カテゴリ:抗凝固療法:リアルワールド( 111 )

NOAC vs ワルファリン。リアルワールドデータのメタ解析結果:Stroke誌

Stroke. 2017;STROKEAHA.117.017549 https://doi.org/10.1161/STROKEAHA.117.017549

臨床上の疑問:臨床試験の外のリアルワールドにおいて,NOACのビタミンK阻害薬(VKA)にくらべての安全性,有効性はどうか?

方法:
・心房細動患者の脳卒中予防に関するNOACとVKAの比較をした観察研究のシステマティックレビューとメタ解析
・国内あるいは。保険上のデータベースを使用
・結果に虚血性脳卒中,虚血性脳卒中あるいは全身性塞栓症,あらゆる脳卒中あるいは全身性塞栓症,心筋梗塞,頭蓋内出血,大出血,消化管出血,死亡を含む研究
・MOOSEガイドラインとGRADEを用いて解析

結果:
1)28研究:ダビガトラン24,VKA23,リバーロキサバン14,アピキサバン7,エドキサバンなし。各研究間に明らかなバイアスなし

2)ダビガトラン
脳卒中/全身性塞栓症:明らかな差なし:HR 1.17; 95%CI 0.92-1.50
心筋梗塞:明らかな差なし:HR 0.96; 95%CI 0.77-1.21
頭蓋内出血:明らかにVKAより少ない:HR 0.42; 95%CI 0.37-0.47
死亡:明らかにVKAより少ない:HR 0.63; 95%CI 0.52-0.76
消化管出血:明らかにVKAより多い:HR 1.20; 95%CI 1.06-1.36

3)リバーロキサバン
脳卒中/全身性塞栓症:明らかな差なし:HR 0.73; 95%CI 0.52-1.04
頭蓋内出血:明らかにVKAより少ない:HR 0.64; 95%CI 0.47-0.86
死亡:明らかな差なし:HR 0.67; 95%CI 0.35-1.30
消化管出血:明らかにVKAより多い:HR 1.24; 95%CI 1.08-1.41

4)アピキサバン
脳卒中/全身性塞栓症:明らかな差なし:HR 1.07; 95%CI 0.87-1.31
頭蓋内出血:明らかにVKAより少ない:HR 0.45; 95%CI 0.31-0.63
死亡:明らかにVKAより少ない:HR 0.65; 95%CI 0.56-0.75
消化管出血:明らかにVKAより少ない:HR 1.20; 95%CI 0.31-0.63

結論:リアルワールドデータは,NOACとVKAを比較したRCTの知見を確定し,補強するものである

### NOAC vs VKAに関するおびただしい数のRWD(リアルワールドデータ)がでておりますが,そのメタ解析です。とうとう出ました。

大雑把に言えば
1)脳卒中/全身性塞栓症はNOACとVKAは同等
2)頭蓋内出血はNOACが少ない
3)全死亡,消化管出血(心筋梗塞)はNOACにより異なる
です。まとめてみれば,やはり従来から認められている傾向になったという感じです。

当然RWDですので,患者背景,アドヒアランス,処方適応等々に交絡因子は残存しているはずです(たとえスコアマッチさせたとしても)。またNOACの異なる用量に関しては検討されていません。さらにRWDは,保険ベースで,大病院も診療所も一絡げの結果もあれば,登録研究によってはやはりかなり選択バイアスのかかったコホートもあります。

よく言われるようにおそらくどのコホートでもVKAは高リスク者に使われる傾向にあり,NOACは低用量が好まれる傾向にあると思われます。

どんな患者さんにどの薬が処方されていたかが大事ですので,全文把握したらまたお知らせします。

$$$ 昨日今日の仙台の寒さと行ったら。。。こたつを出したという患者さんまでいらっしゃいました。冗談でなく。
a0119856_22145983.jpg

by dobashinaika | 2017-08-04 22:16 | 抗凝固療法:リアルワールド | Comments(0)

85歳以上の超高齢者でも,抗凝固薬の脳卒中予防ベネフィットは出血リスクを上回る:JAHA誌


疑問:85歳以上の人の抗凝固療法のアウトカムは?

