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ダビガトランの上部消化管副作用についてのRE-LY試験サブ解析

Clinical Gastroenterology and Hepatology 10月24日オンライン版より

Analysis of Upper Gastrointestinal Adverse Events Among Patients Given Dabigatran in the RE-LY Trial
doi:10.1016/j.cgh.2012.10.021


RE-LY試験の上部消化管副作用についてのサブ解析

P:RE-LY試験の登録患者(非弁膜症性心房細動)

E:ダビガトラン群

C:ワーファリン群

O:上部消化管症状を4群に分ける
1)逆流性食道炎
2)上腹部痛+上腹部不定愁訴(dyspepsia)
3)消化管運動不全(dysmotility)
4)胃十二指腸障害
それら非出血性上部消化管副作用の頻度、タイミング、重症度、臨床的意義

結果:

1)頻度:ダビ群16.9%vs.対照群9.4%(1.66%–1.97%; P<.001)

2)ダビガトラン用量による症状の差なし

3)症状の程度:mild46.3%、moderate44.1%、severe8.9%=対照群でも同じ

4)ダビ軍では対照群に比べ、逆流性食道炎の症状が最も多い(RR=3.71; 95% CI, 2.98%–4.62%; P<.001)

5)副作用による服用中止:ダビ群のRR2.34(1.90%–2.88%; P<.001):対照群は1.7%

6)非出血性上部消化管副作用のある人は大出血が多い:ダビ群vs.対照群(6.8% vs 2.3%, P<.001)

結論;ダビガトラン服用患者の非出血性上部消化管副作用は、軽度または中等度 (21.7ヶ月で服用中止4%)。これらの知見は服薬管理と予防戦略に活かすべき。

### 日本人では2割くらいで多いと言われるダビガトランの副作用ですが、当院では、それほど多くないという印象です。服薬時コップ一杯十分な水をのむこととでかなり軽減される印象があります。
コデまで服薬中止は約50例で1人のみです。

患者さんへの説明でも、あまり強調し過ぎないほうが良いかもしれません。
by dobashinaika | 2012-10-31 18:40 | 抗凝固療法:ダビガトラン | Comments(0)

心臓再同期療法での心房細動評価による心不全のリスク予測

American Heart Journal 10月号より

Burden of atrial fibrillation and poor rate control detected by continuous monitoring and the risk for heart failure hospitalization
American Heart Journal
Volume 164, Issue 4 , Pages 616-624, October 2012


心臓再同期療法での両心室ペースメーカー(CRTD)による持続モニタリングによる心房細動累積時間、リズムコントロールと心不全リスクの関係に関する検討

【方法】
・ CRTD(90日以上の追跡期間)患者対象の4試験のメタ解析
・ 5分以上の心房細動1日以上、かつトータル1時間以上の心房細動
・ 3グループ
グループ1:8時間以上の発作性心房細動1日以上または30日以上続くレート90/分以上の持続性心房細動
グループ2:レート90以下の発作性心房細動累積1日以上
グループ3:発作性心房細動累積6時間未満またはレート90以下の持続性心房細動

【結果】
1)心房細動(519人,33%)は、心房細動なしに比べ心不全リスクが高い(ハザード比2.0)

2)グループ2は3に比べ、次期30日間での心不全入院リスクが高い(ハザード比3.4)

3)グループ1はさらにリスクが高い(ハザード比5.9)

【結論】CRTDでの心房細動の有無および心拍数評価が、その後の心不全リスク同定に有効。

### CRTDの適応となるよう患者さんの心不全の予測に心房細動の出現、とくに発作性心房細動の累積時間が参考になるとのことです。また持続性心房細動ではレート90以上だと心不全リスクが高いというのもの知見です。

RACEII試験では、心拍数は110くらいにコントロールしても予後に変わりないとのことでしたが、やはりCRTDの適応となる心不全例では、速いレートはハイリスクなのでしょう。
http://dobashin.exblog.jp/10211952/
by dobashinaika | 2012-10-30 23:43 | 心房細動:ダウンストリーム治療 | Comments(0)

