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2011年心房細動関連論文ベスト5

恒例の(といっても昨年から2回目ですが)「今年の心房細動関連論文ベスト5」をお届けいたします。今年1年自分でもよくやるよという感じで、論文をこつこつと紹介してきました。全紹介論文数は201でそのうち心房細動関連が177論文です。

ベスト10だと選ぶのに大変なのでベスト5くらいがいいところかと思って選びました。
「ベスト論文」の選択基準は学問的意義や社会的インパクトではなく、あくまで「自分の診療において行動変容が促されたか」です。臨床家にとってはこの基準しかありませんので。

第1位:Living With Atrial Fibrillation: A Qualitative Study Journal of Cardiovascular Nursing2011 - Volume 26 - Issue 4 - pp 336-34
心房細動とともに生きる:心房細動の質的研究”
心房細動患者が持っている内的世界をカテゴライズした大変意味ある研究だと思います。ここで示された7項目、すなわち症状の意味、わからない(支えがない)という感覚、転換点、心房細動の操縦法、予測不能症状の管理、精神的苦痛、治療への希望、は患者さんと向き合う上で心がけるべきポイントだと思います。このような質的研究がますます発展するといいですね。
この論文を読んでからの私のモットーは ”Linving with atrial fibrillation and the family doctor"と患者さんに思ってもらえるようにすることですね。

心房細動の質的研究や意思決定についての関連論文は以下
http://dobashin.exblog.jp/13885413/
http://dobashin.exblog.jp/12147982/
http://dobashin.exblog.jp/14271851/
http://dobashin.exblog.jp/13549668/
http://dobashin.exblog.jp/13353992/

第2位:”8月12日の変:日本循環器学会による「心房細動における抗血栓療法に関するステートメント」日本ベーリンガーインゲルハイム社からの「安全性速報」厚生労働省からのプレスリリース「血液凝固阻止剤「プラザキサカプセル」服用患者での 重篤な出血に関する注意喚起について」”
今年、これを挙げないわけにはいかないでしょう。勝手に「8月12日の変」と名付けましたが、まさにこの日から新規抗凝固薬に対する社会の目、製薬会社の方針、専門家の姿勢が一変した感があります。この日以降、メーカー側からは文書や講演会等で慎重投与、適正投与が勧告され、われわれも年齢、腎機能その他にかなりの注意を払ってダビガトランを処方するように変わったと思います。
現時点で大局に立ってみますと、むしろあまりの慎重投与の推奨に正直現場は戸惑っているという感じではないかと思うのです。過渡期の現象とはいえ頼るべきものがない、なんとも落ち着かない感じを多くのプライマリケア医が抱いているのではないかと思われます。どんどん専門医の経験知を集積して現場に還元する必要性を感じます。

第3位:http://wirelesswire.jp/Watching_World/201110201530.html
”スマートフォンのビデオカメラ機能で心房細動を診断するアプリの開発”
CHADS2スコア1点以下への処方も積極的に行われるようになった状況のあとに訪れるのは、「心房細動探し」かもしれません。脳塞栓患者の多くに無症候性心房細動のため抗凝固療法が施行されていない例が含まれると考えられており、今後、そうした層への介入が課題となるものと思われます。ただしこうした介入は、全く自覚症状のない人をリスクのある抗凝固療法へと巻き込むことになるため、慎重な評価と適応が要求されると思われます。少なくとも降圧薬の適応範囲を広げるような形での展開になはらないでしょうし、なるべきでもないと思います。

以下の関連論文を参照ください
http://dobashin.exblog.jp/13144841/
http://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S0022510X11002218


第4位:Risks of thromboembolism and bleeding with thromboprophylaxis in patients with atrial fibrillation: A net clinical benefit analysis using a ‘real world’ nationwide cohort study
Thromb Haemost 2011; 106: 739-749

