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「動悸」に関するEuropean Heart Rhythm Associationの総説です

「動悸患者のマネジメント」に関するEuropean Heart Rhythm Associationのposition statementが出ています。

Management of patients with palpitations: a position paper from the European Heart Rhythm Association

長いですが、大変よくまとまって書いてありプライマリケアにも有用です。
今回はご紹介だけ。あとで時間があったらまとめてみます。
by dobashinaika | 2011-06-30 18:11 | 不整脈全般 | Comments(0)

ダビガトラン適正使用に関するレビュー:日本循環器学会雑誌より

日本循環器学会雑誌 Circulation Journalに心房細動の抗凝固療法に関するレビューが掲載されています。

Antithrombotic Therapy in Atrial Fibrillation
– Evaluation and Positioning of New Oral Anticoagulant Agents –


日本循環器学会の心房細動動治療(薬物)ガイドラインの合同研究班がautherであり、ダビガトランの適正使用に関して推奨度とエビデンスレベルが記載されていますので、明確には謳われていないものの実質的なガイドライン改訂(というか追加)と考えてよいと思います。
ダビガトランに関する点だけ簡約してみました。

ダビガトランの適正臨床使用
・CHADS2スコア1点以上はダビガトラン(推奨度I、エビデンスレベルA)
これは昨年のAHAでのCHADS2スコア別ダビガトランの効果を検討した発表が根拠のようです。
・中等度腎機能低下、P-糖蛋白阻害薬併用、70歳以上、消化管出血の既往の人は110mgx2を考慮
・CHADS2スコア0点では、心筋症、65-74歳、女性、冠動脈疾患、甲状腺中毒のうち一つがあれダビガトラン考慮

除細動時のダビガトラン投与
・ワーファリンの代替として,より安全に使用できる(推奨度I、エビデンスレベルB)

抜歯や手術時
・ワーファリンと同様の扱いで良いはずだが、現時点でエビデンスはない。
・手術時は、腎機能と出血リスクにより手術前最低24時間は休薬すべきである。
Table3に詳しい記述があります
・出血高リスク、完全止血が必要な大手術の際はダビガトランは2−4日休薬し、代替としてヘパリンが考慮されるべき
・止血が確認され次第速やかにダビガトランを再開すべき、その際ヘパリン等のつなぎは必要ない

出血時の対応
・出血の重症度に応じてダビガトランは一時的あるいは永久的に中断すべき
・出血源を同定し外科的止血をすべき
・ダビガトランは腎排泄なので十分な補液を行う
・他のサポート療法として圧迫、輸血、透析、高用量血液濾過
・2時間以内の服用であれば、胃洗浄と活性炭吸着を考慮すべき
・リコンビナント活性化VII因子(NovoSeven®)やプロトロンビン複合体は即効性があるが、ダビガトランでの発表済みデータなし

抗凝固薬感の切り替え法
・ワーファリン→ダビガトラン:INR2.0未満になるまでワーファリンを中断すべき
・ダビガトラン→他の注射薬:ダビガトラン投与12時間後から開始
・他の注射薬→ダビガトラン:ダビガトランは投与量変更または中断2時間前から投与すべき

Figure 4が大注目。CHADS2スコア1点でもダビガトランの推奨度がクラスIになりました。ワーファリンのときはIIaでした。
一つだけ言いたいこと。これだけ有用な情報ですので、日本語で出してほしいです!
by dobashinaika | 2011-06-29 23:03 | 抗凝固療法:ダビガトラン | Comments(0)

Brugada症候群と心房細動の関係について勉強しました

Brugada症候群と心房細動の関係に関する総説(Editorial)がありました。勉強の意味で要約しましたので参考にしてください。

Brugada syndrome and atrial fibrillation: pathophysiology and genetics

・1992年Brugada兄弟は、心電図上V1-V3で右脚ブロックとST上昇をきたす8人の患者の心室細動や突然死のリスクに関して報告した
・そのうちの一人の患者は8歳の女の子で心房細動の既往があった
・彼女の最初の失神は8歳のときだが、心房細動は生後すぐに認められた

