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2010年心房細動関連論文ベスト5

大晦日になりました。
今年は1月から、自分の目に触れた心房細動関連の論文を紹介してまいりました。あくまで、自分の好みや時間的制約の中で選んでおり、だいぶ抜けもあったかと思いますが、そんな中から今年自分の行動変容が促された論文ベスト5を選びました。あくまで自分の診療に役に立ったことが選択理由であり、医療者全体へのインパクトは考慮しておりません。が、選んだ論文はどれも、他の先生方にも多少なりとも影響のあるものになったと思います。

第5位:Comparison of antiarrhythmic drug therapy and radiofrequency catheter ablation in patients with paroxysmal atrial fibrillation: a randomized controlled trial JAMA 2010;303:333-340.
“抗不整脈薬とカテーテルアブレーションのRCT”
いわゆるThermoCool AF試験と呼ばれる、カテーテルアブレーションと抗不整脈薬との初の大規模や施設RCTです。実は種々の事情でブログでは紹介しておりませんでした。9ヶ月後の心房細動は薬投与群で66%だったのに対し、アブレーションは16%ときわめて良好な成績であり、発作性心房細動の患者さんに対し、もっとアブレーションを勧めてもいいかなと思わせるに十分な内容でした。上手にレートコントロールした場合(これが難しい)とアブレーションとの比較も知りたいところです。

第4位:2011 ACCF/AHA/HRS Focused Update on the Management of Patients With Atrial Fibrillation (Updating the 2006 Guideline)  Am Coll Cardiol, doi:10.1016
“心房細動患者管理ガイドラインの一部改訂(米国)”
 ヨーロッパのガイドライン全面改訂に対抗するかのように、目立った箇所だけでも急いで改訂しておこうといった印象もあり、内容も緩徐なレートコントロールと、アブレーションの重用という、まあそんなところかという感じでしたが、なにはともあれアメリカのガイドライン改訂は大きなインパクトがあります。ブログ紹介はこちら

第3位:Randomized trial of angiotensin II-receptor blocker vs. dihydropiridine calcium channel blocker in the treatment of paroxysmal atrial fibrillation with hypertension (J-RHYTHM II Study)  Europace (2010) doi: 10.1093/europace/euq439
“高血圧合併心房細動患者におけるアンジオテンシンン受容体拮抗薬とカルシウム拮抗薬の無作為割り付け試験(J-RHYTHM II試験)”
 日本心電学会主導の日本人によるトライアルで、高血圧患者を日頃よく診る開業医のニーズにきわめて良くマッチした試験でした。これとヨーロッパ心臓病学会2010で発表されたANTIPAF試験とで、心房細動のある方の降圧薬選択の際、ARBにことさら気を使うことはなくなった訳です。ブログ紹介はこちら

第2位:Lenient versus strict rate control in patients with atrial fibrillation N Engl J Med 2010;362:1363-1373
“心房細動患者での緩徐な心拍数コントロールと厳格なコントロールとの比較(RACE II 試験)”
 心房細動中の心拍数は110/分くらいでもいいよ、と言ってくれたのがこの論文です。それまで80/分くらいがよいとされていましたが、なかなかそこまで行かないというのが実感でした。開業医の精神衛生にも多大な効果をもたらしたとも言えます。Lanientという単語の意味も初めて勉強できました(笑)。ブログ紹介はこちら

第1位:Guidelines for the management of atrial fibrillation
The Task Force for the Management of Atrial Fibrillation of the European Society of Cardiology (ESC) Eur Heart J (2010) 31 (19): 2369-2429.

“心房細動管理ガイドライン(ヨーロッパ心臓病学会)“
 アメリカのガイドラインとは袂を分ち、今年発表されたガイドラインです。ブログにはあまりに膨大すぎて紹介しておりません。教訓満載のガイドラインで、とくにCHADS2スコアに変わりCHA2DS2VAScスコアが採用されている点が取り上げられますが、個人的には本文Figure1〜3で心房細動の自然経過やタイプ、意思決定に関してシェーマ化した部分、Table5,6で心房細動を疑った際聞くべき質問と症状の程度をスコア化した部分が、大変気に入っています。ここまでの臨床家にフレンドリーな姿勢はこれまでなかったものと思います。各方面に与えた影響という点でもダントツ1位ではないでしょうか。

