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2012年心房細動関連論文ベスト5+α

今年も恒例の「今年の心房細動関連論文ベスト5」をお届けいたします。
じつは、すでにNikkei Medical Cadetto2012年冬号の「2012冬論文コレクション」で同様記事を掲載させていただいておりますが、同誌では一部昨年の論文も含まれておりますので若干手を加えてみたいと思います。
選択基準は,いつも通り「自分の診療において行動変容を促されたか」です。

第5位:抗血栓薬服用者に対する消化器内視鏡診療ガイドライン.日本消化器内視鏡学会雑誌
Vol. 54 (2012) No. 7 p. 2075-2102
7月に出た、日本消化器内視鏡学会の抗血栓薬服用者に対する内視鏡のガイドライン。ワーファリン休薬なしで生検は可能としたところが画期的でした。既に仙台市内の大きな病院の消化器科からは、ガイドライン通りにします旨の案内が届いています。ヘパリンブリッジや、2回胃カメラを受ける必要がないことは、患者さんにとって福音ですが、一方、エビデンズレベル、推奨レベルとも低く、コンセンサス重視のガイドラインであることはふまえるべきです。

第4位:Dabigatran in Clinical Practice for Atrial Fibrillation With Special Reference to Activated Partial Thromboplastin Time.
山下先生のグループのダビガトランにおけるaPTTチェックの妥当性を検証した論文。これによって、ダビガトランの使い方に一応一定の安心を持つことができました。今後の知の集積の礎になる知見と思います。

第3位:The value of the CHA2DS2-VASc score for refining stroke risk stratification in patients with atrial fibrillation with a CHADS2 score 0–1: A nationwide cohort study. Thrombosis and Haemostasis 2012: 107/6 (June) 1172-1179
コペンハーゲンのグループの大規模コホート研究。ESCガイドラインのネタ。CHA2DS2-VAScスコアの低スコアの取り扱いを比較的明確に示した論文です。個人的には60代後半女性というだけでワーファリンを出すのは未だに気後れする気もしますけれども。例えば65歳と、74歳ではかなり違うかとも思いますが.そこはスコアリングの限界ということで理解しています。

第2位:Nurse-led care vs. usual care for patients with atrial fibrillation: results of a randomized trial of integrated chronic care vs. routine clinical care in ambulatory patients with atrial fibrillation. Eur Heart J (2012) 33 (21): 2692-2699.
看護師主導ケアによるワーファリン管理で、心血管イベントなどアウトカムが改善したという研究.これほんとそうですよね。結局チャズだCHA2DS2だバスクだリライだなんだと言ったって、きちんと飲むこと、きちんと生活習慣病を管理することをしてなんぼですので。それも多職種共同でしないといけません.これからは。

第1位:2012 focused update of the ESC Guidelines for the management of atrial fibrillation
An update of the 2010 ESC Guidelines for the management of atrial fibrillation
Developed with the special contribution of the European Heart Rhythm Association
Eur Heart J (2012) 33 (21): 2719-2747.

月並みな結果ですが、やはりESCのガイドラインです.65歳以上では皆脈を取れ、CHA2DS2-VAScスコア0点は抗凝固療法をするな。アスピリンはもう要らない。。。非常に明快でストレートなメッセージです。新規抗凝固薬礼賛なのは気になりますが、リアルワールドをガイドラインは牽引する,そんなパワーを感じました。

この他にも
抗凝固薬は高齢者の転倒リスクを増加させないとの研究
左心耳の形状と脳塞栓率の関係を検討した研究
大規模コホートでリズムコントロールの優位性を示した研究
心房細動カテーテルアブレーション6年間の長期追跡研究
ジギタリスが予後悪化に関連ありとするAFFIRMのサブ解析

等が印象に残りました。
今年は、新規抗凝固薬が2種類となり、それなりに知の集積がなされてきつつも、いまだ過渡期であることを皆が改めて実感してきた時代の前半、くらいの位置づけなのかという感じです。私としては、今後次の2つのことが心房細動治療のミッションになって行く気がしています。
1.無症候性(患者医療者ともに認知していない)あるいは“隠れ“(患者は認知しているが医療者に認知されていない)心房細動へのアプローチ研究
2.80歳以上高齢者への抗凝固療法

特に2は、最近再三ブログで述べていますが、今後数年でとてつもなく増える超高齢者のことを考えないでどうする、という思いがあります。この層をカバーし得る新規抗凝固薬は出てくるのでしょうか?やっぱりワーファリンは生き残るのでしょうか?

