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ワーファリンに関する知識レベルとINRのコントロール度とは必ずしも相関しない

Journal of Managed Care Pharmacy3月号からです。
INR Goal Attainment and Oral Anticoagulation Knowledge of Patients Enrolled in an Anticoagulation Clinic in a Veterans Affairs Medical Center.
J Manag Care Pharm. 2011 Mar;17(2):133-42.

目的:ワーファリンを服用している患者の知識レベルを「抗凝固療法知識評価(AKA)質問票」を用いて評価。さらに知識レベルとPT-INRコントロールの関係につき検討

方法:
・ Veterans Affairs Medical Centerの抗凝固療法クリニックを、特定の8週の間に受診しAKA質問票を施行された447例を対象
・ 質問票は受診時あるいはeメールにて回収
・ カルテから患者プロフィール、INR値、抗凝固療法の期間を検索
・ 29問中21問(正答率72.4%)を合格とした

結果
1)登録された447名中、260名が参加を承諾し、185名が質問票に答え、カルテ照合が遂行できた。96.2%が男で平均年齢68歳。

2)心房細動患者が61.1%で、深部静脈血栓症が25.9%、ワーファリン服用1年以上が87.6%、INR2〜3が89.7%

3)質問票合格者は74.1%、平均正答率は78.1%

4)8つの質問で正答率が70%未満

5)6ヶ月以上ワーファリンを服用しINRを10回以上測定した患者では、正答率と3つのINRコントロールの指標(注)との間に相関はなかった

6)研究者によってINRコントロールと関連があるとされた15の質問の正答率とINRコントロールとも相関はなかった。

(注)INRコントロールの3つの指標;1)最近10階のINRが目標範囲に何%入っているか 2)TTR:観察期間中にINRが至適でベルに保たれていた割合
3)INR変動の標準偏差

結論:ワーファリン治療に関する29の質問中21問以上正答した人は74.1%いたにも関わらず、ワーファリンの知識レベルとINRコントロールとは相関間はなかった。

###従来から患者教育とINRコントロール、あるいは出血とは相関があることに関していつくかの報告があります。今回はそれらを覆す報告です。正答率を見ると、食品や飲み物、ワーファリンのジェネリックに関する質問の正答率が低いようです。質問票の具体的内容が記されていませんが、細かい知識レベルはINRコントロロールとあまり関係がないということでしょうか?どんな質問票かが問題かと思われます。アドヒアランスや遺伝子多型の因子の方が強いのかもしれません。
by dobashinaika | 2011-02-28 23:16 | 抗凝固療法:ワーファリン | Comments(0)

CHADS2スコア高得点ほど、脳動脈硬化の程度も進んでいる

Stroke2月24日オンライン版からです
Increases in Cerebral Atherosclerosis According to CHADS2 Scores in Patients With Stroke With Nonvalvular Atrial Fibrillation.

背景:CHADS2スコアの構成要素の多くは動脈硬化の危険因子でもあるので、CHADS2スコア高得点は合併する脳動脈硬化やアテローム血栓性脳梗塞を関連がある可能性がある。

方法:
・対象は、1994年から2010年の間に、非弁膜症性心房細動があり、脳血管造影を施行された連続780例
・CHADS2スコアと脳動脈硬化の存在、重症度、形態、脳卒中の機序との関係を検討した

結果:
1)780例中50%以上の動脈狭窄は231例(29.6%)に認められた
2)動脈硬化を示す動脈本数は、CHADS2スコアの増加とともに増加した(P<0.001)。
3)頭蓋外と頭蓋内の動脈硬化の比率も同様に増加した(P<0.001)
4)CHADS2スコア高得点は、合併する脳動脈硬化(OR, 3.121; 95% CI, 1.770 to 5.504)と症状の原因となる動脈近位部の狭窄の存在と関係していた(OR, 3.043; 95% CI, 1.458 to 6.350)

結論:CHADS2スコアで合併する脳動脈硬化が予測可能であった。CHADS2スコア高得点者の脳梗塞リスクの増加は、脳動脈硬化の頻度や重症度の増加が部分的に寄与している可能性がある。

