カテゴリ:抗凝固療法:抜歯、内視鏡、手術( 29 )

急性期処置及び周術期におけるNOACの管理13の指針


AHAから各種急性期ケアおよび周術期におけるNOACに関するステートメントがでました。
少し前にもACCから出ていますが、こちらはNOACに特化しています。
例によってACCのメルマガのまとめから

1)NOACは,AFやVTEでのワルファリンの代替薬あるいは第一選択薬として広く使用されている

2)NOACは,ワルファリンに比べ迅速な効果と短い半減期,より安定した薬物動態をもつ

3)NOACのモニタリングはルーチンには勧められないものの,正常範囲のAPTTはダビガトランの治療域に達していないことを示す。抗Xa活性が同定できないレベルであれば,リバーロキサバン,アピキサバン,エドキサバンが臨床的に適切なレベルではな

4)医療施設は,抗凝固薬中和に関するプロトコールを多職種に示す形で作成すべきである

5)ダビガトランはイダルシズマブの2.5g2回投与で迅速に中和される。プロトロンビン複合体製剤(PCC)や透析は経口摂取後数時間が特に有効である

6)リバーロキサバン,アピキサバン,エドキサバンは薬剤特異的な中和薬が今とのところない。4因子PCCか新鮮凍結血漿が使用できる

7)NOAC使用下で頭蓋内出血が生じた場合,上記のような手順で中和が施行される。加えて血圧140未満が推奨される。出血後のいつ再開すべきかは定かでない

8)NOAC使用下での急性虚血性脳卒中の場合,感度の高い検査データがなければ,あるいはNOAC服用後48時間以上経過していなければ,tPAの使用は避けることが勧められる。一般的に,心原性脳梗塞の患者は発症1−2週間での抗凝固薬再開を控えることは避けられる。(TIAあるいは小梗塞なら短時間)

9)出血低リスク手技(歯科手技,皮膚疾患,眼科手技,生検なしの内視鏡)はNOACは止めない

10)出血中〜高リスク手技ではクレアチニンクリアランスに基づくNOACの停止が勧められている。ヘパリンブリッジはいらない

11)NOAC服用患者で急性冠症候群や緊急心カテが必要な場合,抗血小板薬2剤(DAPT)とヘパリンが開始され,NOACは緊急カテのときは中断される

12)冠動脈ステントが必要な場合,トリプルテラピー(NOAC+DAPT)の期間はリスクベネフィットに応じて決められる。PPIを処方し,NSAIDは避けること

13)カルディオバージョンおよびカテーテルアブレーション時は,NOACは3−4週はやめない,または経食道心エコーで血栓なしを確認する。NOACは継続またはカテの間だけ中止とする

### 網羅されています。何処かに貼っておきます。
ACCのパスウェイはこちら


by dobashinaika | 2017-02-24 19:01 | 抗凝固療法:抜歯、内視鏡、手術 | Comments(0)

日本人のNVAFの2.7%に抗凝固薬服用下でも左心耳血栓が見つかる:CJ誌


疑問:日本人のNVAFにおいて抗凝固薬投与下での左心耳血栓の頻度は?NOACとワルファリンの差は?

方法;
・日本のある施設における経食道心エコーを施行したNVAF症例連続559例
・抗凝固療法後最低3週間


結果:
1)445例,平均62歳,非発作性49%

2)左心耳:15例2.7%

3)DOAC2.6% ワルファリン2.8%(P=0.86)
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4)CHA2DS-VAScスコア0点,脳卒中/TIAの既往のない発作性AFでは左心耳血栓ゼロ