”リアルワールドにおけるワーファリンのNet clinical benefit"
CHADS2スコア、CHA2DS2-VAScスコア、HAS-BLEDスコアごとにワーファリンの塞栓ベネフィットと出血リスクを13万人もの大規模コホートで比較した検討です。ここではCHADS2スコア1点でもベネフィットがリスクを上回ることが示されています。日本のデータが待たれます。

関連論文は定番のSinger論文と、仙台の広南病院からの論文

第5位:Warfarin Dose Assessment Every 4 Weeks Versus Every 12 Weeks in Patients With Stable International Normalized Ratios A Randomized Trial
Ann Intern Med. 2011;155:653-659.

”ワーファリン管理は4週ごとと12週ごとでアウトカムに有意差なし”
選択バイアスはありますが、今後のワーファリン管理に一石を投じる論文かと思い選びました。実際には専門医でも2~3ヶ月に1回にしている施設もあり、開業医の先生の中には半年に1回くらいの施設も存在するのが現状ではないでしょうか。TTRと、施設ごとのこのような解析がもっと蓄積されると、少なくとも「採血の手間」による処方控えは減るかもしれません。


###この他にも印象に残った論文はたくさんありますが、キリがありません。一応次点として以下を挙げておきます
Am Coll Cardiol, 2011; 57:831-838 MRIで心房の線維化を可視化した検討
BMJ 2011;342:d3653 高齢者にはCHADS2スコアは適応困難であるとする報告
Circulation Journal Vol. 75 (2011) , No. 9 2087-2094 日本におけるワーファリンコントロール状況の報告
Age Ageing (2011) 40 (6): 675-683. 医療者にワーファリンを躊躇させる因子
BMJ 2011;342:d3653 80歳以上でもワーファリン管理が適切なら出血は少ないことを示した報告
Circulation Journal Vol. 75 (2011) , No. 11 2598-2604 日本人の心房細動関連イベントの現状を示したJ-TRACE研究

また業界的、社会的インパクトが高い論文としてはやはり以下が挙げられますが、いずれもまだ自分の診療行為に影響をきたすほどではありません。しかしいずれも超重要論文であり来年になれば確実に意識せざるを得ないと思われます。
J-RHYTHM Registry
ROCKET-AF
ARISTOTOLE

昨年ベスト5を選んだときの結びで「来年は新規抗凝固薬が日本に上陸し、新凝固療法元年になると思われますが、ツールは変わるものの、心房細動治療の根本原理まで変わることはないでしょう。」と書きました、自分で言うのも恐縮ですが、今考えても正しい認識だったと思います(笑)。そして来年もこの認識は変わらないどころかますます堅持しなければならない状況になって行くものと思われます。ベネフィット、リスク、そしてコスト(心理社会的コストも含む)、関係性、これらをキーワードに、またこつこつブログを更新していきたいと思います。
by dobashinaika | 2011-12-29 10:54 | 心房細動:リアルワールドデータ | Comments(0)

男性、高齢者はワーファリンからダビガトランへの変更を受け入れやすい:Am J Therより

American Journal of Therapeutics 12月23日オンライン版 (Epub ahead of print)より

Study of Warfarin patients Investigating attitudes toward Therapy
Change (SWITCH Survey)


ワーファリンからダビガトランに変更する際の意思決定に関する検討

方法:
・2010年9月~12月にかけてRush大学のワーファリン外来通院者にワーファリンからダビガトランへの変更に関する意思調査を施行

・18歳以上、ワーファリンを最低2カ月以上服用した患者180名

結果:
1)回収率155/180(86%)
2)58%はダビガトランへの変更を喜んで希望
3)女性は男性に比べて希望しない(31 of 71, 44% vs. 54 of 78, 69%; P = 0.003)
4)70歳以上の人は未満の人より進んで希望(48 of 68, 71% vs. 38 of 75, 51%; P = 0.017)

