カテゴリ:心房細動:ダウンストリーム治療( 59 )

心臓手術後の心房細動にはレートコントロールかリズムコントロールか:NEJM誌

Rate Control versus Rhythm Control for Atrial Fibrillation after Cardiac Surgery
NEJM April 4, 2016 | A.M. Gillinov and Others

背景:心臓術後の心房細動は,術後の死亡,合併症,入院と関連あり。その際レートコントロールかリズムコントロールかは論議の的

方法:
・術後新規発症の心房細動患者。レートコントロールとリズムコントロールに無作為割付
・アウトカム:割付後60日以内の入院日数

結果:
1)術後心房細動の頻度:695/2109,33.0%→この内523人をランダム化

2)入院日数:レート群vs.リズム群=5.1日vs. 5.0日,P=0.76

3)死亡,重症合併症(血栓塞栓症含む)も同程度

4)両群とも25%の患者で群間の移動あり。薬剤の効果不足のため

5)60日目において過去30日間心房細動なしの症例:レート群93.8%,リズム群97.9%;P=0.02

6)退院から60日目まで心房細動なしの症例:レート群84.2%,リズム群86.9%;P=0.41

結論:レートコントロールとリズムコントロールとでは入院日数,合併症,発症から60日目までの持続率は同等。特に一方よりも良い治療戦略は見当たらない。

### 4日付のNEJMオンラインは心房細動論文が2つもありました。こういうのは久々ですね。まずはそのひとつ。

近年は心機能の低下した例や高齢者も最近は手術することが多いので,術後レートコントロールだけにするか,リズムコントロールまで行うかは,重要な問題であるにもかかわらず,一定した見解がありませんでした。

手術内容は,CABG40%,弁膜症手術40%。心不全例は13.0%,平均年齢は68.8歳でした。リズムコントロールの方法は,アミオダロンを使用し,24~48時間続いた場合は電気的除細動でした。

結果からは,術後心房細動がでても,アミオダロンや除細動せずとも,レートコントロールだけで見ていれば,2ヶ月後のアウトカムは変わらないというもので,AFFIRMの結果などとも符牒があうものです。

心臓術後の心房細動はほぼ術後2日までに発症し,80%は24時間以内に洞調律に戻るとの報告があります。ただし,遷延したり,脳塞栓症を来す場合もあり,心房細動の出現は術後の予後や合併症に影響を与えるとされており,その対処法には注意を要します。この研究では30%以上の症例で術後持続したり,再発を繰り返したりしています。

そのようなときでも無理せずレートだけコントロールしていてよい,というメッセージでしょうか。ただし抗凝固の事はこの研究でも触れていませんので,これはまた別に考える必要がありますね。個人的に,術後頻回の再発や長時間持続例でCHADS2スコア2点以上で術直後の止血確認後なら抗凝固療法と考えますがどうでしょうか?

$$$ 当院のお向かいの桜。もうほぼ満開に近いです。いつも窓から眺めて心なごませています。
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by dobashinaika | 2016-04-05 22:09 | 心房細動:ダウンストリーム治療 | Comments(0)

そもそも心房細動の死亡率はレートコントロールで良くなるのか:Circ誌

Rate-Control Treatment and Mortality in Atrial Fibrillation
Tze-Fan Chao et al
Circulation Published online before print September 17, 2015


目的:レートコントロール薬が予後を改善するかどうか

方法:
・台湾の国民健康保険データベースにおける心房細動症例
・β遮断薬43879例,カルシウム拮抗薬18466例,ジゴキシン38898例,対照例168878例
・エンドポイント:死亡

結果:
1)平均追跡期間:4.9年,全死亡率32.7%

2)死亡率ハザード比:ベースラインリスク補正後
ベータ遮断薬0.76(0.74-0.78)
カルシウム拮抗薬0.93(0.90−0.96)
ジゴキシン1.12(1.10−1.14)

3)この結果はサブ解析やプロペンシティースコアマッチ後も同じ

結論:このNation-wide研究では,ベータ遮断薬,カルシウム拮抗薬によるレートコントロールを施行した症例の死亡率は低い。特にベータ遮断薬によるリスク減少は最大。ジゴキシンは死亡率を増加させた。この所見の確定にはRCTが必要

### これまでレートコントロールvs.リズムコントロールについてはAFFIRMで両者変わらずという大筋がでており両者の選択という観点での研究は多く見られました。今回のように大規模コホートでレートコントロールvs,プラセボというセッティングの研究は殆どなかったように思われます。

