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心房細動、静脈血栓塞栓症におけるワーファリンと新規抗凝固薬の比較に関するシステマティックレビュー

Ann Intern Med 8月28日オンライン版より

Comparative Effectiveness of Warfarin and New Oral Anticoagulants for the Management of Atrial Fibrillation and Venous Thromboembolism: A Systematic Review

心房細動と静脈血栓塞栓症の管理におけるワーファリンと新規抗凝固薬の効果比較に関するシステマティックレビュ

【方法】
・ ソース:2001〜2012年のMEDLINE,EMBASE,CochraneとFDAの副作用報告
・ ワーファリンと新規抗凝固薬を比較したRCTを2人のレビューアーが評価

【結果】
・ 6RCT(直接トロンビン阻害薬2,Xa阻害薬4)

・ 心房細動の死亡率;新規抗凝固薬で減少(相対リスク0.88;95%CI0.82-0.96)

・ 静脈血栓塞栓症の死亡率:新規抗凝固薬=ワーファリン

・ ワーファリンと比較した新規抗凝固薬の副作用
 ➢致死性出血(RR, 0.60 [CI, 0.46 to 0.77])
 ➢大出血(RR, 0.80 [CI, 0.63 to 1.01])
 ➢消化管出血(RR, 1.30 [CI, 0.97 to 1.73])
 ➢副作用による中止(RR, 1.23 [CI, 1.05 to 1.44])

・ 直接トロンビン阻害薬はXa阻害薬より心筋梗塞リスクが高い(サブグループ解析より)

・ 新規抗凝固薬の出血リスクは75歳以上あるいはワーファリンコントロール良好者(との比較)において増加する

【研究の限界】
新規抗凝固薬のhead-to-head試験がない。害についてのデータが限定的

【結論】
新規抗凝固薬は、抗凝固薬長期服用者にとっては重要なオプション。ワーファリンに比べてベネフィットは小さく、ワーファリンのコントロール状況に依存して変化する。

### 最後のワーファリンのコントロール状況によるというところが気になります。RE-LYのワーファリン群のTTRは64.4%ですので、このくらいの良好なコントロールでさえ有効性、安全性ともワーファリンを同等または上回っていました。

大阪大学の奥山裕司先生が常々ご指摘されているように、TTR10%低下ごとに脳卒中年間発症率は1%増加と言われていることから逆算すると、ダビガトラン150mgx2と同等の脳卒中予防効果を得るにはワーファリンTTRが79%が必要となってしまうことが知られています。
79%のTTR維持は並大抵ではありません。

ただ、、、、PT-INRの目標を年令に関係なく1.6〜2.6と設定してしまいますと、この数字は決して達成できない数字ではありません。

この際、声を大にして言いますが、日本ではたとえ70歳未満であってもINR目標値を1.6〜2.6で考えている先生が、実はほとんどではないかと思います。私の周りの循環器専門医に聞いても、そう考えている人が極めて多いのです。

今年3月のJ-RHYTHM RegistryのLATE Breakingでも、たしかそうした報告があったかと思います。

その意味でワーファリンコントロールについては、たとえ専門家と言えども、ガイドライン通りに行ってはいない、のです。

それでも日本においてはワーファリンによる塞栓症は欧米に比べ多いとはいえず、出血はむしろかなり少なめです。

今まであまり指摘されてこないことでしたが、RE-LYなどで新規抗凝固薬がワーファリンより出血が少ないと言われているのは、ワーファリン群でINR2~3を標的にした場合なのであって、日本のように全年齢で1.6~2.6を目指した治療が為されている場合、実はあまり新規抗凝固薬の出血リスクが低いというメリットはなくなる、と私、個人的には見ているのですが。。。

いつになく、ちょっとカゲキな展開になってしまったかもしれませんが、今更ながらワーファリンコントロールの大切さを考えさせられる論文でしたので。。。
by dobashinaika | 2012-08-30 23:58 | 抗凝固療法:比較、使い分け | Comments(0)