結論:新規抗凝固薬を受け入れる患者の意思は年齢や性別による明らかな差異があった。こうした差異は血栓塞栓イベントの予防と治療に重要な影響を与ええる。

###当院でもプラザキサ発売前後の2-3カ月で82名のワーファリン服用にアンケートを行いました。当院の結果は、本論文とはまるで違い、受け入れ承諾の方は13名15.8%にとどまりました。受け入れ理由1位は納豆食べたい8名、2位採血不要3名、3位単に新しいから2名でした。

拒否された方が69名にのぼり、その理由としては1位。2週間処方:46名、2位高額26名、3位ワーファリンで慣れているから10名、モニターができないから2名、でした。
この論文のように年齢、性別で検討してはおりませんが、傾向としては高齢の方の方が受け入れやすい印象はありました。

日米で各種事情に差はありますが、元論文で変更希望理由をいてみてみたいものです。アメリカでは納豆はないでしょうから。
by dobashinaika | 2011-12-28 18:20 | 抗凝固療法:ダビガトラン | Comments(0)

頻発する心房期外収縮は心房細動新規発症と心血管イベントの予測因子:Europaceより

Europace 12月19日オンライン版より

Frequent premature atrial complexes predict new occurrence of atrial fibrillation and adverse cardiovascular events


頻発する心房期外収縮と心房細動や心血管イベントとの関係についての検討

P:器質的心疾患なしで動悸、めまい、失神を主訴に24時間ホルター心電図を施行した428例。6.1年追跡

E:1日心房期外収縮総数最高4分位(100発以上)=PAC頻発群:107例

C:1日総数100発未満=非頻発群

O:心房細動発症、複合エンドポイント(脳梗塞、心不全、死亡)

結果:
1)心房細動新規発症:頻発群31例29% vs. 非頻発群29例9%(P< 0.01)

2)PAC頻発(ハザード比3.22)、75歳超(HR2.3)、冠動脈疾患(HR2.5)が新規発症の独立予測因子

3)複合エンドポイントは頻発群で非頻発群に比べ、より多い(34.5 vs. 19.3%) (HR: 1.95; 95% CI: 1.37–3.50; P= 0.001)

4)75歳超(HR2.2)、冠動脈疾患(HR2.2)、PAC頻発(HR1.6)は複合エンドポイントの独立予測因子

結論:頻発するPACは心房細動新規発症と心血管イベントを予測する

###香港のグループからの報告です。最近の類似の研究は昨年のCirculationで見ることができます。Circulationの方は1時間に20-30連発の例で比べていますが、本論文は1日100発以上と、結構日常よく見かける程度を閾値にしています。
連発性PACがどのくらいあったのか、知りたいところです。病態生理からはPACあくまで心房細動の引き金であり、基質のリモデリングが主要な成立要件であり、ハザード比は年齢ほど高くないようですが、年齢補正しても独立危険因子として成り立つということから、従来より頻発PACは意識しておくべきかもしれません。
by dobashinaika | 2011-12-26 22:49 | 心房細動:リアルワールドデータ | Comments(0)

LDLコレステロール非高値かつ高感度CRP上昇例では心房細動発症予防にスタチンが有効:JUPITERサブ解析

European Heart Journal12月20日オンライン版より

High-sensitivity C-reactive protein, statin therapy, and risks of atrial fibrillation: an exploratory analysis of the JUPITER trial

高感度CRPと心房細動罹患率およびそれに対するスタチンの効果に関するJUPITER試験のサブ解析

P:JUPITER試験に参加したLDLコレステロール130mg/dl未満、高感度CRp2mg/L以上の人、心房細動の既往なし:17,120例

E:ロスバスタチン(クレストール)20mg

C;プラセボ

O:心房細動の新規発症

結果;
1)ベースラインの高感度CRP3分位上昇ごとに心房細動発症相対リスクは36%増加 (95% CI: 1.16–1.60; P-trend < 0.01)