ただしβ遮断薬については,最近心不全合併心房細動のメタ解析がでて,洞調律例よりも予後を良くしないことが報告されています。
http://dobashin.exblog.jp/20190111/

Ca拮抗薬については目立った研究はあまり無いように思われます。

ジギタリスに関しては,これまで予後悪化の報告が多かったのですが,最近のメタ解析では,ジギタリスを投与する症例自体に重症例が多いのでその選択バイアスを考えると予後悪化はないとすることが言われています。
http://dobashin.exblog.jp/21600728/

ことほどさように,レートコントロール薬そのものの全体的な効果というのは実はあまりわかっていないということなんだろうと思います。そのことを実証するレビューもでていて,実はレートコントロール−がいいと言うことのエビデンスレベルは全体としても低いらしいとのことです。
http://dobashin.exblog.jp/17967575/

で,今回の研究の患者背景ですが,やはり心不全例はジギタリス群で57%と多く,他は35〜6%程度でした。観察研究ですので例えば初めから徐脈の例は対象から省かれている可能性もあります。こうしたバイアスを考えに入れた上でこの論文を吟味する必要があります。

鉄則として使用しているレートコントロール薬ですが,予後まで考えると実はまだ奥が深いということを思い知らされます。その辺の困った状況を察してくれたのか,Editorialで4つのTake Home memmageがまとめられていますので,引用しておきます。

1)レートコントロール薬は心房細動患者の心拍数コントロール目的に使われる。症状がないまたは軽度な症例はゆるやかな心拍数管理が第一選択。より症状が強いまたは左室機能低下例では厳格な心拍数管理が適用される

2)それらの薬の第2の目的はアウトカムの改善である。この研究は薬剤の種類次第でその効果や有害事象が異なることを追加した

3)RCTが出るまでは,レートコントロール薬は,年齢,ライフスタイル,合併症,心拍数を個別に考えて薬剤を選ぶことを強調したい

4)レートコントロール薬は慎重に処方されるべきであり,用量は合併疾患の進行度合いに応じて調節される,伝導障害が発症したり進行するかもしれない。確かなことは,心房細動のレートコントロールについて多くの学ぶべきことがあるということだ。


$$$ 昨日が十五夜。今日は十六夜。ためらうはずの十六夜ですが,今日はスーパームーン。でも雲がかっていてやっぱりいざよいでした。
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by dobashinaika | 2015-09-28 22:09 | 心房細動:ダウンストリーム治療 | Comments(0)

ジゴキシンの安全性と効果に関する400万人年対象のシステマティックレビュー&メタ解析:BMJ誌

Safety and efficacy of digoxin: systematic review and meta-analysis of observational and controlled trial data
BMJ 2015;351:h4451


目的:すべての観察研究とRCTを通じてジゴキシンの死亡と臨床アウトカムに関するインパクトを明らかにする

方法;1960年から2014年までの出版されたジゴキシンvsコントロール比較のすべての論文を包括的にサーチ

データ合成:研究デザイン,解析方法,出版バイアスなどを補正していないまたは補正されたデータ

アウトカム:一次アウトカム=全死亡,二次アウトカム=入院:ランダム効果モデル

結果:
1)システマティックレビュー:52研究,621,845人

2)ジゴキシン群は対照群より2.4歳高齢,左室EFは低め(33%vs42%),糖尿病,利尿薬,抗不整脈薬使用が多い

3)メタ解析:75件研究,40,062,10人年

4)全死亡(ジゴキシンの対照群に対するpooled risk比):非補正1.75(1.57−1.97),補正1.61(1.31−1.97),プロペンシティースコア補正1.18(1.09−1.26),RCT0.99 (0.93-1.05)

5)メタ回帰分析は,ベースラインの差異がジゴキシン群の死亡率に明らかに関係していることを示している

6)特に利尿薬を使うような心不全の重症度が影響していた:p=0.0004

7)よりよい方法とバイアスの少ない研究ではジゴキシン群の死亡率はよりニュートラルに近くなった;P<0.001

8)すべての研究タイプを越えてジゴキシンはわずかだが統計上明らかな入院の減少をもたらした:リスク比0.92(0.89−0.95),p=0.001

結論:ジゴキシンはRCTにおいては,死亡率において対照群と同等の効果であり,すべての研究タイプで入院リスクは減少させた。統計解析にかかわらず,処方バイアスが観察研究の価値を制限する。