Brugada症候群の遺伝学
・はじめに発見されたこの症候群に関係ある遺伝子はSCN5A:Na内向き電流チャネルであるNaV1.5のαサブユニットをエンコードする
・この遺伝子変異は同症候群の20%で同定される
・近年、よりまれではあるが、関連ある遺伝子が発見されている;GPD1L,SCN18,SCN3B,KCNE3,CACNA1C,CACNB2b
・SCN5Aは家族性心房細動にも関係している

心房細動とBrugada症候群
・Brugada症候群の心房細動,粗動合併率は約20%で、40歳以上の一般人口における2.3%に比べて多い
・Kusanoらは同症候群の心房細動の70%は夜に発症することを報告し、夜間迷走神経緊張と交感神経退縮は大きな役割を担っているとされた
・この交感—副交感バランスで引き起こされる徐脈が心室性不整脈の誘発に寄与するとも考えられており、同症候群の突然死が夜多いこともその裏付けである
・心房性不整脈はより重い不整脈の指標となる.実際心室性不整脈が誘発され、ICDの適応とされるようなタイプ1のBrugada症候群は心房細動を多く合併している
・Papponeらは新規発症心房細動ではIc群抗不整脈薬で明らかになるBrugada症候群は3.2%もおり、孤立性心房細動では5.8%に上ると報告した
・SCN5A変異が認められなくてもICD植え込みを行った患者のうち一人はフォローアップ期間中心室細動になった。これは薬剤により顕在化するBrudgada波形は、心室性不整脈に先立って心房性不整脈が発症することを示唆する

Brugada症候群の心房細動におけるSCN5A変異の影響
・今回のAminらの仮説は興味深いが症例数が少ない

不整脈発生のメカニズム
・Makiyamaらは常染色体優性遺伝の心房細動の家族を調べ、SCN5Aの新しい獲得形質を同定した
・この家族は、10代で心房期外収縮に伴う動悸感を訴える.これが後日発作性あるいは持続性となった
・カテーテルアブレーションは1人の発端者に施行されたが、右房の多発性心房期外収縮を誘発させ、2回めセッションを要し最終的には症状が残った
・SCA5A変異により獲得された機能は、心房期外収縮や心房期外収縮を引き起こす再分極や早期後脱分極から生じるtriggered activitydと推察された

・TohらはSCN5A変異患者は心房内伝導時間が延長していると報告した。
・Aminらの論文とは左房径は異なっていないことが違う

・心房細動の発症は時に自律神経の揺らぎの大きい夜に見られ、Brugada症候群の心房細動も同様
・迷走神経緊張は心房内伝導時間を延長させ、不応期を短縮させる
・SconikらはSAN5Aの機能喪失変異が心内神経叢活動のインバランスや迷走神経緊張を引き起こすと報告した

Brugada症候群の心房細動の管理
・Naチャネルブロッカー使用は、Brugada症候群を悪化させるため慎重に考えるべき
・同様にβブロッカーは再分極の貫壁性の不均一を促進させST上昇を顕在化させるし、Ca拮抗薬も同様なので避けるべき
・アミオダロンの安全性も確立されていない
・キニジンはBrugadaパタ−ンと心室細動を減じる。これは迷走神経緊張作用とItoのブロック作用と考えられる
・キニジンはBrugada症候群の心房細動に有効と考えられる
・心房細動コントロールはICD安定化の重要な要素であるので(心房性不整脈は誤作動の14%)、心房細動の薬剤コントロールが困難なときは心房細動アブレーションを考慮する
・YamadaらはBrugada波形の心房細動6人に肺静脈隔離を行い、全例抗不整脈薬からフリーとなったことを報告している

結論
Brugada症候群の理解は急速に進んだが、まだ答えのない問題もある。Brugadaにおける心房細動のメカニズムには多くの因子が関与する。このメカニズムの解明は一般的な心房細動への理解のインパクトをなるであろう
by dobashinaika | 2011-06-27 23:26 | 心房細動:リアルワールドデータ | Comments(0)

