知の中身、そして患者の利益(これいわゆるEBMの3要素)これらを考え合わせてコラボして行くための格好のツールが今回のガイドラインではないかと思います。

と、きれいにまとめてしまいそうですが、根本的には当事者性の理解は、不可能かもしれません。しかし、患者の利益を少しでも高めると言う共通基盤の元では、不可避なことでもあるのです。

関連ブログはこちら
http://dobashin.exblog.jp/15952230/
http://dobashin.exblog.jp/15915806
http://dobashin.exblog.jp/15476080/
by dobashinaika | 2013-01-29 22:24 | 抗凝固療法:抜歯、内視鏡、手術 | Comments(0)

抗凝固薬の臨床試験は二重盲検でなくオープンラベルでも良いのか?

Thrombosis and Haemostasis  1月24日付けオンライン版より

Do open label blinded outcome studies of novel anticoagulants versus warfarin have equivalent validity to those carried out under double-blind conditions?
http://dx.doi.org/10.1160/TH12-10-0715


【疑問】新規抗凝固薬の大規模試験はPROBE法とダブルブラインドダブルダミー法の2方法が用いられているが、前者は後者と同様の妥当性を持つのか?

【背景】
・ダブルブラインドダブルダミー法は、リアルワールドの服用法とは違うので現実的な解釈が難しい。
・同法は緊急時に不適切な対応をとるおそれがある
・盲検が厳格なため、エントリー症例にバイアスが生じる(多くのなもれない症例が脱落する可能性)

E/C:
PROBE法で行われた3試験RE-LY (ダビガトランvsワルファリン), AMADEUS (idraparinux vs. ビタミンK拮抗薬)、SPORTIF III(キシメガラトランvs. ワルファリン)とSPROTIF V(キシメガラトランvs. ワルファリン)、ROCKET AF(リバーロキサバンvs. ワルファリン)、ARISTOTOLE(アピキサバンvs. ワルファリン)の3試験

O:各種エンドポイント、選択基準、除外基準、エントリー後の患者背景

結果:
1)ほぼすべてのアウトカム(オッズ比)において、両法間の際はほとんどなし:

2)1次エンドポイント(脳卒中+全身塞栓症):PROBE法1.74%年、ダブルブラインドダブルダミー法 1.88%年

3)ROCKET AF試験の高い全死亡率および各PROBE法による試験の低い心筋梗塞率のみ差異あり

4)ROCKETAF試験を除いて、選択基準、除外基準、エントリー後の患者背景に大きな差異なし

結論;結果の差はあるが、デザインに起因するものではない。心房細動のトライアルにおいて、ダブルブラインドは必要ないかもしれない。

### PROBE法はProspective,Randomized,Open,Blinded-Endopoint designの略で、患者、医師にはオープン、評価者にはブラインドというやり方。一方ダブルブラインドダブルダミー法は、たとえばROCKET AFではリバーロキサバン群ならリバーロキサバンの実薬の他に、架空のINRを医師に伝え、医師はそれに基づき、偽薬であるワルファリンをその都度用量調節して出すというやり方です。後者はこのように非常に煩雑です。そこで、実際の臨床を反映していない、できる患者は限られた人だけ、といった懸念が生じます。

一方、PROBE法は、日本の特定大学の名称が入った試験でさんざん注目されたように、「狭心症」「一過性脳虚血発作」といったソフトエンドポイントが設定されていると、その診断にが意図的になる可能性があるわけです。

この論文ではダブルブラインドダブルダミー法の欠点が挙げられていますが,
上記の各試験でPROBE法の欠点が問題となることはないでしょうか?たとえば、RELY試験では、「stroke」の定義は身体所見のみ記載されており、画像診断の記載はないようです。またROCKET AFなどでは画像診断を「勧められる」としています。まあ、TIAではないので、ほぼ臨床症状で診断できますし、実際は多数の症例で画像診断がおこなわれたと聞いています。