心房細動による入院増加に関係する因子:高齢化が主な要因

Am J Cardiol 8月10日オンライン版より

Factors Associated With the Epidemic of Hospitalizations Due to Atrial Fibrillation

心房細動による入院増加に関与する因子の検討

【対象】オーストラリアで、除細動、電気生理学的検査、カテーテルアブレーションのために1993年から2007年までに入院した患者約3億人年、473,501入院

【結果】
1)心房細動のための入院は203%増。一般の入院は71%増
2)増加率に精査はなかったが、高齢者の入院は増加
3)電気的除細動による入院は27%から14%に減少
4)電気生理学的検査とアブレーションによる入院の増加への寄与は最小限

【結論】
心房細動患者の高齢化に従い、高齢者の入院が増加した。対照的に治療手技の変化による入院率の増減はわずかだった。高齢者の心房細動患者への対策が入院率減少への施策として大切

### 過去14年間で心房細動による入院は2倍増え、その大きな理由は心房細動患者の高齢化であるというメッセージかと思います。アブレーションは、若い患者が多いため、増加率への寄与度が少なく、それを上回るほど、全体の高齢化率が上がったということかと思います。

日本では今後もっともっと、欧米を上回って増えるのだろうと思います。
by dobashinaika | 2012-08-29 16:10 | 心房細動:リアルワールドデータ | Comments(0)

新しいヨーロッパ心房細動ガイドラインの抗凝固療法推奨表一覧です。

新しいESC(ヨーロッパ心臓病学会)の心房細動ガイドライン紹介の続きです。
(HTMLでは推奨表が読めなかったのですが、PDFがあることに気が付きましたので)
http://eurheartj.oxfordjournals.org/content/early/2012/08/24/eurheartj.ehs253.full.pdf+html

◎ 非弁膜症性心房細動における血栓塞栓症予防に関する推奨
【一般】

・ 65歳未満かつ孤立性心房細動(男女とも)を除くすべての心房細動に対する抗凝固療法(推奨度I、エビデンスレベルA)

・ 抗凝固療法の選択は、脳卒中/血栓塞栓症、出血、ネットクリニカルベネフィットに基づいて行われるべき(I,A)

・ CHA2DS2-VAScスコアがリスク評価法としても推奨される(I,A)

・ CHA2DS2-VAScスコア0点(例:65歳未満で孤立性)に於いては抗凝固療法は推奨されない(I,A)

・ CHA2DS2-VAScスコア2点以上では、禁忌がなければ以下が推奨される(I,A)
➢INR2-3で調節されたビタミンK阻害薬(VKA)
➢直接トロンビン阻害薬(ダビガトラン)
➢経口Xa阻害薬(例:リバーロキサバン、アピキサバン)

・ CHA2DS2-VAScスコア1点では出血リスクと患者の好みの評価に基づいて以下を考慮すべき(IIa,A)
➢NR2-3で調節されたビタミンK阻害薬(VKA)
➢直接トロンビン阻害薬(ダビガトラン)
➢経口Xa阻害薬(リバーロキサバン、アピキサバン)

・ 65歳未満で孤立性心房細動の女性(CHA2DS2-VASc1点)は低リスクであり、抗凝固療法無しを考慮すべき(IIa,B)

・ 抗凝固薬(VKA,新規問わず)拒否患者の場合は、アスピリン(75-100mg/日)+クロピドグレル(75mg/日)(出血低リスク)または、あまり効果的でないがアスピリン単独(75-325mg/日)(IIa,B)

【新規抗凝固薬】
・ 抗凝固薬が推奨される場合で、治療域医事が困難、VKAの副作用、INRモニタリングが不可能といった理由でVKA(INR2-3)が使用不可の患者では、新規抗凝固薬が推奨される(I,B)

