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低マグネシウムは心房細動発症率増加と関係あり;フラミンガム研究より

Circulation 11月21日オンライン版より

Low Serum Magnesium and the Development of Atrial Fibrillation in the Community: The Framingham Heart Study
doi: 10.1161/ CIRCULATIONAHA.111.08251

フラミンガムハート研究での血清マグネシウムと心房細動発症との関係に関する検討

P:フラミンガムoffspring研究で、ルーチン検査を施行しており、心房細動、心血管疾患のない3530人:平均44歳、女性52%

E/C:血清マグネシウム値

O;心房細動発症率:各種リスク因子、降圧薬、血清カリウム値で補正

結果:
1)心房細動発症228例、平均血清マグネシウム値1.88mg/dl

2)補正後発症率:最低四分位9.4/1000人年(1.77以下)vs. 最高四分位6.3/1000人年(1.99以上)

3)最低四分位の発症率はそれ以上に比べ50%増加:ハザード比1.52、P=0.05

4)利尿薬使用者を除外しても同じ結果

結論:低マグネシウムは心血管疾患のないヒトの心房細動新規発症に中程度の関係あり。低マグネシウムは一般住民ではありふれたものであるため、心房細動との関係というのは臨床的に考慮すべき可能性がある。さらなる研究必要。

### 心臓術後などでマグネシウム低下と心房細動発症の関係が報告されていましたが、一般住民対象の大規模コホート研究で大々的に示されました。

マグネシウという着眼点と、それを大規模コホートで採血したというところにリスペクトです。

例えば、アルコールや糖尿病は心房細動のリスク因子ですが、マグネシウムは交絡因子なのかもしれません。

マグネシウムは低カリウムによるQT延長やTorsade de pointesの治療に使われるわけで、心室筋では低マグネシウム→内向き整流カリウムチャネル発現低下→心房筋の活動電位持続時間延長といったところが考えられますが、心房でも同じなのか、興味深いところです。
by dobashinaika | 2012-11-28 19:45 | 心房細動:リアルワールドデータ | Comments(0)

心房細動は心臓突然死リスク増加と関連あり:大規模コホート研究より

Archives of Internal Medicine 11月オンライン版より

Atrial Fibrillation and the Risk of Sudden Cardiac Death:The Atherosclerotic Risk in Communities Study and Cardiovascular Health Study

心房細動と心臓突然死の関係に関する2つの大規模コホート研究

P:ARICstudyとCHSstudyの参加者
    ARIC:15439人、45〜64歳、女性55.2%、黒人26.6%
    CHS:5479人、65歳以上、女性55.2%、黒人15.4%

E:心房細動あり

C:心房細動なし

O:主要アウトカム;医師が診断した心臓突然死(心室性不整脈由来の無脈状態)=SCD
副次アウトカム;突然死のクライテリアに合致しない冠動脈疾患死=NSCD

結果:
1)ARICでは13.1年間に心房細動894人、SCD269人、NSCD233人

2)ARIC:SCD;AF群2.89/1000人年。非AF群1.30/ 1000人年

3)ARIC:心房細動のハザード比;CSD3.26、NSCD2.43

4)CHS:SCD;AF群12.0/1000人年。非AF群3.82/ 1000人年

5)CHS:心房細動のハザード比;CSD2.14、NSCD3.10

6)両者のメタ解析;心房細動のハザード比;CSD2.47、NSCD2.98

結論:心房細動の出現は一般住民の心臓突然死、非心臓突然死のリスク増加に関係した。さらなる研究必要

###心房細動は、ハザード比2.5くらいで突然死を増加させるとの結論です。Framingham研究では、確か既存の心房細動は、予後規定因子にはならないとされていたと思いました。突然死は増やすのでしょうか?
心房細動の定義、コホート研究であることの交絡因子など、患者背景など検討すべきポイントは多々あります。

一般的には心房細動→心機能以下→心室性不整脈の増加、の図式が考えられますが、ハザード比が2倍以上となるほど、心房細動患者に心室性不整脈が多いのかも疑問です。

全文入手後また検討します。
by dobashinaika | 2012-11-27 22:54 | 心房細動:リアルワールドデータ | Comments(0)

アピキサバンは、高度腎機能低下例でワーファリンに比べて大出血が少ない:ARISTOTLE試験サブ解析

European Heart Journal 11月号より

Efficacy of apixaban when compared with warfarin in relation to renal function in patients with atrial fibrillation: insights from the ARISTOTLE trial
Eur Heart J (2012) 33 (22): 2821-2830.