方法:
PREFER in AFレジストリ(前向き試験,欧州)
・抗凝固薬の有無,ネットクリニカルベネフィット算出

結果:
1)6412人登録:85歳以上505人

2)脳卒中/全身性塞栓症(%/年):
85歳未満:抗凝固薬なし2.8 vs. あり2.3
85歳以上:抗凝固薬なし6.3 vs. あり4.3

3)大出血:85歳以上>85歳未満

4)85歳以上の大出血:抗凝固薬あり4.0 vs. なしまたは抗血小板薬4.2, P-0.77
抗凝固薬はネットクリニカルベネフィットに影響せず

5)抗凝固薬薬のネットクリニカルベネフィット:-2.19%(95%CI;-4.23%~-0.15%; P=0.036)
a0119856_23191719.gif
a0119856_23193183.gif


結論:年齢による脳卒中のリスク増加のほうが出血リスク増加よりも大きいので,超高齢者においては抗凝固薬の絶対的ベネフィットは高く,出血リスクよりも遥かにネットクリニカルベネフィットが大きく価値がある。

$$$ これまでも超高齢者ほど抗凝固薬のネットクリニカルベネフィットは良いことが指摘されていました。その根拠は,年令によるリスク増加の程度が,塞栓症リスクのほうが出血リスクを上回るというものです。そのことがこちらの研究でも示されています。

同様の報告はいくつかあり,このことは本当に近いようです。

ただし,私自身超高齢者での注意点として以前から心がけているのは,1)血圧 2)腎機能 3)適切な用量 4)アドヒアランス 5)患者文脈(認知症,服薬管理者など)で,この5点がうまくいかない場合は出さないという選択肢もありと思っています。

なお抗凝固薬は72%がワルファリン,NOACは6.1%,抗凝固薬+抗血小板薬9.9%でした。

$$$ 今日のニャンコは多いです。何人いるでしょうか。
a0119856_23204398.jpg


by dobashinaika | 2017-07-24 23:27 | 抗凝固療法:リアルワールド | Comments(0)

米国プライマリケア外来でも過去5年間でDOAC処方率は増加したが,抗凝固薬全体の処方率は変わらず:AJC誌


・米国の18のプライマリーケアネットワークのデータべース
・CHA2DS-VAScスコア2点以上の心房細動
・心房細動患者:3.5%(2010年)→4.0%(2015年)
・抗凝固薬処方率(心房細動患者中):57.0%→57.4%(p=0.41)
・抗凝固薬処方率(高リスク例):61.1%→61.7% (p=0.51)
・DOAC処方率:0.31%(2010年)→18.3%(2015年) (p<0.001)
・DOAC処方例はより若年で低リスク
・結論:DOACは総じて処方が増えているが,抗凝固薬全体の処方率は増加していない。

###先日のPINNACLEレジストリと同様ですね。プライマリ・ケアセッテイングでも同じで,DOACは増えているが抗凝固薬の処方自体は余り増えていないとい言うのが世界の趨勢のようです。

$$$ 
a0119856_21535359.jpg
ひさびさのネコシリーズ。どこにいるでしょうか?ってわかりますね。

by dobashinaika | 2017-06-20 19:26 | 抗凝固療法:リアルワールド | Comments(0)

やはり心房細動では血圧が高い(収縮期150mmHg以上)と血栓塞栓症と出血リスクが高かった;伏見AFレジストリーから


P:FUSHIMI AF Registryに登録した心房細動患者3713例。追跡期間中央値1,035日

E:高血圧あり:2304例,62.1%

C:高血圧なし:1409例

O:脳卒中/全身性塞栓症,大出血

結果:
1)高血圧の既往は,脳卒中/全身性塞栓症,虚血性脳卒中,頭蓋内出血,大出血ともに影響なし

2)ベースライン血圧150mmHg以上群(305例,13.3%):150mmHg未満群(1983例)にくらべ
脳卒中/全身性塞栓症多い:HR: 1.74, 95% confidence interval [CI]: 1.08–2.72
大出血多い:HR: 2.01, 95% CI: 1.21–3.23

