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70歳台の心房細動患者ではワーファリン使用と死亡率低下に関係あり:AFFIRMサブ解析

American Journal of Cardiology11月28日オンライン版より

Effect of Warfarin on Outcomes in Septuagenarian Patients With Atrial Fibrillation

70歳以上の人におけるワーファリンの効果を検討したAFFIRM試験のサブ解析

P:AFFIRM試験に参加した4060例のうち70~80歳の2248例

E:ワーファリン服用例616例

C:ワーファリン非服用227例(45のベースライン特性をpropensity scoreを用いてマッチさせた)

O:死亡、入院、脳梗塞、大出血:追跡最高6年(平均3.4年)

結果:1)全死亡:ワーファリン群18%、非服用群33%。ハザード比0.58(0.43-0.77、p<0.001)
2)全入院:ワーファリン群64%、非服用群67%。ハザード比0.93(0.77-1.12、p=0.423)
3)脳梗塞:ワーファリン群4%、非服用群8%。ハザード比0.57(0.31-1.04、p=0.068)
4)大出血:ワーファリン群7%、非服用群10%。ハザード比0.73(0.44-1.22、p=0.229)

結論:70歳台の心房細動患者では、ワーファリン使用と死亡率低下には関係があった。入院と大出血には関係がなかった。

###AFFIRM試験は、いまさら言うまでもなく平均年齢70歳。脳卒中リスクを1つ以上有する例でのリズムコントロールとレートコントロールの優劣を比較した有名な試験で、すでにワーファリンの使用が生存に影響することがサブ解析で示されています。

今回は、臨床的に最も多いと考えられる70歳代に焦点を絞っての検討です。例えばワーファリン群では脳梗塞7%で全死亡18%なので、脳梗塞以外に死亡に寄与した因子も考える必要があります。

しかし出血がワーファリン群で少なかったのはコントロールが良かったのでしょうか?元論文ではINR2.0-3.0維持率は62.3%とあり、特に良好とも言えないようですが。当時はTTRの概念もなく、詳細は分からないかもしれません。

高齢者ほどワーファリンというのは、ここでも確認できます。それにしてもいまだにAFFIRMのサブ解析が、それも抗凝固で出てくるのですね。「時代は抗凝固」の反映かな。
by dobashinaika | 2011-11-30 18:51 | 抗凝固療法:ワーファリン | Comments(0)

心房細動アブレーション後、再発のない例では腎機能が改善する:Circulationより

Circulation11月29日号より

Renal Function After Catheter Ablation of Atrial Fibrillation
Circulation. 2011;124:2380-2387


心房細動アブレーション後に腎機能がどのように変化するかについての検討

対象:心房細動のアブレーションを施行した386人(発作性135、持続性106、長期持続性145)

結果:
1)ベースラインのeGFR;68±14 mL · min−1 · 1.73 m−2。60~89が2/3。30~59がのこり1/3
2)1年間フォローで278人72%が心房細動なし
3)心房細動非再発例では、eGFRが3ヶ月後で上昇し、その後1年間持続したが、再発例では下降した
4)非再発例のeGFRの変化度は、再発例とは明らかに違っていた(3±8 versus −2±8 mL · min−1 · 1.73 m−2; P<0.0001)
5)ベースラインeGFRのどの四分位でも、アブレーション後のeGFRの変化度は非再発例が再発例を上回った。

結論:軽度~中等度の腎機能低下例においては、アブレーションによる心房細動の消失は、追跡1年間での腎機能改善と関係あり。

###横須賀共済病院からの論文です。腎機能低下が心房細動の原因との一つとなっていることを示唆する研究は数多くありますが、この論文では、反対に心房細動が腎機能低下を引き起こしていることが示されています。心房細動消失で血行動態(心拍出量など)の低下が改善され、腎機能改善へとつながるのかと考えました。持続性、長期持続性の方が発作性より改善度が大きいのかどうか、興味深いです(あとで全文に当たってみます)。抗不整脈薬で発作がなくなった場合でも同様のことが観察されるかも知りたいですね。