腎機能別に見たワーファリンに対するアピキサバンの効果:ARISTOTLE試験サブ解析

P:ARISTOTLE試験参加者:GER別のサブ解析
GFRはCockcroft–Gault式およびChronic Kidney Disease Epidemiology Collaboration (CKD-EPI)式を使用

E:アピキサバン

C;ワーファリン

O:脳卒中/全身性塞栓、全死亡、大出血

結果:
1)Cockcroft–Gault式によるGFRは>80ml/分=42%。50〜80=42%、50未満=15%

2)心血管イベント&出血は腎機能低下例(80未満)でより高い

3)アピキサバンは、腎機能にかかわらず脳卒中/全身性塞栓、死亡率減少でワーファリンより効果的。この結果は腎機能の評価法によらず。

4)アピキサバンはすべてのeGFRでベルを超えて、大出血を減らす

5)大出血のハザード比はeGFR50未満の例でより大きい:Cockcroft–Gault式で0.50、CLD-EPI式で0.48
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結論;心房細動では、腎機能低下が心血管イベントや出血増加と関係。アピキサバンは、ワーファリンに比べ脳卒中、死亡、大出血を、腎機能にかかわらず減少させる。腎機能低下症例において、アピキサバンの出血減少傾向が最も大きい

### CKD-EPI式は以下の通りです。色々と補正して有ることしかわかりません。
GFR (mL/min/1.73 m2) = 141 × min(Scr/κ, 1)α × max(Scr/κ, 1)−1.209 × 0.993Age × 1.018 (if female) × 1.159 (if black), where κ is 0.7 for females and 0.9 for males, α is −0.329 for females and −0.411 for males, min indicates the minimum of Scr/κ or 1, max indicates the maximum of Scr/κ or 1, and Scr is expressed in mg/dL

この論文の主要所見は2つです
1)アピキサバンは、ワーファリンに比べて、腎機能にかかわらず、脳卒中/全身性塞栓、大出血を減らした。
2)大出血は、腎機能低下例(GFR50未満)の患者においてアピキサバンの有意セガ最大だった

興味深いのはもちろん2)です。リバーロキサバンでも致死性出血は、腎機能低下例で有意にワーファリンより良かったという結果があったかと思います。ダビガトランではそういう傾向はありませんでした。
http://dobashin.exblog.jp/13427434/

ワーファリンは引用の図にもあるように、腎機能低下とともに出血を増加させることが最近問題になっていますね。肝代謝なのに意外ですね。

出血傾向と腎機能は密接な関係にあって、腎機能低下は血小板機能やvW因子の低下、尿毒症毒素の出現などで出血傾向を助長させるとEditorialで指摘されています。
Apixaban in renal insufficiency: successful navigation between the Scylla and Charybdis
Eur Heart J (2012) 33 (22): 2766-2768.


ワーファリンはそれに加えて、腎機能低下によりCYP活性の低下や蛋白結合率の変化を受けやすいため、出血が増えることが指摘されています。

ワーファリンの持つ腎機能低下時の弱点と、新規抗凝固薬の持つ腎排泄率とのせめぎあいで、腎機能低下時にワーファリンに勝つかどうかが決まるのでしょう。

Editorialでアピキサバンの腎機能低下時例の管理は“successful navigation between the Scylla and Charybdis”と例えられています。“between the Scylla and Charybdis“というのは、ギリシャ神話に出てくる、メッシーナ海峡に住む海の魔物で、漁師たちがこの二匹の真ん中でぎりぎりの航路をとって通ることから「進退窮まって」というイディオムになっているようです(Wikipediaより)

これまではワーファリン管理が、まさにbetween the Scylla and Charybdisというにピッタリだったわけですが。。新規抗凝固薬でも、やっぱり簡単ではないということがこの表現からにじみ出ていますね。
by dobashinaika | 2012-11-26 23:47 | 抗凝固療法:アピキサバン | Comments(0)

