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携帯電話と脳腫瘍の関係についての大規模コホート研究を批判的吟味しました

本日、”ジャーナルクラブはやぶさ”(開業医仲間で月1回行っている論文抄読会)で6月に引き続き「携帯電話と脳腫瘍」に関するコホート研究を読みました。

Use of mobile phones and risk of brain tumours: update of Danish cohort study
BMJ 2011; 343:d6387


南郷栄秀先生の「初めてコホートシートVer6.2」を使用して批判的吟味をいたします。

0. このチェックシートを用いるのは適切か?
コホート研究→なのでこのままチェックを続ける

1. 論文のPICOは何か
P: CANULI コホート:1925年以降に生まれ1990年まで生きている30歳以上のデンマーク人。移民は除く。デンマークの社会的不公正と癌に関する疫学研究施設によるコホートであり、登録者の社会経済的背景が把握されている

I: 携帯電話非購入者:1982年-95年のデンマークの購入登録記録からの収集データ。個人契約に限る,初回登録時18歳未満を除外など。 358,403人

C: 携帯電話非加入者

O: 中枢神経腫瘍発症率、全がん発症率

2. 予後、病因、危険因子、害、予測ルールのいずれかを見る研究か?
害をみる

3. 追跡期間はどれくらいか?
1990年から2007年までの18年間
Outcomeを生じるのに十分は追跡期間である

4. 結果に影響を及ぼすほどの脱落があるか?
Strength and limitations of the studyのところに全体の脱落率2.2%の記載がある

5. Outcomeの観察者が危険因子についてmaskingされているか?
記載がない。
しかし、がん発症の有無は登録患者のデータベース検索によるものであり、outcome評価には影響を与えないと考えられる

6. 交絡因子の調整が行われているか?
多変量解析による調整が行われている。
log linear Poisson regression morel

7. 結果の評価
1)がん発症男性122,302人、女性133,713人。中枢神経腫瘍は男性5111人、女性5618人
2)男性は携帯電話使用者で減少傾向、女子は減少傾向なし
3)喫煙関連がんは、男性も女性も携帯電話使用者で減少傾向
4)高学歴者では携帯による癌の相対危険と喫煙者の相対危険は同程度
5)携帯電話使用の中枢神経腫瘍発症相対危険は男女とも1に近い
6)神経鞘腫の発症は携帯使用男性でやや高いが明らかではない。5年未満の使用者でやや増加するがdose-response関係はない。女性では関係なし。
7)髄膜腫は女性で携帯使用者の相対危険が22%減少したがdose-response関係なし
8)その他の脳腫瘍では結果は様々で、dose-response関係なし
9)部位ごとの神経鞘腫の発症は、側頭葉でやや増加した。最初の9年で増加しその後減少。
10)後頭葉で最も増加し、4年以内使用者が最高発症率
11)頭頂葉では関係なし
12)その他の部位および部位不明の脳腫瘍は明らかに増加し、10年以上使用者で多かった→nが少ない

結論
1)全体としては、携帯電話使用と中枢神経腫瘍発症との関係は見られない
2)携帯使用により女性の髄膜腫は減少し、男性の神経鞘腫は増加したがdose-response間消えはなかった
3)最も注目される側頭葉での神経鞘腫の増加は見られなかった

###デンマークは国民層背番号制を敷いており、健康管理、疾病管理が日本と比べて信じられないほど遂行されています。そのしっかりしたデータベースで様々なコホート研究がなされている訳ですが、今回も30万人に及ぶ大コホートで、しっかりした追跡がなされ、発症率などは確かなものと思われます。ただし、対照群の選定方法が詳しく記載されていないようです。

結果としては、以前6月のブログで取り上げたinterphone研究の、最高10分位の通話時間の群で神経膠種が有意に増加したという結果とは違い、全体として一定の関係はないということです。

ただし、本文でも述べられているように研究限界として1)携帯電話加入者でもあまり使っていない人の存在 2)個人加入者のみが対象であり、法人契約をして使っているビジネスユーザーを対象としていない 3)1996年以降の加入者が非使用者にカウントされている 4)通話時間でなく加入年数で比べている、といった点があり、特に2)のビジネスユーザーが対象となっていない点は、曝露最高位の層が含まれていない恐れがあります。

まだ議論すべき点の多い問題のようです。
by dobashinaika | 2011-10-31 23:08 | 開業医の勉強 | Comments(0)