2)ロスバスタチンは発症率は27%減少させた:プラセボ群0.78 vs.ロスバ群0.56/100人年;ハザード比0.73 (95% CI: 0.56–0.94, P= 0.01)

3)心房細動発症前に心血管イベントを生じた例を除いても同傾向

結論:JUPITER試験のコホートでは、高感度CRPが上昇しているような潜在的炎症を持つ人は心房細動発症のリスクが上昇している。ロスバスタチンはそのリスクを減少させる

###JUPITER試験の詳細はこちらでご覧になれます。追跡期間は中央値で1.9年ですが、最近のメタ解析では6ヶ月以上の長期追跡ではスタチンは無効との見解もあります。JUPITERでは高感度CRPに着目し、軽度の炎症を持つ人には有用であることを示しています。高感度CRP軽度上昇とは、臨床的にはメタボリック症候群のような動脈硬化のリスクのある人に合致する所見と一般的には解釈されている訳で、そういう患者entityであればスタチンの効果が期待できるのかもしれません。年間100人中0.2人の差ではありますが。。
by dobashinaika | 2011-12-25 14:04 | 心房細動:アップストリーム治療 | Comments(0)

心房細動患者におけるワーファリン中止後の血栓塞栓症リスク増加:European Heart Journalより

European Heart Journal 12月23日オンライン版より

Increased short-term risk of thrombo-embolism or death after interruption of warfarin treatment in patients with atrial fibrillation

ワーファリン中止による血栓塞栓症のリスクとタイミングに関して、大規模コホートで検討したretrospective研究

・1997年から2008年まで心房細動のために初回入院後ワーファリンが投与されたデンマークの全国規模コホートが対象

・全症例48,989例中、少なくとも1回、ワーファリンが中止されたことがあるのは35,396例

・8,255例でワーファリン中止中に死亡または血栓塞栓症が見られた。

・中止後90日未満、90~180日、181〜270日、271~360日でのイベント発生数はそれぞれ2,717、835、500、427例

・これに対応した粗イベント発生率は31.6%、17.7%、12.3%、11.4%/100人年

・多変量解析により、中止後最初の90日は271~360日後に比べて、血栓塞栓症あるいは死亡リスクが明らかに上昇する:ハザード比2.5, 95%Ci2.3-2.8)

結論;心房細動患者ではワーファリン中止は死亡あるいは血栓塞栓症の短期リスクを明らかに増悪させ、最初の90日間で特に著明であった。 

###またまたデンマークの大規模コホート研究です。患者背景(CHADS2スコアなど)やワーファリン中止の理由などが不明なので、詳細は元論文に当たってからコメントします。ワーファリンはとにかくやめたくない、やめた場合最初が特に要注意とのメッセージかと思います。
by dobashinaika | 2011-12-24 22:15 | 抗凝固療法:ワーファリン | Comments(0)

心房細動のリスク因子とリスクマーカーについての総説:Europaceより

Europace 1月号より

Comprehensive risk reduction in patients with atrial fibrillation: emerging diagnostic and therapeutic options—a report from the 3rd Atrial Fibrillation Competence NETwork/European Heart Rhythm Association consensus conference
Europace (2012) 14 (1): 8-27


60人の専門家が会して2010年11月に行われた、ドイツの心房細動ネットワーク(AFNET)とEuropean Heart Rhythm Association (EHRA) の第3回合同カンファランスの報告です。

次の4つの項目につき討論されました、1.心房細動のリスク因子とリスクマーカー 2.心房細動の病態生理学的分類 3.心房細動関連アウトカムに鑑みた心房細動持続期間モニターの妥当性 4.よりよい抗不整脈薬提供のための展望とニーズ

今日はこのうちのリスク因子とリスク因マーカーにつきまとめます。

【心房細動のリスク因子とリスクマーカー】
ここ2〜3十年、動脈硬化と心血管イベントの集団レベルでの減少という点では目立った成果が見られている。例えばスタチン、高血圧管理、禁煙運動。その一方で心房細動罹患率は増加の一途であり、心血管疾患イベントを減少させるのと同様なレベルで心房細動が減少しているとは言いがたい。

高血圧、心不全(左室収縮不全のあるものとないもの)、心筋梗塞、弁膜症、糖尿病は確立したリスク因子である。一方、最近明らかにされつつあるリスク因子がある。

表1に心房細動のリスク因子が挙げられている(非常にためになる!)