CKDと心房細動の関係はこちらも参照。
by dobashinaika | 2011-11-29 19:41 | 心房細動:アブレーション | Comments(0)

不整脈に対するカテーテルアブレーションの合併症頻度と予測因子:Heart Rhythmより

Heart Rhythm11月号より

Incidence and predictors of major complications from contemporary catheter ablation to treat cardiac arrhythmias
(Heart Rhythm 2011;8:1661–1666)


高名なStevenson先生のグループにおけるカテーテルアブレーションの合併症に関する前向き研究

方法:Brigham and Women’s Hospital(ボストン)における2年強(2009-2011)のカテーテルアブレーション症例連続1676例を対象に、カテーテルアブレーション当日および術後30日間の合併症につき評価

結果:
1)不整脈タイプ別合併症;上室頻拍0.8%。特発性心室頻拍3.4%、心房細動5.2%、器質的心疾患に伴う心室頻拍6.0%
2)上室頻拍をレファレンスにしたときのオッズ比は心房細動5.53、器質的心疾患を伴う心室頻拍8.61、特発性心室頻拍5.93
3)血清クレアチニン1.5超のそれ以下に対するオッズ比は2.48
4)年齢、性別、BMI、INR、高血圧、糖尿病、冠動脈疾患、脳血管疾患の既往は予測因子になりえず

結論:大規模前向きコホートでの、現代におけるカテーテルアブレーションのメジャーな合併症は0.8%~6.0%でアブレーション対象不整脈により違う。対象不整脈と腎不全は合併症の独立した予測因子。

その他の知見:
1)合併症の55%は当日でその31.1%は術中
2)死亡は2例0.1%。うち1例は心房細動で心房中隔瘤に血栓が付いていたもの。もう1例は虚血性心筋症で緊急のVTアブレーション中に後腹膜出血をきたした例
3)最多合併症は大腿動脈穿刺部トラブル1.4%。心のう液貯留1.3%(タンポナーデ1.3%)。これらは上室頻拍アブレーションではほとんどゼロ
4)心房細動アブでの穿孔例14例は全例経皮的ドレナージで改善。一方心室頻拍アブでの穿孔4例は全例手術ドレナージ
5)血栓塞栓症は11例0.7%。心房細動例で有意に多い。うち3例はカテ室離室後。出血は2例
6)その他:誤飲性肺炎3例、尿カテーテルトラブル1例、ペースメーカーが必要な伝導異常1例
7)完全房室ブロックなし。肺静脈狭窄、心房食道ろうなし

###現時点でのアメリカ最先端施設での合併症データです。同施設は器質的心疾患の伴う心室頻拍のアブレーションが全体の14.9%と比較的多く、この点は考慮すべきかもしれません。死亡例2例は特殊ケースであり、心配な心タンポナーデは心房細動アブでも0.9%と低率で全例体表からの穿刺で軽快しています。

こうしたデータとアブレーションを受けることのベネフィットをどう考えるか。個々人のリスク認知に依存しますが、私見としては、上室頻拍及び心房細動に関して言えば、これまでの報告等に比べ合併症は少なく安全という印象です。
by dobashinaika | 2011-11-28 19:09 | 心房細動:アブレーション | Comments(0)

CHADS2スコア1点の人にワーファリンを投与すべきか?(再考)

Thrombosis and Haemostasis10月号より

Risks of thromboembolism and bleeding with thromboprophylaxis in patients with atrial fibrillation: A net clinical benefit analysis using a ‘real world’ nationwide cohort study
Thromb Haemost 2011; 106: 739-749


デンマークの大規模データベースから「リアルワールド」での抗凝固薬、抗血小板薬のNet clinical benefitを評価した研究

対象:デンマークの全国患者登録において非弁膜症性心房細動で退院した患者(1997〜2008年)、132,372名(!)