###CHADS2点数が高いほど、脳梗塞リスクが高いというデータ2001年のJAMAのものがよく引用されますが、同論文でのstrokeの定義は“the risk of stroke, which is defined as focal neurologic signs or symptoms that persist for more than 24 hours and that cannot be explained by hemorrhage, trauma, or other factors, or peripheral embolization, which is much less common”となっており、確かに心原性塞栓症かアテローム血栓性かについては問われていません。ただしこの論文もアウトカムは、エンドポイントは脳血管造影による動脈硬化度でsurrogateですので注意は必要です。
 CHADS2スコアは、ワーファリン導入の選択基準であると同時に、「心房細動も持つ人」において管理すべき重要項目と位置付けることが大切と思います。
by dobashinaika | 2011-02-27 21:11 | 抗凝固療法:全般 | Comments(0)

心房細動とACE遺伝子多型との関連を示すエビデンスは不十分

Europace 3月号からです。
Association between angiotensin-converting enzyme insertion/deletion gene polymorphism and atrial fibrillation: a meta-analysis
Europace (2011) 13 (3): 346-354.

目的:アンギオテンシン変換酵素遺伝子の挿入/欠損多型と心房細動との関係についてのメタ解析を行った

方法:PubMed、Cochrane、EMBASEを2009年7月から検索した

結果:
1)最初に検索された68試験のうち、最終的に18のケースコントロース研究、7577例を解析した

2)アンギオテンシン変換酵素遺伝子挿入/欠損多型と心房細動とは、加法モデル、優性モデルともに有意な相関はなかった

3)劣性モデルにおいては明らかな相関があった

4)アンギオテンシン変換酵素遺伝子挿入/欠損多型と高血圧を伴った心房細動とは、強い関連があった

結果:アンギオテンシン変換酵素阻害薬遺伝子多型と心房細動との関連を示唆するエビデンスは不十分だった。高血圧を伴った心房細動とは関連があった。

###ACE遺伝子多型が数々の心血管病、高血圧、インスリン抵抗性、はてはアルツハイマーとも関連があることは多くの報告があります。心房細動との関連も言われていますが、まだ確固たるエビデンスとなるには至っていないようです。RAS系以外の神経体液性因子も複雑にからんでいる訳ですので、遺伝子多型のみでの説明は未だ困難ということでしょうか。
by dobashinaika | 2011-02-26 23:19 | 心房細動:アップストリーム治療 | Comments(0)

抗不整脈薬の心房細動再発抑制に関するメタ解析

Europace2月号からです。
Mixed treatment comparison of dronedarone, amiodarone, sotalol, flecainide, and propafenone, for the management of atrial fibrillation
Europace (2011) 13 (3): 329-345.

目的:心房細動に対する複数の抗不整脈薬の効果と忍容性を、混合治療比較法(MTC:注)を用いて比較した

方法:
・ アミオダロン、ドロネダロン、フレカイニド、プロパフェノン、ソタロールと偽薬のRCTを系統的に検索した
・ 39のRCTをMTCの手法を用いて統合して、複数の薬剤の効果を比較検討した

結果:
1)アミオダロンが、最も高い再発抑制効果を示した(OR 0.22, 95% CI 0.16–0.29)

2)アミオダロンは、重大な副作用(OR 2.41, 95% CI 0.96–6.06)と副作用による服薬の中断(OR 2.91, 95% CI 1.66–5.11)が高率に見られた。

3)ドロネダロンは、徐脈を含む催不整脈作用が最も少なかった

4)ドロネダロンは脳卒中リスクを明らかに減少させた(OR 0.69, 95% CI 0.57–0.84)

5)アミオダロン(OR 2.17, 95% CI 0.63–7.51)とソタロール(OR 3.44, 95% CI 1.02–11.59)には死亡率を増加させる傾向が見られ、この傾向は例数100未満のスタディを除外するとより明らかになった。

結論:アミオダロンの洞調律維持効果は最も高かった。抗不整脈薬間では効果に違いがあり、ソタロールとアミオダロンは死亡率を増加させ、ドロネダロンは重大な副作用や催不整脈を減少させる可能性を認めた。