3)150mmhg未満群は,非高血圧群と比べて脳卒中/全身性塞栓症,大出血に差はなし
a0119856_19142853.jpeg


結論:脳卒中/全身性塞栓症,大出血とも,特に収縮期血圧の高い心房細動患者において発症リスクが高かった。

### 臨床に直結するデータですね。最近ではJ-RHYTYHレジストリーで同様研究があり,それでは収縮期血圧136mmHgで切られていました。
伏見では150がカットオフポイントですが,140−149mmHgは差がなかったようです。

Discussionにもあるように,血圧はベースラインのワンポイントの値なのでこれだけで目標値を定めるのは無理がありますが,自験例でも出血,梗塞を起こす症例は,だいたい145~150mmHgを超えるような症例であり,実感に合っているように思います。

抗凝固薬ありでもなしでもこのことは認められているので(抗凝固薬無し群はそれだけ低リスクであることに注意),抗凝固薬を出しっぱなしにして血圧を軽く見てはいけない,というメッセージを受け取りたいと思います。

いまさらながらですが,抗凝固療法の主眼は脳血管イベント予防にあるのだから,であるなら当然血圧管理が最大の課題であることを反芻します。


### ご近所ネコシリーズ
a0119856_19144975.jpg

by dobashinaika | 2017-06-04 19:15 | 抗凝固療法:リアルワールド | Comments(0)

米国でも日本でもDOAC発売後の心房細動における抗凝固薬処方率は50%→60%に増えたに過ぎない。


疑問:DOAC発売以来抗凝固薬処方は増えたのか

方法:
・2008年8月〜2014年9月,NVAF,CHA2DS2-VAScスコア1点以上
・PINNACLEレジストリ
・655,000例
・抗凝固薬使用状況の変化を分析

結果:
1)抗凝固薬使用率変化:52.4%→60.7% (p for trend <0.01)
a0119856_23510688.jpg

2)ワーファリン:52.4%→34.8% (p for trend <0.01)

3)DOAC:0%→25.8% (p for trend <0.01)

4)CHA2DS2-VAScスコアとOAC使用は関連あり:OR 1.06; 95% CI 1.05 to 1.07

5)DOACはより低用量使用:OR: 0.97; 95% CI: 0.96 to 0.98

6)医療機関により抗凝固薬使用のばらつき大きい:OR中央値1.52; 95% CI: 1.45 to 1.57

7)特にDOAC使用のばらつきが大きい:OR中央値: 3.58; 95% CI: 3.05 to 4.13

結論:ルーチンでのDOAC導入が抗凝固薬使用増加と関連あり。しかし以前ギャプは残る。施設レベルでのバリエーションも大きい。

### このグラフを見るとNOAC導入後,抗凝固薬処方率が50%から60%になり,それはDOACの増加に依存,と読めます。この数値の変化は,最近出たFUSHIMI AFの変化とほぼ一致することに驚きです(下の図B)。
a0119856_23520412.jpg



そしてやはりグローバルでも低用量使用とのことです。「欧米人はリスクよりリターンを重視する。日本人はリスクに重きを置く。。。」というのは幻想なのでしょうか。やはり抗凝固薬に関しては,世界中どこでもみんな慎重。

$$$ 日本プライマリ・ケア連合学会で高松へ。駅のホームのうどんも非常にレベルが高い。

a0119856_23560056.jpg

by dobashinaika | 2017-05-19 00:01 | 抗凝固療法:リアルワールド | Comments(0)

日本のリアルワールドでは,DOACとワルファリンで脳卒中/全身性塞栓症,大出血とも発症率に有意差なし:Fushimi AF Registryより


疑問:DOAC発売後5年たった時点での,日本の抗凝固療法のアウトカムはどうなっているのか?

方法:
・Fushimi AF Registry登録患者対象
・80医療施設,3731例,2015年11月まで追跡

結果:
1)脳卒中/全身性塞栓症:年間2.3%

2)大出血:年間1.8%

3)DOAC発売後,DOAC使用は緩徐に増加:2015年はワルファリン37%,DOAC26%,抗凝固なし36%

4)脳卒中/全身性塞栓症,大出血とも,DOACとワルファリンで出現率に差はなし
脳卒中/全身性塞栓症HR, 0.95; 95% CI: 0.59–1.51, P=0.82),大出血HR, 0.82; 95% CI: 0.50–1.36, P=0.45
a0119856_22312047.jpg