結果
1)高リスク例での血栓塞栓症ハザード比:ビタミンK拮抗薬をレファレンスとした場合=アスピリン1.81、ビタミンK拮抗薬+アスピリン1.14、無治療1.86

2)出血ハザード比:ビタミンK拮抗薬をレファレンスとした場合=アスピリン0.93、ビタミンK拮抗薬+アスピリン1.64、無治療0.84

3)Net clinical benefitはCHADS2スコア0点以上、CHA2DS2-VAScスコア1点以上において、ビタミンK拮抗薬単独ではゼロまたはpositive

結論:この大規模コホートでは血栓塞栓症予防に、ビタミンK拮抗薬は有効だがアスピリンは無効であった。ビタミンK拮抗薬とアスピリン投与により出血リスクも上昇したが、血栓塞栓症のリスクのある患者ではNet clinical benefitは明らかに陽性だった。

###この論文、ずっと気になっていましたが、全文を読んでからアップしようと思っていたの遅れてしまいました。

Net clinical benefitはSingerらが報告して以来有名になりました。ワーファリンの効果を塞栓予防効果と出血増加リスクの引き算で考える方法です。
具体的には、(ワーファリン投与前塞栓血栓率ーワーファリン投与後血栓塞栓率)ー1.5(ワーファリン投与後頭蓋内出血率ーワーファリン投与前頭蓋内出血率)で表されます。出血の方に1.5をかけているのは脳出血の方が脳梗塞より臨床的インパクトが強いとの判断からのあくまで恣意的な係数です。
イメージとしては、ワーファリンを投与した場合血栓塞栓が減る人数を出血が増える人数から引いたもので、これがマイナスでなければ効果ありと考えるという感じですね、

Singer論文ではCHADS2スコア1点例はこの値の95%CIがゼロをまたいでおり陽性とは言えないため、これをもってCHADS2スコア1点に対するワーファリンはグレーゾーンであるとの認識の一つの証左となりました。以下の図は有名ですね、
a0119856_23574573.jpg


一方本論文は13万人もの大規模コホートを持ってしてこの結果を一蹴し、CHADS2スコア1点でもNet benefitはゼロを上回っており、有効としました。全文を当たってみますと
CHADS2スコア1点のNet clinical benefit;HAS-BLEDスコア2点以下の場合0.84 (0.70~0.99)、HAS-BLEDスコア3点以上の場合0.56 (0.16~0.95)
CHA2DS2-VAScスコア2点のNet clinical benefit;HAS-BLEDスコア2点以下の場合1.19 (1.07~1.32)、HAS-BLEDスコア3点以上の場合2.21 (1.93~2.50)

本論文がSinger論文と違う点は、脳塞栓のベースラインリスクが3.9%人年とSinger論文の1.19人年より高い点です。出血リスクは0.9%でやはりSingerらの0.48%より高くなっています。ワーファリン後の脳塞栓が1.67% (Sipplの表から)でSingerらでは0.59なので,単純に本論文では脳塞栓減少は2.23人、Singer論文では0.59人となり、これだけで差がついています。出血の方は本論文でワーファリン投与後の頭蓋内出血率が明記されていないようなので比較できませんが、脳塞栓リスクのこの違いが大きいと思われます。

日本人のCHADS2スコア別の脳塞栓、頭蓋内出血率が知りたいところですが、明確なデータはまだ出ていないようです(J-RHYTHM Registryに期待)。

Net benefitを左右する因子はこのようにベースラインリスク、ワーファリン投与後リスクに加えてワーファリンコントロール状況も大きいと思われます。Singer論文はTTRが65.4%と明記されていますが、本論文では明記されていないようです(多分これだけの数のため、データはないものと思われます)。Singer論文もTTRがもっと良ければpositiveになっていたとの思われますので判断に迷うところです。

私の個人的見解は、Singer論文も係数を1で計算すると、もう少しで95%CIがpositiveになる(=0.06~0.57)ことも考え合わせると、「CHADS2スコア1点は原則ワーファリン投与、ただしできる限りワーファリンコントロールを良くするように努める」というところに落ち着きそうです。もちろん塞栓症と出血のリスクは個々に考えることは基本コンセプトで。
by dobashinaika | 2011-11-28 00:01 | 抗凝固療法:適応、スコア評価 | Comments(0)

