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「気軽な処方感覚」への戒めか:プラザキサの市販直後調査第4回中間報告

プラザキサに関する市販後調査の第4回中間報告(8月13日現在)が日本ベーリンガーインゲルハイム株式会社から出されました。
実は先週22日の時点で当院には配布されていたのですが、同社のホームページにアップされておらずブログに書きたいのを控えておりました。

本日、同社のホームページを見ましたら、一番最初のページに「心房細動の患者さんを診られている医療関係者の皆様に重要なお知らせがあります。」との表題で、以下の中間報告が掲載されておりました。

この報告の要旨を私なりに箇条書きしました。
1.発売後5ヶ月で1,218例 1,881件の副作用あり

2.死亡15例:うち重篤な出血の副作用8例、間質性肺炎4例、急性呼吸不全1例、心不全、肺炎1例、詳細不明1例

3.重篤な出血性の副作用91例の特徴
 1)出血部位:消化管49例、頭蓋内20例、その他および部位不特定22例
 2)血小板凝集抑制剤併用全24例:アスピリン14例(うち死亡例3)、クロピドグレル3例。
 3)併用注意薬剤:ワルファリン6例(死亡1)、ベラパミル9例(死亡1)、NSAID3例(死亡1)
 4)重篤な出血事象は220mg/日投与例でもみられた
 5)79例では添付文書中に注意喚起されている危険因子(腎機能、高齢、消化管潰瘍、併用注意薬)あり
 6)投与開始から重篤な出血までの時間:投与早期が多いが、投与80日を過ぎても発現した症例あり
 7)年齢;75例は70歳以上,死亡例8例すべて75歳以上(うち7例が80歳以上)、90歳以上も11例!
 8)腎機能:29例が腎障害。11例がCCr30以下(禁忌)、8例が30〜50
 9)消化管出血の既往:3例、潰瘍の既往は4例

これらがわかっていることです。一方もう少し情報提供が欲しい点がいくつかあります。
1.死亡例の詳細が知りたい。
時期的には、8月12日出されたブルーレターとほぼ同じ8月13日まで(ブルーレターは8月11日まで)の症例の報告です。あれっと思ったのは、ブルーレターでは死亡例が5例だったのに対し、今回15例と報告されていたことです(小さめに書いてあったので最初見落としてました)。ブルーレターの方をよく読みますと、あの5例は「専門家の評価により、本剤との因果関係が否定できないとされる」例ですので、残り10例は因果関係が否定できているものと思われます。しかしながら、今回報告の最後の方で、死亡例15例の内訳のうち8例が「重篤な出血性の副作用」とされており、また1例は詳細不明です。先の5例以外に3例が重篤な出血で死亡していると思われますので、この3例の詳細な情報が知りたいところです。これらの例がブルーレターの時点では公表されていなかったのも気になります。
同様に間質性肺炎についても、詳しいいきさつを知りたいと思います。

2.他の抗血栓薬との併用の事情を知りたい
クロピドグレルはステント症例とわかりますが、アスピリンあるいはワルファリンの場合切り替え時投与時期のオーバーラップの際に出血したのか、それとも虚血性心疾患例や非塞栓性脳梗塞既往例なのか知りたいところです。今後これらの薬からの切り替えがますます行われると思われます。ワルファリンはINR2.0を切ったら切り替えてよいとされておりますが、その時期に出血を起こさないのか、そのとき腎機能をどの程度考慮するか、いつも気になります。

3.220mg/日処方例での出血はどんなケースか
おそらく年齢や腎機能の要件を満たした例でしょうが、どの程度であったのか。

###さて、発売5ヶ月で死亡例15例、重篤な出血91例(うち死亡8例)というのは、この薬への期待が大きかっただけに、かなり重たい数字という印象を受けます。ただし、上記のようにこれらのうち79例87%は何らかの注意が必要な「危険因子」を有する例であり、11例では腎機能の面から禁忌例でした。以前のブログでも述べましたように、正しくない使い方をした例で重篤な副作用が出ていることがはっきりと示されています。明らかな禁忌例への投薬や発売初期のこの時期での90歳以上への投薬など考えますと、おそらく抗凝固薬のリスクの重篤さをそれほど深く考えず、降圧薬やスタチン、あるいは少なくともステント症例でのアスピリンなどと同様の「気軽な感覚」(誤解を恐れずに言えば)で処方されたのではないかと想像してしまいます。