・ 抗凝固療法が勧められる場合、ネットクリニカルベネフィットに基づくと、新規抗凝固薬は調節されたVKAよりも、考慮されるべきである(IIa,A)

・ ダビガトランは150mgx2が、110mgx2に優先して推奨される。以下の場合は110mgx2が推奨(IIa,B)
➢80歳以上
➢交互作用のある薬(ベラパミルなど)
➢HAS-BLEDスコア3点以上
➢中等度腎障害(CCr30-49)

・ リバーロキサバンは20mg/日が、15mg/日に優先して推奨される。以下の場合は15mgが推奨
(IIa,C)
➢HAS-BLED3点以上
➢中等度腎障害(CCr30-49)

新規抗凝固薬開始においては投与前とその後の腎機能評価(CCrによる)が推奨される。中等度腎障害例では年2〜3回の頻度でより頻回で施行されるべきである。(IIa,B)

・ 新規抗凝固薬はCCr30未満には用いるべきでない(III,A)

【出血】
・ 抗凝固療法時には出血の評価が進められる(I,A)

抗凝固療法開始時はHAS-BLEDスコアを用い、3点以上は「高リスク」として何らかの注意と定期的な見直しが必要(IIa,A)

・ 修正可能なリスク(INR管理不良、併用薬、アルコールなど)に留意すべき(IIa,B)

・ HAS-BLEDスコアは注意すべき出血リスク因子の同定に使用されるべきであり、抗凝固療法の除外基準として用いるべきでない(IIa,B)

【除細動周術期】
・ 48時間を超えて持続する、除細動3週間以上前からのまたは持続期間不明の場合は調節されたVKAかダビガトランが推奨される。方法は問わない(I,B)

・ 脳卒中か心房細動再発のリスクのある患者では、抗凝固療法は、除細動後の洞調律維持にかかわらず、長きに渡り継続すべき(I,B)

### CHAD2DS2VAScスコア第一、HAS-BLEDスコア押し、新規抗凝固薬イチオシ.というのが基本姿勢ですね。

特に大事と思うところには下線を引いています。

I,Aの組み合わせだけ載せようとしたら、つい全部やってしましいました。
by dobashinaika | 2012-08-28 22:47 | 抗凝固療法:ガイドライン | Comments(0)

昨日発表されたヨーロッパの心房細動ガイドラインの一部アップデートは見るべきものが多い

現在ミュンヘンで開催されていますヨーロッパ心臓病学会2012で、心房細動ガイドラインの一部改定が発表されています。

抗凝固療法、左房閉鎖術、除細動のための抗不整脈、レートコントロール、左房アブレーションの5つに焦点を当てたアップグレードです。

2012 focused update of the ESC Guidelines for the management of atrial fibrillation
An update of the 2010 ESC Guidelines for the management of atrial fibrillation
Developed with the special contribution of the European Heart Rhythm Association
Eur Heart J (2012) doi: 10.1093/eurheartj/ehs253

イントロダクションと抗凝固療法のエッセンスだけかいつまんでご紹介します。

【Intorducrion】
◎ 心房細動のスクリーニング
Key Point

・65歳以上の患者における時々の脈拍触診と、脈不整の場合それに続く心電図記録は、初回脳卒中に先立って心房細動を同定するので重要(推奨度I,エビデンスレベルB)

【脳卒中と出血の評価】【新規抗凝固薬】
Key Points

・ アスピリンの脳卒中予防効果は弱く、害の可能性もある。大出血(頭蓋内出血)のリスクはアスピリンと経口抗凝固薬(OAC)とで、特に高齢者の場合あまり変わりはない
・ 抗血小板薬(アスピリン−クロピドグレル併用、または併用に忍容性がない場合のアスピリン単独)の心房細動脳卒中予防のための使用は、OACを拒否する数少ない患者に限定される
・ CHA2DS2-VAScスコアは「真の低リスク」を同定するのにCHADS2スコアと同等であり、脳卒中や塞栓血栓症の発症同定においてはCHADS2スコアに優る
・ 新規抗凝固薬は効果、安全性、便宜性でビタミンK拮抗薬に優る。ゆえに、新規抗凝固薬は、すべての患者において容量調節の行われた(INR2-3)ビタミンK拮抗薬の代替薬として考えられるべきである
・ ある新規抗凝固薬がほかより勧められるという根拠は不十分。患者特定、コンプライアンス、忍容性、コストを考えることが重要