と問題提起しつつ、今年も一応締めとさせていただきます(あしたも論文紹介するかもしれませんがw)。個人的にはオンラインサイトの連載、雑誌の抗凝固療法の企画、web講演会、教科書等の執筆等々公に露出する機会が増えましたが、じぶんとしては、本ブログでだいたいコンスタントに1日1000アクセス以上いただけるようになったことが最もうれしいことです。ずれていることも多々書き散らしたかと思いますが、今後とも皆様、ご批判ご愛顧のほどなにとぞよろしくお願い申し上げます。
by dobashinaika | 2012-12-27 22:42 | 心房細動診療:根本原理 | Comments(0)

新規FXa阻害薬エリキュース(アピキサバン)が日本で製造承認取得

ついにアピキサバンが、日本でも製造承認を取得したようです。
ブリストルマイヤー社、ファイザー社のホームページで確認できます。
http://www.bms.co.jp/press/20121225.html
http://www.pfizer.co.jp/pfizer/company/press/2012/2012_12_25_02.html

商品名は「エリキュース」。
欧米では「エリキス(Eliquis)」ですが、日本ですでに類似の名前の薬があるので、(「エリザス」かな?))エリキュースになったのでしょう。

剤形を実際に見る機会がありましたが、リバーロキサバンよりやや大きい程度で、やはりかなり小さめです。

ただ低用量(2.5mgx2)の選択基準が1)80歳以上、2)体重60キロ以下、3)血清クレアチニン1.5以上のうち2つ満たす場合としており、クレアチニンクリアランスで設定されていないところが、ちょっと引っかかりました。

腎排泄25%程度であり、あまり腎機能にこだわらなくてもいいのかもしれませんが、どうなのでしょう.上記条件ぎりぎりの人、79歳、61キロ、クレアチニン1.4の場合クレアチニンクリアランスは31ですので、なかなか危ないようにも思いますが。。。

薬価が気になりますが、やはり先行2薬と同じでしょうねー。これ一番の大問題ですが.
by dobashinaika | 2012-12-26 22:52 | 抗凝固療法:アピキサバン | Comments(0)

高リスク患者の”隠れ”心房細動の診断には携帯型心電計が有用

Europace 12月20日オンライン版より

Prevalence of unknown atrial fibrillation in patients with risk factors.
Europace (2012)doi: 10.1093/europace/eus366


携帯型心電計を使っての心房細動リスクの高い患者層での心房細動罹患率の同定

対象:これまで心房細動が検出されていない高リスク患者132人(平均64歳)
糖尿病、高血圧脂質異常症外来通院76人
大学病院脳卒中病棟56人

方法:1チャンネル心電計(オムロン社製)による自覚症状出現時の心電図を患者に記録してらう

結果:
1)罹患率:7/132,5.3%
脳卒中サバイバー4、糖尿病2、高血圧1、
CHADS2スコア平均2(25%−75%四分位は1〜3)
2)複数リスクを有する人ほど罹患率高い
高血圧のみあるいはリスクなしの人は1/32、3%
2因子以上の人では5/71、7%
脳卒中既往、高血圧、糖尿病3つを持つ人は1/9、11%
3)標準12誘導では更なる発見なし

結論:1チャンネル心電計スクリーニング多くの危険因子を有する例での“隠れ(サイレント)“心房細動の同定に有用。

### 日本のオムロン社製携帯心電計hcg-801を使っての研究です.Hcg-801は当院でも5台稼働しており、大変役に立っています。

どの程度の期間の貸し出しか不明ですが、症候性の心房細動を診断する価値は大と思われます。もうちょっと症例数を多くしてCHADS2スコア別の診断率の差を出してほしかったです.

問題は全くの「無症候性」の場合ですが.
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by dobashinaika | 2012-12-26 22:28 | 心房細動:診断 | Comments(0)

米国では過去15年で脳梗塞が60%減少、ワーファリン処方は大幅増:Medicare 5%"データベースより

昨日(12月24日)付けのArchives of Internal MedicineのResearch Lettersの図が、非常に教訓的だったので、今日2つ目ですがあえて紹介します。

Temporal Trends in Ischemic Stroke and Anticoagulation Therapy Among Medicare Patients With Atrial Fibrillation
A 15-Year Perspective (1992-2007)
Arch Intern Med. 2012;():1-2. doi:10.1001/jamainternmed.2013.1579.