結論:リアルワールドの臨床プラクティスでは,DOAC投与下での脳卒中/全身性塞栓症や大出血は,ワルファリンと比べて明らかな違いはなかった。

### 伏見AFの最新データです。日本のイマココがわかる大変貴重な報告です。
追跡率89.6%,各群はCHA2DS2-VAScスコアとHAS-BLEDスコアの全項目でpropensity scoreマッチされています。
患者プロファイルの確認ですが,平均年齢73.6歳,平均CHADS2スコア2.0点です。ワルファリン群のほうが高齢,低体重,低血圧で高リスク例が多かったとのことです。
ワルファリン1728例,DOAC270例(ダダビガトラン115,リバーロキサバン222,アピキサバン202,エドキサバン6:5年の間に重複あり)

アウトカムの確認
1)抗凝固療法施行率:53%(2011年)→64%(2015年)
2)ワルファリン:DOAC:抗凝固なし:51%:2%:47%(2011年)→38%:26%:36%(2015年)
3)CHADS2スコア別処方率変化:3点以上の処方率は60数%で過去5年で不変。0点(35→49%),1点(45→62%)の人が増えている
4)DOACの低用量処方:ダビガトラン90%,リバーロキサバン44%,アピキサバン44%
5)非推奨例:ダビガトラン36%,保険適応外例:リバーロキサバン,アピキサバン59%
6)脳卒中/全身性塞栓症発症率への寄与因子:年齢(10歳ごと),脳卒中の既往のみ,(高血圧,糖尿病などは入らず)
7)ワルファリン vs. DOACのアウトカムはPSマッチ後も同じ
a0119856_22314270.jpg

Limitationは多くありますが,それでもワルファリンとDOACでアウトカムが変わらなかったのは相当インパクトがあります。
理由として著者らはDOACのアンダードースを挙げています。たしかにダビガトランでさえ36%,他に至っては59%もの症例で添付文書からはずれた低用量使用だったのにはやや驚きました。通常腎機能や年齢がギリギリのひとでは低用量にシフトするのもやむを得ませんが,6割近くが低用量というのはギリギリでないひともかなり含まれるのではないでしょうか。ただそれだと出血は少ないように思いますが,出血も同じだったとのことです。

筆者が述べているようにDOACのアドヒアランスの問題,nが少ないことなども関係しているかもしれません。

それにしても,試験の限界も多々あるにしても,日本の実臨床での実態をかなり反映した集団のアウトカムと思いますので,日本の臨床家の今の薬の出し方と,患者さんの飲み方では,DOACはワルファリンに勝てていないということです。あれだけ宣伝攻勢,あれだけの薬価でこうなんですね〜〜。やっぱり抗凝固薬を「誰に」「どう」使うかは,「何を」使うかより100倍重要。「何を」を考えるならコストとアドヒアランスがアウトカムより大事。なんとこんなところに落ち着くのでしょうか。NOAC礼賛の立場を取ってこなくてよかった(?)。


by dobashinaika | 2017-04-19 22:34 | 抗凝固療法:リアルワールド | Comments(0)

昨日のNOAC論文に追加情報。

昨日の論文の追加情報です。

患者背景ですが、
使用薬剤はアスピリン51.1%、VKA43.3%、NOAC4.1%、混合1.4%。
NOACの内訳はダビガトラン28.5%、リバーロキサバン71.5%
追跡期間はNOAC1.0年、VKA2.7年
合併症は、脳血管疾患がVKA群で13.4%、NOACで18.9%
でした。

消化管出血が多かった理由として
・腎機能低下例、悪性腫瘍例、消化器症状を有する例、NSAID併用例など選択基準がRCTより広い
・出血の定義に多少違いがある
などが考察されています。

頭蓋内出血も大きな差はないようです。

### 確かに観察研究なのでより重症な例にNOACが処方されたのかもしれないという交絡因子は考えねばなりません。アスピリンがかなり出されているコホートです。この研究とて鵜呑みにはできません。

とはいえ、リアルワールドは混沌としています。特にプライマリケアの現場ではなかりの高リスク例にも出しています。
その上、日本においてプライマリケアレベルでこのような大規模データベースの構築及び解析は出ていないわけです。

手放しでNOACがいいとは決して言えない。高リスク例はNOACであっても特に気をつける。こう考えたいと思います


by dobashinaika | 2017-03-15 18:52 | 抗凝固療法:リアルワールド | Comments(0)

英国のプライマリケアセッティングではNOACはワルファリンより消化管出血多い。虚血性脳卒中は同等:BJCP誌


疑問;プライマリ・ケアにおいて抗凝固薬の大出血リスクはどの程度か?

