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中等度腎機能低下心房細動の人に対するリバロキサバンの効果:欧州心臓学会より

European Heart Journa8月28日オンライン版より

Prevention of stroke and systemic embolism with rivaroxaban compared with warfarin in patients with non-valvular atrial fibrillation and moderate renal impairment

EDITORIAL: Atrial fibrillation, moderate chronic kidney disease, and stroke prevention: new anticoagulants, new hope

中等度腎機能低下心房細動患者に対するリバロキサバンとワーファリンの効果比較試験です。先日出たROCKET-AF試験のサブ解析です。

P:非弁膜症性心房細動患者14,264例(脳卒中、全身性塞栓、CHADS2スコア2点以上、のいずれか)のうちクレアチニンクリアランス30~49mi/minの人2950人:平均年齢79歳、CHADS2スコア3.7点

E:リバロキサバン15mg(通常は20mg)

C:ワーファリン(INR2~3にコントロール)

O:有効性一次エンドポイント=脳卒中(梗塞、出血),全身性塞栓。二次エンドポイント=脳梗塞,全身性塞栓、心血管死、心筋梗塞、安全性一次エンドポイント=対出血および小出血

結果;
1)一次エンドポイント;リバロキサバン群2.32%/人年 vs. ワーファリン群2.77%/人年: ハザード比0.84、95%CI0.57~1.23
2)安全性一次エンドポイント;リバロキサバン群17.82%/人年 vs. ワーファリン群18.28%/人年 (p=0.76)
3)頭蓋内出血:0.71%vs. 0.88% (p=0.54)
4)致死性出血:0.28% vs. 0.74% (p=0.047)

結論:正常腎機能患者に比べて中等度低下者では脳梗塞/脳出血を多く認めた。用量の違いによる効果の際は認められなかった。ROCKET-AFにおいて用量調節は試験全体の結果と合致していた。

###リバロキサバンがクレアチニンクリアランス低下例で、用量を少なくすれば、ワーファリンと梗塞、出血とも同等であり、致死性出血は減少したとの結果です。リバロキサバンは2/3が肝代謝、1/3が腎代謝ですので、比較的腎機能低下例でも致死性出血の点では安全かもしれません。なおダビガトランではRE-LYのサブ解析で高用量の150mg2回群において ワーファリンより梗塞は減少、出血は同等でした。
またCCr30-50はeGFR換算で21.6〜36.0でCKD分類のステージ3〜4にあたります。
ただし、ROCKET-AFにおいてもCCr30未満の高度低下例は対象となっておりません。

3つの新規抗凝固薬に関する大規模試験における腎機能と効果の一覧表はこちら
by dobashinaika | 2011-08-31 23:22 | 抗凝固療法:リバーロキサバン | Comments(0)

心房細動に対する新規Xa阻害薬アピキサバンの大規模試験:ARISTOTLE試験「何が最高善か」

New England Journal of Medicine 8月28日オンライン版より

Apixaban versus Warfarin in Patients with Atrial Fibrillation

EDITORIAL: A New Era for Anticoagulation in Atrial Fibrillation


新規Xa阻害薬アピキサバンに関する大規模試験ARISTOTOLEの全文です。現在フランスで開催中の欧州心臓病学会で発表と同時に論文掲載です。

P:登録時心房細動または過去1年間に2回以上の心房細動が記録されたもの。かつ次の危険因子を1つ以上持つもの:75歳以上、脳卒中/TIA/全身性塞栓の既往、心不全、糖尿病、高血圧

E:アピキサバン5mgx2/日、9120例:ただし80歳以上、体重60kg未満、クレアチニン1.5以上は2.5mgx2

C:ワーファリン2.0mg、9081例:目標INR2~3

O:有効性一次エンドポイント;脳梗塞/脳出血、全身性塞栓症。安全性一次エンドポイント:国際血栓止血学会基準の大出血

T:無作為割り付け、二重盲検、ダブルダミー、多施設(日本含む)、ITT解析、追跡中央値1.8年

結果:
1)有効性一次エンドポイント:アピ群1.27%/年vs. ワーファリン群1.60%/年:ハザード比0.79(95%CI 0.66-0.95, p<0.001 for noninferiority,p=0.01 for superiority)

2)安全性一次エンドポイント:アピ群2.13%/年vs. ワーファリン群3.09%/年:ハザード比0.69(95%CI 060−0.80, p<0.001)