医療リスクについての「理解」と「納得」

突然ですが、医療とは何か、臨床とは何か、この大上段な問いに対して暫定的かつ業界的にも世界潮流的にも妥当な答えは「医療はコミュニケーションである」ということだと思われます。
では、コミュニケーションとは何か、これもかなり大上段なテーマですが、暫定的に、「様々なものを共有または共感すること」としておきます。また行為の文脈からは「合意形成」であるということもできます。
この「様々なもの」は、一言で言えば「情報」と言っても良いですが、その中には、知識、価値、感情といったカテゴリーが含まれるはずです。

ダン・ガードナーの「リスクにあなたは騙される」(早川書房)はリスク認知を理解する上での名著ですが、そこで人間の思考システムには「頭」と「腹」の2つがあることが強調されています。言うまでもなくそれは「理性」と「感情」に相当するのですが、原発事故以来、こうしたリスク認知を巡る二項対立がよりクローズアップされてきているように思われます。
たとえば「安全」と「安心」、「客観確率」と「主観確率」、「アルゴリズム」と「ヒューリステクス」。どれも言葉は違いますが「頭」と「腹」の2システムを想定した概念です。

はじめに述べた「様々なもの」は、医療コミュニケーションにおいては「医学的知識」と「それに対する感情や価値観」という二項対立の形で現れてくるように思われます。例えばワーファリンを飲む場合の副作用は約1%ですが、それより飲むことの利益の方が大きいことを説明した場合、患者さんの反応はおおむね次の4パターンあることを私はずっと感じていました。

まず、1%というリスクの意味とベネフィットとの差を理解して、服用することに納得される人。この人たちを「理解納得型」と呼ぶことにします。

次に、リスクとベネフィットの意味は理解するけれども、それでも副作用で脳出血になったらこわいので飲みたくないという人。この人たちを「理解不納得型」と呼ぶことにします。

第3に、リスクやベネフィットの意味はわからないけれども、先生の言うことだから信用しますという人。この人たちを「不理解納得型」と呼ぶことします。

最後に、やはりリスク、ベネフィットの意味はわからないが、副作用が不安なので服用しないという人。この人たちを「不理解不納得型」と呼ぶことにします。

このうち第3の「不理解納得型」は主に高齢者に多いのですが、これまでブログでも何度か言及した社会心理学で言う精緻化可能性モデルの周辺ルートに相当します。リテラシーや動機が不十分な場合、情報の送り手すなわち医師への信頼性や魅力の高さを根拠に納得する思考法です。

私が常日頃考えるのは、上記2番めと4番め、すなわちどちらも「不納得型」ですが、この人たちに納得していただく、つまり「腹」でわかっていただくにはどうしたら良いかということです。いわゆるリスクリテラシーを高めれば、果たして「腹」レベルまで納得してもらえるのでしょうか。この問いに対しては、「腹」の手強さを考えると、いささか絶望的な気配が漂います。

「腹」とは、感情を主に指しますが、またその人個人の信念あるいは価値観を含む概念でもあります。言うまでもなく個人の感情や価値観は非常に強固です。特に医療のリスクに関する「腹」は、絶望的に手強い。なぜならまず副作用は自分自身のからだそのもののことだからです。計画停電のリスク、増税のリスク、他人がワーファリンを飲んで脳出血になる1%のリスク,こうしたリスクと、自分が脳出血になってしまう現象とは「その人」にとって根本的に違います。

さらにリスクは、基本的に「未来のこと」の確率ですのでリスク1%といっても、出血が起きてしまえばその人にとっては100%の「過去のこと」になってしまします。経済学者小島寛之が村上春樹の「パン屋再襲撃」の一節「世の中には正しい結果をもたらす正しくない選択もあるし、正しくない結果をもたらす正しい選択もあるということ」の中に見いだした不条理性です。「ことが起きる前の正しさ」と「ことが起きたあとで振り返ったときの正しさ」という決定的な断絶です。

こうした「腹」の前ではわれわれ医療者はなす術がないかもしれません。しかしながら、まずこういうことはできると思うのです。たとえば2番めの「理解不納得型」の人は、実は「理解不十分あるいは誤解不納得」なのかもしれない可能性があります。コストやスキルアップで「誤解」を解くことで「納得」に導けるかもしれません。