方法:
・英国のプライマリ・ケアセッティンングでの心房細動コホート:UK Clinical Practice Research Datalink (March 2008-October 2014)
・NOAC、VKA、アスピリンの新規処方患者
・処方から脳卒中または大出血までを追跡

結果:
1)31497例

2)大出血:NOACの対VKAハザード比2.07 (95% CI 1.27-3.38)

3)主に消化管出血はリスク増の主因;ハザード比2.63(95% CI 1.50-4.62)

4)出血は女性に多い:ハザード比3.14 (95% CI 1.76-5.60)

5)アスピリンの出血リスクはVKAと同程度

6)虚血性脳卒中:NOACとVKAは同程度:ハザード比1.22 (95% CI 0.67-2.19)

7)VKAはアスピリンより効果大:ハザード比2.18 (95% CI 1.83-2.59

結論:NOACは高い消化管出血リスク(特に女性)に関連。このタイプの出血をきたしやすい患者にはNOAC使用は注意。NOACとVKAは脳卒中予防においては同程度。アスピリンは心房細動の脳卒中予防には効果なし

### やや驚きの結果(ハザード比が)です。
ただ,これまでのリアルワールドエビデンスを眺めますと,有効性(脳卒中/全身性塞栓症あるいは虚血性脳卒中)はNOAC=VKAとするデータが多いのですね。出血も頭蓋内出血こそNOACは少ないですが,消化管出血は薬剤によってはNOACが多いというデータは数多くあるのです。これなども

ややマイナー雑誌なので全文入手ができていません。患者プロフィールが最も問題なので至急確認してみます。

やはりNOACを選ぶときは消化管出血はひとつのポイントになりそうです。既往のある例,NSAIDを使う例,で女性などが揃ったら消化管出血のエビデンスの少ないNOACまたはワルファリンを考えます。

$$$ うちの庭に迷い込んだハクビシン(見えますか)。
a0119856_23160121.jpg




by dobashinaika | 2017-03-14 23:18 | 抗凝固療法:リアルワールド | Comments(0)

全世界でNOAC発売後心房細動への抗凝固薬なしは67%→20%。NOAC優勢だがワルファリンも依然として多い。


方法:
1)GLORIA AFスタディ:44カ国,984センターからのグローバル登録試験。
2)18歳以上,CHA2DS2-VAScスコア1点以上。初回受診から3ヶ月以内に診断されたNVAF
3)NOAC発売後登録15092例(2011年11月〜2014年12月:Phase II)と発売前1063例(Phase I)の疾患特徴,アウトカム,合併症,治療法を比較

結果:
1)女性45.5%,平均71歳。欧州47.1%, 北米22.5%,アジア20.3%,ラテンアメリカ6.0%,中近東/アフリカ4.0%

2)CHA2DS2-VAScスコア2点以上:86.1%,1点13.9%

3)抗凝固薬:
Phase II:79.9%:NOAC47.8%,VKA32.3%,抗血小板薬12.1%,抗血栓薬なし7.8%
Pahase I:VKA32.8%, アスピリン47.1%,なし20.2%

4)ヨーロッパのPhase IIでは,NOAC(52.3%)がVKA(37.8%) よりcommon

5)北米では,NOAC52.1% ,VKA26.2%,抗血小板薬14.0%,なし7.5%

6)NOACはアジアでは少ない27.7%,VKA27.5%,抗血小板薬25.0%,なし19.8%
a0119856_22142163.gif

結論:GLORIA-AF試験Phase IIは欧州と北米でNOACが臨床に高率に取り入れられていることを示した。しかしアジアと北米では抗凝固療法なしの患者が多数。

### 抗凝固なしの割合がプレNOAC時代は約67%!だったのに対しポストNOAC時代には20%に減っています。ヨーロッパは50%以上がNOACで,抗凝固なしは非常に少数になったが,アジアと北米ではまだ20〜45%くらい抗凝固なしまたがアスピリンでした。
アジアの国の内訳が不明ですが,日本はもっとNOACが多いように思います。2015年以降はなおさらでしょう。