5)左心耳血栓の危険因子(単変量解析):非発作性,器質的心疾患,抗血小板薬,左房拡大,BNP高値,左心耳血流低下,CHA2DS-VAScスコア高値

6)左心耳血栓の危険因子(多変量解析):BNP173以上のみ

結論:左心耳血栓は,抗凝固療法下にも関わらず日本人NVAFの2.7%に見られる。その頻度はDOACとワルファリンで同じである

###  選択基準としては,日本の単一施設,直流除細動前,心臓手術やカテアブ前の例とのことです。

左心耳血栓発症例の内訳は,DOACではダビガトラン300mg2例,ダビガトラン220mg1例,リバーロキサバン15mg2例,リバーロキサバン10mg2例,アピキサバン5mg1例で,このうち不適切用量は1例のみです。ワルファリンのINR管理状況は1.6以上だった期間が35%が1例,48%が1例,56%が1例でほかは85%以上でした。

また血栓を見つけたあとは更に強力な抗凝固療法を行ほとんどの例では血栓の消失を確認しましたが,1例で脳卒中を発症したとのことでう。

左心耳血栓はでいるタイミングが様々であり,また必ずしもその後引き続いて脳血栓症が起こるわけではありませんので,この頻度がそのまま左心耳血栓の真の頻度なのかは検討の余地はありますが,BNPが高値であれば除細動やアブ前には必ず経食道心エコーを施行すべきかもしれません。

by dobashinaika | 2017-02-10 18:50 | 抗凝固療法:抜歯、内視鏡、手術 | Comments(0)

ACCによる周術期の抗凝固療法に関する意思決定パスウェイ:ヘパリンブリッジの適応は超限定的

2017 ACC Expert Consensus Decision Pathway for Periprocedural Management of Anticoagulation in Patients With Nonvalvular Atrial Fibrillation
A Report of the American College of Cardiology Clinical Expert Consensus Document Task Force
Journal of the American College of Cardiology DOI: 10.1016/j.jacc.2016.11.024

ACCから周術期の抗凝固療法に関するエキスパ−トコンセンサスがでています。かなり詳しくシェーマも充実しており,現時点での集大成的なレビューと思われます
とてもまとめきれませんので,ACCのメルマガでお勉強

1.ここでの意思決定パスウェイは経口抗凝固薬長期内服の非弁膜症性心房細動における周術期の抗凝固薬管理に関する意思決定の迅速で有用なツールとなる

2.抗凝固薬中止を考えるときは,ビタミンK阻害薬(長期半減期)かDOAC((短期半減期)か,患者の出血リスク,手技の出血リスク,追加の医療情報に気を配る

3.以下の手技(ペースメーカー, ICD植え込みなど)は低出血リスクであり,抗凝固薬は継続

4.患者出血リスクはHAS-BLEDスコアを評価する。それに加え最近3ヶ月以内の出血,血小板以上,INRの上昇(VKA),手術手技による出血の既往に留意する

5.患者に出血リスクがないか低リスク手技場合かつ患者出血リスクが高くないときは,VKAは中止してはならない

6.VKAを中止するときは,INR1.5-1.9の場合手技の3〜4日前,INR2.0-3.0の場合5日,3.0を超える場合少なくとも5日中止する。手技前24時間以内にINRを再チェック

7.ヘパリンブリッジを考えるのは次の2つのシナリオのときのみ
 1)VKA使用患者で年間10%以上の脳卒中/全身性塞栓症リスク(CHA2DS2-VAScスコア27^9点)を持つ,または3ヶ月以内の虚血性脳卒中
  2)VKA使用患者で特に出血リスクのない脳卒中/全身性塞栓症の既往(3ヶ月以上前)のある人

8.DOACを中止するときは,中止日数はクレアチニンクリアランスとその手技の出血リスクで決まる。標準的な表はこの意思決定プロセスに沿っている。ヘパリンブリッジはDOAC治療には適応なし(すみません。表は掲載していません)
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9.抗凝固薬再開時は,完全止血の確認をすべき。その後24時間以内にVKA治療再開と24〜72時間のヘパリンブリッジ(適応ありの場合。継続時間は出血リスクによる:筆者注:低出血リスクは24時間以内,高リスク例は48〜72時間ヘパリンブリッジ後)。DOACはもし患者が経口投与に耐えられないのでなければ,ヘパリンブリッジなしに24〜72時間前(出血リスクによる)に再開すべきではない(筆者注:高リスクでは24〜72時間経ってから,低リスクではその日のうちに)