インスリン抵抗性と心房細動発症とは関係性なし:フラミンガムハート研究より

American Journal of Cardiology10月14日オンライン版より

Insulin Resistance and Atrial Fibrillation (from the Framingham Heart Study)
インスリン抵抗性と心房細動の関係についてのフラミンガム研究からの検討


・4583人の登録者(フラミンガム研究5機、7期サイクル)のうち、データが有効な3,023名対象(55%女性、平均年齢59歳)

・10年以内追跡で279名(9.3%)で心房細動が発症

・多変量解析(年齢、性、血圧、降圧薬、PR感覚、心雑音、心不全、BMI等で補正)によりインスリン抵抗性と心房細動発症は関係がない:4分位最高位と他の3分位比較でハザード比1.18,95%CI0.84-1.365,p=0.34)

結論:コミュニティーベースのコホート研究(10年以内追跡)において、インスリン抵抗性と心房細動罹患率に明らかな関係はない。

###最近の論文で、糖尿病と心房細動の関係を示すメタ解析がありました。またメタボリック症候群と心房細動の関係を検討した論文も多数あります。ただ、インスリン抵抗性となるとおそらくHOMA-IRなどを比べたと思われますが、サロゲートとしあまりに細分化されすぎて関係性が引き出せなかったのかもしれません。
by dobashinaika | 2011-10-28 16:36 | 心房細動:リアルワールドデータ | Comments(0)

ワーファリン管理に関する質的研究

Journal of Clinical Pharmacy and Therapeutics 10月20日オンライン版より

Warfarin management after discharge from hospital: a qualitative analysis

退院後のワーファリン管理についての質的研究(オーストラリア)

・オーストラリアの2つの州で、医療者、医療機関の代表、ワーファリン服用中で病院を最近退院した患者にこうぞうかされたインタービューを行い、現象学的アプローチによりデータを解析

・47人の参加者に電話インタビューを施行

・3つの大きなテーマが浮かび上がる
1)適切なワーファリン教育が効果的なワーファリン管理を生む
2)継続的なケアの中でコミュニケーションの問題が発生する
3)宅配サービスは患者、医療者両者にとって重要

###3)の宅配サービスは日本で普及していませんが、ワーファリン管理の上で「患者教育」「コミュニケーション」が大切であり、問題であることが質的研究から浮かび上がったとのことです。納得です。

心房細動に関する質的研究はこちらも参照
by dobashinaika | 2011-10-26 19:01 | 抗凝固療法:ワーファリン | Comments(0)

抗不整脈薬ごとにレートコントロールとの優劣を比較したAFFIRM試験サブ解析

Journal of American College of Cardiology 11月1日号より

Cardiovascular Outcomes in the AFFIRM Trial (Atrial Fibrillation Follow-Up Investigation of Rhythm Management): An Assessment of Individual Antiarrhythmic Drug Therapies Compared With Rate Control With Propensity Score-Matched Analyses
J. Am. Coll. Cardiol. 2011;58;1975-1985


抗不整脈薬ごとに死亡率、入院を解析したAFFIRM試験のサブ解析

P:65歳以上,あるいは脳卒中または死亡のリスク因子を有しているもの。再発する可能性のあるAF,疾患あるいは死亡原因となると思われるAF,長期治療が予想されるAF

E:アミオダロン処方729例。ソタロール処方606例。クラスIc薬処方268例

C:propensity scoreをマッチさせたレートコントロール例

O:死亡率または心血管疾患による入院

結果:
1)複合アウトカム(死亡または入院、対レートコントロール群)はレートコントロール群で良い
   アミオダロン群 =ハザード比HR: 1.18, 95%CI: 1.03 to 1.36, p = 0.02
   ソタロール群=HR: 1.32, 95% CI: 1.13 to 1.54, p < 0.001
   クラスIc群=HR: 1.22, 95% CI: 0.97 to 1.56, p = 0.10
2)死亡率のみ:アミオダロン群 はレートコントロール群と同じ=HR: 1.20, 95% CI: 0.94 to 1.53, p = 0.15
3)非心血管疾患死亡率:アミオダロン群はレートコントロール群より高い=HR: 1.11, 95% CI: 1.01 to 1.24, p = 0.04
4)最初の3年間の心血管疾患入院率はレート群で良い
   アミオダロン群 =HR: 1.20, 95% CI: 1.03 to 1.40, p = 0.02
   ソタロール群=HR: 1.364, 95% CI: 1.16 to 1.611, p < 0.001
   クラスIc群=HR: 1.24, 95% CI: 0.96 to 1.60, p = 0.09
5)ICUでの入院期間はアミオ群で短い=HR: 1.22, 95% CI: 1.02 to 1.46, p = 0.03

a0119856_2322530.gif


結論:AFFIRM試験においては、死亡と入院の複合アウトカムの対レートコントロール群比較は抗不整脈薬ごとに異なっており主に入院率の違いに依存した。入院率はすべてのコホートで高率だが、抗不整脈薬投与のすべての群でより高かった。死亡、ICU入院、非心血管死はアミオダロンでより頻度が高かった。