3)全死亡:アピ群3.52%/年vs. ワーファリン群3.94%/年:ハザード比0.89(95%CI 0.80-0.998, p=0.047)

4)脳出血:アピ群0.24%/年vs. ワーファリン群0.47%/年:ハザード比0.51(95%CI 0.35−0.75, p<0.001)

5)脳梗塞;アピ群0.97%/年vs. ワーファリン群1.51%/年:ハザード比0.79(95%CI 0.65-0.95, p<0.01 )

6)消化管出血:アピ群0.76%/年vs. ワーファリン群0.86%/年:ハザード比0.89(95%CI 0.70-1.15, p=0.37)

7)投与中止例はアピ群25.3%/年vs. ワーファリン群27.5%/年

8)TTR(ワーファリンが至適INRであった時間割合);62.2%

9)患者の年齢70歳(中央値)、心房細動(発作性15%、持続性または永続性85%)、平均CHADS2スコア2.1、CHADS2スコア1点が34%、ワーファリンナイーブ43%

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結論:アピキサバンはワーファリンよりも脳卒中、全身性塞栓の予防に優れ、出血は少なく、その結果より低い死亡率をもたらした。

###第3の男ならぬ第3の新規抗凝固薬アピキサバンの親試験結果報告です。対象はCHADS2スコア2.1点でRE-LYに近い中リスク群です。ほぼRE-LY, ROCKET-AFと同傾向ですが、全死亡率が有意にワーファリンよりよい、消化管出血がワーファリンより少ない傾向、TTRが至適であったワーファリン群と比較しても有意によい、など、これだけ見ると先行2薬を凌駕する内容のようにも見えます。

だたし、以下のように試験方法が3試験ともに違いますので安易な比較は、それぞれの直接対決試験が出るまでは慎むべきかもしれません。
盲検:RE-LYはオープンラベル。ROCKET-AF,ARISTOTLEは二重盲検
投与方法;ダビガトラン、アピキサバンは1日2回、リバロキサバンは1日1回
対象患者危険因子;RE-LY,ARISTOTLEは1つ以上、ROCKET-AFは高リスク
TTR割合:RE-LY64%, ROCKET-AF55%, ARISTOTLE62%

実際は代謝経路の違い、服薬回数の違いなどを考慮して、患者さんごとに使い分けて行くようになるだろうと思います。

最後に私のスタンスを述べます。ネットで情報検索すると、「新時代到来」「さらなる高みに」といった言葉が踊っていますが、こういうときこそぐっと腰を落ち着け、新薬にいたすらに振り回されず、じっくり使って行きたいと思います。なぜなら、上記3つの試験は非常に大規模でかつ洗練された試験ですが、抗血小板薬併用、弁膜症、超高齢者等が除外され、また逸脱率20%以上と、所詮バーチャルワールドのデータであるからです(いわゆる外的妥当性のことで今更の話なんですが。でもダビガトランのアスピリン併用例での死亡例などを見るにつけやはりこの点はいつでも肝に銘じるべきと思います)。そしてそれゆえリアルワールドの経験知が蓄積されていないからです。

特に新薬使用は、長期処方可能になるまでは、開業医は大勢を見てから行動すればよいように思われます。

上記3薬すべてが長期処方可能になり、経験知が蓄積されるようになれば、おそらくその使い勝手や効果安全性から考えて、今までワーファリン適応者の半数と言われる抗凝固療法フリーの心房細動患者さんがかなり減る日がやってくると思います。

しかしその後、残っているのは、発作性心房細動ながら抗凝固薬フリー、および心房細動ながら医療機関に受診していない人たち、が問題となります。これらの問題は新規抗凝固薬の登場では解くことができず、前者はどれだけ主治医がその重要性を認識するか、後者は社会で心房細動をいかにをスクリーニングし二次医療機関を受診してもらうかという地域医療の視点が必要となります。
そこまで視野に入れることがARISTOTLE(アリストテレス)の最高善につながるのではないかと考えます。

###参考資料
循環器トライアルデータベース(もうここまでまとまっている。早い!)
製薬会社プレスリリース

RE-LY試験
ROCKET-AF試験
ARISTOTLE-J試験(既に先行発表された日本のサブ解析データ)
AVERROES試験(アピキサバンvs.アスピリン)