それでも「納得」が得られない場合はどうするか。私は「それはそれで良い」と思います。はじめに述べたように、コミュニケーションは「感情への共感」「価値観の共有」がその本分であり。早急に結論を出したり問題解決をいそいだりすることが本質ではありません(時間的緊急性のある問題は別に考えます)。了解し合うことやプロセス自体に意義があると考えるからです。ハーバーマスはこのような了解志向型の営みを「コミュニケーション行為」と呼び、「成果志向型」よりも本質的であると指摘しました。情報の共有の努力を尽くした上で、「不納得」について共感するーとりあえずこのスタンスを大事にしたいと思います。

なお、就活でも何でもコミュニケーション能力が最重要などとよく言われるようになりましたが、コミュニケーション行為は「能力」の尺度で捉えられるものか、いつも疑問に思います。「情報」の共有であれば、それなり能力やスキルは必要です。これに対し価値観や信念、感情と言った思考活動について「共有、共感」するのも「能力」なのでしょうか?「経験」や「想像力」の介在する余地は?また後日考えたいテーマです。
by dobashinaika | 2011-06-26 11:20 | リスク/意思決定 | Comments(0)

2型糖尿病の心房細動リスクに関するメタ解析:American Journal of Cardiologyより

American Journal of Cardiology 7月号より

Meta-Analysis of Cohort and Case–Control Studies of Type 2 Diabetes Mellitus and Risk of Atrial Fibrillation

2型糖尿病の心房細動リスクに関するメタ解析

・7つのコホートまたは4つのケールコントロール研究。高リスク者対象やRCTは除く。
・1,686,097例対象中、心房細動例108,703例

・糖尿病症例の心房細動相対危険度は1.39 (95%CI 1.10-1.75, p for heterogeneity <0.001)
・出版バイアス補正後は1.34 (1.07 to 1.68)
・多くのリスク因子補正後は、対年齢補正比にすると小さな効果にとどまる(RR 1.24, 95% CI 1.06 to 1.44, vs 1.70, 1.29 to 2.22, p for heterogeneity = 0.053).
・糖尿病が寄与している心房細動の population-attributable fraction(絶対危険に人口をかけて疾患の発生率で割ったもの)は2.5%

結論:
糖尿病は続発する心房細動のリスク増加と関連があった。しかしそのメカニズムは未だ推測の域を出ない。

###糖尿病は、心房細動の危険因子としては目立たない存在で、Framingham研究などでは大きなRRが得られているとはいえ、あまり重要視されてこなかったといえます。
この論文の知見を単純化すると糖尿病があると心房細動は、1.4倍多くなる、という結果です。しかし肥満、メタボリック症候群、アルコールなど糖尿病関連の各種因子も心房細動の危険因子ですので、ケースコントロールなどでは交絡因子となっている可能性は十分考えられます。
by dobashinaika | 2011-06-24 22:23 | 心房細動:リアルワールドデータ | Comments(0)

ブルガダ症候群で生じる心房細動と遺伝子変異の関係性:Europaceより

Europace 7月号より

Facilitatory and inhibitory effects of SCN5A mutations on atrial fibrillation in Brugada syndrome

Brugada症候群で報告されているSCN5A遺伝子変異と心房の電気的特性との関連についての横断研究

P:Brugada症候群

E:SCN5A遺伝子変異あり、78例

C:SCN5A遺伝子変異なし、136例

0:心房内伝導時間(P波幅)、左房径(MRIから)、心房期外収縮(ホルターから)

結果:
1)臨床像(心房細動罹患含む):有意差なし
2)P波幅:変異あり群>変異なし群。ただし変異なし群はNaチャネルブロッカー投与で著明延長
3)左房径;有意差なし
4)心房期外収縮;変異あり群<変異なし群

結論:Brugada症候群において、SCA5A遺伝子変異は心房内伝導遅延と心房期外収縮の抑制に関連した。心房内伝導遅延は心房細動維持の基質形成を促進するが、一方心房期外収縮の減少は心房細動誘発の抑制につながる。