###本家AFFIRM試験は一次エンドポイントが死亡、二次エンドポイントが死亡+脳卒中+無酸素性脳症+重大な出血+心停止でした。今回は抗不整脈薬をアミオダロン、ソタロール、クラスIc(フレカイナイドなど)にしぼり、アウトカムは死亡と入院にのみしぼってのサブ解析です。このような細かなサブ解析ができるようになったのもpropensity scoreをという比較的目新しい手法のなせる技です。

AFFIRMで抗不整脈薬が良くなかった原因としては1)洞調律維持率が低かった(5年で63%) 2)抗不整脈薬の心毒性 3)リズム群でワーファリン中止例が多い、などが良く言われますが、これらのうち1)2)はアミオダロンだけで比べれば(少なくとも心不全や虚血に関しては)あてはまらないことが予想されただけに、本試験の結果はある意味予想に反するものかもしれません。しかしEditorialで述べられているように、入院や死亡の原因が明らかではなく、抗不整脈薬、特にアミオダロン群で入院が多かった原因も不明であり、この結果だけで即アミオダロンは心房細動に安全でないと決めつけるには早計かもしれません。

アミオダロンは日本でも低心機能の心房細動にも適応が追加されており、専門医の間では症例を選んで使われていると思われ、今後より多くのデータが待たれるところと思います。

AFFIRM試験本文はこちら
by dobashinaika | 2011-10-25 23:30 | 心房細動:ダウンストリーム治療 | Comments(0)

心房細動に焦点を当てた携帯型体外式心電図モニターに関する総説

Journal of Amerivcan College of Cardiology 10月18日号で「心房細動に焦点を当てた携帯型体外式心電図モニタリング(AECG)」の総説が掲載されています。

Amlulatory External Electrocardiographic Monitoring: Focus on Atrial Fibrillation
J Am Coll Cardiol 2011 58: 1741-1749.


この中で、携帯型でヒトの心電図をモニターする装置が次の6つに分類され紹介されています。
A-A:ホルター心電図:従来型。24~48時間装着
A-B:イベントモニタリング:症状があったときに胸に装置を当てがって記録するタイプ。30日程度
A-C:ループモニタリング:常に胸に電極を付け、症状が出たときに患者がスイッチを押す。30日程度
B-A:パッチ型ホルター:小さなパッチ式の装置を胸に常時付ける。7~14日程度
B-B:携帯型テレメトリーモニタリング(ノンリアルタイム):24時間記録し、あとでハンドヘルド装置でデータを中央に送信する。30日間まで
B-C:携帯型テレメトリーモニタリング(リアルタイム):24時間記録され、リアルタイムで中央に送信される。30日間まで

これらはそれぞれ長所と欠点があり、症例によって使い分けされるべきとされています。
心房細動の適応としては
1)心房細動の診断:動悸/原因不明の脳卒中
2)心房細動の評価:発作性か持続性か/心拍数評価/心房細動の開始と停止の記録/治療効果判定(薬剤、アブレーション)/CRTの作動状況)
があり、その他の不整脈の評価にも効果がありそうです。

こうしたモニタリングデバイスには一長一短があり、長時間記録できればできるほど診断感度は上がりますが、電極を皮膚に長時間着けていなければならない苦痛や煩雑さとの兼ね合いが問題かと思われます。

個人的には、上記A-Bタイプの、皮膚にモニター電極は着けず、イベントがあったときにのみ記録する携帯型が好きです。常時電極を皮膚につけているのとは簡便さ、わずらさしたがだいぶ違います(特に夏場や毛深い方など)。この前紹介したように携帯電話にモニター機能が付いていたら、一番簡便かもしれません。簡便ですので、動悸があるときだけでなく、1日数回1カ月程度記録するようにし、B-C型のような30日間常時モニタリングとの感度の違いを比較研究すれば面白いのではないかと思います。