〈確立されたリスク因子〉
・年齢
10歳ごとのハザード比増加は1.1~5.9。線維化、細胞内の加齢変化、周辺因子の増加から説明される。一方で若年発症は遺伝的因子の関与が強い

・高血圧
収縮期130程度の血圧でも脈圧振幅の高い場合は心房細動リスクが高くなることが示されており、厳格なコントロールが重要視されている。一方で心房細動を血圧にはJカーブ現象が見られ低血圧が心房細動リスクを上昇させることも言われている

・心不全
あまり広くは危険因子として認知されていない。心房内圧や容積、心室拡張障害が関与。これらは心房拡大、線維化、電気的リモデリングに通じる

・弁膜症
心不全と同様の機序。特に左心系で

・男性
男性であることが心房細動のリスクを高める。しかし女性の方が心房細動罹患者は高齢で心血管疾患合併が多い。このことは女性が心房細動脳塞栓の危険因子であることに関連する。この対比の説明は難しい。男性が元々おきやすいのか、男性の方が症候性が多く早く見つかるのか、男性の方が他の危険因子を合併しやすいのか、女性は心房細動が見つかったときにあまり健康に注意を払っていないのか。。この点は不明。
なおBlacksは心房細動リスクが低い

・代謝因子
糖尿病,甲状腺機能亢進症はリスク因子。メタボリック症候群はあまり強いリスクではない

まだ確立途上の危険因子〉
・遺伝的因子

・潜在性甲状腺機能亢進症:FT3、FT4正常でTSH低値

・肥満;BMIは左房容積と相関。生下時体重が45歳以上の女性で心房細動と関連ありとする報告あり。心外膜脂肪、長駆がリスクとも言われている

・睡眠時無呼吸症候群、COPD、CKD

・アルコール消費、喫煙

・高レベルの耐久トレーニング:適度なものはよい

<心房細動のバイオマーカー>
・ナトリウム利尿ペプチド;BNPよりANPがよい

・CRP, IL-6

・左房径:体表面心エコー

・3Dイメージング(エコー、CT、MRI)による左房サイズ、形状、容積。左房流速など

・Delayed-enhanced MRIによる左房内線維化や瘢痕の可視化

・心電図パラメーター:PR延長、P波幅、心拍変動の低下は心筋梗塞において心房細動のなりにくさの指標

・遺伝的因子

〈open questions〉
・リスク因子とリスクマーカーの区別
リスク因子とは心房細動に関連した生物学的プロセスを臨床的に測定できる指標。一方リスクマーカーは心房細動の原因となるプロセスの代用でありそれ自身が心房細動の引き起こすものではない。この区別はいつも可能とは限らないし、それらの相互作用についても不明なことが多い

・バイオマーカーの役割
・フラミンガム研究を除き、多くの研究のバイオマーカーは少数コホートでの検討。最近の抗凝固薬に関する大規模研究に期待

・心房細動の持続化に特異的な因子はあるのか?
各因子はオーバーラップしている。因子数が多い人ほど心房細動が持続化しやすい。最近HATCHスコア(心不全、年齢、能塞栓の既往、COPD,高血圧)が開発された

〈まとめ〉
脳塞栓のリスク因子は同時に心房細動のリスク因子。それらの因子のインパクトは年連、遺伝因子、肥満で変化する。各因子の重症度によってもリスクの評価は異なる、多くの因子は関係し合っており相乗効果を生じている一方で、新しく出てきたバイオマーカーはかき消されることもあり。
多くの研究は短時間の心電図記録に基づいており、無症候性心房細動は無視されている。これらの評価に対するニーズは高い。