Medicare 5% データベースからのデータ。
これをみますと、過去15年間で虚血性脳卒中は60%弱減少、死亡率は約25%減少、出血性脳卒中は不変。心房細動例へのワーファリン処方率は20%台後半から60%台前半に上昇しています。
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もちろんこのグラフだけでワーファリン処方率の上昇が、アウトカム改善につながったと結びつけることは危険ですが、少なくとも脳梗塞減少ワーファリンとは、強固なリスク低下エビデンスがありますので、このグラフには十分な説得性があると思われます。

日本のデータは?こう言う推移を示すデータはないでしょうねー。
by dobashinaika | 2012-12-25 23:14 | 抗凝固療法:リアルワールド | Comments(0)

心不全合併心房細動では洞調律時間が長い方がQOLが良い

JACC12月オンライン版より

Quality of Life and Functional Capacity in Patients With Atrial Fibrillation and Congestive Heart Failure ONLINE FIRST
J Am Coll Cardiol. 2012;():. doi:10.1016/j.jacc.2012.10.031


心房細動と心不全との合併例において、リズムコントロールとレートコントロールとでQOLや身体機能に与える影響の比較検討

P:AF-CHF試験参加者のうち、リズムとレートにランダム割付された1376名。

E:リズムコントロール

C:レートコントロール

O:SF-36(前、4ヶ月)。6分間歩行(前、3週、4ヶ月、1年)

結果:
1)QOLは両群ともに同程度の改善
2)洞調律維持時間が長い例で高率にQOLスコアがより改善
3)6分歩行、NYHA分類は両群で差なし
4)洞調律維持時間が長い例ではNYHA改善度がより大きかったが、6分歩行は変りなし

結論:心房細動—心不全合併例ではリズムコントロールとレートコントロールとでQOL、身体機能の改善は同程度。一方、洞調律維持はNYHA分類やQOLの改善に関係あり。

### 有名なAFFIRM試験のサブ解析でも洞調律維持はQOL改善とは無関係という結果だったと思いました。J-RHYTHM試験ではQOLの3要素のうち「症状の頻度」のみリズムコントロール群で改善され、「症状のつらさ」「不安、生活制限」は差がありませんでした。

心不全合併例を対象とした本試験でもオーバーオールでは差がないものの、洞調律維持時間が長い例の方でQOL改善が図られているようです。

心不全を有していた方が、より洞調律の心地よさを感じるという解釈ももっともらしいかもしれません.

しかしながら、この論文かなり制約が多いようです。あと付け解析である点。
AF-CHF試験登録例1376例のうち、833例のみエントリーでそのうちアンケートに全部答えられた749例が対象である点。SF-36という包括的指標しか取り上げていない点。等など突っ込み所はありそうです。

ぼく自身はこうしたQOLをアウトカムにした研究は,それこそ参考の参考程度にとどめることにしています。なぜなら、扱うものがQOLですから、アウトカムは患者さんの数ほどあるということです。予後と違い患者さんごとにアウトカムがある程度見える化されています。サンリズムを飲んだときとメインテートだけのときとで、どちらが良かったですか、とストレートに患者さんに聞くことが可能です。そのように試行錯誤して良い道を選んで行けば良いので、QOLを問題にする場合、余りエビデンス依存にはならないわけです。
by dobashinaika | 2012-12-25 22:10 | 心房細動:ダウンストリーム治療 | Comments(0)

イグザレルト錠の「市販直後調査」の終了報告

バイエル薬品株式会社から、イグザレルト錠の「市販直後調査」の終了報告が出されています。
http://xarelto.jp/ja/home/product-information-area/product-overview/ 
http://bayer-hv.jp/hv/products/tenpu/1218_XAR_shihantyokugo3.pdf

・ 6ヶ月間で約20,000人の推定患者数
・ 副作用250例300件
・ 死亡9例
・ 重要臓器の出血14例

・ 脳出血4例、うち2例は血圧管理不十分
・ 重要臓器出血のうち3例はクレアチニンクリアランス50mL/min未満にも関わらずイグザレルト15mg処方

・ 重篤な出血事象の75%は投与開始1ヶ月以内。しかしそれ以後も見られることに注意
・ 重篤な出血事象80例中CCr15~29が4例、30〜49が18例。
・ 80例中54例が75歳以上
・ 体重が判明している57例中18例が体重50kg未満
・ 抗血小板薬併用が17例
・ CYR3A4、P糖蛋白阻害薬服用例2例(クラリスロマイシン1、エリスロマイシン1)