心房細動アブレーション後の塞栓症や死亡リスク予測にCHADS2やCHA2DS2-VAScスコアが有用

J Am Coll Cardiol11月29日号より

CHADS2 and CHA2DS2-VASc Scores in the Prediction of Clinical Outcomes in Patients With Atrial Fibrillation After Catheter Ablation
J Am Coll Cardiol, 2011; 58:2380-2385

・心房細動のカテーテルアブレーション後の塞栓症や死亡のリスク層別化に、CHADS2やCHA2DS2-VAScスコアが有用かどうかの検討

・Taipei Veterans General Hospitalで心房細動アブレーションを施行した565例。
・アブレーション後3ヶ月間ワーファリンは継続され、CHADS2スコア2点以上原則その後も中断なし。ただし症状なし、再発所見なしの場合は抗血小板薬に変更可能
・エンドポイントは全身性塞栓(脳梗塞、TIA、末梢塞栓、肺塞栓)および死亡

結果:
1)平均39.2ヶ月の追跡期間で、27人(4.8%)が上記エンドポイントに達した
2)CHADS2およびCHA2DS2-VAScスコアのROC曲線下面積はそれぞれ0.785, 0,830
3)統計的に差はないが、CAHDS2スコア0〜1点の人のCHA2DS2-VAScスコアを評価し、これが2点以上の人は未満に比べて有意にイベントが多かった(7.1% vs. 1.1%, p = 0.003)

結論: CHADS2およびCHA2DS2-VAScスコアは、アブレーション後の塞栓症や死亡といったイベント予測に有用。

###Editorが述べているように、CHADS2スコア0~1点でも2.4%で重大イベンドが起きていることに注目です。これらの人でなおCHA2DS2-VAScスコアが0~1点の人は3年間でイベントが1%とのことですので、例えば高血圧かつ女性だけ、とか糖尿病で70歳のかたとかなら、イベントリスクは低いということになります。これアブレーション後でなくても応用できそうです。
by dobashinaika | 2011-11-25 23:12 | 心房細動:アブレーション | Comments(0)

入院中に心房細動を発症する敗血症では,院内脳梗塞、院内死リスクが高い:JAMAより

JAMA11月14日号より

IIncident Stroke and Mortality Associated With New-Onset Atrial Fibrillation in Patients Hospitalized With Severe Sepsis
JAMA.2011;306(20):2248-2254
.

重症敗血症の6~20%にみられる新規発症心房細動と院内脳卒中または院内死との関係についての一般住民対象後ろ向きコホート研究

P:カリフォルニア州のデータベース (California State Inpatient Database administrative claims data),2007年1年間のデータにおける成人入院例3,144,787名のうち重症敗血症49,082名(1.56%)

E:入院中に発症した心房細動。入院時既に認められた例は除く

C;入院中心房細動非発症

O;入院中脳梗塞、入院中死亡

結果
1)敗血症の平均年齢69±16歳。48%女性
2)新規発症心房細動:重症敗血症で5.9%にが認められたが、敗血症なしでは0.65% (OR, 6.82; 95% CI, 6.54-7.11; P < .001)
3)入院患者における全新規発症心房細動例の14%で敗血症が認められた
4)入院中脳梗塞:心房細動ありvs. なし=75/2896 [2.6%] vs 306/46 186 [0.6%] strokes; adjusted OR, 2.70; 95% CI, 2.05-3.57; P < .001
5)入院中死亡:心房細動ありvs. なし=1629 [56%] vs 18 027 [39%] deaths; adjusted relative risk, 1.07; 95% CI, 1.04-1.11; P < .001
6)これらの所見は、敗血症における2通りの定義や交絡因子の調整、多因子感度分析を経た確固たるものである

結論:重症敗血症患者では入院中新規発症を有する心房細動患者は、心房細動を生じない患者に比べ入院中脳梗塞および入院中死亡のリスクが高い。

###後ろ向きコホートながら、大規模であり、かつ感度分析をしっかり行って交絡因子をできるだけ排す注意がされており。エビデンスレベルは高いと思われます。敗血症では重症であるほどカテコラミンや各種サイトカインが心房細動を惹起するものと推測されますが、心房細動が重症度のマーカーとなりうる可能性が示唆されます。