アピキサバンの薬理学的特性はこちら
by dobashinaika | 2011-08-30 23:02 | 抗凝固療法:アピキサバン | Comments(0)

心房細動抗凝固療法のガイドラインをアメリカ、カナダ,ヨーロッパ、そして日本で比較してみました、

Europace 6月28日号より

Management of atrial fibrillation around the world: a comparison of current ACCF/AHA/HRS, CCS, and ESC guidelines

アメリカ(ACCF/AHA/HRS)カナダ(CCS)ヨーロッパ(ESC)の心房細動マネジメントガイドラインの比較に関するレビューです。以前から気になっていたので、全文を入手し、読んでみました。
抗凝固療法のところだけ、抜粋してまとめてみます。

[脳梗塞/脳出血のリスク層別化]
・覚えやすく、評価しやすいので3ガイドラインともCHADS2スコアを推奨している
・低リスク、高リスク層の推奨度はどれも明確だが、中リスク層に関しては不明確:女性、65~74歳の扱いなどで違いあり
・ESCはCHA2DS2-Vascスコアを採用している。これは65-74歳、女性、血管疾患を危険因子としているが、腎機能低下は入っていない

・出血リスクについては、高齢者や抗血小板薬併用の心血管疾患合併例では特に重要だが、ACCF/AHA/HRSではあまり深く論議されていないのに対しCCS,ESCでは重要視されている。後2者においてはHAS-BLEDスコアが採用されている。冠動脈ステント例では特に留意すべきと思われる。

[脳梗塞予防]
・2006ACCF/AHA/HRDはCHADS2スコア2点以上に抗凝固療法,1点にはアスピリンまたは抗凝固。これに対しCCS,ESCは1点以上で抗凝固
・ESCは65歳未満で危険因子は無くてもアスピリンを推奨
・CCS,ESCは特に低リスク(CHA2DS2-VAScスコア0)においてはまったく抗凝固なしも可
・ESCは他の2つよりより多くの患者(例えば65−74歳)に抗凝固療法を推奨

<ダビガトランについて>
・CCSのみ、ダビガトランをワーファリンに代わって明確に推奨している:冠動脈イベント高リスク例以外では150mgダビガトランはワーファリンを上回るとしている

・対照的にESCでは、2011年後半にダビガトランが認可されることを想定して作成されている。
・低出血リスク(HAS-BLED0-2):ワーファリンの代わりとしてダビガトラン150mgが「考慮できるかもしれない」
・高出血リスク(HAS-BLED3点以上):ダビガトラン110mgが「考慮されるかもしれない」
・(脳梗塞の危険因子)1つだけの人はダビガトラン110mgの候補者であると期待される

・ACCF/AHA/HRSガイドラインが最初に出された時はFDAのダビガトランの認可は下りていなかった。認可は2010年10月におりてガイドラインは2011年2月にアップデートされた
・ダビガトランはワーファリンの「有効な代用薬」とされている。
・人工弁、重症弁膜症、重症腎不全、進行した肝臓病はダビガトラン適用から除外
・INRの安定している患者では、1日2回であることや出血以外の副作用が増えることからダビガトランへのスイッチの利益はない、と明確に述べられている。;このことは臨床医にとっては大変重要

・ワーファリン不適合患者にはACCF/AHA/HRS、ESCともにアスピリン、クロピドグレルの併用を勧めている(クラスIIb、レベルB)
・ACTIVE A スタディによるが、脳塞栓予防はワーファリンに劣り、出血は同等である。
・このような人がどれだけいるのか?CCSで述べられているようにこのような人はダビガトランがよい。

<抗凝固療法と抗血小板療法との併用について>
・ACCF/AHA/HRSでは、抗凝固薬、バイアスピリン、クロピドグレルの3者併用は一般的に勧められないとしている
・対照的にESCでは、投与期間とステントの種類に寄って限定的に推奨している。
・CCSでは高リスクの急性冠症候群に限って推奨している。

<周術期の使用>
・ACCF/AHA/HRSでは、人工弁と高リスク例を除いて1週間の休薬を推奨(クラスIIa、レベルC)
・ESCではワーファリンは5日休止し、ヘパリンなし期間48時間まで許容としている(クラスIIa、レベルC)
・48時間と言うのはあまりに厳しく、なかにはオーバーユーズの例も出るかもしれない。
・CCSでは、CHADS2スコア2点未満では、術前5日、術後1日はワーファリンなし、ヘパリンなしを許容している
・ACCF/AHA/HRSの限定アップデートではこの点に関してコメントしていない

