カテゴリ:抗凝固療法:リアルワールド( 106 )

日本のリアルワールドでは,DOACとワルファリンで脳卒中/全身性塞栓症,大出血とも発症率に有意差なし:Fushimi AF Registryより


疑問:DOAC発売後5年たった時点での,日本の抗凝固療法のアウトカムはどうなっているのか?

方法:
・Fushimi AF Registry登録患者対象
・80医療施設,3731例,2015年11月まで追跡

結果:
1)脳卒中/全身性塞栓症:年間2.3%

2)大出血:年間1.8%

3)DOAC発売後,DOAC使用は緩徐に増加:2015年はワルファリン37%,DOAC26%,抗凝固なし36%

4)脳卒中/全身性塞栓症,大出血とも,DOACとワルファリンで出現率に差はなし
脳卒中/全身性塞栓症HR, 0.95; 95% CI: 0.59–1.51, P=0.82),大出血HR, 0.82; 95% CI: 0.50–1.36, P=0.45
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結論:リアルワールドの臨床プラクティスでは,DOAC投与下での脳卒中/全身性塞栓症や大出血は,ワルファリンと比べて明らかな違いはなかった。

### 伏見AFの最新データです。日本のイマココがわかる大変貴重な報告です。
追跡率89.6%,各群はCHA2DS2-VAScスコアとHAS-BLEDスコアの全項目でpropensity scoreマッチされています。
患者プロファイルの確認ですが,平均年齢73.6歳,平均CHADS2スコア2.0点です。ワルファリン群のほうが高齢,低体重,低血圧で高リスク例が多かったとのことです。
ワルファリン1728例,DOAC270例(ダダビガトラン115,リバーロキサバン222,アピキサバン202,エドキサバン6:5年の間に重複あり)

アウトカムの確認
1)抗凝固療法施行率:53%(2011年)→64%(2015年)
2)ワルファリン:DOAC:抗凝固なし:51%:2%:47%(2011年)→38%:26%:36%(2015年)
3)CHADS2スコア別処方率変化:3点以上の処方率は60数%で過去5年で不変。0点(35→49%),1点(45→62%)の人が増えている
4)DOACの低用量処方:ダビガトラン90%,リバーロキサバン44%,アピキサバン44%
5)非推奨例:ダビガトラン36%,保険適応外例:リバーロキサバン,アピキサバン59%
6)脳卒中/全身性塞栓症発症率への寄与因子:年齢(10歳ごと),脳卒中の既往のみ,(高血圧,糖尿病などは入らず)
7)ワルファリン vs. DOACのアウトカムはPSマッチ後も同じ
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Limitationは多くありますが,それでもワルファリンとDOACでアウトカムが変わらなかったのは相当インパクトがあります。
理由として著者らはDOACのアンダードースを挙げています。たしかにダビガトランでさえ36%,他に至っては59%もの症例で添付文書からはずれた低用量使用だったのにはやや驚きました。通常腎機能や年齢がギリギリのひとでは低用量にシフトするのもやむを得ませんが,6割近くが低用量というのはギリギリでないひともかなり含まれるのではないでしょうか。ただそれだと出血は少ないように思いますが,出血も同じだったとのことです。

筆者が述べているようにDOACのアドヒアランスの問題,nが少ないことなども関係しているかもしれません。

それにしても,試験の限界も多々あるにしても,日本の実臨床での実態をかなり反映した集団のアウトカムと思いますので,日本の臨床家の今の薬の出し方と,患者さんの飲み方では,DOACはワルファリンに勝てていないということです。あれだけ宣伝攻勢,あれだけの薬価でこうなんですね〜〜。やっぱり抗凝固薬を「誰に」「どう」使うかは,「何を」使うかより100倍重要。「何を」を考えるならコストとアドヒアランスがアウトカムより大事。なんとこんなところに落ち着くのでしょうか。NOAC礼賛の立場を取ってこなくてよかった(?)。


by dobashinaika | 2017-04-19 22:34 | 抗凝固療法:リアルワールド | Comments(0)