心房細動患者の出血リスク評価

Circulation: Arrhythmia and Electrophysiology 10月号より

Assessing the Risk of Bleeding in Patients With Atrial Fibrillation
The Loire Valley Atrial Fibrillation Project
Circulation: Arrhythmia and Electrophysiology.
2012; 5: 941-948

心房細動患者の出血リスクについて実臨床での検証報告

P:2000~2010年に(イギリスの)4つの医療施設で診断された非弁膜症性心房細動患者7156人

E/C:HAS-BLEDスコアの各因子 

O:各因子のC-統計量、NRI(下記参照)

結果;
1)ビタミンK阻害薬使用:中リスク者(HAS-BLED1〜2点);59.8%、高リスク者(3点以上);50.1%、低リスク者(0点);46.4%

2)HAS-BLED3点以上は、出血や全死亡と同様、脳卒中/血栓塞栓症や脳卒中/血栓塞栓症/死亡においても高リスクであった。

3)多変量解析では、75歳以上、65歳以上、アルコール過剰、貧血、心不全が出血の独立危険因子

4)各因子とも、ビタミンK阻害薬の有無にかかわらず、c統計量0.6前後

5)HAS-BLEDは他のどのスコアに比べも、Net reclassification improvement (NRI=他のスコアリングにしたときどのくらいpredictive probabilityが変化するか)は、顕著に改善した

結論:現在の抗凝固薬処方状況は、医師による出血リスク評価が不十分であり、経口抗凝固薬の処方それ自体は出血リスクを反映していないことを意味する。
HAS-BLEDスコアは他のスコアより出血予測に優れ、HAS-BLEDスコアに分類しなおした時の予測能を明らかに改善した。

### イギリス、バーミンガム大学のLip先生のグループからの報告です。
HAS~BLEDスコアの7因子のうち3つはCHA2DS-VAScスコアの因子でもあるので、HAS-BLED3点以上でもワーファリン処方率50%と言うのは低すぎる気もします。

その中でも年齢、アルコール、貧血、心不全が重要のことです。HAS−BLEDは年齢、脳卒中以外、「努力による改善しうる因子」が多数ですので、なるべくアルコールを控え、貧血と心不全を改善すれば出血リスクが減ることが示唆されます。

確かにHAS-BLED3点以上というのは、我々もう少し意識していいかもしれません。

HAS-BLEDスコアはこれです。
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by dobashinaika | 2012-10-29 23:34 | 抗凝固療法:適応、スコア評価 | Comments(0)

心房細動と認知症の関係についてのメタ解析

Heart Rhythm11月号より

Atrial fibrillation and the risk of incident dementia: A meta-analysis
Heart RhythmVolume 9, Issue 11 , Pages 1761-1768.e2, November 2012


心房細動と認知症の関係に関するメタ解析

【方法】
・ 1980〜2012年までの論文
・ 8試験77,668人対象
・ 全て前向き観察研究、平均年齢61〜84歳、認知機能正常者
・ 心房細動患者15%
・ 平均7.7年追跡

【結果】
1)認知症新規発症:6.5%
2)認知症リスク増加に対する心房細動のハザード比1.42(1.17-1.73), P<0.001

【結論】心房細動は認知症に関係あり。心房細動患者はときどき認知症スクリーニングをすべきで、大規模試験のアウトカムにも入れるべき。

### ONTARGET試験、TRANSCEND試験のサブ解析は既に当ブログで取り上げました。
http://dobashin.exblog.jp/14837157/

1.4倍というのは高い数字です。

認知症関連タンパクと心房リモデリング関連タンパクに共通性があったりしたら面白いですね(全くの素人発言ですみませんw)。
by dobashinaika | 2012-10-26 22:48 | 心房細動:リアルワールドデータ | Comments(0)

日経メディカルオンライン連載更新しました。「ワルファリンの用量調節は意外に”機械的”」

日経メディカルオンライン連載第7回、本日更新いたしました。
今回は「ワルファリンの用量調節は意外に”機械的”」です。

”機械的”としたところがミソです。ワーファリンの調節方法は医者の数だけあるといってもいいかもしれません。各人各医師が、己の経験則と信念に基づいて、毎回のINRの数値ごとにある程度機械的に調節しているというのは、言えるのではないかと思います。