ダビガトランの使用法についての網羅的総説:Circulation誌より

Circulation 11月13日号、Clinical Updateより

Periprocedural Management and Approach to Bleeding in Patients Taking Dabigatran
Circulation.2012; 126: 2428-2432


ダビガトラン服用中の手術および出血をきたした場合の管理と対処

症例:78歳男性。心房細動、高血圧、2年前脳梗塞、ダビガトラン150mx2服用中。血便と下血を主訴に救急外来受診。12時間以内にダビガトラン服用。Hb5.9、血小板18.5万、CCr26、aPTT83秒、TT150秒以上。この患者をどう管理すればよいか

【RE-LY試験のアウトカム】
・ 18113人対象。ワーファリン対照
・ 150mgx2:脳卒中/全身性塞栓1/3減少。大出血同等
・ 110mgx2:脳卒中/全身性塞栓同等。大出血1/5減少
・ 両用量とも:頭蓋内出血2/3減少
・ 脳卒中減少は全サブグループで同等
・ 75歳以上:頭蓋外出血増加

【患者選択】
・ 1つ以上のリスクを有する心房細動の大多数
・ 絶対的禁忌に乏しい
アメリカではCCr15未満、他国では30未満
・ 腎機能のチェック必要(C-G式で)
・ 米国以外ではP-糖蛋白阻害または誘導薬は注意必要

【用量選択】
・ 米国では150x2が最も効果的で大多数に最適
・ 他国では75または80歳以上やCCr30-50で110x2
・ 米国ではCCr15−30,CCr30-50でP糖蛋白阻害薬服用者で75x2認可

【モニタリング】
・ 一般的に必要なし
・ 緊急時の服用の有無の評価、治療介入のタイミング決定、アドヒアランス評価、脳梗塞、出血の原因検索のためにモニタリング必要

・ aPTTがダビガトランの有無の評価に有用
・ 血中濃度250ng/ml以上でaPTTはプラトーになること、試薬や計測器に影響されることはあるが、正常なaPTTはダガトランが明らかな効果の欠如を示す。服薬後8〜12時間で対象の2.5倍以上の延長は過剰を示唆する。
・ 腎機能低下とともに半減期、ピークaPTT値、正常回復までの時間は延長または上昇
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・ TTも延長するが、感度が良すぎて微量のダビガトランでも反応してしまう。しかし正常なTTはダビガトランの完全な不足を意味する。PT/INR比はダビガトランの効果予測には適さないので、モニターとして用いられない。ただし、ダビガトラン高濃度ではaPTT,PT-INR両者が延長する。

・ 希釈TT(Hemoclot)は校正により正確にダビガトラン濃度を反映する。Hemoclotはカナダ、ヨーロッパでは利用可能だが米国では不認可。エカリン凝固時間も血中濃度同定に有効だが、現時点では研究段階。

・ 採血のタイミングが鍵。服薬2時間以内の値が、8~12時間後の値の2倍であるはず。出血のない段階では、トラフ値がベストの評価法である。

【周術期の管理】
・ 歯のクリーニング、抜歯、皮膚生検、白内障手術で中止の必要なし
・ これらは服用10時間以上後に行うべき
・ 出血の中高リスクのある手技では、一定期間中止すべきで、中止期間は腎機能に依存
・ 中リスク手技では半減期の2〜3倍の期間中止、高リスク手技では4〜5倍の期間中止
・ 中リスク手技:ペースメーカー、ICD手術、大腸ポリペクトミー(特に不動性で広いベースを持ったもの)
・ 高リスク手技;泌尿器科手技(前立腺切除)、腹部、骨盤内臓のがん手術、関節置換術、心臓手術、脳神経手術
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・ ダビガトラン内服例の緊急手術:最終内服から半減期の1〜1.5倍の期間置いてから、またはaPTTが正常に近づいてからの施行が理想
・ ダビガトラン服用2〜4時間での手術は、出血リスク増大のため、減らす戦略が必要