重篤な出血事象の症例概要
1)90代前半女性。10mg。慢性心不全、アルツハイマー、高血圧、脳梗塞
 ➢寝たきりに近い状態
 ➢アスピリン内服中
 ➢投与前血圧148/91程度で上昇傾向
 ➢CCr35.2
 ➢ダビガトランからの切り替え
 ➢投与143日めに巨大脳出血→死亡

2)70代前半女性。10mg。脳梗塞、動脈閉塞性疾患
 ➢ワーファリンコントロール不良、ダビガトランで消化管出血のため切り替え
 ➢CCr19
 ➢大量下血、輸血
 ➢内視鏡で出血源不明
 ➢イグザレルト再開

3)70代男性。15mg。COPD
 ➢自立。認知症なし
 ➢ワーファリンコントロール不良
 ➢ワーファリン服用中に脳梗塞様症状.その後ダビガトランに変更
 ➢ダビガトランによる下痢のため、ワーファリン再開を経てイグザレルト投与
 ➢CCr55
 ➢アスピリン併用
 ➢投与28日目、突然の脳幹出血で死亡

4)70代後半男性。15mg。僧帽弁閉鎖不全
 ➢15mg
 ➢CCr84
 ➢突然の視床出血,搬送時血圧207→死亡

5)40代後半男性。15mg。拡張型心筋症、慢性心不全、胃潰瘍、アルコール症
 ➢ワーファリンコントロール不良でイグザレルトに変更
 ➢投与2ヶ月後から黒色便
 ➢投与80日でHb16.9から12.9に低下
 ➢内視鏡拒否のため出血源不明
 ➢その後貧血改善し、抗凝固薬は投与見合わせ

### こういう市販後調査では、例えば推定処方者20,000人のうち、死亡例9例だから云々、という捉え方は統計学的にも無意味と思われます。こうした調査の意義は、どういった症例が重篤な副作用や出血をきたしたのか、詳しく吟味し、明日の診療に生かすことです。

例えば症例の1)は90代、寝たきり、アスピリン内服というキーワードから、はたしてイグザレルト適応例であったのかが、大いなる疑問となります。

症例2)ではCCr19位の方には十分慎重さが要求されることが読み取れます。

症例3)4)は非常に衝撃的かつ教訓的です。ワーファリンコントロール不良でNOACに切り替える例は多く、今後も増えると思われますが、この例のようにCCrもまあまあで自立高齢者で突然の脳幹出血。さしあたり大きなリスクが見当たりません(症例4はアスピリン併用くらい)。でも実臨床ではこのような方に否応なく遭遇するのです。もっと詳細データが欲しい例です。

やはり慎重投与すべき例でなされていなかった場合があることは、重大だと思われます。血圧高値、CCr低下、アスピリン併用などなんらかのリスク因子を抱え込んでいる例が多いことが教訓的と思われます。

症例2、3、5)はいずれもワーファリンコントロール不良例であることも注意したい点です。果たしてワーファリンのアドヒアランスがどうだったのか?腎機能低下がワーファリンコントロール不良にも影響を及ぼしていなかったのか。全くの経験則ですが、ワーファリンコントロール不良例は、NOACにしたところで、トラブルが多いような印象があります。

大変有意義な報告であり、たくさんの症例提示を今後も期待したいです。
by dobashinaika | 2012-12-21 23:25 | 抗凝固療法:リバーロキサバン | Comments(0)

日経メディカルオンライン連載第8回「ダビガトランにもモニタリングが必要な理由」更新いたしました。

ダビガトランネタが続きますが、日経メディカルオンラインで連載させていただいております、プライマリケア医のための心房細動入門。第8回を更新いたしました(無料登録必要)。
http://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/mem/pub/series/odakura/201212/528204.html

「ダビガトランにもモニタリングが必要な理由」についてです。

今回は、血液凝固学の教科書を買い込んだり(役に立ったのは主にネット上のサイトでしたが)して、久々に学生気分に戻って、凝固系カスケードのおさらいをしました。

凝固系カスケードは、医学生の間でも苦手アイテムの一つと思われますが、それは生体内での反応を教えず、試験官の中だけの世界を教えられた(少なくとも私の時代はそう)からだと思いました。