昨日のNOAC論文に追加情報。

昨日の論文の追加情報です。

患者背景ですが、
使用薬剤はアスピリン51.1%、VKA43.3%、NOAC4.1%、混合1.4%。
NOACの内訳はダビガトラン28.5%、リバーロキサバン71.5%
追跡期間はNOAC1.0年、VKA2.7年
合併症は、脳血管疾患がVKA群で13.4%、NOACで18.9%
でした。

消化管出血が多かった理由として
・腎機能低下例、悪性腫瘍例、消化器症状を有する例、NSAID併用例など選択基準がRCTより広い
・出血の定義に多少違いがある
などが考察されています。

頭蓋内出血も大きな差はないようです。

### 確かに観察研究なのでより重症な例にNOACが処方されたのかもしれないという交絡因子は考えねばなりません。アスピリンがかなり出されているコホートです。この研究とて鵜呑みにはできません。

とはいえ、リアルワールドは混沌としています。特にプライマリケアの現場ではなかりの高リスク例にも出しています。
その上、日本においてプライマリケアレベルでこのような大規模データベースの構築及び解析は出ていないわけです。

手放しでNOACがいいとは決して言えない。高リスク例はNOACであっても特に気をつける。こう考えたいと思います


by dobashinaika | 2017-03-15 18:52 | 抗凝固療法:リアルワールド | Comments(0)

英国のプライマリケアセッティングではNOACはワルファリンより消化管出血多い。虚血性脳卒中は同等:BJCP誌


疑問;プライマリ・ケアにおいて抗凝固薬の大出血リスクはどの程度か?

方法:
・英国のプライマリ・ケアセッティンングでの心房細動コホート:UK Clinical Practice Research Datalink (March 2008-October 2014)
・NOAC、VKA、アスピリンの新規処方患者
・処方から脳卒中または大出血までを追跡

結果:
1)31497例

2)大出血:NOACの対VKAハザード比2.07 (95% CI 1.27-3.38)

3)主に消化管出血はリスク増の主因;ハザード比2.63(95% CI 1.50-4.62)

4)出血は女性に多い:ハザード比3.14 (95% CI 1.76-5.60)

5)アスピリンの出血リスクはVKAと同程度

6)虚血性脳卒中:NOACとVKAは同程度:ハザード比1.22 (95% CI 0.67-2.19)

7)VKAはアスピリンより効果大:ハザード比2.18 (95% CI 1.83-2.59

結論:NOACは高い消化管出血リスク(特に女性)に関連。このタイプの出血をきたしやすい患者にはNOAC使用は注意。NOACとVKAは脳卒中予防においては同程度。アスピリンは心房細動の脳卒中予防には効果なし

### やや驚きの結果(ハザード比が)です。
ただ,これまでのリアルワールドエビデンスを眺めますと,有効性(脳卒中/全身性塞栓症あるいは虚血性脳卒中)はNOAC=VKAとするデータが多いのですね。出血も頭蓋内出血こそNOACは少ないですが,消化管出血は薬剤によってはNOACが多いというデータは数多くあるのです。これなども

ややマイナー雑誌なので全文入手ができていません。患者プロフィールが最も問題なので至急確認してみます。

やはりNOACを選ぶときは消化管出血はひとつのポイントになりそうです。既往のある例,NSAIDを使う例,で女性などが揃ったら消化管出血のエビデンスの少ないNOACまたはワルファリンを考えます。

$$$ うちの庭に迷い込んだハクビシン(見えますか)。
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by dobashinaika | 2017-03-14 23:18 | 抗凝固療法:リアルワールド | Comments(0)

全世界でNOAC発売後心房細動への抗凝固薬なしは67%→20%。NOAC優勢だがワルファリンも依然として多い。


方法:
1)GLORIA AFスタディ:44カ国,984センターからのグローバル登録試験。
2)18歳以上,CHA2DS2-VAScスコア1点以上。初回受診から3ヶ月以内に診断されたNVAF
3)NOAC発売後登録15092例(2011年11月〜2014年12月:Phase II)と発売前1063例(Phase I)の疾患特徴,アウトカム,合併症,治療法を比較