10. DOACは機械弁患者に使用してなならない

### このレビューはアルゴリズムのシェーマが充実していますので,興味のある方は見てみてください。ただしアメリカさんらしく?いろんな場合を想定して盛り過ぎの感があり,ここまで書かなくてもわかるよ的な感じかもしれません。
ヘパリンブリッジは,VKAではかなり虚血性脳卒中の高リスクまたは既往歴のある人に限っており,NOACでは必要ないと言い切っているのが小気味よいです。
なお高出血リスクとはHAS-BLEDスコア3点以上のことかと思われます。

$$$ 仙台では恒例のどんと祭です。
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by dobashinaika | 2017-01-16 23:55 | 抗凝固療法:抜歯、内視鏡、手術 | Comments(0)

抗凝固薬内服中の消化管出血後の再開は3~6週後が良い:T/H誌


Optimal timing of vitamin K antagonist resumption after upper gastrointestinal bleeding
A risk modelling analysis
Thromb Haemost 2017; 117:https://doi.org/10.1160/TH16-07-0498


疑問:抗凝固薬内服中の消化管出血後の再開はいつからが良いか?

方法:
・3病院でのビタミンK阻害薬投与中に消化管出血を起こしたケースの後ろ向き解析
・消化管出血再発,血栓塞栓症と再開時期との関係解析

結果:
1)207例中121例,58%で抗凝固薬再開あり

2)平均再開時期;1週間後(0.2〜3.4週)

3)抗凝固薬再開は血栓塞栓症(ハザード比0.19,95%CI0.07-0.55),死亡(ハザード比0.61, 0.39-0.94)を減らす

4)消化管出血再発は増やす(ハザード比2.5, 1.4-4.5)

5)出血と血栓塞栓の複合的な統計モデルを用いると,出血後3週後で再発と血栓塞栓リスクは減り始め,6週後からで最低となる

結論:抗凝固薬関連消化管出血後の最適な再開時期は出血後3〜6週と思われるが,血栓塞栓リスクの程度や患者の価値,好みを考慮する必要がある。

### 脳内出血のあとは,消化管出血後の再開の話です。

これまで再開すべきかどうかとの論文はありましたが,いつ再開すべきかについては少なかったように思います。
http://dobashin.exblog.jp/21886806/

登録研究ですので,再開時期は担当医の恣意性が混入し,高リスク例ほど再開は遅れると思われますが,その辺統計モデルである程度補正されているようです。

脳内出血の時と同様,すぐに再開というわけにはやはり行かず1〜1.5ヶ月後くらいが良いところだと言うことです。脳内出血の論文でもそうですが,日本の現場では急性期病院入院中にその病院で再開することが多く,もうちょっと早い再開かとも思います。もちろん血栓の既往例などは早い再開が望まれますし(こういうときほどNOACは良い),出血の程度が大きい場合は慎重に再開時期を見ることになるでしょうが。

$$$ そろそろ年が暮れますが,一見毎年の反復と思われる一年一年も,確実に差異を生じながら生成変化しているんですね。繰り返す日常の反復にこそ差異があり,新しい発見がある。そんなふうに思いながら今年も年を越したいと思います。
by dobashinaika | 2016-12-26 23:04 | 抗凝固療法:抜歯、内視鏡、手術 | Comments(0)

ケアネット連載「「周術期の抗凝固ブリッジは縮小の方向で」:更新いたしました。

ケアネット連載 〜Dr. 小田倉の心房細動な日々~ダイジェスト版~更新いたしました。

今回は「第52回 米国心臓協会 / 米国脳卒中協会の2015年心疾患 / 脳卒中研究 ベスト10
」と
第53回「周術期の抗凝固ブリッジは縮小の方向で」です。
(要無料登録)