生体内で起きていることは、もっともっとダイナミックな営みであることを凝固系の再学習を通じて、再認識させられた次第です。

一つ前のFDA情報とあわせてお読みいただければ幸いです。
by dobashinaika | 2012-12-20 19:30 | 抗凝固療法:ダビガトラン | Comments(0)

ダビガトラン使用の再調整:米FDA、ダビガトランの機械弁患者への使用を禁忌へ

アメリカ食品医薬局(FDA)からの12月19日付、ダビガトランに関する安全性情報です。

FDA Drug Safety Communication: Pradaxa (dabigatran etexilate mesylate) should not be used in patients with mechanical prosthetic heart valves

要約します。

安全性情報
・ダビガトランは機械弁患者において、脳卒中、塞栓血栓症予防のために使用すべきではない
・ヨーロッパのRE-ALIGN試験は、ダビガトラン使用者で、ワーファリン使用者よりも脳卒中、心イベント、弁塞栓症、大出血が多かったため中止となった
・ダビガトランは、心臓弁に起因する心房細動患者に認可されない
・FDAは機械弁患者へのダビガトラン使用に禁忌の追加を求める
・医療従事者は機械弁患者へのダビガトラン使用を、他の方法にすみやかに変更すべき
・生体弁については未だに評価されておらず、ダビガトランは推奨されない
・ダビガトランを服用中の弁置換術後の患者さんは、出来る限りすぐに医師に相談すべき
・患者さんは医師からのガイダンスなしに抗凝固薬を服用の中止はしないように:急にダビガトランや他の抗凝固薬をやめることは血栓や脳卒中のリスクを増やす

RE-ALIGN試験の要約
・対象:弁置換3ヶ月以上後
プラダキサ(n=160)ワーファリン (n=89)
死亡  1 (0.6%) 2 (2.2%)
脳卒中 8 (5.0%) 0  (0%)
全身塞栓症 0   0
TIA   2 (1.3%) 2 (2.2%)
弁塞栓 4 (2.5%) 0
心筋梗塞3 (1.9%) 0
複合イベント 16 (10.0%) 4 (4.5%)
大出血 6 (3.8%) 1 (1.1%)
心嚢出血 5(3.1%) 0
全出血イベント 36(22.5%) 12(13.5%)

### 大変衝撃的な情報です。RE-ALIGN試験デザインの論文が出たのが7月ですから、半年足らずで中止となってしまいました。
http://www.ahjonline.com/article/S0002-8703(12)00177-9/fulltext

ダビガトラン群では、脳卒中5.0%、弁塞栓症2.5%、心筋梗塞1.9%、大出血3.8%、心嚢への出血3.1%に対し、ワーファリン群はほとんどゼロ〜1.1%でした。

原因は何でしょうか?
上記論文を見ますと、ダビガトランの初期投与量はCCrが70未満で150mgx2,70−110で220x2、110以上で300x2となっており、CCr70以上では日本で用いる通常量の2倍またはそれ以上のドーズになっています。
出血が多かったのは、これが原因と考えて良いかもしれません。

維持量については血中濃度50ng/dl以上を維持するように調節となっていますが、ダビガトランの初期データ(以下)では50程度では、aPTT比は2倍を超えることはないように見受けられますので、このへん、実際のRE-ALIGN試験の細かなデータがほしいところです。
Stangier J,et al:The pharmacokinetics, pharmacodynamics and tolerability of dabigatran etexilate,a new oral direct thrombin inhibitor,in healthy male subjects. Br J Clin Pharmacol 2007;64:292-303.

弁血栓が多かったのはなぜなのか?機械弁上の血栓形成に対する抗凝固様式がビタミンK阻害薬と直接トロンビン阻害薬とで異なるのでしょうか?