 個人的には、上記の他に今年後半に入り新規抗凝固薬関連の論文が急増したこと、カテーテルアブレーションの長期成績を報告する論文がいくつか現れ始めたことが目立つ1年だったと思います。

 来年はその新規抗凝固薬が日本に上陸し、新凝固療法元年になると思われますが、ツールは変わるものの、心房細動治療の根本原理まで変わることはないでしょう。あくまで患者さんと医療者との共同作業であるとの姿勢を大切にしつつ、細々とブログを更新していきたいと思います。
by dobashinaika | 2010-12-31 09:18 | 心房細動:リアルワールドデータ | Comments(0)

アフリカ系アメリカ人における心房細動リスク因子としてのヨーロッパ家系

雑誌Circulation11月16日号からの論文です。ちょっと前の論文ですみません。

背景:アフリカ系アメリカ人は白人に比べて心房細動が少ないことが知られているが、それが遺伝によるものなのか、環境によるものなのかは定かではない。なぜならさまざまな程度でヨーロッパの家系が入り込んでいるからである。そこで、ヨーロッパ家系が心房細動の独立した危険因子であるとの仮説を立てた。

方法:
・ 対象は2つの臨床試験(CHS, ARIC)に登録されている白人(4543人と10,902人)とアフリカ系アメリカ人(822人と3,517人)。
・ イルミナ社の遺伝子解析器具を用いて、1,747家系の知られているマーカーによりアフリカ系アメリカ人におけるヨーロッパ家系の割合を評価した。

結果:
1)心房細動のないアフリカ系アメリカ人のうち、CHS登録804例中120例、ARIC登録3,517例中181例で心房細動が新たに発症した。
2)2つの試験のメタ解析から、ヨーロッパ家系が10%増えるごとに心房細動のリスクは13%(ハザード比1.13:ヨーロッパ家系があると、ないときより1.17倍心房細動が増える)増加した。
3)交絡因子を補正してもなお、それぞれの試験でヨーロッパ家系は独立した危険因子であった(ハザード比1.17)。
4)別のマーカーを用いた検討でも同様の結果だった。

結論:ヨーロパ家系は心房細動のリスク因子であった。この研究は、アフリカ人とローロッパ人との心房細動リスクの差異に、遺伝子変異研究が有用であることを示すものである。

###日本人及びアジア人の心房細動有病率は欧米人より低いと言われています。もちろん心房細動が生活習慣病とまでは言い切れませんが、高血圧、糖尿病など様々な背景や炎症が基盤にあることであり、環境因子が大きいと漠然と考えておりましたが、この論文からは遺伝因子も影響あることが伺えます。
by dobashinaika | 2010-12-30 09:10 | 心房細動:リアルワールドデータ | Comments(0)

アンジオテンシン受容体拮抗薬はカルシウム拮抗薬に比べ、発作性心房細動に有効とは言えない

雑誌Europcae12月10日付け電子版からです。

目的:高血圧を合併した心房細動の頻度において、アンジオテンシン受容体拮抗薬(ARB)による降圧の方がカルシウム拮抗薬(CCB)より効果があるか否かを検討した。

方法:
・ 対象:高血圧のある発作性心房細動の患者
・ ARB群(カンデサルタン服用)とCCB群(アムロジピン)のオープンラベル(医師、患者ともどちらを飲むか知っている)、無作為割り付け試験
・ 患者からの伝送心電図を毎日記録し最大1年間症状の有無にかかわらず心房細動発作を蓄積

結果:
1)318名(平均66歳、男性219名)が登録された。ARB群158例、CCB群160例。日本の48施設が参加
2)発作頻度:ARB3.8日/月 vs. CCB6.3日/月(有意差なし)
3)血圧:ARB>CCB (P<0.001)
4)発作頻度は両群とも同等に減少した。投与前1ヶ月間と追跡機感最終1ヶ月間の発作日数の差も両群で同等だった
5)持続性心房細動への移行率、左房径の変化、心血管イベント、QOLの改善度も両群で同等だった