ただ、AFが出たからと言って、すぐに抗凝固療法を開始できるかどうかは状況によると思われ、現場の判断は症例ごとでしょう。

とにかくこういう300万人単位(!)のコホートデーダをポンと出せるところが欧米で強みです。日本では医療保険こそ原則全給付ですが、対照的に医学的症例登録は全く遅れを取ってしまってますね〜。
by dobashinaika | 2011-11-23 20:55 | 心房細動:リアルワールドデータ | Comments(0)

欧州医薬品庁によるダビガトランによる出血死についての冷静な見方

ヨーロッパ医薬品庁 (EMA)のPradaxa(日本名プラザキサ)の安全性に関するアップデート(プレスリリース11月18日)が公表されました。
要点を要点をまとめます。

http://www.ema.europa.eu/ema/index.jsp?curl=pages/news_and_events/news/2011/11/news_detail_001390.jsp&mid=WC0b01ac058004d5c1&jsenabled=true

・Pradaxaは2008年、欧州では静脈血栓症に認可され、2011年8月からは非弁膜症性心房細動患者の脳梗塞、全身性塞栓症予防に適応された。

・最近のメディアでは同薬服用患者の致死的出血に関する関心が高い。こうしたリスクは元々知られているところであり、臨床試験の結果を受けて出血徴候に対するチェックや出血時の薬剤中止を促してきている。

・この問題は8月の医薬品のヒト使用に関する委員会 (CHMP)で、日本の致死的出血のケースや世界中の出血に関する最近の評価に関する情報収集がさらに喚起された。

・今回のアップデートでは,投薬前の腎機能チェックが全例に勧められ、さらに投与中75歳以上では最低年1回の腎機能チェックと全年齢での腎機能低下が推測される際のチェックがなされるべきとしている

・11月6日時点で全世界で重大な出血に起因する死亡の自発報告が256例なされており、このうち21例がEU連合からのものである。

・この報告(の増加)は世界的な同薬の新規適応の開始の反映であり、さらに臨床家が副作用をより意識するようになったためと考えられる

・CHMPは出血リスクを適切に管理するよう勧告を変化させている。EMAはこのPradaxaの出血問題と全体としての安全性を監視し続け、委員会は致死的出血が減少しリスク管理のための情報が適切であることを確認するまですべてのケースレポーとの見直しをするだろう。

・より情報を得たい患者さんはかかりつけ医にコンタクトすべき。Pradaaを服用中の患者さんは医師への相談なしに中断することをしては行けない。

###ヨーロッパでも出血に関連する死亡が21例とのことで、日本同様(日本は9月までで23例)のことが起きているようです。ただ文章の全体のトーンが元々わかっていたこと、とでもいいたいかのように冷静であり、注目されたから報告も増えた、と言った表現からもそれが受け取れます。

患者さんへの呼びかけもなされているのも、好感が持てますね。           

そうした精神の反映なのかどうかわかりませんが、少なくともヨーロッパでは日本のようにガイドライン推奨度の変更は今のところなされていないようです。
by dobashinaika | 2011-11-21 22:35 | 抗凝固療法:ダビガトラン | Comments(0)

AHA2011での心房細動カテーテルアブレーションに関するLate-Breaking Clinical Trials2題

米国オーランドで今週開催されたアメリカ心臓協会学術集会で発表されたLate-Breaking Clinical Trial のうち、心房細動関連の演題が2つあり、いずれもカテーテルアブれーションがらみのものでした。
http://my.americanheart.org/professional/Sessions/ScientificSessions/ScienceNews/SS11-Late-Breaking-Clinical-Trials_UCM_432888_Article.jsp#aida