特にヘパリンブリッジに関しては,広く臨床現場に影響を与えるペーパーです。
これだけ広く世界中で行われていて,しかも生命に直結する処置にもかかわらず。これまでエビデンスが一定しなかったというのも驚きですし,今,現実に行われていることが実は,逆効果かもしれないというのも,なんとも世界の不確実性を痛感させられる思いです。
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早い段階でのコンセンサス形成をぜひとも希望します・
by dobashinaika | 2016-03-26 21:58 | 抗凝固療法:抜歯、内視鏡、手術 | Comments(0)

周術期の抗凝固薬ブリッジは中止を:CircCVQO誌の論説

A Call to Reduce the Use of Bridging Anticoagulation
Circ Cardiovasc Qual Outcomes. 2016;9:00-00. DOI: 10.1161/CIRCOUTCOMES.115.002430

Circ Cardiovasc Qual Outcomesから周術期の抗凝固ブリッジの中止勧告がPerspectivenの形で出ています。
アブストラクトのみ

・最近いくつかの重要な研究において,周術期の抗凝固薬管理を考える上で大きな変化が起きている

・こうした変化はガイドライン(特に20012年のAmerican College of Chest Physicians Antithrombotic Guidelines, version 9)を突然時代遅れのもの,あるいは現品限りのものにした

・われわれは,ワルファリン服用中の90%の症例で周術期の抗凝固薬中止は必要ないと推定している

・通常でない環境下あるいは適切な評価がなされた患者は除く

DOAC中止も必要ないとのエビデンスが集積されている

・多くの潜在的に(ブリッジングによる)危険の多い患者の安全性が確保され,速やかな診療上の変化が求められる。

###少し補足すると,論旨としては
・いくつかの最近の研究で,周術期のヘパリンブリッジは,血栓塞栓症を減らさず,出血は増やすというデータが集積されている
・2012年のメタ解析
・ORBIT-AF Registry Study
・RE-LY Studyのサブ解析
・The BRIDGE Trial
・Kaiser Permanente VTE Study
・人工弁での幾つかの研究

・もともとCHADS2スコアなどは長期の血栓塞栓リスクの評価を目的としており,短期の抗凝固薬中止についてのリスク評価に適しているかどうかは不明

・周術期中止により2〜3%の血栓塞栓リスクを有する例のリスク評価が可能であれば良いが,そうした指標はない

・ヘパリン置換がそのリスクを減らすというエビデンスも,また無い

以下の様な例にのみブリッジが適応される考える
・過去抗凝固薬を中止または継続していて血栓塞栓症を生じた例
・過去3ヶ月以内の脳卒中/TIA
・1ヶ月以内の壁在血栓または左心耳血栓の確認
・僧帽弁の人工弁患者
・古いタイプの人工弁患者
・過去3ヶ月以内の静脈血栓塞栓症
・静脈血栓塞栓症または以下の過凝固状態:抗リン脂質抗体症候群,プロテインC,S欠損,アンチトロンビンIII欠損

もちろん日本人のデータには欠わけですが,かと言って無視する訳にはいかないトレンドになっているように思われます。次回の日本のガイドラインにどう反映されるかですね,だたし日本のガイドラインの改訂は3年後と思われますが。すごく遠い。。。

$$$当院の待合室のお飾りです。
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by dobashinaika | 2016-01-05 19:06 | 抗凝固療法:抜歯、内視鏡、手術 | Comments(0)

手術時のヘパリンブリッジングに関する10のポイント:JACC誌

Bridging Anticoagulation: Primum Non Nocere.
Stephen J. Rechenmacher, MD; James C. Fang, MD
J Am Coll Cardiol 2015;66:1392-1403