結論:カンデサルタンは、アムロジピンに比べ、高血圧のある心房細動患者の発作頻度を減らす効果において優れているとは言えない(同等)。

###すでに3月に日本循環器学会で発表された日本のJ-RHYTHM II試験の論文化です。われわれ開業医にとって最も知りたかった心房細動のある人の降圧薬選択について、回答を与えてくれるありがたい情報です。「神経体液性因子」より「血圧」を考えよ、ARBに過度の洞調律維持効果を期待するな、というのがこの試験による私にもたらされた学習効果です。上記抄録にはありませんが、発作性から持続性に移行する率が年間10〜15%であったこともわれわれの実感に即するものと思います。
by dobashinaika | 2010-12-29 06:32 | 心房細動:アップストリーム治療 | Comments(0)

ワーファリンはアメリカの公的医療保険における脳梗塞頻度および医療費を下げる

雑誌Stroke1月号からの論文です。

目的:
米国のメディケア(高齢者または障害者向け公的医療保険制度)に加入している心房細動患者に対する、ワーファリンの効果と医療費について検討した。

方法:
メディケアとメディケイド(民間の医療保険に加入できない低所得者・身体障害者に対する公的医療制度)受給者200万以上の請求書をもとに、2004年から2005年までの非弁膜症性心房細動患者を特定した。
・ ワーファリン服用はPY-INRを年3回以上測定した者とした。
・ 脳梗塞、脳出血、大出血の頻度を調べた。
・ 医療費を評価した。

結果:
1)119,764人の心房細動患者のうち、ワーファリン服用者は58.5%
2)脳梗塞は3.9%/人年
3)ワーファリン服用者はワーファリン非服用者に比べ、27%脳梗塞リスクが少ない。それに対し出血の合併症は同等。
4)ワーファリン使用により、総医療費は一人あたり$9,836/年減少。

結論
41.5%のメディケア患者はワーファリンを服用していなかった。脳梗塞の頻度と医療費は、ワーファリンにより明らかに低くなった。

###日本では、主に不整脈を専門とする医師対象の約10年前の調査で、ワーファリン適応患者の約56%にしかワーファリンが投与されていなかったとの報告があります。しかし最近のガイドライン改訂や患者の増加に伴いその意識は変わりつつあります。最近のJ-RHYTHM registryでは不整脈専門施設では80%以上とも聞きますし(研究会での知見から)、各雑誌等で報告される各地の医師グループ等での小規模な実態調査などを見ても、かなりの割合でワーファリン投与が普及しつつあると思われます。今後ダビガトラン上梓により、この米国及び日本でこれらの数字がどう変わるか、興味深いところです。
by dobashinaika | 2010-12-28 19:33 | 抗凝固療法:ワーファリン | Comments(0)

抗凝固薬服用にもかかわらず脳卒中を起こすリスクの予測にも、CHA2DS2-VAScスコアが有用

雑誌Stroke12月1日号からです。

既に抗凝固薬を服用している心房細動患者集団7329名を対象に、
1)血栓塞栓リスク因子を明らかにする
2)現在提供されているいくつかのリスクを予測するための判定基準の予測能力を検証する
検証された判定基準は次の通り;CHADS2スコア、フラミンガムスコア、NICE2006(英国の診断基準)、ACC/AHA/ESC2006(米国、欧州のガイドライン)、the 8th American College of Chest Physiciansのガイドライン、CHA2DS2-VAScスコア(注)

結果:
1)脳卒中/TIAの既往(ある人はない人の2.24倍新たな脳卒中がおきやすい)、75歳以上(1.77倍)、冠動脈疾患(1.52倍)、喫煙(2.10倍)が明らかな危険因子だった。
2)アルコールは脳卒中を減らした(0.70倍)。 
3)(判定基準の信頼性を表す)c統計量は各基準でほぼ同じだったが、NICE2006の0.575からCHA2DS2-VAScスコアの0.647までその値にはばらつきがあった。
4)CHA2DS2-VAScスコアでは対象の94.2%を高リスクと位置づけたのに対し、他の基準ではその2/3にとどまった。
5)血栓塞栓イベントを起こした184名のうち、181名98.4%の人はCHA2DS2-VAScスコアで高リスクだった。
6)CHA2DS2-VAScスコアが増えるごとに血栓塞栓イベントも増えた。
7)陰性予測値(その基準が陰性だった場合、本当に血栓塞栓を起こさない確率)はCHA2DS2-VAScスコアが99.5%であった。

結論:抗凝固療法中の心房細動患者では冠動脈疾患、喫煙が新たに血栓塞栓症のリスク因子であり、アルコールは改善因子であることがわかった。CHA2DS2-VAScスコアは高リスクにある心房細動患者の大多数を予測し得た。