その他のエンドポイントは、ほぼ曖昧な点を残さない、ハードエンドポイントであり、評価者はブラインドですので、確かに言われれば、抗凝固薬のトライアルであればPROBE法でもまあ良いかとも思います。

ただ、この論文の姿勢は結果オーライ的な感じもあり、やっぱり大規模臨床試験は理想的にはダブルブラインドが基本ではないかと思いたいです。専門の先生のご意見が聞きたいところです。
by dobashinaika | 2013-01-28 20:15 | 抗凝固療法:比較、使い分け | Comments(0)

身近な健康や医療のことについて気軽に語り合いませんか?:健康カフェへのお誘い

どばし健康カフェ(仮称)へのおさそい

皆様、おかげさまで当土橋内科医院も新医院への移転が完了いたしました。今までに比べて待合室がかなり広く取ったことが特徴かと思います。この待合室は、普段診察や会計までお待ちいただく以外に、医師や看護師、薬剤師、保健師、栄養士などの医療従事者と、地域の皆様とが、健康の問題や地域の医療について語りある場所にしたいと思って作りました。もし、日頃健康の問題で疑問に思っていること、聞いてみたいと思うことがあったら、お茶やコーヒーなど飲みながら気軽に話し合ってみませんか?
当院では、今後月1回くらい、診療時間以外の夜間や、木曜日、土曜日の午後などに、こうした語らいの場を設けたいと思っています。以下の様なテーマで1時間くらいの予定です。
当院かかりつけの方でなくても、全く構いません。もし興味がありましたら、気軽に当院まで、電話、FAX、メール、どんな手段でも結構ですので、気軽にご連絡ください。お待ちしております。

当院の電話番号、FAXはこちらです。
TEL:022-272-9220
FAX:022-272-9234
また以下の専用メールアドレスにご連絡いただいても結構です。
dobashi@mist.ocn.ne.jp

       §§§§§§§どばし健康カフェ(仮称)§§§§§§§

場所:当院待合室
時間;木曜日または土曜日の午後、あるいは午後7時ころから約1時間
(第1回の具体的日時はまだ未定です)
取り上げたいテーマ
・あなたにとってよい医師とは?看護師とは?薬剤師とは?保健師とは?栄養士とは?
・あなたにとって、元気のみなもとはなんですか?
・サプリメントってほんとにからだにいいの?
・介護保険についてもっと知りたい
・一人暮らしの方がもし具合が悪くなったら
・健康についての情報は何を信用しますか?
などなどです。

(個別の健康問題については、扱いませんので、ご了承願います)
by dobashinaika | 2013-01-27 19:15 | 医療の問題 | Comments(0)

心房細動脳卒中の血栓溶解療法に対する反応と予後

Stroke 1月号より

Atrial Fibrillation in Ischemic Stroke
Predicting Response to Thrombolysis and Clinical Outcomes
Stroke.2013; 44: 99-104


【疑問】心房細動脳卒中症例において血栓溶解療法に対する反応やアウトカムはどうか?

P:カナダ脳卒中ネットワーク(the Canadian Stroke Network)の虚血性脳卒中連続登録症例

E:心房細動あり

C:心房細動なし

O:
・ 一次エンドポイント;血栓溶解療法ご退院時のmRS
・ 二次エンドポイント:頭蓋内出血、30日以内死亡、1年後のiScore

【結果】
1)12686例中心房細動は2185人、17.2%にあり
2)30日以内死亡:心房細動群22.3% vs. 対照群10.2%,P<0.0001
3)1年以内死亡:心房細動群37.1% vs. 対照群19.5%,P<0.0001
4)死亡または退院時障害あり:心房細動群69% vs. 対照群54.7%,P<0.0001
5)血栓溶解療法は対照群では効果あり:RR1.18
6)心房細動群では効果認めず:RR0.91
7)血栓溶解療法後出血リスク:心房細動群16.5%vs. 対照群11.6%、RR1.42
8)tPA使用とiScoreは効果に対して交互作用あり
9)この交互作用は対照群でより大きい(P<0.0012)。心房細動群では統計的有意に届かず(P=0.17)