### うわ。そういうことだったんですか。Lip先生のグループからですが,最近のジゴキシン劣勢を覆すかのようなメタ解析結果が出てしまっています。例えば最近のEHJのメタ解析はハザード比1.21でジゴキシン群で明らかに死亡率が多いって言っています。
http://dobashin.exblog.jp/21197269/
でもこれ観察研究も含んでのデータなんですね。あと最近出ているジゴキシン不利のデータも実は大きな研究のサブ解析が多いのです。

一方本メタ解析は75研究400万人年対象です(EHJは19研究)。
そして上記のバイアスが少なくなるほど,ジゴシンと対照群との差は縮まることが示されています。これは選択バイアス,つまりジゴキシンを処方されるような人は心不全(利尿薬使用)が特に多く,それだけ重症だから処方していることに起因しているとしています。
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こういう研究を見せられると,メタ解析においても十分な批判的吟味をしないと確かなことは言えないということを実感させられます。

最後のシェーマが非常に教訓的ですね。心房細動単独例だとやはりなんとも言えない,しかし心不全がからんでいる場合や心不全単独の場合はやはり使用を考えて良いということが示唆されています。心不全合併心房細動ではβ遮断薬も使いにくいのですがかと言って最近の趨勢でジゴキシンもどうかなと思っていましたが,少し自信が持てます。
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$$$ 当院の掲示板の月替りポスターメニュー。先週まで貼っていましたが,誰も見向きもしていませんでした,こう寒くては。ストーブをつけたと仰る患者さんも多数です。早々に撤去です。
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by dobashinaika | 2015-08-31 18:45 | 心房細動:ダウンストリーム治療 | Comments(0)

心房細動治療の13のキーポイント:JAMA誌

Treatment of Atrial Fibrillation
Eric N. Prystowsky et al
JAMA. 2015;314(3):278-288.


不整脈の大御所、 Prystowsky先生による「心房細動治療」の総説です。
あくまで「心房細動」の治療ですので、抗凝固療法は含まれていません。
しかしながら、このテーマをこれだけの分量でまとめることができるのは、さすがです。
しかもありがたいことにACCのメールマガジンで、わかりやすく13箇条にまとめてくれています。
それを紹介いたします。

心房細動治療のレビュー:キーポイント

1)高血圧、肥満、閉塞性睡眠時無呼吸症候群への介入は、心房細動の出現を減らせるかもしれないが、長期間なくすことはできない

2)臨床試験では、高齢者(平均68−70歳)において薬理学的なリズムコントロールはレートコントロールより有利ではないことが示されている

3)いくつかのデータは、65歳未満の若年者においてリズムコントロールは予後の点でレートコントロールより利益はあることを示している

4)リズムコントロールかレートコントロール下の意思決定は症状、年齢、合併症、患者の好みをもとに個別化されるべきである

5)リズムコントロール時の抗不整脈薬は、第一に安全性、第二に有効性に基づくべきである

6)抗不整脈薬は完全に心房細動を抑えることはまでれあり、臨床的な有効性を考えると完全に押される必要もない

7)ドフェチライドは入院患者で開始すべきゆういつの抗不整脈薬である。他の抗不整脈薬は、低リスクの外来患者では時に安全に開始できるかもしれない

8)カテーテルアブレーションは、一般的には薬物療法に適切に反応しない症状のある患者に施行される

9)再施行を入れれば、カテーテルアブレーションの長期成績は約80%

10)数多くのRCTがにおいて、心房細動の出現や症状を抑える効果としては薬物療法よりもカテーテルアブレーションのほうが優れていることが示されている

11)直流除細動は、緊急除細動が必要なときや洞調律回復が必要なときに施行される

12)最も適切な目標心拍数は安静時80/分以下、歩行のような適度な運動時110/分以下である

13)ベータ遮断薬と非ジヒドロピリジン系カルシウム拮抗薬がレートコントロールによく用いられる

### ほぼ全て納得ですね。レートコントロールの目標心拍数がやや厳しい感じです。あと、日本ではドフェチライドはつかえません。気になったのはそのくらい。
時々読んで復習したいです。

$$$ 今日のにゃんこ。こう暑いとなかなか出てきてくれません。
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by dobashinaika | 2015-07-31 19:04 | 心房細動:ダウンストリーム治療 | Comments(0)

ジギタリスは死亡率を上昇させるのか:システマティックレビュー&メタ解析:EHJ誌

Digoxin-associated mortality: a systematic review and meta-analysis of the literatureMate Vamos et al
European Heart Journal DOI: http://dx.doi.org/10.1093/eurheartj/ehv143 First published online: 4 May 2015