ただしそこから逸脱する例がどうしてもある。そこを新規抗凝固薬で補えるか、というのが今日的な課題かもしれません。

ご笑覧、ご批判いただければ幸いです。

http://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/mem/pub/series/odakura/201210/527139.html
(要無料登録)
by dobashinaika | 2012-10-25 23:11 | 抗凝固療法:全般 | Comments(0)

発作性心房細動における初期治療としてのカテーテルアブレーション:MANTRA-PAF試験より

NEJM10月25日号より

Radiofrequency Ablation as Initial Therapy for AF
N Engl J Med 2012; 367:1587-1595


発作性心房細動における初期治療としてカテーテルアブレーションと抗不整脈薬の無作為割付比較試験(デンマーク):MANTRA−PAF試験

P:抗不整脈薬服用歴のない症候性の発作性心房細動294例

E:カテーテルアブレーション146人

C:Ic,III群抗不整脈薬148人

O:
一次エンドポイント:受診時の心房細動の負担(ホルター心電図に占める心房細動の割合)および累積の負担:7日間ホルター+3,6,9,12,18,24ヶ月後のホルター心電図により解析。ITT解析

結果:
1)累積心房細動時間(90パーセンタイル):13%vs.19%(6,12,18ヶ月) 有意差なし

2)24ヶ月後の累積時間;アブ群9%vs.薬群18%、P=0.007
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3)心房細動フリーになった患者:アブ群85%vs.薬群71%、P=0.004

4)症候性心房細動フリーになった患者:アブ群93%vs.薬群84%、P=0.01

5)死亡;アブ群1例:手技に関連した脳卒中

6)心タンポナーデ:アブ群で3例

7)アブレーション追加;薬群で54例36%

結論:発作性心房細動の治療法第一選択として、アブレーションを抗不整脈薬と比べると、2年間での累積心房細動時間は両者で有意差はなかった。

### 「カテーテルアブレーションは心房細動治療の第一選択となりうるか?」いいかえれば「薬剤抵抗性ではない、抗不整脈薬を使っていない心房細動患者にいきなりカテーテルアブレーションを施行して良いか?」という、極めて今日的な問いへの答えを出そうとしたのがこのMANTRA-PAF試験です。
現在日本を含めたどの国のガイドラインも、「薬剤抵抗性」「抗不整脈薬投与下」といったように、薬が効かない場合の2番手の治療としては推奨度Iがついています。第一選択としてのアブレーションは日本のガイドライン、最近のESC(ヨーロッパ)のガイドラインとも推奨度IIaとやや低い扱いとなっています。
http://www.j-circ.or.jp/guideline/pdf/JCS2011_okumura_h.pdf
http://eurheartj.oxfordjournals.org/content/early/2012/08/24/eurheartj.ehs253.full.pdf+html

この論文はその推奨度をIへと高める方向を推し進めるものかもしれません。

ただし、この論文の対象患者は全員70歳未満で基礎心疾患のない人です。
またこの論文では手技にまつわる合併症が4例認められましたが、抗不整脈薬の主要な合併症は心不全の2例のみでした。

この論文からは、このような比較的若年の症状の強い合併心疾患のない人のアブレーションは第一選択でもよさそうだということは少なくとも言えそうです。
ただし、結果として大幅に上回っているわけではありませんね。

長期にわたって副作用と再発を懸念しながらも薬を飲み続けるか、心タンポナーデその他の合併症リスクとこれまた再発をおそれつつもアブレーションを受けるか。そもそもこの選択は究極の選択のように思われます。薬の副作用リスクは長期に渡リつきまとうものである一方、アブレーションの合併症はその一時だけ発生するもの。そもそもそれぞれのリスクの質、カテゴリーが大きく違うため、我々にとって真に理性的に両者のリスクを秤にかけることは不可能であるといえるのかもしれません。

最近のアブレーション技術やデバイスの進歩はこのアンチノミーを解決してくれるような気もします。アブが薬を凌駕するイノベーションは起きるのでしょうか?

