カテゴリ:心房細動:左心耳デバイス( 17 )

左心耳閉鎖デバイスの東アジア人(韓国)での成績:CJ誌

Left Atrial Appendage Occlusion in Non-Valvular Atrial Fibrillation in a Korean Multi-Center Registry
Circulation J Released: March 17, 2016


Circulation Journalに本日付けで、アジア人(韓国)での左心耳閉鎖デバイスの成績が発表されています。

対象:
・韓国の5施設
・2010~2015年
・組み入れ基準:非弁膜症性心房細動、CHADS2スコア1点以上またはCHADS2VASc スコア2点以上、高出血リスク(HAS-BLED3点以上)または抗凝固薬禁忌(過去に抗凝固化でも脳卒中または出血)

結果:
1)成功例96例:3例はサイズ不適合

2)Amplatzer cardiac plug (ACP) デバイス50例、Watchman46例

3)平均65.1歳、手技成功率96.8%

4)重大な合併症:4例4.1%(心タンポナーデ2、デバイス塞栓1、大出血1)

5)抗凝固薬中止(6週後):92.7%

6)イベント(平均追跡21.9ヶ月):死亡5.2%、脳卒中4.2%、全身性脳塞栓0%、大出血1.0%

7)術後リーク(左心耳と左房の交通;6ヶ月後、経食道エコーによる):24例25.8%(軽度2、中度18、高度4)

8)デバイスの違い;アウトカムは同等成績、リークはWatchmanの方が多い

結論:塞栓症および出血の高リスク心房細動例における左心耳閉鎖術の結果は良好。ACP, Watchmanとも手技、アウトカムの面で差はない

### アジア人でもまずまずの成績との発表です。ただ脳卒中/全身性脳塞栓発症率は年間2.3%で従来の報告よりやや高めのようです。

重大な合併症が96例中4例というのもやや気になります。欧米の成績とそれほど変わりはないようですが。

日本人ので成績はどうでしょうか?胸腔鏡下左心耳切除との比較も気になるところです。

$$$ 先日、作並の日帰り温泉に行ったとき遭遇しました。そうです、さる軍団。わかりますか?
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by dobashinaika | 2016-03-17 11:10 | 心房細動:左心耳デバイス | Comments(0)

脳卒中予防の費用対効果は左心耳閉鎖術>NOAC>ワルファリン:JACC誌

Time to Cost-Effectiveness Following Stroke Reduction Strategies in AF
Warfarin Versus NOACs Versus LAA Closure
Vivek Y. Reddy et al
J Am Coll Cardiol. 2015;():. doi:10.1016/j.jacc.2015.09.084


目的:左房閉鎖術の費用対効果はワルファリンやNOACに比べてどうか

方法;
・マルコフモデルで、メディケア、メディケイドの20年推測モデルを用いて、左房閉鎖術、ワルファリン、NOACの費用対効果を算出
・70歳、中等度リスク症例
・左房閉鎖術はPROTECT AF試験、ワルファリン、NOACはメタ解析のデータを使用

結果;
1)ワルファリンに比べての左房閉鎖術の費用対効果は良好(7年目)

2)ワルファリンに比べてのNOACの費用対効果は良好(16年目)

3)左房閉鎖術はNOAC(5年まで)、ワルファリン(10年まで)よりも費用対効果は良い

4)左房閉鎖術はワルファリン、NOACに比べてのQALYは良い(5.855 vs. 5.601 vs. 5.751)

5)感度分析をしても、手技費用が2倍だとしても、左房閉鎖術はワルファリン、NOACよりも費用対効果は良い

結論;NOACと左房閉鎖術は、ワルファリンに比べて費用対効果が良かった。左房閉鎖術はNOACよりも費用対効果は良く、生活の質も改善。この結果は治療ポリシーやガイドライン作成時に考慮されるべき。

### 左房閉鎖術はWATCHMAN Deviceですが、これは日本では認可されていません。日本人のデータがまだありませんので、そのまま我々の実臨床には当てはまるかどうかは不明です。その点東京都立多摩総合医療センターの大塚俊哉先生が施行されている左房切除術(W-O法)は、かなり有望と思います。

またNOACはワルファリンより16年の年月があれば,コスパが良いということのようです。16年というのをどう考えるか。あくまでシミュレーションモデル上の比較ですが。

$$$庭に侵入した”うしにゃん”。網戸越しで見えにくくてすみません。。
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by dobashinaika | 2015-11-26 23:18 | 心房細動:左心耳デバイス | Comments(0)

左心耳閉鎖デバイスに関するメタ解析:JACC誌

Left Atrial Appendage Closure Meta-Analysis
Holmes DR Jr et al
J Am Coll Cardiol 2015;65:2614-2623.