ただこれ新規症例に対してですので,欧州でさえ38%くらいはまだワルファリンを出していることに注意したいです。まだワルファリン良しとしている医師がかなりいるのですね,

同様研究 (GARFIELD)こちら

$$$ 診察室の壁にネコ写真貼って時々息抜きしています。偶にネコ好き患者さんと話し込んで診察忘れます(笑)。
a0119856_22161184.jpg


by dobashinaika | 2017-03-09 22:18 | 抗凝固療法:リアルワールド | Comments(0)

NOACのリアルワールドデータはこう読む:JAMA総説


NOAC観察研究に関する総説。Lip先生一派から

・RCTでは限られた集団対象のため,観察研究が行われている
・しかし観察研究は薬剤の適応基準,用量,薬剤選択,アドヒアランスに問題あり
・RCTでは同定できない潜在的な安全性を明らかにできる可能性あり

<観察研究の種類>
1.職能的,社会的に企画された登録研究(EORP,NCDR PINNACLE),企業ファンド登録(GARFIELD,ORBIT-AF)
・前向き,予めエンドポイント設定,厳密なデータ管理
・患者は限定された分野(循環器プラクティスなど),ICや処方管理がアドヒアランスに影響与える
・ミッシングデータあり

2.ヘルスケアや医療保険ベースの全国的登録研究
・選択,除外基準がなく選択バイアスは最小限
・後ろ向き研究であり,アウトカムの定義が不正確,データミッシング,INRなど測定されない,OCTがまじるなどの欠点
・”健康な”OAC服用者を減らすため,対象はほとんど新規投与患者に限られる
・交絡バイアスを減らすため,多変量解析,プロペンシティースコアマッチなどが施行される
・PSマッチングは好まれるが,Nが小さいと大量の不適合者が出る
・追跡期間は90日から2年に渡る

<観察研究での出血率>
・アピキサバン:2.29−2.38%/年(ARISTOTOLEは2.13%)
・ダビガトラン:2.04-3.60% (RELYは150mgx2;3.11% ,110mgx2:2.17%)
・リバーロキサバン:2.90−6.0%(ROCKET-AFは3.60%)
・全体としてワルファリンより大出血は少ないか同等
ワルファリンの大出血率;対ダビガトランでは3.58−4.46%,対リバーロキサバン3.40−5.09%
・NOAC同士のペアでの出血率では最低がアピキサバン,中位がダビガトラン,高いのがリバーロキサバン
・全NOACで頭蓋内出血はワルファリンより少ない(0.22%-0.49% vs 0.32%-1.06%)
・消化管出血はリバーロキサバンがワルファリンより高い(3.26% vs 2.53%),ダビガトラン,アピキサバンはワルファリンと同じ

<有効性(脳卒中/全身性塞栓症,死亡率)>
・リバーロキサバン,アピキサバンは低下のデータあり(1.33% vs 1.55% for apixaban; 2.89% vs 3.25% for 20 mg of rivaroxaban; and 4.60% vs 3.90% for 15 mg of rivaroxaban)
・死亡率はアピキサバン,ダビガトランで低下。リバーロキサバンで同等または上昇 (7.02% vs 7.41% to 25.7% vs 8.8%)

<処方傾向>
・研究間で概ね同じ
・ワルファリンは高齢で合併症の多い例(Deyo-Charlson Comorbidity Score,CHA2DS-VAScスコア高リスク)に出される
・ダビガトラン150x2は比較的若い人に出される。リバーロキサバンは合併症の多い人,アピキサバンは出血リスクの高い人に出される
・アスピリン併用はNOACよるワルファリンで良く行われる

<低用量処方>
・安全性の観点からよく見られる
・ダビガトランエドキサバンは低用量設定がRCTでなされていて,有効性より安全性の改善に関係していいる
・低用量処方はRCTより頻繁に行われているが,脳卒中も大出血も低用量のほうが多い。
・小レは低用量処方例がより高リスクのためなのと
・不適切に低用量にしているおそれがあるためと思われる