【結論】心房細動を有する脳卒中患者の死亡率は高く、頭蓋内出血リスクはより大きい。血栓溶解療法への反応は、非心房細動例と同様の傾向あり。

### 結論は同様の傾向あり、と言っていますが、結果だけ見ると心房細動群は血栓溶解療法によるエンドポイントの改善は見られず、予後改善効果も低いと言わざるを得ません。大きな塞栓子ですので、溶解療法が完全に奏功するものなのか。また投与後出血も多いようです。

ただ、iSCOREという脳卒中のリスクスコアが高い人ほど予後は悪いようで、心房細動群でも統計的有意はないもののその傾向があるとのことです。
http://www.sorcan.ca/iscore/indextpa.html

また、日本の久山町研究では、1年死亡率は50%前後とかなり高かったのですが、本研究では37.1%と日本の数値よりは低めです.本研究は必ずしも心原性脳塞栓ばかりでなく、アテローム血栓性も混在しているからとも思われます。
by dobashinaika | 2013-01-25 23:28 | 抗凝固療法:リアルワールド | Comments(0)

左心耳閉鎖デバイスWatchmanはワルファリンに劣らない効果あり:PROTECT AF試験より

Circulation 1月 16日付けオンライン版より

Percutaneous Left Atrial Appendage Closure for Stroke Prophylaxis in Patients with Atrial Fibrillation: 2.3 Year Follow-Up of the PROTECT AF Trial
doi: 10.1161/ CIRCULATIONAHA.112.114389


疑問:左心耳閉鎖デバイス(Watchman)はワルファリンに比べて脳卒中予防効果はどうか?=PROTECT AF試験

P:非弁膜症性心房細動、CHADS2スコア1点以上の707人

E:Watchman植え込み463人。ワルファリン45日投与後、クロピドグレル4.5ヶ月+アスピリン終生

C:ワルファリンのみ244人。TTR66%

O:一次有効性エンドポイント=脳卒中、全身性塞栓,心血管死。
一次安全性エンドポイント

T:ランダム化比較試験,ITT解析

結果:
1)一次有効性エンドポイント:Watchman群3.0%、ワルファリン群4.3%。RR0.71.95%CI 044-1.30%/年

2)この値はワルファリンに対するWatchmanの非劣性を示す(probability of non-inferiority > 0.999)

3)安全性エンドポイント:Watchman群5.5% vs. ワルファリン群3.6%。RR1.53

結果:“局所的”抗凝固戦略(=左心耳閉鎖)は、”全身的“戦略のワルファリンに非劣性を示した。PROTECT AF試験は、心房細動脳卒中の病因としての左心耳が関与することを初めて示した。

###Watchmann関連のこれまでのブログは以下です。
http://dobashin.exblog.jp/14764969/
http://dobashin.exblog.jp/11960235/

中間結果(1年追跡)はLancetに2009年に発表されており、今回その続報かと思います.
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/19683639?dopt=AbstractPlus

安全性がまだ、やや問題が残る感ありですが。
by dobashinaika | 2013-01-24 23:19 | 心房細動:左心耳デバイス | Comments(0)

CHADS2スコアは心房細動脳卒中の予後も予測する:韓国の研究より

J Clin Neurol. 12月号より

Impact of CHADS2 Score on Neurological Severity and Long-Term Outcome in Atrial Fibrillation-Related Ischemic Stroke
J Clin Neurol. 2012 Dec;8(4):251-258

疑問:心房細動関連脳梗塞において神経学的重症度や長期予後とCHADS2スコアは関係あるのか?