注)CHA2DS2-VAScスコア:従来のCHADS2スコアに血管疾患、65歳以上、女性の3点を追加したもの。今年の欧州心臓病学会ガイドラインに採用されている。
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###ワーファリンをきちんと飲んでいるのに、脳梗塞を起こす患者さんを経験することがありますが、そんなときは徒労感に苛まれます。そういった人には、CHADS2スコアよりもっと、厳密なCHA2DS2-VAScスコアを考えるべきというのが、この論文からの教訓です。他に喫煙も考慮すべきとされています。個人的には、その他に血圧管理が不十分、ワーファリンコンプライアンスが悪い、という点も考慮したい点です。
by dobashinaika | 2010-12-27 06:11 | 抗凝固療法:適応、スコア評価 | Comments(0)

アメリカの心房細動管理ガイドラインが一部改訂されました

米国の心房細動管理ガイドラインが、限定的ながら改訂されました。これまで、「米国心臓病学会(ACC)/米国心臓協会(AHA)/欧州心臓病学会(ESC)心房細動ガイドライン2006」として2006年にガイドラインが出ていますが、ヨーロッパ心臓病学会だけ、単独で今年ガイドラインを発表しており、日本でも2008年に改訂版が出ています。米国のそれはやや古くなった感がありましたが、さすがに最近のめまぐるしい潮流に即して、今回限定的ながら一部改訂がなされました。
論文はこちらから

要点は以下の4点です。
1)心房細動中の心拍数を厳格に管理するのは有効ではない
2)ワーファリンを使うことができない例でのアスピリン+クロピドグレルの投与は考慮しても良い
3)ドロネダロンは除細動後の投与は妥当であるが、心不全例には投与すべきでない
4)カテーテルアブレーションは有益である


具体的な推奨度の改訂は以下の通りです。
1)心機能が安定し(左室駆出分画40%未満)、症状が落ち着いており左室機能低下が可逆的である持続性、永続性心房細動患者においては、心拍数の厳格な管理(安静時80/分または6分歩行後110/分)は、緩徐な管理(安静時110/分)に比べで有効ではない(クラスIII、エビデンスレベルB)。

これは以前ブログ3月18日でも取り上げたRACEII試験(N Engl J Med 2010;362:1363-1373)の知見を取り入れたものです。RACEII試験は40%強の人がβ遮断薬単独使用であったことや、複合エンドポイントであることに注意が必要ですが、今後きちんとβ遮断薬使用を心がければ、80/分くらいまで下げる必要はないことが強調されました。



2)ワーファリンを使うことができない場合にアスピリン+クロピドグレルの投与は大血管イベント抑制のために考慮しても良い(クラスIIb、エビデンスレベルB)。

これは2009年に発表されたACTIVE-A試験(N Engl J Med 2009;360: 2066- 2078)に基づいています。ただし、「ワーファリンが使用できない患者」の中身を見ると、この試験では50%近くに人が「医者の選好」のためとしています。また欧米人と日本人との凝固線溶活性の違いから、抗血栓薬の大規模試験は日本人にすぐ適応できにくいことを念頭に置く必要があります。

3)ドロネダロンは除細動後の心血管イベントによる入院を減らすための使用は妥当であるが(クラスIIa)、重症心不全患者には投与してはならない(クラスIII)(エビデンスレベルB)。

ドロネダロンはアミオダロンより副作用が少なく、今年多くの大規模試験での効果が報告され期待される薬剤ですが、日本では認可されていません。

4)「洞調律維持」の章で以下の点が修正勧告されています。
・クラスI:経験の多い施設で、症状の強い発作性心房細動患者に、洞調律維持のためにカテーテルアブレーションを行うこと。抗不整脈薬が無効、心房が正常ないし軽度拡大、左室機能は正常か軽度拡大、肺疾患なしが条件(エビデンスレベルA)。
・ クラスIIa:症状のある持続性心房細動患者に対するカテーテルアブレーションは妥当である(エビデンスレベルC)。

アブレーションは12の論文、計6,900名の患者の知見から上記のように大変な格上げがなされました。クラスIの症状の強い発作性心房細動例は、2006年版ではクラスIIa、エビレベルCでしたし、持続性心房細動については初めて妥当とされています。