なおB-A型のパッチタイプは以下のようなもので、防水式で、左胸に14日間装着し、症状があったときに表面のボタンを押して規則する仕組みのようです。
http://www.irhythmtech.com/zio-solution/zio-patch/
a0119856_1963323.jpg

(すみません。大きくしかアップできません。。。)

こうしたデバイスによって、「心房細動発掘」がより進むのでしょうか?
いずれにしても、今後その診断精度が、より検討される必要があると思われます。
by dobashinaika | 2011-10-24 19:08 | 心房細動:診断 | Comments(0)

プラザキサの市販後調査・期間終了後報告

プラザキサの市販後調査・期間終了後報告(2011年9月13日現在)が、日本ベーリンガーインゲルハイム株式会社から出されました。

発売後6ヶ月間で1492例2357件の副作用。
死亡例23例
重篤な出血性の副作用138例

でした。

こちらの記載がまとまっていてわかりやすいです。

基本的には、以前ブログで紹介した8月時点のデータからの延長ですが、前回の報告(8月13日時点データ)より死亡例8例、出血副作用が47例増えていました。

やはり、腎機能、年齢、併用薬剤、消化管潰瘍の既往の4点チェックし、”(脳塞栓も出血も)正しく怖がり、正しく使うこと”が大切です。
by dobashinaika | 2011-10-22 22:50 | 抗凝固療法:ダビガトラン | Comments(0)

スマートフォンのビデオカメラ機能で心房細動を診断するアプリの開発:心房細動診断の新機軸となるか?

以前ツイッターで
「こういう携帯心電計機能をiPhoneに持たせたら売れるだろうか?
http://www.omron-portable-ecg.jp/general/hcg-801/hcg-801_pag_index.php
とつぶやいたら大変反響がありました。

携帯心電計は心臓細動検出に有効だと思われますが、常に持ち歩くにはやや大きめでしかも高価です(市販価格3万円前後でしょうか)。ふと自分がいつも持ち歩いているiPhoneを見ていたら、オムロン携帯心電計と形が似ているので、iPhoneで心電図がモニターできればいいなと思ってつぶやいたのですが、こんなこと誰でも気づくものですね。既に実用化に向けて研究している先生がいるようです。

http://wirelesswire.jp/Watching_World/201110201530.html

スマートフォンのカメラを自分の指に押し付け毛細血管の脈動から、心拍数、リズム、酸素飽和度などをモニターできるアプリのようです。

開発した研究者が、将来的に心房細動の診断を目指していると言っているところが驚きです。先越された−と言う気もします(笑)。
http://www.tgdaily.com/health-features/58914-cellphone-monitors-vital-signs


さて新規抗凝固薬の登場によりCHADS2スコアの1点以下の症例に対し、プライマリケアで広く対策がとられる時代が到来しつつあります(もちろん現時点では慎重論に傾いており、様々な障壁はありますが)。このように心原性脳塞栓低リスク例へのアプローチが普及して行くと、次なるターゲットは以前述べたように、無症候性心房細動あるいは診断のつかない動悸患者、1、2回しか心電図が記録されていない心房細動患者へシフトして行くことが予想されます。このような患者さんでも実は心房細動発作が頻回で、脳塞栓をきたす可能性の高い方がおられます。実際仙台の脳血管疾患専門施設である広南病院からのデータでは、脳梗塞で救急搬送された患者の実に21.5%にしかワーファリンは投与されておりませんでした(以下サイトの本文にデータ記載あり)。おそらくこのような症例の多くは事前に心房細動が記録されていない、または発作記録が少なく、抗凝固療法の必要性を医師が自覚しなかったケースではないかと思われます。
http://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S0022510X11002218

このような時代となったとき、誰もが持ち得るデバイスとして、スマートフォンがこうした動悸患者、記録の少ない心房細動患者に診断に大変な威力を発揮することは容易に予想がつきます。
診断精度が気になりますが、今後大いに注目したいところです。

追記;ただし、実際上記のように自覚症状に乏しく、心電図記録もないまたは1−2回といった方に、簡易な方法で心房細動を見つけたからといって、抗凝固療法をすぐに勧められるかは,また別問題。無症状乏症状の患者さんにリスクの高い治療法を適応するというのは、治療の意思決定上、容易ならざる問題です。
by dobashinaika | 2011-10-21 00:27 | 心房細動:診断 | Comments(0)

血清尿酸値と心房細動発症とは関係あり:ARIC研究より

American Journal of Cardiology 11月1日号より

Association of Serum Uric Acid With Incident Atrial Fibrillation (from the Atherosclerosis Risk in Communities [ARIC] Study)