JACCから手術時の抗凝固薬ブリッジングに関する総説がでています。
また,ありがたいことにACC.org Weekly Journal Scanというメールマガジンで10個のポイントにまとめてあるので,これをご紹介します。

Bridging Anticoagulation: Review
Geoffrey D. Barnes, MD, FACC

1)毎年,抗凝固療法を受ける人の15〜20%が,抗凝固薬中断を必要とする侵襲的手技や手術を受けている

2)ほとんどのガイドラインが以下の3つの原則を推奨している
・抗凝固薬は低リスク手技の場合,中断すべきでない
・血栓塞栓症のリスクが高く,出血リスクが過度でない場合に,ブリッジングが考慮される。反対に血栓塞栓症リスクが低い場合は施行すべきでない
・中等度のリスクの場合、個々の患者及びその手技ごとに出血リスクと血栓塞栓症リスクを管理すべき

3)第一の重要なステップは抗凝固薬の適応を確認すること。いくつかの例では抗凝固薬は全く必要ないことがある。最近生じた血栓塞栓症例(急性の深部静脈血栓など)では,抗凝固薬の中断は避けるか延期すべき

4)抗凝固薬を中断しなくて良いような低出血リスク手技:皮膚手術,整形外科的手術,ペースメーカー,ICD植えこみ,血管内手技,白内障手術,歯科手技

5)周術期の血栓塞栓症及び出血の頻度は,適応と抗凝固薬の選択により異なる。一般的に抗凝固薬ブリッジング無しでの血栓塞栓症リスクは非常に低い(ある評価では0,53%)。機械弁患者ですら,近年の研究では低い頻度である。左室補助心臓患者では抗凝固薬が一般的であるが,血栓よりも出血のほうが多い。

6)最近のブリッジングに関する研究は非常に多彩で時に血栓塞栓リスクへの考慮のないものもある。「真に安全な」ブリッジングとは血栓塞栓なしで,出血の副作用も予防することである

7)最近のBRIDGE trial (N Engl J Med 2015;373:823-33)では心房細動におけるブリッジングは血栓塞栓症を防げず(0.3〜0.4%),大出血は増やし(3.2% vs. 1.3%, p = 0.005),小出血も増やす(20.9% vs. 12%, p = 0.001)。しかし,この研究ではCHADS2スコア5〜6点の最高リスク患者や心房細動以外に適応のある疾患は含まれていない

8)機械弁かつ心房細動患者対象のPERIOP2 (NCT00432796)が進行中

9)臨床家は,出血(血栓塞栓)リスクを評価するのに,BleedMAP(出血の既往,機械弁,活動性のがん,低血小板数)を使うことが可能

10)DOACは半減期が短いため,ヘパリンブリッジを必要としない。DOACはヘパリンに変わりうるものかもしれない。しかしその研究はまだ少ない


### 低血栓塞栓リスク,低出血手技ではブリッジしない。血栓塞栓リスクが高く,出血リスクが低い場合に考慮というのがこれまでのガイドラインですが,近年の研究では,止めてブリッジすべき例はそれほど多くないことが示されていますね。

BRIDGE trial も多くは低出血リスク手技を扱っていますし,CHADS2スコア高点は含まれていませんので本当に迷うような高リスク例については解決はされていないのが現状でしょう。

そうした例では適応を慎重に考えた上で,手術前にDOAC切り替えで,ヘパリンでつなぐ期間をできるだけ短くする方法が最近はとられていて,今後も増えるものと思われます。このときよくDOACの適応,用量につき注意する必要はあると思われます。

表題の”Primum Non Nocere”はご存知ヒポクラテスの名言とされる"First, do no harm"(まず患者に害をあたえてはならない)ですが,ヒポクラテスが言った言葉ではないというのがほんとうのところのようですね。

$$$ 今日のにゃんこ
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by dobashinaika | 2015-10-13 22:25 | 抗凝固療法:抜歯、内視鏡、手術 | Comments(0)