###すごく頭のいい、しかも臨床的問題意識の高い人の言説ですね。随所に疫学と診療実践に根付いた哲学のようなものが感じられて好感が持てます。この会議の直後にあのECSガイドラインが出たのもうなづけます。
日本でもこのように3日連続で心房細動のことをとことんディスカッションする場があってもいいですよねー。なかなかできないかなあ。
時間があったら、残りも読んで行くつもりです。
by dobashinaika | 2011-12-23 23:23 | 心房細動:リアルワールドデータ | Comments(0)

心房細動患者において有酸素運動は運動耐用能やQOLを改善させる

American Heart Journal 12月号より

A randomized study of the effects of exercise training on patients with atrial fibrillation
American Heart Journal 2011; 62: 1080-1087


運動が心房細動に与える影響に関する検討

P:永続性心房細動49例。平均年齢70.2歳、男女比0.75、BMI平均29.7

E:12週間の有酸素運動

C:特に運動しない

O:運動耐用能、6分間歩行テスト(6MWT)、心拍出量、QOL(SF-36,MLHF-Q)、ANP、NT pro-BNP

結果:
1)運動耐用能と6MWTの改善は、運動群で認められた(p<0.001)。試験後のこれらの値は運動群で対照群より有意に増加した(p<0.002)
2)安静時心拍数は運動群で有意に減少した(94.8 ± 22.4 to 86.3 ± 22.5 beats/min, P = .049)
3)心拍出量は運動前後で変わらなかった
4)MLHF-Qスコアは運動群で有意に改善した (21.1 ± 18.0 vs 15.4 ± 17.5, P = .03)
5)運動具んではSF-36の8項目のうち3項目(身体機能、全般的健康度、活力)で改善を認めた
6)ANP,NT pro-BNPは変化なし

結論:12週間の運動は運動耐用能、6MWT、安静時心拍数を有意に改善または減少させた。全般的QOLはMLHF-Qの循環器病関連項目において明らかな改善を見た、心拍数やBNPに変化なし。

###運動耐用能の改善は、運動による筋力増強や精神的影響の要素がありますが、循環動態としては運動による安静時心拍数の減少(迷走神経緊張と思われる)の関与も大きいように思われます。β遮断薬とどちらが効果ありなのでしょうか?あるいは併用でより効果が増すのでしょうか?

いずれにせよ、明日から心房細動の患者さんに積極的にウォーキングを進めようと思いました。
by dobashinaika | 2011-12-21 22:59 | 心房細動:リアルワールドデータ | Comments(1)

RE-LY試験におけるダビガトランの薬物動態解析

Journal of Thrombosis and Haemostasis 11月号より

Population pharmacokinetic analysis of the oral thrombin inhibitor dabigatran etexilate in patients with non-valvular atrial fibrillation from the RE-LY trial

RE-LY試験におけるダビガトランの薬物動態解析に関する論文です。

・9522例、27,706検体のダビガトラン血中濃度を非線形モデル(non-lonear mixed-effects modelings)で解析した

・ダビガトランの薬物動態は消化管の一次吸収において2つの山を形成する傾向で最もよく説明できた

・クレアチンクリアランス、年齢、性別、心不全、「南アジア」という民族サブグループはダビガトランンの排泄に統計学的に明らかな影響を与えた

・体重とヘモグロビンは(ダビガトランの)中心部分の分布量に明らかな影響を与えた

・PPI、アミオダロン、ベラパミルの併用は生物学的利用率に明らかな影響を与えた

・しかしすべての統計的に有意な因子は,腎機能を除いては小規模もしくは中等度の影響(定常状態の26%未満)しか示さなかった

・最終的な薬物動態モデルからのシミュレーションを元にすると、75mg1日2回の投与はクレアチンクリアランス15-30の非常に重症な腎不全患者において、150mg1日2回の正常腎機能患者と同様の(薬物に対する)曝露となる