目的:非弁膜症性心房細動における左心耳閉鎖術とワルファリンの2つの比較試験を評価する

方法:
・PROTECT-AFとPREVAIL試験
・2406例、5931人年

結果:
1)平均追跡期間2.69年

2)出血性脳卒中ハザード比:0.22. P=0.004

3)心血管/不明死:0.46. p=0.006

4)手技に関係しない出血;0.51.p=0.006

5)全脳卒中、全身性塞栓症:有意差なし

6)虚血性脳卒中:デバイス群で多い:ハザード比1.95

結論:脳卒中、出血リスクのある非弁膜症性心房細動において、左心耳閉鎖術は、ワルファリンに比べて出血性脳卒中、心血管/不明死、施術に関連しない出血をより減らした。

### Watchmanのメタ解析、と言っても2つの比較試験のみですが。
PROTECT AF試験については以下のブログを参照ください。
http://dobashin.exblog.jp/17206624/
http://dobashin.exblog.jp/14764969/

虚血性脳卒中が増えるのが気になりますが、著者らはしっかり左心耳に挿入されないなのでテクニカルな面を理由としてあげています。
私だったら、WATMANが必要なくらいの方は日本でなら東京の大塚先生に切除術頼みますが。

$$$ なんと、トマト収穫しました!世の中で一番美味しいもの、それは自分で作って、採って、その場で食べる。これに勝るものはありません。
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by dobashinaika | 2015-06-19 08:25 | 心房細動:左心耳デバイス | Comments(0)

左心耳閉鎖デバイスWatchmanの長期成績:JAMA

Percutaneous Left Atrial Appendage Closure vs Warfarin for Atrial FibrillationA Randomized Clinical Tria
lVivek Y. Reddy et al
JAMA. 2014;312(19):1988-1998


疑問:左心耳閉鎖デバイスWATCHMANの長期成績はどうか?

方法:
・対象:18歳以上、非弁膜症性AF、CHADS2スコア≧1、ワルファリンの長期投与
・デバイス群436例:経食道的心エコーガイド下にLAA閉鎖術を施行後、45日間ワルファリン+アスピリン投与
 ワルファリ群244例:INR2〜3目標
・主要評価項目:脳卒中、全身性塞栓症、心血管死/原因不明死(複合エンドポイント)

結果:
1)平均追跡期間3.8年(2012年10月時点アウトカム)

2)イベント率:デバイス群8.4%(2.3イベント/100人年)vs. ワルファリン群13.9%(3.8イベント/人年):ハザード比0.65(0.41〜1.05);非劣性及び優越性クライテリアを満たす

3)心血管死亡率 :デバイス群3.4%(1.0イベント/100人年)vs. ワルファリン群9.0%(2.5イベント/人年):ハザード比0.40(0.21〜0.75:P=0.005)

4)全死亡率:デバイス群12.3%(3.2イベント/100人年)vs. ワルファリン群18.0%(4.8イベント/人年):ハザード比0.66(0.45〜0.98;P=0.04)

結論・臨床適用:脳卒中リスクのあるNVAFの3.8年間の追跡後、経皮的左房閉鎖術は、ワルファリンに比べ、非劣性、優越性とも複合エンドポイントのクライテリアを満たした。

### 左心耳閉鎖デバイスWATCHMANの成績です。すでに2.3年時点の結果は報告されています。
http://dobashin.exblog.jp/17206624/

今回はより長期の3.8年後の長期成績です。出血などの安全性エンドポイントは、デバイス群3.6/人年、ワルファリン群3.1/人年で非劣性(同等)でした。一番知りたい虚血性脳卒中はデバイス群5.2%、ワルファリン群4.1%で差がなかったようです。2.3年の時より安全性の差が縮まっている印象です。やはり施行後早期の手技にまつわるイベントが多いからと推測します。

私が高リスクの心房細動だったら、そうですね、ワルファリンと比べるとなるとかなり考えますね。日本人のデータがないので当然ですが。左心耳切除術ですね、自分なら

$$$ 近くの美術館にミレーを見に行ってきました。ミレーの描く農民や農村は大変敬虔で宗教的な雰囲気を醸し出しています。地平線まで続く農地、祈り、落穂ひろい。日本の農村のような、田んぼと水が主体ですぐ山に囲まれ、集約的でもっと現世的な風土とは根本的に違う世界ですね。
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by dobashinaika | 2014-12-01 22:56 | 心房細動:左心耳デバイス | Comments(0)