目的: 心房細動あるいは心不全患者の死亡率に及ぼすジゴキシンの影響について、現代の研究を詳細に解析して明らかにする

方法:メタ解析。MEDLINE, COCRANE

結果:
1)全19研究:心房細動9,心不全7,両者3、326,426人

2)ジゴシン使用による死亡率増加:ハザード比1.21 (1.07-1.38, P<0.01)

3)心房細動患者:ハザード比1.29 (1.21-1.39)
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4)心不全患者:ハザード比1.14 (1.06-1.22)

臨床上の見通し:このジゴキシン治療に関するシステマティックレビュー&メタ解析は、ジゴキシンが心房細動あるいは心不全患者の死亡率上昇に関連があることを示している。RCTや用量調節下のジゴシンによる研究が必要。

### 最近の研究はことごとくジゴキシンに関してネガティブでしたので、同然の結果と思われます。
最近のブログだけでも以下の様にたくさん。
http://dobashin.exblog.jp/20992459/
http://dobashin.exblog.jp/20812078/
http://dobashin.exblog.jp/20128470/
http://dobashin.exblog.jp/17683246/
http://dobashin.exblog.jp/16894537/

おさらいですが、メカニズムとしては、1)高齢者などでは過量投与になりやすいこと 2)心房筋の不応期短縮、迷走神経過緊張 3)それに伴う催不整脈作用などですね。

出版バイアス、RCTは殆どないなどのバイアスはありますが、臨床的には心房細動合併の心不全患者さんで考える程度で、一般的には使うことは考えにくい薬剤になっていますね。

$$$ 毎朝の散歩道。ハナミズキ咲き誇っています。
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このところ、暖かいのでにゃんこ写真にも事欠きません。
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by dobashinaika | 2015-05-06 10:47 | 心房細動:ダウンストリーム治療 | Comments(0)

僧帽弁手術に追加した外科的心房細動アブレーションの安全性と有効性

Surgical Ablation of Atrial Fibrillation during Mitral-Valve Surgery
A. Marc Gillinov et al
N Engl J Med 2015; 372:1399-1409


背景:僧帽弁手術の30〜50%に心房細動が合併。外科的心房細動アブレーションの安全性有効性は限定的

P:僧帽弁手術を受ける持続性、長期持続性心房細動260人

E :外科的アブレーション:肺静脈隔離群、Maze手技群に細分化

C:アブレーションなし

O:6ヶ月、12ヶ月後の心房細動フリー時間

T:無作為化比較試験


結果:
1)心房細動フリー時間(6,12ヶ月):
・アブレーション群が非アブレーション群より長い;(63.2% vs. 29.4%, P<0.001)
・肺静脈隔離群とMaze群は同じ; (61.0% and 66.0%, respectively; P=0.60).

2)1年生存率:アブレーション群6.8% vs. 対照群8.7%;オッズ比0.76(0.32〜1.84、P=0.55)

3)アブレーション群の方がペースメーカー植え込みが多い: (21.5 vs. 8.1 per 100 patient-years, P=0.01)

4)心血管、脳血管イベント、重大な副作用、再入院は有意差なし

結論:僧帽弁手術に追加する心房細動アブレーションは術後1年間での心房細動フリー時間を増やした。ペースメーカー植え込みリスクも増やした。

### これまで僧帽弁手術に追加した外科的アブレーションのエビデンスは少なかったんですね。意外でした。
ざっと検索しても
・224例対象で、心房細動フリー時間は減らすが、死亡率、心不全は減らさない
Eur Heart J 2012 Nov;33(21):2644

・150例対象で、QOLを改善させない
J Cardiovasc Electrophysiol 2010 May;21(5):511

といった報告しかないようです。

僧帽弁手術が奏功すれば、アブレーションそのものは予後に影響しないのかもしれません。

$$$ 今日のニャンコ。2匹います。わかりますか。
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by dobashinaika | 2015-04-10 23:29 | 心房細動:ダウンストリーム治療 | Comments(0)

抗不整脈薬のアウトカム(死亡、脳卒中など)に関するコクラン・システマティックレビュー

Antiarrhythmics for maintaining sinus rhythm after cardioversion of atrial fibrillation.
Cochrane Database Syst Rev. 2015 Mar 28