注:比較する薬剤の組み合わせが異なるRCTを統合するメタ解析の手法

###アミオダロンは実際使ってみるとすばらしく心房細動を抑えるな、との実感があります。しかしながら甲状腺、肝障害、その他副作用とのせめぎ合いを常に感じながら使わねばなりません。ドロネダロンへの期待が高まります。
by dobashinaika | 2011-02-25 22:18 | 心房細動:ダウンストリーム治療 | Comments(0)

心房細動アブレーション後6週以内の再発はその後長期再発の予測因子

Circulation: Arrhythmia and Electrophysiology2月号からです
Antiarrhythmics After Ablation of Atrial Fibrillation (5A Study)
Six-Month Follow-Up Study
Circulation: Arrhythmia and Electrophysiology. 2011; 4: 11-14

P:カテーテルアブレーション後の心房細動患者110名。55±9歳

E:アブレーション後6週間、抗不整脈薬服用53例。その後は投薬中止

C:抗不整脈薬非服用57例

O:4週間の伝送心電図、6週後、6ヶ月も追跡

結果:
1)6ヶ月後までの非再発率に有意差なし(38/53 [72%] versus 39/57 [68%]; P=0.84)

2)はじめの6週間の非再発率が、その後6ヶ月間の非再発の独立危険因子(64/76 [84%] versus 13/34 [38%]; P=0.0001).
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結論:アブレーション後短期間の抗不整脈薬服用が、初期の再発を抑制したが、その後6ヶ月間の再発は抑制しなかった。抗不整脈薬服用に関わらず、初期6週間の再発の有無が、その後の長期の再発の強力な独立予測因子である。

###はじめの6週で再発なければその後は再発しにくい、それは抗不整脈薬使用と関係ない、ということです。アブレーション後のリモデリングを少しでも減らすための抗不整脈薬投与というもくろみは、はずれたようです。再発にはアブ後早期の炎症やPV隔離が不十分なことの方が要因として大きいからと筆者らは推測しています。
by dobashinaika | 2011-02-24 22:24 | 心房細動:アブレーション | Comments(0)

心房細動中に左房後壁に現れる分裂電位の意味

Journal of American College of Cardiology3月1日号からです。
Mechanisms of Fractionated Electrograms Formation in the Posterior Left Atrium During Paroxysmal Atrial Fibrillation in Humans
J Am Coll Cardiol, 2011; 57:1081-1092

目的:発作性心房細動における左房後壁の分裂電位のメカニズムを解明する

方法:
・ 24例で肺静脈ペーシングにより心房細動を誘発させた
・ 規則的な電位から分裂電位に移行していく際の、電位間隔とdominant frequencyを検討
・ 興奮波のコンピューターシミュレーションを解釈の一助とした

結果:
1)規則正しい(organized)パターンは全記録の31 ± 18%に見られた
2)organized パターンの47%において、左房後壁の興奮順序と心房細動誘発時の肺静脈刺激で左房に入ってくる興奮波の興奮順序とは類似していた
3)分裂電位に移行する直前において、電位間隔と極数の増加、および双極での最速のフレから次の最速のフレまでの間隔(SI)の短縮を認めた(R2 = 0.94)
4)organized パターンのときは”incoming パターン“を示し、最早期興奮部位は最高のdominant frequencyを示す部位に近接していた。
5)分裂電位への移行時のactivation mapは遅延伝導部位と一方向性ブロックを表していた。
6)分裂電位の出現に先行するSIの短縮は、近づいてくる旋回に先行するwave frontや安定したりさまよったりするlocalな興奮の加速に対し、ドップラー効果をもたらしていることが、コンピューターシミュレーションから予測された
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結論:心房細動誘発時、興奮波のドリフトや加速後のSIの短縮は間欠的な細動と左房後壁での分裂電位をもたらす。

###心房細動の起こり始めは、心内電位がorganizeされていますが、だんだんに分裂電位へと変化します。変化する直前にorganizeされていた電位間隔がやや短くなるとのことです。これは肺静脈由来の興奮伝導が促進されることにより、局所の興奮衝突や分裂がひきおこされることを意味し、これがひいては全左房的に細動興奮様式に至るわけです。いわゆるCFAEsはこうした興奮波の衝突や突然の旋回の場にすぎず、アブレーションの標的としてはあまり勧められないと、最後のconclusionで述べられています。
by dobashinaika | 2011-02-23 23:11 | 心房細動:アブレーション | Comments(0)