図1.抗凝固薬の選択
a0119856_23445634.gif


図2.新規抗凝固薬服用患者における出血の管理
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### 学会の開催に合わせるようにESCの5つもガイドラインがアップデートされています。そしてなんと心房細動のガイドラインは、発表2年後にもかかわらず、そのキモの部分がより洗練された形で登場しています。

感心した点を列挙
1)65歳以上の人は、みんな時々脈をとってねというメッセージを明確にしたこと:これ実はすごく大事で、基本のキだと思っていたのですが、ガイドラインに明記するところのESCの偉大さを感じさせます。なんてプライマリケア志向なんだろう。というか、こういう現場重視の姿勢がガイドラインの当たり前の姿であるということを改めて痛感させられます。

2)アスピリンの扱いが非常に限定的となった:これまでシェーマに”aspirin”の記載が少しはありましたが、今回で皆無となりました。あくまで抗凝固薬を拒否する人にのみ使われるとの記載になっています。この点では日本のガイドラインに近づいたかのようです。

3)CHA2DS2-VAScスコアが相変わらず重用され、CHADS2スコアはシェーマから消えた:本文記載ではケチョンケチョンとまで行かないまでもCHADS2スコアはもう終わったかのようなニュアンスでその欠点を指摘し、CHA2DS—VAScのほうがいいよと謳われています。ここまではっきりCHA2DS2-VASc押しをされると、つぎに控えるアメリカや日本がこれをどう扱うか、非常に興味がもたれるところとなります。

4)CHA2DS2-VASc0点(65歳未満でリスク無し、女性も含む)は、抗凝固療法しなくて良いということが明記されている:わかりやすいです

5)CHA2DS2-VASc1点から抗凝固薬の使用が明記されている:「女性」に関しては65歳未満でリスク無しの例においては1点と数えないが、そうでない場合に1点するという記載のようです。とにかく、「65歳以上」だけの場合、「血管疾患だけ」のばあいも抗凝固療法というメッセージです

6)新規抗凝固薬をイチ押し、ワーファリンは点線:この図1をみると新規抗凝固薬は実践(best option)、VKAは点線(alternative option)になっています。きわめてドライというか明快ですが。。

さすがESCというポイントがあちこち散見されます。とにかくフットワークが良い、前回から2年後でこれだけ斬新に刷新されていて、ある意味爽快な気分にさせられます。日本のガイドラインの改定もまたれるところです。
by dobashinaika | 2012-08-25 23:51 | 抗凝固療法:ガイドライン | Comments(0)

ワーファリン服用者への手術時におけるヘパリン投与に関するメタ解析

Circulation 8月21日オンライン版より

Periprocedural Heparin Bridging in Patients Receiving Vitamin K Antagonists: Systematic Review and Meta-Analysis of Bleeding and Thromboembolic Rates
doi: 10.1161/CIRCULATIONAHA.112.105221


ビタミンK拮抗薬(VKA)服用者の手術時ヘパリンブリッジに関するシステマティックレビュー&メタ解析

P:待機的手技のためにヘパリンブリッジを施行した患者を含む臨床試験に参加したVKA服用者。2人の調査者により2001年〜2010年のMEDLINE,EMBASE,Cochrane databaseを検索した。

E:ヘパリンブリッジ施行例

C:非施行例

O:塞栓血栓症、出血

結果:
1)1RCTを含む34トライアルを検索

2)塞栓血栓症:ヘパリン群73/7118 (0.9%) vs. 非ヘパリン群 32/5160 (0.6%)