今後専門家(特に血液学)のコメントが出てくると思われますので、待ちたいと思います。

しかし、やっぱりワーファリンは偉大ですね〜。なかなかにこの血栓予防というのは一筋縄ではいかないことを改めて痛感させられました。ダビガトランあるいは新規抗凝固薬の使用法、またここにきて、RE-ALIGN(=再調整)です。

日本での情報提供サイトはこちら(登録必要)
RE−ALIGN試験のブログはこちら
by dobashinaika | 2012-12-20 19:19 | 抗凝固療法:ダビガトラン | Comments(0)

新規抗凝固薬の大規模試験対象患者はリアルワールドをどのくらい反映するのか

BMJ Openより

Representativeness of the dabigatran, apixaban and rivaroxaban clinical trial populations to real-world atrial fibrillation patients in the United Kingdom: a cross-sectional analysis using the General Practice Research Database.
BMJ Open 2012;2:e001768 doi:10.1136/bmjopen-2012-001768


ダビガトラン、リバーロキサバン、アピキサバンの大規模試験対象患者がリアルワールドをどのくらい代表しているのかについての検討

・イギリスのGeneral Practice Research Database (GPRD)登録患者に、3新規抗凝固薬の大規模試験対象患者が、どのくらい適用できるかを検討
・登録患者83898人

・CHA2DS2-VAScスコア1点以上=78,783人、94%
➢RELY試験のクライテリア合致例:68%(95%CI:67.7-68.3%)
➢ARISTOTLE試験合致例:65%(64.7−65.3%)
➢ROCKET-AF試験合致例:51%(50.7−51.4%)

・CHADS2スコア1点以上=71493人、85%
➢RELY試験の合致例:74%(95%CI:73.3−74.3%)
➢ARISTOTLE試験合致例:72%(71.1−72.3%)
➢ROCKET-AF試験合致例:56%(55.6−56.4%)

・RE-LY、ARISTOTLE試験の患者背景はROCKET-AFにくらべ、リアルワールド反映していた。RCTを実臨床に適応するときはこうした差異を考慮にいれるべき。ただし、こうした代表性の評価は、一般性(普遍性?)の評価、つまりくりになるトライアルの結果をどううまく毎日のルーチンケアにおける効果と安全性に読み替えるかという評価の代用とは成り得ない。

### ROCKET-AFはCHADS2スコア2点以上の縛りがあるので、この結果は当然で、こうした比較はリバーロキサバンには酷な気もします。現在新規経口抗凝固薬が次々と上梓される段階で、これらの使い分け、差異に興味が集中しているという背景と、それらをエビデンスで理解したいという意思決定上の態度嗜好(欧米人強い?)とが相まっての検討でしょう。

まあ、とにかくいろいろ使ってからでしょうね。

しかしそれにしてもそうした間接比較は多いですね。
以下を参照。
http://dobashin.exblog.jp/pg/blog_view.asp?srl=16839671&nid=dobashin
by dobashinaika | 2012-12-19 19:45 | 抗凝固療法:リアルワールド | Comments(0)

薬剤師による詳細な説明で脳梗塞退院後の抗血栓薬服薬アドヒアランスは向上する

Stroke 12月6日オンライン版より
Adherence to Hospital Discharge Medication in Patients With Ischemic Stroke
A Prospective, Interventional 2-Phase Study
doi: 10.1161/ STROKEAHA.112.678847


脳梗塞退院後の服薬アドヒアランスと薬剤師による説明との関連についての検討

P:脳梗塞/TIAで入院注2剤以上の薬剤を服用した患者312人

E:薬剤師は入院時に薬剤をリスト化し、退院時に入院前との違いに月詳細な説明を行う群156人

C:薬剤師の説明なし156人

O:抗血栓薬、スタチンの服薬アドヒアランス

結果:
1)抗血栓薬のアドヒアランス:介入群91.9%、対照群83.8%、P=0.033
2)スタチンのアドヒアランス:介入群87.7%、対照群69.8%、P<0.001

結論:退院前後の処方の変更を詳しく説明することが退院後の封薬アドヒアランス向上につながり、二次予防改善へとつながる

### 入院前と退院後の処方の違いを説明すると言う着眼点がすばらしいです。抗血栓薬やスタチンは、入院前に処方されていないことが多いとも思われますので、これは非常に大切なことだと思います。

それにしても、やはり抗血栓薬の方がスタチンより全般的にアドヒアランスが良いのは、やはり必要性を実感されるからかと思われます。

どのくらい説明するのかが知りたいですところです。
by dobashinaika | 2012-12-18 23:25 | 抗凝固療法:全般 | Comments(0)


土橋内科医院の院長ブログです。心房細動やプライマリ・ケアに関連する医学論文の紹介もしくは知識整理を主な目的とします。時々日頃思うこともつぶやきます。


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