高齢者心房細動の抗凝固療法に関するレビューです

American Heart Journal2月号の高齢者心房細動に対する抗凝固療法のレビューです。
転倒リスクとの関係で抗凝固療法をとらえている点が非常に興味深いです。
思わずほぼ全訳してしまいました。結論部分だけでも大変重要な内容を含んでいますね。
Atrial fibrillation, anticoagulation, fall risk, and outcomes in elderly patients
Am Heart J 2011;161:241-6

【前文】
・ 心房細動患者は多く、増加中。65歳以上の5%
・ この先50年で2.5倍に増える
・ 心房細動があると80〜90歳で、23.5%脳塞栓が増加
・ 心房細動の脳塞栓は非常に重症
・ しかしながら多くの医師が出血の危険のためにワーファリン処方をためらう
・ 特に高齢者は転倒のリスクがあり、転倒による出血が抗凝固療法の禁忌と考えられている傾向がある
・ 今回のレビューで、以上の点を検討する

【脳塞栓予防】
・複数の大規模スタディやメタ解析において、心房細動患者の脳卒中予防の点でアスピリンのプラセボに対する優位性は、ワーファリンの優位性を同様に示されている。
・ワーファリンのほうが効果は大きい。

・ アスピリンの効果(対プラセボ)
➢3つのRCTのメタ解析では、RRRは21%(95%CI 0%-38%, P = .05)。
➢6つのRCTのメタ解析では、RRR22%、ARR1.5%(一次予防)、2.5%(二次予防)。

・ ワーファリンの効果
➢6つのRCTのメタ解析ではRRR62%(対プラセボ)
➢5つのRCTのメタ解析ではRRR36%(対アスピリン)

・ CHADS2スコアによるより詳しいリスク層別化を元に7度目のACCP/ACC/AHAガイドラインも作成されている。

【出血合併症】
・ 高齢者でのワーファリンによる出血リスクは良く知られている。
・ 50歳未満に比べ、80歳以上の出血リスクは4.5倍(95% CI 1.3-15.6)、補正後も同等
・ 65歳超のDVTリスクは1.3倍(95% CI 1.0-1.7)
・ 85歳以上の人は70~74歳に比べ脳出血リスクは2.5倍(95% CI 1.3-4.7)

・ 高齢者ではワーファリンによる大出血は致命的となる
➢脳内出血3ヶ月後の死亡率はワーファリン服用者52%cs.被服用者25.8%
➢ワーファリン服用は死亡の独立危険因子:OR2.2 (95% CI 1.3-3.8)

・ 医師は出血の恐怖以外に以下のような点でアスピリンを選択する
➢ワーファリンの狭い治療域、アスピリンの抗動脈硬化作用、患者の選好、モニターの必要なし、導入の簡便性

・ 他のインターベンションと同様に、医師はリスクとベネフィットを勘案しなければならない

【INRと出血、塞栓の関係】
#ワーファリン単独療法
・ 抗凝固療法では、塞栓リスクを出血リスクや他の合併症とのバランスが考慮されるべき
・ PTは強力な出血予測因子であり、INRは塞栓症のアウトカムと関連している。
➢脳塞栓既往例では、INR2.0未満は2.0以上に比べ30日以内の重症脳塞栓または死亡は3.4倍(HR 3.4, 95% CI 1.1-10.1)(訳者注:本文中不等号は誤りと思われます)

・ INR2~3が塞栓と出血の間のベストバランスと思われる
➢FangらはINR2.0未満に比べ3.5〜3.9は脳出血リスク4.6倍(95% CI 2.3-9.4)
しかし2.0〜3.0では1.3倍(CI0.8-2.2)
➢SPORTIF III, Vでは、出血率はINRコントロール不良群で2〜3のコントロール良好群より高い