###3つのガイドラインは細かい点で微妙にニュアンスが違います。
日本のガイドラインこちらから見られますが、先日ステートメントが出て限定的に改訂されています。
・CHADS2スコア2点以上はダビガトラン、ワーファリンとも推奨レベルI、1点はダビガトランレベルI、ワーファリンIIa
・アスピリンは服薬コンプライアンスがよいのに塞栓症を発症した場合、非塞栓性脳梗塞/TIAの既往、虚血性心疾患、ステント例の時にのみ考慮
・術前3〜5日前のサーファリン休薬とヘパリンへの変更。ダビガトランでは24時間前までの中止、および高リスク例での2日前までの中止を勧めている

CHADS2スコア1点の人の扱いをもう一度まとめます。
ACCF/AHA/HRS:ダビガトラン/ワーファリンまたはアスピリン
CCS:ダビガトラン/ワーファリンまたはアスピリンだがダビガトランがよりよい
ESC:CHA2DS2-VASc1点でダビガトラン/ワーファリンまたはアスピリン。ワーファリン/ダビガトランがよりよい
日本:ダビガトラン(推奨クラスI)、ワーファリン(クラスIIa)、アスピリン(クラスIII)
こう見ると意外なことにCHADS2スコア1点については日本とカナダがはっきりワーファリンよりダビガトランを優位に位置づけているようです。アメリカはINRコントロールが良ければ変えなくてよいと言っているし、ヨーロッパもワーファリンよりもよいとは言っていないのです。日本はこの点でアメリカ、ヨーロッパより先行していると考えてよいのでしょうか?
by dobashinaika | 2011-08-28 23:17 | 抗凝固療法:ガイドライン | Comments(0)

Circulation誌の患者さん向けダビガトラン服用ガイド

今週号のCirculationにダビガトランの患者さん向けのガイドが掲載されています。薬の作用機序、ワーファリンとの違い、副作用、日常生活上の注意、妊娠、外科手術、抜歯時の注意点などが詳しく述べられています。

http://circ.ahajournals.org/content/124/8/e209.full

アメリカの対応が早いかどうか別にして、こういう新しい薬が出た場合は、われわれ医療者あるいは学会が積極的に患者さん向けにわかりやすい情報を提供すべきと思われます。医療者は医療情報を発信する場合、まず他の同業者がどう考えているかを考えがちですが、患者さんがどう思っているか、どう情報伝えていくかを真っ先に考える習慣を今後身につける必要があるのではないか。

これを読んでそう思いました。

これを日本風にアレンジして患者さんに配布することにします。
by dobashinaika | 2011-08-26 08:54 | 抗凝固療法:患者さん用パンフ | Comments(0)

ビタミンD欠乏は心房細動の新規発症には関係しない:American Heart Journalより

American Heart Journal 8月12日オンライン版よりより

Vitamin D status is not related to development of atrial fibrillation in the community

ビタミンDの状態の心房細動新規発症への影響を検討したコミュニティーベイスの研究(フラミンガム研究)

P:フラミンガムハート研究で心房細動の既往のない2930人。年齢65±11歳。56%女性。9.9年追跡

E:心房細動新規発症425例、15%

C:心房細動非発症

O:ビタミンD血中濃度:25-OH-D

結果:ビタミンD活性が1SD(標準偏差)増加分ごとの心房細動のハザード比は0.99(95% CI 0.88-1.10, P = .81)。ビタミンD活性の層別化によっても、心房細動発症に差は無し。

結論:今回のコミュニティーでは、ビタミンDの状態と心房細動新規発症に差はなかった。ビタミンD欠乏症は心房細動新規発症を促進しない。

###ビタミンD欠乏は種々の心疾患、たとえば虚血性心疾患のリスク因子であるとの報告は数多くあります。ビタミンDはカルシウム代謝の他、免疫候の賦活化、RAS抑制作用なども実験的に認められているようでウが、今回のコミュニティーにおいては心房細動とは関係ないようです。それにしても、オメガ3不飽和脂肪酸とか、ビタミンDとか、どうも効果の弱いアップストリーム治療と日本では思われがちですが、アメリカでは頻繁にこれらに関する論文が出ています。アメリカでは虚血性心臓病への関心がとにかく高く、それを押さえる薬剤、サプリメントやOTCが常に注目されているからかと思われます。
by dobashinaika | 2011-08-25 22:35 | 心房細動:アップストリーム治療 | Comments(0)