結論:この解析はRE-LY試験における心房細動患者ポピュレーションにおけるダビガトランの薬物動態の特徴を厳密に示している。腎機能を除いてはどのような因子も用量の調整を必要としない

###このようなシミュレーションに基づいて、FDAは75mg1日2回も承認したものと思われます。しかし薬物動態のシミュレーションモデルとか、ちょっとよく勉強しないとわからない領域なので、詳しくは元論文読んでから報告します。

FDAでは110mgx2は統計学的な妥当性に鑑みて採用しなかった訳ですが、75mgx2はこのような数理モデル上のシミュレーションだけで薬事承認がしておりちょっと意外でした。よほどこのの解析の精度が高いということなのでしょうか。
by dobashinaika | 2011-12-20 22:40 | 抗凝固療法:ダビガトラン | Comments(0)

心房細動のレートコントロールに関する総説;Circulationより

Circulation12月13日号に「心房細動のレートコントロール」の総説が載っています。

Rate Control in Atrial FibrillationTargets, Methods, Resynchronization ConsiderationsCirculation. 2011;124:2746-2755

適応、方法からCRTでの心房細動の対処まで網羅されており大変読み応えがあります。
興味のある方はご一読ください。
by dobashinaika | 2011-12-19 23:02 | 心房細動:ダウンストリーム治療 | Comments(0)

大規模コホート研究による特発性心房細動の特徴;Europaceより

Europace 12月1日オンライン版より

Idiopathic atrial fibrillation revisited in a large longitudinal clinical cohort

特発性心房細動および高血圧だけを持つ心房細動患者の年齢と心房サイズに関する検討
・3978名のEuro Heart Survey登録の心房細動患者のうち、特発性心房細動は119名(3%)
・対照として高血圧のみを有する心房細動152例
・57名48%は60歳超
・持続性あるいは永続性は60歳超で有意に多い(60歳未満:34% vs. 60歳以上:66%, P= 0.002)
・心房細動の持続日数、左房サイズに、60歳未満と以上とで有意差なし
・発作性の2名のみ永続性に進行
・1年間追跡で心血管イベントなし。対照的に高血圧のみを有する心房細動例は5例6%で脳卒中あり(臨床的プロファイルや心房サイズは同じ)

結論:特発性心房細動は高齢でも認められ、心房の拡大、心房細動の進行、短期予後悪化とは関連がない。対照的に罹患時明らかな心房リモデリングのない場合でも高血圧は予後の上で重要であると思われる

###いちおう、高血圧も含めた基礎疾患のない心房細動を孤立性心房細動 (lone AF)と呼ぶことが多く、特に60歳未満を指してそう呼ぶこともあります。この論文のように特発性(idiopathic)と呼ぶこともあります。
確かに高血圧さえなく、何もリスク因子がないのに心房細動になっている患者さんは存在します。そして60歳未満でそのような方は滅多に持続化しないことも経験上よく知られていますし、本論文でも示されています。

こうした患者さんには迷走神経緊張による一過性の心房不応期短縮などが関与しているのでしょうが、論文で示されているような、60歳以上で永続化する(しかし特発性)人たちとはまた一線を画した患者集団なのではないかと思います。

興味深いのは単に高血圧のみだけを有していても予後に差があるということです。こうして見るとますます60歳未満の特発性というのは、単に一時的な「現象」としてとらえた方がよいのかもしれません。
by dobashinaika | 2011-12-19 22:50 | 心房細動:リアルワールドデータ | Comments(0)


土橋内科医院の院長ブログです。心房細動やプライマリ・ケアに関連する医学論文の紹介もしくは知識整理を主な目的とします。時々日頃思うこともつぶやきます。


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プライマリ・ケア医のための心房細動入門

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