・ 高齢者においては、特にINRの適正管理が必要

・ 抗凝固療法専門クリニックは出血合併症の減少に寄与するかもしれない
➢抗凝固療法専門クリニックはそうでないクリニッックより出血合併症が59%少ない

#アスピリンとワーファリン(併用)
・ アスピリン適応患者(ステント後など)でのワーファリンとの併用療法は重要な問題
➢SPORTIF試験ではワーファリン+アスピリンは(ワーファリン単独と比べ)脳塞栓、全身塞栓、心筋梗塞において同等
➢大出血は年間3.9%でワーファリン単独の2.3%より有意に多い

#アスピリン単独療法
・ ワーファリンの出血リスクを考えると、高齢者ではアスピリンを使うというのも医師のアプローチの一つである。実際効果のエビデンズも確かに存在する。
・ しかし塞栓予防効果はアスピリンの方が低いので、やはりバランスが問題
➢75歳超対象のバーミンガムのトライアルではアスピリン群とワーファリン群(INR2~3)で脳出血に差はなし
➢SPINAF II と日本のJAST trialではワーファリン群がアスピリン群より有意に脳出血が多かった

・ これらのデータからは、転倒リスクや出血の点でワーファリンよりアスピリンが良いことにはならない

【抗凝固療法と転倒リスク】
・ 加齢とともにワーファリンによる出血リスクは増加するが、転倒に起因した出血に特に焦点を当てた研究では、ワーファリン治療とこうした出血合併症とに関連がないことが示されている。
➢ワーファリン服用中で転倒を起こした379例のコホートのうち出血イベントは6%で、ワーファリン非服用者での転倒者2256例中の11%より少なかった(P = .01)
➢しかしながらこの研究にはバイアスがある。すなわちワーファリン服用者で転倒が少なく、合併症保有者も少なかった。
➢1,245人のメディケア受給者対象のレトロスペクティブ研究(ワーファリン投与者の50%)では、転倒リスクの高い者はそうでない者の2倍の脳出血率だった。しかしこの高リスクの定義には問題がある。

・ 転倒と抗凝固療法下での転倒による出血との関係を扱った研究はほとんどない
➢1つの高齢者対象のメタ解析では、高齢者での転倒しやすい傾向というのは抗凝固療法適応の重要な因子ではないとした
➢この研究ではQALYは1位ワーファリン、2位アスピリン、3位治療なしだった
➢このことは脳塞栓リスクが2%未満でなければ、正しいと言える
➢高齢者は年間300回転倒し、それによる出血リスクは脳塞栓抑制のベネフィットを上回るからである
➢以上のことは高齢者の転倒による脳出血リスクが低いことを示唆している

・ 脳塞栓率は過大評価され、合併症は過小評価されてきたのかもしれない。大規模試験の対象患者は実際の臨床より厳しくモニターされるからである
➢19,596例を対象とした転倒と抗凝固療法の関係を見た別の研究では、ワーファリンもアスピリンもICHとは関係なかった(HR 1.0, 95% CI 0.8-1.4 for warfarin and HR 1.1, 95% CI 0.8-1.4 for aspirin)
➢この研究では、脳塞栓のリスク増加はICH増加を上回った
➢転倒の高リスク例では、低リスク例に比べ脳塞栓は1.3倍多かった(95% CI 1.1-1.6, P = .002)
➢転倒高リスク例では、脳塞栓リスクはCHADS2スコア1ポイントごとにハザード比が1.42ずつ増加した(95% CI 1.37- 1.47, P < .0001).
➢一次エンドポイント(院外死、脳塞栓による入院、心筋梗塞,出血)は、CHADS2スコア0~1点例ではワーファリン服用の有無で差はなかったが、CHADS2スコア2〜6点例ではワーファリン服用者で有意に減少した0.75(95%CI0.61- 0.91, P = .004)

・ これらのデータから、転倒高リスク例では、CHADS2スコア2以上ならワーファリンの効用は大きいと考えられる

【将来の展望】
・ 高リスク例を対象としたACTIVE試験(ACTIVE A:クロピドグレル+アスピリンvs.アスピリン単独、ACTIVE-W:ワーファリンvs.アスピリン+クロピドグレル)では、ワーファリンはアスピリン+クロピドより勝った(ACTIVE-W)。しかしワーファリンに忍容性のない例ではアスピリン単独よりはアスピリン+クロピドの方が脳塞栓、全身性塞栓を減らした。ただし65歳以上では出血が明らかに増えた