ワーファリン、アスピリンからプラザキサに切り替える際は服薬がきちんと中止されているかを十分確認すべき

一つ前のブログで書いたワーファリン副作用と心理社会的要因に関する論文を読み、また金沢大学血液呼吸器内科のブログを読んで考えたことがあります。

プラザキサ騒動で、腎機能チェックの重要性が製薬会社や学会のステートメントで盛んに強調されています。私は以前のブログでも述べたように、もう一つ大切なこととして、ワーファリンあるいはアスピリンからの切り替え時、それらの影響が体内に残っていないことを十分確認すべきであることを強調したいと思います。

当院ではプラザキサ処方の患者さんの半分は新しく処方した方ですが、残り半分はワーファリンからの切り替えです。金沢大学のブログでは、ワーファリンからの切り替え時にはPT-INRのチェックもすべきと述べられています。たしかに、今日のStrokeの論文でも、認知機能、気分障害、リテラシーその他の要因から、ワーファリンを止めるように患者さんに伝えたにもかかわらず、ずっと服薬を継続する人が、少ないとはいえあり得ると思われます。長く通院されている患者さんの手元には、これまでうっかり飲み忘れたり、受診日の関係でだぶってしまったワーファリンがまだたくさんある方も多いと思われます。中には医師から指示されてはいたものの、ついうっかり同時服用される方もいるかもしれません。ブルーレターにある重篤な出血例の中にはワーファリンからの切り替え例が多かったとのことです。

また当院では心房細動患者さんへのアスピリンの処方は無いのですが、循環器を専門にしていない一般医の先生はまだアスピリンを処方している方も多数おられます。今全国で、そうした例でのプラザキサへの切り替えが盛んに行われていると思われます。ワーファリンからはINR2.0以下になってから切り替えるよう添付文書にありますが、アスピリンからの切り替えの詳細に関しては記載がありません(ブルーレターの死亡例2例はアスピリン併用例)。アスピリンは半減期が長いので、7日程度中止してからプラザキサを開始すべきと考えられますが、その点十分強調されていないように思われます。またアスピリンは剤型も小さく、存在感が薄いため、患者さんによく説明しないと手持ちの薬をそのまま飲まれてしまう場合も考えられます。先日当院に来院された方は、プラザキサを希望されて訪れましたが、血圧の薬およびアスピリンが他院から出ており、それらがまだ余っているので、プラザキサだけ欲しいとおっしゃいました。こうした方は血圧の薬と一緒にアスピリンも袋に入っている訳ですので、それを除いて服用するよう、しっかり説明する必要があります。

プラザキサは半減期が短く、その点でもワーファリン、アスピリンとは時間概念が大分違う薬です。飲むとすぐ効いてきますので、これまで以上にオーバーラップには注意を払うべき薬なのです。

プラザキサ処方でチェックすべき大きなポイントとして、腎機能が第一ですが、もひとつワーファリンあるいはアスピリンからの切り替え時には、ワーファリンあるいはアスピリン中止がきちんとなされているか、も強調されるべきと考えます。

なお、金沢大学のブログでは、APTTでのモニタリングの重要性が述べられています。モニター間隔、基準値などまだ定かではありませんが、考慮すべきと思われます。
by dobashinaika | 2011-08-23 23:09 | 抗凝固療法:ダビガトラン | Comments(0)

ワーファリンによる出血に心理社会的要因がどう関与するか:Strokeより

Stroke 8月11日オンライン版より

The Unrecognized Psychosocial Factors Contributing to Bleeding Risk in Warfarin Therapy

ワーファリンの出血リスクに関与する認識されていないような心理社会的要素に関するオーストラリアの地区住民ベースのケースコントロール研究

E(Case):2008年3月から2009年6月まで、ある地域住民でワーファリンを服用し、INR6.0以上が記録されたことのある人157人

C(control):INRが治療域で維持された人329人

O:インタービューにより評価された認知機能、抑うつ気分、ヘルスリテラシー

結果:INR高値群では、認知機能低下、抑うつ気分、ヘルスリテラシー低下者はコントロールのそれぞれ1.9倍、2.2倍、4.0倍

結論;認知機能低下、抑うつ気分、ヘルスリテラシー低下はワーファリン不安定化のリスク因子である。このことは、認知機能の良い集団においても、また臨床的治療学的な各因子と比べても同様のインパクトがある。また高齢者ほど適応できるものである。高齢者へのワーファリン処方では、定期的に心理社会的欠損をチェックする必要がある。