左心耳閉鎖術に関する賛成反対両論:Circulation誌

今週のCirculationに左心耳閉鎖術に関するコントロバーシが掲載されています。

一方は「新規抗凝固薬は左心耳切除でデバイスの必要を消滅させる」
Novel Anticoagulants Eliminate the Need for Left Atrial Appendage Exclusion Devices
Michael D. Ezekowitz and Anthony P. Kent
Circulation. 2014;130:1505-1514,doi:10.1161/CIRCULATIONAHA.114.008139


もう一方は「左心耳閉鎖術は、近年の抗凝固療法の進歩にもかかわらず、心原性脳塞栓の未だ満たされていない莫大なニーズを満たす」
Left Atrial Appendage Occlusion Addresses the Tremendous Unmet Needs of Stroke Prevention in Atrial Fibrillation That Persist Despite Recent Advances in Anticoagulation Therapy
Brian Whisenant et al
Circulation. 2014;130:1516-1523,doi:10.1161/CIRCULATIONAHA.114.008140


結論だけまとめます。

新規抗凝固薬推奨派
・NOACの普及が多数の心房細動の治療に貢献している
・左心耳閉鎖術は術者の訓練を必要とし、適応は未だに不確定
・左心耳閉鎖術は術後短期の抗凝固が必要だが、同薬禁忌には使えず
・NOACは医師、患者が使いやすくできている
・有効性、安全性もワルファリンから改善されている
・左心耳閉鎖術は良いスタディが少なく、NOACに比べて有効性は低い
・ただし両者の比較試験はない
・最近のエビデンスは、左心耳閉鎖デバイスを不要にする

左心耳閉鎖術推進派
・多くの患者は、抗凝固療法の危険にさらされる
・加齢とともに出血リスクが増える
・抗凝固下では、血栓リスク、出血リスク、心血管有害事象の恒常的なリスクがある
・永続的な抗凝固療法は、多くの満たされない臨床的ニーズを放置することである
・臨床試験は左心耳が心原性脳塞栓の病因として重大であり、左心耳閉鎖術が抗凝固療法不適合者の代替治療であることを示している
・血栓と脳卒中の巣である左心耳を1回で除去するやり方は、永続的抗凝固療法に比べで本質的に優れている
・左心耳閉鎖術と抗凝固療法や抗不整脈薬との併存も良いことが示されている
・左心耳閉鎖術は、技術とデバイスのリファインを要求する
・最近の研究は、Watchman試験の効果を強固なものにしており、今の治療戦略にどう組み込んでいけばよいかの理解を広げてくれる

### 新しいテクノロジーが登場する際、よくかわされる議論ですが、まとまっています。
ステントやアブレーションが出てきた時も、なんと危険で野蛮な、とほんとにみんな思ったわけです。

普及の鍵はやはり安全性の向上で、それにはデバイス改善と医師スキルの向上、それによる広い普及が不可欠かと思われます。

@@@今日の散歩は中島町界隈。天賞酒造の「元店舗」を移築した「八幡社の館」。堂々たる風格です。
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近所の小学校の紅葉。自然のパッチワークです。なんで自然はこうも人間が「美しい」と感じるような仕方で存在するのか?いわゆる「人間原理」を信じたくなる瞬間です。
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by dobashinaika | 2014-10-24 23:18 | 心房細動:左心耳デバイス | Comments(0)

左心耳閉鎖デバイス(Watchman)の最新の成績はどうか?:JACC誌

JACC VOL. 64, NO. 1, 2014 JULY 8, 2014:1–12
Closure Device in Patients With Atrial Fibrillation Versus Long-Term Warfarin Therapy
The PREVAIL Trial
David R. Holmes JR, et al


疑問:左心耳閉鎖デバイス(WATCHMAN)の最新の成績はどうか?