結果:
1)女性45.5%,平均71歳。欧州47.1%, 北米22.5%,アジア20.3%,ラテンアメリカ6.0%,中近東/アフリカ4.0%

2)CHA2DS2-VAScスコア2点以上:86.1%,1点13.9%

3)抗凝固薬:
Phase II:79.9%:NOAC47.8%,VKA32.3%,抗血小板薬12.1%,抗血栓薬なし7.8%
Pahase I:VKA32.8%, アスピリン47.1%,なし20.2%

4)ヨーロッパのPhase IIでは,NOAC(52.3%)がVKA(37.8%) よりcommon

5)北米では,NOAC52.1% ,VKA26.2%,抗血小板薬14.0%,なし7.5%

6)NOACはアジアでは少ない27.7%,VKA27.5%,抗血小板薬25.0%,なし19.8%
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結論:GLORIA-AF試験Phase IIは欧州と北米でNOACが臨床に高率に取り入れられていることを示した。しかしアジアと北米では抗凝固療法なしの患者が多数。

### 抗凝固なしの割合がプレNOAC時代は約67%!だったのに対しポストNOAC時代には20%に減っています。ヨーロッパは50%以上がNOACで,抗凝固なしは非常に少数になったが,アジアと北米ではまだ20〜45%くらい抗凝固なしまたがアスピリンでした。
アジアの国の内訳が不明ですが,日本はもっとNOACが多いように思います。2015年以降はなおさらでしょう。

ただこれ新規症例に対してですので,欧州でさえ38%くらいはまだワルファリンを出していることに注意したいです。まだワルファリン良しとしている医師がかなりいるのですね,

同様研究 (GARFIELD)こちら

$$$ 診察室の壁にネコ写真貼って時々息抜きしています。偶にネコ好き患者さんと話し込んで診察忘れます(笑)。
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by dobashinaika | 2017-03-09 22:18 | 抗凝固療法:リアルワールド | Comments(0)

NOACのリアルワールドデータはこう読む:JAMA総説


NOAC観察研究に関する総説。Lip先生一派から

・RCTでは限られた集団対象のため,観察研究が行われている
・しかし観察研究は薬剤の適応基準,用量,薬剤選択,アドヒアランスに問題あり
・RCTでは同定できない潜在的な安全性を明らかにできる可能性あり

<観察研究の種類>
1.職能的,社会的に企画された登録研究(EORP,NCDR PINNACLE),企業ファンド登録(GARFIELD,ORBIT-AF)
・前向き,予めエンドポイント設定,厳密なデータ管理
・患者は限定された分野(循環器プラクティスなど),ICや処方管理がアドヒアランスに影響与える
・ミッシングデータあり

2.ヘルスケアや医療保険ベースの全国的登録研究
・選択,除外基準がなく選択バイアスは最小限
・後ろ向き研究であり,アウトカムの定義が不正確,データミッシング,INRなど測定されない,OCTがまじるなどの欠点
・”健康な”OAC服用者を減らすため,対象はほとんど新規投与患者に限られる
・交絡バイアスを減らすため,多変量解析,プロペンシティースコアマッチなどが施行される
・PSマッチングは好まれるが,Nが小さいと大量の不適合者が出る
・追跡期間は90日から2年に渡る

<観察研究での出血率>
・アピキサバン:2.29−2.38%/年(ARISTOTOLEは2.13%)
・ダビガトラン:2.04-3.60% (RELYは150mgx2;3.11% ,110mgx2:2.17%)
・リバーロキサバン:2.90−6.0%(ROCKET-AFは3.60%)
・全体としてワルファリンより大出血は少ないか同等
ワルファリンの大出血率;対ダビガトランでは3.58−4.46%,対リバーロキサバン3.40−5.09%
・NOAC同士のペアでの出血率では最低がアピキサバン,中位がダビガトラン,高いのがリバーロキサバン
・全NOACで頭蓋内出血はワルファリンより少ない(0.22%-0.49% vs 0.32%-1.06%)
・消化管出血はリバーロキサバンがワルファリンより高い(3.26% vs 2.53%),ダビガトラン,アピキサバンはワルファリンと同じ