心房細動患者の手術時ヘパリンブリッジの血栓塞栓率は非施行群と同じ。出血は多い:NEJM誌RCT

Perioperative Bridging Anticoagulation in Patients with Atrial Fibrillation
James D. Douketis et al
NEJM June 22, 2015


背景:心房細動患者の待機手術時、抗凝固療法のブリッジングは必要かどうか不明。抗凝固ブリッジング非施行が血栓塞栓症において、低分子ヘパリンブリッジングに非劣性かつ出血において優位であるとの仮説を立てた。

方法:
P:心房細動でワルファリンが投与されたす周術期の患者

E:低分子ヘパリン(100IU/kg)ブリッジング:1日2回術前24時間まで3日間および術後5〜10日

C:偽薬

O:動脈血栓塞栓症(脳卒中/全身性塞栓症/TIA)、大出血:術後30日追跡

T:RCT

結果:
1)1884人。非施行群934例、ブリッジ群950例、

2)血栓塞栓症:非施行群0.4%、ブリッジ群0.3%:P=0.01(非劣性)

3)大出血:非施行群1,3%、ブリッジ群3.2%:P=0.005(優位性)

結論:待機的手術のためにワルファリンを中止した心房細動患者において、ブリッジング非施行は低分子ヘパリンブリッジに比べて、血栓塞栓症においては非劣性かつ出血は減少させた。

### ついにでたという感じです。RCTです。これまではサブ解析や観察研究だけでした。
http://dobashin.exblog.jp/20530181/

患者背景ですが、両群とも平均年齢71〜72歳、CHADS2スコア2.3〜2.4点。術前中止期間は両群とも5.2日。術後開始は平均1.5日。消化器系手術が44%、心胸郭系手術17.2%、整形外科手術9.2%。89.4%は低出血リスク手術でした。

もっと具体的に見ると、消化器内視鏡、心臓カテーテル、歯科、皮膚、白内障、腹腔内臓器切除、肺切除、整形外科、末梢血管血管、泌尿器領域、心臓ペースメーカーなどです。

ただサプリメンタリーをよく読むと手術手技には消化器内視鏡が多く含まれていて、大手術の症例数は全体としては90例ずつくらいと少ないところは要注意かと思われます。

抗凝固療法が周術期の血栓塞栓症に無関係な理由として筆者は、手術手技自体や術中血圧の要素のほうが大きいことを指摘しています。またワルファリン中止のリバウンドによる過凝固とヘパリンによるその抑制効果はこの研究によって支持されなくなったと述べています。

研究の限界としては、CHADS2スコア5〜6点の高リスク例が少ない。頸動脈剥離術、大きながんの手術、心臓手術、脳手術が含まれていない。血栓塞栓症イベントがそもそも少ない。等が挙げられています。

そうですねー。ワルファリンやめたときの実際の血栓塞栓症は、ヘパリンで予防されるのでなく、手術手技それ自体や血圧で決まると考えるのは妥当かもしれませんkudorね。

ただ、大手術や高リスク例まで全部に当てはめるまでには至っていないようです。更に大きな手術のみでもRCTが出れば完璧ですが。

でもたとえばESCなどは、この論文が出たことで少なくとも一般的な手術でのヘパリンブリッジは「勧められない」とするステートメントなどを速いうちに出すような気がします。医学常識はこうして変わっていくのですねー。

$$$ご近所の立葵。元気に立位を保っています。
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by dobashinaika | 2015-06-24 21:45 | 抗凝固療法:抜歯、内視鏡、手術 | Comments(0)

ダビガトランの周術期管理に関する前向きコホート研究:Circ誌

Perioperative Management of Dabigatran: A Prospective Cohort Study
Sam Schulman et al
Circulation Published online before print May 12, 2015