3)8試験で血栓症塞栓症に有意差なし(オッズ比0.80)

4)出血:全出血は13試験でヘパリン群にリスク増大(オッズ比5.40)。大出血は5試験で増大(オッズ比3.60)

5)低分子ヘパリン量フルドーズと中間量では、塞栓症に有意差なしだが、出血はフルドーズで多い(オッズ比2.28)

6)低塞栓リスクでVKA非服用者が対照としてよく用いられた。異質性において試験の質は低かった。

結論:VKA服用者のヘパリンブリッジは全出血または大出血のリスクを増加させた。一方血栓塞栓症リスクは非ヘパリンブリッジ群と有意差がなかった。RCTが必要。

### 今回のメタ解析でもわかるように、現時点ではヘパリンブリッジのベネフィットがリスクを上回るとする確たるエビデンスはない、というのがEBM的状況であると言えるかもしれません。

ちなみに最近こうした外科手技時の抗凝固薬の処遇に関するペーパーが続いています。
ドイツの観察研究では塞栓症リスク、出血リスクとも少ない
http://dobashin.exblog.jp/14573239/

RE-LYのサブ解析に対するEditorialではヘパリンブリッジの総説の形になっており、塞栓予防は短期には効果が期待できるが、症例により出血が懸念され、またエビデンスに乏しいとしております。
http://dobashin.exblog.jp/15830028/

そして日本の消化器内視鏡ガイドラインです。
http://dobashin.exblog.jp/15952230/

新規抗凝固薬の登場、そして生検でのブリッジ不要となるとヘパリンブリッジの必要な場面は、大手術の時にのみに今後限られてくるかもしれません。いずれにせよこの問題も過渡期のまっただ中ですので、各分野で治験を持ち寄って経験知を蓄積したいものです。
by dobashinaika | 2012-08-23 20:08 | 抗凝固療法:抜歯、内視鏡、手術 | Comments(0)

リアルワールドでの心房細動患者のプロファイル:世界規模の登録研究より

Circulation: Arrhythmia and Electrophysiology 8月号より

Distribution and Risk Profile of Paroxysmal, Persistent, and Permanent Atrial Fibrillation in Routine Clinical Practice: Insight From the Real-Life Global Survey Evaluating Patients With Atrial Fibrillation International Registry (RealiseAF)
Circ Arrhythm Electrophysiol. 2012;5:632-639


実臨床の心房細動症例を無作為に選別した国際的多施設横断研究

【方法】
・過去1年間で1回以上の心房細動のエピソードのあった人を無作為に登録
・26カ国、831施設、9816例

【結果】
・発作性2606例26.5%、持続性2341例23.8%、永続性4869例49.6%
・合併症は発作性、持続性、永続性となるにつれ増える
・心不全合併:発作性32.9%、持続性44.3%、永続性55.6%
・冠動脈疾患合併:発作性30.0%、持続性32.9%、永続性34.3%
・脳血管疾患合併:発作性11.7%、持続性10.8%、永続性17.6%
・弁膜症合併:発作性16.7%、持続性21.2%、永続性35.8%
・孤立性心房細動は持続性、永続性になるにつれ頻度は少ない
・CHADS2スコア:発作性1.7、持続性1.8、永続性2.2
・抗凝固薬服用:発作性51.0%、持続性56.7%、永続性67.3%
・90%で1剤以上の抗不整脈薬服用
・60%超の症例は、EHRAII~IV
・持続性の40.7%、永続性の49.8%では心拍数80を超えている