この「気軽な感覚」は、私だけの認知かもしれませんが、プラザキサ発売の少し前から8月12日のブルーレター発表までの間、循環器専門医のみならず少しでも心房細動治療に携わる一般医師の間に共有されていたように思います。各種学会や医学雑誌におけるRCTに基づいた新規抗凝固薬の評価、学会のレビューにおけるCHADS2スコア1点での推奨度アップ、欧州よりも早い発売、各種発売講演会でのpromotion等々。それらを通じて、新規抗凝固薬に対しては私も含めまして久々の期待感、高揚感が漂っていたのは事実かと思います。こうした高揚感の醸成に私自身も多少なりとも寄与していなかったとは言い切れず、責任も感じます。こうした感覚が「気軽な処方」に結びついたかどうかは不明ですが、今後は今回の報告等をよくよくふまえた対応が必要なのはいうまでもありません。

今後、特に医師は「副作用危険因子」として腎機能、年齢、消化管潰瘍の有無、併用注意薬剤の4点を常に注意し、薬剤師と連携を取ってそれらにヒットする例では積極的な疑義紹介をしてもらう,などの対策を身の回りから始めることが必要です。そして製薬会社あるいは学会は様々な角度からより積極的に情報公開や注意喚起を求められるものと思います。循環器専門医やプライマリケア医のみならず、消化器専門医、薬剤師、歯科医、そして何より患者さんに正確な情報提供をお願いしたいと思います。

おまけ;モニタリングとしてAPTTが期待されていますが、受診時採血が必要になってしまうと、上記副作用危険因子への配慮等もあって、処方の「手間」の観点からはワーファリンとあまり変わらない、ことになってしまいかねませんね。より熟成された使い方が早く確立されてほしいものです。
by dobashinaika | 2011-09-28 23:51 | 抗凝固療法:ダビガトラン | Comments(0)

糖尿病と心房細動リスクに関するコホート研究およびメタ解析

HEART 9月19日オンライン版より

Type 2 diabetes, glucose homeostasis and incident atrial fibrillation: the Atherosclerosis Risk in Communities study

糖尿病と心房細動の関係についてのARIC studyのサブ解析(前向きコホート)

・ARIC studyの対象(一般住民コホート,アフリカンアメリカンを20%以上含む)を糖尿病なし、前糖尿病、糖尿病なしに分けて心房細動の発症率について検討

・糖尿病は各交絡因子補正後で、心房細動リスクと明らかな相関あり(HR 1.35, 95% CI 1.14 to 1.60)
・前糖尿病、糖尿病の確定診断のついてない対象者は、糖尿病なしとリスクの点で変わりなし
・HbA1cは糖尿病の有る無しに関わらず心房細動リスクと正の相関あり (HR 1.13, 95% CI 1.07 to 1.20)
・空腹時血糖、インスリンは糖尿病なし例では相関なし。糖尿病ありでは相関あり
・この結果はアフリカ系アメリカンでも同じ

結果:糖尿病、HbA1c、血糖コントロール不良は心房細動リスク増加と相関あり。関与するメカニズムについては不明。

###有名なFramingham studyでは糖尿病の心房細動リスクに対するオッズ比は男1.4倍、女1.6倍でした。またブログにupし忘れておりましたが、最近出たAm J Cardiolのメタ解析では補正前1.39倍、補正後1.34倍でした。糖尿病は確かにPAI-1, AGF、糖化タンパク等を介して心房筋内膜を損傷し、心房細動を引き起こすと推測されます。