###SCN5AはNaチャネルのサブユニットで、Brugada症候群の11~28%に変異があると言われています。Brugada症候群に心房細動の合併をよく見るのは、この変異によってNaチャネルブロック、INaの減少が起き、心房内伝導遅延→心房細動,という図式が完成するためです。
この論文ではそれとともに、異所性の発火も押さえられる知見が得られた点が目を引きます。促進性と抑制性がどの程度のバランスで心房細動を引き起こすかは不明ですが、より若年なら抑制性の恩恵を受け、加齢につれて促進性が効いてくるような気もします。
by dobashinaika | 2011-06-23 23:36 | Brugada症候群 | Comments(0)

脳腫瘍リスクと携帯電話使用の関係:WH0ワークグループ分類の元論文を読む

本日、”ジャーナルクラブはやぶさ”(開業医仲間で月1回行っている論文抄読会)で「携帯電話と脳腫瘍」に関する論文を読みました。
トピックスとなっていますので、取り上げてみました。

Brain tumour risk in relation to mobile telephone use: results of the INTERPHONE international case–control study The INTERPHONE Study Group*

International Journal of Epidemiology 2010;1–20 doi:10.1093/ije/dyq079

この論文は、先日WHOの国際がん研究機関(IARC)が、携帯電話を発がん性評価カテゴリの「2B」;Possibly Carcinogenic to Humansに位置づけた根拠が含まれていると考えられます。

南郷栄秀先生の「はじめてケースコントロールシートVer2.5」に沿って批判的吟味いたします。

1.論文のPECO
O(結果):神経膠腫、髄膜腫
P(患者):症例=2000~2004年に神経膠腫、髄膜腫と診断された患者2425例および2765例。世界13カ国、30~59歳。
対象=年齢、性別、居住地域(イスラエルでは民族も)をマッチングさせた一般住民。
E/C(曝露):携帯電話を6ヶ月以内に平均週1回以上通話した(regular use) /累積通話時間/累積通話回数。

2.症例は偏りなく集められているか?
症例の選び方の基準:脳神経内科または外科専門施設で組織学的あるいは明らかな画像で上記と診断された症例。
施設内での連続症例かどうかの記載はないが、おおむね医療機関ないで明確な基準で診断されている。

3.対照は偏りなく集められているか?
対照を集める基準:年齢、性別、居住地域(イスラエルでは民族も)をマッチングさせた一般住民。
同じ母集団ではなく、その地域での住民を選んでいる。
マッチンクがされているが、社会経済因子、家族歴等の因子は考慮されていない。

4.曝露因子はバイアスを最小にして適切に測定されているか?
Discussionで述べられているように様々なバイアスが考えられる。
インタビュー時間:全部の項目に答えなかった例が症例で78%、64%、対照で58%いる。短いインタビュー時間の人に全く携帯を使わない人が多い。
前駆症状;頭痛などの症状があると診断がつく前に気以来の使用を控えてしまう可能性がある。
インタビューの時期:最近インタビューした人ほど携帯を使っている傾向がある。

5.論文で取り上げられた交絡因子は何か?
年齢、性別、居住地域、民族(イスラエルのみ)は考慮された。
社会経済的地位、遺伝的因子などはマッチングされていない。

6.交絡因子が最小になるように調整されているか?
マッチング、統計学的補正はなされている。

7.結果
1)Regular userでは神経膠種[OR 0.81; 95% confidence interval (CI) 0.70–0.94] 、髄膜腫(OR 0.79; 95% CI 0.68–0.91)のリスク減少が認められた。
2)10年以上のユーザーでの脳腫瘍リスク上昇は見られない。
3)生涯通話回数の全10分位と生涯通話時間の下位9分位のオッズ比は1未満。
 4)生涯1640時間以上通話した人では、神経膠種のオッズ比は1.40 (95% CI 1.03–1.89) 、髄膜種のオッズ比は1.15 (95% CI 0.81–1.62) 。
5)神経膠種は側頭葉に多く、常に片方の耳で通話する人に多い傾向にあった。

8.その曝露因子はOutcomeの原因となっているか?(因果推論)
ヘビーユ—ズが神経膠種の原因かどうかについては、一貫性(各地域ごとでも言えるかなどは不明)、強固性(OR1.40で何とも言えない)、特異性(1:1対応あるとは言えない)、時間的関係(期間中のどの時期に診断されたか不明)、整合性、生物学的説得性、類似性(述べられていない)、用量反応関係(なし)、実験的根拠(述べられていない)、とのことで、因果関係の推定7項目を満足させるものではないと考えられる。