【結論】
このサーベイは、どのタイプの心房細動(特に永続性)においても高い心血管リスクと日々の予期せぬ医療ニーズがあることを明らかにした。

### 昨年のヨーロッパ心臓学会で発表されたペーパーであり、日本や、台湾の施設も参加しています。選択基準が不明ですが、かなり実際の医療施設に通院する患者さんの実情を反映していると思われます。

一般のプライマリケア医でサーベイすると、もっとCHADS2スコアは低く、抗凝固薬服用率は低いかもしれません。

ともあれ、この論文は今後かなり引用されるデータとなることが推察されます。
by dobashinaika | 2012-08-22 18:53 | 心房細動:リアルワールドデータ | Comments(0)

日本とヨーロッパ、2つの大規模な心房細動アブレーションの登録研究

Europace7月6日オンライン版より

European survey on efficacy and safety of duty-cycled radiofrequency ablation for atrial fibrillation
doi: 10.1093/europace/eus188


ヨーロッパにおける心房細動アブレーションの有効性と安全性サーベイ

【方法】
・ヨーロッパ7カ国20施設の心房細動登録症例2748例対象
・通常の通電方法(肺静脈隔離+心房中隔あるいは左房自由壁通電)
・規定回数のホルター心電図による再発確認(11.2ヶ月追跡)
・発作性82%、持続性18%

【結果】
1)発作性心房細動:全成功率82%(中間値80%)
2)発作性心房細動:第1セッション成功率平均72%(中間値74%)
3)発作性心房細動:抗不整脈なし59%(中間値60%)
4)持続性心房細動:全成功率70%。発作性より低い(P=0.05)
5)持続性心房細動:第1セッション成功率58%。発作性より低い(P=0.001)
6)全成功率は施設の症例数、経験年数に依存せず
7)合併症:108例3.9%:症候性脳梗塞/TIA1.1%(発作性持続性で同じ)
8)合併症頻度はヘパリンブリッジ、ロングシース使用、経食道エコー使用、施行時間に依存しない

【結果】
最近施行されている通常の方法(duty-cycled)によるアブレーションは、従来の方法に比べ、有効性、安全性の点で同様であった。今後技術的改良を加え、前向き登録研究で評価されるべきである。

###ヨーロッパの多数例のアブレーション登録研究。さすがに大変高い成功率です。施行時間は発作性で平均120分程度であり、昨今の技術の進歩は目覚しいと思います。
合併症は、静脈アクセルのトラブルが1.4〜1.9%と最も多く、脳梗塞/TIAが1.1%、タンポナーデは0.2〜0.7%とのことです。

これに関連して、つい最近日本でも平成23年9月に日本の主要施設で行われた心房細動アブレーションの成績が公表されています。
http://jhrs.or.jp/pdf/com_ablation201208_01.pdf
932例、128施設
発作性が65.7%。施行時間平均3.6時間、合併症58件(6.2%)。有効性は追跡調査ではないので記載なしです。

日欧両者のデータを概観すると、持続性が混在したデータであっても、有効性安全性とも、抗不整脈薬長期投与に勝るとも劣らない選択しになってきたことを感じさせます。

ただざっと読みですので、もうちょっとデータを吟味してみます。
by dobashinaika | 2012-08-21 20:15 | 心房細動:アブレーション | Comments(0)

ダビガトランとリバーロキサバンの費用対効果比較

Thrombosis and Haemostasis 8月17日オンライン版より

Dabigatran versus rivaroxaban for the prevention of stroke and systemic embolism in atrial fibrillation in Canada Comparative efficacy and cost-effectiveness
http://dx.doi.org/10.1160/TH12-06-0388

カナダにおける、ダビガトランとリバーロキサバンの効果、費用対効果の比較

対象、方法
・RE-LY試験のon-treatment populationとROCKET-AF試験の対象を適合させ、マルコフモデルによるシミュレートを加えて間接的に比較した
・全費用、イベント率、QALYを評価

結果:
1)リバーロキサバンに比べてダビガトランは、頭蓋内出血(0.38倍)、脳卒中(0.62倍)が少ない

2)リバーロキサバンに比べてダビガトランは、100人年あたり頭蓋内出血(0.33vs. 0.71)、虚血性脳卒中(3.40 vs. 3.96)は少なく、QALY(6.17 vs. 6.01)は高い