これまでARBのアップストリーム治療に関するRCTが多く出たためもあり、心房細動治療において血圧管理の重要性は良く言われてきましたが。糖尿病については今ひとつ不明な点も多く、あまり意識されなかったように思われます。糖尿病の介入試験で心房細動の発症との関連を検討した研究はまだ見かけたことがないので、期待したいところです。
by dobashinaika | 2011-09-25 15:43 | 心房細動:リアルワールドデータ | Comments(0)

脳梗塞、脳出血合併心房細動例は非合併例に比べワーファリン調節がうまくいっていない

Thrombosis Research 9月19日オンライン版より

Quality of individual INR control and the risk of stroke and bleeding events in atrial fibrillation patients: A nested case control analysis of the ACTIVE W study

INRのコントロールの質が脳梗塞や脳出血にどう関係するかに関する、ACTIVE W 試験の対象を用いての症例対照研究

・ACTIVEーW試験での脳梗塞32例と脳出血234例に対し、各4倍の対象例をマッチングさせ症例対照研究を行った

・追跡期間:脳梗塞257日、脳出血222日

・TTRは脳梗塞群vs. コントロール=53.9%±25.1 vs 63.4%±24.8; p=0.055、脳出血群vs. コントロール=56.2%±25.4 vs 63.4%±26.8; p<0.001でイベント発生群の方が低い

・脳梗塞群におけるINR目標以下期間および脳出血群における目標以上期間は、期間全体ではなくそのイベントに先行する1ヶ月においてのみより長かった

・むしろ期間全体を通して、出血例ではコントロールより目標以下期間が長かった(26.8%±25.9 vs 20.8%±24.0; p=0.001)

結論:ACTIVE-W試験において背景をマッチングさせた対照群に比べ、脳梗塞例、脳出血例ではTTRは低かった。INRを高からず低からずTTRを高値に保つことが脳梗塞、脳出血予防への適切なゴールである。

###同じACTIVE-Wでは2008年のサブ解析でTTRを65%で区切った場合、65%以下では抗血小板薬と同等の効果しかないことが示されています。今回はケースコントロールの形でTT高値キープの重要性が示されています。
TTR高値キープのためにはきめ細やかなワーファリン調節が必要となります。私自身としては、原則としてINRが2.6(70歳未満は3.0)を上回ったときは0.5mg減、1.6(70歳未満は2.0)を下回ったときは0.25mg増とし、増減の次の回はできれば2週間後来院(特に上回った場合)という自分なりのやり方を決めています。0.25にするか0.5にするかは基準値からの逸脱度やその人の過去のINRの増減から推測して決めます。ただしなかなかこううまい具合に調節できないのも事実です。
しかしながら、この辺りの増減のこつが、ワーファリンによる抗凝固療法の醍醐味とも思います。
それと、日本の医療施設でINRが低い報告が時に出ますが、70歳以上の1.6~2.6が医師の頭から離れない、または70歳未満でもこの範囲と決めている医師が多いからと思われます。
by dobashinaika | 2011-09-22 23:32 | 抗凝固療法:ワーファリン | Comments(0)

安静時または運動負荷心電図による心血管イベントスクリーニングに関するシステマティックレビュー

Annals of Internal Medicineより

Screening Asymptomatic Adults With Resting or Exercise
Electrocardiography: A Review of the Evidence for the
U.S. Preventive Services Task Force
Ann Intern Med. 2011;155:375-385.


無症候の成人における安静時、運動負荷時心電図スクリーニングに関するUS preventive service task forceのシステマティックレビューです

・無症候の成人を対象とした安静時または運動負荷心電図のスクリーニングに関するRCTまたは前向きコホート研究を,主にMEDLINEとCochrane Libraryから抽出した

・スクリーングの有無により臨床的アウトカムあるいはスクリーニング後の治療を評価した研究はない
・安静時あるいは運動負荷心電図でのリスク評価(低、中、高)が、従来からのリスク評価のみと比べてどの程度正確かに関する研究はない
・63の前向きコホート研究において、従来からの危険因子補正後の心血管イベント予測因子として安静時あるいは運動負荷心電図の異常が評価された
・安静時心電図異常(ST-T異常、左室肥大、脚ブロッック、左軸偏位)、運動負荷心電図異常(ST低下、目標心拍数への不到達、心拍数回復異常、運動耐用能低下)はリスク上昇に関係していた(pooled hazard ratio estimates, 1.4 to 2.1)
・(検査の)害についてのエビデンスは限定的だが、直接的害は最小(安静時)または小さい(運動負荷)と考えられた
・心電図検査後のインターベンションの害についての研究はない
・運動負荷心電図後の冠動脈造影施行率は0.6~2.9%