オマケ:MANTRA(=マントラ、真言)とは、仏教特に密教の呪文を意味します。アブレーションが「薬剤抵抗性心房細動」という呪文から解き放たれる日は近い?のかもしれません。
by dobashinaika | 2012-10-25 22:50 | 心房細動:アブレーション | Comments(0)

新規抗凝固薬の効果と安全性に関するシステマティックレビュー&メタ解析

Circulation10月15日オンライン版より

Efficacy and Safety of the Novel Oral Anticoagulants in Atrial Fibrillation: A Systematic Review and Meta-Analysis of the Literature
doi: 10.1161/ CIRCULATIONAHA.112.11541


新規抗凝固薬の効果と安全性に関するシステマティックレビュー&メタ解析

【方法】
・新規抗凝固薬vs.ワーファリンの第2相、第3相無作為割付試験(2012年7月まで)を対象とした12のメタ解析
・ダビガトラン3試験、リバーロキサバン4試験、アピキサバン2試験、エドキサバン3試験
・対象54,875人

【結果】
1)全死亡:新規vs.ワーファリン:5.61% vs 6.02%; RR 0.89; 95%CI, 0.83-0.96
2)心血管死:3.45% vs 3.65%; RR 0.89; 95%CI, 0.82-0.98
3)脳卒中:2.40% vs 3.13%; RR 0.77; 95%CI, 0.70-0.86)
4)大出血:RR 0.86; 95%CI, 0.72-1.02
5)頭蓋内出血:RR 0.46; 95%CI, 0.39-0.56
6)心筋梗塞;有意差なし

【結論】
新規抗凝固薬はワーファリンより全体的な臨床効果あり。さらなる検討必要。

### 同じようなメタ解析が最近AIMでも発表されています。
http://dobashin.exblog.jp/16068613/

これまでの検討とほぼ合致する内容です。対象試験の数が多ク、未発売薬の試験まで対象としていますね。
by dobashinaika | 2012-10-23 18:53 | 抗凝固療法:比較、使い分け | Comments(0)

アジア太平洋地域における抗凝固療法国別比較

Journal of Arrhythmia 2月号より

Fact-finding survey of antithrombotic treatment for prevention of cerebral and systemic thromboembolism in patients with non-valvular atrial fibrillation in 9 countries of the Asia-Pacific region
Journal of Arrhythmia Volume 28, Issue 1 , Pages 41-55, February 2012



非弁膜症性心房細動(NVAF)における脳卒中、全身性血栓塞栓症に関するアジア太平洋不整脈学会(APHRS)による9カ国からのウェブサーベイの結果

【方法】
・アジア太平洋の9か国:1施設最低月50症例抗凝固療法、5−35年の臨床経験
➢オーストラリア、中国、インド、日本、韓国、台湾、香港、ニュージーランド、シンガポール
・月300人以上の心血管患者を診ている医師対象、12%がNVAF
・各国50名のエントリーを上限。全医師数363名
・心房細動の75%がNVAF


【結果】
1)ガイドライン使用率
①ACC/AHA/HRS:オーストラリア、韓国、台湾
②ESC:中国、香港、ニュージーランド
③日本では日本のGL使用率36%
④77%以上がアメリカのガイドライン使用、自国のガイドラインは8%のみ

2)APHRS独自のガイドラインの必要性を感じるか:6点満点
平均4.3点、最高:中国5.0点、日本4.1点、最低:ニュージーランド3.4点

3)独自ガイドラインが必要な理由
①人種による差異
②西洋のガイドラインは不要
③西洋とアジアの医療システムの違い
④利用できる薬剤の違い
⑤西洋との心房細動患者の背景の違い