###今回の限局的改訂で、私たち医師の行動変容に関わることは、「心拍数を厳しく下げなくても良い」「カテーテルアブレーションを積極的に考えてよい」の2点でしょう。心拍数調節には「適切なβ遮断薬の使用」、アブレーションには「適切な患者選択と施設選択」が前提となると思います。
by dobashinaika | 2010-12-26 09:27 | 心房細動:リアルワールドデータ | Comments(0)

心房細動アブレーションの5年後の洞調律維持率は79.5%

雑誌Circulation12月7日号の論文です。

背景:心房細動患者に対するカテーテルアブレーションによる肺静脈隔離術の長期成績は明らかでない。

対象:
・ 2003年から2004年までにカテーテルアブレーションを施行した心房細動患者
・ 全161例(平均年齢59.8歳、男121名)、ハンブルグの病院の成績
・ 症状があり、左室機能が正常
・ 3次元マッピング、Lassoカテーテル(リング状)、イリゲーションカテーテル(先端電極を冷却できるもの)使用
・ アブレーション後5年間の長期成績を検討する

結果:
1)初回アブレーション後平均4.8年の追跡で洞調律維持率は46.6%(75/166)
2)2回施行が66人、3回施行が12人
3)2回目施行時肺静脈と心房の伝導が回復していたのが92%(62/66)。3回目では66.7%(66.7%)
4)(結果として)平均1回(以上)のアブレーション施行後、79.5%(128/161)の患者で安定した洞調律を達成できた。
5)21人(13.0%)の患者では、再発はするものの発作の管理が(容易に)可能となった。
6)追跡期間中4人が死亡した。永続性心房細動への移行は4人(2.4%、2人は症状申告のみ)に見られた。
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結論:発作性心房細動で心機能正常患者においては、肺静脈隔離術により多数例で正常洞調律が維持可能であり、永続性への移行は少ないということが、5年間の追跡で明らかとなった。

###この論文の施設では、1回のアブレーションで46.6%の人が心房細動から解放され、2回受けると73.9%にも上ります。薬内服だけの場合、1年間での正常洞調律の維持は50%前後であり、この結果は5年間の追跡ですので、アブレーションの方が圧倒的に良いということになります。しかも永続性への移行は2.4%です。日本のJ-RHYTHM II試験では9.0~17.6%とされており、これと比較して考えてもすばらしい数字です。
 合併症、カテーテルそのものへの不安、施設間格差、これらのネガティブ面がさらに克服されれば、アブレーションが本当のファーストチョイスになって行く予感を感じさせる論文です。
by dobashinaika | 2010-12-23 09:00 | 心房細動:アブレーション | Comments(0)

ワーファリンナイーブの人はワーファリン服用者と同様にダビガトランが有効。

雑誌Circulation11月30日号からの論文です。

背景:ビタミンK拮抗薬(ワーファリン)を服用したことのない患者(=ワーファリンナイーブ) でのダビガトランとワーファリンの効果比較は、誰もが知りたい。

方法:ワーファリンナイーブ(ワーファリン服用62日以内、33%は初めての服用)にワーファリン、ダビガトラン110mg、ダビガトラン150mgを投与し、これら3者間の比較およびとワーファリン経験者との比較を行った(n=18,113)。

結果:
1)TTR(=観察期間中何%の期間でPT-INRが2.0~3.0に入っているか)はワーファリンナイーブで62%、ワーファリン服用の経験ある者で67%。ワーファリンを全く飲んでいなかった患者では61%、ワーファリンを現在服用している者で66%。
2)ワーファリンナイーブでは、脳卒中や全身性塞栓は、ダビガトラン110mg、150mg、ワーファリン群でそれぞれ年間1.57%,1.07%,1.69%であり、ダビガトラン110とワーファリンは同等でダビガトラン150はワーファリンより良い(p=0.005)。
3)大出血はそれぞれ3.11%,3.34%,3.57%でそれぞれ差はなし。
4)脳内出血は0.19%,0.33%,0.73%でダビガトラン110,150ともワーファリンより良い。
5)ワーファリン経験者では、脳卒中や全身性塞栓は1.51%,1.15%,1.74%でダビガトラン110とワーファリンは同等でダビガトラン150はワーファリンより良い(p=0.007)。
6)大出血はそれぞれ2.66%,3.30%,3.57%でダビガトラン110はワーファリニンよりよい。
7)脳内出血は0.26%,0.32%,0.79%でダビガトラン110,150ともワーファリンより良い。