結論:安静時、運動負荷時心電図の異常は引き続く心血管イベントのリスク増に関連していた(従来からの因子補正後も)。しかしながらこのことに関する臨床的意義は不明確

###心電図スクリーニングが心血管アウトカムに影響を与えるというエビデンスはないのだそうです。安静時STT変化などの所見があればリスク因子としての意義はある,すなわち特異度には一定の信頼性はあるが、スクリーニングテストとしての感度は不明ということかもしれません。特に安静時心電図ではSTT変化がないからと言って虚血性心疾患の否定には全くなりませんね。システマティックレビューは、エビデンスがないということをわれわれに教えてくれることがよくありますね。
by dobashinaika | 2011-09-21 21:38 | 不整脈全般 | Comments(0)

心房細動に伴う機能性僧帽弁逆流は洞調律回復後に改善する:JACCより(タイトル変更後再送)

Journal of American College of Cordiology9月27日号より

Evidence of Atrial Functional Mitral Regurgitation Due to Atrial FibrillationReversal With Arrhythmia Control
J Am Coll Cardiol, 2011; 58:1474-1481


疑問:心房細動例に見られる僧帽弁逆流(MR)は、心房細動が原因なのか?心房細動が洞調律に復せば改善されるのか?

P:ペンシルバニア健康システム大学でカテーテルアブレーションを施行された828例(2003年~2008年)

E:アブレーション時の心エコーで中等度以上のMR(Carpentier分類のタイプI:弁尖運動が正常)を認めた53例

C:無作為に選んだ軽度のMRまたはMRなしの53例

O:患者プロファイル、MRの程度、弁輪径、洞調律後のMR

結果:
1)MR群はコントロールよりも若く(MR群61.6歳vs. 対照群55.4歳)、持続性心房細動が多い(62% vs. 23%, p < 0.0001)
2)MR群は左房容積が大きく(volume index: 32 cm3/m2 vs. 26 cm3/m2, p = 0.008) 、弁輪径が大きい (3.49 cm vs. 3.23 cm, p = 0.001)
3)左室径、左室駆出分画は同じ
4)弁輪径、年齢、持続性心房細動はMRの独立危険因子
5)1年後のフォローアップエコーで洞調律を維持していた患者は、洞調律を維持していない患者に比べ左房容積、弁輪径とも大きく縮小し、明らかなMRの比率は低下した(24% vs. 82%, p = 0.005)

結論:心房細動は「心房機能性僧帽弁逆流」を引き起こし、洞調律維持により回復する。

###持続性心房細動に心エコーを行えば、多かれ少なかれMRが認められ、弁尖の構造や運動が正常であれば二次的なMRと考えられています。筆者らはこれを「心房機能性MR」と名付けましたがうまい表現だと思います。機序は、筆者も指摘しているように心房細動に伴う僧帽弁輪の拡張であり、一般的には心房細動→弁輪拡大→MR→左房拡大→左房心筋のリモデリング→心房細動という悪循環が考えられています。
問題はこのMRを放置すると心室機能まで低下し、予後に影響を及ぼすかということです。アブレーションが心房細動の予後をよくするかについてのデータはありませんが、もしよくする可能性があるのであれば、こうした機序によることが考えられ、今後さらに前向き研究が期待されると思われます。

追記;kimitakatajimi 先生からご指摘を受けました。タイトルを「心房細動に伴う僧帽弁逆流はアブレーションで改善する」から上記に変更いたします。アブレーションが直接MRを治癒させるような表現ですので、まずいですね、これは。先生、ありがとうございました。
by dobashinaika | 2011-09-20 19:34 | 心房細動:リアルワールドデータ | Comments(0)

スウェーデンにおける良好な抗凝固コントロール:AuriculA登録より

European Heart Journal 9月号より

Anticoagulation control in Sweden: reports of time in therapeutic range, major bleeding, and thrombo-embolic complications from the national quality registry AuriculA
Eur Heart J (2011) 32(18): 2282-2289.