P:CHADS2スコア2点以上または1点足す他のリスク因子1つの心房細動患者

E:WATCHMAN:269人

C:ワルファリン:138人

O:一次エンドポイント:脳卒中/全身性塞栓症、心血管死または原因不明死
二次エンドポイント;7日移行の脳卒中/全身性塞栓症
安全性のエンドポイント:7日以内の全死亡、虚血性脳卒中、全身性塞栓症、デバイス手技によるイベント(外科的手術要)

結果:
1)18ヶ月後の一次エンドポイント;
デバイス群0.064vs. 対照群0.063 ;有意差なし、非劣性クライテリアに到達せず

2)二次エンドポイント;
デバイス群0.0253vs. 対照群0.0200 ;有意差なし、非劣性クライテリアに到達

3)安全性のエンドポイント:2.2%でPROTECT AF試験の介入群より低い

4)より広いクライテリアで検討しての安全性イベント:PREVAIL4.2%vs. PROTECT AF8.7% :p=0.027

5)心嚢液への外科的修復:PREVAIL0.4%vs. PROTECT AF1.6% :p=0.027

6) 心嚢穿刺: PREVAIL1.5%vs. PROTECT AF2.4% :p=0.36

結論:
この試験ではWATCHMANはワーファリンに比べて、7日移行の脳梗塞と全身性塞栓症で非劣勢であった。有効性においては非劣性は示されなかったが、イベント率は低かった。手技の安全性は明らかに向上した。このトライアルは、ワーファリンの短期治療が絶対的に禁忌でない症例でも左心耳閉鎖術がワーファリンの代替治療になりうる事を示す追加データである。

###WATCHMANデバイスはこれまで何回も紹介しており、以前ご紹介したPROTECR-AF試験やCAPという試験がすでに報告されています。
http://dobashin.exblog.jp/17206624/

今回のPREVAIL試験は、PROTECT-AF試験よりCHADS2スコアが高く高齢者が多く含まれているとのことです。

ラーニングカーブから7日、先行試験よりは安全性に優れているようですが、それでも結構重症な合併症が2.2%あり塞栓症予防はワーファリンよりやや落ちる、しかも施設格差や術者格差も激しそうですし。。となるとワーファリン服用でいいよという気にもなりそうです。

対照群もNOACだとどうなるんでしょうか。
by dobashinaika | 2014-07-11 23:28 | 心房細動:左心耳デバイス | Comments(0)

米国FDAの諮問委員会が左心耳閉鎖デバイスWATCHMANを承認するように答申

米国FDAの諮問委員会が左心耳閉鎖デバイスWATCHMANを承認するように答申したとのことです。
http://news.bostonscientific.com/2013-12-11-FDA-Advisory-Panel-Votes-Favorably-on-the-Boston-Scientific-WATCHMAN-Left-Atrial-Appendage-Closure-Device

これで製品化が目前となるのかと思われますが、日本ではどうでしょうか?
ステントなどよりはかなり大きなデバイスであり、かつ副作用の懸念もあるので、直感的にも日本でも普及は相当遠いような気がするのですが。

PROTECT AF試験についてはこちら
http://dobashin.exblog.jp/17206624/
by dobashinaika | 2013-12-17 23:26 | 心房細動:左心耳デバイス | Comments(0)

心房細動のfinal common pathwayとしての左心耳を消滅させるという発想:左心耳切除術の講演を聴く

17日(木)は、私が世話人をしております「心房細動を考える会」の第11回"Meet the expert"を仙台市内で開催させていただきました。

講師はかねてからこのブログでも取り上げさせていただいております、都立多摩総合医療センター心房血管外科の大塚俊哉先生です。
大塚先生は非弁膜症性心房細動に対する低侵襲完全内視鏡下手術(WOLF−OHTSUKA法)を開発され、既に200例以上の症例を経験され非常に良好な成績を収められています。
その概要は、ことしのJACCに掲載されていますので、以下を参照下さい。
http://dobashin.exblog.jp/17381555/

講演で特に印象に残ったポイントを挙げさせていただきます。
・完全内視鏡下左心耳切除術(のみ)と、完全内視鏡下アブレーション兼用左心耳切除術の2方法がある
・術前のチームワークスクリーニングが重要:糖尿病の有無、左心耳血栓、器質化血栓の評価
・特に糖尿病の管理不良例は心内膜の障害も強くCHADS2スコア1点と一律に扱えないのでは?
・左心耳血栓を認めたときは抗凝固療法を強化し消失するまで待つ
・左心耳の形状はCTで4タイプに分ける論文もあるが実際には4つに分類できない
・経食道エコー下で切り残しなく切除する
・切り取った左心耳はしばらく細動が続いてて、ピクピク動いている!
・左心耳切除のみの平均手術時間38分
・術後MRIでの小塞栓は今のところ認めていない
・術後ANPは25%程度減少する。ANPが左心耳からだけ産生されているのかは不明
・左心耳切除で貧血が改善する
・抗凝固療法への不安の解消、普段の活動性の改善などQOLの明らかな改善が見られる
・Ganglion plexusアブレーションはrenervationしてしまうので無効との意見もあるが、renervationの仕方が違うのかもしれない