<有効性(脳卒中/全身性塞栓症,死亡率)>
・リバーロキサバン,アピキサバンは低下のデータあり(1.33% vs 1.55% for apixaban; 2.89% vs 3.25% for 20 mg of rivaroxaban; and 4.60% vs 3.90% for 15 mg of rivaroxaban)
・死亡率はアピキサバン,ダビガトランで低下。リバーロキサバンで同等または上昇 (7.02% vs 7.41% to 25.7% vs 8.8%)

<処方傾向>
・研究間で概ね同じ
・ワルファリンは高齢で合併症の多い例(Deyo-Charlson Comorbidity Score,CHA2DS-VAScスコア高リスク)に出される
・ダビガトラン150x2は比較的若い人に出される。リバーロキサバンは合併症の多い人,アピキサバンは出血リスクの高い人に出される
・アスピリン併用はNOACよるワルファリンで良く行われる

<低用量処方>
・安全性の観点からよく見られる
・ダビガトランエドキサバンは低用量設定がRCTでなされていて,有効性より安全性の改善に関係していいる
・低用量処方はRCTより頻繁に行われているが,脳卒中も大出血も低用量のほうが多い。
・小レは低用量処方例がより高リスクのためなのと
・不適切に低用量にしているおそれがあるためと思われる

<服薬アドヒアランス>
・おおむねNOACのほうがワルファリンより良い(特にリスク因子2点以上)
・研究によっては,ダビガトラン(67.2%)はリバーロキサバン(72,2%),アピキサバン(69.5%)より落ちる
・後ろ向き研究はアドヒアランスを過剰に多く評価しやすい
追跡期間が12ヶ月以下だから
リフィルからのデータなので一時的な中断か永続的なのかわからなくなる

<まとめ>
・観察研究は因果関係を特定することができない
・NOAC間の直接比較はすべきでない
・コホート(の内容),追跡期間,用量,試験の種類,エンドポイントの定義,補正方法などを考えて解釈すること

・様々な制約はあるにしても,観察研究のデータはPCTの結果の証左となっており,NOACが日常臨床でワルファリンに変わりえるものであることが示されている
・NOACかワルファリンかの選択の際は,RCT,観察研究両者でのリスクベネフィットをレビューしてのディスカッションがなされるべき

### もっとまとめると
1)観察研究には,公的機関や製薬企業により計画的に行われるものと,保険データベースなどからレトロスペクティブに行われるものがあり
2)大出血はワルファリンと同等か少ない
3)リバーロキサバンは他に比べてやや出血が多い
3)NOACは頭蓋内出血は少ないが,消化管出血は同等か多い
4)脳卒中,死亡もおおむね同等か少なめ(出血ほどはっきりしない)
5)NOAC はワルファリンより低リスク例に出される
6)RCTより低用量が好んで出される
7)服薬アドヒアランスはワルファリンより良い
こんなかんじですかね。

個人的にはRCT,観察研究で同じ傾向が出ていればどっぷり信用することにしています。
「NOACはワルファリンより出血,とくに頭蓋内出血は少ないが,消化管出血は同等か多いかもしれない」
とだけは言えそうです。

読み方としては
1)企業主導かどうか(医師主導とされていてもファンドが製薬会社のことが多い)→その場合バイアスやや大きいと考える。またリクルート医療機関をよく見る
2)保険などベースの登録研究かどうか→その場合,アウトカムの定義,補正法,ミッシングデータなどを見る
3)その次に患者プロファイル,薬の用量,追跡期間を見る
と言った感じです。

$$$ ネコちゃん探しのポスターの脇にどばし健康カフェの案内。町内の掲示板です。
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by dobashinaika | 2017-02-19 18:19 | 抗凝固療法:リアルワールド | Comments(0)