スウェーデンの抗凝固療法に関する国内登録研究についての報告(AuriculA登録)

・スウェーデンの67医療施設において、ワーファリンによりINRコントロールを行っている患者18,391人を登録
・平均年齢70歳。心房細動64%、静脈血栓症19%、弁膜症13%

・TTR (Time in therapeutic range)は76.2%
・ワーファリン量は年齢とともに減少し、TTRは年齢とともに上昇
・2つの医療施設4235名対象の解析では、大出血率2.6%、徐脈/動脈血栓塞栓症は1.7%
・心房細動例では大出血率2.6%、塞栓血栓率1.4%
・大出血リスクは年齢と相関したが、血栓塞栓イベントとは相関せず


結論:TTRは良好。合併症は低く、スウェーデン国内の組織的な抗凝固管理のためであろう。AuriculA登録における用量設定プログラムの効果であろう。

###例えば最近のARISTOTLE試験のTTRは62.2%、日本の7医療施設の検討では64%でしたので、スウェーデンの76.2%は驚異的な数字です。また塞栓症発生率はRE-LY試験のワーファリン群で1.69%、大出血率は3.36%,ダビガトラン150mgではそれぞれ1.11%,3.11%ですので、RE-LYのような不均一集団でしかもRCTとの比較ではありますが、同等または良好な結果です。一定のプログラムに沿った厳格な管理を行えば塞栓症は新規抗凝固薬並み、大出血に関しては新規抗凝固薬より少ないと言えるかもしれません(新規抗凝固薬は頭蓋内出血が少ないですが)。
by dobashinaika | 2011-09-19 16:08 | 抗凝固療法:リアルワールド | Comments(0)

薬に対する大衆の理解の不確実性について:Archives of Internal Medicinより

Archives of Internal Medicine 9月12日号より

Communicating Uncertainties About Prescription Drugs to the Public: A National Randomized Trial
Arch Intern Med. 2011;171(16):1463-1468.


FDAの薬剤認可について、その意味をアメリカの一般大衆がどの程度理解しているかの検討

方法:
・アメリカのリサーチモニター30,000世帯のサンプル使用による、インターネットbaseで無作為化試験
・2944世帯が、以下の2種類の薬について2通りの認可があることの説明を受けた
 1.1組のコレステロール低下薬群(1つはコレステロール低下(代用アウトカム)により認可されたと説明、もう1つは心筋梗塞減少(患者アウトカム)により認可されたと説明)
 2.1組の消化薬群(1つは最近認可されたと説明、もう1つは8年前認可と説明)
・説明のされ方により3群に割りつけられた
 1.対照群;何も説明されない
 2.非指令群:代用アウトカムは必ずしも患者アウトカムを反映しないこと、新薬の安全性確立には時間がかかることを説明された
 3.指令群:上記説明に加え、心筋梗塞が減る脂質低下薬、より古い消化薬を求めるようにアドバイスされた群

結果:
1)39%は、FDAは極端に効く薬のみを認可していると信じており、25%は重大の副作用のない薬のみを認可していると誤って信じていた

2)コレステロール薬:指令を受けた群の71%、指令を受けない群の71%、コントロール群の59%が、心筋梗塞が減少する薬を選んだ(絶対危険減少 12% [95%CI, 7%-18%] for each explanation vs control)

3)消化薬:指令を受けた群の53%、指令を受けない群の53%、コントロール群の34%が、より古い薬を選んだ(絶対危険減少 19% [95%CI, 13%-24%] for each explanation vs control)