P:心房細動を有し、急性虚血性脳卒中を7日以内に発症し脳卒中センター(韓国ソウルの一施設)を受診した298人。2002−2008年。

E/C:CHADS2スコア0(低リスク)、1−2(中リスク)、3−6(高リスク)

O:神経学的重症度=NIHSSスコア(2点以上)、mRSスコア(3点以上)、死亡率

結果:
1)CHADS2スコア高リスクは神経学的重症度の良好な予測因子:オッズ比NIHSS=4.17、mRS=2/97

2)高リスクは全死亡率低下の独立予測因子:オッズ比3.01

3)血管死のオッズ比12.25

結論:CHADS2スコアは将来の脳卒中リスクを予測するためにデザインされた一方、心房細動関連脳卒中後の神経学的アウトカムをも予測する。

###日本では、九州の姉川先生のデータが有名で、脳卒中のアウトカムとCHADS2スコアとは無関係だとばかり思っていたのですが。。両研究の差異がどこに由来かは不明ですが、日本の対象の方がベースラインの平均年齢やCHADS2スコアなども高いようです。
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jstroke/32/2/32_2_129/_pdf

個人的には、だからといって、CHADS2スコア低値であってもやはり手抜きはしないことに変わりはないですが。
by dobashinaika | 2013-01-23 19:49 | 抗凝固療法:リアルワールド | Comments(0)

心房細動を発症した人の死亡率は、心房細動がない人に比べてよくない

European Heart Journal 1月14日付けオンライン版より

All-cause mortality in 272 186 patients hospitalized with incident atrial fibrillation 1995–2008: a Swedish nationwide long-term case–control study
Eur Heart J (2013)doi: 10.1093/eurheartj/ehs469


疑問:心房細動と初めて診断された人の全死亡率(予後)は、心房細動のない人と比べてどうか?

E:1995年~2008年までに,偶然発見された心房細動により入院した患者271,186人(85歳以下、女44%):スウェーデンの全国患者登録とデータリンク

C:心房細動のない、マッチ後の対照例

O:全死亡率

結果:
1)女性(合併疾患を補正後):65歳以下、65~74、75~85歳での対照に比べた死亡率相対リスク:2.15, 1.72, 1.44(P<0.001)

2)男性:1.76, 1.36, 1.24 (P<0.001)

3)癌、慢性腎不全、COPDが死亡率上昇に関係

4)心房細動と初めて診断された人の相対死亡リスク:女性1.63, 1.46, 1.28 (P<0.001). 男性 1.45, 1.17, 1.10 (P<0.001)

結論:心房細動は、偶然発見された心房細動を有する人においては全死亡率上昇の独立危険因子。死亡に寄与する因子は、血栓塞栓リスクスコアとは別のもの。女性で、若年像ほど、心房細動のない例に比べての相対危険が高値。各年齢別で、男女の差は統計学的に明らか。

### 心房細動があると、生命予後が悪いということはよく知られた事実です。有名なFramingham研究など、これまでデータは豊富でした。
例えば以下の論文などです。
http://circ.ahajournals.org/content/98/10/946.full

しかしこれまで、心房細動によるデメリット、すなわち心不全や血栓塞栓症が直接的に働いて予後を悪くしているかどうかは、実は限定的なエビデンスしかなかったと言ってよいと思われます。この論文では大規模コホート対象に、後ろ向きにケースコントロール研究によって、血栓塞栓ではなく、癌や腎不全、呼吸不全が心房細動によって、よりリスクが高くなっていることを示しています。

前向き研究でないため、抗凝固療法、心不全治療などの内容にばらつきがあると思われます。このため一概に予後に寄与する因子が脳卒中や心不全ではないと決めつけることが早計かと思われます。

ただし一方、心房細動を持つ人の死因はやはり、癌やその他の臓器疾患も多いということも知っておくべきかと思います。
by dobashinaika | 2013-01-22 23:32 | 心房細動:リアルワールドデータ | Comments(0)

心房内の血栓形成に影響するのはレートかリズムか?