NOAC処方1年以内に15%の人が服用中止となる:IJC誌



疑問:どのくらいの頻度でNOACの服用をやめてしまうのか

方法;
・イタリアのコホート
・非弁膜症性心房細動への定期的NOAC処方例
・処方1年の時点で恒久的にNOACをやめてしまう人を調査

結果:
1)1305人:ダビガトラン473人,リバーロキサバン425人,アピキサバン407人

2)201人15.4%の人は処方1年以内に中止

3)中止例の60%以上は半年以内に中止

4)中止理由:ディスペプシア2.9%,出血4.5%

5)ディスペプシアは50%が2ヶ月以内。出血は66%が4ヶ月以降

6)低用量処方が中止の要因:オッズ比1.74

7)中止率:ダビガトラン22.0%,リバーロキサバン14.4%,アピキサバン8.8%

8)出血による中止:ダビガトラン20.2%,リバーロキサバン44.3%,アピキサバン30.6%

9)ディスペプシアあるいは腹痛による中止:ダビガトラン35.6%,リバーロキサバン1.6%,アピキサバン0%

結論:NOACの中止は比較的普通のことで,処方後半年以内に起こりやすい。低用量処方は中止の大きな要因となる。

### NOACの15.4%が服薬1年以内に飲むのをやめるーーー。上記数字を計算すると辞める理由の30%が出血とのことでした。

ダビガトランは消化器症状,リバーロキサバンは出血が理由として多いようです。
各NOAC間で中止率に10ポイント以上の差がついています。この数字のほうが,アウトカム比較での頭蓋内出血の差より大きいですね。
出血があればやはり変更したくなりますし,消化器症状は他にない薬剤に代替可能です。

アドヒアランス「パーシステンス」維持には副作用管理が大切であることを痛感します。

by dobashinaika | 2017-02-07 17:00 | 抗凝固療法:リアルワールド | Comments(0)

新規抗凝固薬投与15万例でのダビガトランvsリバーロキサバンvsワルファリンの結果は?:JACC誌


疑問;リアルワールドでのNOACの実力は?

P:抗凝固薬新規投与の心房細動。66歳以上。米国。メディケア

E/C;
・ダビガトラン150mg約22,000例,リバーロキサバン約23,000例,ワルファリン10万例
・プロペンシィテースコアマッチ

O:脳卒中,塞栓症,消化管出血,それ以外の大出血,心筋梗塞,心不全,上記疾患にかかるコスト

結果:統計学的に有意なもの
1)脳卒中,非消化管出血,心筋梗塞,心不全,入院:ワルファリン>ダビガトラン≧リバーロキサバン
2)塞栓症:ワルファリン=ダビガトラン,ワルファリン>リバーロキサバン,ダビガトラン=リバーロキサバン
3)消化管出血:リバーロキサバン>ワルファリン=ダビガトラン
4)入院コスト:ワルファリン>ダビガトラン=リバーロキバン
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結論:新規のダビガトラン,リバーロキサバン服用患者の入院コストはワルファリンより低い。主に脳卒中,非消化管出血,心不全の減少による

### 15万人の大規模コホート。このコホートではリバーロキサバンの消化管出血がやや多いようでしたが,入院コストは両NOACともワルファリンより低いとのことです。
ダビガトラン150mgとありますが,1日1回なのでしょうか。詳しく記載はありませんでした。
(はじめ,誤った解釈を書いてしまいました。すみません,訂正します)

これは新規投与例ですね。リアルワールドデータのときはPECOのうちP (patient)の対象にまず注目します。つぎにマッチングしているか,統計処理も一応押え,その後結果を読むようにしています。

$$$ これからも連携を大切にしていきたいと思います。
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by dobashinaika | 2017-02-01 18:30 | 抗凝固療法:リアルワールド | Comments(0)