結論:ワーファリン服用の経験があるか否かは、ダビガトランの何れの容量でもワーファリンに比べての優位性に影響を与えない。

###つまりワーファリンナイーブの人でもワーファリン経験者と同様に、ダビガトランが効果的であるということです。ワーファリンナーブは、ワーファリンの効き目が一定しなかったり、出血が多かったりと、ワーファリンが使いづらいのですが、そうした患者=要するに抗凝固療法を初めて開始するときにはますますダビガトラン使用を考慮すべきかもしれません。
by dobashinaika | 2010-12-20 22:18 | 抗凝固療法:ダビガトラン | Comments(0)

冠動脈バイパス術後の心房細動にはビソプロロールがカルベジロールより有効

雑誌American Journal of Cardiology電子版12月3日付けからです。

背景:冠動脈バイパス手術後すぐに起こる心房細動は、その後の経過や生活に影響する。また退院後早期に発症する心房細動もよく見られる現象である。近年のガイドラインでは、β遮断薬がその予防として第一に勧められている。

目的:心機能の低下したバイパス手術後患者の心房細動予防において、β遮断薬のビソプロロール(商品名メインテート:主に心臓に効くβ1選択作用あり)とカルベジロール(商品名アーチスト:β遮断作用の他血管拡張などのα遮断作用もある)とのどちらが有効かを比較検討する。

方法:
・ 対象:手術後リハビリ中、心機能低下(EF40%未満)、平均年齢66歳
・ 術後4〜5日にビソプロロール内服群カルベジロール内服群に無作為割り付け
・ ビソプロロール1.25mg/日、カルベジロール3.25mgにから開始
・ 登録後5日間毎日2回、遠隔心電図を記録してもらう。

結果:
1)心房細動新規発生:ビソ群23/160(14.6%)<カル群37/160(23%)。
ビソ群はカル群の60%、p=0.032
2)全心房細動の23%は症状なし
3)4週後の外来での心拍数:ビソ群15.6/分減>カル群9.4/分減
4)血圧は差なし

結論:心機能が低下した例での術後心房細動予防には、ビソプロロールの方がカルベジロールより有効

###欧米のガイドラインでも術後心房細動にβ遮断薬が推奨されていますが、どの薬を使うかまでは述べられていません。ビソプロロールは心機能低下作用もカルベジロールより強いですので、投与量を考えながらの選択になると思われます。
by dobashinaika | 2010-12-12 09:05 | 心房細動:ダウンストリーム治療 | Comments(0)

磁性ナノ粒子による心房細動関連の自律神経ブロック

雑誌Circulation12月6日付け電子版からの論文です。

背景:4つの心臓神経叢のアブレーションが心房細動を抑えることがこれまで報告されている。

方法:磁性ナノ粒子が神経細胞に取り込まれることを応用し、神経に毒性のあるNIPA-Mという物質を磁性ナノ粒子に運ばせて23頭のイヌの心房の右前と右下の神経叢に注入した。高頻度の電気刺激に対する心拍数の反応を見ることで神経叢の働きを評価した。

結果
1)右前神経叢に注入した磁性ナノ粒子は、洞調律拍数を遅くさせる反応を抑え、低電位成分を増加させた。
2)磁性ナノ粒子を冠動脈内に注入すると右下神経叢の働きは抑えられるが、右前神経叢は抑えられなかった。
3)磁性ナノ粒子を染めるプルシアンブルー染色は、右下神経叢にのみ集積され、右前には集まらなかった。

結論
神経毒性物質NIPA-Mを運ぶ磁性ナノ粒子は心房の右下神経叢に取り込まれ、自室神経機能を低下させた。この新しい薬物投与システムは、血管内注入により、標的を決めて自律神経をブロックさせるのに有効である。

###心房細動の分野にも、ナノテクノロジーが応用されつつあることを感じさせます。まだ実験段階ですが、焼かずに薬で心房細動を根治させる可能性を示唆する論文です。
by dobashinaika | 2010-12-11 06:45 | 心房細動:アブレーション | Comments(0)


土橋内科医院の院長ブログです。心房細動やプライマリ・ケアに関連する医学論文の紹介もしくは知識整理を主な目的とします。時々日頃思うこともつぶやきます。


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