・ ダビガトラン再開時期は出血リスクによる
・ 術後24時間以内に再開できなければ血栓予防策を講じるべき
・ 急性冠症候群治療の場合はヘパリンないし他の静注薬に変更すべき
・ できれば服用後半減期の1.5倍経過後か、aPTT1.5未満になったら始めるべき

【出血の治療】
・ 今のところ、中和薬はないが、ワーファリンに比べての出血リスクの少なさを考えると、そのことはダビガトランのベネフィットを阻害するほどの理由ではないように思える。

・部位と出血度による
・ 最後の内服時間から血中濃度のピークを予想できる。正常腎機能なら半減期12時間、24時間で四分の一
・ 鼻血、血尿なら十分止血されるまで内服を1—2回休む
・ 過剰内服が考えられる場合、内服2〜4時間以内なら活性炭が良い。確立されたものではないが

・ 中高度出血時:併用抗血小板薬中止、CCr、aPTT,Hemocrot測定

・ 利尿薬投与、適応あれば輸血(濃赤、新鮮凍結血漿、血小板)

・ 重篤で生命危機の場合:非特異的止血薬=プロトロンビン複合体製剤(PCC)、リコンビナント活性型VII因子考慮(ヒトでのエビデンスに乏しい))

・ 非活性型PCC(4つのビタミンK依存性凝固因子含む)をダビガトラン過剰うさぎに与えると、外傷による出血を中和でき、止血時間が回復したが、aPTTや他のマーカーは正常化せず。
・ この結果はひとボランティアへの投与治験でも同様で、PCCはaPTTに影響しない。
・ PCCの効果とaPTTには解離あり

・ ヨーロッパ、カナダと違い、米国ではVII因子以外の3因子製剤が使えるが効果は不明
・ 4因子製剤が使えるまでは、3因子製剤は凍結血漿と併用または低用量(15-30μg/kg)のノボセブン(リコンビナントVII因子製剤)を使用すべき
・ VIII因子阻害薬(FEIBA)、活性型PCC,常用量のノボセブンもよりよい選択かもしれない
・ どの場合も治療開始30分は待つこと
・ 血栓合併の危険があるので重篤出血例に限定すべき
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・ダビガトランはアルブミン結合率35%なので透析、血液濾過可能
・ この方法は腎機能低下で重篤出血時に限る
・ 4時間の透析で40〜65%除去できる

この症例の解答
・ この例では腎機能低下がダビガトランの蓄積を半減期延長を招いた
・ ダビガトランは中止し、濃赤8単位、血小板12単位、新鮮凍結血漿10単位、クリオプレシピテート8単位輸血
・ 出血最中なのでPCC40単位/kg投与
・ その結果患者な安定し、ダビガトラン投与量を75mgx2に減らして退院した
・ 腎機能の定期評価を予定され、その後出血なし

### ほぼ現時点でのダビガトラン使用法の総説となっています。相当良くまとまっていていろいろと網羅されています。これを読むとHemocrotが今後注目ですね。エッセンスのみ書こうと思いましたが、休みで時間があったこともあり、途中でやめられなくなったので全文訳してしまいました。もし研修医の先生が読んでいたら、まず原文から読んでください。
by dobashinaika | 2012-11-26 00:49 | 抗凝固療法:ダビガトラン | Comments(0)

新規抗凝固薬は計算上ヨーロッパの人々を年間2〜6万人救う

Thrombosis and Haemostasis 11月22日オンライン版より

Potential net clinical benefit of population-wide implementation of apixaban and dabigatran among European patients with atrial fibrillation
http://dx.doi.org/10.1160/TH12-08-0539


論文から割り出した、アピキサバンとダビガトランの仮想上のネットクリニカルベネフィット

【対象】EuroHeart Survey on AF (EHS-AF)に登録した高リスク(CHA2DS2-VAScスコア2点以上)非弁膜症性心房細動患者3400人:女性39%、平均67歳、CHADS2スコア平均3点。