やはり発作性心房細動のほうが持続性,永続性よりも脳卒中が少ない:ENGAGE AFサブ解析

Stroke and Mortality Risk in Patients With Various Patterns of Atrial Fibrillation
Results From the ENGAGE AF-TIMI 48 Trial (Effective Anticoagulation With Factor Xa Next Generation in Atrial Fibrillation–Thrombolysis in Myocardial Infarction 48)
Circulation: Arrhythmia and Electrophysiology. 2017;https://doi.org/10.1161/CIRCEP.116.004267


疑問:発作性と持続性で心房細動の脳卒中や予後は変わるのか

方法:
・ENGAGE AF-TIMI 48試験における発作性心房細動(7日未満),持続性心房細動(7日以上1年未満)。永続性心房細動(1年以上)間でのアウトカム比較
・21105例,平均2.8年追跡

結果:
1)脳卒中/全身性塞栓症:発作性1.49%/年,持続性1.83%/年(P-adj =0.015),永続性1.95%/年(P-adj =0.004)

2)全死亡率:発作性3.0%/年,持続性(4.4%/年; P-adj <0.001) ,永続性(4.4%/年; P-adj <0.001)

3)年間大出血率;発作性2.86%,持続性2.65%,永続性2.73%
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結論:この試験では,発作性心房細動の血栓塞栓症発症率よび死亡率は持続性,永続性にくらべて少ない。ワルファリンに比較したエドキサバンの有効性安全性は心房細動の3パターンで同様であった。

### これまでは,おもにActive-Wの結果を引き合いに出して,「発作性も持続性もイベント発生率に差がないので発作性でも油断してはいけない」といったドグマが定説化してきたと思われます。

しかし最近になリ,RELYを除くNOACの2試験(ROCKET AF, ARISRTOTOLE)やSPORTIF,AVERROEAなどは発作性のほうが少ない
との結果を出しています。

最近のEHJのレビューでも同様のことが言われています。
http://dobashin.exblog.jp/22493317/

発作性,持続性同様というのは,実は前述のActive-WとSPAF試験くらいなんですね。

もちろん「発作性」と言ってもバリエーションが有り,「持続性」といっても持続化したburdenによって違いはありますが,こうした趨勢を見るとやはり適応の重み付けとして,たとえばCHADS2スコア1点でも持続性であればより積極的に抗凝固を考える気持ちにもなります。CHADS2やCHA2DS-VAScスコアに「持続性0.5点」くらいは追加できそうな最近の流れですね。

$$$ 認知症カフェで講話をしてきました。会場がお寺の講堂なので,自然と背筋が伸びました。
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by dobashinaika | 2017-01-23 22:48 | 抗凝固療法:リアルワールド | Comments(0)

NOACでは適応外用量処方が多く,有害事象も多い:ORBIT-AF II試験


Off-Label Dosing of Non-Vitamin K Antagonist Oral Anticoagulants and Adverse Outcomes
The ORBIT-AF II Registry
J Am Coll Cardiol 2016;68:2597-2604.


疑問:NOACのオフラベル(適応外)使用の頻度とアウトカムはどうか?

方法:
・米国の地域での242施設の登録研究(ORBIT-AF II)
・5738人,平均0.99年追跡
・FDA認可に基づき,過小用量,適切用量,過大用量に分類
・アウトカム;脳卒中/全身性塞栓症,心筋梗塞,大出血(ISTH分類),入院(関連のある),全死亡

結果:
1)過小用量9.4%,過大用量3.4%,適切用量87%

2)オフラベル群は適切群より:より高齢,女性多い,電気生理学医少ない,CHA2DS-VAScスコア高値,ORBIT出血スコア高値

3)過大用量群は適切群より;全死亡多い(補正後ハザード比1.91;95%CI1.02-3.60;p=0.04)

4)過小用量群は適切群より:心血管疾患による入院多い(補正後ハザード比1.26;95%CI1.07-1.50;p=0.07)
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結論:NOACのオフラベル使用例は非常に多い(全体の1/8)。こうした例は有害事象のハイリスクあり