1つはMANTRA-AF 。発作性心房細動例をカテーテルアブレーション(肺静脈隔離術、146例 )と抗不整脈薬(Ic薬またはIII薬,148例)にランダム割り付けした比較試験。平均年齢54~56歳。心房細動の累積負担は有意差なし。24か月後の心房細動、身体的QOL(SF-36)はアブレーション群で良好。
A Randomized Multicenter Comparison of Radiofrequency Ablation and Antiarrhythmic Drug Therapy as First-Line Treatment in 294 Patients with Paroxysmal Atrial Fibrillation

発表スライドはこちら

もうひとつはFAST。薬剤抵抗性心房細動(過去にカテーテルアブレーション失敗例)124例をカテーテルアブレーションと低侵襲外科的アブレーションにランダム割り付け。
Atrial Fibrillation Catheter Ablation Versus Surgical Ablation Treatment (FAST) A 2-Center Randomized Clinical Trial

カテーテルアブレーションーテルアブレーションは広範囲肺静脈隔離、手術はWolfらの提唱した肺静脈隔離、神経叢アブレーション、左心耳切除を含む低侵襲手術。

12ヶ月間の抗不整脈非服用下左房由来不整脈非発生率は手術群で有意に少ない。有害事象は手術群で多い。

発表スライドはこちら

###こういう侵襲的手術的カテーテルをランダム割り付けできるところがアメリカの強みですかね。薬かアブレーションかをコンピューターで決めることに同意するなど、日本人には未来永劫acceptされないような気もします。

それは置いといても今回の2つの試験では、より侵襲的な手技ほど結果は良いようでした。MANTRA-AF試験の平均年齢は50代半ばですので、若い集団ではアブレーションということは言えそうです。t(ただし、こちらは論文化されておらず、薬剤の使用法など不明ですので、現時点では断定的なことは言えないと思いますが。)

今回の大規模試験のネーミング(MANTRA=チベット仏教の真言)、聴衆の何割が意味わかったのでしょうか?
by dobashinaika | 2011-11-19 23:04 | 心房細動:アブレーション | Comments(0)

新規III群抗不整脈薬ドロネダロンは高リスク永続性心房細動患者には使うべきではない:NEJMより

NEJM 11月14日オンライン版より

Dronedarone in High-Risk Permanent Atrial Fibrillation

新規III群抗不整脈薬ドロネダロンのハイリスク永続性心房細動における心血管イベントをアウトカムとしたPALLAS試験の結果

P:65歳以上で、6ヶ月以上持続した永続性心房細動で大血管イベント(以下のいずれか一つ以上:冠動脈疾患、脳卒中/TIAの既往、症候性心不全、前年の心不全入院、LVEDF40%以下,75歳以上で高血圧か糖尿病)のリスクを有する3236名

E:ドロネダロン400mg1日2回

C;プラセボ

O:一次EP=脳卒中、心筋梗塞、全身性塞栓、心血管死。二次EP=心血管疾患による入院または死亡

結果:
1)安全性の面から、登録約1年後で試験は中止となった
2)一次エンドポイントのハザード比:2.29 (95%CI, 1.00~4.49; P=0.046)
3)不整脈死のハザード比:3.26 (95% CI, 1.06~10.00; P=0.03)
4)脳卒中:2.32 (95% CI, 1.11 to 4.88; P=0.02)
5)心不全入院:1.81 (95% CI, 1.10 to 2.99; P=0.02)
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結論:ドロネダロンは、心血管リスクの高い永続性心房細動患者の心不全、脳卒中、心血管死を増加させた。この薬は上記のような患者には使うべきでない。

###既に7月にサノフィ社がこの試験の中止を発表しており、今回はその詳細です。アウトカムのすべてにおいて増加させてしまったようです。

ドロネダロンのこれまでの大規模試験として、ATHENA試験では脳卒中、心不全入院等は減少していましたが、ANDROMEDA試験では死亡が増えました。ATHENAはANDROMEDや今回のPALLASよりは対象患者が低リスクで、発作性を多く含んでいました