4)抗凝固薬の使用率
①日本79%(1位)
②オーストラリア、ニュージーランド、シンガポールは70%以上
③中国、韓国、台湾は40%前後
④インドは26%

5)抗血小板薬
投与されたものの中ではアスピリン最多

6)CHADS2スコア別(全体)
CHADS2スコア0点の63%、1点の49%で抗血小板薬

7)CHADS2スコア0点において
①日本:処方しない46%(1位)、ワーファリン28%(1位)
②他国は抗血小板薬が70〜80%で処方、日本は16%

8)CHADS2スコア1点において
①日本;ワーファリン46%、ダビガトラン26%、抗血小板薬20%
②他国:;ダビガトラン少ない、抗血小板薬が40〜70%

9)CHADS2スコア2点において
①どの国も70%以上に抗凝固薬
②インドのみ50%が抗血小板薬
③ニュージーランドは50%がダビガトラン、ワーファリンは36%

10)INR管理レベル
①概ね2〜3
②インドは1.4〜4.1
③日本は高齢者で低め

11)年齢によりINR目標を変えているか
①日本74%、中国80%、台湾76%
②オーストラリア、ニュージーランドは10~29%

12)発作性にも持続性と同様に抗凝固薬を処方するか
①ニュージーランド91%、日本74%
②中国50%

13)抜歯時
①日本:継続78%
②他国:継続2〜37%、中断が63〜96%

14)内視鏡、手術時
①中断;平均86%。ほとんど70−100%
②インドのみ56%

15)除細動時ワーファリン使用
発作性59%、持続性73%

16)薬剤の満足度(6点満点)
①ワーファリン3.8点、抗血小板薬3.8点
②効果、値段、エビデンスはワーファリン、使い勝手はアスピリン

17)新規抗凝固薬の認知度
ダビガトランが最多

18)ダビガトランの国別認知度
日本88%、韓国78%、台湾90%、中国72%、インド54%

19)ワーファリンに変えてダビガトランを処方する理由
1位効果、2位出血リスク3位処方しやすさ、4位薬剤相互作用、5位エビデンス、6位食事制限、7位副作用、8位値段

20)CHADS2か、CHA2DS2-VAScか
①日本:チャズ70%、バスク24%
②ニュージーランド:チャズ14%、バスク86%
③インド;チャズ21%、バスク59%
④他国:だいたい半々

21)TTRの認知度
平均43%、概ね35〜60%、日本40%

22)HASBLEDスコア認知度
平均57%、日本42%、インド、ニュージーランド、シンガポールは80%前後

### 以前から気になりながら長くて紹介できなかった論文です。非常に興味深い知見が目白押しです。

大まかに感じたのは次の点です。
1)日本は独自のガイドラインを持っているので、そのことが他国と異なった状況を生み出している
・抗血小板薬が殆ど使われない。
・CHADS0-1点でもアスピリンが使われず抗凝固薬が使われる
・抜歯における抗凝固薬継続率が圧倒的に高い
2)ニュージーランド、オーストラリアはINRの厳格管理やガイドラインへの考え方がアジア諸国と異なる
3)インドは、各部門、特に抗凝固薬使用率が他と大きく異なることが多い


こう見ていくと、これら9カ国をまとめあげて、ひとつのガイドラインを作成するのは、非常に敷居が高いようにも思えます。
欧米寄りのオーストラリア、ニュージーランド、やや異質なインド、そして他に先立ち独自のガイドラインを持ち、ある意味先進的な日本。
アジアというのは、欧米各国間のそれとは比較にならないほどの多様性を持つように思います。

ガイドラインの必要性についての理由としてethnicityが第一でしたが、上記9カ国こそ、欧米より人種民族的に多種多様です。

また例えば東アジアだけでガイドラインを作るにしても特に抗血小板薬に対する考え方に、今のところ大きな違いがあるように思われます。

なにより、地域独自のガイドラインを作るためにはJAST Studyのようなその地域独自のエビデンスがあって、初めてその独自性が発揮できると思うのです。
ガイドラインはエビデンスとリコメンデーションからなります。その両者に共通基盤が必要となります。エビデンスづくりがまず大切のように思います。
by dobashinaika | 2012-10-22 22:52 | 抗凝固療法:リアルワールド | Comments(0)

患者フレンドリーなペースメーカー手帳が欲しい;心臓ペースメーカー友の会第6回茶話会より

今日は、第6回となります、日本心臓ペースメーカー友の会宮城県支部茶話会に参加させていただきました。
今回は新入会員の方も多く、総数41名と多くの方にご参加いただきました。