背景:心房細動再発予防に用いられる抗不整脈薬が、予後や他のアウトカムに及ぼす影響については不確定

目的:抗不整脈薬の死亡、脳卒中、塞栓症、副作用、心房細動再発についての長期効果を検討

方法:
・Cochrane Library 、MEDLINE 、EMBASEからのメタ解析
・抗不整脈薬vs偽薬または他の抗不整脈薬、 RCT

結果:
1)最近の3試験を含む59試験、21305例

2)Concealment(無作為化の隠蔽)は17試験。他の42試験は不明

3)全死亡(対対照群):
キニジン、ジソピラミド:オッズ比2.39 (1.03−5.59)、NNTH109 (34-4986)
ソタロール:オッズ比2.23 (1.1-4.50), NNTH169 (61-2068)
他の薬剤は影響なし、ただし検出力に欠ける

4)再発オッズ比:
クラスIA(キニジン、ジソピラミド)、IC(フレカイニド、プロパフェノン)、III(アミオダロン、ドフェチライド、ドロネダロン、ソタロール):0.19 to 0.70、NNTB3~16
β遮断薬(メトプロロール):0.62(0.44−0.88)、NNTB9

5)全薬剤で副作用による中止あり。アミオダロン、ドロネダロン、プロパフェノンを除いて催不整脈
作用あり

6)脳卒中:ドロネダロンに関する1つの試験以外は明らかな影響なし

7)心不全:対照試験少なく解析できず

結論:いくつかのクラスIA,IC,III抗不整脈薬はII群(ベーダ遮断薬)同様心房細動除細動後の洞調律維持に中等度の効果を示した。しかし副作用の増加(再不整脈作用を含む)を認め、キニジン、ジソピラミドは死亡率増加を認めた。臨床上重要なアウトカム(脳卒中、塞栓症、心不全)は確立されるべきものとして残った。

### 前々から言われていたことではありますが、コクランからどーんと言われると、やっぱりと思ってしまいます。最近は抗不整脈薬を長期に使うことは殆ど無いわけですが、今後さらに抗不整脈薬はアブレーションあるいは慢性化(レートコントロールオンリー)までのワンポイントとして位置づけられるように思われます。

$$$造り酒屋跡の公園。枝垂れ桜ようやくうっすら紅色に染まってきました。
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by dobashinaika | 2015-04-01 18:02 | 心房細動:ダウンストリーム治療 | Comments(0)

心拍数が早いほど心房細動は進行しやすい:Heart誌

Heart rate is associated with progression of atrial fibrillation, independent of rhythmFredrik Holmqvist et al
Heart doi:10.1136/heartjnl-2014-307043



目的:心房細動が持続化する予測因子はよく記述されていない

方法:
・スウェーデンのhe Outcomes Registry for Better Informed Treatment of AFを使用
・HATCHスコア、CHA2DS-VAScスコアを評価

結果:
1)発作性、持続性心房細動6325人

2)(持続性、永続性への)進行:1479例(追跡中央値18ヶ月)

3)進行した患者は進行しない患者に比べて
・高齢かつ合併症多い:CHADS2スコア2.3vs2.1, p<0.0001
・リズムコントロールよりレートコントロールが多い:66vs56%,p<0.0001
・高心拍数が多い:72vs68, p<0.0001

4)最強の予測因子:
・ベースラインの心電図:オッズ比2.30. p<0.0001
・高齢:オッズ比1.16, p<0.0001(10歳増加ごと)
・心拍数:オッズ比0.84,p<0.0001(心拍数80以下で10低下ごと)

5)ベースラインのリズムと心拍数は交互作用なし

6)HATCHスコアとCHA2DS-VAScスコアは心房細動の進行の中等度の予測能:C統計量0.55,0.55

結論:1.5年以内に、おおよそ1/4の発作性または持続性心房細動患者が永続性に進行する。進行は心拍数と年齢に強く依存。

### 以前のCARAF試験とは反対の結果のようです。ただしCARAF試験の対象は持続性で心拍数124と今回よりかなり早い症例ですが、今回はベースラインが洞調律の症例も多く含まれています。

心拍数を低く保っていたほうが発作性の心房細動でも持続性になりにくいことが示唆されますが、観察研究なので追試が待たれます。

$$$ 迷い込んだ黒猫
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by dobashinaika | 2015-03-30 19:08 | 心房細動:ダウンストリーム治療 | Comments(0)

ジギタリスと心房細動患者の死亡率との関係:Lancet誌

Digoxin use in patients with atrial fibrillation and adverse cardiovascular outcomes: a retrospective analysis of the Rivaroxaban Once Daily Oral Direct Factor Xa Inhibition Compared with Vitamin K Antagonism for Prevention of Stroke and Embolism Trial in Atrial Fibrillation (ROCKET AF)
Jeffrey B Washam et a
lLancet Published Online: 05 March 2015