今回は不整脈死が死亡原因の大きな原因を占めています。考察では、同薬のマルチチャネルブロッカー,特にNaチャネルブロッカー作用が新機能低下に関与した。あるいはP糖蛋白相互作用によりジゴキシン濃度を増加させたなどの原因が推察されています。

アミオダロンの副作用減少版として期待されていただけに惜しい気がします。もっとも日本ではそれほどアミオダロンの重症副作用はない訳ですが、
by dobashinaika | 2011-11-18 23:09 | 心房細動:ダウンストリーム治療 | Comments(0)

心房細動患者で12週ごとのワーファリン用量調節は4週ごとに比べて安全性有効性は同等かもしれない

Annals of Internal Medicine 11月15日号より

Warfarin Dose Assessment Every 4 Weeks Versus Every 12 Weeks in
Patients With Stable Internat
ional Normalized Ratios A Randomized Trial
Ann Intern Med. 2011;155:653-659.

ワーファリンの用量調節を12週ごとにした場合、従来の4週ごとに比べて安全かどうかを検証したランダム化比較試験

P:カナダのHamilton Health Sciences-General Hospitalの抗凝固クリニックでリクルートされた、心房細動を有しINRが最低6ヶ月間は2.0~3.0または2.5〜3.5に管理され、ワーファリン用量に変化のなかった患者226名

E:用量調節を12週ごとに行った124名。4週ごとの3回に2回は偽のデータ(目標範囲内)が送付された。12ヶ月追跡

C;4週ごとに行った126名

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O:TTR (Time in therapeutic Range)、極端なはずれ値の数、維持用量変更回数、大出血イベント、客観的に評価された血栓塞栓症、死亡(二次アウトカム)

結果;
1)TTR:4週=74.1%±18.8%、12週=71.6%±20.0%:絶対危険減少は2.5ポイント(非劣性検定、p=0.020)
2)用量変更が1回以上必要だった例は12週群で有意に少なかった(37.1% vs. 55.6%;絶対危険減少, 18.5ポインtp [95% CI, 6.1 to 30.0 percentage points]; P = 0.004)
3)二次アウトカムには差なし
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結論;12週ごとの用量調節は4週ごとに比べて同じように安全であり、劣るとはいえない。

###INR測定は,ワーファリンコントロールの上での一つのネックですが、日本のガイドラインでも「少なくとも月1回の測定」を推奨度1とされています。しかしエビデンスレベルはCであり、本論文のディスカッションの中でも、ワーファリンの調節間隔の論文はこれまで他に1つしかないとのことでした。その意味で大変貴重な研究と言えます。12週ごとでも4週ごとと同等に安全とのことで、もしこの論文通りであれば新規抗凝固薬と比べたワーファリンの面倒臭さの一つがやや緩和されることになります。

しかし本研究にはランダム化試験であるが故の限界もあります。まず半年間ワーファリン用量に変化のなかった例のみを組み入れています。このため1年間で1度も変更しなかった例が12週群で62.9%、4週群で44.4%も存在しています。ちょっと良すぎる数字かと思います。また盲検性を保つため、12週群でも4週ごとに受診し採血しダミーのINR値を患者にも伝えています。これだと12週群でも患者さんは4週のときと同じようなまじめさ?で食事や服薬を守ろうとするかもしれません。

またTTRが比較的安定した集団だと、採血回数が少ない方が変動も少ないため、結果としてTTRでのポイントポイント間がなだらかな曲線となり、頻回の採血時よりも原理的にも高い値をとりがちになるのではないでしょうか(あくまで変動の少ない場合ですが)。

実際、大きな病院などではINRの落ち着いてる患者さんは、2ヶ月に1回の採血にしている施設も多いと思われます。TTRがある程度よい場合は2〜3ヶ月ごと、悪い場合は毎月というように患者さんの安定性により考えるというのが、現時点では最適と思われます。
by dobashinaika | 2011-11-16 23:04 | 抗凝固療法:ワーファリン | Comments(0)


土橋内科医院の院長ブログです。心房細動やプライマリ・ケアに関連する医学論文の紹介もしくは知識整理を主な目的とします。時々日頃思うこともつぶやきます。


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