【方法】大規模試験のハザード比を登録患者に当てはめ、更に全ヨーロッパに適応してネットクリニカルベネフィット、NNTを算出

【結果】
1)血栓塞栓症:108人3.2%、大出血51人1.5%、死亡146人4.3%

2)アピキサバン;ワーファリン、アスピリンに比べて死亡17人、脳卒中27人、大出血8人を減少させる

3)ダビガトラン150mgx2;ワーファリン、アスピリンに比べて脳卒中を34人、減少させる

4)ダビガトラン110mgx2; ワーファリン、アスピリンに比べて脳卒中を16人、大出血を6人減少させる

5)全ヨーロッパにこのデータを当てはめた場合の絶対心血管イベント+死亡減少
アピキサバン:64573人/年
ダビ150x2:43235人/年
ダビ110x2:27272人/年

【結論】アピキサバン、ダビガトランは、このモデルによれば、ヨーロッパの心房細動患者に脳卒中、大出血において、十分なネットクリニカルベネフィットを提供する。

### あくまで論文の数値を、実臨床に当てはめたシミュレーションの数字です。他の同様の検討と同様、計算上はアピキサバンが一番良いようですね。
全ヨーロッパのポピュレーションに当てはめるというのがすごいです。
それにしても最近ヨーロッパ勢からの、新規抗凝固薬イチオシデータが目白押しです。メーカーの所在地と関係は?(アピキサバンは米国ですが)
by dobashinaika | 2012-11-24 19:45 | 抗凝固療法:比較、使い分け | Comments(0)

非ビタミンK阻害抗凝固薬のワーファリンと比較したNNTなど

Stroke 11月13日オンライン版より

Nonvitamin-K-Antagonist Oral Anticoagulants in Patients With Atrial Fibrillation and Previous Stroke or Transient Ischemic Attack
A Systematic Review and Meta-Analysis of Randomized Controlled Trials
doi: 10.1161/ STROKEAHA.112.673558


非ビタミンK抗凝固薬の二次予防に関するメタ解析

【方法】
・ 47試験、14527例、脳卒中/TIA既往のある心房細動患者対象、無作為化試験対象

【結果】
1)ワーファリンに比べ脳卒中/全身性塞栓減少:オッズ比0.85 (0.74-0.99)、相対危険減少14%、絶対危険減少0.7%、NNT134(1.8〜2.0年追跡)

2)ワーファリンに比べ大出血減少;オッズ比0.86 (0.75-0.99)、相対危険減少13%、絶対危険減少0.8%、NNT125(1.8〜2.0年追跡)

3)頭蓋内出血は特に減少:オッズ比0.44 (0.32-0.62)、相対危険減少57.9%、絶対危険減少0.7%、NTT139(1.8〜2.0年追跡)

【結論】
異なる試験の比較という限界を鑑みても、二次予防においてはワーファリンに比べて、脳卒中、全身性塞栓、出血性脳卒中、大出血を明らかに減らすと考えられる。

### 興味深い数字が出ています。ワーファリンに比べてNNTが120〜140。この数字をどうとらえるか。脳卒中と出血とを合わせればなかなかに高いのではないかとも思いますし、そんなもんかという気もします。二次予防患者さんの場合、ワーファリンを130人くらい出している外来でそれを全部新規抗凝固薬に変えると脳卒中、出血から2年くらいで1〜2人救えるというわけですね。もちろんメタ解析なりの様々な制限“In the context of the significant limitations of combining the results of disparate trials of different agents”を踏まえてですが。大雑把な目安にはなります。
by dobashinaika | 2012-11-22 23:16 | 抗凝固療法:比較、使い分け | Comments(0)

新規抗凝固薬3薬の一次予防、二次予防別間接比較。

BMJ 11月5日オンライン版より

Primary and secondary prevention with new oral anticoagulant drugs for stroke prevention in atrial fibrillation: indirect comparison analysis
BMJ 2012; 345 doi: http://dx.doi.org/10.1136/bmj.e7097


新規抗凝固薬の一次予防、二次予防別の間接比較

【方法】
・ アピキサバンvs. ダビガトラン、アピキサバンvs. リバーロキサバン
リバーロキサバンvs. ダビガトランの大規模試験による間接比較
・ 二次予防、一次予防別に解析