結論:多くの大衆はFDAが極端に効く薬や重大な副作用の無い薬だけを認可していると,誤って理解している。代用アウトカムに基づいて認可された薬の効果や新薬の安全性の不確かさを短時間で説明することで、薬の選択が改善した。薬を選択するような指示のない説明は、指示のある説明と同様の効果を示した。

###大変興味深い論文です。具体的な説明の仕方、たとえば、図表を使ったのか、何の薬について説明したか、長期の安全性をどのような例で説明したかなどが知りたいとことです。実際の臨床場面では、医師への忠誠度が選択に対しては重要な因子になると思われます。代用アウトカムの理解者71%と言うのは、かなり高い理解度ではないかとも思いますが、たしかにコレステローが下がるのと、心筋梗塞が減るのとは違うことは結構患者さんはわかってくれるように思います。大事なことは、こうした薬の選択のときのみならず、つねにコレステロールの薬を飲むことの意味をが数字を下げることではないことを念頭においていただけれるかということだと思います。

ついでながら、最近認可されたにもかかわらず、古い薬より効果が高く安全性にも優れている薬は,この研究ではどう説明したら良いのでしょうか(新規抗凝固薬のこと)。
by dobashinaika | 2011-09-17 23:51 | リスク/意思決定 | Comments(0)

動物実験ではダビガトランは脳内血腫を拡大させない: Circulationより

Circulation 9月12日オンライン版より

Anticoagulation With the Oral Direct Thrombin Inhibitor Dabigatran Does Not Enlarge Hematoma Volume in Experimental Intracerebral Hemorrhage

マウスの実験です。

・ワーファリン、ダビガトラン、プラセボ含有食事摂取後のマウス

・ダビガトランではAPTT延長。ワーファリンはPT延長

・コラゲナーゼ誘発脳内出血モデルでは、血腫容積はコントロール群3.8±2.9 μL 、ダビカトラン群4.8±2.7μL、ワーファリン群14.5±11.8 μL

・レーザー誘発微小出血モデルでは 脳内に押し出される赤血球と血漿の径を測定し、ワーファリン群で拡大を認めた

結論;2つの脳内出血モデルにおいてダビガトラン投与群は脳内血腫の容積は増えなかったが、ワーファリン群では増えた。この実験は安全性の点でダビガトランの潜在的優位性を示している。

###やはり組織因子が関与しているかどうかにかかっているのでしょうか?消化管出血が多い機序についての基礎的検討も読んでみたいところ。
by dobashinaika | 2011-09-16 22:48 | 抗凝固療法:ダビガトラン | Comments(0)

80歳以上の人へのワーファリン治療でも適切な管理を行えば出血リスクは低い(EPICA研究)

Circulation 8月16日号より

かなり以前の論文で恐縮です。Evernoteに放りこんだまま紹介するのを忘れてしまっていましたが、重要な論文と思いupします。

Bleeding Risk in Very Old Patients on Vitamin K Antagonist TreatmentResults of a Prospective Collaborative Study on Elderly Patients Followed by Italian Centres for AnticoagulationCirculation. 2011; 124: 824-829

80歳以上で、心房細動の脳塞栓予防または静脈血栓症後でビタミンk拮抗薬を初めて飲む人の出血リスクに関する検討(EPICA study)

・イタリアの抗凝固療法を行う27のセンターにおける登録研究

・服薬開始が80歳以上の患者4093人対象。平均年齢84歳(80~102歳)、9603人年追跡(平均追跡期間2.5年)

・大出血179例(1.87/100人年)。致死的出血26例(0.27/人年)

・男性の方が女性より出血率高い(RR 1.4; 95%CI, 1.12 to 1.72; P=0.002)

・85歳以上のほうがより若い層より出血率が高い(RR1.3; 95%CI, 1.0 to 1.65; P=0.048)

・TTR(time in therapeautic range)平均62%

・出血の既往、活動性がん、転倒の既往が出血の独立した危険因子

結論:ビタミンK拮抗薬のモニターが注意深く行われた超高齢者では、出血リスクは低く、年齢それ自体が禁忌であるとは考えられなかった。特異的に訓練を受けた施設における適切な管理により、超高齢者でもビタミンk拮抗薬は塞栓症予防に有効である。