3)リバーロキサバンに比べてダビガトランは、薬剤コストの違いを差し引いても、急性期、長期の患者あたりのコストは安い($52,314 vs. $53,638)

4)ダビガトランは、確率解析によれば、支払い意志額(willingness-to-pay)の一般的な閾値において最も費用対効果が大きくなる可能性が高い

結論;この研究では、ダビガトランはリバーロキサバンより脳卒中、全身塞栓症予防において、経済的に優れていた。

### QALYs=質調節生存年:こちらなど参照
http://www.crecon.co.jp/pharmaco/pharmaco/page2.html
willingness-to-pay=支払い意志額:こちらなど参照
http://wtp-profit.com/wtp/index.html

あくまでシミュレーションモデルによる結果です。実臨床でどれだけ価値があるかは不明。ご参考まで。
by dobashinaika | 2012-08-20 19:14 | 抗凝固療法:比較、使い分け | Comments(0)

イヌ用のワーファリンというのがある

イヌ用ワーファリンというのがあるようです。
http://doggy.ocnk.net/product/66

ヒト用より高そうです。

体重により錠数が決められているのもヒトと違うところ

ワンちゃんにもCHADS2スコアを当てはめて良いのでしょうか?

これのませたらイヌに納豆は食べさせられませんね^^(イヌって納豆食べるのか?)

散歩させるにも注意が必要かもしれません。
by dobashinaika | 2012-08-19 23:08 | 抗凝固療法:ワーファリン | Comments(0)

若い人ほど親兄弟が心房細動だと心房細動になりやすい:400万人のコホート研究より

JACC 6月オンライン版より

Familial Aggregation of Lone Atrial Fibrillation in Young Persons
J Am Coll Cardiol. 2012;():1-5. doi:10.1016/j.jacc.2012.03.046


若年者孤立性心房細動における家族集積性に関するデンマークの大規模コホート研究

P:デンマークの60歳未満の国内登録患者(1950〜2008年)400万人弱

E/C:心房細動の家族歴の有無:第1〜2度親族まで

O:孤立性心房細動(器質的心疾患、内分泌疾患を除外)

結果:
1)有病率;9200万人年未満中、9,507人

2)罹患率比:第1度親族の人が心房細動であることは、その人の孤立性心房細動罹患率を3.48倍高める。2親等では1.64倍。第1,2親族まで合わせると6.24倍

3)上記罹患率比は男性のほうが高い。しかし親類の性別は関係ない

4)40歳未満の第1度親族(おそらく兄弟)が心房細動であれば、その人が40歳未満の時孤立性心房細動である相対リスクは5.42倍。30歳未満なら8.53倍

結論:孤立性心房細動の家族歴は、潜在的な心房細動リスクであり、時に若年発症、多くの罹患親族、第一親族でそのリスクが強い。この所見から、少なくともあるタイプの孤立性心房細動における、ルーチンの家族歴評価が勧められる。


### first-degree relativesとは、「第一親族」「第一近親」と訳し遺伝学用語で染色体を半分共有しているという意味で、親、兄弟、子供を表すのだそうです。

若くして兄弟が心房細動だと自分も心房細動になりやすいということで、近年いくつか見つかっている心房細動関連遺伝子の関与が考えられるかもしれません。

それにしても9200万人年というのはすごすぎて、もはや笑ってしまう領域です。それだけに、カルテのレビューなどどのへんまで徹底して心房細動を評価したのかは、ある程度限界があるように思います。
by dobashinaika | 2012-08-19 22:31 | 心房細動:リアルワールドデータ | Comments(0)


土橋内科医院の院長ブログです。心房細動やプライマリ・ケアに関連する医学論文の紹介もしくは知識整理を主な目的とします。時々日頃思うこともつぶやきます。


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プライマリ・ケア医のための心房細動入門

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