###ワーファリンを論じるときはこのような研究はきわめて大切なのです。ワーファリンは、診察ごと、採血ごとに飲む錠数が変わる可能性のある薬であり、かつ飲み合わせ、食べ合わせ、抜歯、手術時の中止など、数多の制約を伴う薬です。それゆえ薬のアドヒアランスがきわめて大切であり、かつその維持には他の薬より一段と困難が伴うと思ってよいと思います。CHADS2とかCHA2DS2-VAScとかいろいろ言ったところで、患者さんがきちんと飲まないとどうしようもない訳ですね。
認知機能、抑うつ気分、リテラシー、いずれも大切ですが、INRが6以上となると間違って多く飲んでしまった場合がも最も考えられます。認知機能低下により、薬を飲んだかどうか忘れてしまって2度飲みすることはあるかもしれません。また抑うつ気分や、リテラシーが低い場合も飲み間違いは起こるかもしれません。
出血リスクを示すHAS-BLEDスコアにこの心理社会的要素も加えてほしいものです。
気になるのは、認知機能の低下、抑うつなどは、薬をむしろ飲まない方向に働くのではないかと言うことです。リテラシー低下も例えば、採血の日やあるいはちょっとした出血で飲むのをやめてしまう患者さんなどが考えられます。私の外来などでは、むしろINRが極端に低く、聞いてみるとしっかり飲んでいない人が多いのです。逆に塞栓症がどのくらい心理社会的要素に影響されるのかも知りたいところです。
by dobashinaika | 2011-08-23 22:13 | 抗凝固療法:ワーファリン | Comments(0)

電気的除細動後の心房細動再発抑制におけるn-3不飽和脂肪酸の効果

Circulation 8月15日オンライン版より

n-3 Polyunsaturated Fatty Acids in the Prevention of Atrial Fibrillation Recurrences After Electrical CardioversionA Prospective, Randomized Study

n3不飽和脂肪酸(n-3 PUFAs)は、電気的除細動後の心房細動再発を抑制するかどうかの大規模二重盲検比較試験

P:電気的除細動後少なくとも1回再発したことのある持続性心房細動199人。アミオダロンとレニンアンジオテンシン系抑制薬服薬中

E:n-3 PUFAs 2g/日

C:プラセボ

O:服薬4週後に電気的除細動を後の、1年間の洞調律維持率

結果:n-3 PUFAs群で洞調律維持率は有意に高い:ハザード比n-3群0.62(95%CI, 0.52-0.72)vs. プラセボ群0.36(0.260.46)、P=0.0001

結論:アミオダロンとRAS系阻害薬にn-3PUFASを追加すると電気的除細動後の洞調律維持率は高くなる・この事実の確定と普及にはより多くの研究を要する。

###n-3不飽和脂肪酸に関するアップストリーム治療はこれまでさんざん取り上げました。最近のメタ解析では予防効果なしでした。これはアミオダロンとRAS阻害薬にかぶせればいいという論文です。きちんとしたRCTなのでそれなりの意味はあります。でもそれほど洞調律に固執しなくてもいいのではとも思います。短期間にこれだけ論文が出ているところを見ると、欧米では虚血性心疾患の予防のために不飽和脂肪酸もいつも注目されていますので、その流れからだと思われます。日本人にどれだけ適応できるかは不明かもしれません。アミオダロンも使えないことですし。

最近取り上げたn-3不飽和脂肪酸と心房細動予防についての論文はこちら
Heartのメタ解析
Europace2月号(本論文とほぼ同じ設定)
昨年のJAMAの論文
by dobashinaika | 2011-08-22 19:43 | 心房細動:アップストリーム治療 | Comments(0)

カナダの家庭医は心房細動の人にCHADS2スコアを使っているのか:Can Fam Physicianより

Canadian Family Physician8月号より

Are family physicians using the CHADS2 score?: Is it useful for assessing risk of stroke in patients with atrial fibrillation?