<服薬アドヒアランス>
・おおむねNOACのほうがワルファリンより良い(特にリスク因子2点以上)
・研究によっては,ダビガトラン(67.2%)はリバーロキサバン(72,2%),アピキサバン(69.5%)より落ちる
・後ろ向き研究はアドヒアランスを過剰に多く評価しやすい
追跡期間が12ヶ月以下だから
リフィルからのデータなので一時的な中断か永続的なのかわからなくなる

<まとめ>
・観察研究は因果関係を特定することができない
・NOAC間の直接比較はすべきでない
・コホート(の内容),追跡期間,用量,試験の種類,エンドポイントの定義,補正方法などを考えて解釈すること

・様々な制約はあるにしても,観察研究のデータはPCTの結果の証左となっており,NOACが日常臨床でワルファリンに変わりえるものであることが示されている
・NOACかワルファリンかの選択の際は,RCT,観察研究両者でのリスクベネフィットをレビューしてのディスカッションがなされるべき

### もっとまとめると
1)観察研究には,公的機関や製薬企業により計画的に行われるものと,保険データベースなどからレトロスペクティブに行われるものがあり
2)大出血はワルファリンと同等か少ない
3)リバーロキサバンは他に比べてやや出血が多い
3)NOACは頭蓋内出血は少ないが,消化管出血は同等か多い
4)脳卒中,死亡もおおむね同等か少なめ(出血ほどはっきりしない)
5)NOAC はワルファリンより低リスク例に出される
6)RCTより低用量が好んで出される
7)服薬アドヒアランスはワルファリンより良い
こんなかんじですかね。

個人的にはRCT,観察研究で同じ傾向が出ていればどっぷり信用することにしています。
「NOACはワルファリンより出血,とくに頭蓋内出血は少ないが,消化管出血は同等か多いかもしれない」
とだけは言えそうです。

読み方としては
1)企業主導かどうか(医師主導とされていてもファンドが製薬会社のことが多い)→その場合バイアスやや大きいと考える。またリクルート医療機関をよく見る
2)保険などベースの登録研究かどうか→その場合,アウトカムの定義,補正法,ミッシングデータなどを見る
3)その次に患者プロファイル,薬の用量,追跡期間を見る
と言った感じです。

$$$ ネコちゃん探しのポスターの脇にどばし健康カフェの案内。町内の掲示板です。
a0119856_21371992.jpg

by dobashinaika | 2017-02-19 18:19 | 抗凝固療法:リアルワールド | Comments(0)


土橋内科医院の院長ブログです。心房細動やプライマリ・ケアに関連する医学論文の紹介もしくは知識整理を主な目的とします。時々日頃思うこともつぶやきます。


by dobashinaika

プロフィールを見る
画像一覧

S M T W T F S
1 2 3 4
5 6 7 8 9 10 11
12 13 14 15 16 17 18
19 20 21 22 23 24 25
26 27 28 29 30

カテゴリ

全体
インフォメーション
医者が患者になった時
患者さん向けパンフレット
心房細動診療:根本原理
心房細動:重要論文リンク集
心房細動:リアルワールドデータ
心房細動:診断
抗凝固療法:全般
抗凝固療法:リアルワールド
抗凝固療法:凝固系基礎知識
抗凝固療法:ガイドライン
抗凝固療法:各スコア一覧
抗凝固療法:抜歯、内視鏡、手術
抗凝固療法:適応、スコア評価
抗凝固療法:比較、使い分け
抗凝固療法:中和方法
抗凝固療法:抗血小板薬併用
脳卒中後
抗凝固療法:患者さん用パンフ
抗凝固療法:ワーファリン
抗凝固療法:ダビガトラン
抗凝固療法:リバーロキサバン
抗凝固療法:アピキサバン
抗凝固療法:エドキサバン
心房細動:アブレーション
心房細動:左心耳デバイス
心房細動:ダウンストリーム治療
心房細動:アップストリーム治療
心室性不整脈
Brugada症候群
心臓突然死
不整脈全般
リスク/意思決定
医療の問題
EBM
開業医生活
心理社会学的アプローチ
土橋内科医院
土橋通り界隈
開業医の勉強
感染症
音楽、美術など
虚血性心疾患
内分泌・甲状腺
循環器疾患その他
土橋EBM教室
寺子屋勉強会
ペースメーカー友の会
新型インフルエンザ
3.11
未分類