【結果】
1)二次予防:アピキサバンvs.ダビガトラン、リバーロキサバン
・アピはダビ150mgより心筋梗塞少ない(ハザード比 0.39, 0.16~0.95)
・効果や出血などのほとんどの指標は同じ

2)二次予防;ダビガトラン110mgvs. リバーロキサバン
・ダビはリバーロより出血性脳卒中、血管死、大出血、頭蓋内出血が少ない

3)一次予防;アピキサバンvs.ダビガトラン
・アピはダビ110より致死性脳卒中少ない
・アピはダビ150より脳卒中多く、大出血、消化管出血、他の部位からの出血が少ない

4)一次予防;リバーロキサバンvs. ダビガトラン、アピキサバン
・リバーロはダビ110より心筋梗塞少ない
・主要効果、安全性においてリバーロとダビ150、アピは同等
・ アピはリバーロに比べで大出血が少ない

【結論】
・ 二次予防においては3剤は主要エンドポイントにおいて同等
・ 出血性脳卒中、血管死、大出血、頭蓋内出血はダビガトラン110x2において、リバーロキサバンにくらべ少ない
・ 一次予防では3剤とも同等の結果
・ Head to head が今後必要

### 以下のブログで取り上げた、Lip先生たちによる間接比較の二次予防版です。リバーロとダビ110の比較などは同じような結果です。
http://dobashin.exblog.jp/15313418/

新規抗凝固薬3剤比較は以下も参照
http://dobashin.exblog.jp/15684086/

要はガチンコ勝負待ちということですね。
by dobashinaika | 2012-11-21 23:08 | 抗凝固療法:比較、使い分け | Comments(0)

抗凝固薬の適応、腎機能を評価する上で便利なアプリ

抗凝固薬の適応を考えるときの各種スコア、クレアチニンクリアランスなどを評価計算するのに、便利なiPhone,iPad向けのアプリです。

https://itunes.apple.com/jp/app/id577034909
http://market.yahoo.co.jp/app/ipn/details/577034909

バイエル薬品の提供によるもので、イグザレルト用になっていますが、他の薬の処方時にも広く使えるものと思います。

メーカさんによる計算機もありますが、日本語でのこうしたアプリが一番便利だと思います。

ご参考まで。
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by dobashinaika | 2012-11-21 08:48 | 抗凝固療法:全般 | Comments(0)

心房細動のタイプと心筋の線維化とは関係がある

JACC 11月7日オンライン版より

Diffuse Ventricular Fibrosis in Atrial Fibrillation
Noninvasive Evaluation and Relationships With Aging and Systolic Dysfunction
J Am Coll Cardiol. 2012;():. doi:10.1016/j.jacc.2012.07.065

MRIを用いた左室の線維化と心房細動との関係に関する検討

P:心臓MRI(1.5T)施行例90例

E:発作性40例、持続性27例

C:対照例23例

O:post-contrast T1 relaxation time (T1 time)

結果:
1)年齢に有意差なし

2)左房容積:持続性で有意に大 (持続性55 ± 18 ml vs. 対照41 ± 12 ml and 発作性47 ± 14 ml)

3)左室EF:持続性で有意に大 (54 ± 10% vs. 65 ± 6% and 61 ± 8%)

4)T1 time;各群間で有意な差あり。(対照群 535 ± 86 ms; 発作性 427 ± 95 ms; 持続性 360 ± 84 ms; p < 0.001)

5)予測能;年齢、性別、心房細動タイプ、EF、左室重量、心不全、BMIのうちT1 tiemと独立に相関したのは年齢、心房細動タイプ、EF

結論;T1 timeは心房細動症例のびまん性の左室線維化を同定し、心房細動を心筋リモデリングの関係に新たな視点を提供する

### MRIの知識は殆どありませんが、確かT1強調画像ではT1時間が短いほど信号が強かったのだと思いました。信号が強いほど、線維化が強いと考えると、T1時間が短いほど線維化が強いということが言えます。対照群→発作性→持続性となるほど、左室の線維化が強かったということを実際の画像において示した論文と言えます。

①心房細動→心筋線維化、か②心筋線維化→心房細動、かが問題です。Editorial
では因果関係の検討を行い、①の可能性はあるが、要検討としていました。全くの対照群に比べいわゆるlone AFも線維化が認められることなども考えると、やはり細動が悪さしていると考えたい気がします。

持続性心房細動の中では持続化してからの期間、平均心拍数などにより違いはあるのかも興味深いところです。

心房の線維化とMRI画像との関連を示す論文はこちら
http://dobashin.exblog.jp/12084005/
by dobashinaika | 2012-11-19 19:16 | 心房細動:リアルワールドデータ | Comments(0)

なぜ薬はモニタリングしなければならないのか?