Can Fam Physician. 2011 Aug; 57(8):e305-9.


カナダの家庭医がCHADS2スコアをどのくらい利用しているかについての検討です。

・カナダ、エドモントンの3つの家庭医療クリニックでワーファリンが処方されていた心房細動の人415人のCHADS2スコアをレトロスペクティブに調べた
・CHADS2スコア0点=7%、1点=21%、2点以上71%
・約80%の人はレートコントロール薬を服用

結論:CHADS2スコアはすべてのケースで適用されているとは限らない。CHADS2スコアは低リスク、中リスク、高リスクに患者をカテゴライズするに十分な感度が無いガイドラインは遵守されるべきだが、CHADSの部分は患者リスクの最も効果的な評価法とは言えない。

###こちらのJ-RHYTHM Registryをみると、日本の循環器専門医の方がもっと使っていません。なんとほぼ半数がCHADS2スコア1点未満です。
日本ではアスピリン使用はガイドライン上、クラスIIIとむしろ禁忌となっていることも関与しているかもしれません。
日本でも家庭医対象に検討すれば、カナダと同様の数字になるような気がします。
なおカナダでは最近までCHADS2スコア1点はアスピリンかワーファリンのどちらかとなっていましたが、最近1点はダビガトランに変更されました。日本もそれに追従しています。1年後くらいに同様の検討をダビガトランでしたらどうなるでしょうか?
by dobashinaika | 2011-08-21 12:47 | 抗凝固療法:リアルワールド | Comments(0)

スタチン(脂質低下薬)が心房細動の短期予防には効くが、長期予防には無効であるメカニズム

Circulation 8月15日オンライン版より

Atrial Sources of Reactive Oxygen Species Vary With the Duration and Substrate of Atrial FibrillationImplications for the Antiarrhythmic Effect of Statins

背景:NOの酸化還元バランスは心房細動の病因に関係している。スタチンはNOx2-NADPHオキシダーゼを抑制し、術後心房細動を押さえることが知られているが、二次予防には無効であり、そのメカニズムは不明

方法&結果:
・ペーシング誘発あるいは房室ブロックに続発する心房リモデリングを持つ羊モデル,および心臓術後130人の右房サンプルを使用
・両心房間あるいは心房細動の罹病期間によるNO酸化還元のアンバランスがメカニズムであることに着目

・Rac1, NADPHオキシダーゼ活性、NOX2とp22phoxのタンパクレベルは心房細動2週めの羊の左心房および術後発症の心房細動の患者で明らかに増加。白血球浸潤には差はなし
・反対に、長期持続性心房細動では、uncoupled nitric oxide 合成活性(BH4conten減少やアルギナーゼ活性増加に続発する)とミトコンドリアオキシダーゼが活性酸素種の両心房での増加を担う
・アトルバスタチンは術後心房細動患者の右心房でのRac1やNOX2-NADPHオキシダーゼ活性のメバロン酸経路での可逆的な抑制を引き起こす。
・しかしながら同薬は永続性心房細動患者の活性酸素種、uncoupled NO合成酵素、BH4には影響しなかった

結論:NADPHオキシダーゼの心房でのアップレギュレーションは早期に起こるが一時的。心房リモデリングに関係する活性酸素種のソースが変わることが、スタチンが一次予防には有効だがその管理には無効であることの説明となる。

###難しい論文に手を出してしまいました(笑)。
簡単にまとめると、スタチンは発症前あるいは早期の心房細動予防には有効だが、二次予防には無効である。心房細動のメカニズムの一つに炎症があり、その原因として活性酸素種(ROS)が知られているが、ROSの発生源は早期にはNADPHオキシダーゼ活性化がありこれにはスタチンは有効だが、持続性心房細動では他の蛋白造成酵素が関与するのでスタチンは無効。大雑把にはこういうことでしょうか。uncoupled NO合成酵素、BH4を抑制する薬が見つかれば二次予防も期待できるかもしれません。

最近のメタ解析ではスタチンは、心房細動の短期予防効果は認められていますが、長期予防効果はないとされています。参考までに。
by dobashinaika | 2011-08-20 22:40 | 心房細動:アップストリーム治療 | Comments(0)


土橋内科医院の院長ブログです。心房細動やプライマリ・ケアに関連する医学論文の紹介もしくは知識整理を主な目的とします。時々日頃思うこともつぶやきます。


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