###結果をもう少し要約すると、脳腫瘍例の方が携帯電話使用者がむしろ少なかった。ただし生涯1640時間以上通話した人で、神経膠種にのみ40%のリスク増加があった、とのことです。しかし本文中で述べられているように、様々なバイアスや交絡因子の調整がされていませんので、著者自身が言っているようにいまだ implausible valuesだと思われます.実際はこの論文を受けてのこちらの論文なども考慮されています。
いずれにしても今回のWHOの評価を「携帯電話使用すなわち発ガンリスク増加」と短絡的に考えることだけは、今のところ慎みたい態度だと思います。
IARCのステートメントはこちら
by dobashinaika | 2011-06-22 23:58 | 開業医の勉強 | Comments(0)

新規抗凝固薬アピキサバンの日本人における安全性と有効性- The ARISTOTLE-J Studyより

Circulation Journal6月14日早期公開版より

Safety and Efficacy of the Oral Direct Factor Xa Inhibitor Apixaban in Japanese Patients With Non-Valvular Atrial Fibrillation – The ARISTOTLE-J Study –

Xa因子阻害薬アピキサバンの日本での第II相試験

P:非弁膜症性心房細動、1つ以上の危険因子(75歳以上、心不全:LVEF405以下、高血圧、糖尿病脳梗塞/TIAの既往)あり。245名。12週追跡

E:アピキサバン2.5mg1日2回、5mg1日2回=この2つのは二重盲検化。74名x2

C:ワーファリン:70歳以下の目標INR2.0-3.0、70歳超のINR2.0-2.6=オープンラベル。74名

O:一次エンドポイント=大出血かつ臨床的に非大出血、二次エンドポイント=大出血または非大出血、小出血

結果:
1)一次エンドポイント:アピキサバン群は両用量とも1名(1.4%)、ワーファリン群は4名(5.3%)
2)アピキサバン群:脳塞栓、全身性塞栓、心筋梗塞、死亡:なし
3)ワーファリン群:脳塞栓2、クモ膜下出血1,死亡なし
4)アピキサバン群:肝障害なし

結論:日本の心房細動患者において、アピキサバンは12週間での忍容性に優れた。世界的な第III相試験は進行中

###第2相試験なので症例数は少なく、安全性確認,用量設定が主な目的です。そのため、ワーファリンとの統計的有意差を述べる段階の試験ではありません。ワーファリンの目標INRがやや高めであったことにやや注意です。
いまのところ、ARISTOTLE(アリストテレス)の教えのように結果は「最高善」でなく「中庸」の段階かもしれません。
なお以前紹介したアピキサバンとアスピリンとの比較試験(AVERROES)も参考にしてください。
by dobashinaika | 2011-06-21 22:35 | 抗凝固療法:アピキサバン | Comments(0)

ダビガトランの重篤副作用報告:代謝経路から抗凝固薬を見るという視点

ご承知のように、ダビガトランの副作用報告がPMDから出ています。
http://www.info.pmda.go.jp/iyaku_info/file/kigyo_oshirase_201106_2_1.pdf

3例とも80歳代。1例は肺胞出血、死亡(220mg)。1例は消化管出血、軽快(220mg)。1例は脳出血、意識回復なし(300㎎)です。症例1,2は腎機能低下、症例3はベラパミル併用を認めています。

ダビガトランが上梓されてから3カ月。すでに多くの医師が処方しているものと思われますが、この3例のプロファイルをみると、やはり腎機能に十分留意する必要性を感じます。

私をはじめ、多くの開業医は、腎機能のために容量設定をこまめに変える薬剤を扱う機会はそう多くないかもしれません。降圧薬、血糖降下薬、スタチンなど、それほど神経質にeGFRごとに容量を変えて処方する必要のない薬を普段扱っています。また上記のような市場に大量に出回る薬では、そのような必要のないような簡便な薬が生き残っているとも言えます。