さすがに4日もブログを更新しないでいると、心配される方もおられますでしょうか(おられたら嬉しい限りです!)。自分でも更新しないとなんとなく落ち着きません。論文を読むほどの時間が取れなかったので、たまたま思い浮かんだことなど、連ねます。

抗凝固薬でそもそもなぜモニタリングするかということです。治療薬物モニタリング(TMD)をウィキペディアで調べて自分なりにデフォルメすると以下の様な理由があるようです。

1.薬の治療域が狭く、治療域と中毒域が近い
2.薬が効いているかどうかわからない
3.過剰投与による副作用が重篤
4.出血時、手術施行時等で何らかの介入または中止が必要な場合
5.患者の服薬アドヒアランス確認と向上


ワルファリンは理由1の最たるもので、これを払拭するために登場したのがダビガトランです。ダビガトランは当初モニターしなくて良い、採血しなくて良いとの触れ込みで登場しました。たしかに大規模試験のような理想的な状態であれば理由1は克服できるかもしれません。

でもやっぱりモニターは必要でした。ブルーレターで騒がれたからかもしれません。モニターでこれほど騒いでいるのは日本だけということも聞いたことがあります。

しかしながら、降圧薬、糖尿病薬、脂質低下薬、尿酸低下薬、骨粗鬆症薬等々いわゆる予防薬のたぐいは「イベントが起こらないこと」がアウトカムなので、その効果をわれわれは実感することができません。せめて「ある数値以上、あるいは以下になった時、プラセボに比べてイベントが少ない」ということがわかっていないと落ち着いて治療も出来ません。上記理由2は世の予防薬に通底する本質です。

更に抗凝固薬には「大出血」という恐ろしい副作用があります。いくら治療域が広く出血リスクは低いと言われても、インパクトが高ければ、われわれは予測しないでいられません。なんせモニターの語源は「モンスター」と同じなのですから(理由3)。

理由4に述べたように、もし万が一リスクが発生した場合のリスクヘッジにも有用です。どの時点で中和薬を投与するか、服薬を中止するか、その目安が緊急時には是非必要です。ダビガトランというのはこの点悩ましい薬です。たとえば降圧薬なら、血圧が非常に高値または低値になったら増減、追加、変更が自在に可能です。しかしダビガトランは用量が2つしかありません。あとはワーファリンです。モニターできるということは、それだけリスクヘッジも十全にできるという条件を我々に突きつけます。ワルファリンも使えるようになることが、ダビガトランをうまく使いこなす秘訣と言えます。

さて、ここまで見て、私としては、一番重視したいのは理由5です。血圧を測る、HbA1cを測る、体重を測る。モニタリングとはこのように治療効果を「見える化」することにほかなりません。モニタリングは患者さんに治療に対するモチベーションや安心感を持ってもらうツールです。このことこそ日々の診療における「マーカー」の大きな存在理由だと思います。マーカーは患者さんと医師の共通言語と考えられます。

であるので、新規抗凝固薬にはぜひとも、良いマーカーがほしいのですね。哲学的な意味でも、リスク管理の意味でも、コミュニケーションの視点からも。

このあたりのことも含め、先週のCirculation誌の
Clinical Updateに詳しい記事があります。そのうちまとめて紹介します。
Periprocedural Management and Approach to Bleeding in Patients Taking Dabigatran
Circulation. 2012; 126: 2428-2432

by dobashinaika | 2012-11-19 00:35 | 抗凝固療法:全般 | Comments(0)


土橋内科医院の院長ブログです。心房細動やプライマリ・ケアに関連する医学論文の紹介もしくは知識整理を主な目的とします。時々日頃思うこともつぶやきます。


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