いつも思いますのでは、やはり患者さんはなかなか聞きたいことがあっても、医師に遠慮して聞けないことが多々あるということです。
特に専門施設の先生はお忙しそうで、気を使ってしまうという声がどこのテーブルでも聞こえました。

もう1点、これも常に話題になることですが、ペースメーカー手帳の記載が患者さんには全くわからないということです。
ペースメーカー手帳は、患者さんの疾患名、ペースメーカーの種類、モード、ロット番号、心拍数や出力などの設定、刺激やセンシング閾値、リードインピーダンスなど多数の専門的情報が書き込まれています。
これらは、植え込み手術当初の初期設定値と、年1〜2回のペースメーカー外来でのチェックによるデータから成っています。そのほとんどが英語で書かれており、また大変専門的なデータです。

こうしたデータは患者さんが理解する必要のないものもありますが、設定心拍数やモード、ご自分の疾患名程度は理解しておく必要があると思われます。
こうした基本データだけでも、日本語で、患者さんがわかりやすい形で記載されるべきだと思います。
でなければ、手帳を患者さんが持っている理由は希薄です。(他の医療機関受診時、事故の際などのためもありますが)

少なくとも、患者さんに手渡している以上、何が書いてあるのかを知りたいと思うのは当然です。
以前も同様のことを申し上げていますが、今回やはりそのような声が多く、患者フレンドリーな手帳があれば良いとの思いを強くいたしました。
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by dobashinaika | 2012-10-21 22:43 | ペースメーカー友の会 | Comments(0)

一般住民における心房期外収縮の頻度とリスクに関する評価

Circulation 10月9日オンライン版より

Premature Atrial Contractions in the General Population: Frequency and Risk Factors
doi: 10.1161/ CIRCULATIONAHA.112.11230

一般住民における心房期外収縮(PAC)の頻度とリスク因子に関するスイスの横断研究

P:スイスの「大気汚染と肺疾患研究(SAPALDIA)」に登録し、24時間ホルター心電図を施行した50歳以上の1742例

E/C:PACの頻度

O:年齢その他の因子との関係

結果:
1)年齢別:1時間平均PAC数=50−55歳:0.8、55−60歳:1.1、60−65歳:1.4、65〜70歳:2.3、70歳以上:2.6 (p<0.0001)

2)18人0.1%で、ホルター上1個のPACも認められなかった

3)多変量解析によるPACの頻度との相関:年齢(リスク比/標準偏差1.80)、身長(1.52)、心血管疾患(2.40)、NT pro BNP(1.27)、1日2時間以上の運動(0.69)、HDLコレステロール(0.80)

4)高血圧、BMIはPAC頻度と無関係

結論;50歳以上の一般住民を対象とした心房期外収縮の初のリスク評価である。PACはありふれたものであり、その頻度は年齢、身長、心血管疾患の既往、BNP、身体活動、HDLコレステロールと関係あり。そのメカニズムは今後検討要。

### 横断研究なのでその後の心房細動の発症率との関係などの検討はありません。

確かに、高齢者、心臓病、心不全(BNP)は心房期外収縮と関係あるのは理解できます。高身長は、やはり左房容量が交絡因子になっている可能性があると思われます。
(最近高身長ほど心房細動が多いとの報告もありました。
http://dobashin.exblog.jp/16350245/)

運動や低HDLコレステロールがPACの少ないことに関連していることはにわかにはピンときません。

横断研究なので何の因果も言えませんが、でも50歳を超えると平均1時間1発PACが出ていると考えて良いと言うことは参考になります。

PACと心房細動の関係に関する検討ブログはこちら
http://dobashin.exblog.jp/14256183/
http://dobashin.exblog.jp/10498069/
by dobashinaika | 2012-10-19 22:48 | 心房細動:リアルワールドデータ | Comments(0)


土橋内科医院の院長ブログです。心房細動やプライマリ・ケアに関連する医学論文の紹介もしくは知識整理を主な目的とします。時々日頃思うこともつぶやきます。


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