背景:ROCKET AF試験におけるジゴキシン使用患者の使用状況とアウトカムを検討する

方法:
・対象:ROCKET AF試験でジゴキシン使用例
・アウトカム:全死亡、血管死、突然死

結果:
1)ジゴキシン使用者:5239例37%

2)ジゴキシン使用者の特徴:女性(42%vs38%)、心不全の既往(73%vs56%)、糖尿病(43%vs38%)、持続性(88%vs77%) が多い;各p<0.0001

3)全死亡:ジゴキシン使用者は非使用者より多い:5.41 vs 4.30 /100人年, ハザード比1.17 (1.04-1.32; p=0.0093)

4)血管死:ジゴキシン使用は非使用者より多い:3.55 vs 2.69 /100人年, ハザード比1.19 (1.03-1.39; p=0.0201)

5)突然死:ジゴキシン使用は非使用者より多い:1.68 vs 1.12 /100人年, ハザード比1.36 (1.08-1.70; p=0.0076)

結論:ジゴキシン治療は心房細動患者の全死亡、血管死、突然死の増加に明らかに関連あり。こも関係は他のリスク因子とは独立しており、他の交絡因子を考慮しても、ジギタリスの持つこの可能性は示されている。心不全のあるなしでこの問題に関するRCTが必要。

###またもジギタリスのネガティブデータです。もう紹介するのも飽きるくらい。しかもROCKET AF試験からのです。前向きの検討ではないしおそらく事前の評価項目には入っていなかったのであくまで参考エビデンスですが。

ただ、ずっとジギタリスを処方している患者さんも多く、またもう一つの問題としてβ遮断薬やワソランに切り替えるときにその副作用がでたり(だるい、徐脈など)、なんとなくジギのほうがいいという方も以外に多いのです。そういう経験はおありの先生も多いような気もします。メインテートなどに変えるときは少量からにしています。

当ブログでも最近のジギタリス関連のものは以下です。
http://dobashin.exblog.jp/20812078/
http://dobashin.exblog.jp/20128470/
http://dobashin.exblog.jp/17683246/
http://dobashin.exblog.jp/16894537/

$$$ ここ数日、朝はほんとうに寒いです。今日は雪でした。1ヶ月以上前からの手袋。まだ塀に刺さったまま雪にまみれています。本当に不憫。
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by dobashinaika | 2015-03-12 18:08 | 心房細動:ダウンストリーム治療 | Comments(0)

アミオダロンと急性膵炎リスク:JAMAIM

Association of Amiodarone Use With Acute Pancreatitis in Patients With Atrial FibrillationA Nested Case-Control Study
Alvaro Alonso et al
JAMA Intern Med. Published online January 19


疑問;アミオダロンは急性膵炎リスクを増やすのか?

方法:
・TruvenHealthMarketScanCommercial andMarketScanMedicare Supplemental Databasesを用いての症例対照研究
・症例:急性膵炎で入院した(第一診断)非弁膜症性心房細動患者
・対照:年齢、性別をマッチさせた対象症例(5倍人数)
・アミオダロンや他の薬剤の使用、合併症を調査

結果:
1)症例1686人、対照8430人:平均71歳

2)急性膵炎:アミオダロン症例14.5% vs. 対照9.0%

3)使用の蓄積と膵炎リスクは無関係

4)他の抗不整脈薬と膵炎リスクは無関係

5)12ヶ月後のリスク(オッズ比=1.86)の方が12ヶ月以内のリスク(オッズ比=1.21)より高い

結論:この結果はアミオダロンが急性膵炎の負のリスクを持つことを示唆。他の抗不整脈薬はリスク無し。一般住民の急性膵炎リスクは低いが、心房細動にアミオダロンを使用する際は急性膵炎のリスクにも注意すべき。さらなる研究が必要。

### これまでほとんど報告を見たことがなかったのですが、やや注意する必要があります。症例対照研究ですから、少なくとも前向きコホートがでてくる事を期待します。
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by dobashinaika | 2015-01-28 23:02 | 心房細動:ダウンストリーム治療 | Comments(0)


土橋内科医院の院長ブログです。心房細動やプライマリ・ケアに関連する医学論文の紹介もしくは知識整理を主な目的とします。時々日頃思うこともつぶやきます。


by dobashinaika

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