背景:ダビガトランの周術期の使用法はいろいろなので、特異的なプロトコールによリ周術期の安全性を評価した

方法:
・ダビガトラン内服中で、待機的侵襲的手技を計画された患者
・最終用量の中止時期は、クレアチニン・クリアランスと手技関連の出血リスクによる
・ダビガトラン再開は手術の複雑性と出血合併症で決定
・主要評価項目=30日以内の大出血、その他項目=小出血、動脈血栓塞栓症、死亡

結果:
1)541例:標準リスク60%、高リスク40%

2)手術前中止期間:24時間46%、48時間37%、96時間6%

3)再開時間:プロトコール通り

4)大出血;10人1.8%

5)小出血28人5.2%

6)血栓塞栓症:TIA1人0.2%

7)死亡:4人(関係の内出血または血栓)

8)(ヘパリン)ブリッジは術前には行わず、術後9例1.7%で施行

結論:われわれの周術期ダビガトランマネジメントプロトコールは効果的で実行可能である

(COI:筆者らはベーリンガー始め数社からグラントサポートと謝礼を受けている)

### カナダ、マクマスター大学グループからの大変貴重な報告。
中断および再開のプロトコールは以下のとおり

<中断プロトコール>:
CCr>80:(標準リスク)24時間前、(高リスク)2日前、
50 < CCr <80:(標準リスク)24時間前、(高リスク)2日前
30 < CCr <50:(標準リスク)2日前、(高リスク)4日前、
<30:(標準リスク)4日前、(高リスク)6日前

<再開プロトコール>:小手術は手技当日夜から75mg1錠、翌朝から110mgまたは150mgx2の標準用量。高出血リスク手技では術後48〜72時間か
ら標準

このプロトコールで、ヘパリンブリッジなし(!)で行ったところ、出血、塞栓症とも少なかったとのことです。

これは大変貴重なデータですね。これまでワルファリンでは3〜5日前からの中断とヘパリンブリッジが推奨されていましたが、最近ヘパリンブリッジは出血ばかり増やして効果が少ないとの報告が目立っています。

このブログの論文は大出血率5.0%(ブリッジ施行)

RE-LY試験サブ解析の大出血率は、ダビガトランで6.5%、ワルファリンで6.8%(ブリッジ施行)
これら2つの試験ではヘパリンブリッジしなければ1.3〜1.8%で、今回の試験と同等の大出血率でした。

考えてみれば、ヘパリンブリッジ施行時、現実世界ではINRを確認しないで入院当日から即点滴されたり、腎機能などもあまり評価せず、点滴日数も深く吟味されないままこれまで行って来たわけで、それよりは今回のように腎機能と手術リスクでしっかりリスク層別化して、休薬と再開のプロトコールを決めてブリッジ無しで行ったほうが良いというわけですね。

で、その際は、半減期がかなり長く個人差があるワルファリンよりはNOACのほうが扱いやすいし、中断時間も短い分だけやる方としては足りやすいのかもしれません。

ダビガトランは、このように実臨床データの蓄積が他のNOACに比べて多いのが強みですね。この論文のプロトコールは広く使えると思われます。
なお同様の論文はこちら

$$$ ご近所の個人宅ですが藤の花で有名で、毎年一般公開されています。今年は例年より早く、今日で終わりでしたが、すでにかなり散り始めていました。雨が少なく咲いている期間が短かったそうです。でもしばし暑さを忘れさせてくれる空間でした。
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by dobashinaika | 2015-05-14 22:10 | 抗凝固療法:抜歯、内視鏡、手術 | Comments(0)

日本人における抗凝固薬内服下での抜歯時の出血リスクは無視できない?:BMJ Open誌

Evaluation of postextraction bleeding incidence to compare patients receiving and not receiving warfarin therapy: a cross-sectional, multicentre, observational study
Hiroshi Iwabuchi et al
BMJ Open 2014;4:e005777 doi:10.1136/bmjopen-2014-005777


疑問:日本人において、抗凝固療法下の抜歯後の出血リスクはどの程度か?リスク因子はなにか?