抗菌薬は神経を使いますが静注薬が主であり、短期間処方の経口抗菌薬では、eGFRごとに処方量を変えることまではあまりしません。

ダビガトランでは、eGFR50を境に容量へ注意喚起がなされています。eGFR50といえば、高齢者特に75歳以上ではかなりの層が当てはまると思われます。

たとえば抗不整脈薬を考えた場合、われわれは、この薬は肝代謝、これは腎代謝と大雑把に押さえたうえで、肝腎機能例にはそれに見合った処方を行うはずです。抗不整脈薬に限らずとも、われわれはこの薬は肝障害には使えない、これは腎機能低下でも使えるといった臨床家としての常識を日々駆使しているはずです。抗凝固療法も同じように、ダビガトラン登場でそれまでワーファリンだけの肝代謝薬物オンリーだった所に、腎代謝薬という新たな選択肢がひとつ加わったという視点をもち、早めにそれに慣れることが大切と思われます。

抗凝固療法は施行しなくても重篤、施行したうえでの副作用も重篤という側面があります。これほどどちらに転んでもシビアな薬はそう多くはありません。ダビガトランはたしかに簡便であり、これまで適応はあると思いつつも躊躇されていた医師から、かなりの処方がすでになされていると思われますが、上記のような年齢、腎機能といった規定因子をしっかり押さえたいと思います。

また以前から書いていますように110mgと150mgとの選択基準等も視野に入れた、日本人対象の医師主導型臨床試験が望まれるところです。

追記(2011.6.28):dabi-fun様から、コメントのようなご指摘をいただきました.添付文書を確認えいてもわかるとおり、CCrで50を境に注意喚起がなされています.上記該当箇所の記述を訂正させていただきます。
by dobashinaika | 2011-06-19 00:04 | 抗凝固療法:ダビガトラン | Comments(2)

心房活動電位持続時間の交代現象ー心房細動になりやすいかどうかの表現:Circulationより

Circulation 6月6日オンライン版より

Repolarization Alternans Reveals Vulnerability to Human Atrial Fibrillation

活動電位持続時間の揺らぎと心房細動の基質についての検討

・33例(持続性12例、発作性13例、心房細動なし8例)対象
・左房あるいは右房の活動電位持続時間を測定しながら600msecあるいは500msecから心房細動が誘発されるまで高頻度心房刺激を施行

・活動電位持続時間の交代現象を認める刺激周期は持続性‐発作性―対照群となるにつれてより速かった
( 411±94 versus 372±72 versus 218±33 ms; P<0.01)
・心房細動患者では、100~120/分でも交代現象が認められた。
・自発的に心房細動が誘発される際、(その直前では)交代現象は不規則となり持続時間は一定しない様相を呈した
・このような複雑な揺らぎを認める刺激周期は持続性‐発作性―対照群となるにつれてより速かった(316±99 versus 266±19 versus 177±16 ms; P=0.02)
・発作性においては、活動電位持続時間の揺らぎは心房細動直前で著明となった
・対照群ではより速い周期(250msec未満)でしか交代現象は認めなかった
・4例では心房細動を認めず、これらでは交代現象は一過性ですぐに消失した

結論:心房の活動電位持続時間交代現象は、心房細動の動的な基質の反映である。この現象はすべての心房細動に先行して生じ、心房細動が誘発されないときは認められなかった。安静時心拍数での交代現象に関する細胞レベルのメカニズム解明が必要

###臨床的には活動電位持続時間はその部位の不応期の反映と考えられます。吸引電極他やカテーテルの押し付けにより記録されます。交代現象は一般的に不応期のばらつきを表しており、不応期のばらつきは一方向性ブロックを引き起こし、狭い範囲でのリエントリーを生じやすくさせます。左房の中でもどのあたりに交代現象でが起きやすいかなども知りたいですね。
by dobashinaika | 2011-06-16 22:17 | 心房細動:診断 | Comments(0)


土橋内科医院の院長ブログです。心房細動やプライマリ・ケアに関連する医学論文の紹介もしくは知識整理を主な目的とします。時々日頃思うこともつぶやきます。


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プライマリ・ケア医のための心房細動入門

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治療 2015年 04 月号 [雑誌]

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