・ これらのことは未だにワーファリンは中等度から高リスク患者のコーナーストーンであることを意味する


・ しかしながら新規抗凝固薬はこのバランスを変えつつある
➢RE-LY試験では,ダビガトランは低用量では塞栓症においてワーファリンと同等であり、出血はワーファリンより少なかった(RR 0.80, 95% CI 0.69-0.93)
➢ダビガトラン高用量では,塞栓症はワーファリンより少なく(RR 0.66, 95% CI 0.53-0.82)、出血は同等だった(RR 0.93, 95% CI 0.81-1.07)
➢重要なことは、どちらの用量でも脳出血がワーファリンより有意に少なかったことである(RR 0.31, 95% CI 0.20-0.47, low-dose vs warfarin; RR 0.40, 95% CI 0.27-0.60, high-dose vs warfarin)

・ 2010年の欧州心臓病学会でアピキサバン(Xa阻害薬)とアスピリンとの比較試験が発表され(ワーファリン非忍容性者)、50%以上のRRRであった。出血は容認できる範囲だった。

・ リバロキサバン(Xa阻害薬)のワーファリンに対する優位性を評価するROCKET-AF試験、アピキサバンのワーファリンに対す非劣性を評価するARISTOTOLE試験が進行中である。

【結論】
・ 高齢者心房細動においては、治療選択において困難さを伴う
➢薬剤相互作用、多い副作用、合併症などである

・ しかし、いくつかのデータでは、医師の意思決定は、塞栓症リスクよりも出血に対するリスクを多く見積もられ、左右されることが示唆されている。

・ 高齢者においても出血を上回る塞栓予防効果が明確に示されているにもかかわらず、高齢者ではワーファリンが、一般的に使われにくい。

・ 高齢者における転倒のリスクはワーファリン開始の絶対的、相対的禁忌とはならないと結論づけられる

・ 医師は、新規抗凝固薬の利用も含め、各患者ごとにリスクとベネフィットの重み付けをした上で意思決定すべきである。
by dobashinaika | 2011-02-23 00:32 | 抗凝固療法:全般 | Comments(0)

心房細動のQOL評価法=AFEQTが開発され妥当性に優れる

Circulation: Arrhythmia and Electrophysiology2月号からです。
Development and Validation of the Atrial Fibrillation Effect on QualiTy-of-Life (AFEQT) Questionnaire in Patients With Atrial Fibrillation
Circulation: Arrhythmia and Electrophysiology. 2011; 4: 15-25

目的:20項目の質問によるアンケートで、心房細動のQOL (HRQoL)を評価した

方法:
・ 4つの概念カテゴリー(症状、日常活動度、治療への理解度、治療満足度)をスコアリング
・ 6施設でベースライン、1ヶ月後、3ヶ月後に施行
・ 内的整合性と既知集団妥当性、再現性を評価

結果:
1)219名の患者、平均62歳、回答率94%、発作性66%、持続性24%、長期持続性5%、永続性 5%

2)内的整合性はすべてのスケールで0.88以上

3)AFEQTスコアは、心房細動の重症度がますごとに低下した

4)各カテゴリー間は全体、症状、日常活動度、治療への理解度、治療満足度ごとにそれぞれ0.8,  0.5, 0.8, 0.7, and 0.7

5)3ヶ月後のスコアの変化は薬剤治療より、アブレーションで大きい

結果:AFEQTは妥当性があり、心房細動のフォローに有用

###日本には日本心電学会作成のAFQLQが既にあり、内的整合性、再現性が極めて高いことが確かめられています (JPN. J. ELECTROCARDIOLOGY. 2005: 25: 488)。こちらで十分とは思いますが、こうした研究はますます必要性が増してくると考えられます。特にアブレーションやレートコンロールが本当にQOLを改善しているのか、などの評価に使われればいいですね。
by dobashinaika | 2011-02-20 09:35 | 心房細動:リアルワールドデータ | Comments(0)