デザイン:クロスセクショナル、多施設、観察研究

セッティング:口腔外科のある(日本の)26病院

対象:
・2817本の歯:ワルファリン内服496例、非内服2321例
・62.2歳
・2008年1月〜2010年3月
・ワルファリン群の抜歯7日以内のPTINRは3.0未満

介入:
・単一歯の抜歯
・出血、合併症を記録

アウトカム:基本的止血手技で管理できない抜歯後の出血

結果:
1)出血の報告:ワルファリン群35歯7.1% vs. 非ワルファリン群49歯2.1%

2)臨床的に明らかな出血:ワルファリン群18歯3.6%、非ワルファリン群9歯0.4%

3)出血率:ワルファリン群2.77% vs. 非ワルファリン群0.39%

4)出血の予測因子(単変量解析):高齢(OR 0.197, p=0.001),、PT-INR (OR 3.635, p=0.003)、下顎孔交通麻酔 (OR 4.854, p=0.050) 、抜歯ソケットでの異常肉芽組織の形成 (OR 2.900, p=0.031)

5)出血の予測因子(多変量解析):高齢(OR 0.126, p=0.001), 抗血小板薬 (OR 0.100, p=0.049), PT-INR (OR 7.797, p=0.001) 、抜歯部位の急性炎症の既往(OR 3.722, p=0.037)

結論:このデータは、ワルファリン服用者における抜歯後の出血は少ないが明らかに増加することが示唆される。両群とも絶対リスクは低いが出血は無視できない。

### 日本の大学歯学部や大きな病院からの報告です。

以前調べた米国の報告では、抜歯時に管理できない口腔内出血の頻度は0.31%という論文や、全体の出血はワルファリン群で1.6%、非ワルファリン群で1.3%というデータ等ワルファリン内服下の出血はいずれも無視できる程度か非服用時と変わりなしとされてきました。
Dun AS, et al. Perioperative management of patients receiving oral anticoagulants: a systematic review.Arch Intern Med. 2003;163:901-8.

Jaffer AK, et al. Variations in perioperative warfarin management: outcomes and practice patterns atnine hospitals. Am J Med. 2010;123:141-50.

しかしながら、最新の日本の観察研究ではワルファリン群の抜歯時出血は2.77%と、米国よりも多いようです。高齢、PT-INR高値、抗血小板薬併用者などではもっと頻度が高いと思われます。

この論文も、ここ2〜3日当ブログで見てきた日本のデータ同様欧米のこれまでのデータとはやや様相が異なっているように思います。これまでとにかく抜歯時はワルファリンは止めないの一辺倒で、歯科の先生に返事を出していましたが、高齢者やINR高値例ではこれまで以上に出血注意の喚起をする必要があるかもしれないと思って読みました。

血栓塞栓症のデータがないのと、観察研究のためワルファリン中止例はそれだけ出血リスクが高い例だった可能性もあります(とするとますますワルファリン群の出血が多めに思われますが)。全文をあたってみたいところです。

しかしここ数日、抗凝固療法に関する日本の一定規模の観察研究を連続して読みましたが、ほんとに今のガイドラインでいいの?という原点に戻っての疑問が改めて湧いてくる感じがしています。日本の抗凝固薬服用者における全体的な治療水準、塞栓や出血リスクの人種差などなど、当然のことではありますがもっと考え込む必要を感じます。

$$$ 今日の道路は怖かったですね。
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でもまた日の出が拝めてHappy
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by dobashinaika | 2014-12-19 22:12 | 抗凝固療法:抜歯、内視鏡、手術 | Comments(0)


土橋内科医院の院長ブログです。心房細動やプライマリ・ケアに関連する医学論文の紹介もしくは知識整理を主な目的とします。時々日頃思うこともつぶやきます。


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