血清尿酸値と心房細動罹患率との関係についてのARIC研究(一般住民ベースコホート研究)

・ARIC研究の対象参加者のうち、心房細動のない45〜64歳の人を対象。1987~2004年までフォロー

・心房細動の新規発症は1085人
・血清尿酸値の標準偏差の増加に伴う心房細動のハザード比は1.16倍 (95%CI; 1.06-1.26)(年齢、性、人種、教育、BMI、血糖値、血圧、LDLコレステロール、飲酒、虚血性心疾患、心不全、クレアチニン値、利尿薬使用、心電図上のP波幅を補正後)
・人種、年齢により尿酸値と心房細動リスクの関係には違いがあった (p for interaction <0.01

結論;尿酸値の上昇と心房細動リスクの増加には関係があり、特に女性と黒人で著明だった。追加の研究は必要

###尿酸値も関係ありですか。理屈から言えば、動脈硬化の指標は全部関係がありそうですけれども。どのくらいがカットオフ値か、全文入手したらまたお知らせします。
by dobashinaika | 2011-10-18 23:19 | 心房細動:リアルワールドデータ | Comments(0)

心房細動アブレーション直後からのダビガトランの使用:JCEより

Journal of Cardiovascular Electrophysiology9月28日オンライン版より

The Use of Dabigatran Immediately After Atrial Fibrillation Ablation

心房細動アブレーション直後からのダビガトランの使用についての検討

・対象はカテーテルアブレーション後にダビガトラン投与を行った連続123例。アブレーション終了時からエノキサパリン0.5mg/kg点滴を12時間施行し中止。
ダビガトランは腎機能をベースにアブレーション後22時間で開始

・アブレーション前の抗凝固療法はワルファリン56例(45.5%)、ダビガトラン34例(27.6%)、アスピリン26%(21.1%)、なし5.7%

・アブレーション前にダビガトランを投与された腎機能正常患者は、アブレーション前36時間薬剤をストップされた・術中、周術期の塞栓症、出血は1例もなし

・3人が75mg1日2回,その他は150mg1日2回

・いずれの患者も術後脳卒中、TIA、全身性塞栓はなし

・3人の患者でダビガトラン中止後ワーファリンに変更した。2人は消化器症状、1人は全身性発疹のため

結論;ダビガトランは心房細動アブレーション後、安全で忍容性に優れていた。出血合併症や血栓塞栓症はなかった。ダビガトランは心房細動アブレーション後、ワルファリンに変わる薬となる

###ダビガトランはこのように、アブレーション直前まで投与でき、アブレーション直後から使用して速やかに効くのが、ワーファリンより使いやすい点です。「腎機能をベースにした」投与量として75mgを採用していることも注目です。
by dobashinaika | 2011-10-17 23:29 | 抗凝固療法:ダビガトラン | Comments(0)

心臓突然死の原因としての肥満やアルコール:フィンランドの疫学研究から

Herat Rhythm10月号より

Causes of nonischemic sudden cardiac death in the current era

フィンランドの一般住民コホートを対象とした非虚血性心臓突然死の原因に関する検討

・フィンランドのOulu地区住民約47万人のうち、1998年~2007年の間に心臓突然死をきたした2661例を対象とした
・剖検、カルテ、アンケート等により死因を特定した

・579例(21.8%)が非虚血性心臓突然死だった。残り78%は虚血性
・非虚血性の内訳は年齢平均55歳。男性78%
・肥満(関連心筋症)が23.7%、アルコール性心筋症19.0%、高血圧性心筋症15.5%、線維化心筋症(13.6%)
・40歳未満では線維化心筋症が最も多い(28.3%)
・40-59歳ではアルコール性心筋症が最も多い

結論:今の時代、肥満に関連した心筋症、線維化心筋症、アルコール性心筋症が非虚血性心臓突然死に主に関連していた。40歳未満では線維化心筋症が最も多かった。

###心筋症の分類が通常とは異なるため、注意が必要と思われます。「肥満に関連した心筋症」というのはまだ日本では一般化した疾患概念ではないかもしれません。肥満や虚血性心疾患の多い北欧のデータですが、今後の日本にとっても参考になるかもしれません。
by dobashinaika | 2011-10-15 19:13 | 心臓突然死 | Comments(0)


土橋内科医院の院長ブログです。心房細動やプライマリ・ケアに関連する医学論文の紹介もしくは知識整理を主な目的とします。時々日頃思うこともつぶやきます。


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