J Am Coll Cardiol1月16日付けオンライン版より

Effect of Atrial Fibrillation on Atrial Thrombogenesis in Humans: Impact of Rate and Rhythm ONLINE FIRST
J Am Coll Cardiol. 2013;():. doi:10.1016/j.jacc.2012.11.046


疑問:心房の血栓形成においては、リズムが問題か心房拍数が問題か

P:洞調律中にカテーテルアブレーションを施行した心房細動55人

E/C:心房細動が誘発された20人/毎分150の心房ペーシング20人/コントロール15人(洞調律)

O:血小板活動性(P-セレクチン)、トロンビン生成(TAT)、内皮機能不全(ADMA)、血小板由来炎症(sCD40L):左房、右房、大腿静脈からベースライン、15分後で採血

結果:
1)血小板活性;心房細動群(p<0.001)、ペーシング群(p<0.05)で上昇。対照群(p<0.001)で減少

2)トロンビン生成:心房細動群、ペーシング群で左房のほうが末梢より高い。対照群で低い

3)ADMAとsCD40L:心房細動群では全部位で上昇。ペーシング群、対照群では不変

結果:速い心房拍数と心房細動は、血小板活性、トロンビン生成とも増加。プロトロンビン活性は全身よりも左房でより上昇。心房細動ではさらに内皮機能低下と炎症があり。こうした所見は速い心房拍数でもそうだが、心房細動ということでよりリスクが高まる。

### なかなか興味深い論文です。心房が早く動くほど血小板活性とトロンビン生成が特に左房で高まると。そしてさらにリズムがirregularであることで内皮機能不全や炎症をきたすということです。

アブレーション中の採血なので、手技による影響はどうなのか、また症例数も少ない点が難点です。

なるべく心房細動は無くしたほうが良い。当たり前のようですが、改めてこうした基礎データを見るとそうだなあと思います。問題はその方法ですが。
by dobashinaika | 2013-01-21 19:17 | 抗凝固療法:全般 | Comments(0)

心房細動がブルガダ症候群の初発症状であることもある

American Journal of Cardiology 11月30日オンライン版より

Prevalence, Clinical Characteristics and Management of Atrial Fibrillation in Patients With Brugada Syndrome

心房細動が記録されている人でのブルガダ症候群の頻度についての検討

【疑問】臨床的に心房細動が顕在化したのちにブルガダ症候群が診断される頻度はどのくらいか?

【方法】Brugada症候群データベースの611人についてレビューし、ブルガダ症候群と診断される前に心房細動が記録されている患者を同定する

【結果】
1)ブルガダと診断される前に心房細動の既往あり35人(平均49歳)
2)I群抗不整脈薬投与でブルガダパターンが顕在化:11人
3)全身麻酔時に顕在化:1人
4)診断のためのアジマリン投与時に顕在化:13人
5)突然死の家族歴:5人、失神、CPAからの生還3人、心電図異常2人
6)ベースラインで正常心電図:21人60%
7)電気生理検査:洞機能低下6人、心房粗動4人、H-V間隔延長5人、1度房室ブロック2人、房室リエントリー性頻拍1人、房室結節リエントリー性頻拍1人

【結論】心房細動はブルガダ症候群の第一の臨床指標と成りうる。もしブルガダ症候群が診断されていない場合、フレカイニドのようなIc抗不整脈薬は危険な心室性不整脈を誘発する可能性を持つ。

【考察】ブルガダ症候群における心房細動の罹患率は約20%。この高頻度はNaチャネル変異が心室筋、心房筋両者に影響していることを示唆する。

###なるほど抗不整脈治療によってブルガダが顕在化してくるということですか。こういう場合抗不整脈薬治療を続けるべきか迷います。アブレーションが解決策かもしれませんが、チャネル異常だと、また心房細動が出てくるのかもしれないし。

こうした患者さんの転帰や予後が知りたいです。

ブルガダと心房細動についての総説はこちら
http://dobashin.exblog.jp/12980345/
by dobashinaika | 2013-01-18 19:55 | 心房細動:リアルワールドデータ | Comments(0)


土橋内科医院の院長ブログです。心房細動やプライマリ・ケアに関連する医学論文の紹介もしくは知識整理を主な目的とします。時々日頃思うこともつぶやきます。


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