安全性、有効性とも非常に魅力的な成績であり、今後ランダム化試験などでより確立されたものになることが期待されます。

その後参加者を交えての情報交換会になりましたが、心房細動談義は尽きず非常に楽しいディスカッションをさせていただきました。

私が特に、面白いと感じたのは、とにかく「左心耳を体内からなくしてしまう」という発想です。
左心耳は神様の残したいたづら(いやげ物)と以前書きましたが、ANP産生機能などの可能性はありますが、基本的に左心耳は心原性脳塞栓の発生部位として人間にとって非常に厄介なものです。
http://dobashin.exblog.jp/14704894/

これまた最近、心房細動は複雑系と最近のブログに書きましたが、原因は複雑カオス的ではあっても、血栓が生成される場所は「左心耳」しかありません。上流はいろいろごちゃごちゃあるけれど”final common pathwayは一箇所です。そこを消滅させてしまう治療法というのは、究極でないか、そう思えてきます。
http://dobashin.exblog.jp/18723912/

これも最近のブログからですが、古川哲史先生は、動物が海から陸に上がって肺呼吸をはじめた時から心房細動の発生は約束されていた、と述べています。
そもそも生物として心臓がまず必要で、脊椎動物が陸に上がった時点で肺ができ、同時に肺と心臓とを結ぶ血管系が必要になった。血管は細く、心臓(心房)は大きいため形態学的なミスマッチやストレッチが生じ肺静脈の接合部付近に電気的解剖学的なストレスが生じた、これが心房細動のそもそもの誕生秘話?かもしれません。
http://dobashin.exblog.jp/pg/blog_view.asp?srl=18723912&nid=dobashin

ここから考えると、要するに「心房がなくなれば心房細動」は起きないという考えが生じてきます。肺静脈とミスマッチを起こす心房がなければ心房細動も起きない。至極乱暴な発想ですが、原理的にはそういうこともできます。しかし、心臓のポンプ機能上全部なくすことはできない。そこで左心耳のみを取ってしまうことが改めて有効性を帯びてくる。そんなふうにも考えられます。

Final common pathwayとしての左心耳の切除、、、よりエビデンスが整い、普及することが期待されます。
by dobashinaika | 2013-10-20 15:41 | 心房細動:左心耳デバイス | Comments(0)

左心耳閉鎖デバイスWatchmanはQOL改善効果あり

JACC 3月7日付オンライン版より

Quality of Life Assessment in the Randomized PROTECT AF Trial of Patients at Risk for Stroke with Non-valvular Atrial Fibrillation ONLINE FIRST
J Am Coll Cardiol. 2013;():. doi:10.1016/j.jacc.2013.01.061


【疑問】左心耳閉鎖デバイスWatchmanはQOLを改善するか?

P:非弁膜症性心房細動、CHADS2スコア1点以上の707人

E:Watchman植え込み361人。ワルファリン45日投与後、クロピドグレル4.5ヶ月+アスピリン終生

C:ワルファリンのみ186人。TTR66%

O:SF12-V2を用いたQOL評価(ベースラインと12ヶ月後)

【結果】

1)身体全般改善度
   Watchman群:改善34.9%vs. 不変29.9%
   ワーファリン群:改善24.7%vs. 不変31.7% (p=0.01)

2)精神健康面改善
   Watchman群:33.0%
   ワーファリン群:22.6% (p=0.06)

3)Watchman群12ヶ月後;全般改善度、身体機能、身体制限度において対照群より明らかに改善

4)Watchman群ではワーファリンナイーヴケースのほうが12ヶ月後のワーファリン群に比べての身体改善度が大きい

【結論】Watchmanデバイスはワーファリンに比べて12ヶ月後のQOL改善度が優れている

### グラフを見ると、ワーファリンではQOLがかえって悪化しているように読み取れます。これはまあ当然と思われますが、Watchman群で改善した例は1/3程度で、それほど劇的には改善していないようにも思えます。

ただし感情的な面において改善が認められる点は大きいと思われます。
左心耳閉鎖デバイスの強みは、塞栓症のみならず抗凝固薬の出血リスクからも開放される点だと思われます。まさに一挙両得です。
この事から得られる精神的開放感は計り知れません。