タグ

(40)
(28)
(26)
(24)
(24)
(23)
(21)
(20)
(20)
(19)
(17)
(17)
(16)
(13)
(12)
(12)
(12)
(12)
(11)
(10)

ブログパーツ

ライフログ

著作

もう怖くない 心房細動の抗凝固療法


プライマリ・ケア医のための心房細動入門

編集

治療 2015年 04 月号 [雑誌]

最近読んだ本

ケアの本質―生きることの意味


ケアリング―倫理と道徳の教育 女性の観点から


中動態の世界 意志と責任の考古学 (シリーズ ケアをひらく)


健康格差社会への処方箋


神話・狂気・哄笑――ドイツ観念論における主体性 (Ν´υξ叢書)

最新の記事

抗凝固薬は心房細動患者の認知..
at 2017-11-06 23:28
新しいビタミンK阻害薬テカル..
at 2017-10-24 23:11
アジアの大規模リアルワールド..
at 2017-10-23 22:01
高齢者の抗血栓薬による血尿関..
at 2017-10-16 18:47
NOACとの併用で特に注意す..
at 2017-10-13 21:20
COMPASS試験に対するB..
at 2017-10-08 01:31
ABCパスウェイ(心房細動管..
at 2017-10-04 23:48
冠動脈疾患安定期にはアスピリ..
at 2017-10-04 01:11
第11回どばし健康カフェ「 ..
at 2017-10-02 21:57
冠動脈疾患における抗血小板薬..
at 2017-10-01 23:52

検索

記事ランキング

最新のコメント

運慶展を観た方にWEB小..
by omachi at 19:45
> terryさん ご..
by dobashinaika at 08:38
簡潔なまとめ、有り難うご..
by 櫻井啓一郎 at 23:16
いつも大変勉強になります..
by n kagiyama at 14:39
土橋先生論文を分かりやす..
by ekaigo at 17:41
コメントありがとうござい..
by dobashinaika at 21:03
先生のブログ(共病記)を..
by 大西康雄 at 13:07
コメントありがとうござい..
by 小田倉弘典 at 18:40
コメントありがとうござい..
by dobashinaika at 18:35
コメントありがとうござい..
by dobashinaika at 18:34

以前の記事

2017年 11月
2017年 10月
2017年 09月
2017年 08月
2017年 07月
2017年 06月
2017年 05月
2017年 04月
2017年 03月
2017年 02月
2017年 01月
2016年 12月
2016年 11月
2016年 10月
2016年 09月
2016年 08月
2016年 07月
2016年 06月
2016年 05月
2016年 04月
2016年 03月
2016年 02月
2016年 01月
2015年 12月
2015年 11月
2015年 10月
2015年 09月
2015年 08月
2015年 07月
2015年 06月
2015年 05月
2015年 04月
2015年 03月
2015年 02月
2015年 01月
2014年 12月
2014年 11月
2014年 10月
2014年 09月
2014年 08月
2014年 07月
2014年 06月
2014年 05月
2014年 04月
2014年 03月
2014年 02月
2014年 01月
2013年 12月
2013年 11月
2013年 10月
2013年 09月
2013年 08月
2013年 07月
2013年 06月
2013年 05月
2013年 04月
2013年 03月
2013年 02月
2013年 01月
2012年 12月
2012年 11月
2012年 10月
2012年 09月
2012年 08月
2012年 07月
2012年 06月
2012年 05月
2012年 04月
2012年 03月
2012年 02月
2012年 01月
2011年 12月
2011年 11月
2011年 10月
2011年 09月
2011年 08月
2011年 07月
2011年 06月
2011年 05月
2011年 04月
2011年 03月
2011年 02月
2011年 01月
2010年 12月
2010年 11月
2010年 10月
2010年 09月
2010年 08月
2010年 07月
2010年 06月
2010年 05月
2010年 04月
2010年 03月
2010年 02月
2010年 01月
2009年 12月
2009年 11月
2009年 10月
2009年 09月
2009年 08月
2009年 07月
2009年 06月
2009年 05月
2009年 04月
2009年 03月
2009年 02月
2009年 01月
2008年 03月
2007年 03月
2006年 03月
2005年 08月
2005年 02月
2005年 01月

ブログジャンル

健康・医療
病気・闘病

画像一覧

ファン