### 本文からの追加データでは,
・NOAC別過小用量群:ダビ7.5%,リバーロ8.0%,アピ11.8%
・過大用量群:ダビ3.4%,リバーロ0.5%,アピ2.1%
でした。

ダビガトランはCrCl30-50の23%が過小量(米国では150x2推奨にかかわらず),リバーロキサバンはCrCl15-50の34%が過大用量(米国では15mgx1推奨),アピキサバンは透析患者の32%で過小用量でした。

ただ残念なことに,腎機能別の用量変更についてのデータはなかったようです。低用量にするのは,腎機能が適応範囲ギリギリの例が多いと思われますが,そういう例でアウトカムがどうなのかというのが一番知りたいところかと思います。

過大用量で死亡が多いのは大出血のためでしょうが,日本では適応より多い用量を使う場合は殆ど無いように思われますので,むしろ過小用量で心血管疾患入院(おそらく脳梗塞)が多い点を教訓にしたいと思います。
### すずめの学校
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by dobashinaika | 2016-12-16 19:06 | 抗凝固療法:リアルワールド | Comments(0)

小出血はNOACとワルファリンでどちらが多いのか:Heart誌

Non-major bleeding with apixaban versus warfarin in patients with atrial fibrillation
Heart doi:10.1136/heartjnl-2016-309901

疑問:ワルファリンとNAOCでは非大出血はどちらが多いか

方法:
・アリストテレス試験サブ解析
・非大出血の定義:大出血に先行する臨床的に意義のある非大出血及び小出血

結果:
1)非大出血の頻度:大出血の3倍(12.1%vs3.8%)

2)アピキサバン群6.4/100人年 vs. ワルファリン群9.4/人(ハザード比0.69, 95% CI 0.63 to 0.75)
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3)出血部位:血尿(16.4%),鼻出血(14.8%),消化管(13.3%),血腫(11.5%),挫傷/斑状出血(10.1%)

4)薬剤または外科的介入は同等:ワルファリン(24.7%) vs. アピキサバン(24.5%)

5)抗凝固薬変更(58.6% vs 50.0%) および試験中止 (5.1% (61) vs 3.6% (30), p=0.10) ワルファリン群で高頻度

6)非大出血は死亡(adjusted HR 1.70, 95% CI 1.32 to 2.18)及び引き続く大出血(adjusted HR 2.18, 95% CI 1.56 to 3.04).と関連あり

結論:アリストテレス試験においては,非大出血はコモンであり,アピキサバン群ではワルファリン群より少ない。非大出血は死亡や大出血に関連あり。この試験はどんな出血でも重症度にかかわらず重要であり,小出血を含む非大出血はマイナーではないかもしれない。

### 後付解析なのと,抗血小板薬が両群とも30%程度入っていることに注意。

それを置いても,重要な知見かと思われます。これまで何かと大出血,頭蓋内出血ばかりが取り上げられがちでしたが,小出血も臨床上決してあなどれないことは,臨床医が知っていることです。鼻出血であっても止まらない鼻血となれば,患者さんはやはりその原因となるような薬は飲みたくなくなるのが普通です。また消化管出血まで来たした場合,高齢者ではこれがきっかけで全身状態が悪化し,肺炎などを併発する,などというケースはしばしば経験します。

特に興味深かったのは非大出血をきたす例では大出血も死亡例も多いということですね。やはり血尿,鼻出血などであっても,それだけでは大したことはないと思わないことが大切かと思います。

個人的な印象としては,PT-INR2.0かそれより低めで管理している限りは,ワルファリンも小出血はかなり少ないように思います。むしろダビガトラン300やイグザレルト15のほうが皮下出血その他が目立つようにも思います。

やはり出血データは日本人のものがほしいといつも思います。
by dobashinaika | 2016-11-11 19:18 | 抗凝固療法:リアルワールド | Comments(0)


土橋内科医院の院長ブログです。心房細動やプライマリ・ケアに関連する医学論文の紹介もしくは知識整理を主な目的とします。時々日頃思うこともつぶやきます。


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