高齢者にスタチンを投与しても心房細動発症は抑制されない(PROSPREサブ解析)

Europace 2月16日オンライン版からです。
The incidence and risk factors for new onset atrial fibrillation in the PROSPER study
Europace (2011) doi: 10.1093/europace/eur016

P:PROSPER試験に登録された70-82歳の心血管疾患危険因子を有する5804例

E:プラバスタチン投与2891例

C:プラセボ投与2913例

O:定期的解析での心電図所見。3.2年追跡

T:無作為割り付け、二重盲検

結果:
1)心房細動発症率:プラバスタチン群9.1%vs. プラセボ群9.8% (HR1.08 (0.92,1.28), P= 0.35)

2)アルコール消費など多数の変数を調節した後の多変量解析では、RR間隔、QT間隔、年齢、左室肥大、ST-T以上が、心房細動発症に関係

3)陳旧性心筋梗塞は心房細動の危険因子ではない

4)血管疾患の既往と心房細動発症は強い関係があったが、高血圧、糖尿病はない

結論:プラバスタチンは、危険因子のある高齢者の心房細動を、短中期的に抑制しない。年齢、PR間隔、QTc、左室肥大、ST−T上は心房細動の危険因子だった。

###高齢者で高リスク者におけるスタチンの効果を検討したPROSPER試験のpost-hoc解析です。スタチンの心房細動再発予防のエビデンスはありますが、新規発症抑制は今までありませんでした。この年齢層では、スタチンのpleotropic effectは期待できないとの所見です。
by dobashinaika | 2011-02-19 20:12 | 心房細動:アップストリーム治療 | Comments(0)

皮下植え込み型の自動心房細動検出デバイスは、感度は良好だが偽陽性が課題

Europace2月16日オンライン版より
Performance of an implantable automatic atrial fibrillation detection device: impact of software adjustments and relevance of manual episode analysis
Europace (2011) doi: 10.1093/europace/euq511

目的:心房細動の解析アルゴリズム機能を持つ植え込み型ループレコーダー(ILRs)の臨床的価値につき、7日間ホルター心電図を比較する。

方法:
・発作性心房細動があり、ILRsが植え込まれた連続64例。
・各エピソードは、‘no AF', ‘definite AF', ‘possible AF' (non-diagnostic)に分類されるが、それらを定期的にマニュアルで呼び出した
・解析はソフトウエアのバージョンアップの前と後とで行った
・カテーテルアブレーションを受けた51例において、連続7日間ホルター心電図を施行し、ILRと比較した

結果:
1)計333のデータ呼び出しが行われた(バージョンアップ前203、後130)
2)心房細動の誤認識はアップグレイドにより72%から44%に減少した(P= 0.001)
3)「non-diagnostic」は38%から16%に減少した(p=0.001)
4)ホルターに比べ、ILRsは心房細動再発をこうりつ高率に認識する傾向にあった(31 vs. 24%; P = 0.125)

結果:ILRsは従来のモニターより心房細動認識率が高かった。偽陽性が診療的価値の障害となった。技術性、操作性の開発が偽陽性を減少させるために必須である。

###元々は原因不明の失神の診断デバイスとして開発されたもの(メドトロニックのReveal XT)で、大きさは62x19x8mm、重さ15gです。左鎖骨下に小切開を入れて単に押し込むだけで装着されます。発表当初の論文では感度良好とのことでしたが、今回の長期的成績では、false positiveが多いようです。偽陽性は筋電図またはT波のオーバーセンシングとのことです。
 アブレーション後の再発確認などに有用と思われますが、さらなるアルゴリズムの開発が望まれます。
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by dobashinaika | 2011-02-18 22:33 | 心房細動:リアルワールドデータ | Comments(0)


土橋内科医院の院長ブログです。心房細動やプライマリ・ケアに関連する医学論文の紹介もしくは知識整理を主な目的とします。時々日頃思うこともつぶやきます。


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感情で釣られる人々 なぜ理性は負け続けるのか (集英社新書)


幸福はなぜ哲学の問題になるのか (homo viator)


神話・狂気・哄笑――ドイツ観念論における主体性 (Ν´υξ叢書)

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