日本人のメンタリティーとして、あのような大きな金属製デバイスが体内に入ることに対して精神的には結構影響するのではないかと思われます。

日本の大塚俊哉先生が施行されている胸腔鏡下左心耳切除術であれば、そうした点もクリアされているのではないかと期待されます。
http://dobashin.exblog.jp/17381555/

PROTECT AF試験のブログはこちら
http://dobashin.exblog.jp/17206624/
by dobashinaika | 2013-03-26 20:37 | 心房細動:左心耳デバイス | Comments(1)

第77回日本循環器学会2日目見聞記(2):心房細動に対する切らない”外科手術

本日午前中は、今個人的に最も注目している治療法である、胸腔鏡下心房細動治療に関する発表を聞きました。(FRS-045)

演者の都立多摩総合医療センター心臓血管外科・大塚俊哉先生(大学の1年先輩であることが最近発覚)の術式はすでにJACCで発表され当ブログでもご紹介いたしましたが、完全胸腔鏡下で、左心耳を切除する方法で、これにより左心耳血栓形成の防止及び抗凝固薬からの解放を目的とするものです。
http://dobashin.exblog.jp/17381555/

・心外膜からの肺静脈隔離+神経叢除神経+左心耳切除(A群88例)と左心耳切除のみ群(B群30例)で比較
・B群はVAScスコア平均5.5点で、血栓塞栓症既往例。21例は血栓塞栓症直後の切除。20例はワーファリン不適例
・手術関連死、大きな合併症なし
・A群のAFフリー率77%(1年)、B群は全例抗凝固薬中止後塞栓症なし(平均21カ月)

### とくにB群の手術時間平均38分!というのに、個人的には驚嘆いたしました。これは、ひそかに画期的治療だと思うのです。塞栓血栓症で悩んでいた人が合併症なし。塞栓症なし。抗凝固薬なしの世界に突入できるわけです。抗凝固薬フリーとの内容に対する家坂先生(座長)のcongratulations!の言葉に拍手が沸き起こったのもうなづけると思います。

いまのところ、塞栓症の既往があり、ワーファリン不適例や高リスク例に施行されていますが、将来、症例が蓄積されれば、CHADS2スコア低値例やいわゆる孤立性心房細動へと適応拡大が見通せると思うのです。特に抗凝固薬フリーということになれば40代、50代の方で、今後数十年抗凝固薬を飲まねばならない人にとって、左心耳だけ切ってしまって、塞栓症と出血リスクからの早めの離脱が期待できるかもしれません。

A群の治療法ももっと進化すればイベントフリー率のさらなる向上の可能性が考えられます。すくなくともカテーテルアブレーションに匹敵あるいは上回る成績が期待できるのでないしょうでか。
ある意味、アブレーションクラスタにとっても脅威になってくるかも知れません。

WATCHMANデバイスの有効性、安全性がしっかり確立されておらず、日本での見通しなど全然立っていないのに対し、すでに何十例もやられているのです。

実は、セッション後,長時間にわたり大塚先生とお話しさせていただく機会を得ることができ、今後も大変将来性の高い手術であることがよく理解できました。その詳細は企業秘密に近いようなので(笑)ちょっと明らかにはできませんが。
とにかく心房細動になったら、VAScスコアを適応する場合65歳以上で全例抗凝固薬ですし、そうでなくても50代くらいで高血圧(まさに私がそう)でも抗凝固薬です。その前にその元を断つ。‐まさに根治療法だと思うのは私だけではないはずです。

今のところは適応は限定されていますので、今後どのような症例に適応すべきかという点や長期成績、技術の普及など懸案事項はありますが、同時に期待すべきポイントでもあります。
術式の紹介はこちらの都立多摩総合医療センターのホームページで
http://www.fuchu-hp.fuchu.tokyo.jp/medical/shinzou_geka_g1.html
by dobashinaika | 2013-03-16 23:32 | 心房細動:左心耳デバイス | Comments(1)


土橋内科医院の院長ブログです。心房細動やプライマリ・ケアに関連する医学論文の紹介もしくは知識整理を主な目的とします。時々日頃思うこともつぶやきます。


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もう怖くない 心房細動の抗凝固療法


プライマリ・ケア医のための心房細動入門

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治療 2015年 04 月号 [雑誌]

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ケアリング―倫理と道徳の教育 女性の観点から


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健康格差社会への処方箋


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