###Editorial
(Bleeding in Very Old Patients on Vitamin K Antagonist Therapy)
において補足として
・心房細動が70%、静脈血栓が30%
・大出血ははじめの3ヶ月で多かった(3.87%)
・INRの目標値は2.0~3.0であり、出血者の出血時平均INRは2.5(1.0~13.8)
・出血時の82%はINRが目標範囲内
・出血の30%が頭蓋内出血で、大出血の14.5%が致死的
・出血は静脈血栓症感jの方が多かった
・腎不全、抗血小板薬併用は多変量解析により危険因子としては採用されず
・Study limitationとして、抗凝固療法専門クリニックでのデータ、超高リスク患者などは除外などが挙げられる
・BAFTA研究と出血率は同じ(BAFTAでは75歳以上の出血率は1.9%だが、BAFTAでは年齢増加が出血率増加に関連していない

確かに現場では、超高齢者が必ずしも出血しやすいとは限らないことは実感としてあります。

この研究のポイントは、やはりTTR62%と、高齢者のINR管理としてはかなり優秀なレベルにあるということです。具体的なコントロールの方法は詳述されていませんが、Methodsのところで、「治療を始める患者に対し治療の目的、合併症リスク、INRの意味、治療管理につき適切な教育を施す」とあります。当院では「心房細動外来」で初回治療時に十分な傾聴と支援を行っておりますが、大出血こそ減らなかったものの、小出血が有意に減少しておりました(以前のブログ参照)。しっかりとした情報共有が患者さんのアドヒアランスを向上させ、良好なINRコントロールにつながるものと推測されます。患者さんとの十分な情報共有、出血リスクを意識したINRコントロールをしっかりすれば80歳以上であってもワーファリン治療を躊躇すべきでない。ということです。

さて新規抗凝固薬はこの点どうなのでしょうか?新規抗凝固薬は飲む方も出す方も簡便で出血も少ないので、今後高齢者への処方は増えるのでしょうか?

2つの点で注意が必要です。まず腎機能。高齢者ほど腎機能は低下し、この研究でもクレアチニンクリアランス50未満が半数以上とのことで、超高齢者経の新規抗凝固薬(特に腎排泄優位の場合)はこの論文のワーファリンのような積極的使用を促しずらいでしょう。

もう1点、薬剤アドヒアランスの問題があります。たとえばワーファリン3.5錠を1日1回飲むのと、ダビガトラン110mg1日2回とでどちらが患者さん(あるいはご家族)が億劫がらないか。高齢者抗凝固療法のもうひとつの鍵はここにあるように思います。

簡便な(とは必ずしも思いませんが)新規抗凝固薬だから高齢者にもワーファリン以上に気軽に考えるのはまだちょっと早いと思われます。  

小規模ながら同じような対象での検討はこちら
by dobashinaika | 2011-09-15 22:33 | 抗凝固療法:ワーファリン | Comments(0)

心房細動に対するクライオ(冷凍)バルーンアブレーションに関するシステマティックレビュー: Heart Rhythm

Heart Rhythm 9月号より

Efficacy and safety of cryoballoon ablation for atrial fibrillation: A systematic review of published studies

クライオバルーンによる心房細動アブレーションのシステマティックレビューです

・発作性心房細動に対しては短期的中期的成績は良好、持続性心房細動に関しては成功率が低い
・合併症率は低いが、横隔膜神経麻痺が6.38%にあり(多くは一過性)

クライオバルーンの合併症等については以前ブログで取り上げました。
肺静脈隔離術(心房細動アブレーション)後の無症候性脳塞栓:JACCより
心房細動アブレーション中の微小脳塞栓(MEDAFI試験)

by dobashinaika | 2011-09-14 23:16 | 心房細動:アブレーション | Comments(0)


土橋内科医院の院長ブログです。心房細動やプライマリ・ケアに関連する医学論文の紹介もしくは知識整理を主な目的とします。時々日頃思うこともつぶやきます。


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